説明

歯磨剤組成物

【課題】高いステイン付着抑制効果とステイン除去効果を奏し、かつ口腔粘膜に対して低刺激で、味や泡立ちなど使用感に優れ、良好な保存安定性を有する歯磨剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)アシルアミノ酸塩、
(B)アルキル硫酸塩、
(C)下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、式中、MはNa又はKを示し、nは2又は3の整数である。)
で表される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩、及び
(D)ポリエチレングリコール
を配合してなり、かつ成分(C)の配合量が0.3〜1.5質量%、成分(D)の配合量が0.3〜3質量%であることを特徴とする歯磨剤組成物。更に、(E)カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子を配合してなる上記歯磨剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いステイン付着抑制効果及びステイン除去効果を奏し、かつ口腔粘膜に対して低刺激で、味や泡立ちなどの使用感に優れ、良好な保存安定性を有する歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯牙の着色汚れの一種であるステインは、コーヒー、茶等に含まれるタンニン色素、アルブミン等の口腔内タンパク、金属イオンなどにより形成される。ステインの歯牙表面への付着は、口腔審美における主要問題の一つである。このステインによる問題を解決する手段としては、ステインを除去もしくはステインの付着を抑制することが有効である。ステインによる問題を解消するため、これまでに数多くの歯磨剤組成物が提案されている。
ステインの除去には、組成物中に配合された研磨剤の機械的作用による除去が行われてきた。しかしながら、研磨剤により、適用部位の口腔粘膜、特に軟らかい歯頸部などが磨耗することは避けられなかった。
【0003】
そこで、ステインを化学的作用で除去する技術が種々提案されている。
出願人は、これまでに、歯面の汚れを機械的作用によらず化学的作用により除去する組成物を提案した(特許文献1;特開平9−12438号公報、特許文献2;特開平11−343220号公報、特許文献3;特開2002−47161号公報)。特許文献3には、歯面・舌面の化学的清掃基剤のフェノキシエタノールを含有する液状歯磨として実施例4にN−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムを0.2質量%、ラウロイルグリシンナトリウムを0.1質量%、ラウリル硫酸ナトリウムを1.0質量%、ピロリン酸四ナトリウムを4.0質量%、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量%、ポリエチレングリコールを1.0質量%配合した組成が記載されている。しかし、この歯磨剤は、口腔粘膜への刺激、泡立ちなどの使用感や、保存安定性が十分とは言い難く、改善の余地があった。
【0004】
一方、歯牙へのステイン形成を阻害し、安全性が高く同効果を有する成分として、アシルアミノ酸塩が提案されている(特許文献4;特開平10−17444号公報)。この特許文献4には、実施例4としてラウロイル−メチル−β−アラニンナトリウムを0.6質量%、ラウリル硫酸ナトリウムを1.0質量%、ピロリン酸四ナトリウムを1.0質量%、ポリエチレングリコールを5.0質量%配合した練歯磨が記載されている。しかしながら、この歯磨剤は、味などの使用感に問題があった。更に、液分離が生じ製剤の保存安定性にも問題があった。
【0005】
また、アシルアミノ酸塩が独特の異味(苦味)を有することは知られており、パラチニットを配合することで苦味を軽減した組成物が提案されている(特許文献5;特開2000−319148号公報)。しかし、この技術では苦味の軽減は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−12438号公報
【特許文献2】特開平11−343220号公報
【特許文献3】特開2002−47161号公報
【特許文献4】特開平10−17444号公報
【特許文献5】特開2000−319148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように歯牙のステイン付着に対して有効な歯磨剤組成物においては、口腔粘膜への刺激や、味、泡立ちなどといった使用感、保存安定性が課題となっていた。よって、歯牙のステイン付着に対して有効な新たな技術が望まれた。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高いステイン付着抑制効果とステイン除去効果を奏し、かつ口腔粘膜に対して低刺激で、味や泡立ちなど使用感に優れ、良好な保存安定性を有する歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(A)アシルアミノ酸塩と、(B)アルキル硫酸塩と、(C)水溶性ポリリン酸塩と、(D)ポリエチレングリコールとを配合し、かつ成分(C)、(D)が適切量であることにより、高いステイン付着抑制効果及びステイン除去効果を奏し、かつ口腔粘膜に対して低刺激であり、味が良く、泡立ちの量が適度で使用感に優れ、しかも保存安定性が良好であり、特に練歯磨剤として調製した場合に液分離を抑え安定な外観を与える歯磨剤組成物が得られることを見出した。
更に、成分(A)、(B)、(C)及び(D)に加え、(E)カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子を配合することで、泡の保持性が高まり、使用感をより改善できることを見出した。
【0009】
更に詳述すると、本発明者らが上記課題を解決するため検討を進めたところ、水溶性ポリリン酸塩、アシルアミノ酸塩が歯牙のステイン付着に対して効果があることは知られているが、成分(A)、(B)を配合してもステイン付着抑制効果及びステイン除去効果に劣り、しかも成分(A)に由来する苦味が生じて使用感に劣り、また、成分(C)、(B)を配合するとステイン除去効果は奏してもステイン付着抑制効果に劣り、かつ口腔粘膜に対して刺激が生じてしまい、更に泡立ち量も低く使用感に劣るという課題が生じた。そこで、かかる課題を解決するため更に検討を進めた結果、成分(A)、(B)、(C)を組み合わせ、かつ成分(D)を配合すると、意外にも前記課題が全て解消し、ステイン付着抑制効果及びステイン除去効果に優れる上、口腔粘膜刺激、味や泡立ち量といった使用感、保存安定性にも優れ、格別の作用効果を与えることを見出した。この場合、成分(A)、(B)、(C)、(D)の併用で、特にステイン付着抑制効果が格段に高まり、本発明のいずれかの必須要件を欠く場合には得られない高いステイン付着抑制効果を与え、また、成分(D)の配合で、成分(A)に由来する独特の異味を抑え苦味がない良好な使用感を与えることができる。
このように成分(A)、(B)、(C)及び(D)の併用で、高いステイン除去効果及びステイン付着抑制効果を与え、かつ使用感及び保存安定性に優れた製剤が得られ、上記格別の作用効果を奏することは、本発明者らが新たに見出したものである。
【0010】
従って、本発明は下記の歯磨剤組成物を提供する。
〔1〕
(A)アシルアミノ酸塩、
(B)アルキル硫酸塩、
(C)下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、式中、MはNa又はKを示し、nは2又は3の整数である。)
で表される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩、及び
(D)ポリエチレングリコール
を配合してなり、かつ成分(C)の配合量が0.3〜1.5質量%、成分(D)の配合量が0.3〜3質量%であることを特徴とする歯磨剤組成物。
〔2〕
(B)/(C)が質量比として0.5〜3である〔1〕記載の歯磨剤組成物。
〔3〕
(A)アシルアミノ酸塩が、アシルグルタミン酸塩である〔1〕又は〔2〕記載の歯磨剤組成物。
〔4〕
更に、(E)カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子を配合してなる〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の歯磨剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高いステイン付着抑制効果とステイン除去効果を奏し、かつ口腔粘膜に対して低刺激で、味や泡立ちなどの使用感に優れ、良好な保存安定性を有する歯磨剤組成物を提供できる。よって、本発明の歯磨剤組成物は、歯牙のステイン付着に対して極めて有効である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の歯磨剤組成物は、(A)アシルアミノ酸塩、(B)アルキル硫酸塩、(C)水溶性ポリリン酸塩、及び(D)ポリエチレングリコールを配合してなる。
【0013】
成分(A)のアシルアミノ酸塩としては、アシル基の炭素数が8〜20、特に12〜16のものが好適である。また、アミノ酸基は、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、サルコシン、アラニン、メチオニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシンなどが挙げられ、特にグルタミン酸が好ましい。その塩は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機アミン塩などが挙げられる。
【0014】
アシルアミノ酸塩としては、例えばN−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸カリウム等のアシルグルタミン酸塩、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸ナトリウム等のアシルアスパラギン酸塩、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム等のアシルグリシン塩などが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて配合できる。
具体的には、アミノサーファクトALMS−P1(N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、旭化成ケミカルズ株式会社)、アミソフトLS−11(N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、味の素ヘルシーサプライ株式会社)、アミノサーファクトAMMS−P1(N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、旭化成ケミカルズ株式会社)、アミソフトMS−11(N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、味の素ヘルシーサプライ株式会社)、アミノフォーマーFLDS−L(N−ラウロイル−L−アスパラギン酸ナトリウム、旭化成ケミカルズ株式会社)、アミライトGCK−12K(N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、味の素ヘルシーサプライ株式会社)などの商品名で商品化されているものが使用できる。
【0015】
成分(A)としては、特にアシルグルタミン酸塩が、他のアミノ酸残基を有するものより異味(苦味)が弱く、本発明の効果を与えるのにより好適である。
【0016】
成分(A)の配合量は、組成全体の0.1〜2%(質量%、以下同様。)が好ましく、より好ましくは0.3〜1.5%である。0.1%未満ではステイン付着抑制効果、泡立ちに劣る場合があり、2%を超えると異味がでて使用感が低下する場合がある。
【0017】
成分(B)のアルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸等のアルキル硫酸のアルカリ金属塩が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。アルキル硫酸塩としては、特にラウリル硫酸ナトリウムが、歯磨剤組成物への配合のし易さから、好適である。
アルキル硫酸塩は、東邦化学工業株式会社製などの市販のものを使用できる。
【0018】
成分(B)の配合量は、組成全体の0.3〜1.8%が好ましく、より好ましくは0.5〜1.0%である。0.3%未満ではステイン付着抑制効果、除去効果に劣ることがあり、また泡立ちに劣る場合がある。1.8%を超えると口腔粘膜に対する刺激が生じ使用感が低下する場合がある。
【0019】
成分(C)の水溶性ポリリン酸塩としては、下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、式中、MはNa又はKを示し、nは2又は3の整数である。)
で表される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩の1種又は2種以上が用いられる。
【0020】
例えば、重合度n=2のピロリン酸ナトリウムやピロリン酸カリウム、n=3のトリポリリン酸ナトリウムなどを用いることができる。中でも、ステイン除去効果や口腔粘膜への刺激性の点から、トリポリリン酸ナトリウムがより好ましい。
具体的には、太平化学産業株式会社製等の市販品を用いることができる。
【0021】
成分(C)の配合量は、組成全体の0.3〜1.5%であり、好ましくは0.5〜1.0%である。0.3%未満では、ステイン付着抑制効果、ステイン除去効果に劣り、1.5%を超えると口腔粘膜に対する刺激が生じ使用感が低下する。また、泡立ちが低下し、保存安定性に劣る。
【0022】
本発明では、成分(B)と成分(C)とを適切な割合で配合することが、特に口腔粘膜に対する刺激を抑え高いステイン付着抑制、除去効果を発揮させるのにより有効である。
成分(B)と成分(C)との配合比率は、質量比として(B)/(C)が0.3〜5が好ましく、より好ましくは0.5〜3である。0.3未満では、刺激を抑えることができない場合がある。また、液分離安定性に劣ることがある。5を超えると、粘膜刺激が強く使用感が低下したり、ステイン付着抑制、除去効果に劣る場合がある。
【0023】
本発明では、更に(D)ポリエチレングリコールを配合することで、成分(A)、(B)、(C)の併用によるステイン付着抑制効果をより向上し、かつ成分(A)のアシルアミノ酸塩に由来する異味を抑制し使用感を改善することができる。
【0024】
ポリエチレングリコールとしては、平均分子量が大きいもののほうが効果発現には有効であるが、平均分子量200〜6,000のものが好ましく、特に400〜4,000のものがより好ましい。200未満では成分(A)に由来する独特の異味を抑える効果が十分に得られない場合がある。6,000を超えるとポリエチレングリコール由来の異味が生じ使用感が悪化する場合がある。
なお、ここで平均分子量は医薬部外品原料規格2006記載の平均分子量を示す(以下、同様。)。
具体的には、ポリエチレングリコール400(平均分子量380〜420)、ポリエチレングリコール600(平均分子量570〜630)、ポリエチレングリコール4000(平均分子量2,600〜3,800)等が例示できる。
ポリエチレングリコールは、例えば三洋化成工業株式会社製等の市販品を使用できる。
【0025】
成分(D)の配合量は、組成全体の0.3〜3%が好ましく、より好ましくは0.5〜2%である。0.3%未満では、異味を抑制できないことがあり、3%を超えると液分離が生じ、製剤安定性に劣ることがある。また、ポリエチレングリコール由来の異味が生じ使用感に劣る場合がある。
【0026】
本発明では、更に(E)カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースナトリウムから選ばれる水溶性高分子を配合することが好ましい。成分(E)を配合することで、口腔内の泡の保持性を高め、使用感をより改善することができる。本発明では、水溶性高分子として特に成分(E)が上記効果発現に有効であり、成分(E)以外の水溶性高分子を用いてもかかる効果を得ることはできない。
成分(E)としては、上記水溶性高分子の1種又は2種以上を配合できる。特に2種以上の併用、とりわけキサンタンガムとカラギーナン及び/又はポリアクリル酸ナトリウムとの併用が、泡の保持性が増し歯磨き時の使用感がより向上することから、より好ましい。
成分(E)としては、市販のものを使用できる。
【0027】
成分(E)を配合する場合、その配合量は、組成全体の0.2〜3%が好ましく、より好ましくは0.4〜1.5%である。0.2%に満たないと配合効果が得られない場合があり、3%を超えると歯磨剤組成物が固くなり、歯磨き時の口腔内分散性が低下し、泡が立ちにくく、使用感に劣る場合がある。
【0028】
本発明の歯磨剤組成物は、特に練歯磨剤として好適に調製される。この場合、必要に応じて上記成分以外の公知成分を本発明の効果を妨げない範囲で配合できる。例えば研磨剤、粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、着色剤、香料、各種有効成分等が配合される。
【0029】
研磨剤としては、シリカゲル、沈降性シリカ、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム2水和物及び無水和物、第3リン酸カルシウム、第3リン酸マグネシウム、第4リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系化合物、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。
これらの研磨剤の配合量は、通常、組成全体の10〜50%であり、好ましくは10〜30%である。
【0030】
粘稠剤としては、ソルビット、キシリット等の糖アルコール、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。これらの配合量は、通常、5〜50%、特に20〜45%である。
【0031】
粘結剤としては、本発明の効果を妨げない範囲で、成分(E)の水溶性高分子以外の公知の粘結剤を配合してもよい。例えばポリビニルアルコール、グアガム、アルギン酸ナトリウム、カチオン化セルロース、増粘性シリカ、モンモリロナイト、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。これら粘結剤を配合する場合、その配合量は、成分(E)を含めて0.2〜5%の範囲が好ましい。
【0032】
界面活性剤としては、成分(A)、(B)以外のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等の公知の界面活性剤を配合できる。具体的に、アニオン性界面活性剤としてはN−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシンナトリウムが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ラウリン酸モノ又はジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が用いられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム等が挙げられる。
これら界面活性剤の配合量は、成分(A)、(B)を含めて1〜5%、特に1.5〜4%の範囲が望ましい。
【0033】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム等、防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
着色剤としては、青色1号、黄色4号、二酸化チタン等が挙げられる。
【0034】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。
【0035】
各種有効成分としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等のグルカナーゼ、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸dl−トコフェノール、α−ビサボロール、イソプロピルメチルフェノール、クロロヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、アズレン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、ゼオライト、アミラーゼ、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物が挙げられる。なお、上記有効成分は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0037】
[実施例、比較例]
表1〜4に示す組成の歯磨剤組成物(練歯磨剤)を下記方法で調製し、下記の評価を行った。結果を表1〜4に示す。
【0038】
試験歯磨剤組成物の調製:
(1)精製水中に水溶性成分(粘結剤、プロピレングリコール等を除く。)を常温で混合溶解させた後、ソルビット及び増粘性シリカを添加混合し、A相を調製した。
(2)プロピレングリコール中に粘結剤を常温で分散させたB相を調製した。
(3)攪拌中のA相の中にB相を添加混合し、C相を調製した。
(4)C相中に、香料、研磨剤、界面活性剤等の水溶性成分以外の成分を、1.5Lニーダー(石山工作所製)を用い常温で混合し、減圧(4kPa)による脱泡を行い、歯磨剤組成物1.2kgを得た。
【0039】
使用原料の詳細は下記の通りである。
(A)N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム;
旭化成ケミカルズ株式会社(商品名:アミノサーファクトALMS−P1)
N−ラウロイル−L−アスパラギン酸ナトリウム;
旭化成ケミカルズ株式会社(商品名:アミノフォーマーFLDS−L)
N−ヤシ油脂肪酸−ココイルグリシンカリウム;
味の素ヘルシーサプライ株式会社(商品名:アミライトGCK−12K)
(B)ラウリル硫酸ナトリウム;東邦化学工業株式会社
(C)トリポリリン酸ナトリウム;太平化学産業株式会社
ピロリン酸四ナトリウム;太平化学産業株式会社
(D)PEG400 ;ポリエチレングリコール400、三洋化成工業株式会社
PEG4000;ポリエチレングリコール4000、三洋化成工業株式会社
(E)カラギーナン;三昌株式会社
ポリアクリル酸ナトリウム;東亜合成株式会社
ヒドロキシエチルセルロースナトリウム;ダイセル化学工業株式会社
キサンタンガム;DSP五協フード&ケミカル株式会社
その他の成分については医薬部外品原料規格2006に適合したものを用いた。
【0040】
〈1〉ステイン付着抑制効果の評価
〈1−1〉ステイン付着抑制試験
未処置のハイドロキシアパタイトペレット(HAP)表面(HOYA株式会社製、直径7mm×厚さ3.5mm)のサンドブラストにて処理後、中性洗剤水溶液中、超音波洗浄機で洗浄した。水洗し、自然乾燥後、分光式色差計(日本電色工業株式会社製、型式:SE−2000)を用いて、ステイン付着前のHAPのΔE値(ΔE0)を測定した。
また、歯磨剤組成物を2倍量の精製水で希釈し、3,000rpmで10分間遠心分離した上清液を得、歯磨分散液とした。上記のHAPを、50℃に加温した歯磨分散液に10分間浸漬後、精製水で洗浄し、表面の水分を取り除いた後、0.5%アルブミン溶液→タンニン抽出液→0.6%クエン酸鉄(III)アンモニウム溶液の順に、50℃で10分間ずつ繰り返し浸漬する操作を行った。タンニン抽出液は、沸騰させたイオン交換水1200mL中に、日本茶(銘柄:老松)50g、紅茶(ユニリーバ・ジャパン株式会社製、ブリスク ティーバック)5袋、インスタントコーヒー(商品名 ネスカフェ、ネスレ日本株式会社製)12gを入れ一晩放置し、日本茶及び紅茶をろ過にて取り除き作製した。上記操作を5回繰り返し、HAP表面を風乾させ、再び表面のΔE値(ΔE1)を測定した。
歯磨分散液の代わりに、精製水で同様の処理を行ったときの初期のHAPのΔEをΔE0b、処理後のΔEをΔE1bとした。次式によりステイン付着抑制率を算出した。
ステイン付着抑制率(%)=
〔(ΔE1b−ΔE0b)−(ΔE1−ΔE0)〕/(ΔE1b−ΔE0b)×100
【0041】
ステイン付着抑制率から下記基準に従いステイン付着抑制効果を評価した。
ステイン付着抑制効果の評価基準
◎:ステイン付着抑制率が80%以上
○:ステイン付着抑制率が70%以上80%未満
△:ステイン付着抑制率が60%以上70%未満
×:ステイン付着抑制率が60%未満
【0042】
〈2〉ステイン除去効果の評価
〈2−1〉ステイン付着HAPの作製方法
ハイドロキシアパタイトペレット(HAP)表面(HOYA株式会社製、直径7mm×厚さ3.5mm)をサンドブラストにて処理後、中性洗剤水溶液中、超音波洗浄機で洗浄した。30%リン酸水溶液にて表面をエッチング(10分間)、水洗し、自然乾燥後、分光式色差計(日本電色工業株式会社製、型式:SE−2000)を用いて、ステイン付着前のHAPのLab値(L0)を測定した。上記のHAPに対し、0.5%アルブミン水溶液→タンニン抽出液→0.6%クエン酸鉄(III)アンモニウム水溶液で1時間ずつ繰り返し浸漬する操作を50回繰り返し、常温で1日風乾した後、流水で洗浄し、再び風乾してステイン付着HAPを作製した。なお、タンニン抽出液は、沸騰させたイオン交換水1200mL中に、日本茶(銘柄:老松)50g、紅茶(ユニリーバ・ジャパン株式会社製、ブリスク ティーバック)5袋、インスタントコーヒー(商品名 ネスカフェ、ネスレ日本株式会社製)12gを入れ一晩放置し、日本茶及び紅茶をろ過にて取り除き作製した。作製したステイン付着HAPの表面の色を測定し、その値をL1とした。
【0043】
〈2−2〉ステイン除去試験
歯磨剤組成物を2倍量の精製水で希釈し、歯磨分散液を作製した。上記方法で作製したステイン付着HAPを歯磨分散液に浸漬し、平切りの歯ブラシ(PCクリニカ、ライオン株式会社製)をセットした自動研磨試験機(株式会社宮川商店製、加重200g、温度37℃)にて200回ブラッシングし、ブラッシング後のHAPのLab値(L2)を測定した。
下記式に基づきステイン除去率を算出した。
タンニン鉄ステイン除去率(%)=〔(L1−L2)/(L1−L0)〕×100
ステイン除去率から下記の基準に従いステイン除去効果を評価した。
ステイン除去効果の評価基準
◎:ステイン除去率50%以上
○:ステイン除去率40%以上50%未満
△:ステイン除去率30%以上40%未満
×:ステイン除去率30%未満
【0044】
〈3〉歯磨剤の泡立ちの評価
歯磨剤組成物約5gを人口唾液にて4倍に希釈し、その水溶液10mLを100mLのエプトン管に加えた。10秒あたり20回上下に振とうし、1分間静置後の泡高を測定し、下記の基準で歯磨剤の泡立ちを評価した。
泡立ちの評価基準
◎:20mm以上
○:15mm以上20mm未満
△:10mm以上15mm未満
×:10mm未満
【0045】
〈4〉口腔粘膜への刺激の評価
粘膜刺激に敏感なパネラー10名を用い、歯磨剤組成物約1gを歯ブラシにとり、3分間歯磨きを行った際の口腔粘膜への刺激の程度について、4段階で回答を得た。回答のうち、「刺激を感じない」を4点、「刺激をほとんど感じない」を3点、「刺激を感じる」を2点、「刺激を強く感じる」を1点として、10名の平均点から下記の基準で使用感を評価した。
刺激の評価基準
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0046】
〈5〉歯磨き時の苦味の評価
歯科専門家パネラー10名を用い、歯磨剤組成物約1gを歯ブラシにとり、約3分間歯磨きを行った後、歯磨き時の苦味の程度について、4段階で回答を得た。回答のうち、「全く苦味を感じない」を4点、「苦味をほとんど感じない」を3点、「やや苦味を感じる」を2点、「非常に苦味を感じる」を1点として、10名の平均点から下記の基準で使用感を評価した。
苦味の評価基準
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0047】
〈6〉製剤の保存安定性の評価
歯磨剤組成物をチューブ容器に収容したものを3本ずつ40℃条件下に1ヶ月保存した後、液分離安定性を下記の評点基準で判定し、下記基準で評価した。
液分離の評点基準
4点:液分離が全くなかった。
3点:口元部に液分離がわずかに認められた(問題ないレベル)。
2点:口元部,及び練表面の液分離がやや激しく認められた。
1点:チューブから歯磨剤組成物を押し出した時、分離液がチューブ口元から垂れだ
す程度に認められた。
保存安定性の評価基準
◎:4.0点
○:3.0点以上4.0点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0048】
〈7〉口腔内での泡の保持性の評価
歯科専門家パネラー10名を用い、歯磨剤組成物約1gを歯ブラシにとり、約3分間歯磨きを行い、口腔内での泡の保持性について、4段階で回答を得た。回答のうち、「全く口から垂れない」を4点、「ほとんど口から垂れない」を3点、「やや口から垂れる」を2点、「口から垂れる」を1点として、10名の平均点から、以下の基準で使用感を評価した。
泡の保持性の評価基準
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アシルアミノ酸塩、
(B)アルキル硫酸塩、
(C)下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、式中、MはNa又はKを示し、nは2又は3の整数である。)
で表される直鎖状の水溶性ポリリン酸塩、及び
(D)ポリエチレングリコール
を配合してなり、かつ成分(C)の配合量が0.3〜1.5質量%、成分(D)の配合量が0.3〜3質量%であることを特徴とする歯磨剤組成物。
【請求項2】
(B)/(C)が質量比として0.5〜3である請求項1記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
(A)アシルアミノ酸塩が、アシルグルタミン酸塩である請求項1又は2記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
更に、(E)カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子を配合してなる請求項1、2又は3記載の歯磨剤組成物。

【公開番号】特開2013−112654(P2013−112654A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261165(P2011−261165)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】