説明

歯科用ブロックアウト材

【課題】歯科において口腔内、口腔外の印象採得を行う際に印象材が部分的に流れないようにブロックアウトする材料であり、温度変化により流動性や硬化性が変化するブロックアウト材の欠点を補って、温度による性状のコントロールを必要としないブロックアウト材の提供。さらには印象採得後には、速やかにブロックアウト部位から撤去、好ましくは水洗による清掃と、エアーブローによる吹き飛ばしができるペースト状のブロックアウト材の提供。
【解決手段】(a)平均粒子径が0.1〜100μmのフィラー:10〜95重量%(b)分散媒:5〜90重量%を含む歯科用ブロックアウト材1。フィラーとしては無機フィラーが好ましく、さらには、気相法により生成した超微粒子無機フィラーが特に好ましい。またフィラーは、有機フィラーであってもよく、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等から選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科において口腔内、外の印象採得を行う際に印象材が部分的に流れないようにブロックアウトする材料に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科における「ブロックアウト」とは特に印象採得時において、口腔内では歯牙と粘膜が混在しうる箇所や、歯牙同士が隣接する箇所、またはこれらが混在する箇所に、口腔外、特に技工作業においては石こう模型等の必要箇所に、硬化前の印象材が排圧(印象材を押し込む力)または、印象材自体の自重により流れ込まないように、あらかじめ箇所を防護する行為である。
【0003】
口腔内においてブロックアウトが望まれる部位として、捻転歯、歯牙の唇側転移、舌側転移、加齢や疾患による歯根の露出、その複合的な歯列の乱れの箇所が挙げられる。また無顎歯の症例や、軟組織のみが存在する箇所へのブロックアウトについては、軟組織に対してブロックアウトが行われることもしばしばある。ブロックアウトを行わなかった場合、印象採得後、トレー及び印象材を口腔内から撤去することに不自由し、最悪はトレーを壊して撤去しなければならない。無理に引き抜こうとした場合、歯周病で軟組織が脆弱化した患者の動揺歯が偶発的に抜去されるケースも考えられる。上記ケースにおいて口腔内ではトラブルがなくても、補綴物作製を前提として撤去後の印象材に石こうを注入し、硬化後の印象材から外すときも口腔内と同じく、取りづらいというトラブルが起こりうる。石こうの場合は歯牙とは異なりそれ自体が破折する可能性もある。この他、ブロックアウトを行わなかった場合、撤去時にトレーに盛りついた印象材に負荷が掛かり、印象材自体の変形も懸念される。ブロックアウト材は、これらブロックアウトする部分に充填することで、チェアサイドにおいては印象材の撤去を容易にし、患者の動揺歯を誤って抜去しない為に、一方技工サイドにおいても石こう模型から印象材の撤去を容易にし、模型の破折を防ぐために用いるものである。
ブロックアウト材の利用状況を図1に示す。
【0004】
歯科用で印象採得を行う際に用いられてきたブロックアウト材は、口腔内用寒天印象材、水硬性セメント、ワックスなどである。場合によっては綿球などで口腔内及び模型等、必要箇所をブロックアウトし印象材を部分的に流れ込ませないように工夫されてきた。しかし、口腔内用寒天印象材を用いた場合は専用の加熱・保温器が用いられ、水硬性セメントを用いた場合は一旦紙練板の上で練和しなければ使用できず、ワックスを用いた場合は軟性の材料でブロックアウトするまでの作業性には優れるが、ブロックアウト材を口腔内から取り除く際、歯牙に粘り付き、速やかに取り除けないという欠点があった。またこれらの材料は、本来の歯科用用途とは別に、ブロックアウト用に転用しているのが実状で、それぞれが一長一短あり、臨床においてはブロックアウトに適した専用材料が望まれてきた。
ブロックアウトを行う材料として歯肉保護材を使用する術式も考案されてきたが、歯肉保護材は光重合などにより材料を硬化させなければならない上に口腔内からも、石膏模型からも撤去がしづらいという問題があった。
特許文献1には歯科用光重合樹脂材料のブロックアウト材が開示されているが、光硬化させる手間があり、更にブロックアウト後の除去性に問題があった。
特許文献2にはクラスプパターン製作用光重合レジン組成物に関するブロックアウト材が紹介されており、特許文献3にはウレタンアクリレート樹脂液にポリスチロール等の粉末を混合したブロックアウト材が紹介されているが、どちらも硬化させることによりブロックアウトする発明であり、除去性等の問題があり、市場において十分な効果を発することは難しかった。また、硬化することは口腔内で使用する場合に除去性等に多大な問題が存在した。
【0005】
ブロックアウト材は、練和や加温などの使用前の作業が無く、またブロックアウト部位に速やかに流し込んだ後には、印象排圧によって材料が脱離せず、更にまた印象採得後には、速やかにブロックアウト部位から撤去が可能であり、水洗、エアーブローによる吹き飛ばし、バキューム等によって用意に除去できる材料が望まれる。
【特許文献1】特願平3−323941
【特許文献2】特開平1−110609
【特許文献3】特開昭62−115013
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
温度変化により流動性や硬化性が変化するブロックアウト材の欠点を補って、温度による性状のコントロールを必要としないブロックアウト材が求められていた。更に、ブロックアウト部位に速やかにブロックアウト材が流れ込み、印象排圧によって材料がブロックアウト部位から脱離しないブロックアウト材が求められていた。印象採得後には、速やかにブロックアウト部位から撤去、好ましくは水洗による清掃と、エアーブローによる吹き飛ばしができるペースト状のブロックアウト材が求められていた。口腔内で使用する印象採得時のブロックアウトに適した歯科用ブロックアウト材の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、平均粒子径が0.1〜100μmのフィラーと分散媒を含む歯科用ブロックアウト材を開発した。
フィラーは無機フィラーであることが好ましい。無機フィラーとはシリカ(結晶性シリカ及び溶融シリカ)、アルミニウムシリケート、アルミナ、チタニア、ジルコニア、種々のガラス類(フッ素ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、バリウムアルミニウムシリカガラス、ストロンチウムやジルコニウムを含むガラス、ガラスセラミックス、フルオロアルミノシリケートガラス、また、ゾルゲル法による合成ガラスなどを含む)、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、ゼオライトのうち1つ以上を含むものである。
これに加えて気相法により生成した超微粒子無機フィラーを含有することが好ましい。この超微粒子無機フィラーは凝集させた比表面積1〜5000m/g凝集性無機フィラーであっても良い。
またフィラーは、有機フィラーであってもよい。有機フィラーとは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコールのうち1つ以上を含むことを特徴とする。分散媒はメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロプレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコールエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミドのうち1つ以上を含むものである。
有機フィラーと無機フィラーは適宜混合して用いることができる。
(a)フィラーが10〜95重量%、(b)分散媒5〜90重量%を含むことを特徴とする歯科用ブロックアウト材の開発に成功した。
【発明の効果】
【0008】
本発明による歯科用ブロックアウト材は口腔内、外の印象採得を行う際に印象材を部分的に流れこまないように確実にブロックアウトでき、更に印象材の排圧によって脱離することもない。このことはブロックアウトする際の作業性が著しく向上し、印象採得までの時間を短縮できる。また更に、印象採得終了後、速やかにブロックアウト材を洗い流せるので、患者や模型にブロックアウト材が残らず、人体にも悪影響を及ぼさない。技工作業においても作業性、清掃性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いる(a)フィラーは、歯科用複合材料に用いられている無機フィラー、有機フィラーを単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用することが出来る。これらの無機フィラー、有機フィラーは歯科用複合材料に用いられているものが好ましい。
本発明で使用することのできる無機フィラーとしては、例えば、シリカ(結晶性シリカ及び溶融シリカ)、アルミニウムシリケート、アルミナ、チタニア、ジルコニア、種々のガラス類(フッ素ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、バリウムアルミニウムシリカガラス、ストロンチウムやジルコニウムを含むガラス、ガラスセラミックス、フルオロアルミノシリケートガラス、また、ゾルゲル法による合成ガラスなどを含む)、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、ゼオライト等が挙げられる。好ましくはシリカ、アルミニウムシリケート、アルミナ、バリウムガラス、バリウムアルミニウムシリカガラス、ゾルゲル法によるシリカガラス、である。
フィラーの平均粒子径は特に制限はないが、0.1〜100μmの範囲が好ましい。0.1μm以下ではフィラーが凝集するという問題があり、使用しにくく、100μm以上ではペーストが垂れやすく、使用しにくいという問題があった。平均粒子径は日機装株式会社製「マイクロトラックHRA
X100」を用いて測定し、MV値を採用した。
【0010】
また本フィラーは、必要に応じてシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予めフィラーを表面処理してから用いても良い。かかる表面処理剤としては、公知のものを制限なく使用することが出来る。具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメトキシシラン、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリエトキシシラン、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシランカップリング剤類;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルジメタクリロイルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート等のチタネート系カップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソ等のアルミニウム系カップリング剤類等が挙げられる。これらのカップリング剤は、1種類又は2種類以上の組み合わせで用いられる。これらのカップリング剤は通常そのまま配合されるが、例えば、シランカップリング剤などでは、予め酸やアルカリによって加水分解し、シラノールに変換して配合してもよい。またシランカップリング剤のシリル基は、調整後、経時的に加水分解されて一部又は全部がシラノール基に変換されても良い。
【0011】
また、気相法により生成したアエロジル(登録商標)またはゾルゲル反応等の溶液中から生成したシリカ又はシリカ−ジルコニア酸化物粒子等の超微粒子無機充填材である超微粒子無機フィラーも用いることができる。またはそれらの超微粒子を凝集させた凝集性無機充填材を用いてもなんら問題ない。超微粒子無機フィラーの平均粒子径は特に制限はないが、1〜100nmの範囲が好ましい。また本超微粒子無機フィラーは、必要に応じてシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予めフィラーを表面処理してから用いても良い。かかる表面処理剤としては、公知のもの制限なく使用することが出来る。具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメトキシシラン、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリエトキシシラン、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシランカップリング剤類;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルジメタクリロイルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート等のチタネート系カップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソ等のアルミニウム系カップリング剤類等が挙げられる。これらのカップリング剤は、1種類又は2種類以上の組み合わせで用いられる。これらのカップリング剤は通常そのまま配合されるが、例えば、シランカップリング剤などでは、予め酸やアルカリによって加水分解し、シラノールに変換して配合してもよい。またシランカップリング剤のシリル基は、調整後、経時的に加水分解されて一部又は全部がシラノール基に変換されても良い。
【0012】
有機フィラーとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。好ましくはポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチルが用いられる。また、有機質複合フィラーとして、先の無機フィラー表面を重合性単量体で重合被覆した後に、乳化重合または懸濁重合などの操作により得られる粒子等が挙げられる。
【0013】
(b)成分として用いられる分散媒はメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロプレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコールエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミドなどがある。好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコールの水溶性で、非重合性の水溶性の分散媒が好ましい。
【0014】
また本発明の(a)フィラー、(b)分散媒に加えて適宜界面活性剤を添加することが可能である。界面活性剤としては非イオン系の界面活性剤が好ましく、具体的にはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンマンニタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体などが好ましい。
【0015】
また本発明の(a) フィラー、(b) 分散媒に加えて適宜増粘剤を添加することが可能である。増粘剤としては、デンプン類、アルギン酸ソーダ、トロロアオイ、トラガントゴム、アラビアゴム、デキストラン、レバン、にかわ、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ビスコース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシドが好ましい。
【実施例】
【0016】
以下に実施例により本発明をより詳細に、且つ具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例において採用した歯科用ブロックアウト材の性能評価は次の通りである。
【0017】
(1)印象採得時、ブロックアウト材のアンダーカット部維持力確認試験
下顎(全顎)のアクリル製歯列模型及び石こう模型(乾燥状態のもの「乾燥状態の石こう模型」と、イオン交換水1時間浸透済みのもの「イオン交換水浸漬済みの模型」)を用意し、歯間乳頭唇側13箇所に所定のブロックアウト材を充填する。既製の網トレー(YDM製、下顎全顎用)にデントシリコーンVパテタイプ(松風製、練和済み)を盛り上げ、印象採得を行う。硬化を口腔内環境と想定するために37℃-100%のインキュベータに一式を3分間静置させる。取り出して模型から印象採得物を撤去した後、13箇所のうちブロッククアウト材が何箇所外れずに残っているかをアクリル歯列模型、乾燥状態の石こう模型、イオン交換水浸漬済みの模型それぞれについてカウントした。
比較例においては下記の使用方法を採用し、上記試験と同様にアクリル歯列模型、乾燥状態の石こう模型、イオン交換水浸漬済みの模型にてカウントした。
比較例3のエイチワイシーは粉材と液材を使用説明書記載に従い、練り合わせて使用する。比較例4のビーディングワックスは適量分取り分けて使用する。比較例5のグランブルーは専用シリンジから適量押し出して使用する。また比較例6,7のウルトラデント社製材料に関しても製品シリンジから押し出して使用する。各比較例材料は本試験に適用できるよう調整を施す。
(評価)
アクリル製歯列模型による試験結果において、13箇所中、維持数が10以上は優れたブロックアウト材を示す結果であり、維持数が5〜9は使用可能な領域、維持数が4以下の場合はブロックアウト材として利用できないことを示す結果である。
乾燥状態の石こう模型による試験結果において、13箇所中、維持数が10以上は優れたブロックアウト材を示す結果であり、維持数が5〜9は使用可能な領域、維持数が4以下の場合はブロックアウト材として利用できないことを示す結果である。
イオン交換水浸漬済みの模型による試験結果において、13箇所中、維持数が10以上は優れたブロックアウト材を示す結果であり、維持数が5〜9は使用可能な領域、維持数が4以下の場合はブロックアウト材として利用できないことを示す結果である。
【0018】
(2)ブロックアウト材撤去確認試験
下顎(全顎)のアクリル製歯列模型及び石こう模型(乾燥状態のもの「乾燥状態の石こう模型」と、イオン交換水1時間浸透済みのもの「イオン交換水浸漬済みの模型」)を用意し、歯間乳頭唇側13箇所に所定のブロックアウト材を充填する。スリーウエイシリンジ(商品名、モリタ製作所製;エアー、ウォーター、ウォータースプレーの噴射が可能)及びバキューム(モリタ製作所製)を用いて溶解、吹き飛ばし及び吸引による撤去をアクリル歯列模型、乾燥状態の石こう模型、イオン交換水浸漬済みの模型それぞれに確認した。撤去後の残分を◎:全くない,○:ほとんどない,△:やや残っている,×:大部分残っている,の四段階で評価した。
比較例においては下記の使用方法を採用し、上記試験と同様にアクリル歯列模型、乾燥状態の石こう模型、イオン交換水浸漬済みの模型にて四段階の評価をした。
比較例3のエイチワイシーは粉材と液材を使用説明書記載に従い、練り合わせて使用する。比較例4のビーディングワックスは適量分取り分けて使用する。比較例5のグランブルーは専用シリンジから適量押し出して使用する。また比較例6,7のウルトラデント社製材料に関しても製品シリンジから押し出して使用する。各比較例材料は本試験に適用できるよう調整を施す。
(評価)
アクリル製歯列模型、乾燥状態の石こう模型、イオン交換水浸漬済みの模型の何れの試験結果においても、◎の場合は撤去後の残分が全くなく優れた結果である。また、○の場合は撤去後の残分がほとんどなく、良い結果である。△の場合は撤去後がやや残分がありブロックアウト材として利用することが困難な結果である。×の場合は大部分が未撤去であり、ブロックアウト材として利用できないことを示す結果である。
【0019】
(3)親水性確認試験
調整した試料のブロックアウト材の厚みを5mmで平板状に作製した。各ブロックアウト材の表面に5μLのイオン交換水を滴下し10秒後の接触角を測定した。接触角計は「動的接触角計FTÅ125(First
Ten Ångstrom社製)」を用いた。
比較例においては下記の使用方法を採用し、上記試験と同様に測定した。
比較例3のエイチワイシーは粉材と液材を使用説明書記載に従い、練り合わせて使用する。比較例4のビーディングワックスは適量分取り分けて使用する。比較例5のグランブルーは専用シリンジから適量押し出して使用する。また比較例6,7のウルトラデント社製材料に関しても製品シリンジから押し出して使用する。各比較例材料は本試験に適用できるよう調整を施す。
(評価)
測定の結果、50°以下では、親水性に優れる結果であり、50°以上では親水性に劣る結果であった。
界面活性剤の配合により、顕著に親水性が向上することを確認することができた。
【0020】
(4)解塊性確認試験
各ブロックアウト材5gをイオン交換水100mLに浸漬させ、攪拌子及びスターラーを用いて15分攪拌して解塊の様子を目視にて確認した。溶け残りの状態で◎:完全解塊, ○:ほぼ未解塊なし,△:やや未解塊あり,×:解塊しない,の四段階で評価した。
解塊性とは塊状のブロックアウト材の形状が崩れ、水中でスラリーのような状態になることと定義する。
比較例においては下記の使用方法を採用し、上記試験と同様に測定した。
比較例3のエイチワイシーは粉材と液材を使用説明書記載に従い、練り合わせて使用する。比較例4のビーディングワックスは適量分取り分けて使用する。比較例5のグランブルーは専用シリンジから適量押し出して使用する。また比較例6,7のウルトラデント社製材料に関しても製品シリンジから押し出して使用する。各比較例材料は本試験に適用できるよう調整を施す。
(評価)
試験結果において、◎の場合は完全解塊であり、優れた結果である。○の場合はほぼ解塊ナシで、良好な結果である。また、△の場合はやや未解塊ありで、ブロックアウト材として利用することが困難な結果である。×の場合は解塊せず、ブロックアウト材として利用できないことを示す結果である。
【0021】
試料の作成方法は、表1に示される試料を乳鉢で混合して、斑がなく十分に分散したところで混練を終了し、ブロックアウト材の試料とした。試験結果についても、表1に示す。
表1に示す組成の配合は質量部で示している。
シリカフィラーの平均粒子径は20μmである。また、超微粒子無機フィラーの平均一次粒子径は14nmで、比表面積は150m2/gである。
【0022】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は歯科用ブロックアウト材に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ブロックアウト材の利用状況を示す図
【符号の説明】
【0025】
1 ブロックアウト材
2 天然歯
3 歯肉
4 支台歯


【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内、外で使用できる歯科用ブロックアウト材において、
(a) 平均粒子径が0.1〜100μmのフィラー:10〜95重量%
(b) 分散媒:5〜90重量%
を含む歯科用ブロックアウト材。
【請求項2】
(a)フィラーがシリカ、アルミニウムシリケート、アルミナ、チタニア、ジルコニア、フッ素ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、バリウムアルミニウムシリカガラス、ストロンチウムやジルコニウムを含むガラス、ガラスセラミックス、フルオロアルミノシリケートガラス、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、ゼオライトのうちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項1記載の歯科用ブロックアウト材。
【請求項3】
請求項1に記載の歯科用ブロックアウト材において、
超微粒子無機フィラーを含むことを特徴とする歯科用ブロックアウト材。
【請求項4】
(a)フィラーが、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコールのうちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項1記載の歯科用ブロックアウト材。
【請求項5】
(b)分散媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロプレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコールエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミドのうちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項1記載の歯科用ブロックアウト材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−173834(P2011−173834A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39480(P2010−39480)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(390011143)株式会社松風 (125)
【Fターム(参考)】