説明

歯磨剤

【課題】ノニオン性殺菌剤の容器への吸着を抑制し、かつ使用時にノニオン性殺菌剤を口腔内で十分に作用させることができ、且つ、使用感の良好な歯磨剤を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)ノニオン性殺菌剤 0.005〜2質量%
(B)界面活性剤 0.3〜2.5質量%
(C)γ-シクロデキストリン 0.5〜10質量%
(D)水 15〜60質量%
を含有し、成分(A)と(C)の質量比(A:C)が1:15〜1:300である歯磨剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノニオン性殺菌剤を含有する歯磨剤に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤には、むし歯、歯肉炎、歯槽膿漏等の歯周病の原因物質である歯垢を抑制し、又は歯垢中の各種口腔細菌を低レベルに抑制する目的で、殺菌剤が配合されるが、その中でもトリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等に代表されるノニオン性殺菌剤は、抗菌スペクトルが広く、殺菌作用も強いため使用されることが多い。
ノニオン性殺菌剤は、ノニオン性であることから種々の配合成分との相互作用は少ないが、充填された容器表面に吸着し、長期間保存すると歯磨剤中の濃度が低下してしまうという問題がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
この問題に対して、容器の最内層部分に特殊なポリマーを用いてノニオン性殺菌剤の容器への吸着を改善する技術が提案されている。例えば、特許文献1では、エチレンビニルアルコールを内層に使用することが提案されている。しかし、特殊なポリマーを用いると、容器の製造性が低下する等の製造上の問題とコストアップするという経済上の問題がある。
【0004】
一方、組成面でノニオン性殺菌剤の容器への吸着を抑える技術としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合することで安定化した歯磨剤(特許文献2)、アニオン界面活性剤と非イオン界面活性剤を特定比率で配合し、水分量を40%以下とすることでフェノール系殺菌剤を安定配合した口腔用組成物(特許文献3)、グリセリン等のポリオールを配合し、ポリオールに対する水分の割合を重量割合で0.4以下とすることにより非水溶性有効成分を安定に配合する口腔用組成物(特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−279248号公報
【特許文献2】特開2004−250381号公報
【特許文献3】特開平11−322554号公報
【特許文献4】特開2001−199854号公報
【特許文献5】特開2005−179266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3、4に記載された歯磨剤のようにグリセリン等を多く含有することによって水分含有量を40質量%より低くした場合、粘稠性が増加し、口腔内における歯磨剤の分散性が悪くなり、使用感を損なう場合がある。また、グリセリン等は苦味があり、使用感だけでなく味にも影響を与える。一方、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する歯磨剤では、ノニオン性殺菌剤の容器への吸着は防止することはできたが、ノニオン性殺菌剤が安定可溶化された結果、殺菌効果が低下していることが報告されている(特許文献5)。
従って、本発明の課題は、ノニオン性殺菌剤の容器への吸着(溶解又は吸収)を抑制し、かつ使用時にノニオン性殺菌剤を口腔内で作用させることができ、且つ、使用感の良好な歯磨剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、界面活性剤を含有する歯磨剤におけるノニオン性殺菌剤の容器への吸着を抑制しうる歯磨剤を得るべく種々検討したところ、ノニオン性殺菌剤にα−シクロデキストリン及びβ−シクロデキストリンを配合しても、ノニオン性殺菌剤の容器への吸着はほとんど抑制できないにもかかわらず、全く意外にもγ−シクロデキストリンをノニオン性殺菌剤と一定の比率で配合すると、ノニオン性殺菌剤の容器への吸着が顕著に抑制できることを見出した。そして、ノニオン性殺菌剤とγ−シクロデキストリンと一定量の界面活性剤を配合すると、ノニオン性殺菌剤の容器への吸着防止効果が得られ、しかも泡立ちが良く、使用感の良好な歯磨剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)ノニオン性殺菌剤 0.005〜2質量%、
(B)界面活性剤 0.3〜2.5質量%、
(C)γ−シクロデキストリン 0.5〜10質量%、
(D)水 15〜60質量%
を含有し、成分(A)と(C)の質量比(A:C)が1:15〜1:300である歯磨剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歯磨剤は、ノニオン性殺菌剤の容器への吸着を抑制し、歯磨剤におけるノニオン性殺菌剤の含有量を維持しつつ容器内に保存が可能であって、しかもノニオン性殺菌剤の拡散を抑制しつつ歯磨剤の粘度に影響を与えず、口腔内における分散性に優れ、味にも影響を与えず、使用感が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】トリクロサン(TC)含有界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム:AS)水溶液のNMRスペクトルを示す。「無添加」はシクロデキストリン無添加。「α−CD」はα−シクロデキストリン添加。「β−CD」はβ−シクロデキストリン添加。「γ−CD」はγ−シクロデキストリン添加。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の歯磨剤は、成分(A)ノニオン性殺菌剤、成分(B)界面活性剤、成分(C)γ-シクロデキストリン、及び成分(D)水を含有する。
(A)ノニオン性殺菌剤としては、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール、フェノール等が挙げられ、殺菌力、歯垢抑制効果、容器への吸着抑制効果、使用感の点からトリクロサン、イソプロピルメチルフェノールが好ましく、さらにトリクロサンが好ましい。
【0012】
トリクロサンは、広範囲な抗菌スペクトルをもつハロゲン化ジフェニルエーテル型の殺菌剤であり、化学名は2’,4,4’−トリクロロ−2−ヒドロキシジフェニルエーテルであって、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社からイルガケアMPの商品名で販売されている。イソプロピルメチルフェノールは、広範囲な抗菌スペクトルをもつ殺菌剤であり、化学名は1−ヒドロキシ−4−イソプロピル−3−メチルフェノールであり、例えば、商品名ビオゾームとして大阪化成株式会社から販売されている。
【0013】
本発明の歯磨剤における(A)ノニオン性殺菌剤の含有量は、歯垢抑制効果の観点から、0.005〜2質量%であり、好ましくは0.01〜1質量%であり、さらに0.01〜0.5質量%が好ましい。
【0014】
本発明の歯磨剤に用いられる(B)界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤が用いられる。
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、N−ミリストイルザルコシン酸ナトリウムなどのN−アシルザルコシン酸塩;N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。
【0015】
また、ノニオン性界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル;マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ラウリン酸モノ又はジエタノールアミド、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミドなどの脂肪酸ジエタノールアミド;ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等が用いられる。
両性イオン界面活性剤としては、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウムなどが用いられる。
このうち、界面活性剤としては、泡立ち、使用感の点からアニオン性界面活性剤がより好ましく、さらにラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩が好ましい。
【0016】
本発明の歯磨剤における(B)界面活性剤の含有量は、ノニオン性殺菌剤の容器への吸着防止効果と泡立ち、使用感とのバランスから0.3〜2.5質量%である。(B)界面活性剤の含有量はさらに泡立ちを得る点から0.5質量%以上が好ましく、さらに0.7質量%以上が好ましく、ノニオン性殺菌剤の容器への吸着防止効果をさらに向上させる点から、好ましくは2.2質量%以下であって、さらに2.0質量%以下が好ましい。
なお、界面活性剤中のアニオン性界面活性剤の質量比は、泡立ち、使用感の点から50〜100%が好ましく、さらに80〜100%が好ましく、さらに好ましくはノニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の含有量を、0.1質量%未満とすることが好ましく、さらに0.05質量%以下とすることが好ましい。
【0017】
本発明の歯磨剤においては(C)γ−シクロデキストリンを含有することにより、ノニオン性殺菌剤の容器への吸着を防止することができる。シクロデキストリンのうち、α−シクロデキストリンやβ−シクロデキストリンでは、十分なノニオン性殺菌剤の容器への吸着防止効果は得られないのに対し、γ−シクロデキストリンを配合した場合に優れたノニオン性殺菌剤の容器への吸着防止効果が得られる。γ−シクロデキストリンは、商品名キャバマックスW8フードとして株式会社シクロケムから入手可能である。
【0018】
本発明歯磨剤における(C)γ−シクロデキストリンの含有量は、ノニオン性殺菌剤の容器への吸着防止効果の点から、0.5〜10質量%であって、さらに1〜7質量%が好ましく、特に1.5〜5質量%が好ましい。さらに、本発明は、ノニオン性殺菌剤の容器への吸着を防止し、かつ良好な使用感を得る点から、成分(A)と(C)の質量比(A:C)は1:15〜1:300であり、1:20〜1:200が好ましく、さらに1:30〜1:180が好ましい。
本発明の歯磨剤の(C)γ−シクロデキストリンと(B)界面活性剤中のアニオン性界面活性剤の質量比(C:B)は、ノニオン性殺菌剤の容器への吸着防止と使用感の点から、1:0.01〜1:3が好ましく、さらに1:0.3〜1:2.5が好しい。
【0019】
本発明の歯磨剤には(D)水を15〜60質量%含有する。この範囲の水を含有することにより、ハブラシにのせたときの保型性や口の中での分散性、容器からの出しやすさが良好な、使用感に優れた歯磨剤を得ることができる。(D)水の含有量は、使用感の点から、さらに20〜60質量%が好ましく、さらに30〜50質量%が好ましい。
なお、歯磨剤中の(D)水の含有量は、配合した精製水の量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業)を用いることができる。この装置では、歯磨剤を5gとり、無水メタノール25gにより懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。
【0020】
本発明の歯磨剤には、上記成分以外に、例えば研磨剤、湿潤剤、粘結剤、甘味剤、防腐剤、ノニオン性殺菌剤以外の殺菌剤、色素、香料等を配合できる。ここで研磨剤としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム2水和物及び無水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、合成樹脂の研磨剤等が挙げられ、シリカ系研磨剤が好ましい。これらの研磨剤の含有量は2〜30%、特に5〜15%が好ましい。
【0021】
湿潤剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール等が挙げられる。粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、グアガム、モンモリロナイト、ゼラチン、キサンタンガム、ジェランガム、澱粉等が例示される。これらの粘結剤の含有量は0.1〜10%、特に0.5〜5%が好ましい。
【0022】
本発明歯磨剤の粘度は、ハブラシにのせたときの保型性や口の中での分散性、容器からの出しやすさの点から、25℃におけるヘリパス粘度が500〜10000dPa・sであることが好ましく、さらに1000〜5000dPa・sであることが好ましい。なお、上記の粘度は25℃で、ヘリパス粘度計(東機産業株式会社製 TVB-10R)、ロータC、回転速度2.5rpm 1分間の測定条件により測定したものをいう。
【0023】
本発明の歯磨剤は、上記成分を混合して、容器に充填して製造することができる。容器は合成樹脂の容器又は少なくとも最内層が合成樹脂の容器が好ましい。具体的には、容器は合成樹脂によるブローチューブ、合成樹脂の単層又は合成樹脂層を含む積層フィルムで形成されたチューブ容器のように歯磨剤用として通常使用される各種容器の他、合成樹脂性の容器にポンプ式吐出装置や泡吐出装置を取着したポンプ容器、泡吐出容器などが挙げられ、製造性等の点からチューブ容器が好適である。容器の材質は合成樹脂が好ましく、積層フィルムを用いる場合には中間層に紙、アルミニウム等の金属層を含めることもできる。本発明の歯磨剤は、合成樹脂性の容器に充填する場合に好適であり、さらにポリエチレンの容器に充填する場合に好適であり、また、少なくとも最内層がポリエチレンからなるチューブ容器に充填する場合にも好適であって容器の内層へのノニオン性殺菌剤の吸着が抑制される。
【0024】
本発明の歯磨剤においては、ノニオン性殺菌剤の容器への吸着が抑制されるメカニズムは明らかではないが、以下の如くと考えられる。すなわち、γ−シクロデキストリンを配合しない場合、歯磨剤に配合される界面活性剤が水不溶性のノニオン性殺菌剤を水溶化させ、水に溶けたノニオン性殺菌剤が経時的に歯磨剤中で拡散し、容器の内表面に到達して、容器に吸着(溶解又は吸収)されると考えられる。界面活性剤を配合しなければノニオン性殺菌剤は水に溶解しにくく、歯磨剤中で拡散せず安定化するが、泡立たないため唾液が口から垂れる等により長く磨けず、使用感も損なわれる。これに対し、γ−シクロデキストリンを配合すると、γ−シクロデキストリンが水中でのノニオン性殺菌剤の運動性を極端に低下させ、容器への吸着を効果的に抑制するものと考えられる。
【実施例】
【0025】
次に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。なお、表中の含有量の単位は、特記のあるものを除き質量%である。
【0026】
(保存試験)
表1に示した歯磨剤を製造し、一端側にある吐出口が蓋により封止されたチューブ容器の他端側の開口部から充填し、充填後に開口部を融着して密封し、この密封状態で50℃1ヶ月(30日)保存した。この保存試験に用いたチューブ容器の容器本体は、最内層が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であって、外側に印刷層(ニスを含む)を備え、印刷層/低密度ポリエチレン(LDPE)/接着剤/高密度ポリエチレン(HDPE)/接着剤/アルミニウム/接着剤/ポリエチレンテレフタレート(PET)/接着剤/LLDPE、からなる多層樹脂層からなる。このチューブ容器の吐出口と、吐出口から容器本体に連続する肩部はポリエチレン樹脂で形成され、充填された歯磨剤はポリエチレンに接するものとなる。
【0027】
(保存後のトリクロサンの測定)
保存後のトリクロサンの量は、チューブより歯磨剤を搾り出し、以下の方法により測定した。得られた値を表1に示す。表中の値は、保存前を100としたときの保存後のトリクロサンの検出量である。トリクロサン含有量の測定方法を以下に示す。保存後の歯磨剤の各々をチューブ容器から2.0gとり、移動相となる0.1w/v%リン酸含有メタノール水混液(メタノール:水=7:3)を加えて100mlとし、これを十分に攪拌することによりトリクロサンを抽出した。そして、この液の一部をろ過し、ろ液を試験溶液として高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりトリクロサンの吸光度を測定した。トリクロサンの標準液はトリクロサン0.05gにメタノールを加えて100mlとしたものを用い、測定に際し、さらにメタノールにより容量比で10倍に希釈した液を、0.1w/v%リン酸含有メタノール水溶液(メタノール:水=7:3)により容量比で10倍に希釈したものを用いた。
【0028】
HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:日立高速液体クロマトグラム La chrom Elite
カラム:LiChroCART 125-4 Superspher100 RP−8 Endcapped(Merck)
カラム温度:40℃
移動層:0.1w/v%リン酸含有メタノール水溶液(メタノール:水=7:3)
流量:1.0ml/min
サンプル注入量:20μl
測定波長:254nm
HPLCにより測定されたトリクロサンの吸光度のピーク面積から以下の式により試験溶液のトリクロサン含有量を求め、表1に示す。
トリクロサンの含有量=(Y1×X2)/(X1×Y2)
X1:標準溶液の吸光度から得られたトリクロサンのピーク面積
Y1:試験溶液から得られたトリクロサンのピーク面積。
X2:トリクロサン標準品の採取量(g)
Y2:歯磨剤の採取量(g)
【0029】
【表1】

【0030】
表1よりγ−シクロデキストリンをトリクロサンに対して15倍以上配合することにより、トリクロサンのチューブへの吸着が抑制され、搾り出した歯磨剤中にトリクロサンが適正量検出された。一方、この効果はα−シクロデキストリン及びβ−シクロデキストリンでは得られなかった。
【0031】
表2に示す実施例5〜9及び比較例4、5の歯磨剤を製造し、実施例1〜5と同様にして1ヶ月保存後のトリクロサン含有量を測定した。また、歯磨剤の使用感(泡立ち、磨いている最中の垂れなど)及び味をパネラー10名により評価し、10名の評価で最も人数の多い評価を採用した。評価基準は、表2の下部に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表2に示すように、界面活性剤が0.3質量%未満では、泡が立たちにくく歯を磨いているときに液が口から垂れてしまい、使用感が著しく損なわれた。また、2.5質量%を超えると、泡が立ちすぎて口から垂れてしまい、磨いているときの感触が悪く、異味も発生し、さらに保存後のトリクロサンの検出量が低く、チューブに吸着したものと認められる。これに対し、実施例では、保存後のトリクロサンの検出量が高く、使用感でも歯磨剤として十分な評価が得られた。
【0034】
(試験例)
表3記載の溶媒を重水とした試験溶液を用い、ラウリル硫酸ナトリウム存在下での水中でのトリクロサンの運動性をNMR測定により比較した。なお、NMRの測定条件は、以下に示す。
測定機器:Bruke Avance 500(ブルカー株式会社)
プローブ:5mm BBOプローブ
観察核:1H核
測定手法:フリップ角30度(パルス幅4.3μs)のシングルパルス法
測定範囲:10330Hz
積算回数:16回
緩和待ち時間:30秒
【0035】
【表3】

【0036】
その結果を図1に示す。図1の結果から明らかなように、シクロデキストリン無添加、α−シクロデキストリン添加溶液及びβ−シクロデキストリン添加溶液では、トリクロサンのピークがみられたのに対し、γ−シクロデキストリン添加溶液ではトリクロサンのピークが極めて小さいことが認められた。この結果から、γ−シクロデキストリンを含有する場合は、界面活性剤水溶液中のトリクロサンの溶解が抑制されていると判断され、そして、組成物中へのトリクロサンの溶解を抑制し、その運動性を抑制することにより、容器への接触を抑制し、その結果として容器への吸着を抑制しているものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)ノニオン性殺菌剤 0.005〜2質量%、
(B)界面活性剤 0.3〜2.5質量%、
(C)γ-シクロデキストリン 0.5〜10質量%、
(D)水 15〜60質量%
を含有し、成分(A)と(C)の質量比(A:C)が1:15〜1:300である歯磨剤。
【請求項2】
(A)ノニオン性殺菌剤が、イソプロピルメチルフェノール及びトリクロサンから選ばれるものである請求項1記載の歯磨剤。
【請求項3】
(B)界面活性剤がアニオン性界面活性剤である請求項1又は2記載の歯磨剤。
【請求項4】
合成樹脂の容器又は少なくとも最内層が合成樹脂である容器に充填されたものである請求項1から3のいずれか1項記載の歯磨剤。
【請求項5】
合成樹脂がポリエチレンである請求項4記載の歯磨剤。

【図1】
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【公開番号】特開2011−136956(P2011−136956A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298471(P2009−298471)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】