説明

歯科用シリコーン印象材組成物

【課題】 硬化前の練和物の粘度は高く、硬化後の硬度は低いシリコーン印象材を提供する。
【解決手段】
A)a)1分子中に脂肪族不飽和炭化水素を少なくとも2個を有し、25℃における粘度が100万mPa・s以上のオルガノポリシロキサンと、b)1分子中に脂肪族不飽和炭化水素を少なくとも1個を有し、25℃における粘度が100〜5000mPa・sであるオルガノポリシロキサン比率が,a:b=1:0.5〜10であるオルガノポリシロキサンの混合物、
B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
C)シリコーン可溶性白金化合物、
D)官能基を有しないオルガノポリシロキサン、
E)無機充填材、
とから構成されることを特徴とする歯科用シリコーン印象材組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科において歯科用補綴物の作製時に用いられるシリコーン印象材であり、詳細には、硬化前の練和物の粘度が高く、硬化後の硬度が低い歯科用シリコーン印象材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療において、シリコーン樹脂を主成分としたシリコーン印象材,アルギン酸塩を主剤、硫酸カルシウムを硬化材として水の存在下で硬化するアルギン酸塩印象材,ポリエーテル樹脂を主成分とするポリエーテル系印象材が使用されている。
【0003】
人口の高齢化に伴い在宅での歯科治療を行う必要が増加している。この場合、安価で硬化後の硬度が低いことから口腔内から撤去し易く患者の複雑な歯列の状態も適用できるアルギン酸塩印象材が多く用いられている。また、高齢者には嘔吐反射が弱い患者も多いことから、練和物の粘度が高く喉の奥に流れこみ難いアルギン酸塩印象材が好んで使用されている。アルギン酸塩印象材は乾燥により収縮して印象精度の低下を防止するため、印象採得後、迅速に石膏を注入する必要がある。しかし、石膏を注入するための材料や用具を持ち運ぶことは煩雑であることからアルギン酸塩印象材は在宅診療に適していなかった。そこで、アルギン酸塩印象材と同様な特性、即ち、硬化前の練和物の粘度は高く喉の奥に流れこみ難く、硬化後の硬度がアルギン酸塩印象材と同程度に低いシリコーン印象材の開発が望まれていた。
【0004】
また、高い精度で歯科用補綴物が作製する場合には、アルギン酸塩印象材と比較して精度の高いシリコーン印象材が使用されている。しかし、従来のシリコーン印象材は硬化後の硬度が高いため、余剰部分のアンダーカットをワックス等で封鎖し、硬化後のシリコーン印象材を口腔内から除去し易くするという作業が必要であった。特に、残存歯は多くなったものの歯周病の患者が増加している現在では、より正確で緻密なアンダーカットの処理作業が必要とされている。そこで、アンダーカット処理の不要なシリコーン印象材、即ち硬化後の硬度が低く口腔内から撤去のしやすいシリコーン印象材が望まれていた。
【0005】
従来のシリコーン印象材の上記問題を解決する手段として、特定構造を有するオルガノポリシロキサン,ポリエーテル,オルガノハイドロジェンポリシロキサン,無機充填材,非イオン系界面活性剤,シリコーン可溶性白金化合物から成る組成物に、炭化水素系油性成分を加えた練和物の垂れをなくした歯科印象用組成物(特許文献1参照。)や、特定構造を有するオルガノポリシロキサン,オルガノハイドロジェンポリシロキサン,シリコーン可溶性白金化合物,特定比表面積を有し疎水化された微粉末シリカ,メチルフェニルポリシロキサンを含有する歯科印象用シリコーン組成物(特許文献2参照。)が開示されている。しかし、これ等の印象材は練和物の垂れは起きないものの、低粘度の炭化水素系油性成分を含有するため硬化前の練和物の粘性が低く、口腔粘膜に充分な圧力が加えることができないため印象の精度が不足していた。
【0006】
【特許文献1】特開2009―203196号公報
【特許文献2】特開平10―72307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
硬化前の練和物の粘度は高く、硬化後の硬度は低いシリコーン印象材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち本発明は、A)a)1分子中に脂肪族不飽和炭化水素を少なくとも2個を有し、25℃における粘度が100万mPa・s以上のオルガノポリシロキサンと、b)1分子中に脂肪族不飽和炭化水素を少なくとも1個を有し、25℃における粘度が100〜5000mPa・sであるオルガノポリシロキサン比率が,a:b=1:0.5〜10であるオルガノポリシロキサンの混合物100重量部、
B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン A)成分100重量部に対して0.1〜100重量部、
C)シリコーン可溶性白金化合物を上記2成分の合計量に対して10ppm〜1重量部、
D)官能基を有しないオルガノポリシロキサン A)成分100重量部に対して1〜50部、
E)無機充填材 A)成分100重量部に対して10〜100重量部、
とから構成されることを特徴とする歯科用シリコーン印象材組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る歯科用シリコーン印象材組成物は、通常の歯科用シリコーン印象材より硬化前の練和物の粘度が高く喉の奥に流れこみ難いため、従来ではアルギン酸塩印象材を用いるような在宅診療等の臨床ケースにも使用することが可能であり、硬化前の練和物の粘度が高いことは印象の精度も良い利点がある。その一方で硬化後の硬度が低いことから印象材の撤去し易いことから、在宅診療等の臨床ケースにも使用することが可能であり、通常の使用においてもアンダーカット処理を必要としない優れた歯科用シリコーン印象材組成物である。
【0010】
本発明に係る歯科用シリコーン印象材組成物のA)成分に用いるオルガノポリシロキサンは2種類の異なるものも混合物である。このうちa)1分子中に脂肪族不飽和炭化水素を少なくとも2個を有し、25℃における粘度が、100万mPa・s以上のオルガノポリシロキサン生ゴムは、室温においてパテ状の性状を示し、その重合度が2000以上のオルガノポリシロキサンである。このオルガノポリシロキサンの1分子中には脂肪族不飽和炭化水素を少なくとも2個を有する。中でも分子鎖末端が、ビニルシリル基で封鎖されたものが好ましく、この場合に末端ビニル基は複数個であっても良いし、ビニル基が鎖中に含まれていても良い。また、本オルガノシロキサン分子鎖中には、メチル基,エチル基等のアルキル基、フェニル基,トリル基等が含まれるが、特に、メチル基,フェニル基が望ましい。
【0011】
このa)成分と特定比率で用いるb)1分子中に脂肪族不飽和炭化水素を少なくとも1個を有し、25℃における粘度が、100〜5000mPa・sであるオルガノポリシロキサンは、a)成分と比較して、25℃での状態が全く異なり液状のオルガノポリシロキサンである。このオルガノポリシロキサン1分子中には、脂肪族不飽和炭化水素を少なくとも1個を有する。中でもa)と同様に分子鎖末端がビニルシリル基で封鎖されたものが好ましく、この場合に末端ビニル基は複数個であっても良いし、ビニル基が鎖中に含まれていても良い。また、本オルガノシロキサン分子鎖中には、メチル基,エチル基等のアルキル基、フェニル基,トリル基等が含まれるが、特に、メチル基,フェニル基が望ましい。
【0012】
A)成分中のa)とb)の比率はa:b=0.5:1〜10であり、好ましくは、a:b=1:1〜3である。
【0013】
B)成分である1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、A)成分の架橋材として作用する。このB成分中のケイ素原子に直結した水素原子は、分子鎖末端存在していても側鎖に存在していても良いが、分子鎖の両末端に存在している方が好ましい。また、配合割合はA成分100重量部に対して0.1〜100重量部であり、好ましくは、1〜50重量部である。0.1重量部未満であると硬化体の硬度が低下するばかりではなく硬化速度も緩慢となってしまう。100重量部を超えると硬化体が脆くなり過ぎる。本発明に係る歯科用印象材組成物がベースペーストと後に詳述するC成分を含むキャタリストペーストの2成分形態で供給される場合には、このB成分は保存安定性の面からキャタリストペースト中には配合しない。
【0014】
C成分であるシリコーン可溶性白金化合物は、A成分とB成分とを架橋重合させる触媒として作用するものである。具体的には公知の付加反応触媒である塩化白金酸,アルコール変性塩化白金酸,塩化白金酸とオレフィンとの錯体等が挙げられる。特に好適には塩化白金酸のビニルシロキサン錯体である。これ等の添加量は、A及びB成分の合計量に対して10〜500ppmの範囲である。10ppm未満であると硬化速度が遅く、またこの白金化合物の触媒能を阻害する物質が微量存在した場合に硬化が遅くなる等の難点がある。500ppmを超えると硬化速度が速すぎ、しかも製造コストが上昇するため適切ではない。この塩化白金酸等のシリコーン可溶性白金化合物は、アルコール系,ケトン系,エーテル系,炭化水素系の溶剤,ポリシロキサンオイル等に溶解して使用することが好ましい。
【0015】
D)成分である官能基を有しないオルガノポリシロキサンは、ジメチルポリシロキサン,メチルフェニルポリシロキサン,変性シリコ−ンオイルが使用できる。D)成分である官能基を有しないオルガノポリシロキサンは、A)、B)、C)成分と反応しない。このD)成分に使用するオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、30mPa・s〜50万mPa・sのものが使用することができ、好ましくは、100〜10000mPa・sである。D)成分である官能基を有しないオルガノポリシロキサンの含有割合は、A成分100重量部に対して1〜50重量部であり、好ましくは、5〜20重量部である。
【0016】
E)成分である無機充填材は、歯科用シリコーン印象材組成物の、硬化前の作業性や硬化後の物性を向上させる。E成分としては石英,クリストバライト,珪藻土,熔融石英,ガラス繊維,二酸化チタン,ヒュームドシリカ等の粉末を例示できる。この無機充填材の配合割合は、A成分100重量部に対して10〜100重量部である。10重量部未満であると硬化前の練和物の流動性が大きくなり過ぎ、100重量部を超えると硬化前の練和物の粘度が高くなり過ぎて練和操作が行い難くなる。
【0017】
本発明に係る歯科用シリコーン印象材組成物には、特性を失わない範囲で各種の無機あるいは有機の着色剤,液状炭化水素,非イオン界面活性剤,ポリエーテル化合物,シリコーンレジンを使用しても良い。
【実施例】
【0018】
本発明について実施例を挙げ詳細に説明するが、本発明はこれ等に限定されるものではない。
【0019】
<実施例1>
(ベースペースト)
A)
a)25℃における粘度が1000万mPa・sであり、ビニル価が0.002mol/100gであるジメチルポリシロキサン生ゴム。b)分子鎖両末端がメチルビニルシロキシ基で封鎖され、25℃における粘度が1000mPa・sであるジメチルポリシロキサン a:b=1:1.5 100重量部

メチルハイドロジェンシロキサン単位を40モル%含む直鎖状メチルハイドロジェンポリシロキサン 10重量部

25℃における粘度が1000mPa・sであるジメチルポリシロキサン
20重量部

石英 30重量部

(キャタリストペ−スト)
A)
a)25℃における粘度が1000万mPa・sであり、ビニル価が0.002mol/100gであるジメチルポリシロキサン生ゴム。b)分子鎖両末端がメチルビニルシロキシ基で封鎖され、25℃における粘度が1000mPa・sであるジメチルポリシロキサン
a:b=1:1.5 100重量部

1,3ジビニルテトラメチルジシロキサンー白金錯体0.6重量%含有シリコーンオイル溶液 1重量部

25℃における粘度が1000mPa・sであるジメチルポリシロキサン
20重量部
石英 30重量部

上記各成分をプラネタリーミキサーにて真空攪拌することにより、上記ベースペースト及びキャタリストペーストを作製した。
【0020】
<硬度の測定>
硬化体の硬度を測定するため、上記ベースペースト:4g,キャタリストペースト:4gを30秒練和し、金属リング(内径:24mm、高さ:8mm)に注入し、上下をガラス板ではさみ、35℃水中に2分間浸漬した。2分後、水中より取り出し、脱型した後、取り出してから1分後にデュロメ−タ硬度計A型(高分子計器株式会社)を用いて硬度を測定した。結果を表1に纏めて示す。
【0021】
<弾性ひずみの測定>
硬度の測定と同様にベースペーストとキャタリストパースとを各々4g計量し練和した後、JIS T 6513 (2005)に従い口腔内保持時間4分にて弾性ひずみ、永久ひずみを測定した。結果を表1に纏めて示す。
【0022】
<練和物の粘度測定>
硬度の測定と同様にベースペーストとキャタリストパースとを各々4g計量し練和した後、練和開始より1分後の粘度をB型粘度計(東機産業株式会社)を用いて10rpmにて測定した。結果を表1に纏めて示す。比較のため、アルギン酸塩印象材の練和物も測定した。この粘度測定においては、市販のアルギン酸塩印象材(商品名:アローマファインプラス,株式会社ジーシー製)を用い粉末:16.8gと水:40mlで20秒間練和を行ったものを使用した。練和開始より1分後に粘度の測定を行った。
【0023】
<印象材の撤去のし易さの比較試験>
硬化後の印象材の撤去のし易さを確認するために、ベースペーストとキャタリストペーストとを等量練和し、市販のトレー(商品名:インプレッショントレー,株式会社ジーシー製)に盛り上げ、上顎模型(株式会社ニッシン製)に圧接し、35℃水中に2分間保持した。その後、トレーを印象材ごと模型より取り外した。次に、市販のアルギン酸塩印象材(商品名:アローマファインプラス,株式会社ジーシー製)を用い粉末:16.8gと水:40mlで20秒間練和を行ったものを使用し実施例・比較例と比べた。結果を表1に示す。
【0024】
<実施例2>
(ベースペースト)
A)
a)25℃における粘度が700万mPa・sであり、ビニル価が0.0015mol/100gであるジメチルポリシロキサン生ゴム。b)分子鎖両末端がメチルビニルシロキシ基で封鎖され、25℃における粘度が1500mPa・sであるジメチルポリシロキサン
a:b=1:2 100重量部

メチルハイドロジェンシロキサン単位を50モル%含む直鎖状メチルハイドロジェンポリシロキサン 30重量部

25℃における粘度が2000mPa・sであるジメチルポリシロキサン
40重量部

石英 70重量部

(キャタリストペ−スト)
A)
a)25℃における粘度が1000万mPa・sであり、ビニル価が0.002mol/100gであるジメチルポリシロキサン生ゴム。b)分子鎖両末端がメチルビニルシロキシ基で封鎖され、25℃における粘度が1000mPa・sであるジメチルポリシロキサン
a:b=1:1.5 100重量部

1,3ジビニルテトラメチルジシロキサンー白金錯体0.6重量%含有シリコーンオイル溶液 1重量部

25℃における粘度が2000mPa・sであるジメチルポリシロキサン
40重量部

石英 70重量部

上記各成分をプラネタリーミキサーにて真空攪拌することにより、上記ベースペースト及びキャタリストペーストを作製した。実施例1と同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0025】
<実施例3>
(ベースペースト)
A)
a)25℃における粘度が1500万mPa・sであり、ビニル価が0.0018mol/100gであるジメチルポリシロキサン生ゴム。b)分子鎖両末端がメチルビニルシロキシ基で封鎖され、25℃における粘度が600mPa・sであるジメチルポリシロキサン
a:b=1:3 100重量部

メチルハイドロジェンシロキサン単位を45モル%含む直鎖状メチルハイドロジェンポリシロキサン 15重量部

25℃における粘度が3000mPa・sであるジメチルポリシロキサン
15重量部

石英 50重量部

(キャタリストペ−スト)
A)
a)25℃における粘度が1000万mPa・sであり、ビニル価が0.0018mol/100gであるジメチルポリシロキサン生ゴム。b)分子鎖両末端がメチルビニルシロキシ基で封鎖され、25℃における粘度が600mPa・sであるジメチルポリシロキサン
a:b=1:3 100重量部

1,3ジビニルテトラメチルジシロキサンー白金錯体0.8重量%含有シリコーンオイル溶液 1重量部

25℃における粘度が2000mPa・sであるジメチルポリシロキサン
15重量部

石英 50重量部

上記各成分をプラネタリーミキサーにて真空攪拌することにより、上記ベースペースト及びキャタリストペーストを作製した。実施例と同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0026】
<実施例4>
(ベースペースト)
A)
a)25℃における粘度が1000万mPa・sであり、ビニル価が0.003mol/100gであるジメチルポリシロキサン生ゴム。b)分子鎖両末端がメチルビニルシロキシ基で封鎖され、25℃における粘度が1000mPa・sであるジメチルポリシロキサン
a:b=1:2 100重量部

メチルハイドロジェンシロキサン単位を45モル%含む直鎖状メチルハイドロジェンポリシロキサン 20重量部

25℃における粘度が1000mPa・sであるジメチルポリシロキサン
10重量部

石英 20重量部

ポリオキシエチレンアルキルエ−テル 1重量部

分子鎖両末端がビニル基で封鎖されたポリエチレングリコールジアリルエーテル
0.5重量部

(キャタリストペ−スト)
A)
a)25℃における粘度が1000万mPa・sであり、ビニル価が0.003mol/100gであるジメチルポリシロキサン生ゴム。b)分子鎖両末端がメチルビニルシロキシ基で封鎖され、25℃における粘度が1000mPa・sであるジメチルポリシロキサン
a:b=1:2 100重量部

1,3ジビニルテトラメチルジシロキサンー白金錯体0.8重量%含有シリコーンオイル溶液 1重量部

25℃における粘度が1000mPa・sであるジメチルポリシロキサン
15重量部

石英 20重量部

上記各成分をプラネタリーミキサーにて真空攪拌することにより、上記ベースペースト及びキャタリストペーストを作製した。実施例と同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0027】
<比較例1>
(ベースペースト)
分子鎖両末端がメチルビニルシロキシ基で封鎖され、25℃における粘度が10万mPa・sであるジメチルポリシロキサン 100重量部

メチルハイドロジェンシロキサン単位を40モル%含有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン 10重量部

石英 50重量部

ワセリン 100重量部

(キャタリストペ−スト)
分子鎖両末端がメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン
100重量部

1,3ジビニルテトラメチルジシロキサン−白金錯体0.5重量%含有シリコ−ンオイル溶液 5重量部

石英 50重量部

上記各成分をプラネタリーミキサーにて真空攪拌することにより、上記ベースペースト及びキャタリストペーストを作製した。実施例と同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0028】
<比較例2>
市販のシリコーン印象材(商品名:エクザハイフレックス レギュラー,株式会社ジーシー製)を用い実施例1と同様の各種試験を行った。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】


*従来のアルギン酸塩印象材の粘度は約35万mPa・s
【0030】
表1に示すように、実施例に示した本発明による歯科用印象材組成物は、硬度、弾性ひずみが大きく、硬化体の撤去力も、アルギン酸塩印象材と同程度に小さい。また、練和物の粘度は、アルギン酸塩印象材と同程度であり、比較例に示した、比較的弾性ひずみが大きいシリコーン組成物あるいは、市販製品より高い値を示し、本発明に係る歯科用シリコーン印象材組成物は、シリコーン系の印象材でありながらアルギン酸塩印象材と同様に使用できる。この特性は、これまでシリコーン系印象材を用いることが困難である症例や、煩雑な操作や、注意が必要とされた症例にも使用することができ非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)a)1分子中に脂肪族不飽和炭化水素を少なくとも2個を有し、25℃における粘度が100万mPa・s以上のオルガノポリシロキサンと、b)1分子中に脂肪族不飽和炭化水素を少なくとも1個を有し、25℃における粘度が100〜5000mPa・sであるオルガノポリシロキサン比率が、a:b=1:0.5〜10であるオルガノポリシロキサン混合物 100重量部、
B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン A成分100重量部に対して0.1〜100重量部、
C)シリコーン可溶性白金化合物を上記2成分の合計量に対して10ppm〜1重量部、
D)官能基を有しないオルガノポリシロキサン A成分100重量部に対して1〜50部、
E)無機充填材 A成分100重量部に対して10〜100重量部、
とから構成されることを特徴とする歯科用シリコーン印象材組成物。