説明

歯科用医療機器

【課題】ハンドピースの基端側に設けられて水、空気、電力等を供給するユニット側において、異常検出時に自己修復することのできる歯科用医療機器を提供すること。
【解決手段】レーザ装置100は、装置内の各電気回路に電力を供給する電源回路120から出力される電圧についての異常を監視するために電源回路120の電圧出力端子の電圧値を検出する定電圧回路122と、検出電圧値が電源回路120の仕様で規定された通常の範囲内であるか否かを判別する自己診断基板150と、検出電圧値が通常の範囲内ではない場合に、電圧出力端子の電圧値が通常の範囲内となるように、電圧出力端子の電圧を調整する自己修復回路123と、通信ネットワークNWを利用して異常箇所や使用環境等をカスタマーサービスセンタ910またはカスタマーサービスエンジニア921に伝える伝送回路150とを備え、異常レベルが高い場合に異常箇所の機能を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用医療機器に係り、特に、メンテナンス用の自己診断機能を備えた歯科用医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科医院には、診療室やX線室において患者の治療や診断に用いる設備として各種の歯科用医療機器が設けられている。これらの歯科用医療機器は、例えば定期的にメンテナンス(保守、整備)が行われている。また、突発的に何らかの理由により異常や故障が生じて歯科用医療機器が通常通りに作動しなくなった場合には、医院のドクター、アシスタント、スタッフ等が、例えば、インターネットや電話回線を通じて、カスタマーサービスセンタにメンテナンスを依頼する。そして、カスタマーサービスセンタから通報のあった歯科医院に来訪したカスタマーサービスエンジニアが点検・修理、部品交換を行っている。
【0003】
従来、歯科用医療機器に限らず、様々な分野において、自己診断機能を備えた電子機器や精密機器が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献7参照)。
【0004】
特許文献1に開示された装置は、家庭内にある多種多数のAV機器がそれぞれ自己診断機能や稼働履歴を持たなくても、各AV機器についての稼働情報、例えば故障の発生、メンテナンスの必要性等をテレビジョン受像機の画面等に表示し、必要なら、電話等を利用して自動的にサービスセンタへ連絡するAV機器の稼働管理システムを提供するものである。
【0005】
特許文献2に記載の技術は、フィールド機器の自己診断などで発見された異常はホストシステムに通知されるだけであったので、機器に発生した異常の調査や故障した機器の交換までに多くの時間と工数がかかり、結果としてシステムの信頼性が低くなっていたという課題を解決するものである。
【0006】
特許文献3に記載の技術は、IT環境の構築提案・管理に関するサービスを顧客に対して1つのサービス窓口で一括して提供するフルサポートサービスにおけるメンテナンスシステムを提供するものである。
【0007】
特許文献4に記載の技術は、自動的に対策案を作成し必要な手配を行うことが可能なフィールド機器メンテナンスシステムを実現するものである。
【0008】
特許文献5に記載の技術は、自己診断機能の精度を向上し、サービスマンの経験によらず正確なメンテナンスを行うことを可能にし、異常が発生した場合の原因究明に費やす時間を削減するものである。
【0009】
特許文献6に記載の技術は、近時高度機能が歯科用チェアユニットに取り入れられ、高度な保守技術が要求され、また、機種の多様化や設置範囲の広域化により、保守の質の向上均一化、修理時間の短縮、信頼性の向上、保守費用の削減、保守データベースによる効率的な保守システムの確立を課題として、これらを解決する遠隔保守システムを提供するものである。
【0010】
特許文献7に記載の技術は、医療用X線CTに関するものであり、固定架台と回転架台との間で双方向にデータの伝送を行うデータ伝送系に設けられる増幅装置を用いて、故障が生じた際に、正常動作時のレベルに保持させるものである。これにより、故障個所の修理が完了するまで装置を使用することができない不都合を解消する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−261550号公報
【特許文献2】特開2002−251298号公報
【特許文献3】特開2003−58618号公報
【特許文献4】特開2003−256027号公報
【特許文献5】特開2007−283635号公報
【特許文献6】特開2002−95709号公報
【特許文献7】特開2004−135894号公報(0012、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1ないし特許文献5に記載の技術は、歯科用医療機器に関するものではなく、したがって、患者を考慮するものではない。また、特許文献6および特許文献7に記載の技術は、歯科およびその他の患者に用いる医療用機器の一般的な機器のメンテナンスに関するものであるが、患者の歯の治療のために患者の歯に接触する治療器具や、患者の患部に照射されるレーザ光やX線等の媒体を出力する装置を用いたときの患者の不測の危険を回避するためのメンテナンス技術に関するものではない。歯科医療においては、例えば、高速回転や高速振動する治療器具やレーザを出力するハンドピースをドクターが手に持って歯の掘削を行うので、ハンドピースの基端側に設けられて水、空気、電力を供給するユニット側の歯科用医療機器のメンテナンス技術のさらなる向上が求められている。
【0013】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、ハンドピースの基端側に設けられて水、空気、電力等を供給するユニット側において、異常検出時に自己修復することのできる歯科用医療機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
また、前記課題を解決するため、本発明の歯科用医療機器は、患者の歯の治療または診断のために、治療器具への流体の噴射、患者へのレーザ光の照射またはX線の照射により、流体、レーザ光またはX線を出力する歯科用医療機器であって、当該歯科用医療機器内の各電気回路に電力をそれぞれ供給する電源部から出力される電圧についての異常を監視するために前記電源部の予め定められた電圧出力端子の電圧値を検出する電圧検出手段と、前記電圧出力端子において検出した電圧値が当該電源部の仕様で規定された通常の範囲内であるか否かを判別する電圧状態判別手段と、前記電圧出力端子において検出した電圧値が前記通常の範囲内ではない場合に、前記電圧出力端子の電圧値が前記通常の範囲内となるように、前記電圧出力端子の電圧を調整する電圧状態修復手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、歯科用医療機器は、電圧検出手段によって、機器内の各電気回路に電力をそれぞれ供給する電源部の異常を監視することで、治療器具への流体の噴射、患者へのレーザ光の照射またはX線の照射の出力量の異常を間接的に監視する。そして、歯科用医療機器において、電圧状態判別手段は、電圧検出手段から印加される電圧に基づいて電源部の異常があるか否かを判別する。そして、歯科用医療機器は、異常が検出された電源ラインに対して電圧状態修復手段によって、当該電圧出力端子の電圧を調整することで、異常が検出された電源ラインに対応する、治療器具への流体の噴射、患者へのレーザ光の照射またはX線の照射の出力量の異常を間接的に修復する制御を行う。
【0016】
また、本発明の歯科用医療機器は、通信ネットワークに接続された伝送手段と、前記電圧出力端子において検出した電圧値が前記通常の範囲内ではない場合に、当該電圧出力端子の電圧に異常が発生していることを示す情報を、当該歯科用医療機器の使用環境に関する情報と共に、前記伝送手段を制御して外部の予め定められた宛先に送信する通信制御手段とをさらに備えることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、歯科用医療機器は、異常発生時に、その旨を外部の予め定められた宛先に通知できる。したがって、この場合には、検出した異常を示すリアルタイムな情報を通信制御手段で外部に伝えることで、例えば、カスタマーサービスエンジニアによるメンテナンス対応を迅速に行うことができる。その結果、診療をスムーズに行うことが可能となる。また、歯科用医療機器は、機器の異常を検出して自己修復する機能を果たすソフトウェアのバージョンアップ及び歯科用医療機器内の電子回路上のプログラムのバージョンアップが必要な場合に、伝送手段を用いて遠隔操作にてバージョンアップを行うことが可能となる。その結果、この歯科用医療機器を利用するユーザに対するサービスを向上させることが可能となる。
【0018】
また、本発明の歯科用医療機器は、前記電圧状態判別手段が、前記電圧状態修復手段によって前記電圧出力端子の電圧が調整された後において、当該電圧出力端子の電圧値を検出する電圧検出手段で検出された電圧値が通常の範囲内となるまで、予め定められた期間だけ正常か否かの判別を繰り返し、前記通信制御手段が、当該電圧出力端子において検出された電圧値が通常の範囲内とならずに前記予め定められた期間だけ正常か否かの判別が行われた場合に、前記伝送手段を制御して、当該電圧出力端子の電圧における異常が修復不可能であることを示す情報をさらに送信することが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、歯科用医療機器は、異常発生時に、機器の異常を検出した後で自己修復する機能を充分に果たせなかった場合であっても、その旨を外部の予め定められた宛先に通知できる。したがって、歯科用医療機器は、例えば、カスタマーサービスエンジニアによるメンテナンスが必要な場合でも、送信手段で事前に異常箇所を通知しておくことで、メンテナンス業者が事前に異常箇所の交換部品を断定できる。その結果、時間やコストの削減が可能である。
【0020】
また、本発明の歯科用医療機器は、前記電圧状態判別手段が、前記電圧出力端子の電圧における異常が予め定められた異常レベルの高低のいずれであるのかをさらに判別し、前記電圧出力端子の電圧の異常レベルが高い場合に、前記電源部の当該電圧出力端子に接続された電源ラインを利用する前記電気回路の機能、または、当該歯科用医療機器全体の機能を停止する機能停止手段をさらに備えることが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、歯科用医療機器は、電圧出力端子の電圧における異常発生時に、その異常レベルが高い場合に異常箇所に接続された電源ラインを利用する電気回路、または、当該歯科用医療機器全体の機能を停止するので、機器の異常を悪化させることを防止できる。その結果、患者やドクター等へのリスクを低減することが可能となる。
【0022】
また、本発明の歯科用医療機器は、当該歯科用医療機器内の各電気回路が当該電気回路に対して行うループバック信号の送信処理を監視し、前記ループバック信号を正常に受信していない電気回路を検出するループバックテスト監視手段をさらに備え、前記通信制御手段が、前記ループバック信号を正常に受信していない電気回路が検出された場合に、前記伝送手段を制御して、当該検出された電気回路を示す情報をさらに送信することが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、歯科用医療機器は、ループバック信号を正常に受信していない電気回路を検出した場合に、外部に伝えることで、例えば、カスタマーサービスエンジニアによるメンテナンス対応を迅速に行うことができる。この場合、該当する電気回路の機能を停止することがさらに好ましい。
【0024】
また、本発明の歯科用医療機器は、前記電圧出力端子において検出した電圧値が前記通常の範囲内ではない場合に、その旨を、警告表示及び/又は警告音にて知らせる報知手段をさらに備えることが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、歯科用医療機器は、報知手段によって、歯科用医療機器を利用する患者やドクター等へのリスクを低減することが可能となる。この場合、院内のLAN等により歯科用医療機器が設置された診療室内や診療室から離れた受付等の場所においても警告表示及び/又は警告音を出力することがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、歯科用医療機器は、機器の異常を検出して自己修復する機能を備えるので、機器の異常に気づかずに使用することを未然に防止し、患者やドクター等へのリスクを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る歯科用医療機器の一例を模式的に示す構成図である。
【図2】図1に示したレーザ装置の外観の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る歯科用医療機器の他の例の外観を示す斜視図である。
【図4】図3に示したユニット機器を模式的に示す構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る歯科用医療機器の全体構成を模式的に示すブロック図である。
【図6】図5に示した流体回路として水回路および空気回路を模式的に示す配管構成図である。
【図7】本発明の実施形態に係る歯科用医療機器による配管の異常時の動作の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係る歯科用医療機器による電源部の異常時の動作の一例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る歯科用医療機器による他の電気回路の異常時の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の歯科用医療機器を実施するための形態(以下「実施形態」という)について詳細に説明する。
【0029】
[歯科用医療機器の概要]
図1は、本発明の実施形態に係る歯科用医療機器の一例を模式的に示す構成図であり、図2は、図1に示したレーザ装置の外観の一例を示す斜視図である。レーザ装置(歯科用医療機器)100は、図1に示すように、電源回路120を含む電気回路部101と、レーザ照射用回路130と、自己診断基板140と、伝送回路150とを主要な構成として備えている。これら各部は、図2に示す装置本体191に収納される。図2に例示したレーザ装置100は、装置本体191の上部に接続された多関節型のマニピュレータ132の先端に、患者の歯の治療に用いられる治療器具であるハンドピース131が装着される。また、装置本体191の上部にテーブル192を有し、テーブル192には操作および表示のためのコントロールパネルが設けられている。さらに、装置本体191の底部には、レーザ装置100の動作を足で操作するためのフットコントローラ194と移動用のキャスタ195とが設けられている。なお、ハンドピース131の先端にニードルチップを装着して微小領域にレーザを照射することも可能である。
【0030】
図1に示した電源回路120は、商用電源から電源プラグ102およびトランス103に供給される電圧の二次側の電圧を監視するためのものであり、例えば、交流直流変換部121と、定電圧回路122と、自己修復回路123とを備える。なお、電源回路120の詳細については後記する。
【0031】
レーザ照射用回路130は、電源回路120から電圧を印加され、ハンドピース131から出力されるレーザ光を生成するものである。
自己診断基板140は、定電圧回路122で検出された二次側の電圧を監視し、検出電圧が規定値になるように自己修復回路123を制御するものである。なお、自己診断基板140の詳細については後記する。
【0032】
伝送回路(伝送手段)150は、通信ネットワーク(インターネット、公衆電話回線etc)NWを介して、外部の予め定められた宛先として、例えば、レーザ装置100のメンテナンスを管理するカスタマーサービスセンタ910のオペレータ911が使用する固定端末装置912や、実際のメンテナンスを行うカスタマーサービスエンジニア921が使用する携帯端末装置922に接続される。伝送回路150は、自己診断基板140の制御で所定の情報(レーザ装置100の使用環境に関する情報、異常を示す情報、バージョンアップ情報)を送受信するものであり、例えば、CPU、メモリ、通信インタフェース等から構成される。ここで、レーザ装置100の使用環境に関する情報とは、例えば、使用機器名、製造番号、医院名等を示す。また、異常を示す情報は、エラー履歴、現在の状況(自己修復中、自己修復不可能等)、故障箇所、重大な異常の有無等を示す。自己診断基板140は、検出電圧が規定の範囲から外れた場合に、伝送回路150を制御して、通信ネットワークNWを介して、カスタマーサービスセンタ910やカスタマーサービスエンジニア921に通知する。なお、バージョンアップ情報は、レーザ装置100内の各種ソフトウェアのバージョンアップを行うための情報である。
【0033】
本発明の実施形態に係る歯科用医療機器は、図1および図2に例示したレーザ装置に限定されるものではなく、例えば、図3および図4に示すユニット機器200でもよい。図3は、本発明の実施形態に係る歯科用医療機器の他の例の外観を示す斜視図であり、図4は、図3に示した歯科用医療機器ユニットを模式的に示す構成図である。ユニット機器200は、図3に示すように、基台210と、基台210の上に設けられた患者用椅子220と、患者用椅子220に座る患者の右側に設けられたドクターテーブル230と、患者の左側に設けられたユニット本体部240と、ユニット本体部240の背後に設けられたアシスタントハンガー250とを備えている。ユニット機器200は、ドクターが使用するドクターテーブル230には、コントロールパネルおよびインスツルメントハンガー231を備えている。また、アシスタントハンガー250には、アシスタントが使用するバキューム、シリンジが配設されている。
【0034】
基台210、ドクターテーブル230、ユニット本体部240およびアシスタントハンガー250の内部には、図4に示すように、自己診断基板140と、伝送回路150と、水回路やエア回路等からなる流体回路104を主要な構成として備える。なお、図示は省略するが、装置内には、電磁弁等の電気回路や、装置内の各電気回路に電力を供給する電源部を備える。
【0035】
流体回路104は、例えば、空気圧源からハンドピース131に供給される空気や圧縮空気(以下、エアという)が流れるエア管(流体管)104aと、ハンドピース131側からのエアを外部に排気するためのエア管(流体管)104bと、水圧源からハンドピース131に供給される水が流れる冷却水管(流体管)104c等を備える。なお、ハンドピース131は、例えば、高速回転を行うエアタービンハンドピースから構成される。
【0036】
エア管104a、エア管104b、冷却水管104cには、バルブ105a,105b,105cがそれぞれ設けられており、バルブ105a,105b,105cを用いて流量を所定値に設定できるように構成されている。
【0037】
また、冷却水管104cには、水用自己修復部91が設けられている。水用自己修復部91は、流量センサ(流体回路センサ手段)と、流量制御弁(調整用電磁弁)とを備えている。流量センサは、異常を監視するために冷却水管104cの予め定められた監視位置に設けられて監視位置を流れる水の流量を検出する。流量制御弁は、監視位置近傍に設けられ監視位置を流れる水の流量を調整する。自己診断基板140は、水用自己修復部91の流量センサの検出値を監視し、設定された所定値から外れた値となった場合には、水用自己修復部91の流量制御弁を制御する。
【0038】
本実施形態では、流量制御弁の制御能力を通常の50%程度に設定し、その制御能力を25%や80%のように調整することにより、流量の制御を行うこととする。なお、流量の制御方法は、これに限定されず、次のような方法を用いることも可能である。この場合、制御能力を100%として使用する流量制御弁を所定の設置箇所に複数並列に用意する。これらの流量制御弁は、制御範囲がそれぞれ異なっており、故障の規模による自己診断基板140の判断で、どの流量制御弁を使用するか選択され、決定された流量制御弁を使用する回路を通るように流量を修復する。
【0039】
同様に、エア管104a、エア管104bには、エア用自己修復部(流量センサ、流量制御弁)92がそれぞれ設けられている。自己診断基板140は、エア用自己修復部92の流量センサの検出値を監視し、設定された所定値から外れた値となった場合には、エア用自己修復部92の流量制御弁を制御する。
【0040】
図4に示した流体回路104は、一例であって、流体回路104を流れる水は、歯を掘削するエアタービンやマイクロモータ等のハンドピース131を冷却するためだけに供給されるわけではない。例えば、ウォーマで温められた水が図3に示すユニット本体部240のコップ給水用ノズル243から供給されるようにしてもよい。また、シリンジ(ハンドピース131)から患者の歯の洗浄のために噴射される水やスプレーのための水回路も含まれる。さらに、水回路は、スピットンボウル242から流れ込む水を排水する排水管も含まれる。このような水回路にも水用自己修復部91を設けることもできる。
【0041】
同様に、エアは、エアタービンやマイクロモータ等を回転させるためだけに供給されるわけではなく、ウォーマで温められてから、シリンジ(ハンドピース131)から患者の歯の洗浄後の乾燥のために噴射される温風のためのエア回路も含まれる。このようなエア回路にもエア用自己修復部92を設けることもできる。
【0042】
[歯科用医療機器の詳細な構成]
以下では、本発明の実施形態に係る歯科用医療機器の備える自己診断基板140と、その自己修復機能について、図5を参照して詳細に説明する。図5は、本発明の実施形態に係る歯科用医療機器の全体構成を模式的に示すブロック図である。ここでは、本発明の実施形態に係る歯科用医療機器のベストモードとして、図1および図2に示したレーザ装置が、図3および図4に示したユニット機器の構成を備えた装置について説明する。
【0043】
レーザ装置(歯科用医療機器)100Aは、図5に示すように、流体回路110と、電源回路120と、レーザ照射用回路130と、自己診断基板140と、伝送回路150と、操作部160と、報知部170とを備えている。
【0044】
流体回路110は、流体回路センサ手段111と、調整用電磁弁112と、バルブ113とを主要な構成として備えている。なお、流体回路110は、レーザに関係の無い水回路とエア回路だけではなく、このレーザ装置100Aの場合には、レーザ照射に伴うクーリングエア(アシストガス)の回路を含むことができる。
【0045】
流体回路センサ手段111は、流体回路110の異常を監視するために流体回路110の予め定められた監視位置に設けられて監視位置を流れる水やエア等の流体の流量を検出する流量センサ等の総称である。流体回路センサ手段111は、検出した流量値を電圧に変換した信号を自己診断基板140に送る。なお、監視位置とは、当該位置を流れる流体の流量を監視するための位置のことをいう。
【0046】
調整用電磁弁112は、監視位置に設けられ監視位置を流れる水やエア等の流体の流量を調整する流量制御弁の総称である。バルブ113は、流体回路110に設けられており、バルブ113を用いて流量を所定値に設定できるように構成されているものの総称であり、その機能に応じて、例えば、コック、逆止弁、シャトル弁、減圧弁、信号弁、調節弁、分岐弁ともいう。ここで、バルブ113は、電磁弁に限定されるものではなく、手動の弁でもよい。本実施形態では、水回路においては、流体回路センサ手段111と調整用電磁弁112により、水用自己修復部91(図4参照)を構成する。また、エア回路においては、流体回路センサ手段111と調整用電磁弁112により、エア用自己修復部92(図4参照)を構成する。
【0047】
電源回路(電源部)120は、レーザ装置100A内の各電気回路180に電力をそれぞれ供給するものであって、交流直流変換部121と、電圧検出回路122a,122b,122c,122d,122eと、自己修復回路としての電圧状態修復回路123a,123b,123c,123d,123eとを備えている。なお、各電気回路180とは、レーザ装置100A内の電源回路120を除く電気回路(流体回路110、レーザ照射用回路130、自己診断基板140、伝送回路150、操作部160、報知部170)の総称である。
【0048】
交流直流変換部121は、商用電源から電源プラグ102およびトランス103に供給される交流(AC)を直流(DC)に変換するものである。本実施形態では、交流直流変換部121は、一例として、歯科用レーザ機器の場合では、+5V,+12V,+24V,+28V,+30Vの各電圧出力端子に直流電圧を出力する。
【0049】
電圧検出回路(電圧検出手段)122a,122b,122c,122d,122eは、電源回路120から出力される電圧(2次側直流電圧)についての異常を監視するために電源回路120の+5V,+12V,+24V,+28V,+30Vの各電圧出力端子にそれぞれ接続されると共に、自己診断基板140に接続されている。これら電圧検出回路122a〜122eは、接続された各電圧出力端子の電圧値を検出するものである。電圧検出回路122a〜122eは、例えば、図1に示した定電圧回路やコンパレータ(オペアンプ)から構成される。ここで、定電圧回路は、帰還制御を行う定電圧回路(帰還型定電圧回路)を示す。
【0050】
電圧状態修復回路(電圧状態修復手段)123a,123b,123c,123d,123eは、電圧検出回路122a〜122eにそれぞれ接続されると共に、自己診断基板140に接続されている。電圧状態修復回路123a〜123eは、自己診断基板140の制御の下、+5V,+12V,+24V,+28V,+30Vの各電圧出力端子において検出された電圧値が通常の範囲内ではない場合に、各電圧出力端子の電圧値が通常の範囲内となるように、各電圧出力端子の電圧を調整するものである。電圧状態修復回路123a〜123eは、例えば、電源用IC、シャントレギュレータIC、トランジスタ等から構成される。ここで、シャントレギュレータは、基準電圧内蔵の誤差アンプであり、REF端子電圧(リファレンス電圧)が内蔵のVREF電圧(フィードバック電圧)と等しくなるように動作する。したがって、シャントレギュレータICを用いる場合、REF端子に自己診断基板140からの制御信号(補正後の電圧値)を出力する。
【0051】
レーザ照射用回路130は、図示は省略するが、使用者が操作部160を操作することによってレーザ光を発振する発振器と、レーザ光をハンドピース131へ出射する出射部とを有する。ここで、レーザは、10.6μmの波長の光を発振する炭酸ガスレーザが、水に吸収され易いために軟組織の奥深くまでに浸透しないことから好ましい。
【0052】
自己診断基板140は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリとを有した専用ボードから構成される。この自己診断基板140は、図5に示すように、流体回路状態判別手段141と、流体回路状態修復手段142と、流体回路機能停止手段143と、通信制御手段144と、電圧状態判別手段145と、電圧出力機能停止手段146と、ループバックテスト監視手段147とを備えている。なお、自己診断基板140上では、他の電気回路との間の信号入出力において必要に応じて、A/D変換(Analog to Digital conversion)またはD/A変換(Digital to Analog converter)が可能となっている。
【0053】
流体回路状態判別手段141は、流体回路センサ手段111によって流体回路110の監視位置で検出された水やエア等の流体の流量が流体回路110の仕様で規定された通常の範囲内(正常)であるか否かを判別するものである。この判別結果は、流体回路状態修復手段142に出力される。
【0054】
流体回路状態修復手段142は、流体回路状態判別手段141にて、流体回路110の監視位置で検出された水やエア等の流体の流量が通常の範囲内ではない場合に、通常の範囲内となるように、当該監視位置を流れる流体の流量を調整する調整用電磁弁112を制御するものである。
【0055】
また、本実施形態では、流体回路状態修復手段142によって調整用電磁弁112が制御された後において、流体回路状態判別手段141は、当該監視位置に設けられた流体回路センサ手段111で検出された水やエア等の流体の流量が通常の範囲内となるまで、予め定められた期間だけ正常か否かの判別を繰り返す。この期間は、時間で定めてもよいし、その期間内の判別回数で定めてもよい。本実施形態では、例えば、5回だけ正常か否かの判別を繰り返すこととする。判別を繰り返すタイミングは、例えば、クロックの所定倍数(例えば10秒間)で定められる。本実施形態では、これにより、流体回路状態判別手段141は、監視位置における異常が予め定められた異常レベルの高低のいずれであるのかをさらに判別することとする。つまり、予め定められた回数だけ正常か否かの判別した場合には、異常レベルが高く、予め定められた回数より少ない判別数の場合に異常レベルが低いこととする。
【0056】
流体回路機能停止手段143は、流体回路状態判別手段141にて監視位置の異常レベルが高いと判別された場合に、当該監視位置を流れる水やエア等の流体が通過する流体回路110の区間を利用する予め設けられた電磁弁等の装置の機能を停止するものである。本実施形態では、流体回路機能停止手段143は、水用自己修復部91またはエア用自己修復部92の流量制御弁や、該当する区間のその他のバルブ113に対して、動作を禁止するために、例えば弁を閉じるための「閉信号」を送信する。
【0057】
なお、例えばユニット機器の場合には、水回路を停止しても、患者用椅子220(図3参照)の昇降寝起き動作はできるといったような、故障箇所と関連性がなく、水回路を機能停止した上で使用しても安全性に影響がない機能は動作できることとする。ただし、人的被害が発生する可能性のある重大な異常であると自己診断基板140が判断した場合、外部に異常を通知する際にその旨も送信し、かつ、機能を停止させる。このような例としては、歯科用レーザにおいてエア回路の機能に異常が発生し、クーリングエアの出力が通常より高い状態でレーザの照射が可能な場合、患者に気腫を発生させるリスクがあると考えられるので、このような場合には、故障箇所がエア回路だけであっても、レーザ照射機能も停止する。つまり、この場合には、レーザ装置100Aの機能を停止することとする。
【0058】
電圧状態判別手段145は、電源回路120の+5V,+12V,+24V,+28V,+30Vの各電圧出力端子において検出した電圧値が電源回路120の仕様で規定された通常の範囲内(正常)であるか否かを判別するものである。この判別結果は、電圧状態修復回路123a〜123eに出力される。本実施形態では、電圧状態判別手段145は、電圧状態修復回路123a〜123eによって電圧出力端子の電圧が調整された後において、当該電圧出力端子の電圧値を検出する電圧検出回路122a〜122eで検出された電圧値が通常の範囲内となるまで、予め定められた期間(例えば、その期間の判別回数を5回とする)だけ正常か否かの判別を繰り返す。判別を繰り返すタイミングは、例えば、クロックの所定倍数(10秒間など)で定められる。本実施形態では、これにより、電圧状態判別手段145は、電源回路120の電圧出力端子の電圧値における異常が予め定められた異常レベルの高低のいずれであるのかをさらに判別することとする。つまり、予め定められた回数だけ正常か否かの判別した場合には、異常レベルが高く、予め定められた回数より少なく判別数の場合に異常レベルが低いこととする。
【0059】
電圧出力機能停止手段146は、電圧状態判別手段145にて電源回路120の電圧出力端子の電圧の異常レベルが高いと判別された場合に、電源回路120の当該電圧出力端子に接続された電源ラインを利用する電気回路の機能を停止するものである。電圧出力機能停止手段146は、異常が検出された電圧出力端子の電源ラインに接続された装置内の電気回路180に対して、動作を禁止するための動作停止コマンドを送信する。本実施形態では、電圧出力機能停止手段146は、異常のある電源ラインを利用不可としてから所定時間(例えば10秒間)が経過したか否かを判別し、判別結果を通信制御手段144に出力する。
【0060】
ループバックテスト監視手段147は、レーザ装置100A内の各電気回路180が正常に稼働しているかどうか確認するために電気回路180自体に対して試しにデータを送ってみるループバック(loopback)の実行を監視し、ループバック信号を正常に受信していない電気回路を検出するものである。本実施形態では、このループバックテスト監視手段147は、ループバック信号を正常に受信していない電気回路180を検出した場合に、その異常を外部に通知するためにその旨を通信制御手段144に出力する。また、この場合、ループバックテスト監視手段147は、その異常を報知部170で報知する。さらに、この場合、ループバックテスト監視手段147は、その旨を電圧出力機能停止手段146に出力し、これにより、その異常箇所の動作を停止させる制御を行うこととする。
【0061】
通信制御手段144は、流体回路110の監視位置で検出された水やエア等の流体の流量が通常の範囲内ではない場合に、当該監視位置が異常箇所であることを示す情報を、レーザ装置100Aの使用環境に関する情報と共に、伝送回路150を制御して外部に送信するものである。また、本実施形態では、通信制御手段144は、検出された水やエア等の流体の流量が通常の範囲内とならずに予め定められた回数だけ正常か否かの判別が行われた場合に、伝送回路150を制御して、当該監視位置における異常が修復不可能であることを示す情報をさらに送信する。
【0062】
通信制御手段144は、電源回路120の各電圧出力端子において検出した電圧値が通常の範囲内ではない場合に、当該電圧出力端子の電圧に異常が発生していることを示す情報を、レーザ装置100Aの使用環境に関する情報と共に、伝送回路150を制御して、外部に送信する。また、本実施形態では、通信制御手段144は、電源回路120の電圧出力端子において検出された電圧値が通常の範囲内とならずに予め定められた回数だけ正常か否かの判別が行われた場合に、伝送回路150を制御して、当該電圧出力端子の電圧における異常が修復不可能であることを示す情報をさらに送信する。
【0063】
通信制御手段144は、ループバックテスト監視手段147にてループバック信号に異常が検出された場合に、当該ループバック信号に異常が検出された電気回路180の情報を、レーザ装置100Aの使用環境に関する情報と共に、伝送回路150を制御して外部に送信する。
【0064】
なお、流体回路状態判別手段141、流体回路状態修復手段142、流体回路機能停止手段143、通信制御手段144、電圧状態判別手段145、電圧出力機能停止手段146およびループバックテスト監視手段147は、CPUがROM等に格納された所定のプログラムをRAMに展開して実行することによりその機能が実現されるものである。したがって、これらの手段141〜147は、一般的なコンピュータに、前記した各機能を実行させるプログラムを実行することで実現することもできる。このプログラムは、通信回線を介して提供することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0065】
操作部160は、ハンドピース131の動作のON/OFFや動作レベルの調整をするためのものであり、例えば、テーブル192(図2参照)上のコントロールパネルや、フットコントローラ194(図2参照)から構成される。
【0066】
報知部(報知手段)170は、伝送回路150によりレーザ装置100Aの異常に関する情報を外部に送信する場合に、当該異常に関する情報を、警告表示及び/又は警告音にて知らせるものである。本実施形態では、現在の状況を使用者に知らせるために、報知部170に、表示部171とスピーカ172とを備えることとした。
【0067】
表示部171は、例えば、LED点灯ランプ、デジタル表示パネル、液晶画面等から構成される。LED点灯ランプを用いる場合には、レーザ装置100Aの部位ごとに複数のLED点灯ランプを設けて、異常発生箇所を示すランプを点灯または点滅により警告表示することができる。あるいは、レーザ装置100Aの動作状態(正常、異常、修復不可能等)ごとに複数のLED点灯ランプを設けて、動作状態を示すランプの点灯または点滅により警告表示することができる。あるいは、レーザ装置100Aの異常を示すLED点灯ランプを1つ設けて、そのランプの点灯または点滅により警告表示することができる。また、デジタル表示パネルや液晶画面等を用いる場合には、「ERROR」という表示と共に異常箇所を表示したり、単に「ERROR」という文字の表示または点滅により警告表示したりすることができる。さらに、ユニット本体部240の上部等に設けられる図示しない無影灯を表示部171として数回点滅させることにより警告表示する場合には、異常を表示するための特別な構成を新たに設ける必要がない。
【0068】
スピーカ172は、例えば、「異常が発生しました。」との警告や、レーザ装置100Aの動作状態(正常、異常、修復不可能等)、異常発生箇所を示す音声ガイダンスや警告音を出力するものである。なお、報知部170にブザーを組み込んでブザーにより警告音を発生させるようにしてもよい。
【0069】
また、報知部170を、レーザ装置100Aの設置された医院の院内ネットワーク等に接続し、医院内の受付等にあるLED表示ランプ等に、レーザ装置100Aの動作状態(正常、異常、修復不可能等)をリアルタイムで表示させたり、医院内の受付等にあるパソコン等の画面上に、レーザ装置100Aの動作状態(正常、異常、修復不可能等)をリアルタイムで表示させたりすることも可能である。
【0070】
[歯科用医療機器の流体回路の配管構成例]
図6は、図5に示した流体回路として水回路および空気回路を模式的に示す配管構成図である。図6に示すレーザ装置100Aは、ユニット300、テーブル192、フットバルブ21aを有するフットコントローラ194、バルブブロック196、鉢洗いユニット197、セパレータ198、アシスタントハンガー250等を有している。
【0071】
ユニット300は水やエアを供給するためのものであり、1は水圧源、1aは水圧源1に接続された加圧水供給管路であり、この加圧水供給管路1aには水圧源1側から順に開閉コック2、フィルタ3a、逆止弁4、工事ボックス用コック2a、減圧弁18、水用自己修復部91(図4参照)、中空糸フィルタ3bが接続されている。
【0072】
また、ユニット300において、16は空気圧源であり、この空気圧源16には、圧縮空気供給管路15aが接続され、この圧縮空気供給管路15aには、開閉コック17、減圧弁18、エア用自己修復部92(図4参照)、ドレン付きフィルタ19、圧力計20、フットコントローラ194を順に接続されている。
【0073】
加圧水供給管路1aには、それぞれ分岐管路である加圧水供給管路1b、コップ給水管路1c、鉢洗い管路1dが分岐接続されている。
【0074】
加圧水供給管路1bには、バルブブロック196の加圧水供給管路1bの1次側の入口28に、ウォーマ9と、フットコントローラ194から出力される信号によって作動する加圧水供給バルブ6とが接続されている。また、加圧水供給管路1bは、ウォーマ9の手前で分岐し、水用自己修復部91を介してシリンジ62に接続されている。
【0075】
また、加圧水供給管路1aには、中空糸フィルタ3bの前段で鉢洗い管路1dが分岐接続されている。
【0076】
コップ給水管路1cは、加圧水供給管路1aから分岐され、ウォーマ9、コップ給水用の電磁弁10に接続され、水用自己修復部91を介して、さらにコップ65へ水を注水するタイマ式のオートカラン(コップ給水パイプ)241へと接続されている。
【0077】
鉢洗い管路1dは、加圧水供給管路1aから分岐し、鉢洗い給水用の電磁弁10に接続され、さらにその端部は、鉢洗い242に水を供給する鉢洗いノズル13に接続されている。
【0078】
また、加圧水供給管路1bには、バルブブロック196内で分岐点30、31、32からそれぞれ分岐管路が設けられ、4個の加圧水供給用バルブ26、4個の流量調節弁27、4個の水用自己修復部91が接続されており、最後に、DI(dynamic instrument)であるハンドピース131の先端の水噴射ノズル部を有したエアタービン51、マイクロモータ52およびエアタービン53、スケーラ等のオプション54が各々接続されている。
【0079】
圧縮空気供給管路15aは、フットコントローラ194を経てエア用自己修復部92を介して、テーブル192、バルブブロック196内に延長している。そして、バルブブロック196内において、4個の流量調節弁27、4個のバルブ41、4個のエア用自己修復部92が接続され、さらに各エア用自己修復部92の出口側にハンドピース131の先端の水噴射ノズル部のエアタービン51、マイクロモータ52およびエアタービン53およびスケーラ等のオプション54が各々接続されている。
【0080】
また、圧縮空気供給管路15aに対して、分岐管路である圧縮空気供給管路15bが接続され、この圧縮空気供給管路15bはテーブル192、バルブブロック196内に延長している。そして、バルブブロック196内において、圧縮空気供給管路15bに4個の信号弁25が接続されている。
【0081】
さらに、図6に示すレーザ装置100Aは、圧縮空気供給管路15bには、分岐管路である圧縮空気供給管路15cが接続され、この圧縮空気供給管路15cには、減圧弁18が接続されている。そして、減圧弁18の出口側には、スプレー用およびチップエア用を供給する圧縮空気供給管路15c、15cが分岐されており、各々にはバルブ23a、23bが接続されている。そして、バルブ23aにはエア用自己修復部92および流量調節弁27が接続され、その出口の管路はシャトル弁44の入口に接続されている。また、バルブ23bにはエア用自己修復部92が接続され、その出口の管路はシャトル弁44の出口に接続されている。このシャトル弁44のもう1つの出口に接続された管路は、バルブブロック196内に延長しており、この管路には、4個のバルブ45、4個のエア用自己修復部92が接続され、さらに各バルブ45の出口側がハンドピース131の先端のノズル部のエアタービン51、マイクロモータ52およびエアタービン53およびスケーラ等のオプション54に各々接続されている。
【0082】
4個の信号弁25は、圧縮空気供給管路15bにより供給する圧縮空気により各々動作し、各々の出力信号により4個の加圧水供給用バルブ26、4個のバルブ41、4個のバルブ45の開閉制御を個別に行うようになっている。圧縮空気供給管路15bには、さらに分岐管路15fが設けられ、この分岐管路15fには減圧弁18が接続され、減圧弁18の出口側に、エア用自己修復部92および64を介して、シリンジ49が接続されている。このシリンジ49には、コップ給水管路1cから流量調節弁27、水用自己修復部91を介して水が供給されるようになっている。
【0083】
また、圧縮空気供給管路15cには分岐管路15gが接続され、この分岐管路15gは、エア用自己修復部92およびウォーマ9を介して、ハンドピース131の1つであるシリンジ62に圧縮空気を供給するようになっている。
【0084】
さらに、図6に示すレーザ装置100Aは、リンスユニット70に接続したバキューム71、吸水管72を備えている。即ち、コップ給水管路1cから分岐管路1eが分岐され、分岐管路1eには電磁弁10、逆止弁付きタンク74が接続されて、逆止弁付きタンク74から分岐弁75、水用自己修復部91、調節弁76を経て吸水管72に吸水するとともに、エア用自己修復部92を介したセントラルバキューム部79の動作により、バキューム71により吸い取った水を調節弁77、水用自己修復部91、分岐弁75を経てリンスユニット70に設けた貯留タンク78に送ることで排水可能としている。貯留タンク78の底部は水用自己修復部91を介して排水系に接続されている。
【0085】
さらに、図6に示すレーザ装置100Aは、ノーバックシステム部80としてエアタービン51、53間の逆流を防止するシャトル弁81、エア用自己修復部92、電磁弁82、ストラップ83を備えている。
【0086】
[レーザ装置の動作]
図5に示したレーザ装置(歯科用医療機器)の動作について図7ないし図9を参照(適宜図1ないし図6参照)して説明する。図7は、図5に示したレーザ装置による配管の異常時の動作の一例を示すフローチャート、図8は、電源部の異常時の動作の一例を示すフローチャート、図9は、他の電気回路の異常時の動作の一例を示すフローチャートである。
【0087】
<配管の異常時の動作>
まず、レーザ装置100Aは、電源ON時に、自己診断基板140の流体回路状態判別手段141の監視位置ごとの判別回数のカウンタ値Cを「0」にしておく。そして、レーザ装置100Aは、水用自己修復部91またはエア用自己修復部92の流量センサが流体回路110上の監視位置の流量を常に検出し、検出値を自己診断基板140へ送信する(ステップS1)。そして、レーザ装置100Aは、自己診断基板140の流体回路状態判別手段141によって、水やエア等の流体の流量が流体回路110の仕様で規定された通常の範囲内(正常)であるか否かを定期的に判別する(ステップS2)。正常である場合(ステップS2:Yes)、流体回路状態判別手段141は、当該監視位置についての処理を終了する。
【0088】
一方、異常がある場合(ステップS2:No)、流体回路状態判別手段141は、当該監視位置の判別回数の現在のカウンタ値Cに「1」を加算して(ステップS3)、現在のカウンタ値Cが5以上であるか否かを判別する(ステップS4)。現在のカウンタ値Cが5未満である場合(ステップS4:No)、自己診断基板140の流体回路状態修復手段142は、当該監視位置の流量制御弁に、流量を通常の範囲内とさせる制御信号を送信する(ステップS5)。これにより、流量制御弁は、流量を調整する(ステップS6)。そして、自己診断基板140の通信制御手段144は、異常が検出された流体回路110の監視位置が異常箇所であることを示す情報を、レーザ装置100Aの使用環境に関する情報と共に、伝送回路150を制御して外部に送信し(ステップS7)、ステップS2に戻る。このとき、レーザ装置100Aは、報知部170によって、レーザ装置100Aの使用者に機器の状況(自己修復中等)を知らせる。なお、同一の監視位置についての異常を通知する送信回数が2回以上であれば、エラー履歴を送信する。
【0089】
前記したステップS4において、当該監視位置の現在のカウンタ値Cが5以上である場合(ステップS4:Yes)、自己診断基板140の流体回路機能停止手段143は、当該監視位置を流れる水やエア等の流体が通過する流体回路110の区間の利用を禁止する制御信号を送信する(ステップS8)。そして、自己診断基板140の通信制御手段144は、伝送回路150を制御して、異常が検出された流体回路110の監視位置における異常が修復不可能であることを示す情報をさらに送信し(ステップS9)、ステップS10に進む。このとき、レーザ装置100Aは、報知部170によって、レーザ装置100Aの使用者に機器の状況(自己修復不可能等)を知らせる。そして、レーザ装置100Aは、当該監視位置の判別回数の現在のカウンタ値Cをクリアして(ステップS10)、処理を終了する。
【0090】
≪水回路の場合の具体例≫
具体的には、図6に示した配管構成においては、自己診断基板140は、各監視位置に設けられた流量センサから受信した流量に基づいて、例えば、コップ給水用ノズル243から一定の水量を供給するために必要な流量であるか否かを判定することができる。そして、自己診断基板140は、各流量センサから、「コップ給水用ノズル243から一定の水量を供給する」ことができないような値の信号が送られてきた場合には、別回路を起動させて流量制御弁に信号を送り、正常な範囲に戻す。そして、自己診断基板140は、流量制御弁(調整用電磁弁112)へ信号送信後、該当する流量センサからの信号が「正常な流量を示す値」の範囲に戻っているか判定する。戻っていない場合は、数回(例えば5回)流量制御弁による調整を行い、それでも復帰しない場合は、「水圧源1からコップ給水用ノズル243への水回路」を使用できないようにし、当該水回路が必要な電気部品を使用不可とする。
【0091】
≪エア回路の場合の具体例≫
具体的には、図6に示した配管構成においては、自己診断基板140は、各監視位置に設けられた流量センサから受信した流量に基づいて、例えば、エアタービン51を定格の回転数で回転させ、機能を満足させるために必要な一定の空気流量であるか判定することができる。そして、自己診断基板140は、各流量センサから、「エアタービン51へ一定の空気量を供給する」ことができないことを示す値の信号が送られてきた場合には、別回路を起動させて流量制御弁に信号を送り、正常な範囲に戻す。そして、自己診断基板140は、流量制御弁(調整用電磁弁112)へ信号送信後、該当する流量センサからの信号が「正常な流量を示す値」の範囲に戻っているか判定する。戻っていない場合は、自己診断基板140は、数回(例えば5回)流量制御弁による調整を行い、それでも復帰しない場合は、「空気圧源16からエアタービン51へのエア回路」を使用できないようにし、当該エア回路が必要な電気部品を使用不可とする。なお、当該エア回路が必要な部品とは、(1)エアタービン51とする場合、(2)エアを利用しているすべてのハンドピース類51,52,53,54,49,62の場合のいずれかを示す。自己診断基板140は、異常箇所に応じて、(1),(2)のいずれかを選択する。
【0092】
<電源部の異常時の動作>
まず、レーザ装置100Aは、電源ON時に、自己診断基板140の電圧状態判別手段145の電圧出力端子ごとの判別回数のカウンタ値Cを「0」にしておく。そして、レーザ装置100Aは、電源回路120の電圧検出回路122a〜122eが電源回路120の+5V,+12V,+24V,+28V,+30Vの各電圧出力端子の電圧を常に検出し、検出値を自己診断基板140へ印加する(ステップS11)。自己診断基板140は、図示しないA−Dコンバータで検出値をデジタル変換した電圧値を取得する。
【0093】
そして、レーザ装置100Aは、自己診断基板140の電圧状態判別手段145によって、各電圧出力端子において検出した電圧値が電源回路120の仕様で規定された通常の範囲内(正常)であるか否かを定期的に判別する(ステップS12)。異常がある場合(ステップS12:No)、電圧状態判別手段145は、当該電圧出力端子についての判別回数の現在のカウンタ値Cに「1」を加算して(ステップS13)、現在のカウンタ値Cが5以上であるか否かを判別する(ステップS14)。現在のカウンタ値Cが5未満である場合(ステップS14:No)、電圧状態判別手段145は、電源回路120の自己修復回路としての電圧状態修復回路123a〜123eに、電圧出力端子の電圧を通常の範囲内とさせる制御信号を送信する(ステップS15)。これにより、制御信号を受けた電圧状態修復回路123a〜123eは、当該電圧出力端子の電圧を調整する(ステップS16)。そして、自己診断基板140の通信制御手段144は、レーザ装置100Aの使用環境に関する情報に、当該電圧出力端子の電圧に異常が発生していることを示す情報を含めて伝送回路150により外部に送信し(ステップS17)、報知部170により使用者にも報知し、ステップS12に戻る。なお、同一の電圧出力端子についての異常を通知する送信回数が2回以上であれば、エラー履歴を送信する。
【0094】
前記したステップS14において、当該電圧出力端子についての現在のカウンタ値Cが5以上である場合(ステップS14:Yes)、自己診断基板140の電圧出力機能停止手段146は、当該電圧出力端子に接続された各電気回路の利用を禁止する制御信号を送信する(ステップS18)。電圧出力機能停止手段146は、所定時間(例えば10秒間)が経過するまでに、当該電源ラインが回復したか否かを判別する(ステップS19)。当該電源ラインが回復しなかった場合(ステップS19:No)、修復不可を示す信号を通信制御手段144に出力する。そして、自己診断基板140の通信制御手段144は、レーザ装置100Aの使用環境に関する情報に、当該電圧出力端子の電圧における異常が修復不可能であることを示す情報をさらに含めて伝送回路150により外部に送信する(ステップS20)。また、報知部170により使用者にも報知する。
【0095】
一方、前記したステップS19において、異常が検出された電源ラインが回復した場合(ステップS19:Yes)、自己診断基板140の電圧出力機能停止手段146は、修復完了を示す信号を通信制御手段144に出力する。そして、自己診断基板140の通信制御手段144は、レーザ装置100Aの使用環境に関する情報に、検出された異常が修復されたことを示す情報をさらに含めて伝送回路150により外部に送信し(ステップS21)、報知部170により使用者にも報知する。そして、このステップS21または前記したステップS20に続いて、自己診断基板140の電圧状態判別手段145は、当該電圧出力端子についての判別回数の現在のカウンタ値Cをクリアし(ステップS22)、処理を終了する。
【0096】
また、前記したステップS12において、自己診断基板140の電圧状態判別手段145によって、電源回路120の電圧出力端子の電圧に異常がないと判別された場合(ステップS12:Yes)、カウンタ値Cをクリアしていない電圧出力端子の電圧について既に異常が発生していることを示す情報を通知していた場合(ステップS23:Yes)、自己診断基板140はステップS21に進む。さらに、前記したステップS12において、自己診断基板140の電圧状態判別手段145によって、電源回路120の電圧出力端子の電圧に異常がないと判別された場合(ステップS12:Yes)、カウンタ値Cをクリアしていない電圧出力端子の電圧について異常を通知していない場合(ステップS23:No)、自己診断基板140はステップS22に進む。
【0097】
<他の電気回路の異常時の動作>
まず、レーザ装置100Aは、電源ON時に、自己診断基板140のループバックテスト監視手段147の監視している電気回路180ごとの判別回数のカウンタ値Cを「0」にしておく。そして、ループバックテスト監視手段147に監視されている各電気回路180は、起動時を含む所定のタイミングにおいて、自己に対するテスト信号を定期的に送信し(ステップS31)、そのテスト信号であるループバック信号を受信する(ステップS32)。
【0098】
そして、レーザ装置100Aは、ループバックテスト監視手段147によって、各電気回路180がループバック信号を正常に受信しているか否かを判別する(ステップS33)。各電気回路180がループバック信号を正常に受信している場合(ステップS33:Yes)、正常な電気回路180についての処理を終了する。一方、ループバック信号を正常に受信していない電気回路180がある場合(ステップS33:No)、ループバックテスト監視手段147は、当該電気回路180の判別回数の現在のカウンタ値Cに「1」を加算する(ステップS34)。
【0099】
そして、ループバックテスト監視手段147は、当該電気回路180の現在のカウンタ値Cが5以上であるか否かを判別する(ステップS35)。現在のカウンタ値Cが5未満である場合(ステップS35:No)、ループバックテスト監視手段147は、ステップS33に戻る。一方、現在のカウンタ値Cが5以上である場合(ステップS35:Yes)、ループバックテスト監視手段147は、当該電気回路180を異常箇所として、報知部170の表示部171にエラー表示し(ステップS36)、異常箇所としての当該電気回路180の使用を禁止する(ステップS37)。そして、自己診断基板140の通信制御手段144は、レーザ装置100Aの使用環境に関する情報に、異常が検出された電気回路180を示す情報を含めて伝送回路150により外部に送信し(ステップS38)、処理を終了する。なお、ループバックテスト監視手段147が、正常に信号がループバックしているかを確認する際に、流体回路110の異常を監視するようにしてもよい。
【0100】
本実施形態によれば、レーザ装置100Aは、水回路の配管の異常時に異常を検出し、自己修復および外部への通知を行うので、水回路の配管の水圧の低下や増加による、給水不足や水漏れ、各配管の損傷等による患者へのリスクを未然に防止することができる。
また、本実施形態によれば、レーザ装置100Aは、エア回路の配管の異常時に異常を検出し、自己修復および外部への通知を行うので、エア回路の配管の空気圧の低下や増加による、エアタービン51等の回転不良やベアリング摩耗、マイクロモータ52等の発熱、各配管の損傷等による患者へのリスクを未然に防止することができる。
さらに、本実施形態によれば、レーザ装置100Aは、電源回路120の電圧出力端子における電圧の異常時に異常を検出し、自己修復および外部への通知を行うので、異常のある電源ラインの電圧低下によるレーザ照射不良や、異常電圧による電気回路部品の故障を未然に防止することができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で実施することができる。例えば、本実施形態では、レーザ装置とユニット機器との機能を合わせた歯科用医療機器として説明したが、本発明は、それぞれの単体でも実現できることはもちろんである。
【0102】
また、本実施形態では、流体回路を流れる流体として水やエアを例示したが、流体は、空気の代わりに不活性ガスや、ガスバーナ用の燃料ガス等でもよい。また、流体回路センサ手段111は、流体の流量を検出する流量センサであるものとしたが、流体の圧力を検出する圧力センサでもよい。
【0103】
また、本実施形態では、流体回路状態判別手段141や電圧状態判別手段145は、予め定められた回数だけ正常か否かの判別をした場合には、異常レベルが高く、予め定められた回数より少ない判別数の場合に異常レベルが低いこととしたが、本発明において、異常レベルの高低の決定法と判別回数とを連動させる必要は無い。例えば、規定された通常の範囲から10%以上ずれた場合に高レベル、それよりも小さい場合に低レベルとしてもよい。
【0104】
また、本実施形態では、流体回路110の異常検出および修復と、電源回路120の異常検出および修復との両方を行うものとしたが、本発明は、流体回路110の異常検出および修復と、電源回路120の異常検出および修復とのいずれか一方でも実現できることはもちろんである。つまり、本発明の歯科用医療機器において流体回路110は必須ではなく、本発明によれば、例えば、X線を照射するレントゲン装置や、CT装置等において、電源回路120の異常検出および修復を行うことが可能である。
【0105】
また、本実施形態のレーザ装置100Aにおいて、患者の歯の治療、診断、清掃のために、治療器具や、バキューム、シリンジ等に噴射されるエアや水等の流体(媒体)の出力量を媒体の出力として直接的に検出する媒体出力検出手段とは、流体回路センサ手段111、すなわち、流量センサや圧力センサのことをいう。また、本実施形態のレーザ装置100Aにおいて、患者の歯の治療のために患者の歯に照射されるレーザ光(媒体)のレーザ出力量を媒体の出力として間接的に検出する媒体出力検出手段とは、レーザ照射用回路130に接続された電源ラインに電力を供給する電圧出力端子における電圧(電源出力電圧)を検出する電圧検出回路122a〜122eのことをいう。この電源ラインに電力を供給する電源回路120は、レーザ光の照射を示す照射エネルギを生成する基になる。したがって、本発明を、同様にしてレントゲン装置やCT装置等のX線撮影装置に適用したときに、患者の歯の治療の診断のために患者の照射されるX線(媒体)のX線出力量を媒体の出力として間接的に検出する媒体出力検出手段とは、図示しないX線照射用回路に接続された電源ラインに電力を供給する電圧出力端子における電圧(電源出力電圧)を検出する電圧検出回路のことをいう。
【0106】
また、本発明の歯科用医療機器は、レーザ照射やX線照射される媒体(レーザ光、X線)の出力量を直接的に検出する媒体出力検出手段を用いることも可能である。例えば、歯科用医療機器がレーザ装置の場合、レーザ発振管から出力されたレーザ光を、ハーフミラー等により分離し、一方をハンドピースに出力し、他方を、媒体出力検出手段としてのレーザ出力検知用センサに出力する。ここで、レーザ出力検知用センサとしては、例えば、レーザ光を直接検出する赤外線センサを用いることができる。また、例えば、レーザ出力検知用センサへ出力されるレーザ光を、熱(熱量)に変換し、この変換された熱量を熱電対等の温度センサで検出することもできる。このレーザ出力検知用センサ等で検出したレーザ出力量(照射エネルギ)が正常でない場合は、例えば、図5に示した電圧状態修復回路123a〜123eを媒体出力修復手段として機能させることができる。具体的には、この場合の媒体出力修復手段は、レーザ発振管を制御する電源部の電圧出力端子の電圧を調整する。これにより、レーザ発振管から出力されるレーザ光の出力量を制御する。
【0107】
また、歯科用医療機器が、例えば、X線撮影装置の場合には、X線撮像手段に組み込まれたX線量を検出するX線検出器やCCDイメージセンサを、媒体出力検出手段として用いることができる。ここで、X線検出器は、例えばX線イメージインテンシファイアやフラットパネル検出器を用いることができる。この媒体出力検出手段で検出したX線照射量(照射エネルギ)が正常でない場合は、例えば、図5に示した電圧状態修復回路123a〜123eを媒体出力修復手段として機能させることができる。具体的には、この場合の媒体出力修復手段は、X線源から照射されるX線量を制御する管電圧を調整する。これにより、X線源から照射からX線の出力量を制御する。
【0108】
このようにレーザ照射やX線照射される媒体(レーザ光、X線)の出力量を直接的に検出する媒体出力検出手段を用いる歯科用医療機器において、図5に示したレーザ装置100Aと同様な構成を備えることが好ましい。例えば、図5に示した伝送回路150、通信制御手段144、ループバックテスト監視手段147、報知部170等を備えることができる。なお、この場合、図5に示した電圧状態判別手段145に類似した機能を有した手段であって、媒体出力検出手段で検出された媒体(レーザ光、X線)の出力量が当該歯科用医療機器の仕様で規定された通常の範囲内であるか否かを判別する媒体出力状態判別手段を備えることができる。また、この場合、電圧出力機能停止手段146に類似した機能を有した手段であって、媒体出力検出手段で検出された媒体(レーザ光、X線)の出力量の異常レベルが高い場合に、媒体(レーザ光、X線)を出力する機能、または、当該歯科用医療機器全体の機能を停止する機能停止手段備えることができる。
【符号の説明】
【0109】
1 水圧源(流体供給源)
16 空気圧源(流体供給源)
91 水用自己修復部
92 エア用自己修復部
100(100A) レーザ装置(歯科用医療機器)
101 電気回路部
102 電源プラグ
103 トランス
104a エア管(流体管)
104b エア管(流体管)
104c 冷却水管(流体管)
110 流体回路
111 流体回路センサ手段
112 調整用電磁弁
113 バルブ
120 電源回路(電源部)
121 交流直流変換部
122 定電圧回路(電圧検出手段)
122a〜122e 電圧検出回路(電圧検出手段)
123 自己修復回路(電圧状態修復手段)
123a〜123e 電圧状態修復回路(電圧状態修復手段)
130 レーザ照射用回路
131 ハンドピース
132 マニピュレータ
140 自己診断基板
141 流体回路状態判別手段
142 流体回路状態修復手段
143 流体回路機能停止手段(機能停止手段)
144 通信制御手段
145 電圧状態判別手段
146 電圧出力機能停止手段(機能停止手段)
147 ループバックテスト監視手段
150 伝送回路(伝送手段)
160 操作部
170 報知部(報知手段)
171 表示部
172 スピーカ
180 電気回路
191 装置本体
192 テーブル
194 フットコントローラ
195 キャスタ
196 バルブブロック
197 鉢洗いユニット
198 セパレータ
200 ユニット機器(歯科用医療機器)
250 アシスタントハンガー
NW 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の歯の治療または診断のために、治療器具への流体の噴射、患者へのレーザ光の照射またはX線の照射により、流体、レーザ光またはX線を出力する歯科用医療機器であって、
当該歯科用医療機器内の各電気回路に電力をそれぞれ供給する電源部から出力される電圧についての異常を監視するために前記電源部の予め定められた電圧出力端子の電圧値を検出する電圧検出手段と、
前記電圧出力端子において検出した電圧値が当該電源部の仕様で規定された通常の範囲内であるか否かを判別する電圧状態判別手段と、
前記電圧出力端子において検出した電圧値が前記通常の範囲内ではない場合に、前記電圧出力端子の電圧値が前記通常の範囲内となるように、前記電圧出力端子の電圧を調整する電圧状態修復手段と、
を備えることを特徴とする歯科用医療機器。
【請求項2】
通信ネットワークに接続された伝送手段と、
前記電圧出力端子において検出した電圧値が前記通常の範囲内ではない場合に、当該電圧出力端子の電圧に異常が発生していることを示す情報を、当該歯科用医療機器の使用環境に関する情報と共に、前記伝送手段を制御して外部の予め定められた宛先に送信する通信制御手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の歯科用医療機器。
【請求項3】
前記電圧状態判別手段は、前記電圧状態修復手段によって前記電圧出力端子の電圧が調整された後において、当該電圧出力端子の電圧値を検出する電圧検出手段で検出された電圧値が通常の範囲内となるまで、予め定められた期間だけ正常か否かの判別を繰り返し、
前記通信制御手段は、当該電圧出力端子において検出された電圧値が通常の範囲内とならずに前記予め定められた期間だけ正常か否かの判別が行われた場合に、前記伝送手段を制御して、当該電圧出力端子の電圧における異常が修復不可能であることを示す情報をさらに送信することを特徴とする請求項2に記載の歯科用医療機器。
【請求項4】
前記電圧状態判別手段は、前記電圧出力端子の電圧における異常が予め定められた異常レベルの高低のいずれであるのかをさらに判別し、
前記電圧出力端子の電圧の異常レベルが高い場合に、前記電源部の当該電圧出力端子に接続された電源ラインを利用する前記電気回路の機能、または、当該歯科用医療機器全体の機能を停止する機能停止手段をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の歯科用医療機器。
【請求項5】
当該歯科用医療機器内の各電気回路が当該電気回路に対して行うループバック信号の送信処理を監視し、前記ループバック信号を正常に受信していない電気回路を検出するループバックテスト監視手段をさらに備え、
前記通信制御手段は、前記ループバック信号を正常に受信していない電気回路が検出された場合に、前記伝送手段を制御して、当該検出された電気回路を示す情報をさらに送信することを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載の歯科用医療機器。
【請求項6】
前記電圧出力端子において検出した電圧値が前記通常の範囲内ではない場合に、その旨を、警告表示及び/又は警告音にて知らせる報知手段をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の歯科用医療機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−66792(P2013−66792A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−10439(P2013−10439)
【出願日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【分割の表示】特願2008−128724(P2008−128724)の分割
【原出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000141598)株式会社吉田製作所 (117)
【Fターム(参考)】