説明

歯科用治療装置

【課題】本発明は、切削工具または切削工具を保持する保持部と、ハンドピース本体部の内部に設けてある導電体とを電気的に接続する接点部材に接続不良が生じているか否かを容易に判別することができる歯科用治療装置を提供する。
【解決手段】本発明は、切削工具5を駆動可能に保持する保持部を有するヘッド部2と、ヘッド部2と接続し、切削工具5を駆動するための動力を伝達するハンドピース1と、切削工具5の駆動を制御する制御部11とを備える歯科用治療装置である。本発明に係る歯科用治療装置は、ハンドピース1の内部に設け、電気信号を伝達する導電体と、切削工具5または保持部と導電体とを電気的に接続する接点部材と、導電体に予め定められた入力信号を印加し、切削工具5を介して得られる入力信号の応答に基づいて接点部材の接続不良を検出する接続不良検出部121と、接続不良検出部121の検出結果に基づき使用者に対して報知を行なう報知部17とをさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドピースを備えた歯科用治療装置に関し、特に、歯牙の根管の内壁を切削拡大する切削工具または該切削工具を保持する保持部に対して電気的な接点を有する歯科用治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドピースを備えた歯科用治療装置には、たとえば、歯牙の根管を切削拡大する治療および根管長の測定に用いられる歯科用根管治療ハンドピースがある。歯科用根管治療のハンドピースの具体例としては、たとえば、特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示してある歯科用根管治療のハンドピースは、ハンドピース本体に装着するためのヘッド部の装着部分が導電性部材で構成されている。そのため、特許文献1に開示してある歯科用根管治療のハンドピースは、ハンドピース本体にヘッド部を装着することで、ヘッド部の装着部分とハンドピース本体内の根管長測定用回路を構成する導電性部材(駆動伝達機構等)とが電気的に接続される。そして、特許文献1に開示してある歯科用根管治療のハンドピースは、ヘッド部の装着部分と、ヘッド部に切削工具を装着するための工具保持機構との間が、ヘッド部の装着部分に設けたブラシ機構を介して電気的に接続されるので、切削工具に至る根管長測定用の信号伝達回路の一方を構成することができる(同文献の図2、図3に示す例)。
【0004】
また、特許文献2に開示してある歯科用根管治療のハンドピースは、ヘッド部内に、ハンドピース本体内のリード線に接続される端子ピン、接点プラグ及び接点ジャックを設け、ヘッド部の下面において接触子を、接点板を介して接点ジャックに取付けてある。ここで、接触子は、垂直回動、水平回動或いはスライドさせることによって切削工具に接触させるようにし、これによって切削工具に至る根管長測定用の信号伝達回路の一方を構成することができる。
【0005】
さらに、特許文献3に開示してある歯科用根管治療のハンドピースは、ハンドピース本体が導電性部材で構成され、ハンドピース本体内に絶縁被覆された根管長測定信号を伝達するための導線を配設し、この導線の先端が二股状となっている。そして、特許文献3に開示してある歯科用根管治療のハンドピースは、二股状の導線の一方を頭部軸部材(工具保持部)に接触手段を介して接触させ、他方をU字形弾性ワイヤに接続し、このU字形弾性ワイヤを工具保持部に装着される工具に接触させるように構成してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3213480号公報
【特許文献2】特許第3213539号公報
【特許文献3】特許第4638796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示してある歯科用根管治療のハンドピースでは、ヘッド部の装着部分に電気的接点であるブラシ機構を設け、該ブラシ機構が工具保持機構である回転体(ロータ)を挟持することで、切削工具に至る根管長測定用の信号伝達回路の一方を構成している。しかし、特許文献1に開示してある歯科用根管治療のハンドピースは、度重なるロータの回転を受けてブラシ機構が磨耗し、ロータとブラシ機構との接続不良が生じても、ロータとブラシ機構との接続不良か否かを外部から判別することができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献1に開示してある歯科用根管治療のハンドピースでは、ロータとブラシ機構との接続不良が生じると、根管長測定結果の表示が変動したり、表示が点滅したりする場合がある。しかし、特許文献1に開示してある歯科用根管治療のハンドピースは、根管長測定用の信号伝達回路自体に不具合が発生しても、同様に根管長測定結果の表示が変動したり、表示が点滅したりする場合があり、根管長測定結果の表示のみで、ロータとブラシ機構との接続不良が発生していることを判別することは困難である。
【0009】
特許文献2に開示してある歯科用根管治療のハンドピースは、ヘッド部の下面において接触子を切削工具に接触させてあるので、接触子と切削工具との電気的な接点が外部に露出している。そのため、特許文献2に開示してある歯科用根管治療のハンドピースでは、度重なる切削工具の回転を受けて接触子が磨耗して、接触子と切削工具との接続不良が生じても、外観を目視することで接触子の磨耗を容易に判別することができる。ただし、接触子の表面に絶縁物の皮膜が形成され、接触子と切削工具との接続不良が生じた場合など、外観を目視するのみでは、接触子と切削工具との接続不良を容易に判別することができないことが考えられる。
【0010】
特許文献3に開示してある歯科用根管治療のハンドピースは、二股状の導線の一方に接続した接触手段をヘッド部内で工具保持部と接触させ、二股状の導線の他方に接続したU字形弾性ワイヤをヘッド部外で工具と接触させてある。しかし、特許文献3に開示してある歯科用根管治療のハンドピースは、度重なる工具保持部の回転を受けて接触手段が磨耗し、工具保持部と接触手段との接続不良が生じても、工具保持部と接触手段との接続不良か否かを外部から判別することができないという問題があった。
【0011】
それゆえに、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、切削工具または切削工具を保持する保持部と、ハンドピース本体部の内部に設けてある導電体とを電気的に接続する接点部材に接続不良が生じているか否かを容易に判別することができる歯科用治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る歯科用治療装置は、切削工具を駆動可能に保持する保持部を有するヘッド部と、ヘッド部と接続し、切削工具を駆動するための動力を伝達するハンドピース本体部と、切削工具の駆動を制御する制御部とを備える歯科用治療装置であって、ハンドピース本体部の内部に設け、電気信号を伝達する導電体と、切削工具または保持部と導電体とを電気的に接続する接点部材と、導電体に予め定められた入力信号を印加し、切削工具を介して得られる入力信号の応答に基づいて接点部材の接続不良を検出する接続不良検出部と、接続不良検出部の検出結果に基づき使用者に対して報知を行なう報知部とをさらに備える。
【0013】
好ましくは、接続不良検出部は、切削工具を介して得られる信号波形の変化を入力信号の応答として、接点部材の接続不良を検出する。
【0014】
好ましくは、接続不良検出部は、切削工具を介して得られる信号波形の単位時間あたりにおける信号値の増減方向の変化の回数を入力信号の応答として、接点部材の接続不良を検出する。
【0015】
好ましくは、接続不良検出部は、接点部材を交換してから切削工具を駆動した累積駆動時間を記憶し、記憶した累積駆動時間が予め定められた時間以上である場合に、切削工具を介して得られる入力信号の応答に基づいて接点部材の接続不良を検出する。
【0016】
好ましくは、報知部は、接続不良検出部の検出結果に基づき、切削工具の駆動によって接点部材が磨耗したことを使用者に報知する。
【0017】
好ましくは、制御部は、接続不良検出部の検出結果に基づき、切削工具の駆動を停止、駆動力を低下、または切削工具の駆動する方向を反転させる。
【0018】
好ましくは、導電体に予め定められた測定信号を印加することで、根管長測定が可能な歯科用治療装置であって、接続不良検出部は、測定信号を入力信号として用いる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る歯科用治療装置は、接点部材の接続不良を、接続不良検出部で入力信号の応答に基づいて検出するので、接点部材がヘッド部外に設けてある場合はもちろん、接点部材がヘッド部内に設けてあり外観を目視することができない場合であっても、接点部材の磨耗による接続不良を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る根管治療器の外観の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る根管治療器の機能の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るハンドピースの構成を説明するための断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るハンドピースの先端の構成を説明するための断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る根管治療器の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態1に係るハンドピースの導電体に印加する入力信号の波形を示す波形図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るハンドピースにおいて接点部材に接続不良が生じている場合に、切削工具を介して得られる信号波形を示す波形図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るハンドピースにおいて接点部材に接続不良が生じていない場合に、切削工具を介して得られる信号波形を示す波形図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る根管治療器の表示部に表示する表示画面および歯牙の根管内での切削工具の位置関係を示す模式図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る根管治療器の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態3に係る根管治療器の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態4に係るハンドピースの先端の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る歯科用治療装置は、歯科用根管治療のハンドピースを組み込んだ根管拡大及び根管長測定システムを含む根管治療器である。しかし、本発明に係る歯科用治療装置は、根管治療器に限定されるものではなく、同様の構成を有する歯科用治療装置について適用することができる。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器の外観の構成を示す概略図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器の機能の構成を示すブロック図である。図1に示す根管治療器100は、歯科用根管治療のためのハンドピース1、モータユニット6、制御ボックス9を含んでいる。
【0023】
歯科用根管治療のハンドピース1は、ヘッド部2と、ヘッド部2に連接される細径のネック部3と、該ネック部3に連接され手指によって把持される把持部4とを備えている。そして、把持部4の基部には、ヘッド部2に装着される切削工具5を回転駆動させるためのモータユニット6が着脱自在に接続される。ハンドピース1にモータユニット6が連結された状態で歯科用のインスツルメント10が構成される。
【0024】
モータユニット6は、図2に示すようにマイクロモータ7が内蔵され、該マイクロモータ7へ電源を供給する電源供給用リード線71および、後述する根管長測定用信号回路へ信号を伝送する信号用リード線8などを内装するホース61を介して、制御ボックス9に連結されている。ここで、信号用リード線8は、後述するようにモータユニット6及びハンドピース1内を経て切削工具5と電気的に導通し、電気信号を伝達する導電体の一部である。なお、切削工具5は、後述する根管長測定回路の一方の電極となる。
【0025】
制御ボックス9は、制御部11、根管長測定回路12、モータドライバ13、オートストップ位置設定部14、操作部15および表示部16などを備えている。なお、制御ボックス9は、図1に示すように、本体側部にインスツルメント10を不使用時に保持するためホルダ10aが取付けられている。また、制御ボックス9には、フートコントローラ18が連結され、さらに、根管長測定回路12に電気的に接続するリード線19が連結されている。リード線19は、ホース61の途中から分岐する形をとることもある。リード線19の先端には、患者の唇に掛けられる口腔電極19aが電気的に導通する状態で取付けられている。なお、口腔電極19aは、根管長測定回路12の他方の電極となる。
【0026】
制御部11は、根管拡大及び根管長測定システム全体の制御を行うもので、主要部はマイクロコンピュータで構成されている。制御部11には、根管長測定回路12、モータドライバ13、オートストップ位置設定部14、操作部15、表示部16、報知部17およびフートコントローラ18が接続されている。
【0027】
根管長測定回路12は、歯牙の根管内に挿入した切削工具5を一方の電極、患者の唇に掛けた口腔電極19aを他方の電極として閉回路を構成する。そして、根管長測定回路12は、切削工具5と口腔電極19aとの間に電圧を印加し、切削工具5と口腔電極19aとの間のインピーダンスを計測することによって、歯牙の根尖位置から切削工具5の先端までの距離(根管長)を測定することができる。なお、切削工具5と口腔電極19aとの間のインピーダンスを計測して、根管長を測定する電気的根管長測定方法は公知のものであり、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100には、公知になっているすべての電気的根管長測定方法を適用することができる。
【0028】
根管長測定回路12には、後述するオートストップ位置設定部14を接続すると共に、接続不良検出部121を接続している。接続不良検出部121は、根管長測定回路12からハンドピース1の内部に設けた導電体に入力信号を印加し、切削工具5を介して入力信号の応答を得る。そして、接続不良検出部121は、切削工具5を介して得た入力信号の応答に基づいて、切削工具5または切削工具5を保持する保持部と信号用リード線8とを電気的に接続する接点部材の接続不良を検出する。
【0029】
モータドライバ13は、電源供給用リード線71を介してマイクロモータ7に接続され、制御部11からの制御信号に基づいて、マイクロモータ7に供給する電源を制御している。モータドライバ13は、マイクロモータ7に供給する電源を制御することで、マイクロモータ7の回転数、つまり切削工具5の回転数を制御することができる。
【0030】
オートストップ位置設定部14は、切削工具5を回転させながら歯の根管拡大治療を行う際、表示部16を見ながら予め基準となる根管内の位置を設定しておき、切削工具5の先端がこの設定位置に達したとき、切削工具5の回転を自動的に停止或いは逆回転させるものである。このような自動停止等の制御を行なうか否かの選択は、操作部15で行なうことができる。
【0031】
操作部15は、自動停止等の制御を行なうか否かの選択を行なう他、根管長測定を行なうか否かの選択なども設定することができる。
【0032】
表示部16は、後述するように根管内での切削工具5の先端の位置や切削工具5の回転数を表示する。さらに、表示部16は、報知部17が接続不良検出部121の検出結果に基づき使用者に対して接点部材の接続不良を報知するための情報を表示することもできる。
【0033】
報知部17は、接続不良検出部121の検出結果に基づき使用者に対して切削工具5と信号用リード線8とを電気的に接続する接点部材の接続不良を光、音や振動などにより報知を行なう。具体的に、報知部17は、接点部材の接続不良を報知するために、必要に応じてLED(Light Emitting Diode),スピーカーや振動子などを設ける。なお、報知部17は、表示部16が接続不良検出部121の検出結果に基づき使用者に対して接点部材の接続不良を報知するための情報を表示することができる場合、LED,スピーカーや振動子など別途設けなくてもよい。
【0034】
フートコントローラ18は、切削工具5のマイクロモータ7による回転制御を足踏操作によって行なう操作部である。なお、切削工具5のマイクロモータ7による回転制御は、フートコントローラ18に限定されるものではなく、ハンドピース1の把持部4に操作スイッチ(不図示)を設け、この操作スイッチとフートコントローラ18とを併用して回転制御を行うようにしても良い。また、例えば、フートコントローラ18の足踏操作がなされている状態で、さらに根管長測定回路12によって切削工具5が根管内に挿入されたことが検知されたことをもって、切削工具5の回転を開始するようにしても良い。
【0035】
なお、根管治療器100の制御ボックス9は、歯科用診療台の側部に設置されるトレーテーブルやサイドテーブル上に載置されて使用される構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、トレーテーブルやサイドテーブル内に制御ボックス9を組込んだ構成であっても良い。また、ハンドピース1は、ホース61を介して、制御ボックス9に連結されている構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、コードレスタイプとして構成しても良い。具体的に、コードレスタイプのハンドピース1は、把持部4にバッテリーパック、マイクロモータ及び制御ボックス9に相当する制御系を組み込み、各種操作部を把持部4の表面に設けると共に、口腔電極19a用のリード線19を把持部4より導出するよう構成する。
【0036】
次に、ハンドピース1の構成について、さらに詳しく説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係るハンドピース1の構成を説明するための断面図である。図4は、本発明の実施の形態1に係るハンドピース1の先端の構成を説明するための断面図である。図4に示すハンドピース1は、前半部が合成樹脂の成型体からなる把持部4のハウジング4a及びネック部3を介して合成樹脂の成型体からなるヘッドハウジング2aが連なってコントラアングル形に形成されている。把持部4のハウジング4a内には、把持部4の基部にモータユニット6が接続されたときに、マイクロモータ7の出力軸72にカップリング部20aを介して連結される第1駆動伝達軸20が軸回転可能に内装されている。第1駆動伝達軸20の先端には第1減速ギヤ機構21を介して第2駆動伝達軸22が軸回転可能に連設され、更に、ネック部3に至る部分には、屈折部分の第2減速ギヤ機構23を介して第3駆動伝達軸24が軸回転可能に連設されている。モータユニット6の先端部には、信号用リード線8に連結されているソケット81が設けられ、把持部4の基部には、該ソケット81に差込み接続するプラグ82が設けられている。該プラグ82からはリード線83が把持部4のハウジング4a内を引き回され、ソケット及びピンからなるコネクタ部84を介してネック部3に及ぶ細帯板状の導電体85に電気的導通状態で連結されている。ネック部3の下面には、図4(a)に示すように、表面外周より軸心側に向け凹部3aが凹設され、導電体85の先端部がこの凹部3aに露出するように臨んでいる。なお、図4(a)は、図3の範囲Xに示すハンドピース1の先端を拡大した断面図であり、カバー部材36が嵌め込み装着される前の図である。図4(b)は、図3の範囲Xに示すハンドピース1の先端を拡大した断面図であり、カバー部材36が嵌め込み装着された後の図である。
【0037】
第3駆動伝達軸24は、把持部4のハウジング4aに一体に嵌装された金属製のスリーブ25内に軸受26を介して軸回転可能に支持され、その先端部にはベベルギヤ27が固設されている。導電体85は、スリーブ25とは空間部を介して絶縁状態とされている。また、スリーブ25の凹部3aに対応する部分には、雌ネジ部25aが形成されている。ヘッド部2のヘッドハウジング2aには、切削工具5を第3駆動伝達軸24の軸心に直交する軸心回りに回転自在に保持する工具保持機構部28が内装されている。該工具保持機構部28は、ベベルギヤ27に噛合うギヤ部29aを備えた導電性部材からなる中空円筒状のロータ(工具保持部)29と、該ロータ29に外嵌一体とされたチャック部材30と、該チャック部材30に外嵌一体とされた筒状のロータ外装部材31とを備えている。ロータ29、チャック部材30及びロータ外装部材31は、軸受32,33を介し、ヘッドハウジング2aに一体的に軸回転可能に支持されている。
【0038】
切削工具5は、ファイル或いはリーマと称されるもので、ロータ29の内筒部に抜差自在に密嵌されるシャンク部5aと、該シャンク部5aに同心的に圧入一体とされた針状の切削作用部5bとで構成され、全体が導電性部材によって構成される。該切削工具5の上端部には、チャック部材30に形成された一対のチャック爪30a,30aが弾性的に係止する係止凹部5cが形成されている。以下において、上或いは下なる用語は、図4に示される図との関係において、紙面上側を上、下側を下と表すものとして用いている。切削工具5を、シャンク部5aをしてロータ29の内筒部に挿入させると、チャック爪30a,30aが係止凹部5cに弾性的に嵌まり込んで係止され、これによって、切削工具5のロータ29からの抜出が阻止される。また、切削工具5の上端部には、図示を省略するDカット部が形成され、一方ロータ外装部材31にはこのDカット部に整合する形状の受容部(不図示)が形成されている。切削工具5がロータ29に抜出不能に挿入された状態では、Dカット部が受容部に受容され、切削工具5がロータ29と一体的に軸回転可能な状態とされる。このとき、切削工具5がロータ29に密嵌状態とされて、切削工具5とロータ29とが電気的導通状態とされる。
【0039】
ヘッドハウジング2aの上端部は開口し、この開口部に、蓋体を兼ねた係止解除ボタン34が取り付けられている。この係止解除ボタン34の下面には作用筒部34aが下向きに突設され、該係止解除ボタン34は、ばね部材35によって、常時上方に付勢され、且つ上方への抜出しが阻止された状態で組み付けられている。そして、係止解除ボタン34をばね部材35の付勢力に抗して押込むことによって、係止解除ボタン34の下面に突設された作用筒部34aの下端部がチャック爪30a,30aを押し広げるように作用する。これによって、チャック爪30a,30aの係止凹部5cに対する係止が解除され、切削工具5のロータ29からの抜脱が可能とされる。ヘッドハウジング2aの下端部は、ロータ29の下端部周辺部分が露出するよう円形に切欠かれており、この切欠部2bは、ネック部3の下面に形成された凹部3aと連続するように形成されている。
【0040】
連続する凹部3a及び切欠部2bには、カバー部材36が嵌め込み装着される。該カバー部材36は、非導電性の金属部材或いは合成樹脂部材からなり、凹部3a及び切欠部2b内に、その内周部に密接する状態で嵌まり込み得る形状とされている。該カバー部材36は、凹部3aに嵌まり込む第1部分36Aと、切欠部2bに嵌り込む第2部分36Bとが段差状に連なるよう一体に形成されている。第1部分36Aの上面には、板状の導電性部材からなる接点部片37が、面接触状態で固着され、また、該接点部片37に一体連接されて互いに向き合う円弧形状部38a,38aを有する一対の挟片状の電極部片38,38が第2部分36Bの上面に及ぶように形成されている。電極部片38,38は、その板面が第2部分36Bの上面に垂直となるように形成され、また、電極部片38,38の円弧形状部38a,38aの内周による仮想円の径が、ロータ29の下端部における外径より若干小さくなるように設定されている。
【0041】
カバー部材36における第1部分36Aの下面には下向きに開口する溝状凹部36Aaが形成され、その略中央部には円孔36Abが開設されている。また、第2部分36Bの略中央部には、円弧形状部38a,38aの内周による仮想円と同心の円孔36Baが開設されている。第1部分36Aに開設される円孔36Abは、止具39を挿通するための孔であり、接点部片37の対応する位置にも同心の透孔37aが形成されている。また、導電体85におけるスリーブ25に形成された雌ネジ部25aに対応する部位にも透孔85aが形成されている。止具39は、雄ネジ部39aを有し、円孔36Ab、透孔37a及び透孔85aを貫通させ、頭部39bにドライバー等の工具を作用させることによって、雌ネジ部25aに雄ネジ部39aを螺合させることができる。これによって、凹部3a及び切欠部2bに嵌め込まれたカバー部材36がスリーブ25に装着固定される。この固定状態では、図4(b)に示すように、止具39の頭部は溝状凹部36Aaよりほとんど突出することなく収まり、第1部分36Aも凹部3a内に概略収まって該凹部3a近傍のネック部3の外形状の一部をなすよう整合した状態とされる。また、接点部片37は、導電体85の先端部を押し上げるようにして当該先端部に弾接し、両者が電気的導通状態とされる。なお、この弾接状態を確実なものとするため、導電体85の凹部3aに臨む部分(先端部)を自由端とし、凹部3a内で若干下向きに垂れ下がるような屈折或いは湾曲された形状とすることが望ましい。
【0042】
カバー部材36の第2部分36Bに開設された円孔36Baの径は、切削工具5のシャンク部5aの外径より若干大とされている。第1部分36Aの凹部3aに対する嵌め込み装着は、同時に第2部分36Bが切欠部2bに収まるようになされる。このとき、一対の挟片状の電極部片38,38を押し広げ、ロータ29の下端部外周部を挟むようにして円弧形状部38a,38aをロータ29の外周部に弾接させる。これによって、電極部片38,38とロータ29との電気的導通状態が達成される。特に、電極部片38,38の円弧形状部38a,38aの内周による仮想円の径とロータ29の下端部における外径との大小関係により、両者の弾接による電気的導通状態が安定的に維持される。なお、電極部片として、一対の挟片状の電極部片38,38を例示したが、1個の舌片状の部片をロータ29に弾接させるようにしても良い。
【0043】
カバー部材36が凹部3a及び切欠部2bに嵌め込み装着された状態で、切削工具5を第2部分36Bの円孔36Baを貫通させ、ロータ29の内筒部に挿入してチャック部材30等を介して工具保持機構部28に保持させる。この保持状態では、ロータ29と切削工具5とは一体的に軸回転可能で、マイクロモータ7の回転動力を伝達させて切削工具5を軸回転させることによって、その切削作用部5bをして歯牙の根管拡大治療を実施することができる。このとき、挟片状の電極部片38,38は、ブラシ接点としてロータ29の外周部に摺接する。また、切削工具5はロータ29に密嵌状態で一体とされ、ロータ29は、電極部片38,38、接点部片37、導電体85及びリード線83等を介して信号用リード線8と電気的導通状態とされる。従って、切削工具5を根管長測定用の一方の電極として歯牙の根管に挿入し、口腔電極19aを他方の電極として患者の唇に引っ掛けた状態で、図2に示す根管長測定回路12を駆動させることによって、根管長の測定することができる。
【0044】
ハンドピース1は、前述したように挟片状の電極部片38,38がブラシ接点としてロータ29の外周部に摺接することで、ロータ29と電極部片38,38とが電気的に接続されている。そして、ロータ29と切削工具5とは一体的に軸回転可能であるため、ロータ29と電極部片38,38との接点が磨耗して、接点部材である電極部片38,38が接続不良となることがある。しかし、接点部材である電極部片38,38がカバー部材36に覆われているため、外部から電極部片38,38の磨耗を目視することが難しい。そこで、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100では、ロータ29と切削工具5との接点が接続不良となったことを検知し、使用者に報知する。
【0045】
具体的に、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100の接続不良検出部121の動作について説明する。図5は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100の動作を示すフローチャートである。
【0046】
まず、接続不良検出部121は、根管長測定回路12から、根管長測定用の入力信号、たとえば8kHzの周波数の入力信号を、ハンドピース1の導電体85に印加する(ステップS51)。接続不良を検出するために、根管長測定用の入力信号と異なる信号を生成し、該信号をハンドピース1の導電体85に印加してもよいが、別途信号を生成する構成が必要となる分だけ、根管長測定用の入力信号を用いる場合の方が構成を簡単にすることができる。
【0047】
ここで、図6は、本発明の実施の形態1に係るハンドピース1の導電体85に印加する入力信号の波形を示す波形図である。図6に示す入力信号は、根管長測定用の入力信号であり、8kHzの周波数の矩形波の入力信号である。なお、図6の横軸は時間、縦軸は電圧である。
【0048】
次に、接続不良検出部121は、ハンドピース1の導電体85に入力信号を印加することで、切削工具5を介して得られる信号波形を取得する(ステップS52)。ハンドピース1の導電体85に印加した入力信号は、接点部片37、電極部片38,38およびロータ29を介して、導電体85から切削工具5に流れる。そのため、接続不良検出部121は、接点部材である電極部片38,38に接続不良が生じた場合、ハンドピース1の導電体85に印加した入力信号に対して、切削工具5を介して得られる信号波形(入力信号に基づく応答)が変化することになる。実際、切削工具5を介して得られる信号波形は、口腔電極19aから接続不良検出部121に入力した信号から得られた波形である。
【0049】
次に、接続不良検出部121は、取得した信号波形の単位時間あたりにおける信号値の増減方向の変化の回数をカウントする(ステップS53)。具体的に、接続不良検出部121は、入力信号の矩形波の半周期分を単位時間とし、該単位時間内の信号値の平均値に対して、たとえば10%以上信号値が増加(減少)した方向から減少(増加)した方向に変化した回数をカウントする。なお、接続不良検出部121は、ノイズによる信号値の変化を除くため、該単位時間内の信号値の平均値に対して、たとえば10%以上信号値が増加(減少)した方向の変化を判断基準としているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
ここで、図7は、本発明の実施の形態1に係るハンドピース1において接点部材に接続不良が生じている場合に、切削工具5を介して得られる信号波形を示す波形図である。図8は、本発明の実施の形態1に係るハンドピース1において接点部材に接続不良が生じていない場合に、切削工具5を介して得られる信号波形を示す波形図である。なお、図7および図8の横軸は時間、縦軸は電圧である。
【0051】
図7に示す信号波形は、約8周期分の矩形波の入力信号をハンドピース1の導電体85に入力して、切削工具5を介して得られた信号波形であるため、約8周期分の矩形波の入力信号に対応して8つの大きな凸部を有した波形である。そして、図7に示す信号波形は、接点部材に接続不良が生じているので、それぞれの凸部の波形が大きく変動している。具体的に、図7に示す信号波形の左から2番目の凸部の波形には、信号値が増加した方向が減少した方向に変化する点A、信号値が減少した方向が増加した方向に変化する点B、信号値が増加した方向が減少した方向に変化する点Cと、信号値の増減方向の変化の回数が3回ある。
【0052】
図8に示す信号波形は、約4周期分の矩形波の入力信号をハンドピース1の導電体85に入力して、切削工具5を介して得られた信号波形であるため、約4周期分の矩形波の入力信号に対応して4つの大きな凸部を有した波形である。そして、図8に示す信号波形は、接点部材に接続不良が生じていないので、それぞれの凸部の波形にはほとんど変動がない。つまり、図8に示す信号波形は、単位時間(入力信号の半周期分)内の信号値の平均値に対して、たとえば10%以上信号値が増加または減少することがない。
【0053】
次に、接続不良検出部121は、ステップS53でカウントした増減方向の変化の回数が3回以上か否かを判断する(ステップS54)。接続不良検出部121は、ステップS53でカウントした増減方向の変化の回数が3回未満の場合(ステップS54:NO)、接点部材である電極部片38,38に接続不良が生じていないと判断し、処理をステップS51に戻し、切削工具5が歯牙の根管内にある間、接点部材の接続不良の監視を継続する。
【0054】
接続不良検出部121は、ステップS53でカウントした増減方向の変化の回数が3回以上の場合(ステップS54:YES)、接点部材である電極部片38,38に接続不良が生じたと判断し、報知部17が接続不良を検出したことを使用者に報知する(ステップS55)。根管治療器100は、ステップS55後に接点部材の接続不良の監視する処理を終了する。
【0055】
ここで、図9は、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100の表示部16に表示する表示画面および歯牙の根管内での切削工具5の位置関係を示す模式図である。図9(a)に示す表示画面は、根管治療器100の各種情報(切削工具5の回転数など)を表示する画面であり、切削工具5と口腔電極19aとの間のインピーダンスの値に基づいて、根管内での切削工具5の先端の位置を表示ドットの点灯で示す表示メータ161を有している。表示メータ161は、図9(b)に示す歯91の根管92内での切削工具5の位置と対応しており、白色表示された表示ドットが切削工具5の根管内における概略挿入量を表わし、黒色表示された表示ドットがマイクロモータ7の駆動を通常回転から停止、逆回転、減速といった駆動に切替える基準位置の目盛を表わし、目盛「APEX」の位置が歯91の根尖93位置を表わし、ハッチング表示された表示ドットが切削工具5の先端よりも根尖93側にある、まだ切削工具5を挿入していない根管の部分を表わしている。したがって、白色表示された表示ドットが該根尖93位置(目盛「APEX」)まで到達したとき、あるいは、白色表示された表示ドットが該基準位置まで到達したときに、切削工具5の先端から根管口までの距離が、該根尖93位置から根管口までの距離、すなわち根管長とみなされる。
【0056】
さらに、図9(a)に示す表示画面では、表示部16が接続不良検出部121の検出結果に基づき使用者に対して接点部材の接続不良を報知するための報知情報(「接続不良」)162を表示している。つまり、根管治療器100は、図7に示した信号波形を取得した場合、接続不良検出部121が接点部材の接続不良であると判断して、報知部17が使用者に対して接点部材の接続不良を報知するため、表示部16に報知情報162を表示する。
【0057】
以上のように、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100は、接点部材の接続不良を、接続不良検出部121で入力信号の応答に基づいて検出するので、接点部材がヘッド部2外に設けてある場合はもちろん、接点部材がヘッド部2内に設けてあり外観を目視することができない場合であっても、接点部材の磨耗による接続不良を容易に検出することができる。また、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100は、接点部材の表面に目視することができない絶縁物の皮膜が形成され接続不良が生じている場合であっても接点部材の接続不良を容易に検出することができる。さらに、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100は、報知部17が接続不良を検出したことを接続不良検出部121の検出結果に基づき使用者に対して報知を行なうことで、使用者が接点部材の磨耗に気付き、接点部材の交換を促すことができる。
【0058】
さらに、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100は、接続不良検出部121が、信号波形の単位時間あたりにおける信号値の増減方向の変化の回数を入力信号の応答として、接点部材の接続不良を検出するので、使用者が切削工具5を移動させたことに起因する入力信号の応答の変化による影響を受けずに接点部材の接続不良を検出することができる。なお、接続不良検出部121は、接点部材の接続不良を検出する判断基準として、信号値の増減方向の変化の回数を必ずしもカウントする必要はなく、信号波形の変化を入力信号の応答として、接点部材の接続不良を検出する判断基準としてもよい。たとえば、接続不良検出部121は、単位時間内の信号値の平均値に対して、単位時間内にたとえば10%以上信号値が増加(減少)した場合、接点部材の接続不良と判断してもよい。
【0059】
また、切削工具5を介して得られる入力信号の応答は、制御部11が切削工具5を介して得られる信号そのものに限定されるものではなく、得られた信号を制御部11で演算した後の信号であってもよい。たとえば、切削工具5を介して得られる入力信号の応答は、制御部11が表示部16の表示メータ161で表示するために演算した信号であってもよい。つまり、接続不良検出部121は、表示メータ161での表示ドットの変化の速さが、使用者が切削工具5を移動させたことに起因する以上の変化の速さであれば、接点部材の接続不良と判断することができる。
【0060】
さらに、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100は、報知部17が、「接続不良」「Error」といった表示により接続不良状態である旨の報知情報162を表示する場合に限定されるものではなく、「接点部材磨耗」、「接点部材交換」などの接点部材が磨耗したことの情報を使用者に対して報知してもよい。これにより、根管治療器100は、接点部材の磨耗のため接点部材の交換することが必要なことを使用者に直接促すことができる。
【0061】
また、本発明の実施の形態1に係る根管治療器100は、接続不良検出部121が、測定信号を入力信号として用いるので、接点部材の接続不良を検出するための入力信号として、別途電気信号を生成する必要がない。
【0062】
なお、本発明の実施の形態1では、根管治療器100の場合について説明したが、回転方向や上下方向などに駆動する切削工具5または切削工具5を保持するための保持部と電気的に接続するための接点部材を有する歯科用治療装置であれば、高周波を用いる歯科用治療装置やインプラント用の歯科用治療装置などであってもよい。
【0063】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る歯科用治療装置も、歯科用根管治療のハンドピースを組み込んだ根管拡大及び根管長測定システムを含む根管治療器である。しかし、本発明に係る歯科用治療装置は、根管治療器に限定されるものではなく、同様の構成を有する歯科用治療装置について適用することができる。
【0064】
なお、本発明の実施の形態2に係る根管治療器の構成は、実施の形態1に係る根管治療器の構成と同じであるため、同じ構成要素に同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
【0065】
本発明の実施の形態2に係る根管治療器100は、制御部11が接点部材を交換してからの累積駆動時間を計測し、接続不良検出部121が該累積駆動時間を考慮して接点部材の接続不良を判断する。
【0066】
具体的に、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100が、接点部材の接続不良を判断する動作を説明する。図10は、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100の動作を示すフローチャートである。
【0067】
まず、接続不良検出部121は、根管長測定回路12から、根管長測定用の入力信号、たとえば8kHzの周波数の入力信号を、ハンドピース1の導電体85に印加する(ステップS101)。
【0068】
次に、接続不良検出部121は、ハンドピース1の導電体85に入力信号を印加することで、切削工具5を介して得られる信号波形を取得する(ステップS102)。
【0069】
次に、接続不良検出部121は、取得した信号波形の単位時間あたりにおける信号値の増減方向の変化の回数をカウントする(ステップS103)。
【0070】
次に、接続不良検出部121は、ステップS103でカウントした増減方向の変化の回数が3回以上か否かを判断する(ステップS104)。接続不良検出部121は、ステップS103でカウントした増減方向の変化の回数が3回未満の場合(ステップS104:NO)、接点部材である電極部片38,38に接続不良が生じていないと判断し、処理をステップS101に戻し、切削工具5が歯の根管内にある間、接点部材の接続不良の監視を継続する。
【0071】
接続不良検出部121は、ステップS103でカウントした増減方向の変化の回数が3回以上の場合(ステップS104:YES)、制御部11が計測している累積駆動時間が予め定めてある基準時間以上か否かを判断する(ステップS105)。接点部材である電極部片38,38を交換してからの累積駆動時間がたとえば数時間〜数十時間と短い場合、接点部材が磨耗したとは通常考えられない。そのため、接続不良検出部121は、ステップS103でカウントした増減方向の変化の回数が3回以上であっても、累積駆動時間が基準時間(たとえば1000時間)未満であれば接点部材の接続不良と判断しない。
【0072】
接続不良検出部121は、累積時間が基準時間未満の場合(ステップS105:NO)、接点部材が磨耗したことによる接続不良と判断せずに、動作不良が生じたと判断し、報知部17が動作不良を検出したことを使用者に報知する(ステップS107)。
【0073】
接続不良検出部121は、累積時間が基準時間以上の場合(ステップS105:YES)、接点部材が磨耗して、接点部材である電極部片38,38に接続不良が生じたと判断し、報知部17が接続不良を検出したことを使用者に報知する(ステップS106)。根管治療器100は、ステップS106後に接点部材の接続不良を監視する処理を終了する。
【0074】
以上のように、本発明の実施の形態2に係る根管治療器100は、累積駆動時間が予め定められた基準時間以上である場合に、接点部材の接続不良を検出するので、接点部材が磨耗していないにもかかわらず、誤って接点部材の接続不良と検出する動作を排除することができる。
【0075】
なお、累積駆動時間は、制御部11が計測する場合に限定されるものではなく、別途タイマー部を設け計測してもよい。また、累積駆動時間は、切削工具5が回転駆動している時間を計測する場合に限定されるものではなく、根管治療器100がオン状態の時間から切削工具5が回転駆動している時間をある程度予測できる場合、根管治療器100がオン状態の時間であってもよい。さらに、累積駆動時間の計測は、接点部材を交換したときに自動または手動でリセットを行ない“0”から計測する場合に限定されるものではなく、前回接点部材を交換した累積駆動時間を記憶しておき、現在の累積駆動時間との差分で計測してもよい。
【0076】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る歯科用治療装置も、歯科用根管治療のためのハンドピースを組み込んだ根管拡大及び根管長測定システムを含む根管治療器である。しかし、本発明に係る歯科用治療装置は、根管治療器に限定されるものではなく、同様の構成を有する歯科用治療装置について適用することができる。
【0077】
なお、本発明の実施の形態3に係る根管治療器の構成は、実施の形態1に係る根管治療器の構成と同じであるため、同じ構成要素に同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
【0078】
本発明の実施の形態3に係る根管治療器100は、報知部17が接続不良を検出したことを使用者に報知するだけではなく、制御部11が、接続不良検出部121の検出結果に基づき、切削工具5の駆動を停止、駆動力を低下、または切削工具5の駆動する方向を反転させる。
【0079】
具体的に、本発明の実施の形態3に係る根管治療器100が接点部材の接続不良を判断した場合の動作を説明する。図11は、本発明の実施の形態3に係る根管治療器100の動作を示すフローチャートである。
【0080】
まず、接続不良検出部121は、根管長測定回路12から、根管長測定用の入力信号、たとえば8kHzの周波数の入力信号を、ハンドピース1の導電体85に印加する(ステップS111)。
【0081】
次に、接続不良検出部121は、ハンドピース1の導電体85に入力信号を印加することで、切削工具5を介して得られる信号波形を取得する(ステップS112)。
【0082】
次に、接続不良検出部121は、取得した信号波形の単位時間あたりにおける信号値の増減方向の変化の回数をカウントする(ステップS113)。
【0083】
次に、接続不良検出部121は、ステップS113でカウントした増減方向の変化の回数が3回以上か否かを判断する(ステップS114)。接続不良検出部121は、ステップS113でカウントした増減方向の変化の回数が3回未満の場合(ステップS114:NO)、接点部材である電極部片38,38に接続不良が生じていないと判断し、処理をステップS111に戻し、切削工具5が歯牙の根管内にある間、接点部材の接続不良の監視を継続する。
【0084】
接続不良検出部121は、ステップS103でカウントした増減方向の変化の回数が3回以上の場合(ステップS114:YES)、接点部材である電極部片38,38に接続不良が生じたと判断し、報知部17が接続不良を検出したことを使用者に報知する(ステップS115)。
【0085】
次に、制御部11は、接続不良検出部121の検出結果に基づき、切削工具5の駆動を停止する(ステップS116)。つまり、根管治療器100は、接点部材の接続不良が生じると精度よく根管長を測定することができなくなるため、より安全のために制御部11が切削工具5の駆動を停止する。なお、制御部11は、切削工具5の駆動を停止せずに、切削工具5の駆動力を低下しても、切削工具5の駆動する方向を反転させてもよい。
【0086】
根管治療器100は、ステップS116後に接点部材の接続不良を監視する処理を終了する。
【0087】
以上のように、本発明の実施の形態3に係る根管治療器100は、接続不良検出部121が接点部材の接続不良を検出した場合、制御部11が、切削工具5の駆動を停止、駆動力を低下、または切削工具5の駆動する方向を反転させるので、接点部材の接続不良が生じ精度よく根管長を測定することができなくなったことを使用者に対して報知するだけでなく、より安全に使用することができる。
【0088】
なお、本発明の実施の形態3に係る根管治療器100では、報知部17が接続不良を検出したことを使用者に報知した後に、制御部11が、切削工具5の駆動を停止、駆動力を低下、または切削工具5の駆動する方向を反転させる場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、制御部11が、切削工具5の駆動を停止、駆動力を低下、または切削工具5の駆動する方向を反転させた後に、報知部17が接続不良を検出したことを使用者に報知してもよい。
【0089】
また、本発明の実施の形態3に係る根管治療器100では、制御部11が、切削工具5の駆動を停止、駆動力を低下、または切削工具5の駆動する方向を反転させる、いずれかの動作を行なう場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の動作を組合わせてもよい。たとえば、制御部11は、接続不良検出部121の検出結果に基づき、切削工具5の駆動力を低下し、その後切削工具5の駆動する方向を反転させてから、切削工具5の駆動を停止してもよい。
【0090】
さらに、制御部11が、接続不良検出部121の検出結果に基づき、切削工具5の駆動を停止するなどの動作を行なうステップを、実施の形態2に係る図10に示すフローチャートのステップS106およびステップS107の後に実行してもよい。
【0091】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る歯科用治療装置も、歯科用根管治療のハンドピースを組み込んだ根管拡大及び根管長測定システムを含む根管治療器である。しかし、本発明に係る歯科用治療装置は、根管治療器に限定されるものではなく、同様の構成を有する歯科用治療装置について適用することができる。
【0092】
なお、本発明の実施の形態4に係る根管治療器の構成は、実施の形態1に係る根管治療器の構成と同じであるため、同じ構成要素に同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
【0093】
本発明の実施の形態4に係る根管治療器100は、接点部材がヘッド部2内に設けるのではなく、接点部材がヘッド部2外に設けてある。図12は、本発明の実施の形態4に係るハンドピース1の先端の構成を説明するための断面図である。
【0094】
図12に示すハンドピース1は、カバー部材36に接点部片37と電気的導通状態の別の電極部片40を設け、この電極部片40を切削工具5の切削作用部5bに接触させるようにしている。すなわち、カバー部材36は、第1部分36Aから第2部分36Bとは反対側(把持部4側)に延出された第3部分36Cをさらに有している。該第3部分36Cは、ネック部3との連接部近傍の把持部4の下面に接し且つ当該下面との間に空洞部を形成する凹所36Caを備えている。また、接点部片37には、凹所36Ca内に臨む舌片部37bが更に延出されており、当該舌片部37bは上下に弾性変形可能なばね性を有するように形成されている。凹所36Caの両側壁部には切欠36Cbが形成されている。
【0095】
電極部片40は、導電性のワイヤ部材を屈曲させて作製される。該電極部片40は、軸部40aと、該軸部40aの両端部から鋭角に屈曲され互いに接近するよう連成された一対の挟持バー部40b,40bと、該挟持バー部40b,40bの先端から互いに離反するよう連成された一対のガイドバー部40c、40cとよりなる。軸部40aは、第3部分36Cを横断するよう(把持部4の軸心に直交するよう)切欠36Cb,36Cbに上から嵌め込まれる。そして、電極部片40は、該軸部40aをして第3部分36Cに引っ掛けられた状態となるよう支持させ、且つ、挟持バー部40b,40b及びガイドバー部40c、40cがカバー部材36の下側に位置し第2部分36Bの先側に向くようにカバー部材に組み付けられる。このように電極部片40が組み付けられたカバー部材36は、同様に止具39を雌ネジ部25aに螺合させることによって、第1部分36Aがネック部3の凹部3aに、第2部分36Bがヘッド部2の切欠部2bに、それぞれ収まるようにハンドピース1に装着される。
【0096】
電極部片40の軸部40aが、接点部片37の舌片部37bと把持部4のハウジング4aの下面との間に弾性的に挟装される。これによって、軸部40aと舌片部37bとが相互に当接し、両者が電気的導通状態とされる。特に、舌片部37bはばね性を有しているから、上向きの付勢弾力を保有して軸部40aに弾接し、この電気的導通状態が安定的に維持される。また、軸部40aの舌片部37bに対する当接部はカットされて平坦面とされているから、両者が面接触してより良好な電気的導通状態とされる。
【0097】
先側のガイドバー部40c、40c間に切削工具5の切削作用部5bを挟むようにしてガイドバー部40c、40cを押し上げると、挟持バー部40b,40bの間が押し広げられ、切削作用部5bが両者の間を通過する。通過後、挟持バー部40b,40bは、その復元弾力が作用して、切削作用部5bに挟むようにして当接しする。
【0098】
根管長測定の場合、切削工具5の切削作用部5bが根管長測定回路の一方の電極とされ、電極部片40、舌片部37b、接点部片37、導電体85及びリード線83等を介して根管長測定用信号回路用の一方の信号用リード線8と電気的導通状態とされる。
【0099】
以上のように、本発明の実施の形態4に係る根管治療器100は、図12に示すように接点部材である電極部片40がヘッド部2外に設けてあって、同様の効果を得ることができる。
【0100】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
1 ハンドピース、2 ヘッド部、2a ヘッドハウジング、2b 切欠部、3 ネック部、3a 凹部、4 把持部、4a ハウジング、5 切削工具、5a シャンク部、5b 切削作用部、5c 係止凹部、6 モータユニット、7 マイクロモータ、8 信号用リード線、9 制御ボックス、10 インスツルメント、10a ホルダ、11 制御部、12 根管長測定回路、13 モータドライバ、14 オートストップ位置設定部、15 操作部、16 表示部、17 報知部、18 フートコントローラ、19,83 リード線、19a 口腔電極、20 第1駆動伝達軸、20a カップリング部、21 第1減速ギヤ機構、22 第2駆動伝達軸、23 第2減速ギヤ機構、24 第3駆動伝達軸、25 スリーブ、25a 雌ネジ部、26,32,33 軸受、27 ベベルギヤ、28 工具保持機構部、29 ロータ、29a ギヤ部、30 チャック部材、30a チャック爪、31 ロータ外装部材、34 係止解除ボタン、34a 作用筒部、35 ばね部材、36 カバー部材、36A 第1部分、36Aa 溝状凹部、36Ab,36Ba 円孔、36B 第2部分、36C 第3部分、36Ca 凹所、36Cb 切欠、37 接点部片、37a,85a 透孔、37b 舌片部、38,40 電極部片、38a 円弧形状部、39 止具、39a 雄ネジ部、39b 頭部、40a 軸部、40b 挟持バー部、40c ガイドバー部、61 ホース、71 電源供給用リード線、72 出力軸、81 ソケット、82 プラグ、84 コネクタ部、85 導電体、91 歯、92 根管、93 根尖、100 根管治療器、121 接続不良検出部、161 表示メータ、162 報知情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具を駆動可能に保持する保持部を有するヘッド部と、
前記ヘッド部と接続し、前記切削工具を駆動するための動力を伝達するハンドピース本体部と、
前記切削工具の駆動を制御する制御部とを備える歯科用治療装置であって、
前記ハンドピース本体部の内部に設け、電気信号を伝達する導電体と、
前記切削工具または前記保持部と前記導電体とを電気的に接続する接点部材と、
前記導電体に予め定められた入力信号を印加し、前記切削工具を介して得られる前記入力信号の応答に基づいて前記接点部材の接続不良を検出する接続不良検出部と、
前記接続不良検出部の検出結果に基づき使用者に対して報知を行なう報知部と
をさらに備える歯科用治療装置。
【請求項2】
前記接続不良検出部は、前記切削工具を介して得られる信号波形の変化を前記入力信号の応答として、前記接点部材の接続不良を検出する、請求項1に記載の歯科用治療装置。
【請求項3】
前記接続不良検出部は、前記切削工具を介して得られる前記信号波形の単位時間あたりにおける信号値の増減方向の変化の回数を前記入力信号の応答として、前記接点部材の接続不良を検出する、請求項2に記載の歯科用治療装置。
【請求項4】
前記接続不良検出部は、前記接点部材を交換してから前記切削工具を駆動した累積駆動時間を記憶し、記憶した前記累積駆動時間が予め定められた時間以上である場合に、前記切削工具を介して得られる前記入力信号の応答に基づいて前記接点部材の接続不良を検出する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の歯科用治療装置。
【請求項5】
前記報知部は、前記接続不良検出部の検出結果に基づき、前記切削工具の駆動によって前記接点部材が磨耗したことを前記使用者に報知する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の歯科用治療装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記接続不良検出部の検出結果に基づき、前記切削工具の駆動を停止、駆動力を低下、または前記切削工具の駆動する方向を反転させる、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の歯科用治療装置。
【請求項7】
前記導電体に予め定められた測定信号を印加することで、根管長測定が可能な前記歯科用治療装置であって、
前記接続不良検出部は、前記測定信号を前記入力信号として用いる、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の歯科用治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−94433(P2013−94433A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239977(P2011−239977)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】