説明

歯科液体のためのアプリケータ

【課題】アプリケータの操作をできるだけ容易かつ単純にする。
【解決手段】歯科液体2のための容器3と、歯科液体2を容器3からアプリケータ先端部10へ案内するために使用することができる管とが設けられ、容器は全体が又は部分的に箔16から形成されており、該箔18をマンドレル18により穿孔することができ、歯科液体を押しのけプランジャ4により押し出すことができ、穿孔及び押しのけは、ハンドルを作動させることにより行われ、容器は、歯科液体をアプリケータから押し出すために使用される前進機構がマンドレル18によって箔を穿孔又はスリット形成して開放させるためにも使用されるように、マンドレル18に対して適切な形式で位置決めされており、容器は、歯科液体を排出するために使用されるのと同じ力で開放され、アプリケータの片手操作性は、歯科液体が排出される時だけでなく、容器が開放される時にも達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科液体を含む容器と、歯科液体を容器からアプリケータのアプリケータ先端部の表面へ案内するために使用することができる管とを有する、歯科液体を貯蔵及び提供するための片手で操作するためのアプリケータに関する。
【0002】
本発明は、前記形式のアプリケータを用いて歯科液体を提供する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
歯科液体を提供するためのアプリケータは従来技術に基づき公知である。歯科学において、アプリケータは、歯科液体を患者の口腔スペース内に提供するために使用される。アクセスすることが困難な口腔スペース内のこのような領域をアクセス可能にするために、前記アプリケータの幾つか、例えば米国特許出願公開第2003/0013066号明細書又は米国特許出願公開第2002/0090591号明細書から公知のアプリケータは、傾斜したアプリケータ先端部を有する。
【0004】
内容物を排出するための、自由に可動なフィードプランジャを備えたアプリケータを使用することは、米国特許出願公開第2003/0013066号明細書及び米国特許第6059570号明細書から公知である。
【0005】
アプリケータは、米国特許出願公開第2004/0197730号明細書から公知であり、このアプリケータにおいては、提供される流体は、アプリケータのハンドルに設けられたブレークオフ式アンプルに貯蔵されている。アンプルはブレークオフされ、これにより開放される。塗装ブラシのように構造化されているので、アプリケータ先端部は、その後、アプリケータ先端部を歯科液体で濡らすために、開放されたアンプルに浸漬させることができる。濡らされたアプリケータ先端部は、その後、歯科液体を提供するために使用することができる。
【0006】
アプリケータは両手で操作される必要があり、また繰り返し浸漬されるにもかかわらず操作が面倒であるという点で、これは不都合である。
【0007】
片手で操作することができるアプリケータは、米国特許出願公開第2009/0060624号明細書から公知である。前記アプリケータには、アプリケータから歯科液体を排出するために使用される交換プランジャを前進させる複雑な設計を有する前進機構が装備されている。アプリケータ先端部及び前進機構は、アプリケータからの歯科液体の不意の漏洩を防止するためにキャップにより被覆されている。歯科液体は、不意にアプリケータから漏洩すべきでない化学的に攻撃的な物質を含有する恐れがある。
【0008】
前記形式のアプリケータは、容易に操作されるにもかかわらず不都合である。なぜならば、アプリケータを使用状態に準備するために依然としてキャップを緩める必要があるからである。さらに、キャップは不意に緩む場合があり、歯科液体がアプリケータを超えてキャップに蓄積し、キャップが開放されたときに漏出する恐れがある。さらに、アプリケータの容器は、歯科液体の化学的攻撃性により漏れやすくなる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0013066号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0090591号明細書
【特許文献3】米国特許第6059570号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0197730号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0060624号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は従来技術の欠点を克服することである。特に、治療中に進行するステップをできるだけ妨害しないようにアプリケータの操作ができるだけ容易かつ単純にされる。さらに、構造をできるだけ単純にすることにより容易な取扱いが達成される。同時に、アプリケータは、周囲環境が汚染されることを防止するためにできるだけ安全な歯科液体のための容器を提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題は請求項1に係る装置によって達成される。
【0012】
この文脈では、歯科液体とは、歯科液体が提供されるように十分に流動性のある液体を含む、液体、懸濁液又は混合物を意味すると理解される。この文脈では、シリンジの形式で片手で加えられる圧力は、歯科液体を管を通じて、場合によっては、多岐管を通じて、アプリケータ先端部の表面へ押し出すために十分であってよい。典型的な歯科液体は、例えば漂白剤、接着剤、充填材料、殺菌剤、及びコーティングである。
【0013】
アプリケータ内の容器が開放されるまでは、箔が容器を封止しており、歯科液体が漏洩することを防止しており、これにより、周囲環境の汚染及び歯科液体の損失を防止している。本発明によれば、箔を手動圧力により機械的に穿孔することができる限り、箔の厚さは実質的であることができる。
【0014】
本発明によれば、箔はアルミニウムマルチコンポジット箔であることができる。箔は、熱による封止又は溶接によって、開放側容器縁部に溶接することができる。
【0015】
コーティングも容器の封止を行う。コーティングは、歯科液体のための付加的なバリアを形成し、これにより、歯科液体又は歯科液体の成分による周囲環境の汚染を防止する。この目的のために、コーティングを、歯科液体の成分に適合させることができる。
【0016】
本発明によれば、アプリケータは歯科液体の少なくとも1つの別の成分を有する少なくとも1つの別の容器を有することもでき、これにより、2つの容器内容物を混合することにより混合された歯科液体が得られる。混合された歯科液体の2つの成分が互いに反応すると有利である場合があり、従って、患者への提供又は使用の直前に初めて互いに混合されるべきである。
【0017】
本発明によれば、箔を穿孔するために使用することができるマンドレルがアプリケータに配置されており、これにより、穿孔された箔を備える容器は開放され、マンドレルは好適には管及び容器の領域に配置され、特に好適には管の第1の端部を形成する中空のマンドレルとして提供される。マンドレルの代わりに、箔を切断して開放させるために使用される刃が提供されてよい。
【0018】
容器を開放してアプリケータを使用状態に準備するために、容器の箔をマンドレルに押し付けることができるという点でこれは有利である。このことにより、アプリケータ先端部を被覆する付加的なキャップを有することが省略される。アプリケータから歯科液体を排出するために使用される前進機構が、マンドレルによって箔を穿孔又はスリット形成して開放させるためにも使用されるように、容器はマンドレルに対して安定した状態で位置決めされる。次いで、容器の開口は、歯科液体を排出するために使用されるのと同じ力によって開放される。つまり、歯科液体の排出中だけでなく、容器が開放されたアプリケータを使用状態に準備する間にも、アプリケータを片手で操作することができる。
【0019】
さらに、コーティングされた容器の場合、本発明によれば、コーティングが、好適には200℃を超える温度に耐える、疎水性及び/又は化学的耐性のコーティングであることができる。
【0020】
さらに、本発明によれば、コーティングされた容器のためのコーティングは、非多孔質ポリマコーティング、好適にはパリレンコーティングであることができる。
【0021】
前記形式の非多孔質ポリマコーティングは、その化学的不活性により特に歯科液体に適している。この文脈において、孔の不在は、歯科液体又は歯科液体の成分が実際の容器壁部まで浸透することを防止する。容器壁部のための不十分な機械的安定性を有するか又は高価すぎるコーティングのための材料を使用することがあり得る。ポリ(p−キシレン)、若しくは略してパリレンを、例えばCVD(化学気相成長法)によって数百nmから数十nmの層厚さを備える層として提供することができる。パリレンコーティングは、その化学的不活性により特に歯科液体に適している。さらに、アプリケータの製造及び使用中のパリレンの化学的不活性及び機械的安定性は有利である。別の特定の利点は、パリレンコーティングの耐摩耗性及び低温においてパリレンコーティングを提供する能力である。
【0022】
歯科液体のために慣用的に使用されている溶剤は揮発性であるので、製品に適合したバリア効果を提供することが合理的である。純粋な製品としての、市販されているバルクプラスチック材料は、十分なバリア効果を達成しないので、容器には、付加的な処理作業によって付加的な特徴が提供されなければならない。いわゆるパリレンコーティングによるこの形式の溶剤に関するバリア効果は改良される。これは、貯蔵試験及び試験媒体の質量の損失の試験によって実験的に観察されている。
【0023】
本発明によれば、コーティングの厚さは0.1μm〜100μm、好適には1μm〜10μmであることができる。
【0024】
本発明によれば、管が可撓性であり、容器からの歯科液体の移動のための通路を有し、通路が一方の側において流体通流可能に容器に接続されていることもできる。
【0025】
管の可撓性により、アプリケータは、処理される口腔スペース内の部位のアクセス性に適合させることができる。
【0026】
治療シナリオの間の使用に特に適したアプリケータは、アプリケータ先端部における管の第2の端部において歯科液体の分配のための多岐管を有するようにアプリケータを提供し、多岐管がアプリケータ先端部の表面を形成することによって得られる。
【0027】
この文脈において、本発明によれば、多岐管は通気孔材料を含むか又は通気孔材料から成ることができる。
【0028】
本発明によれば、通気孔材料はスポンジ及び/又は発泡材料であることができ、好適には多岐管は発泡材料の打ち抜かれた一片であることができる。
【0029】
本発明によれば、通気孔材料の孔径は50nm〜500μm、好適には0.5μm〜100μm、特に好適には5μm〜50μmであることもできる。
【0030】
さらに、本発明によれば、多岐管は、交換可能及び/又は置換可能であり、好適には管の第1の端部に差し込むことができる。この手段は、様々な使用のためのアプリケータを提供する。
【0031】
さらに、本発明によれば、多岐管は、流体通流可能に管の通路に接続された多数の通路を有することができる。
【0032】
本発明の別の改良によれば、可撓性の管は、少なくとも45゜、好適には少なくとも90゜、特に好適には少なくとも100゜だけ曲げることができる。
【0033】
本発明の改良によれば、可撓性の管を塑性変形させることができることを提供する。
【0034】
本発明の特に好適な実施の形態によれば、歯科液体は、水、アセトン、エタノール、イソプロパノール、エチルアセテート、MMA及び/又はt−ブタノンを含有することができる。
【0035】
本発明によるアプリケータの特によく封止された実施の形態は、二重壁部である容器を提供することによって達成することができ、内側の壁部、少なくとも内側の壁部の領域は、好適には高密度のプラスチック材料から形成されておりかつ/又は外側の壁部がシクロオレフィンコポリマー(COC)から形成されている。
【0036】
さらに、本発明によれば、アプリケータは、容器から歯科液体を排出するための押しのけプランジャを有することができる。
【0037】
この文脈において、本発明によれば、押しのけプランジャは、容器に対して所定の位置に押しのけプランジャを固定するために使用することができるロックイン機構を有することができる。
【0038】
さらに、本発明によれば、ロックイン機構は、複数のロックイン段部を有することができ、ロックイン段部は、歯科液体の複数の分量を容器から提供することができるように手動で乗り越えることができる。
【0039】
ロックイン機構は、アプリケータの手動操作時に歯科液体の触覚による触知可能な分量分けを可能にする。さらに、押しのけプランジャが配置されているロックイン位置は、歯科液体がアプリケータ内にまだどれだけ存在するかを読み取ることを可能にする。
【0040】
さらに、本発明によれば、アプリケータは、容器を完全に空にするために容積ディスプレーサを有することができる。
【0041】
容積ディスプレーサは押しのけプランジャに配置することができる。容積ディスプレーサの目的は、アプリケータから歯科液体の最後の残留分をも絞り出し、これにより容器の全内部容積を使用できるようにすることである。この目的のために、容積ディスプレーサは、管の領域における容器の内部形状、及び管、又は場合によっては通路に適合させられることができる。
【0042】
本発明によれば、場合によってはその領域を含む、管又は管の通路には、通路又は管が場合によっては容器の一部でもあるように、流体を充填することができる。従って、管の通路は必ずしも空でなくてもよい。
【0043】
本発明の課題は、請求項1に記載のアプリケータを用いて歯科液体を提供する方法によっても達成され、この方法において、歯科液体を提供する前に箔及び/又は容器が開放、特に穿孔される。
【0044】
この文脈において、本発明によれば、アプリケータ先端部、特にアプリケータの多岐管は、歯科液体によってコーティングされる表面上を摺動させられ、歯科液体が可撓性の管及びアプリケータ先端部、特に多岐管を通って提供されるように、圧力を、容器の内部における歯科液体に同時に加えることができる。
【0045】
この文脈において、本発明によれば、圧力を、押しのけプランジャによって歯科液体に加えることもできる。
【0046】
本発明による方法の改良は、アプリケータ先端部、特に多岐管の表面の領域の少なくとも濡れにつながるように圧力を介して歯科液体の移動を提供することができる。
【0047】
本発明によれば、容器の充填レベルを、ロックイン機構の使用により触覚及び/又は聴覚手段によって決定することもできる。
【0048】
歯科液体が片手によって提供されることは特に有利である。
【0049】
また最後に、本発明によれば、濡らされる表面に適した多岐管も、濡らされる表面に歯科液体を提供する前にアプリケータに取り付けることができる。
【0050】
本発明は、コーティング及び箔のそれぞれがアプリケータの封止を改善し、アプリケータを使用するために必要とされるのと同じ手の操作が使用のためにアプリケータの準備をも行うという驚くべき発見に基づく。コーティングは、歯科液体が容器から容易に流出することができないように、歯科液体に関して容器をより確実にかつより持続する形式で封止するための単純な選択肢である。容器を封止するためにも働く箔により、容器は容易に開放される。箔が機械的に開放されるからである。この目的のためには、箔にスリット又は穴を形成すれば十分である。箔を穿孔することもできる。歯科液体を排出するために使用されるのと同じ力を開放のために利用することができる。従って、例えば、押しのけプランジャに圧力を加えることによって箔が降伏するまで、容器をマンドレルに押し付けることができる。
【0051】
特に、箔及びコーティングの組合せにより、アプリケータのための適切な容器を設計することができる。この容器は、容器壁部及び/又は箔のための材料の機械的安定性を利用し、それと同時に、歯科液体に対する、コーティングの第2の材料の化学的不活性を利用する。従って、前記組合せにより、特に薄い容器壁部及び/又は箔の設計が可能になる。
【0052】
従って、本発明は、口腔の領域における表面に歯科液体を直接に提供するためのマルチパートプラスチック容器、又は、場合によっては、いわゆる一回使用("一回用量"又は"一回用途"とも呼称する)のためのパッケージングシステムを提供する。本発明により、使用者は、患者に迅速な、扱いやすい、安全な管理を提供することができる。
【0053】
提供される歯科液体は、箔によって閉鎖された容器内に配置されている。容器、特に容器の後側に圧力を加えることにより、パッケージングシステムが作動し、使用できるように準備される。このために、箔は、アプリケータ先端部の内部において又はアプリケータの内部において、マンドレル状の対応部分によって穿孔される。
【0054】
歯科用途に関連したアセトン含有液("デンタルボンディング")は、対応する容器において別個に準備される。これにより、歯科液体はアプリケータ先端部から空間的に分離されている。両方の部分は、不活性状態においても互いに差し込まれている(配達時における条件)。
【0055】
作動後、貯蔵された歯科液体は、内部に位置するように設計された通路を通じて、濡らされるアプリケータ先端部まで搬送される。作動プロセスは、アプリケータの内部に配置された、特別に成形されたプラスチックシリンダによって引き起こされる。シリンダの配置及び形状は、箔を穿孔若しくは切断して開放させるための補助手段として使用することができる、マンドレル又は刃を含む。最適な開放動作のために、マンドレル又は刃の寸法と、容器の内部の寸法とは、互いに適合するように形成されている。容器からアプリケータ先端部の方向への液体の搬送は、容器の内部空間の容積押しのけにより進行する。
【0056】
アプリケータとリザーバ容器とを接続することにより、片手による操作が可能になる。内部容積の押しのけは、アプリケータ先端部を濡らす。敏感かつ攻撃的なアセトン混合物に対するプラスチック材料のバリア効果を最適化するために、二重チャンバを提供することができる。
【0057】
本発明によるアプリケータ及び方法により、片手による作動、時間を節約する適用、及び準備時間の短縮が可能になる。
【0058】
発明の典型的な実施の形態を3つの概略的な図面に基づいて以下に例示するが、これは発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明によるアプリケータを示す概略的な断面図である。
【図2】本発明による別のアプリケータを示す概略的な断面図である。
【図3】図2に示したアプリケータの概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は、歯科液体2を含んだ、本発明によるアプリケータ1の概略的な断面図を示している。歯科液体2は、円筒状の内部空間を有する容器3内に配置されている。円筒状の押しのけプランジャ4は、アプリケータ1の一方の端部において容器3内に配置されている。押しのけプランジャ4は、円筒軸線に沿って可動に容器3内に配置されており、この押しのけプランジャ4に固定して取り付けられたロッド6を介して前進させることができる。
【0061】
可撓性の管8は、アプリケータ1の前側に配置されており、容器3の内部をアプリケータ先端部10に接続する通路11を有している。押しのけプランジャ4の前側は、管8への移行領域における容器3の形状に適合されている。前記形状は、全ての歯科液体2を押しのけプランジャ4によって容器3の内部から押し出すことができることを保証する容積ディスプレーサである。
【0062】
管8の通路11の出口は、アプリケータ先端部10の領域において、多孔質の通気孔型発泡材料から形成された多岐管12へ通じている。付加的な通路14は、多岐管12に設けられており、アプリケータ1の使用時に多岐管の表面における歯科液体2の分配を補助するようになっている。多岐管12は、アプリケータ先端部10内へ挿入し、手で交換することができる。
【0063】
歯科液体2は、可撓性の箔16によってアプリケータ1内で密封されている。箔16は容器3の内壁を形成している。箔16を裂断して開放するために使用することができるマンドレル18が、管8の通路11が容器3の内部空間へ通じる領域に配置されている。押しのけプランジャ4に圧力を加えることにより、歯科液体2を含んだ箔16は中空のマンドレル18に押し付けられ、これにより箔16は開放される。
【0064】
押しのけプランジャ4をさらに押し付けることにより、歯科液体2は容器3から通路11を通って多岐管12内へ押し出される。この段階において、歯科液体2は多岐管12を濡らし、最終的に多岐管12の表面へ流出する。次いで、歯科液体2によって濡らされた多岐管12の表面は、濡らされる患者の口腔スペースの表面上を拭う。これにより、歯科液体2は、治療される表面へ転移される。押しのけプランジャ4によって加えられる不均一な圧力は、多孔質の多岐管12の吸収容量によって平衡される。
【0065】
図2は、本発明によるアプリケータ21の概略的な断面図を示している。この実施の形態において、歯科液体22は、コーティングされた容器23内に含まれている。押しのけプランジャ24は、容器23の一方の端部において容器23内に配置されており、容器23に対して摺動することができる。
【0066】
容器23も、管28に対して摺動することができる。従って、押しのけプランジャ24は、管28に結合することができる、若しくは管28は、容器23の壁部は管28に対して移動することができるが押しのけプランジャ24は管28に対して移動することができないように構成されている。管28,29の全体は、アプリケータ先端部30の領域において可撓性の管29を有している。通路31は管28,29の2つの部分に配置されており、容器23の内部をアプリケータ先端部30に接続しているか、又は、場合によっては、アプリケータ先端部30に配置された多岐管32に配置されている。多岐管32は、発泡材料の打ち抜かれた一片であり、可撓性の管29の外端部における開口に挿入することができる。
【0067】
容器は、管28に面した容器23の端部において箔36によって閉鎖されている。箔36はマンドレル38に当て付けられており、このマンドレル38は、箔36、つまり容器23を開放させることができる。シール40が、管28が容器23に通じているところに配置されており、このシール40は、容器が管28に沿って摺動させられている時に容器23の側壁を受け入れるようになっている中空空間41に歯科液体22が侵入することを防止する。中空空間41への容器23の側壁の挿入時に、押しのけプランジャ24は、歯科液体22が容器23の内部から管28,29を通じて多岐管32内へ押し出されるように、管28に対して同じ位置にとどまっている。歯科液体22は、通気孔型多岐管32を通じて多岐管32の表面へ進行する。この段階で、歯科液体は、治療される部位へ排出することができるか、又は、場合によっては、治療される部位へ提供することができる。
【0068】
容器23の内面、好適には容器23の内部に面した箔36の面は、容器壁部及び箔36が化学的に攻撃的な歯科液体22によって溶解させられるのを防止するためにパリレンでコーティングされている。歯科液体22は、例えば、アセトン、エチルアセテート、MMA及び/又はt−ブタノンを含有することができる。これらの化学的に攻撃的な物質は、容器23、及びアプリケータ21のその他の部分を構成するポリマを溶解させる恐れがある。その結果、容器23が多孔質になり、歯科液体22が漏出する恐れがある。これは、パリレンコーティングによって防止される。箔36は、歯科液体に含有された物質に対して耐性の、薄い、コーティングされていない、金属箔であることができる。
【0069】
パリレンコーティングは、広範囲の目的のために使用される、極めて薄い、多孔質のポリマコーティングである。パリレンは、広範囲の工業用途を備える、不活性で、疎水性で、光学的に透明で、生物学的に適合性がある、ポリマコーティング材料である。
【0070】
パリレンコーティングは、真空中で、基板材料(容器の壁部、内壁及び外壁)に、気相からの凝縮により、多孔質で透明のポリマ箔として提供される。ガスとして堆積させられることにより、パレリンは、液体に基づく方法によってはコーティングすることができない領域や構造、例えば、鋭いエッジ、先端、又は狭幅及び深いギャップにも到達してこれをコーティングする。0.2μm〜100μmの厚さのコーティングを一回の作業工程で提供することができる。
【0071】
ロックイン機構42は、容器23の外面に配置されており、管28にしっかりと結合された対応ロックイン機構44に係合する。ハンドル46は、排出先端部30とは反対の側のアプリケータ21の端部に配置されており、容器23を中空空間41内へ押し込むために使用することができる。容積ディスプレーサ48は、容器23の内部に配置されており、管28内へ摺動する。容積ディスプレーサ48は、管28の内径よりも僅かに大きな外径を有する円筒状の管である。直径の差は、容積ディスプレーサ48が滑り込まされる場合にも歯科液体22が管28を通じて押し込まれることを保証する。滑り込まされる容積ディスプレーサ48は、管28の有効断面積を減じる。これは、アプリケータ21の利用されない無駄な容積を減じる。従って、使用されずにアプリケータ21に残留する歯科液体22が少なくなる。
【0072】
図3は、図2に示したアプリケータ21の概略的な側面図を示している。弾性の多岐管32が可撓性の管29に取り付けられている。ロックイン機構42が容器23の領域に示されている。容器23を中空空間41内へ滑り込ませるためにハンドル46を使用することができ、ロックイン機構42は対応ロックイン機構44に係合する。
【0073】
ハニカム構造の形式のプロフィル50が中空空間41の領域においてアプリケータ21に提供されている。前記構造は、同じ機械的安定性において材料を節約させる。
【0074】
アプリケータ21のシステムは、複数の個々の構成部材から成り、ほとんどの構成部材は、射出成形法により製造することができる。アプリケータがこの目的のために以下の構成部材、つまり、発泡材料から打ち抜かれた一片32と管28とを含むアプリケータ先端部30、押しのけプランジャ24、及び封止箔36により閉鎖された、二部構成のカートリッジ(内側のカートリッジ及び外側のカートリッジ)を含む容器部分23、を有することは特に有利である。
【0075】
アプリケータ先端部30は、設計された射出成形部分だけでなく、発泡材料32の特別に成形された打ち抜かれた一片からも成る。先端部の目的は、特に、口腔スペースにおける表面管理である。ここで使用される発泡材料32の打ち抜かれた一片は、治療される表面の管理が容易にされるようにアプリケータ先端部30の表面を十分に増大する。さらに、作動中の歯科液体22の制御されない排出がこれにより防止される。
【0076】
いわゆる"マイクロブラシ"アプリケータにおけるPAフィラメントを密集させた形式の硬質プラスチックコアが存在しないことは、この方法において特に有利である。これは、敏感な歯表面のより優しい管理を促進する。
【0077】
この容器23は2つの別個の容器から成り、一方の容器が他方の容器の内部に配置されている。これらの容器は、嵌め合い形式で互いに結合されている。貯蔵される歯科液体2は、内側の容器部分によって収容される。この内側の容器部分は、市販のバルクプラスチック材料(HDPE)、又はBAREX、PEBAX又は(DuPont社により販売される)サーリンから形成された変化形から形成することができる。外側のカートリッジシェルは、(アセトンを含有する)歯科液体に対する付加的なバリア効果を達成するためのCOCプラスチック材料から形成されている。
【0078】
前記説明及び請求項、図面及び典型的な実施の形態に開示された発明の特徴は、単独で又はあらゆる組合せで、発明の様々な実施の形態の実施のために本質的であることができる。
【符号の説明】
【0079】
1,21 アプリケータ
2,22 歯科液体
3,23 容器
4,24 押しのけプランジャ
6 ロッド
8,28 管
10,30 アプリケータ先端部
11,31 通路
12,32 多岐管
14 通路
16,36 箔
18 中空のマンドレル
25 中空空間
29 可撓性の管
38 マンドレル
40 シール
41 中空空間
42 ロックイン機構
44 対応ロックイン機構
46 ハンドル
48 容積ディスプレーサ
50 プロフィル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科液体(2,22)を貯蔵及び提供するための片手操作のためのアプリケータ(1,21)であって、歯科液体(2,22)を含んだ容器(3,23)と、歯科液体(2,22)を容器(3,23)からアプリケータ(1,21)のアプリケータ先端部(10,30)の表面へ案内するために使用することができる管(8,28,29)とが設けられている形式のものにおいて、
前記容器(3,23)が、箔(16,36)から形成されているか、又は少なくとも一部において、容器(3,23)を流体密閉式に閉鎖する箔(16,36)を有しており、
前記箔(16,36)を穿孔するために使用することができるマンドレル(18,38)がアプリケータ(1,21)に配置されており、穿孔された箔(16,36)を備える容器(3,23)が開放しており、前記マンドレル(18,38)が、好適には管(8,29)及び容器(3,23)の領域に配置されており、特に好適には、管(8,28,29)の第1の端部を形成する中空のマンドレル(18)として提供されており、
前記アプリケータ(1,21)は、歯科液体(2,22)を容器(3,23)から押し出すための押しのけプランジャ(4,24)を有しており、さらに、
前記アプリケータ先端部(30)とは反対の側のアプリケータ(21)の端部にハンドル(46)を有しており、該ハンドル(46)は、容器が管(28)上を摺動させられる時に前記容器(23)の側壁を受け入れる中空空間(41)内へ容器(23)を押し込むために使用することができ、前記押しのけプランジャ(24)は、容器(23)の側壁が前記中空空間(41)内へ滑り込まされる時に、管(28)に対して同じ位置にとどまり、これにより、歯科液体(22)が容器(23)の内部から管(28,29)を通じて押し出されるようになっており、容器は、歯科液体をアプリケータから押し出すために使用される前進機構がマンドレルによって箔(16,36)を穿孔又はスリット形成して開放させるためにも使用されるように、マンドレル(18,38)に対して適切な形式で位置決めされており、容器は、歯科液体を排出するために使用されるのと同じ力で開放され、アプリケータの片手操作性は、歯科液体が排出される時だけでなく、容器が開放される時にも達成されることを特徴とする、歯科液体(2,22)を貯蔵及び提供するための片手操作のためのアプリケータ(1,21)。
【請求項2】
前記容器(3,23)がコーティングされている、請求項1記載のアプリケータ(1,21)。
【請求項3】
前記コーティングが、非多孔質のポリマコーティング、好適にはパリレンコーティングである、請求項2記載のアプリケータ(1,21)。
【請求項4】
前記管(8,29)が可撓性であり、歯科液体(2,22)を容器(3,23)から案内するための通路(11,31)を有しており、該通路(11,31)が、一方の側において流体通流可能に容器(3,23)に接続されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のアプリケータ(1,21)。
【請求項5】
特にアプリケータ先端部(10,30)における管(8,28,29)の第2の端部に、歯科液体(2,22)を分配するための多岐管(12,32)が設けられており、該多岐管(12,32)がアプリケータ先端部(10,30)の表面を形成している、請求項1から4までのいずれか1項記載のアプリケータ(1,21)。
【請求項6】
前記多岐管(12,32)が、交換可能及び/又は置換可能であり、好適には管(8,28,29)の第1の端部に差し込むことができる、請求項5記載のアプリケータ(1,21)。
【請求項7】
前記可撓性の管(8,29)が、少なくとも45゜、好適には少なくとも90゜、特に好適には少なくとも100゜だけ曲げることができる、請求項4から6までのいずれか1項記載のアプリケータ(1,21)。
【請求項8】
前記可撓性の管(8,29)を塑性変形させることができる、請求項4から7までのいずれか1項記載のアプリケータ(1,21)。
【請求項9】
前記歯科液体(2,22)が、水、アセトン、エタノール、イソプロパノール、エチルアセテート、MMA及び/又はt−ブタノンを含有する、請求項1から8までのいずれか1項記載のアプリケータ(1,21)。
【請求項10】
前記容器(3,23)が二重壁であり、内側の壁部、少なくとも該内側の壁部の少なくとも領域が、好適には高密度のプラスチック材料から形成されておりかつ/又は外側の壁部がシクロオレフィンコポリマ(COC)から形成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のアプリケータ(1,21)。
【請求項11】
容器(3,23)に対して押しのけプランジャ(4,24)を所定の位置に固定するために使用することができるロックイン機構(42)が設けられている、請求項1から10までのいずれか1項記載のアプリケータ(1,21)。
【請求項12】
前記ロックイン機構(42)が複数のロックイン段部を有しており、該ロックイン段部を、歯科液体(2,22)の複数の分量を容器(3,23)から提供することができるように手動で乗り越えることができる、請求項11記載のアプリケータ(1,21)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−152555(P2012−152555A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−9837(P2012−9837)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【出願人】(399011900)ヘレーウス クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (56)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Kulzer GmbH 
【住所又は居所原語表記】Gruener Weg 11, D−63450 Hanau, Germany
【Fターム(参考)】