説明

歯科用アルギン酸塩印象材

【課題】硬化剤ペースト中に水溶性高分子を配合し、当該水溶性高分子を基剤ペーストと練和することによって相乗的にゲル強度が増加する機構を採用することにより、硬化後のゲル強度が適切であり、印象採得後に得られる硬化物の印象面が滑沢であり、得られる硬化物の寸法安定性および印象用トレーとの接着性が良い歯科用アルギン酸塩印象材を提供すること。
【解決手段】水系の硬化剤ペーストと、水系の基剤ペーストとからなる歯科用アルギン酸塩印象材であって、上記硬化剤ペーストは、硫酸カルシウムと、該硫酸カルシウムとゲル化反応しない水溶性高分子と、フィラーと、水とを含み、上記基剤ペーストは、アルギン酸塩と、遅延剤と、フィラーと、水とを含み、上記水溶性高分子が、上記基剤ペーストとの練和によりゲル化反応する性質を有する高分子である歯科用アルギン酸塩印象材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用アルギン酸塩印象材に関する。さらに詳しくは、歯科において口腔内の印象採得する際に使用される歯科用アルギン酸塩印象材であって、水溶性高分子を配合した水系の硬化剤ペーストを使用し、該水溶性高分子が基剤ペーストとの練和によりゲル化反応することにより、アルギン酸塩と硫酸カルシウムとのゲル化反応により得られるゲルのゲル強度を補填することのできる歯科用アルギン酸塩印象材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科において口腔内の印象を採得するためにアルギン酸塩のゲル化反応を利用した歯科用アルギン酸塩印象材が汎用されている。かかる歯科用アルギン酸塩印象材に求められる性質としては、適度なゲル強度を有すること、印象後に得られる硬化物の印象面が滑沢であること、得られる硬化物の寸法安定性が良いこと、硬化物と印象用トレーとの接着性が高いこと、調製に熟練を要さず、容易であること、アルギン酸塩の粉末が飛散しないこと等が挙げられる。
【0003】
ここで、アルギン酸塩として粉末品を使用する場合、均一に練和されなければ本来予定していたゲル強度が得られず、歯牙の正確な印象が得られないという問題があるところ、均一に練和するためには熟練を要するという問題がある。また、練和の際に粉末のアルギン酸が飛散するという問題もある。
【0004】
特許文献1には、基剤ペーストと硬化剤ペーストとからなる歯科用アルギン酸塩印象材が開示されている。特許文献1の歯科用アルギン酸塩印象材は、ペーストを用いているためアルギン酸塩の粉が舞うような問題は生じない。また、練和も比較的容易であり、練和機による自動化も可能である。そのため、練和が自動化されている場合にはそれほどの熟練を要さない。しかしながら、特許文献1では、アルギン酸塩が硫酸カルシウムと反応してゲル化する機構のみを採用しており、かつ、それぞれのペーストにはフィラー(充填剤)が配合されていない。そのため、得られるゲルの堅牢性およびゲル強度が充分ではない。また、硬化剤ペーストには増粘剤が配合されていないために石膏等の硬化剤が凝集し、液状成分と分離しやすくペーストとしての保存安定性に問題を生じる。また、アルギン酸塩と硫酸カルシウムよりなる硬化物は、保水性が充分でなく、経時的に離水を生じるため、得られる硬化物の寸法安定性が悪い等の問題がある。また、前述の通りフィラーや硬化剤ペーストに増粘剤が配合されていないため、それぞれのペーストを練和する際に練和が不十分であると部分的にゲル化し、継粉を生じるという問題がある。これらの問題に鑑みて、特許文献1に記載のペーストを用いた歯科用アルギン酸塩印象材は実用化に至っていない。
【0005】
また、かかる従来技術に開示されている歯科用アルギン酸塩印象材においても、硬化剤ペーストに水溶性高分子を配合し、当該水溶性高分子が基剤ペーストとの練和により相乗的にゲル強度が増加することについては開示も示唆もない。
【0006】
ところで、硬化剤ペーストを水系ではなく、非水系(疎水性)とすることも検討されている。特許文献2には、アルギン酸塩を含む基剤ペーストを水系とし、硫酸カルシウムを含む硬化剤ペーストにグリセロールやシリコーン油を含有させた歯科用アルギン酸塩印象材が開示されている。また、特許文献3には、アルギン酸塩および水溶性多糖類を含む基剤ペーストを水系とし、硫酸カルシウムを含む硬化剤ペーストにポリブテンを含有させた歯科用アルギン酸塩印象材が開示されている。さらに、特許文献4には、アルギン酸塩を含む基剤ペーストと、硫酸カルシウムおよび有機溶剤からなる硬化剤ペーストとからなる歯科用アルギン酸塩印象材が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2〜4に記載の歯科用アルギン酸塩印象材は、硬化剤ペーストが疎水性(非水系)であるため、水系である基剤ペーストとの均一な練和が困難である。そのため、なるべく均一に練和できるよう硬化剤ペーストの量を基剤ペーストの量よりも少なくすることが試みられているが、その場合においてもペーストであり比較的練和が容易ではあるが、均一な練和には熟練を要する。また、熟練する者が練和したとしても、そもそも口腔内の唾液が水系であるため、非水系の硬化剤ペーストを配合した歯科用アルギン酸塩印象材は、患者の歯牙との接触面において充分には馴染まない。そのため、歯牙と硬化物との間に油膜が生じ、得られる硬化物の印象面が不正確となり、また、口腔の印象採得時に印象用トレーとの分離剤として働きトレーから剥がれるなど問題がある。
【0008】
また、そのような問題を防止するために、歯科用アルギン酸塩印象材のいずれかのペーストに界面活性剤を添加することも検討されているが、界面活性剤の添加により得られる硬化物の滑沢性が悪くなるという問題がある。その結果、当該硬化物をもとに調製される石膏模型の表面性状も悪くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭26−1142号公報
【特許文献2】特開昭58−35105号公報
【特許文献3】特開2002−87922号公報
【特許文献4】特開平7−112910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、硬化剤ペースト中に水溶性高分子を配合し、当該水溶性高分子を基剤ペーストと練和することによって相乗的にゲル強度が増加する機構を採用することにより、硬化後のゲル強度が適切であり、印象採得後に得られる硬化物の印象面が滑沢であり、得られる硬化物の寸法安定性および印象用トレーとの接着性が良い歯科用アルギン酸塩印象材を提供することを目的とする。また上記効果を奏する歯科用アルギン酸塩印象材用硬化剤ペーストおよび歯科用アルギン酸塩印象材用基剤ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の歯科用アルギン酸塩印象材は、水系の硬化剤ペーストと、水系の基剤ペーストとからなる歯科用アルギン酸塩印象材であって、上記硬化剤ペーストは、硫酸カルシウムと、該硫酸カルシウムとゲル化反応しない水溶性高分子と、フィラーと、水とを含み、上記基剤ペーストは、アルギン酸塩と、遅延剤と、水とを含み、上記水溶性高分子が、上記基剤ペーストとの練和によりゲル化反応する性質を有する高分子であることを特徴とする。
【0012】
本発明は、かかる構成を有することにより、水溶性高分子を基剤ペーストと練和することによって相乗的にゲル強度が増加する機構を採用して、硬化後のゲル強度が適切であり、印象採得後に得られる硬化物の印象面が滑沢であり、得られる硬化物の寸法安定性および印象用トレーとの接着性が良い歯科用アルギン酸塩印象材を提供することができる。
【0013】
かかる構成を有することにより、アルギン酸塩が硫酸カルシウムと反応してできるゲルによるゲル強度を、硬化剤ペースト中の水溶性高分子が基剤ペースト中の成分とゲル化反応して得られたゲルにより補填することができるため、基剤ペースト中にアルギン酸塩を過剰に配合する必要がない。
【0014】
上記水溶性高分子が、ガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナンであり、上記基剤ペーストが、カラギーナンまたはキサンタンガムを含んでなることが好ましい。また、上記ガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナンと、上記カラギーナンまたはキサンタンガムとの配合比率が9:1〜1:9(重量比)であることが好ましい。
【0015】
上記水溶性高分子が、キサンタンガムであり、上記基剤ペーストが、ガラクトマンナン、グルコマンナンおよびカラギーナンからなる群れより選択される1または複数の水溶性多糖類を含んでなることが好ましい。また、上記キサンタンガムと、上記水溶性多糖類との配合比率が9:1〜1:9(重量比)であることが好ましい。
【0016】
上記水溶性高分子が、タマリンド種子多糖類であり、上記基剤ペーストが、糖を含んでなることが好ましい。また、上記タマリンド種子多糖類と、上記糖との配合比率が9:1〜1:9(重量比)であることが好ましい。
【0017】
上記水溶性高分子が、ケン化度が85〜95のポリビニルアルコール(以下、PVAという)であり、上記基剤ペーストが、ホウ砂および/またはホウ酸塩を含んでなることが好ましい。また、上記PVAと、上記ホウ砂および/またはホウ酸塩との配合比率が1000:1〜10:1(重量比)であることが好ましい。
【0018】
水溶性高分子が、これらから選択される場合に特に、得られる硬化物のゲル強度が相乗的に増加し、硬化物の離水も少なく、寸法安定性の良いものが得られる。また、印象用トレーとの接着性に優れ、取り扱い性が向上する。
【0019】
上記ガラクトマンナンが、ローカストビーンガム、タラガムまたはグァーガムからなる群より選択される1または複数のガラクトマンナンであることが好ましい。
【0020】
かかる構成を有することにより、カラギーナンやキサンタンガムとの併用によりゲル化し、アルギン酸塩と硫酸カルシウムとのゲル化反応により得られるゲルのゲル強度を充分に補填することができる。
【0021】
また、本発明の歯科用アルギン酸塩印象材用硬化剤ペーストは、硫酸カルシウムと、該硫酸カルシウムとゲル化反応しない水溶性高分子と、フィラーと、水とを含むことを特徴とする。
【0022】
本発明は、かかる構成を有することにより、アルギン酸塩を含有する水性の基剤ペーストと反応する際に、アルギン酸塩と硫酸カルシウムとのゲル化反応により得られるゲルのゲル強度を充分に補填することができる。また、かかる歯科用アルギン酸塩印象材用硬化剤ペーストは水性であるため、水性の基剤ペーストとの練和が容易であり、練和後のペーストを用いて印象を採得した際に得られる硬化物の印象面が滑沢であり、かかる硬化物の寸法安定性および印象用トレーとの接着性の良い歯科用アルギン酸塩印象材を提供することができる。
【0023】
上記歯科用アルギン酸塩印象材用硬化剤ペーストに含まれる水溶性高分子が、タマリンド種子多糖類および/またはケン化度が85〜95のPVAであることが好ましい。
【0024】
水溶性高分子が、これらから選択される場合に特に、得られる硬化物のゲル強度が相乗的に増加し、硬化物の離水も少なく、寸法安定性の良いものが得られる。また、印象用トレーとの接着性に優れ、取り扱い性が向上する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、硬化剤ペースト中に水溶性高分子を配合し、当該水溶性高分子を基剤ペーストと練和することによって相乗的にゲル強度が増加する機構を採用することにより、硬化後のゲル強度が適切であり、印象採得後に得られる硬化物の印象面が滑沢であり、得られる硬化物の寸法安定性および印象用トレーとの接着性が良い歯科用アルギン酸塩印象材を提供することができる。また上記効果を奏する歯科用アルギン酸塩印象材用硬化剤ペーストおよび歯科用アルギン酸塩印象材用基剤ペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の歯科用アルギン酸塩印象材は、水系の硬化剤ペーストと、水系の基剤ペーストとからなる歯科用アルギン酸塩印象材である。
【0027】
硬化剤ペーストについて説明する。硬化剤ペーストは、硫酸カルシウムと、該硫酸カルシウムとゲル化反応しない水溶性高分子と、フィラーと、水とを含む。
【0028】
硫酸カルシウムは、後述する基剤ペースト中のアルギン酸塩がゲル化する際に必要な成分である。硫酸カルシウムとしては、無水石膏、半水石膏、二水石膏の1種以上が好ましい。硫酸カルシウムの含有量としては、基剤ペースト中のアルギン酸塩がゲル化するために必要な量であれば良く、通常は、得られるペースト硬化物に対して3〜40重量%配合される。当該含有量の範囲内にあることにより、後述する水溶性高分子によるゲル強度の補填により、歯科用アルギン酸塩印象材として最適なゲル強度を得ることができる点で好ましい。
【0029】
上記「硫酸カルシウムとゲル化反応しない水溶性高分子」とは、基剤ペーストとの練和によりゲル化する成分である。かかる水溶性高分子を、上記硫酸カルシウムとゲル化反応しないものに限定した理由としては、本発明の目的のひとつがアルギン酸塩と硫酸カルシウムとのゲル化反応により生じるゲルのゲル強度を補填することにあるからである。すなわち、硬化剤ペーストを基剤ペーストと練和したときにアルギン酸塩と硫酸カルシウムとのゲル化反応と同時期に水溶性高分子のゲル化反応が開始されることが好ましく、仮に当該水溶性高分子が硫酸カルシウムと反応するものである場合には、基剤ペーストと硬化剤ペーストとを混合せずとも、硬化剤ペースト単独でゲル化反応が進行してしまい、基剤ペーストと練和したとしてもアルギン酸塩のゲル化反応により得られるゲルのゲル強度を充分に補填することができない。そのため、硬化剤ペースト中に配合される水溶性高分子としては、キサンタンガム、ラムザンガム、カラギーナン(κ、λ、ι、あるいはそれらのハイブリッド型など共重合物)、ガラクトマンナン(ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム、フェヌグリークガム)、タマリンド種子多糖類(ガラクトース側鎖を除去したものも含む)、カシアガム、グルコマンナン、サイリウムシードガム、大豆多糖類、ペクチン(ローメトキシル型、ハイメトキシル型、ローメトキシアミド型、シュガービード由来のペクチンなど)、アラビアガム、ガティガム、トラガントガム、カラヤガム、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、プルラン、カードラン、マクロホモプシスガム、ゼラチン、寒天、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース誘導体、水溶性ヘミセルロース、加工・化工でん粉、未加工でん粉(生でん粉)、デキストリン、ヒアルロン酸ナトリウム、PVA、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどのうち、硫酸カルシウムと反応してゲル化反応するものは含まれない。なお、少量を配合すると増粘し、配合量を増加させることによりゲル化する性質を有する水溶性高分子であっても、歯科用アルギン酸塩印象材として使用する濃度範囲においてゲル化しないものは問題なく使用することができる。
【0030】
これら水溶性高分子の含有量としては、使用する水溶性高分子の種類によって発現するゲル強度に差があるため一律に含有量の範囲を設定することが困難である。また、アルギン酸塩印象材のゲル強度はJIS T6505(歯科用アルギン酸塩印象材)において、永久ひずみが5%以下、弾性ひずみが5%以上20%以下、圧縮強さが0.35MPa以上と規定されており、適合させることが必須であるため、かかる規格に合致するよう添加量を調整すれば良い。
【0031】
フィラーとしては、歯科用アルギン酸塩印象材に使用される既知のものをすべて使用することができる。既知のフィラーとしては、たとえば、珪藻土、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、パーライト、マイカなどが用いられる。フィラーの含有量としては、硬化剤ペースト中で2〜50重量%である。
【0032】
またその他の成分として、石膏模型の表面改質剤として金属フッ化物やケイフッ化物を添加することも可能である。具体的には、ヘキサフルオロチタン酸ナトリウム、ヘキサフルオロチタン酸カリウム、ヘキサフルオロジルコン酸カリウム等が挙げられる。その他、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、珪酸アルミニウム等の金属酸化物、金属水酸化物、着色剤、香料等の添加剤を必要に応じ配合して良い。
【0033】
水は、硬化剤ペーストの溶媒となる成分である。水の種類としては特に制限されず、たとえば、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水などを使用することができる。水の含有量は、前述の水溶性高分子の含有量により増減するため一律に設定することが困難である。そのため、ペーストとするための目安としては、20〜80重量%とすることができる。
【0034】
このように、硬化剤ペーストを構成する溶媒が水であるため、同じく水系の基剤ペーストと容易に練和することができる。また、練和後のペーストの安定性が良く、印象採得時に歯牙との間に油膜が形成されることもない。そのため、滑沢な表面を有する印象を採得することができ、その結果、得られた硬化物をもとに作製された石膏模型の表面性状も優れたものとなる。
【0035】
基剤ペーストについて説明する。基剤ペーストは、アルギン酸塩と、遅延剤と、フィラーと、水とを含む。
【0036】
アルギン酸塩は、前述の硫酸カルシウムとゲル化反応を起こすことによりゲルを形成するゲル化剤である。アルギン酸塩を用いた歯科用アルギン酸塩印象材は、従来汎用されていた寒天を用いた印象材と比較して、経済性および印象材としての強度等の点で利便性が良い。アルギン酸塩としては、アルギン酸のナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエタノールアミンの塩の1種以上が好ましい。アルギン酸塩の含有量としては、硬化剤ペースト中の硫酸カルシウムとのゲル化反応によりゲル化するために必要な量であれば良く、通常は、基剤ペースト中に2〜25重量%配合される。当該含有量の範囲内にあることにより、前述の水溶性高分子によるゲル強度の補填により、歯科用アルギン酸塩印象材として最適なゲル強度を得ることができる点で好ましい。
【0037】
遅延剤は、アルギン酸塩と硫酸カルシウムとのゲル化反応を遅延させるために含有される。すなわち術者である歯科医師等が、硬化剤ペーストと基剤ペーストとを練和した際に所望の時間よりも早くゲル化反応は起こることを防ぐために含有される。遅延剤としては、歯科用アルギン酸塩印象材に使用される既知のものをすべて使用することができる。既知の遅延剤としては、たとえば、アルカリ金属のリン酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩等を用いることができる。遅延剤の含有量としては、基剤ペースト中で0.1〜5.0重量%である。遅延剤は、石膏(硫酸カルシウム)と反応して遅延剤としての機能が低下するものがあるため、基剤ペーストに配合される。
【0038】
フィラーとしては、前述の歯科用アルギン酸塩印象材に使用される既知のものをすべて使用することができる。フィラーの含有量としては基剤ペースト中で2〜60重量%である。
【0039】
水は、基剤ペーストの溶媒となる成分である。水の種類としては特に制限されず、前述のものを使用することができる。水の含有量は、前述の基剤ペーストと硬化剤ペーストとを練和することが困難とならない範囲において適宜設定することができる。目安としては、10〜80重量%とすることができる。
【0040】
次に、硬化剤ペースト中の水溶性高分子と、基剤ペーストとの練和によりゲル化反応を起こすことについて説明する。
【0041】
前述の硬化剤ペースト中の水溶性高分子は、基剤ペーストと練和することによりゲル化反応を起こすことを特徴とする。すなわち、このようにゲル化反応を起こすことにより、アルギン酸塩と硫酸カルシウムとのゲル化反応により得られるゲルのゲル強度を補填することができる。また、水溶性高分子によるゲル化反応は、単独で水溶性高分子を用いた場合と比較して顕著にゲル強度が増大することを特徴とする。使用できる水溶性高分子の具体例としては、たとえば、
(1)水溶性高分子としてガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナンを含有し、基剤ペーストにカラギーナンまたはキサンタンガムが含有されている場合、
(2)水溶性高分子としてキサンタンガムを含有し、基剤ペーストにガラクトマンナン、グルコマンナンおよびカラギーナンからなる群れより選択される1または複数の水溶性多糖類を含有されている場合、
(3)水溶性高分子としてタマリンド種子多糖類を含有し、基剤ペーストに糖が含有されている場合、
(4)水溶性高分子としてケン化度が85〜95のPVAを含有し、基剤ペーストにホウ砂および/またはホウ酸塩が含有されている場合、
が挙げられる。これらの水溶性高分子は、それぞれ単独で、少量を水に溶解させた場合には、ゲル化せず増粘するのみであったり、ゲル化したとしても充分なゲル強度を示すことがないものである。しかしながら、例示したような組み合わせで用いることにより、極端に多くの量を添加せずとも単独使用時には得られなかったような大きなゲル強度を示すゲルを得ることができる。その結果、アルギン酸塩と硫酸カルシウムとのゲル化反応により得られたゲルのゲル強度を充分に補填することが可能となり、過剰量のアルギン酸塩を使用する必要もなく、かつ、過剰量の水溶性高分子を単独で使用する必要がなくなる。また、得られるゲルは保水性に優れ、離水を生じにくいため、印象採得後の硬化物が離水により収縮することもなく、寸法安定性が良好となる。
【0042】
上記した各水溶性高分子について説明する。ガラクトマンナンは、β−D−マンノースがβ−1、4結合した主鎖と、α−D−ガラクトースがα−1、6結合した側鎖からなる構造を有する水溶性多糖類である。ガラクトマンナンの例としては、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガム、フェヌグリークガム等があり、マンノースとグルコースの比率は、ローカストビーンガムで約4:1、タラガムで約3:1、グァーガムで約2:1、フェヌグリークガムで約1:1である。ガラクトマンナンは、硫酸カルシウムと反応しないため、硬化剤ペースト中にも配合することが可能である。これらの中でも、基剤ペーストとの練和により相乗的にゲル強度が大きくなりやすい観点から、ローカストビーンガム、タラガム、グァーガムを使用することが好ましく、精製されたローカストビーンガムを使用することがさらに好ましい。
【0043】
グルコマンナンは、D−グルコースとD−マンノースがβ−1、4結合した構造を有し、グルコースとマンノースの比率が約2:3の水溶性多糖類である。精製度が低いと独特の刺激臭があるので、精製度の高いものを使用することが好ましい。グルコマンナンは、硫酸カルシウムと反応しないため、硬化剤ペースト中にも配合することが可能である。
【0044】
カラギーナンは、紅藻類より抽出された水溶性多糖類であり、ガラクトースがβ−1、3結合した構造を持っている。カラギーナンにはκ、λ、ι、μ、ν、θ、ζ、πの8成分があることが見いだされているが、商業的に汎用されているのはκ、λ、ιの3種類である。そのうち、ゲル化するのはκ、ιカラギーナンである。κカラギーナンがガラクトース基2つに対して1つ、λカラギーナンがガラクトース基2つに対して3つの半エステル化した硫酸基を持つのに対し、ιカラギーナンはガラクトース基2つに対して2つの硫酸基を持つ。κカラギーナンが脆くて硬いゲルを形成するのに対し、ιカラギーナンは弾力のあるゲルを形成し、カリウム、カルシウムなどのカチオン存在下でゲル強度が増大する。そのため、本発明では、基剤ペースト中に配合する。
【0045】
キサンタンガムは、キサントモナス・キャンペストリスが菌体外に産出する多糖類で、β−D−グルコースが1、4結合したアンヒドログルコースにアセチル化したD−マンノース、D−グルクロン酸、D−マンノースからなる側鎖が結合した構造を有する水溶性高分子である。キサンタンガムは、硫酸カルシウムと反応しないため、硬化剤ペースト中にも配合することが可能である。なお、キサンタンガム単独では、ゲル化効果が認められない。
【0046】
上記ガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナンを硬化剤ペースト中の水溶性高分子とし、上記カラギーナンまたはキサンタンガムを基剤ペーストに配合する場合において、上記ガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナンと、上記カラギーナンまたはキサンタンガムとの配合比率としては、9:1〜1:9(重量比)が好ましく、6:4〜1:9がさらに好ましく、5:5〜3:7が特に好ましい。かかる配合比率で配合することにより、得られるゲルのゲル強度が相乗的に大きくなり、アルギン酸塩と硫酸カルシウムとのゲルのゲル強度を充分に補填することが可能となる。
【0047】
また、上記キサンタンガムを硬化剤ペースト中の水溶性高分子とし、上記ガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナンを基剤ペーストに配合する場合において、上記キサンタンガムと、上記ガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナンとの配合比率としては、9:1〜1:9(重量比)が好ましく、9:1〜4:6がさらに好ましく、8:2〜5:5が特に好ましい。かかる配合比率で配合することにより、得られるゲルのゲル強度が相乗的に大きくなり、アルギン酸塩と硫酸カルシウムとのゲルのゲル強度を充分に補填することが可能となる。
【0048】
タマリンド種子多糖類は、マメ科タマリンドの種子の胚乳部分より抽出して得られた水溶性高分子である。タマリンド種子多糖類は、糖またはアルコールと反応してゲル化反応が進行する。そのため、水溶性高分子としてタマリンド種子多糖類を用いる場合は、基剤ペーストが好ましい。糖としては、特に制限されないが、歯科用アルギン酸塩印象材の用途を考慮すると、糖アルコール、特にキシリトール、エリスリトール、マルチトールなどが好ましい。また、アルコールとしては、水溶性であれば特に制限されないが、歯科用アルギン酸塩印象材の用途を考慮すると、エタノールが好ましい。
【0049】
上記タマリンド種子多糖類を硬化剤ペースト中の水溶性高分子とし、上記糖またはアルコールを基剤ペーストに配合する場合において、上記糖またはアルコールとの配合比率としては、9:1〜1:9(重量比)が好ましく、5:5〜1:9がさらに好ましく、4:6〜2:8が特に好ましい。かかる配合比率で配合することにより、得られるゲルのゲル強度が相乗的に大きくなり、アルギン酸塩と硫酸カルシウムとのゲルのゲル強度を充分に補填することが可能となる。
【0050】
PVAは、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルをアルカリや酸などでケン化して得られる水溶性高分子である。PVAは、ケン化度および重合度により分類される。また、本発明においてPVAは、一部にスルホン酸やカルボン酸等を持つ変性PVAを含む。
【0051】
変性PVAとは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーと、ビニルエステル単位を有するモノマーを共重合させた後に、ケン化させてカルボニル基含有PVAを得て、その後、洗浄、乾燥を行って得られるものであり、主鎖にカルボキシル基を起点とする不飽和二重結合をランダムに導入させたものである。
【0052】
本発明に用いられるPVAは、水に対する溶解度が優れる観点から、そのケン化度は80%以上が好ましく、85%以上が特に好ましい。また、重合度としては、100〜5000が好ましく、200〜4000がさらに好ましく、500〜2000が特に好ましい。かかる範囲にある場合、水に対する溶解度が優れる。PVAは、ホウ砂および/またはホウ酸塩との架橋反応によりゲル化する。そのため、水溶性高分子としてPVAを用いる場合は、基剤ペーストにホウ砂および/またはホウ酸塩を配合することが好ましい。
【0053】
上記PVAと、上記ホウ砂および/またはホウ酸塩との配合比率としては、1000:1〜10:1(重量比)が好ましく、500:1〜20:1が特に好ましい。かかる配合比率で配合することにより、得られるゲルのゲル強度が相乗的に大きくなり、アルギン酸塩と硫酸カルシウムとのゲルのゲル強度を充分に補填することが可能となる。
【0054】
以上、本発明の歯科用アルギン酸塩印象材によれば、硬化剤ペースト中に水溶性高分子を配合し、当該水溶性高分子を基剤ペーストと練和することによって相乗的にゲル強度が増加する機構を採用することにより、硬化後のゲル強度が適切であり、印象採得後に得られる硬化物の印象面が滑沢であり、得られる硬化物の寸法安定性および印象用トレーとの接着性が良い歯科用アルギン酸塩印象材を提供することができる。
【0055】
次に、本発明の歯科用アルギン酸塩印象材用硬化剤ペーストについて説明する。本発明の歯科用アルギン酸塩印象材用硬化剤ペーストは、硫酸カルシウムと、該硫酸カルシウムとゲル化反応しない水溶性高分子と、フィラーと、水とを含むことを特徴とする。
【0056】
本発明にかかる歯科用アルギン酸塩印象材用硬化剤ペーストに使用する硫酸カルシウム、該硫酸カルシウムとゲル化反応しない水溶性高分子、フィラー、水としては、前述のものと同じものを使用することができるため、説明を省略する。なお、水溶性高分子については、本発明の歯科用アルギン酸塩印象材用硬化剤ペーストに用いる水溶性高分子基剤と相乗的に反応してゲル強度が大きくなるようなその他の水溶性高分子を予め基剤ペーストに配合しておく必要がない点で、タマリンド種子多糖類および/またはケン化度が85〜95のポリビニルアルコールを使用することが好ましい。これらは、基剤ペースト中にその他の水溶性高分子を配合しておかなくとも、基剤ペースト中に糖またはアルコールや、ホウ砂および/またはホウ酸塩を配合させておくことにより相乗的なゲル強度の向上が得られるためである。
【0057】
本発明の歯科用アルギン酸塩印象材用硬化剤ペーストは、すなわち、従来技術で開示されていたような非水系のものではない。そのため、同じく水溶性の基剤ペーストと練和する際に容易に練和が可能である。また、水溶性高分子を配合していることから、アルギン酸塩を含有する基剤ペーストと練和した際に、アルギン酸塩と硫酸カルシウムとのゲル化反応により得られるゲルのゲル強度を補填することができる。さらに、印象採得時においても歯牙との間に油膜を形成することもない。そのため、本発明の歯科用アルギン酸塩印象材用硬化剤ペーストを使用した場合には、印象採得後に得られる硬化物が滑沢で印象用トレーとの接着性が良好であり、また、かかる硬化物をもとに得られる石膏模型の表面性状も優れたものが得られる。
【0058】
次に、本発明の歯科用アルギン酸塩印象材を実施例により具体的に説明する。
【実施例】
【0059】
基剤ペーストの作製
アルギン酸塩(粘度:500〜600cps、分子量:300000〜500000)6重量部、ピロリン酸ナトリウム1重量部、珪藻土5重量部、炭酸カルシウム6重量部、残部精製水を配合したペーストに表1記載の配合比率の水溶性高分子を配合して基剤ペーストを調製した。

硬化剤ペーストの作製
石膏(二水塩)30重量部、珪藻土6重量部、炭酸カルシウム10重量部、残部精製水を配合したペーストに表1記載の配合比率の水溶性高分子を配合して硬化剤ペーストを調製した。
なお、比較例1は、基剤ペーストおよび硬化剤ペーストのフィラー(珪藻土、炭酸カルシウム)を配合せず、比較例2の硬化剤ペーストは、残部の精製水の代わりに流動パラフィンを用いた。
【0060】
評価方法を以下に示す。
(ゲル強度)
各実施例、比較例において調製した硬化剤ペーストおよび基剤ペーストの練和は、練和装置「スーパーらくねる」(株式会社ジーシー社製)を用いて練和した。基剤ペーストと硬化剤ペーストとの練和比は、体積比で4:1とした。得られたペーストについて、JIS T6505(歯科用アルギン酸塩印象材)に準じて、永久ひずみ、弾性ひずみおよび圧縮強さを測定した。結果を表1に示す。

(接着性)
各実施例、比較例において調製した硬化剤ペーストおよび基剤ペーストを、練和装置「スーパーらくねる」(株式会社ジーシー社製)を用いて練和した。基剤ペーストと硬化剤ペーストとの練和比は、体積比で4:1とした。得られたペーストを、印象用金属トレー(株式会社ジーシー社製、製品名:インプレッショントレー)に50g載せ、室温にてレジン製顎模型(株式会社ニッシン社製)に圧接し、5分間放置後トレーを顎模型から撤去する際の印象材の接着性について以下の観点で評価した。結果を表1に示す。

接着性の評価基準
○:印象材がトレーに保持され接着しているもの
△:印象材はトレーと一緒に剥離したが、剥がすと容易に剥離したもの
×:印象材がトレーより剥離したもの

(表面性状)
各実施例、比較例において調製した硬化剤ペーストおよび基剤ペーストを、練和装置「スーパーらくねる」(株式会社ジーシー社製)を用いて練和した。基剤ペーストと硬化剤ペーストとの練和比は、体積比で4:1とした。得られたペーストを、JIS T6505(歯科用アルギン酸塩印象材)の「石膏との適合性」に準じて印象採得後、印象面に硬石膏(株式会社ジーシー社製、製品名:ニュープラストーン)を注入し、表面粗さ計(小坂研究所社製、品番:Surfcorder SE-3300)を用いて中心線平均粗さ(Ra)を測定した。得られた石膏模型の表面粗さの結果を表1に示す。

(離水性)
各実施例、比較例において調製した硬化剤ペーストおよび基剤ペーストを、練和装置「スーパーらくねる」(株式会社ジーシー社製)を用いて練和した。基剤ペーストと硬化剤ペーストとの練和比は、体積比で4:1とした。得られたペーストを、内径25mm、高さ15mmの円筒状の型に注入し、硬化後試料をシャーレ内に敷いた濾紙の上に置き、23℃の恒温室において180分間放置して濾紙中に移行した水分量を測定した。離水率は、次により算出した。結果を表1に示す。
離水率(%)=(テスト後の濾紙重量(g) −テスト前の濾紙重量(g) )
/試料重量(g) ×100
【0061】
実施例1〜9、比較例1〜2
表1に示す配合組成に従って、硬化剤ペーストおよび基剤ペーストを調製し、各評価に供した。
【0062】
表1に示されるように、フィラーを配合しなかった比較例1は、圧縮強さが小さく、接着性が良好でなかった。また、離水が大きく、寸法安定性が悪いことが予想された。流動パラフィンを配合した比較例2は、接着性が悪く、硬化物の表面性状が荒く滑沢でなかった。
一方、実施例1〜9によれば、適度なゲル強度を有し、かつ、接着性および表面性状が良好であり、かつ、離水の少ない硬化物が得られることが判った。
【0063】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の歯科用アルギン酸塩印象材は、歯科において口腔内の印象を採得する際に使用される歯科用アルギン酸塩印象材であって、水溶性高分子を配合した水系の硬化剤ペーストを使用した歯科用アルギン酸塩印象材であり、硬化剤ペースト中に水溶性高分子を配合し、当該水溶性高分子を基剤ペーストと練和することによって相乗的にゲル強度が増加する機構を採用することによって、硬化後のゲル強度が適切であり、印象採得後に得られる硬化物の印象面が滑沢であり、得られる硬化物の寸法安定性および印象用トレーとの接着性が良い歯科用アルギン酸塩印象材を提供することができるため、たとえば歯科の分野などに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系の硬化剤ペーストと、水系の基剤ペーストとからなる歯科用アルギン酸塩印象材であって、
前記硬化剤ペーストは、硫酸カルシウムと、該硫酸カルシウムとゲル化反応しない水溶性高分子と、フィラーと、水とを含み、
前記基剤ペーストは、アルギン酸塩と、遅延剤と、フィラーと、水とを含み、
前記水溶性高分子が、前記基剤ペーストとの練和によりゲル化反応する性質を有する高分子であることを特徴とする歯科用アルギン酸塩印象材。
【請求項2】
前記水溶性高分子が、ガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナンであり、
前記基剤ペーストが、カラギーナンまたはキサンタンガムを含んでなる請求項1記載の歯科用アルギン酸塩印象材。
【請求項3】
前記ガラクトマンナンおよび/またはグルコマンナンと、前記カラギーナンまたはキサンタンガムとの配合比率が9:1〜1:9(重量比)である請求項2記載の歯科用アルギン酸塩印象材。
【請求項4】
前記水溶性高分子が、キサンタンガムであり、
前記基剤ペーストが、ガラクトマンナン、グルコマンナンおよびカラギーナンからなる群れより選択される1または複数の水溶性多糖類を含んでなる請求項1記載の歯科用アルギン酸塩印象材。
【請求項5】
前記キサンタンガムと、前記水溶性多糖類との配合比率が9:1〜1:9(重量比)である請求項4記載の歯科用アルギン酸塩印象材。
【請求項6】
前記水溶性高分子が、タマリンド種子多糖類であり、
前記基剤ペーストが、糖を含んでなる請求項1記載の歯科用アルギン酸塩印象材。
【請求項7】
前記タマリンド種子多糖類と、前記糖との配合比率が9:1〜1:9(重量比)である請求項6記載の歯科用アルギン酸塩印象材。
【請求項8】
前記水溶性高分子が、ケン化度が85〜95のポリビニルアルコールであり、
前記基剤ペーストが、ホウ砂および/またはホウ酸塩を含んでなる請求項1記載の歯科用アルギン酸塩印象材。
【請求項9】
前記ポリビニルアルコールと、前記ホウ砂および/またはホウ酸塩との配合比率が1000:1〜10:1(重量比)である請求項8記載の歯科用アルギン酸塩印象材。
【請求項10】
前記ガラクトマンナンが、ローカストビーンガム、タラガムまたはグァーガムからなる群より選択される1または複数のガラクトマンナンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科用アルギン酸塩印象材。
【請求項11】
硫酸カルシウムと、該硫酸カルシウムとゲル化反応しない水溶性高分子と、フィラーと、水とを含む歯科用アルギン酸塩印象材用硬化剤ペースト。
【請求項12】
前記水溶性高分子が、タマリンド種子多糖類および/またはケン化度が85〜95のポリビニルアルコールである請求項11記載の歯科用アルギン酸塩印象材用硬化剤ペースト。

【公開番号】特開2012−153633(P2012−153633A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13291(P2011−13291)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(591038325)株式会社デントロケミカル (4)
【Fターム(参考)】