説明

歯科用燃焼窯または圧力窯

【課題】品質に対比して最適なサイクル時間を維持しながら多様な歯科補綴部材のサイズに左右されないことを達成する歯科用燃焼窯あるいはプレス窯を提供する。
【解決手段】少なくとも1個の歯科補綴部材(62)を製造することを可能にする歯科用燃焼窯あるいは圧力窯である。この歯科用燃焼窯あるいは圧力窯は加熱装置(22)、特に抵抗加熱装置によって加熱可能な燃焼室(12)を備えてなる。前記燃焼室(12)の底床上に少なくとも100W/mKの固有熱伝導性を有する熱伝導体(50)を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1前段に記載の歯科用燃焼窯または圧力窯、ならびに請求項13前段に記載の歯科用燃焼または圧力窯の稼働方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼窯または圧力窯は、大抵ガラスセラミックから形成される歯科補綴部材に熱処理を施し歯科補綴部材を使用可能な状態に完成させるために使用される。燃焼窯および圧力窯内における熱処理のために1200℃までの温度が必要となる。
【0003】
製造される歯科補綴部材の品質は、歯科セラミックの焼成および/またはプレス中の歯科用窯内の温度変化および温度分布に大きく依存する。焼成あるいはプレス工程中に熱処理中の歯科補綴部材内の温度勾配が大き過ぎると、製品の品質が低下する。このことは場合によって欠陥につながることもあり、すなわちそれまでに歯科技工士が投入した数時間におよぶ作業が無駄になる危険性がある。加えて、歯科用窯内に存在する温度勾配が歯科技工士の技能を制約し、および/またはプロセスの信頼性を低下させる。
【0004】
最適なパラメータの適宜な選択および設定、さらに燃焼窯あるいは圧力窯内への歯科補綴部材の挿入、すなわち熱処理に際しての焼成物支持体の種類あるいはその支持体上での位置、またはプレスマッフル内における対象物位置は、通常歯科技工士によって任意に設定され、経験に大きく依存する。基本的に前述した歯科用燃焼室内の温度勾配が、特に短時間および急速な熱処理プロセスに際して、過度に多くの部分的には解決不可能な矛盾を生じさせる。このことは、多数部位からなるブリッジ等または複数の小さな歯科補綴部材を合同かつ同時に熱処理する場合にさらに顕著に該当する。
【0005】
特にプレスマッフルの場合、対象物を縁部からどのくらい遠くおよびどれくらい中央寄りにスプルーを設けるかを示す、ワックス部材をプレスマッフル内に設置するためのスプルーガイドが歯科技工士に対して設定される。この制約によって複数のユニットを同時にプレスする能力およびそのユニット数が低下し、またプロセス時間が全体的に顕著に延長されることも必須となる。
【0006】
さらに独国特許出願公開第19905666号A1明細書により、燃焼室内の冷温面を防止し加熱室全体を均一に加熱するために側方の発熱体に加えて下方の発熱体を設けることが提案されている。石英被覆によって熱放射のさらなる均一化と同時に保護が達成される。しかしながら、通常燃焼窯はフード型窯として形成され従って電気抵抗発熱体がフード内に設けられるが燃焼窯の底床には電気接続部が存在しないため、前記の下方発熱体は多大な追加コストを必要とする。また安全性の理由のため、燃焼室の底床内に追加的な発熱体を設ける際にその発熱体に対して絶対的に安全な被覆を施すことが必要となりそれがまた熱伝導を妨害することから、同種の窯が普及していないことが納得できる。
【0007】
一般的に燃焼室底床はそこで燃焼した堆積物によって強度に汚染される。従って、強力な洗剤を使用して底床を洗浄することにも配慮しなければならず、それによってさらに水等の液体の使用が必要になる。耐火性のセラミックプレートを有する窯において水に曝すことは問題ないが、その下に電気接続部が存在する場合は別である。
【0008】
そのため歯科技工所における工程を変更する必要があり、さらにその種の窯の実用に際して追加的な特別規則を設定する必要もあり得る。
【0009】
前記の文献によれば、燃焼室の底床に遮断板を使用することが提案されている。しかしながら、それによって下方の発熱体から燃焼室への熱伝導が影響を受けるため、熱工学的な観点から有効ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第19905666号A1明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の目的は、品質に対比して最適なサイクル時間を維持しながら多様な歯科補綴部材のサイズに左右されないことを達成する、請求項1前段に記載の歯科用燃焼窯あるいはプレス窯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題は、本発明に従って請求項1あるいは13によって解決される。従属請求項によって好適な追加構成が示されている。
【0013】
本発明によれば、歯科用燃焼窯あるいは圧力窯の燃焼室の底床に比較的高い熱伝導率を有する熱伝導体を設ける。その熱伝導率は100W/mKとすることができるが、さらに150W/mK、200W/mK、あるいは250W/mKとすることもできる。
【0014】
熱伝導体は丸型の構造を有することが好適であり、従って上面図において円形あるいは楕円形であるが、例えば角取りされた六角形あるいは八角形等の類似の形状も原則的に可能であることが理解される。その厚みは直径よりも顕著に小さく、好適には直径の約5分の1の大きさとなり、その際原則的に厚みの範囲は直径の半分から直径の100分の1までとなり、好適な厚み範囲は直径の5分の1から30分の1までとなる。
【0015】
その形状はここでは盤形状と表現するが、このことは一方で熱伝導体を燃焼室の底床内に収容するためと他方で熱伝導体上にプレスマッフルあるいは歯科成形部材を収容するための隆起部および/または窪み部を備えることを除外するものではない。
【0016】
本発明によれば、平坦な形状からの形状逸脱によって熱伝導体への熱伝導、さらに熱伝導体からの熱伝導が妨害されることはない。熱伝導体への熱伝導は窯の発熱装置から放射された放射熱によって主に実施される。
【0017】
本発明によれば、抵抗加熱装置によって加熱可能であるとともに少なくとも100W/mKの固有熱伝導率を有する熱伝導体を備えた燃焼室を有する少なくとも1個の歯科補綴部材を製造するための歯科用燃焼窯あるいは圧力窯を提供することが好適であり、前記燃焼室が上方および側方に向かって窯フードによって被包されるとともに燃焼室の下側に燃焼室の底床が窯下部材の一部として延在し、前記窯フードは前記窯下部材から持ち上げ可能であり、また前記抵抗加熱装置は燃焼室の側壁の領域内のみに配置され、燃焼室の底床上に熱伝導体が配置される。
【0018】
本発明に係る解決方式の要点は、窯フード内への抵抗加熱装置の設置およびその抵抗加熱装置は窯の側壁内に配置と、熱伝導体の設置およびその熱伝導体の燃焼室の底床上への配置である。この熱伝導体は環状ギャップを介して抵抗加熱装置と熱工学的に結合され、これによって図5に示されているように歯科用燃焼窯あるいは圧力窯の燃焼室内の著しく均一な温度分布が達成される。この改善された温度分布によって歯科補綴部材の多様な大きさに左右されずに品質の向上が可能になる。
【0019】
本発明によれば、環状ギャップを介し、また部分的には放射熱を通じて本発明に係る熱伝導体に対して側方から、さらに斜め上方からも熱が伝導され、その結果熱伝導体上における歯科補綴部材の位置に対する無関係性が達成される。その結果意外なことに、熱風が上昇し従って最高温度の領域は上方に存在するという一般常識と異なって、極めて良好な下方加熱(“高温脚部”)が達成される。
【0020】
しかしながら本発明によれば、対流および/または熱伝導、すなわち熱接触によって加熱装置と熱伝導体との間の熱伝導が実施されることも除外されない。さらに、熱工学的な結合を改善するために特殊な熱移転媒体を設けることも可能であり、その目的は加熱装置から熱伝導体への熱伝導を改善することである。その媒体は円形とし、窯のフード上あるいは熱伝導体自体の上に取り付けることができ、また熱伝導体と同様に良好な熱伝導性を有する材料から形成することができる。
【0021】
本発明によれば、燃焼室の底床内に電気発熱体が存在することを必要とせずに、その場所に電気発熱体がいわば仮想的に再現されることが極めて好適である。従って本発明に係る窯は一般的な燃焼室底床の液体洗浄に際しても短絡の危険が生じない。さらに意外なことに、プレスマッフルあるいは歯科補綴部材の下からの加熱はフード型燃焼窯で一般的であって本発明に係る燃焼窯あるいは圧力窯において追加的に設けられる側方からの加熱に比べて著しく効率的であるため、サイクル時間も顕著に短縮される。
【0022】
高温の熱伝導体がその熱エネルギーを著しく効率的にプレスマッフルあるいは歯科補綴部材に伝導する。このことは、対流熱が上方に流れるばかりでなく特に直接的な熱接触上でも伝導されることに起因する。本発明によれば、熱伝導体の直径が例えばプレスマッフルの直径に比べて大きいため、この熱伝導体がプレスマッフルあるいは歯科補綴部材に比べてより本発明に係る窯フードの近くに存在する。一般的な窯フードの旋回動作のためそれを取り外した際に燃焼室全体を満たすほどにプレスマッフルを大きくすることは不可能である。さらに多様な大きさの歯科補綴部材に対して多様なプレスマッフルのサイズを使用し得るようにする必要があり、そのため極めて小さなプレスマッフルでも例えばそのプレスマッフルの直径の3倍の燃焼室直径を有する燃焼窯を使用しなければならなくなる。そのようなプレスマッフルへの熱伝導は従来側方に取り付けられた抵抗加熱装置の発熱コイルからの放射熱のみによって実施されていた。
【0023】
本発明によれば、その種の抵抗加熱装置の発熱コイルも設けられる。しかしながらその発熱コイルの最も下の巻きは熱伝導体に対して極めて近くに隣接しており、従って放射される熱が大きな割合で熱伝導体に伝導される。
【0024】
本発明に係る熱伝導体は炭化珪素から形成され濃色あるいは黒色であることが好適である。これは、歯科用窯の底床領域に使用されSiCとは異なって通常白色である、Al等を含んだ一般的な遮断材、耐火粘土あるいはセラミック構成部材と比べて衝突した熱放射線を極めて良好に吸収する。菫青石から形成される歯科補綴部材を支承するために使用される燃焼物支持部材、または石膏から形成されるプレスマッフルにも同じことが該当する。
【0025】
(前述したように)本発明に係る熱伝導体は平坦であるため、サイクル時間を短縮するために既存の窯に後付けすることも可能である。歯科用燃焼窯の底床は著しく機械的な負荷がかかるとともに汚れやすいため、多くの窯が同じ遮断材料あるいは耐火粘土からなり窯内の断熱のために使用される独立しかつ取り外し可能な底床板を備える。これも同様に本発明に係る熱伝導体によって代替することができる。
【0026】
一方で熱伝導体と歯科補綴部材の間、他方で熱伝導体と内部において歯科補綴部材を製造するためのプレスマッフルの間の熱移転を改善するため、また前記歯科補綴部材およびプレスマッフルが良好に心合せされることを確立するために、熱伝導体がプレスマッフルと正確に整合する窪み部、すなわちプレスマッフルを被包する窪み部あるいは溝を備えることができ、その溝の側壁上でもプレスマッフルの側壁との直接的な接触による熱伝導を発生させる。圧力窯の底床内においても同様な窪み部を設け、その内部で熱伝導体を心合せすることができる。このことは、設置される対象物の安定的な支承を保証するようにも作用する。
【0027】
本発明によれば、プレスマッフルあるいは歯科補綴部材が完成した場合に熱伝導体が高温の燃焼窯内に残留し得ることが極めて好適である。プレスマッフルの挿入によって熱伝導体が冷却されると、燃焼休止相の間に窯内空間の温度を吸収し、歯科補綴部材あるいはプレスマッフルの直接的かつ均等でしかも急速な加熱が直ちに実施可能になる。
【0028】
本発明によれば、前記の処置によって燃焼およびプレスサイクル中における作業領域内の温度勾配が顕著に低下するか、または温度勾配が等しい場合は燃焼およびプレスサイクル時間を短縮することができる。プレスマッフルまたはさらに歯科補綴部材が熱伝導体に対して例えば数cm超の大面積の接触を有していれば好適であることが理解される。それによって熱伝導による熱移転が極めて良好になる。
【0029】
通常、個体の熱伝導による熱移転は対流あるいは放射による熱移転に比べて著しく良好である。
【0030】
熱伝導体が限られた大きさのギャップを形成しながら、すなわち熱伝導体と燃焼室の壁部の間に接触を形成することなく、燃焼室の壁部まで延在すれば極めて好適である。燃焼室の壁部は窯フード内に形成され、そしてその窯フードは通常窯下部材上に形成された燃焼室底床に対して可動式になっている。この方式により窯フードは、加熱によって熱伝導体が著しく膨張している場合でも燃焼室の底床および熱伝導体に対して任意の方式で動作可能となる。窯フードの下端に隣接して加熱装置の発熱コイルの最下部の巻きあるいは巻線が配置されるため、ギャップを介して熱伝導体に対して極めて良好な熱移転が実施される。
【0031】
ギャップの正確な形状、ならびに一方で窯フードの下縁部と他方で熱伝導体の間の相対的な寸法が必要に応じて広範囲に調節可能であることが理解される。従って、さらに改善された熱吸収を可能にするため、または歯科補綴部材を設置するための作業領域を明示および仕切るために、例えば熱伝導体の周囲部を隆起させることができる。
【0032】
本発明によれば、均等に熱を放射する平面が実現されるため、加熱装置として電気抵抗加熱装置あるいはその他の熱式加熱装置を使用することが好適である。しかしながらこのことは、特に装着が行われる場所、すなわち窯へのアクセスが実施される場所で例えば上部材と下部材への歯科用窯の分割が存在することによって制限される。複数の平面を加熱したい場合、それは互いに独立して接続可能な複数の発熱体の取り付けと追加的な技術的努力、すなわち大幅に高いコストを意味する。
【0033】
放射線による熱移転は熱伝導と比べると600℃超の温度において比例以上で増加することが知られている。しかしながらこの熱放射線は、燃焼物支持部材あるいはプレスマッフルが載置される窯の底床の方向において載置された支持部材あるいはプレスマッフルによって妨害される。底床板の加熱および温度上昇は、それが一般的な遮断材料あるいはセラミック材料から形成されている場合、それによって著しく削減あるいは防止される。
【0034】
本発明によれば、それにも関わらず熱伝導体の突出している面がそれでも到達する熱放射線を極めて良好に吸収することができ、その高い熱伝導のため燃焼窯内の載置された支持部材の下あるいは圧力窯内の載置されたプレスマッフルの下に迅速かつ良好に熱を伝導する。
【0035】
本発明によればこの点に関して、それによって燃焼室内の温度勾配が特に載置された対象物の上で小さくなることも重要である。本発明によれば熱伝導体によって歯科補綴部材の均等な加熱が支援される。その限りにおいて熱伝導体は間接的な加熱装置となる。熱伝導体は、燃焼室の垂直方向および放射方向の両方において熱カーテンと均等な熱分布を提供する。このことは、本発明により燃焼室内の温度分布を示す等温線が大きく相互に離間するか、または別の見方をすれば燃焼室内の温度勾配が著しく小さくなることを意味する。
【0036】
本発明によれば、熱伝導体が放射方向の温度均一化といわばその結果として垂直方向の温度均一化に寄与することが極めて好適である。本発明に係る好適な方式において加熱された窯において、つまり通常稼働に際して前後する燃焼サイクル間における熱伝導体中の温度勾配は好適には5度未満であるが、加熱局面において、すなわち最初室温である窯を例えば1200℃の燃焼温度に加熱する場合に熱伝導体中の温度格差が20度未満となることも好適である。意外なことに、それによって高温帯と冷温帯を完全に排除するか、その形成を顕著に低減することができる。
【0037】
本発明によれば、熱伝導体として炭化珪素からなる部材を使用することが極めて好適である。純粋な炭化珪素は約350W/mKの熱伝導性を有するが、人工炭化珪素によって達成可能な略150W/mKの熱伝導性でも本発明において好適に機能する。熱伝導体は小型の成形された部材として実施するか、または基本的に平坦であるその他の任意の形状を有することができる。例えば熱伝導体が固形の立体状に形成されない場合は、盤形状を実現することもできる。例えば複数の放射方向の“ケーキ片”形状あるいは積層された盤形から形成することができる。
【0038】
本発明によれば、熱伝導体はその固有の高い熱伝導性のため極めて温度衝撃耐性が高く、取り外し可能かつ別個に洗浄可能である。この点に関して、炭化珪素が極めて高い硬度を有し、従って機械的に極めて高い負荷耐久性を有する構成部材を形成することが好適である。その結果、強固に付着した汚れを容易かつ完璧に除去するために例えばサンドブラストを使用することも可能になる。このことは、従来使用されているセラミック構成部品、特にそれが燃焼室の断熱に使用されるものと同じ材料からなる場合、不可能である。
【0039】
しかしながら、特に燃焼窯の場合、本発明に係る熱伝導体上に載置されるとともにその上に焼結する歯科補綴部材が設置される独立した燃焼物支持部材を設けることも可能である。燃焼物支持部材は任意の適宜な材料形成することができ、例えば同様に炭化珪素から形成し従ってその材料の良好な熱伝導性のため同様に温度均一化が達成されようにするか、または例えば菫青石あるいはSiNiから形成することもできる。熱伝導体の利点を最適に利用するために、前記の支持部材の質量を熱伝導体に比べて小さくすることが好適である。その場合、支持部は実質的に歯科用窯への装填およびそこからの取り出しの機能のみを目的とするものとなる。
【0040】
本発明によれば、熱伝導体がその上面に設置面を形成するとともに、支持部材として少なくとも1個の補綴部材、少なくとも1個の補綴部材を含んだ燃焼物支持部材、あるいはプレスマッフルを支承することが極めて好適である。
【0041】
本発明によれば、熱伝導体が実質的に盤形状、特に円盤形状に形成され、補綴部材あるいはプレスマッフルが放射状に突立することが極めて好適である。
【0042】
本発明によれば、熱伝導体が燃焼室の側壁から環状ギャップを形成するようにして離間し、その幅が特に直径の3分の1未満、好適には4分の1から20分の1となることが極めて好適である。
【0043】
本発明によれば、熱伝導体が燃焼室の底床の中央に配置されるとともに縁部を備えていて、その縁部とその周囲の燃焼室の側壁との間に環状ギャップとして間隙が形成されるようにし、その幅がそれの延長にわたって均等であることが極めて好適である。
【0044】
本発明によれば、熱伝導体がその直径の20分の1から3分の1、特に約10分の1である高さを有することが極めて好適である。
【0045】
本発明によれば、熱伝導体が炭化珪素SiC、窒化アルミニウムAlN、あるいはモリブデンから形成されることが極めて好適である。
【0046】
本発明によれば、燃焼室の底床が断熱材料および特に耐火粘土を有することが極めて好適である。
【0047】
本発明によれば、底床が中央窪み部を備え、その中に熱伝導体が特に部分的に低没して収容されることが極めて好適である。
【0048】
本発明によれば、加熱装置が(特に専ら)燃焼室の側壁の領域内に配置され、燃焼室の底床が加熱装置を備えないことが極めて好適である。
【0049】
本発明によれば、熱伝導体がハニカム形状の支持部材の形態で形成されることが極めて好適である。
【0050】
本発明によれば、ハニカム形状の支持部材の各目穴が垂直方向に延在する一種の四角形管として形成され、熱伝導体が上面から見て格子状に形成されることが極めて好適である。
【0051】
本発明によれば、熱処理プロセスの前に燃焼室内の特に底床上に少なくとも100W/mKの固有熱伝導性を有する熱伝導体を取り付け、燃焼室および熱伝導体が所与の準備温度、すなわち開始温度に到達した際に歯科補綴部材を製造するための熱処理サイクルを開始することが極めて好適である。
【0052】
本発明によれば、従来の歯科用燃焼窯あるいは圧力窯の燃焼室の底床上に熱伝導体を設置し、燃焼サイクルおよび/またはプレスサイクルが実施される前に前記熱伝導体上にプレスマッフルを設置することが極めて好適である。
【0053】
本発明によれば、歯科用燃焼窯あるいは圧力窯の下部材よりも硬質の材料を熱伝導体用に使用することが極めて好適である。
【0054】
本発明のその他の詳細、特徴、ならびに利点は、添付図面を参照しながら以下に記述する実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る歯科用圧力窯の一実施例を示した概略断面図である。
【図2】本発明に係る歯科用燃焼窯の一実施例を示した概略断面図である。
【図3】本発明に係る歯科用燃焼窯の細部を示した概略透視図である。
【図4】従来の技術による歯科用窯の燃焼室内の温度分布を示した説明図である。
【図5】本発明に係る歯科用窯の燃焼室内の温度分布を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1には、歯科用窯10が概略的に示されている。窯10は上方および側方が窯フード14によって被包された燃焼室12を備える。燃焼室12の下方にはその燃焼室の底床16が窯下部材18の一部として延在する。
【0057】
既知の方式によって窯フード14は下部材18から持ち上げ可能になっており、その際窯フード14を旋回式に取り付けることが有効である。
【0058】
窯フード14と下部材18は大きな割合で耐火粘土等の断熱性材料から形成される。
【0059】
燃焼室12の側壁20を環状に被包するように加熱装置22が設けられる。加熱装置22は熱式加熱装置として形成され、好適には抵抗加熱装置とされる。原則的にそれに代えてその他の任意の熱式加熱装置を使用し得ることが理解される。
【0060】
図示された実施例において加熱装置は既知の方式で上下に配置された抵抗線からなるコイルを備え、それらは図示されていないが燃焼室に向かって開口している管路内に設置されるとともに、実質的に燃焼室の全高にわたって、あるいは図示されているように燃焼室の高さの半分よりも幾らか長く延在する。
【0061】
図1には5個のコイルが図示されているが、それに代えて任意のコイル数とし得ることが理解され、特に図1の最下部のコイルの下に6個目のコイルを設けることができる。
【0062】
加熱装置22から放出された熱放射線が燃焼室12を加熱するように作用し、それによって歯科補綴部材を成形することができる。そのため燃焼室12の中央でしかも燃焼室の側壁20から顕著な距離をおいて配置されたプレスマッフル24が設けられる。燃焼室の直径と対比すると、プレスマッフル24はその内側約半分を占める。フード14の開放に際しての旋回動作によってプレスマッフル24がフード14によって動かされる危険性が生じるため、常に一定の距離を保持しなければならない。
【0063】
既知の方式によってフード14の上壁部が貫通孔を有する。その貫通孔内に、垂直動作可能であるとともに燃焼室の軸28に沿って延在するプレスピストン26が挿通される。プレスピストン26は歯科材料から形成された未加工材30を押圧するよう設定される。そのためプレスマッフル24がシリンダ状の前プレス管32を備える。小さな接続管を介して前プレス管32が成形空間34と結合され、その形状が一種の母型として後の歯科補綴部材の形状を決定する。
【0064】
歯科用圧力窯の稼働に際して未加工材を含んだプレスマッフル24が挿入された後まずプレスピストン26が降下し、従って前プレス管32にも完全に未加工材30が充填される。歯科材料が液状あるいは少なくなくとも粘液状になる程に未加工材30およびプレスマッフル24の温度が燃焼室12の温度と同化するまで待機する。その後プレスピストン26に上から圧力が付勢され、そのプレスピストンが付勢された圧力を未加工材30に伝達する。未加工材30の歯科材料が液状化した後、成形空間34が完全に充填されるまで接続管内とさらに成形空間34内に歯科材料が流入する。ここでは単一のものとして図示されている成形空間34に代えて複数の成形空間をプレスマッフル24の他の位置に放射状に配置することもでき、それらをそれぞれ別々の接続管を介して前プレス管32と結合し得ることが理解される。
【0065】
歯科材料が軟化するまでの待機時間を短く保持するために、プレスマッフル24を実際のプレス工程の前にいわゆる予加熱窯内で例えば850℃の予加熱温度まで一般的な方式で加熱する。燃焼室12内の定格温度は使用されかつ加工される歯科材料ならびに使用されるプレスマッフルの質量に大きく依存し;例えば白榴石セラミックの場合1070℃の温度が必要であるが、二珪酸リチウムの焼成温度は顕著に低いものとなる。温度および温度変化は温度センサ40によって検出され、その際追加的にプレスに際してのプレスピストン26のプレス圧力およびプレスピストン26の動作を検出して制御する。
【0066】
強度の温度上昇に際しても所要の形状精密性を保証するために、プレスマッフル24は通常石膏あるいは石膏に類似する材料から形成される。熱吸収を改善するために、プレスマッフルによる加熱装置22の熱放射線の吸収を改善する色素を材料に添加することも提案されている。しかしながらそれによって形状精密性が犠牲になる。
【0067】
この難点を解消するために、本発明によれば一種の盤形状で燃焼室の底床16を遮蔽するかあるいは略完全に被覆して延在するとともにその外縁部52が加熱装置22の下方のコイルに対して少なくとも隣接する熱伝導体50が設けられる。ここで隣接とは数cm、例えば1ないし最大3cmの距離を示し、他方加熱装置22とプレスマッフル24の外側部の間の距離は充分に3cmとなり、またより小型のプレスマッフルの場合はさらに大幅に大きくなり得る。
【0068】
熱伝導体50の外縁部52と窯フード14の側壁20の間には例えば1cmのギャップが形成され、その際窯フード14は熱伝導体50を超えて下方に延在する。それに従って燃焼室12の底床16がその位置で低没するとともに他の位置では隆起する。
【0069】
熱伝導体50はプレスマッフルを取り外した場合でも窯10内に残留する。従ってその熱伝導体はプレスマッフル24が挿入された際に定格温度になっている。熱伝導体50はプレスマッフル24の下面全体と接触する。高温の熱伝導体50がそれ自体で蓄積したおよびそれに対して伝導された熱を下からプレスマッフル24に伝導し、それによって燃焼室の底床上に熱伝導体50を備えない従来の窯と比べてプレスマッフルが急速に加熱されるとともに温度均一化が達成されるようにする。
【0070】
図示された実施例において熱伝導体50はさらに鉢形状の窪み部を備え、その中にプレスマッフル24が正確に整合し、主に設置するプレスマッフルを心合せして誘導するように機能する。
【0071】
多様なプレスマッフルサイズに対して熱伝導体50の窪み部54と同心に設置可能な調整リングを追加的に挿入することもでき、それによって常に改善された熱伝導体50とプレスマッフル24の間の熱伝導が実施されるばかりでなくプレスマッフル24の心合せも達成し、それによってプレスピストン26が前プレス管32に対して正確に整列することが保持される。
【0072】
心合せを保証するために、燃焼室12の底床16が適宜な窪み部56を備え、その中に熱伝導体50の円形の突起部58が正確に整合する。
【0073】
ここでは燃焼室、プレスマッフル、ならびに熱伝導体を円形の構成要素として説明するが、それに代えて楕円形も可能であり、さらに六角形あるいは八角形も可能であることが理解される。図示された実施例において熱伝導体50は人工炭化珪素からなり黒色である。熱伝導体50の側方フランジ60がプレスマッフル24より放射方向外側に突出する。この側方フランジ60は常に加熱装置22の熱放射に曝され、吸収した熱放射線を熱伝導体50の他の部分と、さらにプレスマッフル24に伝導する。
【0074】
図示された実施例において熱伝導体50は120W/mKの熱伝導性を有する。
【0075】
別の窯の実施例が図2に示されている。歯科用窯10は図1に示されたものと同様な方式で図示されており、窯10の下部材18に対して可動式に取り付けられた窯フード14が設けられている。この図面において、さらにそれ以降の図面においても同一の構成要素は同一の参照符号によって示され、従ってその詳細な説明は不要とする。
【0076】
図2の実施例において、支持棒部材64を介して燃焼物支持部材66上に支承される歯科補綴部材62が焼成される。燃焼物支持部材66は全面的に熱伝導体50と接合する。この実施例において熱伝導体50の表面は平坦であり、燃焼物支持部材66の直径は燃焼室12の直径の約80%となる。それに対して熱伝導体50の直径は燃焼室12の直径の約92%となる。ここでも熱伝導体50内に蓄積された熱とフランジ60によって吸収された熱が下から燃焼物支持部材66に伝導され、従って歯科補綴部材62の加熱が側方の加熱装置22からの直接的な熱放射のみでなく、追加的に下からも実施される。
【0077】
燃焼物支持部材66の構成例が図3に概略的に示されている。図3にはさらに、窯フード14の持ち上げによって燃焼窯の下部材18とフード14の間に斜めの姿勢が形成されることが示されている。燃焼物支持部材66はハニカムあるいは格子構造70を有し、それが図3に概略的に示されている。図示された実施例においてハニカム構造の目穴が垂直に延在している。
【0078】
図4には、従来の窯の等温線80の経緯が示されている。燃焼室の高さ、すなわち底床16から蓋壁部21までにわたっての温度変化が示されている。水平の座標は軸28から始まって燃焼室の側壁20で終了している。図には急速に加熱した窯の熱変化が概略的に示されており、その中にプレスマッフルは未だ挿入されていない。
【0079】
上部外側の角上、すなわち蓋壁部21と側壁20の当接に際して最も高温であることが示されており、図示された実施例おいては温度が1200℃等温線よりも高くなり、他方下側中央、すなわち軸28が底床16と当接する位置において最も低温となり、900℃等温線よりも低くなる。特に急速な加熱中において顕著な温度勾配が存在し、挿入される歯科補綴部材に隣接する場所で最も低温になる。
【0080】
図5には、本発明に係る形態の熱伝導体50を使用した際の同様な温度曲線が示されている。ここでも、燃焼室12の放射方向外側部分が1200℃等温線の上方に位置するが、そこに加熱装置22が設けられるためである。しかしながら、放射された熱放射線は熱伝導体50を形成する黒色かつ熱伝導性が良好な盤形状の板によって大部分吸収される。それによってその場所が板の上方あるいは燃焼室の上端に比べてむしろ幾らか高温となる。このことは図4とは異なった等温線の傾斜から理解することができ、すなわちここでは左下から右上に延在しており、他方図4においては右下から左上に延在している。
【0081】
加えて図5に示されるように、本発明に係る構成において等温線の間隔も図4の従来の窯と比べて大きくなり、すなわちそのことが著しく改善された温度均一化が存在することを意味している。後に歯科補綴部材が設置される場所は略1100℃等温線上に存在し、従って図示された加熱状況において温度勾配が全体的に3分の1に縮小される。
【符号の説明】
【0082】
10 歯科用窯
12 燃焼室
14 窯フード
16 底床
18 窯下部材
20 側壁
21 蓋壁部
22 加熱装置
24 プレスマッフル
26 プレスピストン
28 軸
30 未加工材
32 前プレス管
34 成形空間
40 温度センサ
50 熱伝導体
52 縁部
54,56 窪み部
60 側方フランジ
62 歯科補綴部材
64 支持棒部材
66 燃焼物支持部材
70 ハニカム構造
80 等温線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱装置(22)、特に抵抗加熱装置によって加熱可能な燃焼室(12)を備えてなる、少なくとも1個の歯科補綴部材(62)を製造するための歯科用燃焼窯あるいは圧力窯であり、前記燃焼室(12)の底床上に少なくとも100W/mKの固有熱伝導性を有する熱伝導体(50)を配置することを特徴とする窯。
【請求項2】
熱伝導体(50)がその上面に設置面を形成するとともに、支持部材として少なくとも1個の補綴部材(62)、少なくとも1個の補綴部材(62)を含んだ燃焼物支持部材(66)、あるいはプレスマッフル(24)を支承することを特徴とする請求項1記載の窯。
【請求項3】
熱伝導体(50)が実質的に盤形状、特に円盤形状に形成され、補綴部材(62)あるいはプレスマッフル(24)が放射状に突立することを特徴とする請求項1または2記載の窯。
【請求項4】
熱伝導体(50)が燃焼室(12)の側壁(20)から環状ギャップを形成するようにして離間し、その幅が特に直径の3分の1未満、好適には4分の1から20分の1となることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の窯。
【請求項5】
熱伝導体(50)が燃焼室(12)の底床(16)の中央に配置されるとともに縁部(52)を備えていて、その縁部とその周囲の燃焼室(12)の側壁(20)との間に環状ギャップとして間隙が形成されるようにし、その幅がそれの延長にわたって均等であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の窯。
【請求項6】
熱伝導体(50)がその直径の20分の1から3分の1、特に約10分の1である高さを有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の窯。
【請求項7】
熱伝導体(50)が炭化珪素SiC、窒化アルミニウムAlN、あるいはモリブデンから形成されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の窯。
【請求項8】
燃焼室(12)の底床(16)が断熱材料および特に耐火粘土を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の窯。
【請求項9】
底床(16)が中央窪み部を備え、その中に熱伝導体(50)が特に部分的に低没して収容されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の窯。
【請求項10】
加熱装置が(特に専ら)燃焼室の側壁(20)の領域内に配置され、燃焼室(12)の底床(16)が加熱装置を備えないことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の窯。
【請求項11】
熱伝導体(50)がハニカム形状の支持部材の形態で形成されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の窯。
【請求項12】
ハニカム形状の支持部材の各目穴が垂直方向に延在する一種の四角形管として形成され、熱伝導体(50)が上面から見て格子状に形成されることを特徴とする請求項11記載の窯。
【請求項13】
加熱装置(22)によって加熱可能な燃焼室(12)を窯が備えてなる、少なくとも1個の歯科補綴部材(62)を製造するための歯科用燃焼窯あるいは圧力窯(10)を稼働する方法であり、熱処理プロセスの前に燃焼室(12)内の特に底床(16)上に少なくとも100W/mKの固有熱伝導性を有する熱伝導体(50)を取り付け、燃焼室および熱伝導体(50)が所与の準備温度、すなわち開始温度に到達した際に歯科補綴部材(62)を製造するための熱処理サイクルを開始することを特徴とする方法。
【請求項14】
従来の歯科用燃焼窯あるいは圧力窯(10)の燃焼室(12)の底床(16)上に熱伝導体(50)を設置し、燃焼サイクルおよび/またはプレスサイクルが実施される前に前記熱伝導体(50)上にプレスマッフル(24)を設置することを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
歯科用燃焼窯あるいは圧力窯(10)の下部材よりも硬質の材料を熱伝導体(50)用に使用することを特徴とする請求項13または14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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