説明

歯磨組成物

【課題】カチオン性殺菌剤由来の高い殺菌効果を奏し、かつ歯磨製剤の成形性、清掃感及び使用感といった一般特性も良好な、カチオン性殺菌剤含有の歯磨組成物を提供する。
【解決手段】(A)カチオン性殺菌剤、(B)研磨剤として炭酸カルシウム又はリン酸カルシウム、及び(C)増粘性無水ケイ酸を含有し、(C)成分の含有量が0.5〜2質量%で、かつ(C)成分/(A)成分の質量比が10〜50であることを特徴とする歯磨組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性殺菌剤の殺菌効果を損なうことなく歯磨組成物に有効に配合する技術に関し、更に詳述するとカチオン性殺菌剤由来の高い殺菌効果が発揮される上、製剤の成形性及び歯磨ブラッシング時の清掃感が良好で、使用感も良い歯磨組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン性殺菌剤は、陽イオン性の電荷を有することで口腔細菌も含めた生態組織への作用性が高く、優れた殺菌効果を示すことが知られており、う蝕予防、歯周病予防の有効成分として多くの口腔ケア製品に用いられている。しかし、陽イオン性であるため意図しない対象への作用性も高く、歯磨組成物に配合した場合には他の歯磨成分との静電的相互作用により結合、吸着が生じるため作用効率の低下が生じていた。また、カチオン性殺菌剤の多くは独特の苦味を有しており、歯磨組成物に配合した場合には苦味が強く使用感が悪くなる傾向があった。
【0003】
これらの課題に対して、アニオン性を示さない歯磨成分で設計された組成物が提案されている。例えば、研磨剤等で配合する無水ケイ酸は表面がアニオン性であることから、カチオン性殺菌剤の吸着を抑えるため研磨剤としてリン酸カルシウムや炭酸カルシウムを使用した組成物が提案されている。また、例えば、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーを併用することで安定配合した組成物(特許文献1参照)、カチオン性ポリマーの併用により成形性を確保した組成物(特許文献2参照)、表面処理された結晶性セルロースを含むことで良好な成形性を確保した組成物(特許文献3参照)などが知られている。
【0004】
しかしながら、無水ケイ酸は、研磨剤として用いる目的以外に、微細粒子の形態で配合することで増粘剤としても用いられ、研磨剤粒子と水溶性高分子物質から形成される粘結状態を強めることで歯磨ブラッシング時における清掃感を高め、良好な使用感を与える機能も有している(特許文献4参照)。このことから、無水ケイ酸を配合しない組成物では、良好な清掃感が得られないが、清掃感を得るために無水ケイ酸を配合するとカチオン性殺菌成分の効果が得られないという問題が生じ、このため、カチオン性殺菌剤含有組成で良好な清掃感と高い殺菌効果とを両立させることは困難であった。
【0005】
なお、苦味に関しては、例えばステビア系甘味剤などによるマスキング作用(特許文献5参照)、樹脂等から抽出されたレジノイド(特許文献6参照)、辛み成分であるカプサイシン(特許文献7参照)などによる緩和効果が知られているが、歯磨組成物において必ずしも苦味の抑制と殺菌効果の両方を満足させるものではなかった。
【0006】
更に、多くの市販の歯磨組成物には、発泡性を確保するためラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤が配合されているが、カチオン性殺菌剤の作用を低下させることからアニオン性界面活性剤を配合しない組成が提案されている。例えば、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーにより泡立ちを確保した組成物(特許文献1参照)、グリセリルエーテル化多価アルコールで発泡性を確保した組成物(特許文献8参照)、非イオン性発泡剤とシクロデキストリンを配合することで優れた発泡性が得られる組成物(特許文献9参照)、アルキル基の炭素数20以上かつ酸化エチレン付加モル数20以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いた組成物(特許文献10参照)などが提案され、カチオン性殺菌剤と併用する方法が知られている。しかし、これら技術では、成形性や清掃感については必ずしも満足できるものではなく、優れた殺菌効果を有しながら歯磨剤の成形性及び清掃感も十分満足させる技術が求められる。
【0007】
カチオン性殺菌剤を配合した口腔用組成物に関しては、上記特許文献に加え、例えば、プラーク除去効果と殺菌効果に優れた口腔用組成物(特許文献11参照)、カチオン性殺菌剤の歯面滞留性を向上させた口腔用組成物(特許文献12参照)、塩化セチルピリジニウムとヒドロキシエチルセルロース、両性界面活性剤を含有する歯磨組成物(特許文献13参照)、陽イオン性活性成分に不活性な陽イオン適合性無機粒子を含有する口腔用組成物(特許文献14参照)などが提案されている。特許文献13には、研磨剤にリン酸水素カルシウム二水和物を用い、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインを配合した歯磨組成物が開示されている。しかしながら、これら従来技術から、カチオン性殺菌剤に、特定の研磨剤と共に増粘性無水ケイ酸を適切に併用することで優れた殺菌効果と清掃感及び成形性とを兼ね備えることは予想し難い。
【0008】
なお、歯磨組成物においては、製剤の経時安定性にかかわる液分離安定性や、歯磨容器から歯ブラシへの採取のし易さに繋がる押出し易さも重要な要素である。ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体やポリエチレングリコールは、歯磨組成物の配合成分として公知の物質であり、非イオン性の粘結剤として用いられている。カチオン性殺菌剤との組み合わせについては、例えば歯間ブラシ上で使用するのに適当な粘度とチキソトロピー性とを有する液状口腔用組成物(特許文献15参照)などに提案され、特許文献2、3、13にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−202121号公報
【特許文献2】特開平06−239725号公報
【特許文献3】国際公開第2008/059881号パンフレット
【特許文献4】特開2010−111648号公報
【特許文献5】特開平08−268855号公報
【特許文献6】特開2001−072562号公報
【特許文献7】特開2004−115382号公報
【特許文献8】特開平05−229923号公報
【特許文献9】特開平08−259428号公報
【特許文献10】特開平10−175832号公報
【特許文献11】特開2001−278758号公報
【特許文献12】特開2002−179541号公報
【特許文献13】国際公開第2007/066497号パンフレット
【特許文献14】特表2009−501225号公報
【特許文献15】特開2002−234826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、カチオン性殺菌剤由来の高い殺菌効果を奏し、かつ歯磨製剤の成形性、清掃感及び使用感といった一般特性も良好な、カチオン性殺菌剤含有の歯磨組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を進めた結果、(A)カチオン性殺菌剤、(B)研磨剤として炭酸カルシウム又はリン酸カルシウム、(C)増粘性無水ケイ酸を配合し、(C)成分の含有量を0.5〜2質量%とし、かつ(C)成分/(A)成分の質量比が10〜50とすることにより、カチオン性殺菌剤由来の優れた殺菌効果が発揮される上、製剤の成形性及び清掃感に優れ、使用感も良好となることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0012】
更に詳述すると、カチオン性殺菌剤は歯磨組成物において殺菌効果が十分発揮され難いという課題があり、従来、殺菌剤の殺菌作用を向上させる手段として界面活性剤との可溶化状態等については検討されてきた。これに対して、本発明者は、固体成分を含む歯磨製剤の分散液における溶液中への殺菌成分の溶出性について検討を進めた結果、カチオン性殺菌剤を配合した歯磨組成物において、無水ケイ酸の存在によりカチオン性殺菌剤の溶出率の大幅な低下が観察され、溶出濃度を高めるには無水ケイ酸の配合量を低減することが有効であることを見出した。更にこの場合、無水ケイ酸の配合量を減らすと成形性や清掃感を満足に得難いが、無水ケイ酸として増粘性無水ケイ酸0.5〜2質量%を、カチオン性殺菌剤に対して適切な配合割合で配合し、かつ研磨剤として炭酸カルシウム又はリン酸カルシウムを併用することによって、意外にも、カチオン性殺菌剤由来の優れた殺菌効果、例えばストレプトコッカス ミュータンス菌等のう蝕原因菌などへの優れた殺菌効果と製剤の成形性及び清掃感とを兼ね備え、使用感も良好となることを見出した。また更に、特定の両性界面活性剤を配合することで上記殺菌効果がより大きく向上することも見出した。
【0013】
本発明によれば、歯磨組成物中においてカチオン性殺菌剤の殺菌効果が効果的に発揮され、口腔細菌への優れた殺菌効果を奏すると共に、増粘性無水ケイ酸を適切に配合することで歯磨剤の一般特性である成形性及び清掃感が満足に得られる。また、カチオン性殺菌剤は舌表面への作用性も高いことから強い苦味が感じられることが多いが、本発明によれば、歯磨ブラッシングにおける苦味が抑えられ、更に歯表面で感じる清掃感が良好となる。
更に、特定の両性界面活性剤を配合することで、苦味の発現を抑えつつ殺菌効果をより向上できる。
【0014】
また、増粘性無水ケイ酸を上記配合量に限定した場合では、経時による液分離の安定性が十分でない場合があり、また、カルシウムイオンが溶出する研磨剤を用いた場合には、経時で粘度が上昇して押出し易さが十分ではない場合があるが、本発明組成物に更に特定の非イオン性の粘結剤を配合することで、これらも改善でき、経時での良好な液分離安定性及び良好な押出し易さも確保できる。
【0015】
従って、本発明は下記の歯磨組成物を提供する。
請求項1:
(A)カチオン性殺菌剤、(B)研磨剤として炭酸カルシウム又はリン酸カルシウム、及び(C)増粘性無水ケイ酸を含有し、(C)成分の含有量が0.5〜2質量%で、かつ(C)成分/(A)成分の質量比が10〜50であることを特徴とする歯磨組成物。
請求項2:
(C)増粘性無水ケイ酸が吸液量2.0〜3.0ml/gのものである請求項1記載の歯磨組成物。
請求項3:
更に、(D)脂肪酸の炭素鎖長が12〜14の脂肪酸アミドプロピルベタイン又は2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを含有する請求項1又は2記載の歯磨組成物。
請求項4:
更に、(E)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、平均分子量が2,000〜20,000のポリエチレングリコールから選ばれる1種以上を含有する請求項1、2又は3記載の歯磨組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カチオン性殺菌剤由来の優れた殺菌効果が発揮される上、製剤の成形性が良好で、十分な清掃感が得られ、しかも苦味が少なく使用感が良好な歯磨組成物を提供できる。更に、経時での液分離安定性や容器からの押出し易さも良好に確保できる。本発明組成物は、う蝕又は歯周病の予防又は治療用として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の歯磨組成物は、練歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤、特にペースト状又はジェル状の練歯磨剤として調製されるもので、(A)カチオン性殺菌剤、(B)研磨剤として炭酸カルシウム又はリン酸カルシウム、及び(C)増粘性無水ケイ酸を0.5〜2質量%含有し、(C)成分/(A)成分の質量比が10〜50のものである。
【0018】
(A)成分のカチオン性殺菌剤は、歯磨組成物に適応できる何れでもよく、例えば、アルキルピリジニウム塩、ベンジル長鎖アルキル短鎖ジアルキルアンモニウム塩及びその誘導体、長鎖アルキル短鎖トリアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。このようなカチオン性殺菌剤としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられ、中でも殺菌力に優れることから塩化セチルピリジニウムがより好適である。
また、これらカチオン性殺菌剤は1種又は2種以上用いることができるが、特に塩化セチルピリジニウムと塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムとの併用が高い殺菌効果を奏することから好適である。
なお、これらのカチオン性殺菌剤は、和光純薬工業(株)、日本油脂(株)、ロンザジャパン(株)などから入手できる市販品を使用できる。
【0019】
カチオン性殺菌剤の配合量は、組成物全体(以下、特に断らない限り配合量はいずれも組成物全体に対する量である。)の0.001〜0.5%(質量%、以下同様。)、特に0.02〜0.1%が好ましい。0.001%未満では十分な殺菌効果が得られない場合があり、0.5%を超えるとカチオン独特の苦みが強く使用感が悪くなる場合がある。
なお、塩化セチルピリジニウムと塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムとを併用する場合は、塩化セチルピリジニウムの配合量を0.01〜0.05%、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムの配合量をそれぞれ0.01〜0.02%とすることができる。
【0020】
(B)成分の炭酸カルシウム及びリン酸カルシウムは研磨剤であり、歯磨組成物に適応できれば何れでも使用できる。なお、炭酸カルシウムとリン酸カルシウムとは、併用すると固化することがあるため、併用しないことが望ましい。炭酸カルシウム又はリン酸カルシウムを(C)成分と適切に併用することで良好な成形性及び清掃感を得ることができる。
炭酸カルシウムとしては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムが挙げられ、いずれも使用できる。平均粒子径としては約3〜15μmのものが好適に用いられる。
リン酸カルシウムとしては、第2リン酸カルシウム2水和物、第2リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム、不溶性メタリン酸カルシウム、第3リン酸カルシウムなどが挙げられる。平均粒子径としては約10〜20μmのものが好適に用いられる。
【0021】
なお、上記平均粒子径は、メジアン径(d50)であり、メジアン径は、粒度分布測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック粒度分布計、分散媒;水)を用いて測定した値である。
【0022】
(B)成分の研磨剤の配合量は、15〜60%、特に20〜50%が好適であり、15%に満たないと清掃力、清掃感ともに十分得られない場合があり、60%を超えると組成物の粘度が高くなり容器からの押出し易さが悪くなる場合がある。
【0023】
(C)成分の増粘性無水ケイ酸は、歯磨組成物に適応できる増粘性の無水ケイ酸であれば何れでもよく、例えば火成性シリカ、沈降性シリカなど、公知の製法で得られたものを使用できる。一般的に、無水ケイ酸はケイ酸ナトリウムと鉱酸の中和反応により合成されるが、湿式法の沈降シリカの製法において反応条件を中性のpH領域、低温、高い塩濃度等の適宜な条件下で、一次粒子の成長を抑えながら凝集を起こさせた後、凝集した状態で一次粒子を成長させることで比表面積が高く、細孔容積や吸油量が高い本発明に適した増粘性無水ケイ酸を得ることができる。
【0024】
増粘性無水ケイ酸は、吸液量2.0〜3.0ml/g、特に2.1〜2.7ml/gのものが、本発明の効果を達成するのに好適である。吸液量が上記値に満たないと歯ブラシ上での成形性が悪くなり、清掃感も低下する場合があり、上記値を超えると十分な殺菌力が得られない場合がある。
なお、吸液量測定方法は下記のとおりである。
試料1.0gを清浄なガラス板上に量りとり、ミクロビュレットを用いて、42.5%グリセリンを少量ずつ滴下しながらステンレス製のへらで液が均一になるように試料を混合した。試料が一つの塊となり、へらでガラス板よりきれいに剥がれるようになったときを終点とし、要した液量(ml)を吸液量とした。
【0025】
また、増粘性無水ケイ酸は、BET法による比表面積が250〜450m2/g、特に350〜420m2/gのものが好ましい。なお、このBET比表面積は、比表面積測定装置(日機装(株)製、自動比表面積計、BET多点法、測定ガス;窒素)を用いて、25℃において測定した値である。
【0026】
増粘性無水ケイ酸としては、例えば、徳山曹達(株)のTokusil、INEOS(株)のSORBOSIL TC15、Rhodia(株)のTIXOSIL 43、Huber(株)のZeodent 113、DSLジャパン(株)のカープレックス #67Qなどが挙げられる。
【0027】
増粘性無水ケイ酸の配合量は、0.5〜2%であり、特に0.8〜1.6%が望ましい。0.5%未満では満足な保形性が得られず歯ブラシ上で型くずれしたり、歯磨ブラッシング時の清掃感が低下し、2%を超えると殺菌力が低下する。
【0028】
(C)増粘性無水ケイ酸/(A)カチオン性殺菌剤の質量比は10〜50であり、好ましくは20〜40である。配合比率が10未満では十分な成形性が得られなかったりカチオン性殺菌剤の苦味が強くなり、50を超えると殺菌力が低下し、高い殺菌力と成型性及び清掃感、使用感とを満足に両立できない。
【0029】
本発明では、更に(D)成分として両性界面活性剤を配合することが好ましく、両性界面活性剤を併用することで殺菌効果がより向上する。両性界面活性剤としては、脂肪酸アミドプロピルベタイン又は2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが好適である。
【0030】
脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、脂肪酸の炭素鎖長が12〜14のものが好ましく、例えばラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインなどが挙げられる。
また、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインとしては、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N−ラウロイル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウムなどが挙げられる。
これら両性界面活性剤の中では、特に脂肪酸アミドプロピルベタイン、とりわけヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが苦味のなさの点から好適であり、苦味の発現を抑えつつ殺菌効果をより効果的に向上できる。
【0031】
ラウリン酸アミドプロピルベタインとしては、例えば、アンヒトール20AB(30%水溶液,花王(株))、ソフタゾリン LPB (30%水溶液,川研ファインケミカル(株))等が、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、アンヒトール55AB(30%水溶液,花王(株))、TEGO BETAIN CK(30%水溶液,Goldschmidt社)、NIKKOL AM−3130N(30%水溶液,日光ケミカルズ(株)などが用いられる。
N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウムとしては、例えば、エナジコールC−40H(40%水溶液(固形分),ライオン(株))、アンヒトール20Y−B(花王(株))、ソフタゾリンCH(30%水溶液,川研ファインケミカル(株))、ソフタゾリンCL−R(30%水溶液,川研ファインケミカル(株))等が、N−ラウロイル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウムとしては、例えばソフタゾリン LHL(27%水溶液,川研ファインケミカル(株))等が用いられるが、いずれの場合も上記に限ったものではない。
【0032】
これら両性界面活性剤を配合する場合、その配合量は0.5〜3%、特に1.0〜2.0%が好適である。0.5%未満では殺菌効果の向上作用が認められない場合があり、3%を超えると苦味が強くなる場合がある。
【0033】
本発明では、更に(E)成分として非イオン性の粘結剤を配合することが好ましい。(E)成分を配合することで、製剤の液分離安定性や収容容器からの押し出し易さを改善できる。非イオン性の粘結剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレングリコールなどが使用できる。
【0034】
ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースは、何れも非イオン性のセルロース誘導体である。
ヒドロキシエチルセルロースとしては、1%水溶液での粘度が50〜10,000mPa・s(B型粘度計、ローターNo.4,30rpm,20℃,2分後の測定値)のものが好適に使用できる。特に、成形性を持たせる点で500mPa・s以上のものが好ましく、溶解性の観点から8,000mPa・s以下のものが好ましい。
ヒドロキシエチルセルロースとして具体的には、ダイセル化学工業(株)からSE600、SE850、SE900などの製品名で販売されているものが使用できる。
【0035】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、粘度が100〜12,000mPa・s(20℃、2%水溶液、日本薬局方の回転粘度計法による測定値)のものが使用できる。特に、成形性を持たせる点で1,000mPa・s以上のものが好ましく、溶解性から10,000mPa・s以下のものが好ましい。
このようなヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、信越化学工業(株)からMETOLOSE 60SH 4000、METOLOSE 60SH 10000、METOLOSE 65SH 4000などの製品名で販売されているものが使用できる。
【0036】
メチルセルロースとしては、粘度が100〜10,000mPa・s(20℃、2%水溶液、日本薬局方の回転粘度計法による測定値)のものが使用できる。特に、成形性を持たせる点で1,000mPa・s以上のものが好ましく、溶解性から5,000mPa・s以下のものが好ましい。
このようなメチルセルロースとしては、信越化学工業(株)からMETOLOSE SM 1500、METOLOSE SM 4000などの製品名で販売されているものが使用できる。
【0037】
また、ポリエチレングリコールとしては平均分子量2,000〜20,000、特に溶解性及び効果の点から3,000〜10,000のものが好ましい。なお、本発明においてポリエチレングリコールの平均分子量は、外原規(医薬部外品原料規格)に収載される測定法による値であり、具体的には、所定量のポリエチレングリコールをピリジン溶液中で無水フタル酸と熱時反応させ、フタル酸エステルとし、フェノールフタレインピリジン溶液を指示薬として水酸化ナトリウム液でポリエチレングリコールフタレート及び過剰のフタル酸を滴定し、アルカリの消費量から平均分子量を求めた。
平均分子量2,000〜20,000のポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000などが挙げられ、これらのポリエチレングリコールは、例えば三洋化成工業(株)から入手することができる市販品を使用できる。
なお、市販品のポリエチレングリコールの平均分子量は医薬部外品原料規格2006記載の平均分子量を示し、ポリエチレングリコール2000(平均分子量1,850〜2,150)、ポリエチレングリコール 4000(平均分子量2,600〜3,800)、ポリエチレングリコール6000(平均分子量7,480〜10,200)、ポリエチレングリコール20000(平均分子量15,500〜25,000)等が挙げられるが、本発明では平均分子量が2,000〜20,000であるものを好適に使用できる。なお、ポリエチレングリコールの市販品は、商品によっては例えばポリエチレングリコール#4000等のように、ポリエチレングリコールと数値の間に#がつく場合がある。
【0038】
(E)成分としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、平均分子量2,000〜20,000のポリエチレングリコールから選ばれる1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することが好適である。
【0039】
(E)成分を配合する場合、その配合量は0.5〜3%、特に1.0〜2.5%が好適である。0.5%未満では液分離安定性に劣る場合がある。3%を超えると製剤粘度が上昇し、押出し易さが悪くなる場合がある。
【0040】
本発明の歯磨組成物は、上記した構成成分に加えて、任意成分として通常、歯磨組成物に配合されるその他の公知成分、例えば(B)成分以外の研磨剤、界面活性剤、粘稠剤、粘結剤、(A)成分以外の薬効成分、甘味料、着色料、防腐剤、pH調整剤、香料等の適宜の成分を本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて配合し得る。
【0041】
研磨剤としては、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、ポリメチルメタアクリレート、不溶性メタリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライトハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイトなどが挙げられる。なお、カチオン性殺菌剤と相互作用を生じる可能性があるシリカ系研磨剤は配合しないことが好ましい。
これら研磨剤の配合量は、(B)成分の炭酸カルシウム又はリン酸カルシウム以外に組成物全体の0〜20%、特に0〜5%が好適である。
【0042】
界面活性剤としては、(D)成分の両性界面活性剤に加え、その他の界面活性剤を配合してもよい。例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、脂肪酸ポリグリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。なお、アニオン性界面活性剤である、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、N−ラウロイルタウリン塩、ラウロイルサルコシン塩、α−オレフィンスルホン酸塩等は、添加するとカチオン性殺菌剤と相互作用を示し殺菌効果を損なうことがあるので、配合しないことが好ましい。
これらの界面活性剤の配合量は0〜10%、特に0〜3%が好適である。
【0043】
粘稠剤としては、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、上記分子量以外のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、エリスリトールなどの糖アルコール、多価アルコールを配合してもよい。粘稠剤の配合量は通常10〜50%、特に15〜40%である。
【0044】
粘結剤としては、(E)成分のセルロース誘導体やポリエチレングリコール以外のもの、例えばポリアクリル酸ナトリウム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガムなどを配合できる。これら粘結剤の配合量は0〜1.5%が好ましい。
【0045】
薬効成分(有効成分)としては、カチオン性殺菌剤以外のもの、例えばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、クロルヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ソルビン酸塩、ヒノキチオール、アズレンスルホン酸塩等の殺菌性物質、デキストラナーゼ、ムタナーゼなどのグルカナーゼ酵素、プロテアーゼ、リゾチーム等の分解酵素、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸等の抗炎症物質、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化ストロンチウムなどの無機塩類、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ゼオライト、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェートなどのキレート性化合物、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、ピリドキシン等の各種ビタミン類、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の天然抽出物などが挙げられる。これら有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0046】
甘味料としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、p−メトキシシンナミックアルデヒド、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK等が配合できる。
【0047】
着色料としては、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号、雲母チタン、酸化チタン等を挙げることができる。
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0048】
pH調整剤としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、酢酸、リン酸、グリセロリン酸やこれらの各種塩、水酸化ナトリウムなどを挙げることができ、所望のpHに応じて適宜選択して使用できる。本発明の歯磨組成物は、pH6〜10、特に7〜9に調整されることが好ましい。
【0049】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これらの天然香料の加工処理(全溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアセデヒド、シトラール、プレゴン、カルビートアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。
また、配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料としては、製剤組成中に0.1〜2.0%使用するのが好ましい。
【0050】
収容容器の材質は特に制限されず、通常、歯磨組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器等が使用できる。例えば直径26mm、口部内径8〜12mmのラミネートチューブ(最外層よりLDPE55/PET12/LDPE20/白LDPE60/EMAA20/AL10/EMAA30/LDPE20/LLDPE30)などを好適に使用できる。なお、上記略号は下記のとおりであり、末尾の数字は厚さ(μm)を示す。
LDPE:低密度ポリエチレン 白LDPE:白色低密度ポリエチレン
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン AL:アルミニウム
PET:ポリエチレンテレフタレート
EMAA:エチレン・メタクリル酸の共重合体樹脂
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。また、形態が水溶液の成分については、表中も含め何れも純分換算の配合量を示した。平均粒子径、吸液量、BET比表面積等はそれぞれ上述の方法での測定値である。
【0052】
〔実施例、比較例〕
表1〜4に示す組成の歯磨組成物(練歯磨)を下記方法で調製し、直径26mm、口部内径8mmのラミネートチューブに充填した。得られた歯磨組成物について、殺菌力、歯ブラシ上での成形性、苦味のなさ、清掃感、製剤の液分離安定性、経時での押出し易さについて、下記方法で評価した。結果を表1〜4に示す。
【0053】
試験歯磨組成物の調製:
精製水にサッカリンナトリウム、フッ化ナトリウム、(E)成分のポリエチレングリコール等の水溶性物質を溶解させ、(C)成分の増粘性無水ケイ酸、ソルビットを加えた後、別途、ポリエチレングリコール#400に(A)成分のカチオン性殺菌剤、(E)成分のヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、粘結剤等を分散させた液を加え、攪拌した。その後、香料、(B)成分の炭酸カルシウム等の研磨剤、(D)成分の脂肪酸アミドプロピルベタイン等の界面活性剤を順次加え、更に減圧下(5.3kPa)で攪拌し、歯磨組成物を得た。製造にはユニミキサー(FM−SR−25,POWEREX CORPORATION社製)を用いた。
【0054】
これら歯磨組成物の調製に用いた各成分の詳細は以下のとおりである。
使用原料としては、塩化セチルピリジニウム(和光純薬工業(株))、塩化ベンザルコニウム(日本油脂(株))、塩化ベンゼトニウム(ロンザジャパン(株))、重質炭酸カルシウム(平均粒径5μm、カルファイン(株))、第二リン酸カルシウム・2水和物(平均粒径20μm、東ソー・アクゾ(株))、増粘性無水ケイ酸(湿式法による沈降性シリカ、吸液量2.5ml/g、BET法による比表面積値405m2/g、商品名 カープレックス #67Q、DSLジャパン株式会社)、ヒドロキシエチルセルロース(SE900、1%水溶液5,000mPa・s、ダイセル化学工業(株)製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(METOLOSE 60SH 4000、2%水溶液4,000mPa・s、信越化学工業(株)製)、メチルセルロース(METOLOSE SM 4000、2%水溶液4,000mPa・s、信越化学工業(株)製)、ポリエチレングリコール4000(平均分子量3,390、PEG−4000S、三洋化成工業(株))、ポリエチレングリコール20000(平均分子量19,800、PEG−20000、三洋化成工業(株))、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(30%水溶液品、TEGO BETAIN CK,Goldschmidt社製)を用いた。また、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ソルビット(70%水溶液品)、キサンタンガム、ポリエチレングリコール#400、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、サッカリンナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、水については医薬部外品原料規格2006に適合したものを用いた。
香料としては、表5に示す香料A〜香料Iを、表6〜11に示すフレーバー組成を用い作成し、配合した。
【0055】
また、下記評価において使用した収容容器は、直径26mm、口部内径8mmのラミネートチューブ(大日本印刷(株)製)であり、層構成は最外層よりLDPE55/PET12/LDPE20/白LDPE60/EMAA20/AL10/EMAA30/LDPE20/LLDPE30、厚さ257μmである。略号の示すところは上記の通りであり、数値は各層の厚さ(μm)を示す。
【0056】
(1)殺菌力の評価方法
歯磨組成物を人工唾液(最終濃度が50mM KCl,1mM KH2PO4,1mM CaCl2,0.1mM MgCl2となるようにし、KOHでpHを7.0に調整し、蒸留水で1Lにした。)で4倍希釈した遠心上清(12,000g×10分間,20℃)を得た。この上清液にTSB培地(Becton、Dickinson company社製)培養液を加え、倍々希釈により、歯磨剤希釈倍率として100〜6,400倍となるように各々の歯磨希釈培養液2mLを作成した。
別途、ストレプトコッカス ミュータンス(S.mutans 10449)菌をTSB培地培養液4mLに添加し、37℃で一晩嫌気培養(80vol%窒素、10vol%二酸化炭素、10vol%水素)し菌液とした。この菌液50μLを上記で作成した歯磨希釈培養液の各々に添加し、37℃、2日間嫌気培養後、菌の生育の有無を目視で判断した。なお、殺菌力は菌の生育が見られなかった最高希釈倍率で示した。
【0057】
殺菌力を以下の基準で評価し、○以上を優れた殺菌力を有すると判断した。
(評価基準)
◎:最高希釈倍率が3,200倍以上
○:最高希釈倍率が1,600倍以上3,200倍未満
△:最高希釈倍率が400倍以上1,600倍未満
×:最高希釈倍率が400倍未満
【0058】
(2)歯ブラシ上での成形性の評価方法
歯磨組成物を上記ラミネートチューブに充填し、歯ブラシ上に1.5g載せたときの歯ブラシ上での形状変化を下記基準で評価した。
(評価基準)
4点:歯ブラシ上での型くずれが観察されない
3点:歯ブラシ上での型くずれが若干観察されるが使用上問題ない
2点:歯ブラシ上で徐々に型くずれする
1点:歯ブラシ上ですぐに型くずれする
【0059】
5回の評価結果を平均し、歯ブラシ上での成形性を下記の4段階で判定した。◎、○のものを歯ブラシ上で成形性が確保される歯磨組成物であると判断した。
(評価基準)
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0060】
(3)使用感(苦味のなさ)の評価方法
被験者10名を用いて、歯磨組成物約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中に感じた苦味を、「ない」、「ややある」、「ある」、の3段階で回答を得た。この回答のうち、「ない」を3点、「ややある」を2点、「ある」を1点として、10名の平均点から以下の基準で使用感を評価した。
(評価基準)
◎:平均点2.5点以上3.0点以下
○:平均点2.0点以上2.5点未満
△:平均点1.5点以上2.0点未満
×:1.5点未満
【0061】
(4)清掃感の評価方法
専門家パネラー10人を用いた官能試験を実施した。歯磨組成物約1gを市販品歯ブラシにのせて、通常歯を磨く方法で3分間ブラッシングを行い、使用中に感じた清掃感について、歯面の刷掃感(汚れを落とす実感)を以下の評点に従って評価した。10名の評価結果の平均値を求め、以下の基準で◎、○の評価が確保されるものを、良好な清掃感が感じられる歯磨組成物であると判断した。
(評点)
4点:刷掃感を強く感じる
3点:刷掃感を感じる
2点:刷掃感を僅かに感じる
1点:刷掃感を殆ど感じない
【0062】
専門パネラー10人の評価結果を平均し、以下の基準で判定した
(評価基準)
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0063】
(5)製剤の液分離安定性の評価
歯磨組成物を上記ラミネートチューブに50g充填し、各組成3本を50℃、1ヶ月間保存した後、わら半紙上に歯磨組成物を10cm押出し、わら半紙に染み出た液の長さを測定し、下記の4段階で液分離の度合いを評価した。なお、製剤の液分離安定性は温度に依存して液分離が促進される傾向を示し、1ヶ月間の保存期間で評価が可能である保存温度として50℃を選択した。
(評点)
4点:液分離は全く観察されない
3点:押出した時、口元に僅かに液分離が認められるが、使用上問題ない
2点:押出した時、口元に液分離が1〜3cm認められる
1点:押出した時、口元に液分離が3cmを超えて認められる
【0064】
3本の評価点の平均値を求め、液分離の度合いを下記4段階で判定した。◎、○となるものを50℃保存時における製剤の液分離安定性に優れる歯磨組成物であると判断した。
(評価基準)
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0065】
(6)経時での押出し易さの評価
歯磨組成物を上記ラミネートチューブに50g充填し、各組成3本を50℃、1ヶ月間保存した後、わら半紙上に歯磨組成物を指先で押出し、練(歯磨組成物)の押出し易さを下記の4段階で評価した。
(評点)
4点:一気に押出して10cm以上の長さで練が出る
3点:一気に押出して5cm以上10cm未満の長さで練が出る
2点:一気に押出して2cm以上5cm未満の長さで練が出る
1点:一気に押出して2cm未満の長さで練が出る
【0066】
3本の評価点の平均値を求め、押出し易さの度合いを下記4段階で判定した。◎、○となるものを50℃保存時における製剤の押出し易さに優れる歯磨組成物であると判断した。
(評価基準)
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0067】
【表1】

*:純分換算した値を示した(以下同様)。
【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
表1〜4の結果から、本発明の歯磨組成物は、ストレプトコッカス ミュータンス菌等の口腔内細菌への優れた殺菌効果が発揮される上、歯ブラシ上での成形性が良好で、苦味が少なく、十分な清掃感を有することがわかった。更に、(D)成分の両性界面活性剤を配合することで殺菌効果がより向上すること、また、(E)成分の非イオン性の粘結剤を配合することで、経時での液分離安定性、容器からの押出し易さが改善することがわかった。
【0072】
下記の歯磨組成物を上記と同様の原料を用いて同様に調製し、直径26mm、口部内径8mmのラミネートチューブ(大日本印刷(株)製)に50g充填した。いずれの歯磨組成物も、殺菌力が高く、かつ歯ブラシ上での成形性、苦味の少なさ、及び清掃感において良好であった。
【0073】
[処方例1]練歯磨組成物
(A)塩化セチルピリジニウム 0.05%
(B)重質炭酸カルシウム 45
(C)増粘性無水ケイ酸 2.0
(D)N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−
ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム** 1.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1.0
ポリエチレングリコール400 3.0
ソルビット* 21
サッカリンナトリウム 0.2
イソプロピルメチルフェノール 0.05
アルギン酸ナトリウム 0.5
キサンタンガム 0.7
香料A 1.3
水 残量
計 100.0%
(C)/(A)=40
**:N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウムには、エナジコールC−40H(ライオン(株))を用い、純分換算した値を示した。
【0074】
[処方例2]練歯磨組成物
(A)塩化セチルピリジニウム 0.05%
(B)重質炭酸カルシウム 25
(C)増粘性無水ケイ酸 1.5
水酸化アルミニウム 20
(D)ラウリン酸アミドプロピルベタイン*** 1.5
ポリエチレングリコール400 3.0
ソルビット* 21
サッカリンナトリウム 0.2
ポリアクリル酸ナトリウム 0.3
アルギン酸ナトリウム 0.6
キサンタンガム 0.3
香料A 1.3
水 残量
計 100.0%
(C)/(A)=30
***:ラウリン酸アミドプロピルベタインとしては、アンヒトール20AB(30%水溶液,花王(株))を用い、純分換算した値を示した。
【0075】
[処方例3]練歯磨組成物
(A)塩化セチルピリジニウム 0.05%
(B)重質炭酸カルシウム 45
(C)増粘性無水ケイ酸 2.0
(D)ラウリン酸アミドプロピルベタイン*** 1.0
ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油 1.5
ポリエチレングリコール400 3.0
ソルビット* 14
グリセリン 10
サッカリンナトリウム 0.2
アルギン酸ナトリウム 0.3
キサンタンガム 0.6
香料A 1.3
水 残量
計 100.0%
(C)/(A)=40
【0076】
【表5】

【0077】
【表6】

【0078】
【表7】

【0079】
【表8】

【0080】
【表9】

【0081】
【表10】

【0082】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン性殺菌剤、(B)研磨剤として炭酸カルシウム又はリン酸カルシウム、及び(C)増粘性無水ケイ酸を含有し、(C)成分の含有量が0.5〜2質量%で、かつ(C)成分/(A)成分の質量比が10〜50であることを特徴とする歯磨組成物。
【請求項2】
(C)増粘性無水ケイ酸が吸液量2.0〜3.0ml/gのものである請求項1記載の歯磨組成物。
【請求項3】
更に、(D)脂肪酸の炭素鎖長が12〜14の脂肪酸アミドプロピルベタイン又は2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを含有する請求項1又は2記載の歯磨組成物。
【請求項4】
更に、(E)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、平均分子量が2,000〜20,000のポリエチレングリコールから選ばれる1種以上を含有する請求項1、2又は3記載の歯磨組成物。

【公開番号】特開2012−56868(P2012−56868A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200557(P2010−200557)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】