説明

歯科用圧排組成物、その製造及び使用方法

本発明は、歯科用圧排において使用できる若しくは使用される組成物を特徴とし、この組成物は、液体と、互いに対して約50/50〜5/95重量%の、層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物と層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物と、を含む。本発明はまた、歯科用圧排組成物を収容する容器、及び、A部とB部とを備えるキットを目的とし、ここで、A部は歯科用圧排組成物を含み、B部は、適用器具、歯科用印象材、圧排キャップ、組成物を収容及び分注するための容器並びにこれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1つの付属品を備える。本発明は更に歯科圧排組成物を分注するプロセスを特徴とし、このプロセスは、容器の中に収容された歯科用圧排組成物を供給する工程と、容器を適用器具の中に配置する工程と、適用器具を使用して容器の外に歯科用圧排組成物を分注する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用圧排組成物、その製造及び使用方法に関する。本歯科用圧排組成物は、特定の割合で、液体と、粘土鉱物グループからのケイ酸塩及び雲母鉱物グループからのケイ酸塩などの固体の混合物と、を含む。本組成物は、歯牙硬組織から軟組織を圧排するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
準備された歯から歯肉を圧排するために、コードを使用することができる。この点において、圧排コードは、適切な歯科器具を用いて、歯肉組織と準備された歯の辺縁との間(この領域は多くの場合歯肉溝とも呼ばれる)に詰められる。歯肉組織の十分な垂直方向及び水平方向の圧排を得るために、多くの場合、歯の詳細な印象を採得することができるように、複数種の長さの圧排コードを歯肉溝の中に詰めることが必要である。
【0003】
圧排コードに関する背景の説明は、例えば、米国特許第4,522,593号に見出すことができる。
【0004】
一般に、歯科用圧排コードは、歯肉溝の中に配置するのが困難である場合がある。処置も時間がかかり得る。印象を採得するのに先立って、圧排コードを除去するのも厄介であり得る。凝固した血液はコードに付着することがあり、その除去は再び傷を開き、出血を生じる恐れがある。
【0005】
これに代わるより使いやすいものとして、圧排ペーストが提案されている。
【0006】
圧排のために使用される市販製品は、Expasyl(商標)の名で販売されている。しかしながら、調査では、Expasyl(商標)は、歯肉溝が可撓性でありかつ十分な深さを有するとき、特定の限定された条件下でのみ有効である。このペーストの濃さのために、一部の評者はこのペーストを歯肉溝の中に絞り出すのが困難である。更に、使用説明書によると、この組成物の粘度は、水、唾液又は血液などの水分を吸収すると変化し得る。
【0007】
一般に、印象を採得する前に、硬化しないペーストを歯肉溝から完全に除去することは、非常に時間がかかり、厄介なことであり得る。通常、ペーストは、水スプレーを用いてすすぎ落される。しかしながら、ペーストの残渣が歯肉溝の中深くに位置し、除去が困難である場合がある。これらの残渣は、印象材が歯肉溝領域に流入するのを妨げる恐れがあり、続いて適用される印象材の設置に悪影響を及ぼす恐れがある。更には、印象を採得する前には、水でペーストをすすぎ落した後に、追加的な乾燥工程が必要とされることになる。これらの除去及び乾燥工程は、組織の出血を引き起こし得、印象を採得する工程をより複雑にする恐れがある。
【0008】
硬化材料は除去がより容易である場合がある。しかしながら、これらは、親水性が高くない。このことは、歯肉溝の中への材料の流動性に関して問題を生じ得る。
【0009】
米国特許第5,362,495号は、外用のために注射可能であり、並びに、20℃にて測定された塑性粘度が約13,000〜30,000Pasである、生体適合性ペーストの形態の材料を歯肉溝内に挿入することを含む、出血又は滲出なしに歯肉溝を拡げるための方法に関し、上記材料は、粘土、海藻粉末(seaweed meal)及びこれらの混合物から選択される材料からなる。
【0010】
日本特許第2006056833号は、収斂剤と、粘土鉱物、トルク、雲母、カオリン及び/又はモンモリロナイトを含有する充填剤と、からなるペーストに関する。
【0011】
米国特許第2008/0220050号(Chen)は、歯肉圧排のための組成物に関する。このペースト状組成物は、水、粘土、ガラス充填剤及び収斂剤を含有する。
【0012】
国際公開第2006/057535号(Kim)は、特定量のカオリン粘度、水、塩化アルミニウム六水和物、デンプン粉末、シリコーンオイル及び着色剤を含む組成物を記載している。
【0013】
米国特許第2005/008583号(White)は、運搬媒、圧排媒及び蒸発防止構成成分を含む歯肉圧排材料を記載している。例として、以下の材料配合が与えられている:カオリン粉末(80重量%)、塩化アルミニウム(15重量%)、重い塑性粘稠性(heavy plastic consistency)を生じるのに十分な水/グリセリン、所望されるような風味剤/着色剤。
【0014】
米国特許第2005/0287494号(Yang)は、粘度を高めるためにフィブリル化繊維を使用すること、並びに、31.0×10cP〜71.0×10cPの粘度範囲を有するペースト様構造を形成するために味覚修飾剤、着色剤及びカオリン充填剤を組み合わせること、により調製される歯肉圧排材料を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、改善された歯科用圧排組成物に対する必要は依然として存在する。
【0016】
理想的には、市販の適用器具を用いて患者の歯肉溝の中に適用できる組成物が所望される。
【0017】
更に、その材料が歯肉溝から容易にすすぐことができれば有利である。
【0018】
加えて、好ましい実施形態によれば、その材料は、理想的には、十分な貯蔵弾性率を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
一実施形態では、本発明は、歯科用組成物、特に歯科用圧排組成物、あるいは、圧排処置において又は歯牙硬組織から軟組織を圧排するために使用できる若しくは使用される組成物を特徴とし、この組成物は、液体と、互いに対して約50/50〜5/95重量%の割合で、層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物と層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物と、を含む。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の歯科用圧排組成物を収容する容器に関する。
【0021】
更なる実施形態では、本発明は、A部とB部とを備えるキットを目的とし、ここで、A部は本発明の歯科用圧排組成物を含み、B部は、適用器具、歯科用印象材、圧排キャップ、本組成物を収容及び分注するための容器並びにこれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1つの付属品を備える。
【0022】
本発明はまた、本明細書に記載の歯科用圧排組成物の製造プロセスにも関し、このプロセスは混合工程を含む。
【0023】
本発明はまた、歯牙硬組織から口腔軟組織を圧排するための手段の製造プロセスにも関し、ここで、このプロセスは、本明細書に記載の組成物をカニューレと貯蔵部とを備える容器の中に充填する工程を含む。
【0024】
本発明は更に、歯科用圧排組成物を分注するプロセスを特徴とし、このプロセスは、
・容器内に収容された本明細書に記載の歯科用圧排組成物を供給する工程と、
・容器を適用器具の中に配置する工程と、
・容器の外に歯科用圧排組成物を分注するために適用器具を使用する工程と、を含む。
【0025】
更に、本発明は、歯牙硬組織から軟組織を圧排するための本明細書に記載の歯科用圧排組成物の使用に関する。
【0026】
本発明の更なる態様は、歯科用圧排組成物を製造するための層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物の使用を目的とし、この歯科用圧排組成物は、更に液体と、層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物と、を含む。
【0027】
定義
特に指示がない限り、本明細書の文脈内では、以下の用語は以下の意味を有する。
【0028】
組成物は、2つ以上の構成成分の混合物又は組み合わせであると理解される。
【0029】
「歯科用組成物」は、歯科又は歯科矯正学分野で使用できる任意の組成物である。この点から、組成物は患者の健康に有害であってはならず、それゆえ、組成物から移動し得る有害かつ有毒な構成成分を含まない。
【0030】
「歯科用圧排組成物」は、歯牙構造の印象を採得する前又は採得する間に、施術者が歯牙硬組織(例えば、歯)から口腔軟組織(例えば、歯肉)を圧排することを可能にする組成物である。
【0031】
「歯牙構造」は、準備された又はいつでも歯科医により処理される状態になっている任意の歯牙構造である。歯牙構造は単独の歯でも2本以上の歯でもよい。歯牙構造はまた、口腔軟組織(例えば、歯肉)とは対照的に歯牙硬組織とも呼ばれる。
【0032】
「歯科用印象材」は、歯肉などの歯牙構造の印象を採得するのに使用される材料である。歯科用印象材は、通常、歯の印象採得用トレーの上に適用される。歯科用印象材は異なる化学物質をベースにしてもよく、様々な化学反応(付加硬化材料及び縮合型硬化材料を含む)により架橋することができる。典型的な例には、シリコーンベースの印象材(例えばVPS材)、及びポリエーテルベースの印象材、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
「液体」は、周囲条件(例えば、23℃)にて本発明の組成物中に存在する構成成分を少なくとも部分的に分散、分解又は懸濁することができる任意の溶媒又は液体である。
【0034】
「ペースト」は、十分に大きな負荷又は応力が適用されるまで固体として挙動するが、十分に大きな負荷又は応力が適用されると流体のように流れる物質である。ペーストは典型的には、粒状材料をバックグランド流体に懸濁したものからなる。個々の粒は砂浜の砂のように互いに押し合い、不規則なガラス状又は非晶質構造を形成し、ペーストに固体様特性を与える。ペーストは、歯科用印象材に相当するこれらの粘度又は稠度により分類することができる(cf.ISO 4823)。
【0035】
「止血剤」は、出血を特定量まで低下させることができる又は血液凝固を生じさせることができる作用剤である。止血剤はまた、収斂剤と呼ばれる場合もある。
【0036】
「粒子」は、幾何学的に測定できる形状を有する固体である物質を意味する。形状は規則的又は非規則的であることができる。粒子は、典型的には、例えば、粒径及び粒径分布に関して分析することができる。
【0037】
所望される場合には、粒径は、Cilas 1064 LD Nass(Cilas,France)光散乱装置を用いて測定することができる。Cilas 1064は、一体化光学システムを使用して、0.04〜500μmの範囲をカバーする。分析される混合物が、水を充填された試験チャンバに添加される。粒径分布を変えないために、並びに、凝集を防止するために、超音波が約60秒にわたって適用される。生データは、計器ソフトウェアで、当業者に既知のしばしば使用される技術であるフラウンフォーファー回折を用いて加工する。
【0038】
「フィロケイ酸塩」は、ケイ酸塩の四面体のシートをSiで形成するケイ酸塩である。フィロケイ酸塩は、例えば互いに配列されたシート又は層の数に従って、更に小群に分類することができる。
【0039】
本発明の意味内では、フィロケイ酸塩は、次のサブグループ、つまり、2:1の層タイプのケイ酸塩鉱物のグループ、及び1:1の層タイプのケイ酸塩鉱物のグループに分類される。
【0040】
この分類に関しては、より詳細な記述をUllmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry(Wiley−VCH),2005,Silicatesの特に表4に見出すことができる。
【0041】
この文献によれば、粘土鉱物はフィロケイ酸塩のグループに属し、互いに連結又は配列された層の数によって特徴付けることができる。この分類は、本発明でも使用される。
【0042】
例えば、典型的な化学式Al[Si(OH)])を有するカオリナイトにおいては、2つの単層が互いに連結又は配列されている。
【0043】
例えば、典型的な化学式KAl(AlSi10)(OH)を有し、雲母タイプのグループの鉱物に属する白雲母においては、3つの層が互いに連結又は配列されている。
【0044】
用語「架橋」、「固化」、「凝結」、「硬化」又は「硬化性」は互換可能に使用され、全て、化学的及び/又は物理的相互作用に起因する網状構造の作製による、より高い分子量を有する物質の形成及び/又はより高い粘度を有する物質の形成を指す。
【0045】
「固化反応」、「硬化反応」、又は「凝結反応」は、個々の構成成分間の化学又は物理反応に起因して、組成物の粘度及び引張り強度などの物理的特性が経時的に変化する反応である。
【0046】
組成物又は溶液は、その組成物が本質的な特徴として特定の構成成分を含有しない場合、この特定の構成成分を「実質的に又は本質的に含まない」。それゆえに、この構成成分は、そのものとして、若しくは他の構成成分と組み合わせて、又は他の構成成分の成分としてのいずれかで、組成物に意図的には添加されない。特定の構成成分を本質的に含まない組成物は、通常、その構成成分を組成物全体に関して、約1重量%未満、又は約0.1重量%未満、又は約0.01重量%未満の量で含有する。理想的には、この組成物は、この構成成分を全く含有しない。しかしながら、例えば、不純物に起因し、前記構成成分が少量存在することを回避できない場合もある。
【0047】
「周囲条件」は、本発明の溶液が、保管及び取り扱い中に通常さらされる条件を意味する。周囲条件は、例えば、約900〜約1100mbar(90kPa〜約110kPa)の圧力、約0〜約50℃の温度、及び約10〜約100%の相対湿度であり得る。実験室周囲条件は、約23℃及び約1013mbar(101.3kPa)に調整される。
【0048】
特に指定がない限り、「分子量」は、Mw(分子量の重量平均)を常に意味し、分子量の確定している標準と比較するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、個々の部類のポリマーについて通常測定することができる。好適な測定法は、当業者にとって既知である。
【0049】
本明細書で使用する時、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、同じ意味で使用されている。用語「含む」又は「含有する/収容する」及びこれらの変化形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲で用いられた場合、制限的な意味を有しない。また、本明細書における端点による数の範囲の記載には、その範囲に含まれる全ての数が含まれる(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などが含まれる)。
【0050】
特に指定がない限り、重量%は常に組成物全体の重量に対してのものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】修復のために準備された歯、並びに、歯科用圧排組成物の収容及び分注に使用できる容器のカニューレの図。
【図2】歯科用圧排組成物の収容及び分注に使用できる容器のカニューレの断面図。
【図3】歯科用圧排組成物の収容及び分注に使用できる、カニューレと貯蔵部とを有する容器の断面図。
【図4】押出力を測定するために使用された容器の前端部(カニューレ)を示す図。
【図5】押出力を測定するために使用された容器内に挿入されるピストンを示す図。
【図6】押出力を測定するために使用された容器内に挿入されるピストンを示す図。
【図7】すすぎ時間を測定するために使用された装置を示す図。
【図8】すすぎ時間を測定するために使用された装置を示す図。
【図9】様々な組成物について貯蔵弾性率及びすすぎ時間を比較するダイアグラムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の歯科用圧排組成物は典型的には複数の有利な特性を示すことが判明した。
【0053】
本組成物は典型的には、十分に良好な貯蔵弾性率(例えば、少なくとも約2000kPa)を有する。
【0054】
十分な貯蔵弾性率を有さない歯科用圧排ペーストは、多くの場合、歯肉溝の中に適用することが困難である。歯肉溝を形成し、一定の弾性を有する歯の周囲の組織は、多くの場合、適用される組成物に反発する。すなわち、貯蔵弾性率が低過ぎる場合、ペーストは、歯肉溝から部分的に絞り出され、これは効率の悪い圧排を生じ得る。歯科用圧排組成物を例えば、ノズル又はカニューレを用いて、歯肉溝に適用及び/又は詰めることにより、歯肉の十分な機械的圧排を達成することができる。
【0055】
歯肉溝への組成物の適用後、本発明の組成物は、短時間で除去する又はすすぎ落とすことができる。
【0056】
これは、この歯科用圧排組成物の滑らかな表面により生じ得る。滑らかな表面は、歯肉溝からの容易な除去(例えば、水−空気ビームを使用して約10秒以内)を促進し得るだけでなく、歯肉溝に存在し得る凝固した血液に対する本組成物の付着を更に防止することもできる。付着は、多くの場合、圧排組成物の除去時に、望ましくない傷の開口及び出血を引き起こす恐れがある。
【0057】
この特徴は、いくつかの点で有利であり得る。例えば、歯科施術者は作業時間を節約し、患者にとっては処置時間が削減され、その上、後で採得される印象の品質は多くの場合改善される。これと対照的に、歯肉溝の中に残っている歯科用圧排組成物の残渣は、感染を引き起こす恐れがあり、また硬化性歯科用印象材の固化反応に影響し得、それゆえに歯の印象の精度を低下させる。
【0058】
更に、本組成物は、特定の寸法を有するカニューレ又はノズルを備えた特定の容器中に収容すると、許容可能な押出力(例えば、約150N以下)で市販の分注装置を使用して歯肉溝に適用できることが判明した。
【0059】
本発明の歯科用圧排組成物は、互いに対して特定の割合で、液体と、層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物と層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物と、を含む。
【0060】
使用できる液体としては、極性及び無極性の液体並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0061】
具体例としては、水、アルコール(例えば、エタノール、n−及びイソ−プロパノール、ケトン(例えば、アセトン)、グリセリン(例えば、エトキシル化グリセリン)、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール)及びシリコンオイル(silicon oil)が挙げられる。本組成物中の液体の量は、所望される利点が入手可能である限りは、特に限定されない。
【0062】
液体は典型的には、組成物全体に対して少なくとも約10重量%、又は少なくとも約15重量%、又は少なくとも約20重量%の量で存在する。
【0063】
液体は、組成物全体に対して最大約35重量%、又は最大約30重量%、又は最大約25重量%の量で存在し得る。
【0064】
本組成物中に存在する液体についての典型的な重量%範囲としては、約10重量%〜約35重量%、又は約15重量%〜約30重量%が挙げられる。
【0065】
本組成物中の液体の量が少な過ぎると、本組成物の粘度は典型的には増加し、結果として容器から本組成物を分注するために必要とされる押出力も増加する。
【0066】
本組成物中の液体の量が多過ぎると、本組成物の粘度は典型的には低下し、結果として貯蔵弾性率は不十分になり、歯肉溝の中への本組成物の適用を妨害し得る。
【0067】
本発明の歯科用圧排組成物を調製するのに好適な液体としては、存在する他の構成成分と共にペースト又はゲルを形成できるものが挙げられる。
【0068】
典型的には、この液体は、多量の水(例えば、約50体積%超、又は約70体積%超、又は約90体積%超)を含有するか、又は、水のみからなる。アルコール(例えば、エタノール)又はケトン(例えば、アセトン)又はシリコンオイル(silicon oils)との混合物を同様に使用することができる。
【0069】
特定の配合物に関し、層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物に対する、層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物の特定の比率が与えられると、水含量は、典型的には、すすぎ時間に影響しないことが判明している。しかしながら、水量が増加するにつれて、貯蔵弾性率及び押出力が低下することが判明している。
【0070】
本発明の歯科用圧排組成物は、本組成物中に存在する他の構成成分と共に粘稠なペーストを形成するのに十分な量で液体を含む。
【0071】
水と油(特にシリコーンオイル)の組み合わせを使用することは、特に貯蔵弾性率とすすぎ時間の良好なバランスが達成される場合に、有利であり得る。
【0072】
有用な油としては、シリコーンオイル(トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンなど)又は任意の他のポリアルキルシロキサンが挙げられる。
【0073】
(シリコーン)油に対する水の割合は、典型的には、約1:1〜約1000:1、又は約20:1〜約250:1(構成成分の重量に対して)の範囲内である。
【0074】
割合がこれらの範囲外である場合、貯蔵弾性率とすすぎ時間との間の十分なバランスは達成するのが困難な場合がある。
【0075】
使用され得る層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物からのフィロケイ酸塩としては、カオリナイト、リザルダイト、ハロイサイト及びこれらの混合物又は組み合わせが挙げられるが、カオリナイトが好ましい。
【0076】
層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物の粒径は、得られるペーストが不均一になるか審美的でない外観を示さない限り、特に制限されない。
【0077】
平均粒径は、典型的には約0.01〜約100μm、又は約0.1〜約50μm、又は約1〜約25μmの範囲である。
【0078】
本組成物中の層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物の量は、所望される利点が得られる限り、特に制限されない。
【0079】
層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物は、典型的には、組成物全体に対して少なくとも約1重量%、又は少なくとも約2重量%、又は少なくとも約3重量%の量で存在する。
【0080】
層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物は、組成物全体に対して最大約40重量%、又は最大約35重量%、又は最大約30重量%の量で存在し得る。
【0081】
本組成物中に存在する層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物についての典型的な範囲としては、約1重量%〜約40重量%、又は約2重量%〜約35重量%が挙げられる。
【0082】
本組成物中の層タイプが1:1であるケイ酸塩ミネラルの量が少な過ぎる場合、貯蔵弾性率は、不十分なレベルに低下し得る。
【0083】
本組成物中の層タイプが1:1であるケイ酸塩ミネラルの量が多過ぎる場合、押出力は所望されないレベルまで増加し得る。また、すすぎ時間が負の影響を受ける恐れがある。
【0084】
使用され得る層型の2:1のケイ酸塩鉱物に由来するフィロケイ酸塩としては、タルク−葉蝋石タイプの鉱物、スメクタイトタイプの鉱物、蛭石タイプの鉱物、イライトタイプの鉱物、雲母タイプの鉱物、並びにこれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。
【0085】
具体的な例に、タルク、ウィレムサイト(willemseite)、葉蝋石、ステベンサイト、サポナイト(タルク−葉蝋石タイプの鉱物グループに由来)、ステベンサイト、スポナイト、ソーコナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、フォルコンスカイト(volkonskite)(スメクタイトタイプの鉱物グループに由来)、金雲母、黒雲母、紅雲母、白雲母、イライト、海緑石、セラドナイト(雲母タイプの鉱物グループに由来)が挙げられる。
【0086】
水と組み合わせても有意に膨潤しない又は本質的には全く膨潤しない層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物は、特に有益であることが判明した。これらのケイ酸塩鉱物としては、白雲母及び金雲母が挙げられる。例えば、ケイ酸塩鉱物ベントナイトは、特定の望ましくない水溶性を示すので、特別に有用ではないことが判明した。
【0087】
層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物の粒径は、得られる組成物が過度に不均一にならない限り、特に制限されない。
【0088】
平均粒径は、典型的には約0.01〜約100μm、又は約0.1〜約50μm、又は約1〜約25μmである。
【0089】
本組成物中の層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物の量は、所望される利点が得られる限り、特に制限されない。
【0090】
層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物は、典型的には、組成物全体に対して少なくとも約25重量%、又は少なくとも約30重量%、又は少なくとも約35重量%の量で存在する。
【0091】
層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物は、組成物全体に対して最大70重量%、又は最大65重量%、又は最大60重量%の量で存在し得る。
【0092】
本組成物中に存在する層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物についての典型的な重量%範囲としては、約25重量%〜約70重量%、又は約30重量%〜約65重量%が挙げられる。
【0093】
本組成物中の層タイプが2:1であるケイ酸塩ミネラルの量が少な過ぎる場合、押出力は所望されないレベルまで増加し得る。歯肉溝から本組成物を除去するために必要とされるすすぎ時間も同様に増加する恐れがある。
【0094】
本組成物中の層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物の量が多過ぎる場合、貯蔵弾性率は、十分な圧排を達成できないレベルにまで低下し得る。
【0095】
層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物及び層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物は、典型的には、歯科用圧排組成物中に互いに対して特定の重量比で存在する。
【0096】
この重量比としては、約50/50〜約5/95、又は約30/70〜約10/90の範囲が挙げられる。
【0097】
つまり、歯科用圧排組成物中の層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物と層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物の量は、ほぼ等しくなり得る。
【0098】
しかしながら、層型の2:1ケイ酸塩鉱物が、層型の1:1のケイ酸塩鉱物と比較して過剰に存在することもまた、本発明の範囲に含まれる。
【0099】
割合が上記範囲外である場合、得られる歯科用圧排組成物は、高い貯蔵弾性率及び短いすすぎ時間と組み合わされた低い押出力のような好ましい組み合わせ特性を十分に達成しない恐れがある。
【0100】
本発明はまた、以下の特性のうちの少なくとも1つ、2つ又は更には全てを満たす割合で、液体と固体とを含む、歯科用圧排組成物を目的とする。
・貯蔵弾性率:少なくとも約2000kPa又は少なくとも約2500kPa又は少なくとも約3000kPa。
・押出力:約150N以下、又は約140N未満又は約130N未満、例えば、歯科用圧排組成物が、図5及び6に示されているようにピストンを使用して、図4に示されている寸法を持つカニューレを有する容器から分注される場合。
・すすぎ時間:約11秒以下又は約10秒以下。
【0101】
十分な貯蔵弾性率と適切なすすぎ時間との間の良好なバランスを示す組成物が施術者にとって有益であることが判明した。
【0102】
所望される場合、貯蔵弾性率は、下記の「実施例」部分で記載するように、測定することができる。
【0103】
約2000kPa未満の貯蔵弾性率を有する歯科用圧排組成物は、多くの場合、十分な構造性能を有さない。すなわち、この組成物は、容易に歯肉溝の中に配置することができず、施術者がこの組成物を歯肉溝の中に配置することに成功したとしても、この組成物は典型的には歯肉溝の中に十分に長く留まらない。周囲組織の弾性に起因して、この組成物は、多くの場合、歯肉溝から絞り出される。
【0104】
所望される場合、すすぎ時間は、下記の「実施例」部分で記載するように、測定することができる。
【0105】
上記で説明したように、短いすすぎ時間は、いくつかの利点を有し得る。準備された歯牙構造の後続の印象を採得するための時間枠は限られているため、歯肉溝から組成物を除去するために必要とされる時間は短いほど良い。
【0106】
容器又はコンピュールから組成物を分注するのに必要とされる押出力についても同じことが当てはまる。押出力の値が低いほど、組成物はより容易に、より都合良く適用することができる。
【0107】
所望される場合、押出力は、下記の「実施例」部分で記載するように、測定することができる。
【0108】
本発明の歯科用圧排組成物はまた、1種以上の収斂剤(止血剤と呼ばれる場合もある)を含むことができる。
【0109】
収斂剤が存在しなければならない必要性はない。しかしながら、収斂剤が存在する場合には、収斂剤は意図される目的を典型的に支援する量で、すなわち、圧排手順全体を促進するように存在する。
【0110】
止血を支援するのに有用となり得る収斂剤としては、限定するものではないが、鉄(例えば、硫酸第二鉄、塩基性硫酸第二鉄、塩化第二鉄)、アルミニウム(例えば、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムクロロハイドレート、酢酸アルミニウム)及び亜鉛の酸化物、塩化物又は硫酸塩、ポリフェノール、エラグ酸、過マンガン酸塩(例えば過マンガン酸カリウム)、鉄酸カリウム(IV)、硝酸銀と過酸化水素、エピネフリン、並びにそれらの混合物が挙げられる。止血剤の好ましい1つの部類に、アルミニウム化合物が含まれる。
【0111】
収斂剤は、組成物全体に対して少なくとも約0.01重量%、又は少なくとも約5重量%、又は少なくとも約10重量%の量で存在し得る。
【0112】
収斂剤は、組成物全体に対して最大約30重量%、又は最大約25重量%、又は最大約20重量%の量で存在し得る。
【0113】
収斂剤が存在する場合には、収斂剤は、典型的には、組成物全体に対して約0.01重量%〜約30重量%の量で、又は約5重量%〜約25重量%の量で、又は約10重量%〜約20重量%の量で存在する。
【0114】
組成物中の収斂剤の量が少な過ぎると、十分な止血を典型的には達成することができない。
【0115】
一方で、組成物中の収斂剤の量が多過ぎると、処理された組織は、損傷を受ける恐れがある。更に、収斂剤は、組成物中に存在する他の構成成分に干渉する恐れがあり、所望されない凝固又は詰まりを引き起こし得る。
【0116】
本発明の歯科用圧排組成物はまた、1種以上の添加剤を含むことができる。
【0117】
組成物中に存在し得る添加剤には、着色剤、調合薬、抗微生物剤、蒸発防止剤、レオロジー改変剤、風味剤、保存剤、界面活性剤、pH緩衝剤、並びにこれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。
【0118】
添加剤が存在しなければならない必要性はないが、しかしながら、1種以上の添加剤が存在する場合には、これらは典型的には意図される目的を典型的に支援する量で、すなわち、圧排手順全体を促進するように存在する。
【0119】
添加剤は、組成物全体に対して少なくとも約0.0001重量%、又は少なくとも約0.1重量%、又は少なくとも約1重量%の量で存在し得る。
【0120】
一実施形態によれば、本歯科用圧排組成物は、患者の口の中の容易な圧排を可能にし得(特に口腔組織及び/又は歯牙組織と比較して)、並びに処置後に圧排装置が歯肉から除去されたかどうかを制御し得る色を有する。例えば、青、緑又は黄色が好適であり得る。しかしながら、例えば、デジタルスキャンのような一部の新たな印象技術については、他の色が好ましいものであり得る。一部の技術は、例えば、赤又は白といった、スキャン装置に対してより視認しにくい色を好む。圧排装置の着色は、組成物中に着色剤又は色素(有機及び無機)を組み込むことにより、達成することができる。
【0121】
使用できる着色剤の例としては、キノリン黄色染料(sicovit)、クロモフタルブルーA3R、ベンガラ3395、Bayferrox 920 Z Yellow、Neazopon Blue 807(フタロシアニン銅系染料)、Helio Fast Yellow ER、Brilliant Blue FCF、Fast Green FCF及び/又はOrange Yellow Sが挙げられる。酸性条件下で安定である色素又は染料が好ましい。
【0122】
別の実施形態によれば、歯科用圧排組成物はまた、蒸発防止剤も含み得る。使用できる蒸発防止剤としては、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール又は混合ポリグリコール(例えば、約200g/モル〜約10,000g/モルの範囲、又は約500g/モル〜約3,000g/モルの範囲の分子量Mwを有する)が挙げられる。蒸発防止剤が存在する場合には、蒸発防止剤は、典型的には、組成物全体に対して約0.01重量%〜約30重量%の量で、又は約1重量%〜約10重量%の量で存在する。
【0123】
更なる実施形態によれば、調合薬を添加することができる。調合薬は、例えば、収斂剤の添加により生じる止血効果に寄与し得る又は止血効果を向上させ得る。添加できる調合薬としては、アドレナリン、エピネフリン、プロピルヘキシドリン(propylhexidrin)、アドレノクロム単糖Micarbazoneプロピルガラート、トラネキサム酸、エタムシラート、バトロキソビン、トロンビン、フィブリンドレッシングが挙げられる。
【0124】
本発明の別の実施形態では、歯科用圧排組成物は、1種以上の界面活性剤を含み得る。使用できる典型的な界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性又は非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0125】
界面活性剤が存在しなければならない必要性は全くない。しかしながら、界面活性剤が存在する場合、界面活性剤は、典型的には組成物全体に対して最大約2重量%、又は最大約1重量%、又は最大約0.05重量%の量で存在する。
【0126】
本発明の別の実施形態では、歯科用圧排組成物は、pH緩衝剤を含み得る。pH緩衝剤の添加は、pH値の調整を促進し得、特に圧排組成物の酸性を低くし得る。使用できる典型的なpH緩衝剤としては、炭酸塩及びリン酸塩(例えば、アルカリ炭酸塩又はアルカリ重炭酸塩)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
pH緩衝剤が存在しなければならない必要性は全くない。しかしながら、pH緩衝剤が存在する場合、pH緩衝剤は、典型的には組成物全体に対して最大約10重量%、又は最大約2重量%、又は最大約0.5重量%の量で存在する。
【0128】
本発明の別の実施形態では、歯科用圧排組成物は、組成物の味及び/又は匂いを改善するために、風味剤又は風味剤の混合物を含み得る。使用できる典型的な風味剤としては、酢酸イソアミル(バナナ)、ベンズアルデヒド(ビターアーモンド)、ケイ皮アルデヒド(シナモン)、プロピオン酸エチル(フルーティ)、アントラニル酸メチル(ブドウ)、ミント(例えば、ペパーミント)、リモネン(例えば、オレンジ)、ヘキサン酸アリル(パイナップル)、エチルマルトール(飴)、エチルバニリン(バニラ)、サリチル酸メチル(冬緑油)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
風味剤が存在しなければならない必要性は全くない。しかしながら、風味剤が存在する場合、風味剤は、典型的には組成物全体に対して最大約3重量%、又は最大約0.1重量%、又は最大約0.01重量%の量で存在する。
【0130】
本発明の典型的な歯科圧排用組成物は、以下の配合を有し得る:
・約10重量%〜約35重量%、又は約15重量%〜約30重量%の量の液体、
・約1重量%〜約40重量%、又は約2重量%〜約35重量%、又は約3重量%〜約30重量%の量の、層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物、
・約25重量%〜約70重量%、又は約30重量%〜約65重量%、又は約35重量%〜約60重量%の量の、層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物、
・約0.01重量%〜約30重量%、又は約5重量%〜約25重量%、又は約10重量%〜約20重量%の量の収斂薬、
・約0.0001重量%〜約30重量%、又は約0.1重量%〜約20重量%、又は約0.5重量%〜約10重量%、又は約1重量%〜約5重量%の量の添加剤。
【0131】
本発明はまた、容器の中に収容された本明細書に記載の歯科用圧排組成物を目的とする。
【0132】
本発明の組成物は、好ましくは衛生的条件下で施術者に提供される。これを達成する一候補は、衛生的条件下でカプセル、カートリッジ又はフォイルバッグなどの封止された容器の中に詰める又は収容することを含む。
【0133】
したがって、本発明の歯科用圧排組成物は、典型的には容器又は収容装置の中に収容される。通常、この容器は、前端部及び後端部、容器内を移動可能なピストン、並びに、容器内に配置された組成物を送達又は分注するためのノズル又はカニューレを有する。この容器は、通常、区画又は貯蔵部を1つのみ有する。
【0134】
この容器は、典型的には、約0.1〜約1mLの範囲の容量を有する。これは、1回の歯科用圧排処置に典型的に必要とされる容量である。この容器は、典型的には1回のみ使用される(例えば、使い捨てパッキング)。
【0135】
本組成物は、ノズルの方向にピストンを移動することにより、容器から分注することができる。このピストンは、手動で、又は、容器を受容するように設計された適用装置若しくは適用器具(例えば、コーキングガンの設計を有する適用装置)の補助で、のいずれかで、動かすことができる。
【0136】
使用できる容器の例としては、コンピュール、シリンジ及びスクリューチューブが挙げられる。この種の容器は、例えば、米国特許第5,927,562号、同第5,893,714号又は同第5,865,803号に詳細に例示されており、その内容は、これにより容器の説明に関して参考として組み込まれるものとする。
【0137】
容器が使用される場合、歯肉溝における歯科圧排組成物の容易で安全な適用を可能にする形状及びサイズを有するノズルを備えることは有利であり得る。
【0138】
有用な容器は、典型的には、歯科圧排組成物が収容される、前端部と後端部とを有する(典型的には円筒形又は円錐形の)中空体を有する。前端部は、典型的には、中空体の中を移動可能であるピストンで封止される。中空体の前端部には、典型的には、施術者が患者の歯肉溝の中に本発明の歯科用圧排組成物を分注するのを可能にするサイズ及び形状を有するノズルが存在する。ノズルの直径が小さいほど、ノズルを歯肉溝の中に容易に配置することができる。しかしながら、ノズルの直径が小さいと、装置の外に歯科用圧排組成物を分注するのに必要とされる押出力が大きくなり得る。したがって、全てのカニューレサイズ及び直径が好適であるわけではない。約0.6mm〜約1.3mmの範囲の外径及び約0.2mm〜約0.9mmの範囲の内径を有するノズル又はカニューレを有する装置が特に有用であることが判明した。
【0139】
しかしながら、意図される効果(すなわち、歯肉溝を拡げること)が達成できるのであれば、他の形状及び直径も同様に使用することができる。
【0140】
特に、本発明の歯科用圧排組成物を収容する特定の容器の組み合わせは、本発明の目的に対処するのに特に好適であることが判明している。このような容器は、欧州特許第08158033号(2008年6月11日出願)明細書により詳細に記載されており、これによりその内容を参考として組み込み、本発明の一部とする。
【0141】
この特定の組み合わせを使用する場合、歯科用圧排組成物は、歯の歯肉溝の中に容易に分注することができ、所望の圧排を達成する。
【0142】
本発明の圧排組成物を収容及び分注するために有利に使用できる容器は、歯科用組成物を分注するための開口部を備える自由端部を有するカニューレを備える。
【0143】
このような容器は、カニューレの補助で歯肉溝を容易に拡げることを可能にする機械的手段を提供することで、歯肉溝への組成物の適用を促進する。いったん歯肉溝が拡げられると、本発明の組成物は容器に適用することができ、その十分な貯蔵弾性率に起因して、拡げられた歯肉溝を固定するのを助け得る。
【0144】
一実施形態において、自由端部と開口部は、自由端部の外側面が歯牙及び歯肉に触れる状態で、開口部が歯肉溝の入口に配置され得るように付形される。自由端部は更に好ましくは、開口部が歯肉溝の内側に向いた状態でカニューレが更に移動するとき、歯肉が側方に変位されるように、例えば歯牙から主として側方に変位されるように付形される。したがって、このカニューレにより、好ましくは、予め開いた歯肉溝に歯科用圧排組成物を注入することが可能となり、このことは、歯肉溝に歯科用圧排組成物を確実に充填するのに役立ち得る。
【0145】
別の実施形態において、自由端部は、第一外径D1と第二外径D2との間で延びる外側面を有する。好ましくは、第一外径D1は、自由端部の前部の付近に、あるいは最前部に位置する。第二外径D2は、好ましくは、第一外径D1から更に後方の距離L2のところに位置する。D2は好ましくはD1よりも大きい。これにより、好ましくは、装置は歯肉を歯牙から側方に変位させることができ、好ましくはそれによって、装置は、自由端部が歯肉溝の中に更に移動するとき、歯肉溝を拡げることができる。
【0146】
「直径」という用語は、非円形の横断面が与えられる場合、一般に「横断面寸法」として解釈されてもよい。
【0147】
直径D1は、約0.2mm〜約1mm、特に約0.3mm〜約0.7mm、又は約0.3mm〜約0.8mmであってよく、更には特にD1は約0.4mm〜0.6mmの範囲内にあってよい。直径D1は好ましくは約0.4mmである。外径D1が比較的小さな寸法であることにより、好ましくは、例えば、自由端部の前部を歯肉溝の入口に比較的容易に挿入することが可能となる。更に、そのような寸法は、自由端部の前部を歯肉溝の入口に挿入する際に歯肉組織に損傷を与える危険性を低減するのに役立ち得るものであり、これは、自由端部の前部が、歯肉自体を押圧するのではなく、むしろ歯牙と歯肉との間に適合するからである。
【0148】
直径D2は、約0.7mm〜約1.4mm、特に約0.7mm〜1.3mmであってよく、更には特に、直径D2は約0.9mm〜1.3mmであってよい。直径D2は好ましくは約1.1mmである。そのような寸法により、例えば、カニューレの自由端部に十分な剛性を与えることができ、その一方で、依然として、歯間腔への良好なアクセスを自由端部にもたらすことができる。したがって、本明細書に記載の装置は、制御された方式で、歯肉溝の遠位部分又は舌側部分だけでなく、歯牙の周りの至る所で歯肉溝に歯科用圧排組成物を注入するのに好適となり得る。
【0149】
自由端部の長さL2は、約0.3mm〜約2mm、特に約0.3mm〜約1mm、好ましくは約0.5mmであり得る。
【0150】
別の実施形態において、第一外径D1は開口部の近傍に位置する。第一外径D1はまた、開口部によって形成されてもよい。開口部は、約0.2mm〜約1mmの第一内径P1を有してもよいが、開口部は、約0.3mm〜0.7mmの第一内径P1を更に有してもよい。特に、P1は、約0.4mm〜0.6mmの範囲内にあってもよく、好ましくは約0.4mmであってもよい。P1はD1より小さくてもよいが、好ましくはD1にほぼ等しい。後者の場合、P1とD1は共に、開口部の直径を指す。特に、内径P1により、高粘度の歯科用組成物が歯肉溝に注入されるとき、その組成物の流量が比較的正確に制御されることになり得る。
【0151】
別の実施形態において、自由端部の外側面は、第二外径D2から第一外径D1に向かって先細る。したがって、先細りは好ましくは、D2からD1に向かう方向に先細る。更に、先細りは好ましくは、比較的一定の半径Rを有する曲線に基づいて先細る。この半径RはD2の1/2を超えるものであってもよい。例えば、自由端部の形状は、ノーズコーン(nose cone)、凸錐、又は放射錐に似たものであってよい。D2の1/2を超える放射状の曲線により、カニューレの自由端部を歯肉溝の入口に挿入するのに必要な力を比較的小さなものにすることができる。直線的な錐と比べて、そのような凸状又は放射状の錐により、更に、最前端部をより鈍いものにすることができ、それにより、歯肉溝に挿入されるときに歯肉に損傷を与える危険性を低減することができる。
【0152】
本明細書に記載の容器のカニューレは、第一外径D1と第三外径D3との間に長さL1を有してもよい。カニューレは、第二外径D2と第三外径D3との間に延びるシャフト部を有してもよい。シャフト部と自由端部は、互いの近傍に位置してもよく、共に長さL1に沿って延びてもよい。第三外径D3は、約0.7mm〜約2mm、特に約1.3mm〜約1.9mm、好ましくは約1.7mmであってよい。D3は好ましくはD2よりも大きいが、D2にほぼ等しくてもよい。したがって、シャフト部は、概ね円筒状であっても円錐状であってもよい。好ましくは、シャフト部は、自由端部へと平滑に遷移する。長さL1は、約6mm〜約18mm、特に約8mm〜約10mm、好ましくは約9mmであってよい。そのような寸法により、好ましくは、患者の口腔内の狭い空間、例えば2本の歯牙の間の歯肉溝を通じてのみアクセス可能な領域に、カニューレがアクセスすることが可能となる。また、このことは、実質的に歯牙の全周にわたって歯科用組成物を注入するのにも役立ち得る。
【0153】
一実施形態において、カニューレはマーキングを有する。そのマーキングは好ましくは、歯肉溝でのカニューレの一定の(例えば好ましい)侵入深さに関する基準として利用可能である。そのマーキングは、患者の処置の間にカニューレが歯肉溝に挿入される深さをユーザーが観察及び/又は評価するのに役立ち得る。したがって、ユーザーは、カニューレの侵入深さを比較的正確に制御することができ、それによって効果的な歯肉圧排を達成することができる。他方で、このことは、カニューレが歯肉溝に過度に深く侵入することによって生じ得る歯肉組織の損傷を回避するのに役立ち得る。マーキングは、例えば、切込み、縁、段差、又は(印刷された)線であってよい。マーキングは、カニューレの周囲を部分的に又は完全に囲んで延びてよい。マーキングは更に、カニューレの外側面の色の変化によって形成されてもよい。例えば、カニューレの前端部は、ある第一の外側色を有してもよく、それに隣接するカニューレの後方部分は、ある第二の外側色を有してもよく、第一の色と第二の色は異なるものである。マーキングはまた、透明性又は半透明性の異なる領域同士の間の切り替えによって形成されてもよい。好ましくは、マーキングは、カニューレの外側面の表面構造間の切り替えによって形成される。例えば、カニューレの前端部は、概ね平坦な又は光沢のある外側面を有してもよく、それに隣接するカニューレの後部分は、より粗い又は艶のない外側面を有してもよい。マーキングはまた、種々の侵入深さを記す目盛りであってもよい。
【0154】
一実施形態では、容器は、歯科用圧排組成物を受容及び収容するためのチャンバを有するカートリッジを備える。容器は好ましくは、ピストンを備えるように適合されるか、あるいはピストンを備えてもよい。容器は好ましくは、カニューレを通して歯科用圧排組成物を分注するように適合される。カートリッジは長手軸線に沿って延びていてもよく、ピストンは、歯科用圧排組成物をカニューレに向かって付勢するために、長手軸線に沿って移動可能であってもよい。チャンバは、例えばノズルに通じてもよく、カニューレはそのノズルに適合されることができる。別法として、チャンバはカニューレに通じていてもよい。カニューレは、固定式でカートリッジに取り付けられてもよい。例えば、カニューレとカートリッジは、共射出成型されてもよい。別の実施形態において、カニューレとカートリッジは、異なるプラスチック材料で作られる。例えば、カートリッジは、カニューレよりも硬質なプラスチック材料から作られてもよい。したがって、カートリッジは、組成物を押し出すのに十分な安定性を得ることができ、カニューレは、使用中に歯肉に損傷を与える危険性を低減するように、十分に軟質なものであってもよい。
【0155】
別の実施形態では、カニューレはある長手軸線に沿って延び得、その長手軸線は、約30度〜約60度の角度をなして、好ましくは約45度の角度をなしてカートリッジの長手軸線に対して傾斜する。カニューレはまた、ある曲線に沿って延びてもよく、カニューレの開口部を貫く中央軸線は、約30度〜約60度の角度をなして、好ましくは約45度をなしてカートリッジの長手軸線に対して傾斜してもよい。
【0156】
別の実施形態では、カニューレは、第一内径P1を有する開口部と第二内径P2を有する入口との間の通路を備え、P2は約0.3mm〜1.0mmである。P2は好ましくは、P1を超えるかあるいはP1に等しい。したがって、この通路は開口部に向かって先細ることができ、それにより、ある種の歯科用組成物を分注する際、押出し力を低下させることができる。別法として、この通路は概ね円筒状であってもよく、それにより製造を容易にすることができる。
【0157】
別の実施形態において、凸状に先細となった自由端部の外面は、90度未満の角度をなして通路の内面と会合してもよい。自由端部の外面と通路の内面との角度を90度未満にすることにより、自由端部の前部を歯肉溝の入口の中に挿入するのに必要な力を比較的小さくできることが判明した。
【0158】
本発明の一実施形態では、本方法は、歯肉の一領域(例えば、歯肉溝の入口に隣接する領域)を色の変化に関して観察し、色の変化に応じて歯科用圧排組成物の流量を制御することを含む。歯肉は、歯牙から圧排されると色が変化し、例えば薄色化する傾向があることが判明している。したがって、特定の色変化が生じると歯科用圧排組成物の注入を停止してもよい。それにより、この歯肉圧排の方法は、患者にとって比較的穏やかなものとなり得る。
【0159】
図1は、歯牙10の準備された側方側に隣接した歯肉溝における状況を示す。カニューレ21は、先細の自由端部22を有しており、自由端部22は、歯科用組成物を分注するための開口部23を有している。カニューレ21の自由端部22は、その先細りにより、その前端部、つまり最前端部において、比較的小さな直径を有しており、したがって、歯肉12と調製された歯牙10との間に配置することができる。他方で、先細りが凸状であるため、自由端部は既に、開口部23の付近において比較的大きな直径を有している。これにより、自由端部22を歯肉12と調製された歯牙10との間にわずかに挿入するだけで、歯肉12を歯牙10から移動させることができる。カニューレ21の自由端部22は、歯肉12と調製された歯牙10との間に配置され、その結果、歯肉12は側方にわずかに移動し歯牙10から離れる。これは、結果として生じる側方の力F2によって示されている。カニューレ21の自由端部22の形状により、歯肉溝が歯牙の天然領域の近傍に位置する状況においても、歯肉12は、結果として生じる側方の力F2を受けることができ、この側方の力F2は、歯肉溝を閉鎖するのではなく、むしろ開放するように向きをなしている。開口部23は、開口した歯肉溝内に位置しており、その結果、カニューレ21から分注された歯科用組成物は、歯肉溝の中に流入する。実際に、カニューレを浅く挿入し、それによってカニューレで歯肉溝を穏やかに機械的に開口すれば、歯科用組成物が歯肉溝内に比較的良好に侵入することが十分に達成される。これは、歯肉溝の中に注入される初期量の歯科用組成物で歯肉溝が更に開口される傾向があり、それによっても、歯科用組成物の注入が更に促進されるからである。したがって、本発明は、歯肉溝に歯科用組成物を適切に充填することを可能にし、それにより、歯肉圧排を確実にし、プレパレーションマージンの印象採得を適切にすることができる。歯科用圧排組成物は開口した歯肉溝の中に注入されるため、歯肉もまた、好ましくは、概ね歯科用圧排組成物で覆われていない状態を維持する。したがって、歯肉溝の入口の周りの領域は、好ましくは、例えば歯科医から依然として視認可能である。特に、歯科医は歯肉の色を観察することができ、歯肉の色は、歯牙から圧排されると薄色化する傾向がある。したがって、歯肉溝に分注される歯科用圧排組成物の量が、比較的良好に制御され得ることが判明した。それにより、歯肉溝内の歯科用圧排組成物の圧力は、上皮付着部が影響を受ける限界未満に保つことができる。結果として、上皮付着部が分離する危険性を低減することができる。上皮付着部が歯牙から引き離されると、歯牙と歯肉との間の組織の中に細菌が深く侵入する可能性があるため、歯肉及び/又は顎の疾病を引き起こす可能性があることから、上記危険性の低減は好都合である。
【0160】
更に、既知の処置とは対照的に、より低粘度の歯科用組成物が使用され得ることが判明した。これは、本発明によって、例えば、歯科用圧排組成物が、歯肉溝の外側から押し込まれるのではなく、わずかに開口した歯肉溝内に注入されるがために可能となることである。したがって、一実施形態では、好ましい歯科用圧排組成物は比較的低い粘度を有する。歯科用圧排組成物がより低粘度のものとなることにより、典型的には、例えばより低い押出力で分注することが可能となり、このことは、ユーザー及び患者にとってより好都合となり得る。
【0161】
図2は、歯科用圧排組成物の収容及び分注に使用できる容器のカニューレ51を示す。カニューレ51は、シャフト部54と前端部つまり自由端部52とを有している。カニューレ51は、前方内径P1と後方内径P2を有する通路53を更に備えている。通路53は円筒形であってもよい。この場合、前方内径P1と後方内径P2は概ね同じである。別の実施形態において、前方内径P1及び後方内径P2は異なってもよい。通路53は、後方内径P2から前方内径P1へ向かって先細となっていてもよく、この場合、P2はP1よりも大きいものとなる。これにより、例えば、カニューレを通じて歯科用組成物を移動させるのに必要な力を比較的小さくすることができ、また、場合によっては低粘度の材料が好まれ得るが、高粘度の組成物を使用することも可能となり得る。
【0162】
カニューレ51は、第一前方外径D1を有している。図示の例において、第一前方外径D1は、前方内径P1よりも大きなものとなっている。しかしながら、他の実施形態において、前方外径D1は、前方内径P1と同じかあるいはほぼ同じであってもよい。前方外径D1は好ましくは、前方内径P1の付近で測定される。カニューレ51は、第二前方外径D2と後方外径D3を更に有している。好ましくは、前方内径P1及び/又は前方外径D1は、自由端部52の前端部を形成している。したがって、自由端部52は好ましくは、第一前方外径D1と第二前方外径D2との間、又は前方内径P1と前方外径D2との間に延びる。カニューレ51のシャフト部54は、自由端部52に近接して第二前方外径D2と後方外径D3との間に延びることができる。D2及びD3は、シャフト部54が概ね円筒状となるように、概ね同じであってもよい。別法として、D2及びD3は、シャフト部54が概ね円錐状となるように、異なっていてもよい。例えば、D3は、シャフト部54がD3からD2に向かって先細るように、D2よりも大きくてもよい。
【0163】
カニューレ51はまた最小全長L1を有し、自由端部52は長さL2を有し、凸状の先細りが、およそ半径Rを有する曲線に沿って先細となっている。寸法D2、D3、P1、P2、L1、L2及びRは、上に明記した範囲内にあるものでよい。P1及びD1は等しい直径を有してもよいが、D1は、0.05mm〜1mmだけ、特に0.1mm〜0.4mmだけP1よりも大きくてもよい。上に明記した寸法の組み合わせが、必要に応じて可能となる。
【0164】
また、この例におけるカニューレ51は、歯肉溝でのカニューレの一定の侵入深さに関する基準とするためのマーキング55を有している。マーキング55は、円周方向の切込みとして形成されている。しかしながら、例えば、色若しくは表面構造の切り替え、縁、又は線、及びそれらの組み合わせなど、他の実施形態も考えられる。このマーキングは、歯肉組織に損傷を与える危険性を低減するのに役立ち、かつ/又は、歯肉圧排処置を確実にするのに役立ち得る。
【0165】
図3は、歯科用圧排組成物の収容及び分注に使用できる容器30の実施形態を示す。容器30は、凸状の先細自由端部32を有するカニューレ31を有する。容器30は更に、歯科用圧排組成物を保持するための貯蔵部34を有する。ピストン35は貯蔵部を閉鎖するものであり、歯科用圧排組成物を貯蔵部34から押し出すために貯蔵部において変位可能である。貯蔵部34は、カニューレ31の通路33の中へと開口している。装置30が使用されるまで通路33を閉鎖するために、取り外し可能なキャップ36(破線で示す)が使用されてもよい。容器30は、3M ESPE AG(ドイツ)から「5706 SD Capsule Dispenser」の呼称で入手可能な適用装置と共に使用されてもよい。したがって、容器30は、容器30をディスペンサに係合させるために使用され得る縁37を有している。縁37は、容器をロックして、使用中に意図せずに回転することを防ぐための切り込み又は平部を有してもよい。また、そのような回転の防止は、それ以外の方法でも、例えば、容器を圧締めすることによって、又は容器と適用装置との間の任意の他の噛合い又は摩擦嵌め(positive or frictional fit)によって達成されてもよい。
【0166】
カニューレ31とカプセル本体38は、異なるプラスチック材料から成型することができる。これにより、カニューレ31が好都合に患者の口腔内の比較的敏感な組織に直接接触して使用され得るように、例えば、比較的軟質のプラスチック材料をカニューレ31に選択することができる。他方で、これにより、カプセル本体38を比較的硬質の材料から成型することが可能となり、硬質の材料は、装置から歯科用組成物を押し出す間に必要となり得る機械的強度を十分にもたらす。また、カニューレ31とカプセル本体38は、異なるプラスチック材料から成型されてもよい。カニューレ31は、カプセル本体38と一体に成型されてもよい。これは、例えば、カニューレを形成する側で第一のプラスチック材料を型に注入し、それと概ね同時に、本体を形成する側で第二のプラスチック材料を型に注入することによって達成されてもよい。個々のプラスチック材料の流量は、カニューレ31がカプセル本体38と結合する領域でプラスチック材料が合流するように制御されてもよい。2つのプラスチック材料から装置30を成型する別の方法は、まずカニューレ31を成型し、続いて、予め成型されたそのカニューレの上にカプセル本体38を成型するか、又はその逆に成型することを含む。
【0167】
カニューレ31を製造するのに使用できる材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンスチレンブロックコポリマー、スチレンブタジエンメタクリレートブロックコポリマー、熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。カプセル本体38に好ましいプラスチック材料としては、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートが挙げられる。
【0168】
本発明はまた、本発明の歯科用圧排組成物と、歯肉と歯牙との間に形成される歯肉溝を歯科用圧排組成物で拡げることによって歯肉をヒトの歯牙から圧排するのに用いるための容器と、の組み合わせを目的とし、この容器は、歯科用組成物を分注するための開口部を備える自由端部を有するカニューレを備え、自由端部及び開口部は、自由端部の外側面が歯牙及び歯肉に触れる状態で、開口部が歯肉溝の入口に配置され得るように付形され、開口部が歯肉溝の内側に向いた状態で、カニューレが更に移動されるとき、歯肉が歯牙から側方に移動するように、自由端部は更に付形されている。
【0169】
更に、本発明の更なる実施形態は、本発明の歯科用圧排組成物と容器との組み合わせを目的とし、この容器は貯蔵部と、歯科用圧排組成物を分注するための開口部を備える自由端部を有するカニューレを備え、自由端部の外側面は第一外径D1と第二外径D2との間に延び、第一外径D1は自由端部の前端部の近傍に位置し、第二外径D2は第一外径D1から更に後方へ距離L2のところに位置し、D2はD1よりも大きい。
【0170】
更なる実施形態によれば、装置のD1は約0.3mm〜約0.7mmであり、D2は約0.7mm〜約1.3mmであり、L2は約0.3mm〜約2mmである。
【0171】
更なる実施形態によれば、第一外径D1は開口部の近傍に位置するか、あるいは開口部により形成されており、開口部は約0.3mm〜約0.7mmである第一内径P1を有し、P1はD1以下である。
【0172】
更なる実施形態によれば、装置の自由端部の外側面が第二外径D2から第一外径D1に向かって凸状に先細り、D2からD1に向かう方向における凸状の先細りが、好ましくはD2の1/2を超える半径Rに近似する曲線に基づいて先細る。
【0173】
更なる実施形態によれば、カニューレが更に、第一外径D1と第三外径D3との間の長さL1と、第二外径D2と第三外径D3との間に延びるシャフト部と、を有し、第三外径D3は約0.7mm〜約2mmであり、D3は、好ましくはD2を超えるか、あるいはほぼD2に等しく、L1は約6mm〜約18mmである。
【0174】
更なる実施形態によれば、容器は、歯科用圧排組成物を収容するための貯蔵部を備え、容器は、カニューレを通しての歯科用圧排組成物の分注に適合しており、更に、歯科用圧排組成物をカニューレに向かって付勢するのに有用な移動可能なピストンを備えるのに適合している。
【0175】
更なる実施形態によれば、カニューレはある長手軸線に沿って延び、この長手軸線は、約30度〜約60度の角度をなして、好ましくは約45度の角度をなしてカートリッジの長手軸線に対して傾斜する。
【0176】
更なる実施形態によれば、カニューレは、第一内径P1を有する開口部と第二内径P2を有する入口との間の通路を備え、P2は約0.3mm〜約1.0mmであり、P2は好ましくはP1よりも大きいかあるいは等しい。
【0177】
更なる実施形態によれば、カニューレは、歯肉溝でのカニューレの侵入深さに関する基準として利用可能なマーキングを有し、このマーキングは、切り込み、縁、印刷された線、カニューレの外側面の色の遷移、及びカニューレの外側面の2つの表面構造の間の切り替えのうちの少なくとも1つで形成される。
【0178】
特定の実施形態によれば、本発明は上記のような容器に関し、カニューレは、
−約0.4mmの第一外径D1と、
−約1.0mmの第二外径D2と、を備え、
−第一外径D1は、自由端部の前端部の近傍に位置し、第二外径D2は、第一外径D1から更に後方へ距離L2のところに位置し、
−距離L2は好ましくは約1.0mmであり、
−第一外径D1は開口部によって形成され、したがって開口部は、外径D1にほぼ対応する第一内径P1を有し、
−自由端部の外側面は第二外径D2から第一外径D1に向かって凸状に先細り、D2からD1に向かう方向における凸状の先細りは、好ましくは約3.0mmである半径Rに近似する曲線に基づいて先細り、
−カニューレは、第一外径D1と第三外径D3との間の長さL1を更に有し、第三外径D3は約1.8mmであり、長さL1は好ましくは約11.0mmであり、
容器は更に、
−歯科用圧排組成物を受容するための、カニューレと流体連通している貯蔵部と、
−貯蔵部からカニューレに向かって歯科用圧排組成物を進めるための押出経路に沿って貯蔵部内を移動可能であるピストンと、
−押出し経路の側方に延在し、押出し経路に平行な方向における移動に抗して装置を捕捉するように適合された捕捉部と、
−押出し経路の側方に弾力性を持つ弾性アダプタと、を備え、
この装置は、本明細書に記載の歯科用圧排組成物を収容する。
【0179】
本発明はまた、A部とB部とを備えるキットを目的とし、A部は本明細書に記載の歯科用圧排組成物を含み、B部は、以下:適用器具、歯科用印象材、圧排キャップ、(特に本組成物を収容及び分注するための)容器、から選択される構成要素の1つ以上を備える。
【0180】
したがって、この複数の部のキットは、本明細書に記載の歯科用圧排組成物の他に、歯科用印象材を含み得る。
【0181】
圧排装置と組み合わせて使用できる印象材は、その化学性及び性質に関して特に制限されない。ポリエーテル部分又はシリコーン部分を含有する印象材は、有用であることが判明している。
【0182】
ポリエーテル部分を含有する印象材の例は、米国特許第6,383,279号、同第2002/0156149号及び同第2005/02503871号に与えられている。市販の材料は、例えば、ブランドImpregum(商標)で販売されている。
【0183】
シリコーン部分を含有する印象材の例は、欧州特許第1893163号、米国特許第2007/004858号及び同第2006/293469号に与えられている。市販の材料は、ブランドImprint(商標)(3M ESPE)で販売されている。
【0184】
本キットはまた、圧排カップを備えてもよい。圧排キャップは、印象を採得するまで適所に圧排材料を保持するのに又は歯肉溝の中に歯科用圧排組成物を押し出すのに有用であることができる。圧排キャップは、例えば、綿といった、軟らかく、組織に対して親和的な材料から製造することができる。しかしながら、他の材料も同様に有用であり得る。適切であれば、一次的な修復を圧排キャップとして使用することもできる。市販の圧排キャップは、例えば、ブランドComprecap(商標)(Coltene Whaledent)で販売されている。
【0185】
場合によっては、圧縮キャップ若しくはブリッジ、暫間クラウン若しくはブリッジ、又は更には第一印象を、圧排プロセス中に一種の付属品として使用してもよい。典型的には、歯科用圧排組成物は、数分(例えば、約1分〜約10分、又は約2〜約6分)にわたって歯肉溝の中に留まって、有効な機械的な圧排を達成する。
【0186】
このキットはまた、適用器具又はカプセルディスペンサを備えてもよい。こうした装置は、例えば、3M ESPE(Product Catalogue 2007,page 29を参照)から市販されている。典型的な適用器具は、約3:1〜約4:1のギア比を有する。使用できる適用器具の更なる例は、米国特許第5,362,495号の図3に示されている。
【0187】
本発明はまた、本明細書に記載の歯科用圧排組成物を製造するプロセスを目的とする。
【0188】
このプロセスは、典型的には、混合工程を含む。
【0189】
したがって、歯科用圧排組成物の製造プロセスは、典型的には、混合される個々の構成成分を供給する工程と、構成成分を混合する工程と、を含む。
【0190】
本発明はまた、本明細書に記載の歯科用圧排組成物を分注するプロセスを目的とする。
【0191】
このプロセスは、典型的には、以下の工程を含む:
・本明細書に記載の歯科用圧排組成物を収容する装置又は容器を供給する工程、
・この装置又は容器を、適用器具又はディスペンサ内に配置する工程、
・適用器具又はディスペンサを使用して、歯科用圧排組成物を分注する工程。
【0192】
所望される場合、これらの工程は、繰り返すことができる。
【0193】
更に、本発明はまた、歯牙硬組織から軟組織を圧排する方法を特徴とし、以下の工程を含む:
・口腔軟組織と歯牙硬組織との間の歯肉溝の中に本明細書に記載の歯科用圧排組成物を分注する工程、
・少なくとも約10秒、又は少なくとも約30秒、又は少なくとも約60秒にわたって、歯肉溝の中に歯科用圧排組成物を残す又は留める工程、
・歯肉溝から歯科用圧排組成物を除去する工程、
・所望により、歯牙硬組織の印象を採得する工程。
【0194】
本発明はまた、歯牙硬組織から軟組織を圧排するための手段を製造するための本明細書に記載の組成物の使用を目的とし、この手段は、典型的には、カニューレ及び貯蔵部を有する容器を備え、この組成物は使用前は貯蔵部に収容される。
【0195】
本発明の一実施形態によれば、本組成物は、容器のカニューレの自由端部の補助により、歯肉溝に挿入される。これは、口腔軟組織と歯牙硬組織との間の歯肉溝を機械的に拡げることを促進し得る。
【0196】
典型的な適用処置は以下のように例示することができる:
歯科用圧排組成物は、適用器具を用いて、容器のノズル又はカニューレから哺乳類又はヒトの準備された歯牙構造の歯肉溝の中に分注される。歯科用圧排組成物は、適切な時間にわたって歯肉溝の中に留まり、この時間は典型的には施術者により決定される。
【0197】
十分な圧排後、組成物は、例えば、十分な圧力を有する歯科用水/空気両用シリンジを使用して、歯肉溝から除去される。水−空気ビーム装置は、典型的には、歯科用治療台に備え付けられている。
【0198】
歯肉溝は、適用前の歯肉溝と比較して、本発明の歯科用圧排組成物により、拡げられている。組成物の除去後、一般的な印象材で印象を採得するプロセスによるか、又は、例えば、3M ESPEにより供給されているCOS System(チェアサイドオーラルスキャナ)などの口腔内スキャナーを用いて準備された領域の口腔内スキャンによるかのいずれかで、プレパレーションマージンを含む調製された歯牙の形状を測定することができる。
【0199】
所望される場合、全プロセス及び作業性は、例えば、Frasaco(商標)Standard Model AG3(人工歯牙の周りの合成組織)を使用して、インビトロで実証することもできる。
【0200】
本発明の組成物は、典型的には、生体組織又は構成要素において、毒性の、有害の又は免疫応答を生じさせる構成成分、あるいは、意図される目的の本発明による達成を危うくする添加剤を含有しない。
【0201】
したがって、例えば、その特徴が本発明の目的に反する組成物を最終的にもたらす、ある量で添加される構成成分及び添加剤は、通常、本歯科用圧排組成物に含有されない。
【0202】
特定の実施形態によれば、本発明の歯科用圧排組成物は、典型的には、以下の構成成分のうちの1つ以上を含有しない:フィブリル化繊維、デンプン、セルロース若しくはセルロース誘導体及び/又は超吸収剤のような吸収剤。
【0203】
フィブリル化繊維は、例えば、セルロース系天然繊維、又は、ポリエステル、ポリアミド若しくはガラス繊維といった人工繊維である。繊維の添加は、繊維なしのペーストに比べて、ペースト中の繊維構造が貯蔵弾性率を低下させ得ることから、圧排プロセス全体にとって有害となり得る場合がある。
【0204】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体が参考として組み込まれる。本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。上の明細書、実施例、及びデータが、本発明の組成物及び方法の、製造及び使用について、完全な説明を提供する。本発明は、本明細書に開示される実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の多くの代替的実施形態が本発明の趣旨及び範囲から離れることなく行うことができることを理解するであろう。
【0205】
以下の実施例は例示のために与えられるが、本発明の範囲を限定するものではない。特に断らない限り、部及び百分率は全て重量基準である。
【実施例】
【0206】
指示がない限り、全ての部及びパーセントは重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。更に、特に指示がない限り、全ての実施例は、周囲条件(23℃;1013mbar(101.3kPa))下で行われた。
【0207】
測定
貯蔵弾性率:
プレート/プレートの結合構造(プレートの直径は15mm、表面は刻み付き)でPhysica Rheometer(Paar MCR 300)を使用して、貯蔵弾性率を測定した。初期の間隙を1mmに設定し、測定の間に作用させる力を(1+/−1)Nに設定した。300秒の間に1〜10s−1の直線的な傾斜を利用して、振動試験を実施した。歪みを0.01%に設定した。貯蔵弾性率を室温(23℃)にて5s−1の角周波数で求めた。
【0208】
押出力[N]
試験装置Zwick Z020(Zwick Roell Comp.)を使用して押出力を測定した。試験装置に容器のためにホルダーを取り付け、ピストンに対して圧力をかけるための小さなスタンプを容器内に挿入し、貯蔵部を封止した。スタンプの寸法は、市販の単一容器ディスペンサ(例えば3M ESPE Comp.から注文コード5706 SDとして市販)において使用されているものに対応するものであった。供給速度を1.0mm/sに設定した。初期の降伏点(始点から約6mm〜9mm)を超えた後に力を測定した。6つの個々の測定値に対する平均値として押出力を求めた。容器のカニューレの形状は図4に与えられており、容器に挿入されるピストンの形状は図5及び6に示されている。
【0209】
すすぎ時間:
すすぎ時間は、歯科用処置ユニット(KaVo ESTETICA(商標)Sensus 1066;KaVo Comp.)を用いて測定した。ポリオキシメチレンから製造されるポリマーブロックを、すすぎ方向に対して45°の表面を有する三角形状に切り出した。幅1mm及び深さ3mmの溝をブロックの内部に、表面に対して直角にミリングした(図7及び8を参照されたい)。歯科用処置ユニットの3ウェイハンドピースシリンジをブロックまで5mmの距離(水/空気出口)で底面に対して垂直に固定した。乾燥した溝を5mmの糸状のペーストで充填し、表面及び側部を滑らかにした。図8の黒線は、ペーストが充填された溝の領域をマークするものである。全てのペーストがすすぎ出されるまでブロックを手動で長手方向に移動させることにより、ペーストを溝からすすぎ出した。使用した空気圧は475kPaであり、水圧は250kPaであった。2つの個々の測定値の平均として、すすぎ時間を決定した。
【0210】
使用した成分を表1に列挙する。
【0211】
【表1】

【0212】
歯科用圧排組成物の合成
個々の構成成分をスピードミキサー内に配置し、約60秒にわたって約2,400rpmで混合した。構成成分が接触に至った直後に混合プロセスを開始した。得られたペーストが塊状(cloddy)であった場合、混合工程を繰り返した。
【0213】
あるいは、組成物を3フィンガー混練機で混合することができる。
【0214】
下記の表2に記載の組成物を上記のように調製し、すすぎ時間、貯蔵弾性率及び押出力に関して分析した。
【0215】
【表2】


1)、2)は、シリカ鉱物の全含有量に対するものである。
【0216】
図9は、ダイアグラムで貯蔵弾性率及びすすぎ時間についての結果を示す。カオリンの量が少な過ぎると、十分な貯蔵弾性率を得ることができない。一方、カオリンの量が多過ぎると、すすぎ時間が長くなり過ぎる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と、
互いに対して約50/50〜5/95重量%の割合で、層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物と層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物と、を含む、歯科用圧排組成物。
【請求項2】
以下の特徴のうちの少なくとも1つに見合う割合で液体と固体とを含む、特に請求項1に記載の歯科用圧排組成物:
・貯蔵弾性率:少なくとも約2000kPa、
・押出力:約150N以下、
・すすぎ時間:約11秒以下。
【請求項3】
前記層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物が、カオリナイト、リザルダイト、ハロイサイト並びにこれらの混合物及び組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の歯科用圧排組成物。
【請求項4】
前記層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物が、タルク−葉蝋石タイプの鉱物、スメクタイトタイプの鉱物、蛭石タイプの鉱物、イライトタイプの鉱物、雲母タイプの鉱物、並びにこれらの混合物及び組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯科用圧排組成物。
【請求項5】
前記液体が、水、アルコール、ケトン、グリセリン、グリコール、シリコーンオイル、並びにこれらの混合物及び組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の歯科用圧排組成物。
【請求項6】
1種以上の収斂剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の歯科用圧排組成物。
【請求項7】
着色剤、抗微生物剤、蒸発防止剤、風味剤、界面活性剤、保存剤、レオロジー改変剤、pH緩衝剤、並びにこれらの混合物及び組み合わせからなる群から選択される1種以上の添加剤を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の歯科用圧排組成物。
【請求項8】
組成物全体に対しての重量%で、
・約10重量%〜約35重量%の量の液体と、
・約1重量%〜約40重量%の量の層タイプが1:1であるケイ酸塩鉱物と、
・約25重量%〜約70重量%の量の層タイプが2:1であるケイ酸塩鉱物と、
・約0〜約30重量%の量の収斂剤と、
・約0〜約30重量%の量の添加剤と、
を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の歯科用圧排組成物。
【請求項9】
以下の構成成分のうちの1つ以上を本質的に含まない、請求項1〜8のいずれか一項に記載の歯科用圧排組成物:フィブリル化繊維、デンプン、セルロース、及び水で膨潤可能な物質。
【請求項10】
前記組成物が、貯蔵部とカニューレとを備える容器の中に収容される、歯牙硬組織から口腔軟組織を圧排するための手段を製造するための請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項11】
前記手段が、
・前記組成物を口腔軟組織と歯牙硬組織との間の歯肉溝の中に分注する工程と、
・前記組成物を少なくとも約5秒にわたって前記歯肉溝の中に留める工程と、
・前記歯肉溝から前記組成物を除去する工程と、
を含むプロセスで使用されるものであり、前記手段が更に貯蔵部とカニューレとを有する容器を備える、請求項10に記載の組成物の使用。
【請求項12】
歯牙硬組織から歯牙軟組織を圧排するための手段の製造プロセスであって、前記プロセスは、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物をカニューレと貯蔵部とを備える容器の中に充填する工程を含む、プロセス。
【請求項13】
容器の中に収容された、請求項1〜9のいずれか一項に記載の歯科圧排組成物。
【請求項14】
前記容器が貯蔵部とカニューレを備え、前記カニューレは前記歯科用圧排組成物を分注するための開口部を備える自由端部を有し、ここで、前記自由端部の外側面は第一外径D1と第二外径D2との間に延び、前記第一外径D1は前記自由端部の前端部の近傍に位置し、前記第二外径D2は前記第一外径D1から更に後方へ距離L2のところに位置し、D2はD1よりも大きい、請求項14に記載の歯科圧排組成物。
【請求項15】
A部が請求項1〜9のいずれか一項に記載の歯科用圧排組成物を含み、B部が以下:適用器具、歯科用印象材、圧排キャップ、容器及びこれらの組み合わせ、から選択される構成要素の1つ以上を備える、A部とB部とを備えるキット。
【請求項16】
歯科用圧排組成物を分注するプロセスであって、前記プロセスが、
・貯蔵部とカニューレとを備える容器の中に収容された請求項1〜9のいずれか一項に記載の歯科圧排組成物を供給する工程と、
・前記容器を適用器具の中に配置する工程と、
・前記適用器具を使用して前記容器の外に前記歯科用圧排組成物を分注する工程と、を含む、プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−528164(P2012−528164A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513149(P2012−513149)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/035901
【国際公開番号】WO2010/138433
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】