説明

歯科用硬化性組成物、該組成物から得られる硬化物ならびに該組成物を得るための歯科用硬化性組成物用キット

【課題】湿潤環境下での重合阻害を受けず、さらに酸素の存在下でも歯面処理を行っていない歯牙に対して優れた接着性、接着界面に隙間を生じさせない特性を有する歯科用硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】(A)重合性単量体、(B)有機アミン化合物(ただし、(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を除く)、(C)遷移金属化合物(ただし、(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を除く)、および(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を含有する、歯科用硬化性組成物であって、(A)成分が60〜99.99重量部、(B)成分と(BC)成分との合計が0.01〜30重量部、(C)成分と(BC)成分との合計が0.001〜10重量部の量で含有することを特徴とする歯科用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用硬化性組成物、該組成物から得られる硬化物ならびに該組成物を得るための歯科用硬化性組成物用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
う蝕等によって生じた欠損部位を修復する方法として、一般的には金属合金、陶材、レジンといった各種素材から作製されたクラウン、インレー等の修復材料をセメントにて合着させる方法やセルフエッチングボンディング材等を適用した後にコンポジットレジンを充填し接着修復する方法が挙げられる。
【0003】
現在、主に用いられているセメントには、レジン強化型グラスアイオノマーセメント(以下、RMGIと略す)とレジンセメントが挙げられる。RMGIは、グラスアイオノマーセメントの口腔内の湿潤環境下におけるセメント崩壊を改善したものとしてこれまでに種々の提案が行われている(例えば、特許文献1〜6参照)。これらの文献には、グラスアイオノマーセメント成分中に、重合可能なエチレン性不飽和基を有する単量体および重合触媒(光重合触媒、レドックス重合触媒)を配合してなる組成物が提案されている。硬化初期にフルオロアルミノシリケートガラス粉末とポリアクリル酸との酸-塩基反応が生
起し硬化が始まると同時に、単量体成分を光重合もしくはレドックス重合させる方法を併用させたものである。重合体成分をセメント中に存在させることで、機械的強度の向上や湿潤環境下でのセメント崩壊の低減を計ったものとされるが、抜本的解決には至っていない。即ち、光重合触媒を併用した系では、光の届かない部位に適用した場合には単量体成分が重合することができず修復材料の脱落を招いたり、重合不足によって生じた隙間から細菌が浸入し二次カリエスを誘発させたり、術後疼痛の原因となったりする等の問題が生じている。レドックス重合触媒を併用した系では、グラスアイオノマーセメント成分中において重合触媒成分が不安定であり分解してしまうこと、提案されている重合触媒は、元来、湿潤環境下で十分に単量体成分を重合させることができないことに問題があるといっても過言ではない。
【0004】
また、湿潤環境下での耐崩壊性に優れ、歯質や修復材料に対して優れた接着性を有する合着用セメント組成物が提案されている(例えば、特許文献7参照)。しかしながら、保存安定性の観点から包装形態が液材/粉材の形態に限定されてしまうことや、歯質接着性に対する実施例が何ら言及されていないことに疑問が持たれる。
【0005】
以上のことから、上記全ての文献において、湿潤環境下での歯質への接着性が依然としてグラスアイオノマーセメント同様に低いことに重大な問題を抱えていると言える。
これに対してレジンセメントは、グラスアイオノマーセメントのような感水性を有さず、歯質接着性に優れる。しかしながら、歯面の酸処理やプライマー処理が適用前には必須であること、操作が煩雑であること、さらに湿潤した象牙質表面に安定した歯質接着性を期待する場合にはテクニックセンシティブにならざるを得ず、熟練を必要とする材料であった。
【0006】
一方、ボンディング材を用いた修復方法においては、操作手順の簡便さからセルフエッチング機能を有するワンステップタイプのボンディング材が使用されることが多い。歯面の酸処理、プライマー処理といった前処理を行わずに適用部位に塗布、光重合を行いコンポジットレジンとの組み合わせで使用される。上述の種々のセメント合着による修復方法よりも簡単、且つ迅速に欠損部位を修復することができる。しかしながら、ボンディング
材、コンポジットレジン共に光(可視光)重合のため窩洞が深い場合や修復箇所によっては光照射が充分に行き届かないことがある。この場合、重合不足に起因したコンポジットレジンの機械的強度や耐摩耗性の低下、色調のずれといった審美性の不具合も生ずる。そこで、光重合開始剤等のラジカル重合開始剤を使用せず、酸素や水等による重合阻害のない歯科用接着性組成物が開示されているが(例えば、特許文献8参照)、重合の作用機序について不明でありその性能もバラツキが多いこと、酸素下での重合も不十分であった。
【0007】
さらに、ボンディング材自身がフィラー成分を含有していない、もしくはその含有量が上述の種々のセメントと比較して少ないことから、表面に露出するボンディング材層の耐摩耗性にも不安が残る。そのため、特に臼歯隣接面における二級窩洞やMOD窩洞の修復には不適であった。
【特許文献1】特公平1−308855号公報
【特許文献2】特公平6−27047号公報
【特許文献3】特開平8−26925号公報
【特許文献4】特公平8−301717号公報
【特許文献5】特開2000−26225号公報
【特許文献6】特開2002−87917号公報
【特許文献7】特開2003−12433号公報
【特許文献8】特開2005−65902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、湿潤環境下での重合阻害を受けず、さらに酸素の存在下でも歯面処理を行っていない歯牙に対して優れた接着性、接着界面に隙間を生じさせない特性を有する歯科用硬化性組成物、該組成物より得られる機械的性質に優れ、且つ歯髄為害作用の無い硬化物ならびに該組成物を得るためのキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本研究者らは、このような状況を鑑みて上記課題を解決するべく鋭意検討をした結果、湿潤環境下、酸素存在下でも重合阻害されず、歯面処理を行っていない歯牙に対して優れた接着性、接着界面に隙間を生じさせない特性を有する歯科用硬化性組成物、該組成物より得られる機械的性質に優れ、且つ歯髄為害作用の無い硬化物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明の歯科用硬化性組成物は、
(A)重合性単量体、(B)有機アミン化合物(ただし、(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を除く)、(C)遷移金属化合物(ただし、(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を除く)、および(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を含有する、歯科用硬化性組成物であって、
(A)成分が60〜99.99重量部、(B)成分と(BC)成分との合計が0.01〜30重量部(ただし、(B)成分が0〜30重量部であり、(BC)成分が0〜10重量部であり、(B)成分と(BC)成分とが同時に0重量部でない)、(C)成分と(BC)成分との合計が0.001〜10重量部(ただし、(C)成分が0〜10重量部であり、(BC)成分が0〜10重量部であり、(C)成分と(BC)成分とが同時に0重量部でない)の量で含有することを特徴とする(ただし、上記(A)、(B)、(C)および(BC)成分の合計を100重量部とする)。
【0011】
上記(A)重合性単量体が、カルボン酸基、燐酸基、チオ燐酸基、スルホン酸基、ピロ燐酸基およびスルフィン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸性基を有する重合性単量体を含むことが好ましい。
【0012】
上記(A)重合性単量体が、少なくとも1個の水酸基を有する重合性単量体を含むことが好ましい。
上記(A)重合性単量体が、エチレン性不飽和結合を3個以上有する重合性多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0013】
上記(A)重合性単量体が、トリアジン環誘導体を有する重合性単量体を含むことが好ましい。
上記(A)重合性単量体が、ジペンタエリスリトール系重合性単量体を含むことが好ましい。
【0014】
上記(B)有機アミン化合物が、下記式(I)および/または(II)で表されるアミン化合物を含むことが好ましい。
【0015】
【化3】

【0016】
(ここで、R1、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリ
ール基、アリールオキシ基、アルコキシル基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシル基、またはハロゲン原子を表す。R6は水素原子、アルキル基、またはアリー
ル基、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基、R9は水素原子または
金属原子(ただし、遷移金属原子を除く)である。nはR9が水素である場合には1であ
り、金属原子である場合には該金属原子の価数と同じ整数である。)
【0017】
【化4】

【0018】
(ここで、R10、R11、R12、R13およびR14はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシル基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシル基、またはハロゲン原子を表す。R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ原子を含む置換アルキル基である)。
【0019】
上記歯科用硬化性化合物が、さらに、(D)含硫黄還元性化合物を含有しても良い。
上記(D)成分を含有する場合には、(D)成分の含有量が、0.01〜10重量部の量で含有されている(ただし、(A)、(B)、(C)および(BC)成分の合計を100重量部とする)ことが好ましい。
【0020】
上記歯科用硬化性化合物が、さらに、(E)ヒドロキシ酸化合物を含有しても良い。
上記(E)ヒドロキシ酸化合物を含有する場合には、(E)ヒドロキシ酸化合物が0.005〜20重量部の量で含有されている(ただし、(A)、(B)、(C)および(BC)成分の合計を100重量部とする)ことが好ましい。
【0021】
上記歯科用硬化性組成物が、さらに(F)水系溶媒を含有しても良い。
上記(F)水系溶媒を含有する場合には、(F)水系溶媒が0.1〜70重量部の量で含有されている(ただし、(A)、(B)、(C)および(BC)成分の合計を100重量部とする)ことが好ましい。
【0022】
上記歯科用硬化性化合物が、さらに(G)無機充填材、有機充填材および有機質複合充填材から選択される少なくとも1種の充填材をさらに含有しても良い。
上記(G)無機充填材、有機充填材および有機質複合充填材から選択される少なくとも1種の充填材を含有する場合には、(G)無機充填材、有機充填材および有機質複合充填材から選択される少なくとも1種の充填材が1〜400重量部の量で含有されている(ただし、(A)、(B)、(C)および(BC)成分の合計を100重量部とする)ことが好ましい。
【0023】
本発明には、上記歯科用硬化性組成物に可視光を照射することにより得られる硬化物を含む。
本発明には、上記歯科用硬化性組成物を得るためのキットであって、(A)重合性単量体が、酸性基を有する重合性単量体を含み、該酸性基を有する重合性単量体が容器Aに収容されており、(B)有機アミン化合物が容器Bに収容されていることを特徴とする歯科用硬化性組成物用キットを含む。
【0024】
本発明には、上記歯科用硬化性組成物を得るためのキットであって、(A)重合性単量体と(C)遷移金属化合物とが容器Aに収容されており、(B)有機アミン化合物が容器Bに収容されていることを特徴とする歯科用硬化性組成物用キットを含む。
【0025】
前記容器Aおよび/または容器Bに光重合開始剤が収容されていることが好ましい。
(A)重合性単量体が酸性基を有しない重合性単量体を含み、該酸性基を有しない重合性単量体が、容器Aおよび/または容器Bに収容されていてもよい。
【0026】
(A)重合性単量体と(C)遷移金属化合物とが容器Aに収容されており、(B)有機アミン化合物が容器Bに粉末組成物として収容されていてもよい。
本発明には上記歯科用硬化性組成物を得るためのキットであって、(A)重合性単量体と(C)遷移金属化合物とが容器Aに収容されており、上記(B)成分の一部もしくは全部、(D)成分の一部もしくは全部、または(B)成分と(D)成分との一部もしくは全部が、使用する治具に予め含有されていることを特徴とする記載の歯科用硬化性組成物用キットを含む。
【0027】
前記歯科用硬化性組成物用キットは、2つ以上のペースト状組成物を有する形態であることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の歯科用硬化性組成物は重合開始剤として過酸化物を含有せずとも重合することが可能で、湿潤環境下でも重合阻害が生起せず、さらに歯面処理を行っていない歯質に対して優れた接着性、接着界面に隙間を生じさせない特性を有し機械的性質に優れ、且つ歯髄為害作用がなく、特に合着セメントやシーラーセメントとして非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の歯科用硬化性組成物は、(A)重合性単量体、(B)有機アミン化合物(ただし、(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を除く)、(C)遷移金属化合物(ただし、(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を除く)、および(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を含有する、歯科用硬化性組成物であって、(A)成分が60〜99.99重量部、(B)成分と(BC)成分との合計が0.01〜30重量部(ただし、(B)成分が0〜30重量部であり、(BC)成分が0〜10重量部であり、(B)成分と(BC)成分とが同時に0重量部でない)、(C)成分と(BC)成分との合計が0.001〜10重量部(ただし、(C)成分が0〜10重量部であり、(BC)成分が0〜10重量部であり、(C)成分と(BC)成分とが同時に0重量部でない)の量で含有することを特徴とする(ただし、上記(A)、(B)、(C)および(BC)成分の合計を100重量部とする)。
【0030】
本発明の歯科用硬化性組成物は、硬化時間が好ましくは5秒〜120分、より好ましくは15秒〜60分、さらに好ましくは30秒〜30分である。前記数値範囲の下限値を下回ると修復操作に入る前に硬化し使用できなくなり、上限値を上回ると滲出液による重合阻害の影響が生起してしまう可能性が高くなる。本発明において硬化時間とは、重合が開始されてから硬化するまでの時間であり、前記重合の開始は、通常、重合用光照射器による光照射や重合開始剤の混合等により引き起こされるものである。また、硬化とは、重合が完了することであり、示差走査熱量計にて重合時に発生する発熱量を経時測定することによって把握することができる。
【0031】
本発明の歯科用硬化性組成物は、(A)重合性単量体、(B)有機アミン化合物、(C)遷移金属化合物および(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を含有する組成物であり、好ましい態様の一つとして、この歯科用硬化性組成物中には、過酸化物系重合開始剤が実質上含有されない態様が挙げられる。本発明において、過酸化物系重合開始剤が実質的に含有されないとは、過酸化物系重合開始剤が全く含有されていないことを意味することは勿論、本発明の歯科用硬化性組成物の合計量を100重量部としたときに、過酸化物系重合開始剤が0.1重量部以下、さらには0.01重量部以下、殊に0.001重量部以下の量で混入した歯科用硬化性組成物に関しても、実質上含有されないものとする。従来、この種の実用的な歯科用硬化性組成物においては、組成物を硬化させ得るために過酸化物系重合開始剤は必須成分であると考えられてきたが、本発明の組成により、過酸化物系重合開始剤を必須成分として含有しない歯科用硬化性組成物を実現することができる。さらに、本発明の歯科用硬化性組成物は、過酸化物系重合開始剤を含有していないだけでなく、その硬化時間を5秒〜120分の範囲内に調整することができ、特に合着用セメントやシーラーセメント用途においては極めて使い易い適正な時間範囲にそれぞれ調整することが可能となった。
【0032】
尚、場合によっては(例えば、2ペースト状組成物の形態において2つのペーストが混
合された初期時の機械的強度が要求される場合など)、本発明の歯科用硬化性組成物の態
様として、過酸化物系重合開始剤が含有される態様が挙げられ、そのような場合を排除するものではない。
【0033】
本発明の歯科用硬化性組成物は、(A)重合性単量体を含有し、重合性単量体としてはラジカル重合開始剤によって重合する単量体であれば特に限定されず、重合性基として、例えば(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等を有する単量体が用いられる。
【0034】
尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの両者を意味し、「(メタ)アクリル酸」や「(メタ)アクリロイル基」等につい
ても同様である。
【0035】
本発明において使用される(A)重合性単量体は、1分子内に重合性基を少なくとも1個含有していればよい。本発明において以下に記載の(A)重合性単量体における重合性基はこれと同義である。
【0036】
本発明において、(A)重合性単量体としては、1分子内に重合性基を1個有する単官能重合性単量体、2個有する二官能重合性単量体、3個以上有する多官能重合性単量体(例えば、多官能(メタ)アクリル酸エステル)を挙げることができ、使用目的等に応じて適宜選択して使用される。
【0037】
(i)単官能重合性単量体としては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート等の直鎖状または分枝状アルキル(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の酸素原子等を含む複素環(メタ)アクリレート;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のさらに塩素等のハロゲンを有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
(ii)二官能重合性単量体としては、
メチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−
ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の直鎖状または分枝状のポリもしくはモノアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
(iii)三官能以上の多官能重合性単量体としては、
トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のようなトリメチロールアルカントリ(メタ)アクリレートやトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの(メタ)アクリレートエステル等の三官能重合性単量体;
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート(O(-CH2-C(-CH20-CO-CR=CH2)2CH2CH3)2、R:H or CH3)等のようなポリメチロールアルカンやそのエー
テルのテトラ(メタ)アクリレート等の四官能重合性単量体;
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等のようなポリメチロールアルカンやそのエーテルのポリ(メタ)アクリレート等の五官能以上の重合性単量体が挙げられる。
【0040】
また、二官能以上の重合性単量体においては、例えばトリエチレングリコールアクリレートメタクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレートジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートジメタクリレートのように、メタクリレート基とアクリレート基を1分子中に併せ持つ化合物も含まれる。
【0041】
これらの重合性単量体の中で上記(A)成分として、特に分子内に水酸基を含有する重合性単量体、下記式(α)に示されるトリアジン環誘導体を含有する重合性単量体(イソ
シアヌレート(メタ)アクリレートエステル類)、もしくは下記式(β)に示されるジペ
ンタエリスリトール系重合性単量体が好ましく用いられ、すべて単独で、もしくは組み合わせて使用することができる。
【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
尚、トリアジン環誘導体とは、特に限定されるものではないが、例えば、トリアジン環の水素の少なくとも1つが重合性官能基等を有する他の置換基に置き換えられた置換体、
トリアジン環の二重結合の少なくとも1つが飽和されて環を構成する炭素又は窒素原子に
重合性官能基等を有する置換基が導入された誘導体などが挙げられるが、好ましくは、トリアジン環の環構造部の二重結合が飽和されて、炭素原子がカルボニル化されて、窒素原子に重合性官能基等を有する置換基が導入された誘導体、即ち、イソシアヌレート系化合物である、下記式(γ)に示される構造を有する化合物であり、ここで、R17、R18およびR19はそれぞれ独立に重合性基であり、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等を有するラジカル重合可能な不飽和基である。
【0045】
【化7】

【0046】
分子内に水酸基含有する重合性単量体において、さらに分子内にアミノ基、グリシジル基等の官能基を併せて含有することもできる。
例えば(メタ)アクリロイル基を有する単量体では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2または3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレ−ト、1,2−または1,3−および2,3−ジヒドロキシプロパン(メタ)アクリレート、ジエチ
レングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有の(メタ)アクリレート類;
メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイル−2,3−ジヒドロキ
シプロピルアミン、N−(メタ)アクリロイル−1,3−ジヒドロキシプロピルアミン等
の水酸基含有の(メタ)アクリルアミド類;
2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート(メタクリレートの場合HPPM)、2−ヒドロキシ−3−ナフトキシプロピル(メタ)アクリレート(メタクリレートの場合HNPM)、1モルのビスフェノールAと2モルのグリシジル(メタ)アクリレート(メタクリレートのの場合GMA)の付加反応生成物(メタクリレートの場合Bis−GMA)等のGMAと脂肪族もしくは芳香族ポリオール(フェノールを含む)との付加生成物等を挙げることができる。これらの重合性単量体は単独で、もしくは組み合わせて使用できる。
【0047】
上記に示した重合性単量体はいずれも分子内に酸性基を有しない重合性単量体であり、本発明における(A)重合性単量体には分子内に酸性基を含有する重合性単量体も含まれる。尚、本発明においては、酸無水物等のように容易に酸性基に変異する官能基も酸性基と見なす。かかる重合性単量体における酸性基としては、例えばカルボン酸基、燐酸基、ピロ燐酸基、チオ燐酸基、スルホン酸基およびスルフィン酸基およびそれらの酸無水物等を挙げることができ、(A)成分としてこれらの酸性基のうち少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0048】
1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する重合性単量体としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびテトラカルボン酸またはこれらの誘導体を挙げることができ、例えば、
(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のビニル基にカルボキシル基が直接結合した化合物、
p−ビニル安息香酸等のビニル基に芳香環が直接結合した化合物、
11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(メタクリレート
の場合:MAC−10)等の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、
1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイ
ルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸等の(メタ)アクリロイルオキシ
アルキル基を有する芳香環カルボン酸化合物、
4−(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸およびその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸(メタクリレートの場合:4−MET)およびその無水物(メタクリレートの場合:4−META)、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸およびその無水物、4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]ブチルトリメリット酸およびその無水物等の(ヒドロキシ)(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメリット酸化合物およびその無水物、
2,3−ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート等のカルボキシベンゾイルオキシを有する化合物、
N,O−ジ(メタ)アクリロイルオキシチロシン、O−(メタ)アクリロイルオキシチロ
シン、N−(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N−(メタ)アクリロイルオキシフェニルアラニン等のN−,および/または,O−(メタ)アクリロイルオキシアミノ酸、
N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイルO−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル5−アミノサリチル酸(メタクリレートの場合:5−MASA)、N−(メタ)アクリロイル4−アミノサリチル酸等の(メタ)アクリロイルアミノ安息香酸類、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとピロメリット酸二無水物の付加生成物(メタクリレートの場合:PMDM)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水マレイン酸または3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(メタクリレ
ートの場合:BTDA)または3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の
付加反応物、2−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、N−フェニルグリシンまたはN−トリルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物等の付加体、4−[(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸、3または4−[N−メチルN−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アミノ]フタル酸等のアルコール性水酸基を有する化合物
などを挙げることができる。このうち、MAC−10、4−MET、4−METAおよび5−MASAが好ましく用いられる。これらのカルボキシル基を含有する重合性単量体は単独で、もしくは組み合わせて使用することができる。
【0049】
(A)成分として使用できる重合性単量体のうち、1分子中に少なくとも1個の燐酸基を有する重合性単量体としては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェート、2および3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシドホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルアシドホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルアシドホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルアシドホスフェート等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシドホスフェート化合物、
ビス{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシドホスフェート、ビス{2または3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル}アシドホスフェート等のビス{(メタ)アクリロイルオキシアルキル}アシドホスフェート、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−p−メトキシフェニルアシドホスフェート等の芳香環に0個以上の置換基を有する(メタ)アクリロイルオキシアルキルフェニルアシドホスフェート
などを挙げることができる。これらの化合物における燐酸基は、チオ燐酸基に置き換えることができる。このうち、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェートが好ましく用いられる。これらの燐酸基を有する重合性単量体は単独で、もしくは組み合わせて使用することができる。
(A)成分として使用できる重合性単量体のうち、1分子中に少なくとも1個のピロ燐酸
基を有する重合性単量体としては、例えば、ピロ燐酸ジ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}、ピロ燐酸ジ{4−(メタ)アクリロイルオキシブチル}、ピロ燐酸ジ{6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル}、ピロ燐酸ジ{8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル}、ピロ燐酸ジ{10−(メタ)アクリロイルオキシデシル}等のピロ燐酸ジ{(メタ)アクリロイルオキシアルキル}化合物などを挙げることができる。これらのピロ燐酸基を有する重合性単量体は単独で、もしくは組み合わせて使用することができる。
【0050】
(A)成分として使用できる重合性単量体のうち、1分子中に少なくとも1個のスルホン酸基を有する重合性単量体としては、例えば
2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2または1−スルホ−1または2−プロピル(メタ)アクリレート、1または3−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート等のスルホアルキル(メタ)アクリレート化合物、
3−ブロモ−2−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシ−1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート等のヘテロ原子などを含む更なる置換基を有するスルホアルキル(メタ)アクリレート化合物、
1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミド等の置換基を有するスルホ
アルキル(メタ)アクリルアミド
などを挙げることができる。このうち、2−メチル−2−(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸が好ましく用いられる。これらのスルホン酸基を有する重合性単量体は単独で、もしくは組み合わせて使用することができる。
【0051】
上記の(A)成分はすべて単独で、もしくは組み合わせて使用することができる。
本発明の(A)成分中には、酸性基を分子内に含有する重合性単量体の酸性基は、一価の酸性基換算で、好ましくは0.00001〜0.03モル/g、より好ましくは0.0001〜0.01モル/g、更に好ましくは0.0005〜0.006モル/g存在する。なお、一価の酸性基換算とは、酸性基がカルボキシル基のように酸塩基中和反応で1H+
を放出する場合には、単純に該基のモル/gに相当し、リン酸基(−H2PO4)のように酸塩基中和反応で2H+を放出する場合には、該基のモル/gの2倍に相当する。
【0052】
前記数値範囲の下限値を下回ると歯面を脱灰するだけの酸性度が不十分となる場合があり、上限値を上回ると歯面が過脱灰となる場合がある。
また、本発明の(A)成分中には、アルコール性水酸基を有する重合性単量体の水酸基は、好ましくは0.00001〜0.02モル/g、より好ましくは0.0001〜0.01モル/g、更に好ましくは0.001〜0.008モル/g存在する。前記数値範囲の下限値を下回ると疎水性が強くなり水との相溶性が低下する傾向があり、上限値を上回ると重合体の耐水性が低下する傾向がある。
【0053】
また、本発明の(A)成分としては、エチレン性不飽和結合を3個以上有する重合性多官能(メタ)アクリレートを好ましくは1〜70重量部、より好ましくは5〜50重量部、更に好ましくは10〜30重量部含まれる(ただし、(A)成分全体を100重量部とする)。前記数値範囲の下限値を下回ると重合体の機械的強度が不十分となる場合があり、上限値を上回ると重合体が脆性となる場合がある。
【0054】
また、本発明の(A)成分としては、トリアジン環誘導体を有する重合性単量体は、好ましくは1〜70重量部、より好ましくは10〜50重量部、更に好ましくは20〜40重量部含まれる(ただし、(A)成分全体を100重量部とする)。前記数値範囲の下限値を下回ると重合体の表面硬度が不十分となる場合があり、上限値を上回ると重合体が脆性となる場合がある。
【0055】
また、本発明の(A)成分としては、ジペンタエリスリトール系重合性単量体は、好ま
しくは1〜80重量部、より好ましくは10〜60重量部、更に好ましくは20〜40重量部含まれる(ただし、(A)成分全体を100重量部とする)。前記数値範囲の下限値を下回ると重合体の表面硬度が不十分となる場合があり、上限値を上回ると重合体が脆性となる場合がある。
【0056】
本発明の歯科用硬化性組成物において、(B)有機アミン化合物(ただし、(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を除く)としては脂肪族系や芳香族系等から適宜選択可能であり、具体的にはN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジエタノール−p−トルイジン(D
EPT)、N,N−ジメチル−p−tert−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニシジン、N,N−ジメチル−p−クロルアニリン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N,N−ジエチルアミノ安息香酸(DEABA)
およびそのアルキルエステル、N,N−ジメチルアミノベンツアルデヒド(DMABAd
)等の芳香族アミン類;N−フェニルグリシン(NPG)、N−トリルグリシン(NTG)、N−メチル−N−フェニルグリシン(NMePG)、N−(2−カルボキシフェニル)グリシン(N2CPG)、N−(2−ヒドロキシフェニル)グリシン(N2HPG)、N−(4−カルボキシフェニル)グリシン(N4CPG)、N−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン(N4HPG)、N−(4−メトキシフェニル)グリシン(N4MPG)、N−(メトキシカルボニル)−N−フェニルグリシン(NMCNPG)、N−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−N−フェニルグリシン(NPG−GMA)等を挙げることができる。
【0057】
特に、本発明の歯科用硬化性組成物が過酸化物系重合開始剤を併用しなくても確実に硬化させ、さらに歯質に対する接着性を向上させるためには、下記の式(I)で表されるカルボニル基を有する芳香族系アミンである有機アミン化合物、または下記式(II)で表される芳香族系アミンである有機アミン化合物を使用することが好ましい。
【0058】
【化8】

【0059】
上記式(I)において、R1、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子、ア
ルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシル基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシル基、またはハロゲン原子を表す。R6は水素原子、アルキル基
、またはアリール基、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基、R9
水素原子または金属原子(ただし、遷移金属原子を除く)である。nはR9が水素である
場合には1であり、金属原子である場合には該金属原子の価数と同じ整数である。
【0060】
上記式(I)中の置換基R1、R2、R3、R4およびR5おけるアルキル基としては、炭
素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、ter
t−ペンチル基、tert−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4−デシルシクロヘキシル基などを挙げることができるが、これらに限定されるこのではない。
【0061】
上記式(I)中の置換基R1、R2、R3、R4およびR5おけるアリール基としては、ヘ
テロ原子を含んでよい炭素数4から18の単環または縮合多環アリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、1−アセナフチル基、2−フラニル基、2−ピロリル基、9−フルオレニル基、2−フリル基、2−チエニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、6−インドリル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、4−キノリニル基、4−イソキノリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−アクリジニル基、3−フェノチアジニル基、2−フェノキサチイニル基、3−フェノキサジニル基、3−チアントレニル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
上記式(I)中の置換基R1、R2、R3、R4およびR5おけるアリールオキシ基として
は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4から18の単環または縮合多環アリールオキシ基が挙げられ、具体的にはフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、5−ナフタセニルオキシ基、1−インデニルオキシ基、2−アズレニルオキシ基、1−アセナフチルオキシ基、9−フルオレニルオキシ基、2−フラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基、2−インドリルオキシ基、3−インドリルオキシ基、2−ベンゾフリルオキシ基、2−ベンゾチエニルオキシ基、2−カルバゾリルオキシ基、3−カルバゾリルオキシ基、4−カルバゾリルオキシ基、9−アクリジニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
上記式(I)中の置換基R1、R2、R3、R4およびR5おけるアルコキシル基としては
、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、2−テトラヒドロフラニルオキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
上記式(I)中の置換基R1、R2、R3、R4およびR5おけるアシル基としては、水素
原子が結合したカルボニル基、炭素数1から18の直鎖状、分鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族基が結合したカルボニル基、またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4から18の単環状、あるいは縮合多環状芳香族が結合したカルボニル基が挙げられ、それらは構造中に不飽和結合を有していてもよく、具体的にはホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、アクリロイル基、メタクロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、シンナモイル基、3−フロイル基、2−テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
上記式(I)中の置換基R1、R2、R3、R4およびR5おけるアシルオキシ基としては
、水素原子が結合したカルボニルオキシ基、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族基が結合したカルボニルオキシ基、またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4から18の単環状あるいは縮合多環状芳香族が結合したカルボニルオキシ基が挙げられ、具体的にはアセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ラウロイルオキシ基、ミリストイルオキシ基、パルミトイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、クロトノイルオキシ基、イソクロトノイルオキシ基、オレオイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、1−ナフトイルオキシ基、2−ナフトイルオキシ基、シンナモイルオキシ基、3−フロイルオキシ基、2−テノイルオキシ基、ニコチノイルオキシ基、イソニコチノイルオキシ基、9−アンスロイルオキシ基、5−ナフタセノイルオキシ基等を挙げることができるが、これらの限定されるものではない。
【0066】
上記式(I)中の置換基R1、R2、R3、R4およびR5におけるアルキル基、アリール
基、アシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アシルオキシ基はさらに他の置換基で置換されていてもよく、そのような他の置換基としては、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシル基、ポリエーテル基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等を挙げることができる。
【0067】
上記式(I)中の置換基R6におけるアルキル基としては、炭素数1から12の直鎖状
、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等を挙げることができる。
【0068】
上記式(I)中の置換基R6におけるアリール基としては、ヘテロ原子を含んでよい炭
素数4から18の単環または縮合多環アリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、1−アセナフチル基、2−フラニル基、2−ピロリル基、9−フルオレニル基、2−フリル基、2−チエニル基、2−インドリル基、3−インドリル基、6−インドリル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、4−キノリニル基、4−イソキノリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−アクリジニル基、3−フェノチアジニル基、2−フェノキサチイニル基、3−フェノキサジニル基、3−チアントレニル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、R1、R2、R3、R4およびR5における置換基
は隣接する置換基と結合して環状構造を形成してもよい。
【0069】
上記式(I)中の置換基R6におけるアルキル基、アリール基はさらに他の置換基で置
換されていてもよく、そのような他の置換基としては、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等を挙げることができる。
【0070】
上記式(I)中の置換基R7、R8におけるアルキル基としては、炭素数1から12の直
鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等を挙げることができる。
【0071】
上記式(I)中の置換基R9における金属原子としては、アルカリ金属原子、アルカリ
土類金属原子が好ましく、カリウムおよびナトリウムがより好ましい。
上記式(I)に含まれる有機アミン化合物として、例えば既に記載したNPG、NTG、NMePG、N4HPG、およびNPG−GMA等を挙げることができる。これらのうちではNPG、N4HPG、NMePGが好ましく用いられるが、その塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)類の方が室温保管中に変色を起こしにくく色調安定性に優れるため、N−フェニルグリシンカリウム(NPG−K)、N−フェニルグリシンナトリウム(NPG−Na)、N−メチル−N−フェニルグリシンカリウム(NMePG−K)、N−メチル−N−フェニルグリシンナトリウム(NMePG−Na)、N−(4−ヒドロキシフェニル)グリシンカリウム(N4HPG−K)およびN−(4−ヒドロキシフェニル)グリシンナトリウム(N4HPG−Na)が特に好ましく用いられる。
【0072】
尚、本発明で使用する有機アミン化合物のうちで、NPG等を使用する場合には、不純物含量が低いNPG等を使用することが好ましい。前記不純物とは、より具体的には塩を形成していない状態のNPGを室温下空気中に放置した際に発生する諸不純物であり、このような不純物は、本発明の効果を阻害する虞があり、その発生を抑制したり精度良く除去することが好ましい。即ち、このような不純物は、NPGあるいはその類縁化合物100重量%に対して、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下であることが好ましい。
【0073】
【化9】

【0074】
上記式(II)において、R10、R11、R12、R13およびR14はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシル基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシル基、またはハロゲン原子を表す。R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ原子を含む置換アルキル基である。
【0075】
上記式(II)中の置換基R10、R11、R12、R13およびR14おけるアルキル基、アリール基などの詳細は置換基R1からR5における基として例示したものと同一のものを挙げることができる。また、R10、R11、R12、R13およびR14における置換基は隣接する置換基と結合して環状構造形成してもよい。
【0076】
上記式(II)中の置換基R10、R11、R12、R13およびR14におけるアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アシルオキシ基はさらに他の置換基で置換されていてもよく、そのようは他の置換基としては、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、ア
ルコキシル基、ポリエーテル基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等を挙げることができる。
【0077】
上記式(II)中の置換基R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ原子を含む置換アルキル基である。例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基等を挙げることができる。また、このようなヘテロ原子を含む置換アルキル基としては、例えば、フロロメチル基、2−フロロメチル基等のハロゲン置換アルキル基、2−ヒドロキシエチル基等の水酸基置換アルキル基等を挙げることができる。
【0078】
上記式(II)に含まれる有機アミン化合物としては、N,N−ジメチルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N,N−ジエチルアミノ安息香酸(DEABA)およびそのアルキルエステルの他、N,N−ジプロピルアミノ安息香酸およびそのアルキルエス
テル、N−イソプロピルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル、N−イソプロピル−N−メチルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル等で代表される脂肪族アルキルアミノ安息香酸およびそのアルキルエステル類;DMABAd、N,N−ジエチルアミノ
ベンツアルデヒド、N,N−ジプロピルアミノベンツアルデヒド、N−イソプロピル−N
−メチルアミノベンツアルデヒド等で代表される脂肪族アルキルアミノベンツアルデヒド類;N,N−ジメチルアミノアセチルベンゼン、N,N−ジエチルアミノアセチルベンゼン、N,N−ジプロピルアミノアセチルベンゼン、N−イソプロピルアミノアセチルベンゼ
ン、N−イソプロピル−N−メチルアミノアセチルベンゼン等で代表される脂肪族アルキルアミノアセチルベンゼンおよび脂肪族アルキルアミノアシルベンゼン類等を挙げることができる。これらの有機アミン化合物は単独であるいは組み合わせて使用できる。
【0079】
本発明の歯科用硬化性組成物において、(C)遷移金属化合物(ただし、(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を除く)として、例えばフッ化マンガン、塩化鉄、フッ化コバルトおよび塩化銅等の遷移金属化合物が挙げられる。
【0080】
詳しくは、遷移金属化合物の遷移金属としては第一遷移系列、第二遷移系列、第三遷移系列、ランタニド系列およびアクチニド系列のいずれに属するものであってもよく、特に制限されない。第一遷移系列の中ではマンガン、鉄、コバルトおよび銅類の遷移金属化合物が好ましく、マンガン、鉄および銅類の遷移金属化合物がさらに好ましく用いられる。第一遷移系列以外では、セリウム類の遷移金属化合物が特に好ましく用いられる。
【0081】
尚、本発明で用いる遷移金属化合物に含まれる遷移金属の酸化数は特に制限されない。遷移金属の酸化数によって遷移金属化合物の性質は異なることは、例えば2価以下の鉄化合物や3価以上の鉄化合物はいずれも優れた重合活性を有するが、二価以下の鉄化合物は紫赤着色が小さい利点を有するものの空気中の酸素に対して安定性が小さいという短所を有する。一方、3価の鉄は空気中の酸素に対して安定であるという利点を有するものの紫赤着色が大きいという短所を有する。このように含まれる遷移金属の酸化数によって性質が異なるため、その性質の違いや本発明の使用用途等を考慮した上で遷移金属の酸化数を選択したり、重合速度を制御する上で遷移元素の酸化還元電位を考慮し選択してもよい。各種遷移元素の具体的な酸化還元電位は、例えばスカンジウム(−2.08E°/V)、チタン(−1.63E°/V、−0.37E°/V)、バナジウム(−1.13E°/V、−0.26E°/V)、クロム(−0.79E°/V、−0.42E°/V)、マンガン(−1.18E°/V、1.51E°/V)、鉄(−0.44E°/V、0.77E°/V)、コバルト(−0.29E°/V、1.92E°/V)、ニッケル(−0.23E°/V)、銅(0.15E°/V、0.34E°/V、0.52E°/V)および亜鉛(−0.76E°/V)等である。尚、E°は標準電極電位を示す。
【0082】
遷移金属化合物としては、遷移金属と無機酸あるいは有機酸との塩、酸化物、合金が挙げられる。ここでいう無機酸としては、塩酸、フッ酸、硫酸、硝酸、燐酸、炭酸等が挙げられる。中でも塩酸および硫酸が好ましい。また、ここでいう有機酸としては、有機基を有するカルボン酸、スルフィン酸、フェノール、エノール、チオフェノール、イミド、オキシム、芳香族スルホンアミド、第一級および第二級ニトロ化合物が挙げられる。中でもカルボン酸、エノールが好ましい。
【0083】
例えば遷移金属が3価以上の鉄である遷移金属化合物の具体例として、塩化鉄(III)、フッ化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、燐酸鉄(III)あるいはそれらの水和物である;モノカルボン酸の蟻酸鉄(III)、酢酸鉄(III)、プロピオン酸鉄(III)、アクリル酸鉄(III)、シュウ酸鉄(III)、クエン酸鉄(III)、グルコン酸鉄(III)、2−エチルヘキ酸鉄(III)、乳酸鉄(III)、ナフテン酸鉄(III)、ジカルボン酸のフマル酸鉄(III)、マレイン酸鉄(III)、ポリカルボン酸のポリアクリル酸鉄(III)、エノールのL−アスコルビン酸鉄(III)あるいはそれらの水和物;酸化鉄(III)、鉄(IV)酸塩、鉄(V)酸塩等が挙げられる。遷移金属が2価以下の鉄である遷移金属化合物の具体例として、塩化鉄(II)、フッ化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、2−エチルヘキサン鉄(II)、乳酸鉄(II)、ナフテン酸鉄(II)、ジカルボン酸のフマル酸鉄(II)、マレイン酸鉄(II)、ポリカルボン酸のアクリル酸鉄(II)、エノールのL−アスコルビン酸鉄(II)あるいはそれらの水和物;酸化鉄(II);鉄合金が挙げられる。
【0084】
遷移金属化合物はそのまま重合性単量体中に分散させたものであってもよいし、適当な媒体に溶解または分散させたものを重合性単量体中に添加してもよい。その媒体としては水、アルコール類等の親水性溶媒やアセトン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が遷移金属化合物を溶解させるには好適である。
【0085】
本発明の歯科用硬化性組成物において、(BC)遷移金属含有有機アミン化合物として、例えばN−フェニルグリシン鉄(III)が挙げられる。
【0086】
【化10】

【0087】
(ここで、R1〜R8は式(I)と同様であり、Mは遷移金属原子である。nは該遷移金属原子の価数と同じ整数である。)
式(III)で表される化合物としては、具体的にはR1〜R8が水素であり、MがFeであり、nが3の化合物を用いることが好ましい。
【0088】
本発明の第1の態様の歯科用硬化性組成物は、(A)成分が60〜99.99重量部、(B)成分と(BC)成分との合計が0.01〜30重量部(ただし、(B)成分が0〜30重量部であり、(BC)成分が0〜10重量部であり、(B)成分と(BC)成分とが同時に0重量部でない)、(C)成分と(BC)成分との合計が0.001〜10重量部(ただし、(C)成分が0〜10重量部であり、(BC)成分が0〜10重量部であり、(C)成分と(BC)成分とが同時に0重量部でない)の量で含有する。好ましくは、
(A)成分を60〜99.89重量部、(B)成分を0.01〜30重量部、(C)成分を0.001〜10重量部、(BC)成分を0重量部の量で含有する。より好ましくは(A)成分を75〜99.89重量部、(B)成分を0.05〜20重量部、(C)成分を0.005〜5重量部、(BC)成分を0重量部の量で含有する。さらに好ましくは、(A)成分を89〜99.89重量部、(B)成分を0.1〜10重量部、(C)成分を0.01〜1重量部の範囲、(BC)成分を0重量部の量で含有する。
尚、各成分の合計量((A)+(B)+(C)+(BC))は100重量部である。
【0089】
該歯科用硬化性組成物において、上記(A)、(B)、(C)および(BC)成分の何れにも属さない(X)成分を有することが可能であり、(A)、(B)、(C)および(BC)成分の合計を100重量部とした際に、前記(X)成分は好ましくは0〜400重量部である。かかる(X)成分としては例えば、以下に説明する(D)〜(H)成分がある。
【0090】
本発明の第2の態様の歯科用硬化性組成物は、上記第1の態様の歯科用硬化性組成物に加えて、(D)含硫黄還元性化合物を含有する。ここで使用される(D)含硫黄還元性化合物としては有機系含硫黄化合物や無機系含硫黄化合物から選ばれる少なくとも1種の含硫黄還元性化合物である。
【0091】
本発明の歯科用硬化性組成物において、(D)含硫黄還元性化合物として、有機系含硫黄化合物と無機系含硫黄化合物が挙げられる。有機系含硫黄化合物として、例えばベンゼンスルフィン酸、o−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸、ナフタリンスルフィン酸等の芳香族スルフィン酸またはその塩類等、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、クロルベンゼンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸等の芳香族スルホン酸またはその塩類等が挙げられる。このうちp−トルエンスルフィン酸塩が好ましく用いられ、特にp−トルエンスルフィン酸ナトリウムが好ましく用いられる。
【0092】
また、無機系含硫黄化合物として、例えば亜硫酸、重亜硫酸、メタ亜硫酸、メタ重亜硫酸、ピロ亜硫酸、チオ硫酸、1亜2チオン酸、1,2チオン酸、次亜硫酸、ヒドロ亜硫酸
およびこれらの塩が挙げられる。このうち亜硫酸塩が好ましく用いられ、特に亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムが好ましい。これらの有機系および無機系含硫黄化合物は単独で、もしくは組み合わせて使用できる。
【0093】
本発明の第2の態様の歯科用硬化性組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(BC)成分の合計100重量部に対して、(D)成分が好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.07〜1重量部の範囲内の量で含有する。
【0094】
本発明の第3の態様の歯科用硬化性組成物は、上記第1の態様または第2の態様の歯科用硬化性組成物に加えて、さらに(E)ヒドロキシ酸を配合する。ここで使用される(E)ヒドロキシ酸としては、水酸基およびカルボキシル基を含有する化合物であれば特に制限されないがカルボン酸基のα位に水酸基を有する化合物を使用するのが好ましい。例えば、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、グルコン酸、α−オキシイソ酢酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等が挙げられる。これらのヒドロキシ酸化合物は単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用しても何ら差し支えない。
【0095】
本発明の第3の態様の歯科用硬化性組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(BC)成分の合計100重量部に対して、(E)成分が好ましくは0.005〜20重量部、より好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.05〜5重量部の範囲内の量で含有されている。
【0096】
本発明の第4の態様の歯科用硬化性組成物は、上記第1の態様、第2の態様または第3の態様の歯科用硬化性組成物に加えて、さらに(F)水系溶媒を配合する。
ここで使用される(F)水系溶媒としては、水単独、または水と、水と混合し得る有機溶媒とを混合した溶媒である。ここで使用できる水としては、例えば蒸留水、イオン交換水等を挙げることができる、また、水系溶媒として生理食塩水を使用することもできる。このうち、蒸留水、イオン交換水が好ましく用いられる。さらに上記の水と混合し得る有機溶媒として、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒を挙げることができる。歯髄への為害性や刺激性を考慮して、これらの有機溶剤のうち、エタノールやアセトンを用いることが特に好ましい。
【0097】
本発明の第4の態様の歯科用硬化性組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(BC)成分の合計100重量部に対して、(F)成分が好ましくは0.1〜70重量部、より好ましくは0.3〜40重量部、さらに好ましくは0.5〜20重量部の範囲内の量で含有されている。
【0098】
なお、(F)成分の比率が高いとプライマー性が強く発現される傾向にあり、実際、そのような場合にはプライマーとしても充分実用可能である。
本発明の第5の態様の歯科用硬化性組成物は、上記第1の態様、第2の態様、第3の態様または第4の態様の歯科用硬化性組成物に加えて、さらに(G)充填材を配合する。本発明で使用する(G)充填材としては、無機充填材、有機充填材および有機複合充填材から選択される少なくとも1種の充填材である。本発明に使用される充填剤の形状としては、球状体であっても不定形体であってもよく、粒子系と共に適宜選択される。また、細孔を有した多孔質構造や中空構造を有する充填材であっても問題なく使用できる。
【0099】
本発明の組成物に(G)成分として含有される無機充填材は、種類としても公知のものが使用できる。例えば、周期律第I、II、III、IV族、遷移金属およびそれらの酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、オキソ酸塩、燐酸塩、珪酸塩およびこれらの混合物、複合塩等が挙げられる。より詳しくは、二酸化珪素、ストロンチュウムガラス、ランタンガラス、バリュウムガラス等のガラス粉末、石英粉末、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、バリウム塩、ガラスビーズ、ガラス繊維、フッ化バリウム、鉛塩、タルクを含有するガラスフィラー、コロイダルシリカ、シリカゲル、ジルコニウム酸化物、スズ酸化物、炭素繊維、ハイドロタルサイト化合物類、その他のセラミックス粉末等である。無機充填材はそのまま使用しても差し支えないが、(A)重合性単量体と無機充填材との間に親和性を高めてセメント中における無機充填材の配合量を向上させるためにも、もしくは性能の良い有機複合充填材を作製するために無機充填材を疎水化するのが好ましい。疎水化のための表面処理剤としては、公知のものが使用でき、例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランシリルイソシアネ−ト、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン等のジアルキルジクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン等のシランカップリング剤、または相当するジルコニウムカップリング剤、チタニウムカップリング剤等を挙げることができる。表面処理方法としては、ボ−ルミル、V−ブレンダ−、ヘンシェルミキサ−等で表面処理剤単独、表面処理剤をエタノ−ル水溶液等の有機溶剤と水とが均一に混合
した有機溶剤含有の水溶液で希釈したものを無機充填材に添加して混合した後、50℃〜150℃で数分間〜数時間熱処理する方法(乾式法)、無機充填材をエタノ−ル等の有機溶剤、またはエタノール水溶液等の有機溶剤と水とが均一に混合した溶液、もしくは水に加えてスラリ−状にし、上記の表面処理剤を加えて室温〜還流温度で数分間〜数時間処理し溶媒をデカンテーションやエバポレーション等公知の方法で除去した後、50℃〜150℃で数時間熱処理する方法(湿式、スラリ−法)、高温の無機充填材に表面処理剤をそのまま、または上記の水溶液を直接噴霧する方法(スプレ−法)を挙げることができ、各シラン処理剤や無機充填材の性状を加味した方法で適宜処理すればよい。勿論、市販品が既に表面処理されている無機充填材はそのまま使用しても良いし、上記の方法等でさらに表面処理を追加してもよい。尚、上述のエタノール水溶液は中性であっても酸性であってもよい。このような表面処理剤は、無機充填材100重量部に対して0.1〜60重量部
が好ましく、さらに好ましくは0.1〜45重量部であり、0.1〜30重量部が特に好ましい。
【0100】
本発明において、(G)充填材として使用される有機充填材としては、重合体の粉砕もしくは分散重合によって得られた粉末重合体のフィラーや架橋剤を含む重合性単量体を重合させた後粉砕して得られたフィラーを挙げることができる。ここで、使用できる充填材の原料となる重合性体としては特に限定はないが、(A)成分で例示した重合性単量体の単独重合体もしくは共重合体を好ましいものとして挙げることができる。例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル(PBMA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレングリコール(PEG)やポリプロピレングリコール(PPG)、ポリビニルアルコール(PVA)等を挙げることができる。
【0101】
本発明において、(G)充填材として使用される有機複合充填材としては、前述した無機充填材表面を重合性単量体で重合して被覆した後、粉砕して得られる充填材を挙げることができる。具体的には、無機充填材のうちの微粉末シリカまたは酸化ジルコニウム等を(A)成分の重合性単量体にて重合被覆し、得られた重合体を粉砕したものが挙げられる。好適に用いられる有機複合充填材としてトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPT)を主成分とする重合性単量体で重合被覆し、得られた重合体を粉砕した充填材(TMPT−f)を挙げることができる。これらの充填材は単独で、もしくは組み合わせて使用できる。
【0102】
また、(G)充填材の平均粒子径は本発明の歯科用硬化性組成物に適度な流動性を付与させるために、好ましくは0.001〜100μm、より好ましくは0.005〜50μm、さらに好ましくは0.01〜30μm、特に好ましくは0.01〜10μmの範囲である。また、流動性は充填材の形状によっても調整することができ、球形状の充填材がより好ましく用いられる。さらに賦形性を付与するためには多孔質状である充填材を配合することがより好ましい。
【0103】
本発明の第5の態様の歯科用硬化性組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(BC)成分、必要により(D)成分、(E)成分、(F)成分を加えて、さらに(G)充填材を配合することにより得られる。ここで(G)充填材の配合量は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(BC)成分の合計100重量部に対して、1〜400重量部、好ましくは50〜250重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0104】
上記に示した第1〜第5の態様の歯科用硬化性組成物はいずれも光重合開始剤が配合されていなくても驚くべきことに可視光照射により光重合が生起する特徴を有している。尚、本歯科用硬化性組成物は先述のとおり光重合開始剤を配合しなくとも可視光照射により光重合が生起するが、過酸化物を配合しなくとも重合が生起する特徴も有している。迅速
に重合を実施したい場合には重合開始剤を本発明の効果が損なわない範囲で含有させることができる。
【0105】
本発明の第6の態様の歯科用硬化性組成物は、上記第1〜5の態様の歯科用硬化性組成物に加えて、さらに前記(A)〜(G)成分以外の成分から選ばれる(H)重合開始剤を配合してなる、本発明の第6の組成物に配合される(H)成分は重合開始剤であり、かかる重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤として公知の光重合開始剤を挙げることができる。
【0106】
本発明において、(H)重合開始剤として使用される光重合開始剤は、その化合物単独で、または他の化合物との共存下で光によって励起し、本発明の歯科用硬化性組成物を硬化せしめる役割を有する。例えば、α−ケトカルボニル化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物等を挙げることができる。
【0107】
α−ケトカルボニルとして、α−ジケトン、α−ケトアルデヒド、α−ケトカルボン酸、α−ケトカルボン酸エステル等を挙げることができる。さらに具体的には、ジアセチル、2,3−ペンタジオン、2,3−ヘキサジオン、ベンジル、4,4'−ジメトキシベン
ジル、4,4'−ジエトキシベンジル、4,4'−オキシベンジル、4,4'−ジクロルベ
ンジル、4−ニトロベンジル、α−ナフチル、β−ナフチル、カンファーキノン、カンファーキノンスルホン酸、カンファーキノンカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジオン等のα−ジケトン;メチルグリオキザール、フェニルグリオキザール等のα−ケトアルデヒド;ピルビン酸、ベンゾイル蟻酸、フェニルピルビン酸、ピルビン酸メチル、ベンゾイル蟻酸エチル、フェニルピルビン酸メチル、フェニルピルビン酸ブチル等を挙げることができる。これらのα−ジケトンカルボニル化合物のうちで安定性の面からα−ジケトンを使用することが好ましい。α−ジケトンのうちではジアセチル、ベンジル、カンファーキノンが好ましい。
【0108】
一方、アシルホスフィンオキシド化合物として例えば、ベンゾイルジメトキシホスフィンオキシド、ベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシド等を挙げることができる。α−ケトカルボニル化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物は、単独でまたは組み合わせて使用できる。組み合わせて使用する場合には、特にカンファーキノン、ジフェニルトリメチルベンゾイルフォスフィンオキシドの組合せが好ましく使用される。
【0109】
本発明において、(H)重合開始剤として使用される過酸化物としては、有機過酸化物や無機過酸化物を挙げることができる。例えば、ジアセチルペルオキシド、ジプロピルペルオキシド、ジブチルペルオキシド、ジカプリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)、p,p'−ジクロルベンゾイルペルオキシド、p,p'−ジメトキシベンゾイルペルオキシド、p,p'−ジメチルベンゾイルペルオキシド、p,
p'−ジニトロジベンゾイルペルオキシド等の有機過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸
カリウム、過硫酸アンモニウム、塩素酸カリウム、臭素酸カリウムおよび過リン酸カリウム等の無機過酸化物を挙げることができる。
さらに、有機ホウ素化合物、またはこれを含有してなる組成物を挙げることができる。有機ホウ素化合物として、例えばトリエチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリブチルホウ素、トリ−sec−ブチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリペンチルホウ素、トリヘキシルホウ素、トリオクチルホウ素、トリデシルホウ素、トリドデシルホウ素、トリシクロペンチルホウ素、トリシクロヘキシルホウ素等のトリアルキルホウ素類;ブトキシジブチルホウ素等のアルコキシアルキルホウ素類;ブチルジシクロヘキシルボラン、ジイソアミルボラン、9−ボラビシクロ[3,3,1]ノナン等のジアル
キルボラン等を挙げることができ、上記化合物の一部が部分的に酸化されていてもよい。さらに、これらの化合物は組み合わせて使用することができる。これらの中ではトリブチルホウ素、あるいは部分酸化したトリブチルホウ素、例えば、トリブチルホウ素1モルに対してO2を0.3〜0.9モル付加させたものが好ましく用いられる。また、有機ホウ
素化合物の他に、非プロトン性溶媒および/または有機ホウ素化合物に不活性な液状もしくは固体状の有機オリゴマーまたはポリマーを含有する組成物を使用することができる。
【0110】
本発明の第6の歯科用硬化性組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(BC)成分、必要により(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分を加えて、さらに(H)重合開始剤を配合することにより得られる。ここで(H)重合開始剤の配合量は、光重合開始剤の場合には、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分および(BC)成分合計100重量部に対して、0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、さらに好ましくは0.01〜3重量部の範囲内の量で含有されている。
【0111】
一方、過酸化物系重合開始剤の場合には、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分合計100重量部に対して、0.0001〜0.1重量部、好ましくは0.0005〜0.07重量部、さらに好ましくは0.001〜0.05重量部の範囲内の量で含有されている。但し、2ペースト状組成物の形態において2つのペーストが混合された初期時の機械的強度が要求されるなどの場合、実質上過酸化物系重合開始剤が含有されることが好ましい場合もあり得、その際には、上記光重合開始剤の好適な配合量と同様の量にて配合されることがある。(A)成分、(B)成分、(C)成分、(BC)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分および(G)成分の相対的な割合は第1、第2、第3、第4および第5の歯科用硬化性組成物におけると同じであると理解されるべきである。
【0112】
本発明の歯科用硬化性組成物は、(G)成分を使用することによって容易に粘度を変化させることができ、(A)成分から(G)成分を予め混合して歯面に適用することができる。
【0113】
本発明には、上述の歯科用硬化性組成物を得るための歯科用硬化性組成物用キットを含む。本発明の歯科用硬化性組成物は、長期にわたる保存によって形態や性能が変化し、本発明の効果を損なう虞がある。このため、特定の組み合わせで分割して保存した歯科用硬化性組成物キットを用いて、歯科用硬化性組成物を使用する前に該キットに含まれる各成分を混合することにより、該キットより歯科用硬化性組成物を得ることが好ましい。
【0114】
当然、これらを分割して保存される組成物を必要とされる種類全てをそれぞれ全量(或いは1ドーズずつ)にて混合すれば、各成分は前記重量部の組成比率となるものである。本発明の歯科用硬化性組成物用キットとしては、少なくとも(A)成分における分子内に少なくとも1つ酸性基を有する化合物と(B)有機アミン化合物および/または(D)含硫黄還元性化合物、(C)遷移金属化合物と(B)有機アミン化合物および/または(D)含硫黄還元性化合物とは互いに隔離されて、それぞれ独立に容器A、容器Bに収容されていることが好ましい。(B)有機アミン化合物および(D)含硫黄還元性化合物は、いずれも塩基にて塩を形成している方が安定性がよいが、(A)成分における分子内に少なくとも1つ酸性基を有する化合物と共存すると、塩基がプロトンに置換されて酸に戻り不安定となる虞があることから、互いに隔離されていることが好ましい。また、容器Aおよび/または該容器Bに微量の(H)重合開始剤が有されることも好ましい。
【0115】
(BC)成分は、(A)成分における分子内に少なくとも1つの酸性基を有する化合物と隔離されて、別の容器に収容されていることが好ましい。また、(BC)成分の収容形態としては、粉末組成物として含有されるか、(A)成分における分子内に酸性基を有しない化合物と配合された液体もしくはペースト状にて含有されることが好ましい。
【0116】
さらに具体的な組み合わせを以下に示す。
(A)重合性単量体が、酸性基を有する重合性単量体を含み、該酸性基を有する重合性単量体が容器Aに収容されており、(B)有機アミン化合物が容器Bに収容された歯科用硬化性組成物用キットが挙げられる。
【0117】
また、容器Aには、上記(A)成分と(C)成分を有し、必要に応じて、(E)成分、(F)成分、(H)成分が収容され、該容器Bには、上記(B)成分と必要に応じて(D)成分、(G)成分が収容される。例えば、容器Aには(A)成分と(C)成分との混合物、(A)成分と(C)成分と(E)成分との混合物、もしくは(A)成分と(C)成分と(E)成分と(F)成分との混合物が収容され、容器Bには(B)成分と(G)成分との混合物、もしくは(B)成分と(D)成分と(G)成分との混合物が収容された歯科用硬化性組成物用キットが挙げられる。該容器に収容される形態としては、液体として収容されてもよく、粉材として収容されてもよい。
【0118】
また、容器Aに(A)成分と(C)成分と(G)成分との混合物(必要に応じて(E)成分および/または(F)成分をさらに含んでいてもよい)、もしくは(A)成分と(C)成分と(G)成分と(H)成分との混合物(必要に応じて(E)成分および/または(F)成分をさらに含んでいてもよい)がペーストの形態で収容され、容器Bに(A)成分(酸性基を有する重合性単量体を除く)と(B)成分と(G)成分との混合物がペーストの形態で収容された歯科用硬化性組成物用キットであってもよい。
【0119】
勿論、本発明の歯科用硬化性組成物用キットはこれらに限定されるものではない。これらの混合物は、容器A、容器Bに収容され、キットとして提供することができる。なお、さらに容器C、や容器Dを設けてもよい。
【0120】
また、(A)重合性単量体と(C)遷移金属化合物とを容器Aに収容し、上記(B)成分の一部もしくは全部、(D)成分の一部もしくは全部、または(B)成分と(D)成分との一部もしくは全部を予め歯科用硬化性組成物を歯面に塗布する際に使用する治具に含有させて、使用直前に(A)成分、(C)成分、必要に応じて(E)成分、(F)成分、(G)成分と治具とを接触させて歯科用硬化性組成物をその場で調製し、そのまま歯面に塗布することもできる。歯面に塗布する治具としては特に制限はないが、主に筆、繊維球または布、スポンジ球、スポンジ片、練和紙、または混合皿を挙げることができ、これらの治具を単独でまたは組み合わせて使用することができる。また、使用する治具に(B)成分および/または(D)成分を含有させる際に、必要に応じてそれらの成分を治具に吸着もしくは固着させるための吸着剤や包埋剤を使用することができる。
【0121】
また、本発明の歯科用硬化性組成物が(A)成分、(B)成分、(C)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分および(H)成分の混合物からなる1ペースト状組成物の場合には、保存安定性を確保するために組成物中に1〜5000ppmの範囲内で公知の重合禁止剤を含有させることができる。かかる重合禁止剤としては特に制限はないが、一般にラジカル重合単量体の重合禁止剤や連載移動剤等が好適であり、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルおよび2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4−t−ブチルカテコール等が使用できる。かかる重合禁止剤は、本発明の硬化を損なわない範囲で使用することができ、10〜2000ppmの範囲で使用するのが好ましい。
【0122】
本発明の歯科用硬化性組成物には上記で示した成分以外にも本発明の効果を損なわない範囲で染料、顔料、増粘剤、有機酸、無機酸、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤および香料等を添加することが可能である。
【実施例】
【0123】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明の範囲がこれら実施例に限定されると解釈されるべきではない。
<硬化時間の測定>
本発明の組成物をアルミパン内に約0.1g充填し、予め37℃に一定にした示差走査熱量計DSC22(セイコーインスツル株式会社製)にセットし、最大発熱時のピーク時間を硬化時間と定義して記録した。
【0124】
<象牙質接着強さの測定>
新鮮なウシ下額前歯を抜去し、水中で凍結保存したものを使用した。解凍した牛歯の頬側面を注水下にて、回転式研磨機ECOMET(BUEHLER社製)を使って指圧下で耐水研磨紙#180番まで研削し、平坦な接着用象牙質面を得た。削りだした象牙質接着面を十分に水洗して気銃にて水分を除去し、直径4.8mmの円孔をあけた粘着テープを貼り付けて接着面積を規定した。次に、歯面処理を行わずに本発明の組成物を充填し、ポリエステルフィルムを介して平坦なガラス板にて圧接し、37℃、湿度100%の恒温槽に遮光した状態にて30分間静置させた。ポリエステルフィルムを除去して硬化面にアクリル棒をスーパーボンドC&B(サンメディカル株式会社製)にて植立した。その後、接
着したサンプルを5〜55℃における5000回のサーマルサイクル試験(以下、TC5000)を実施した後、引張接着強さ(クロスヘッドスピード2mm/min)を測定した。
【0125】
<金属接着強さの測定>
1cm角、厚さ約2mmの金銀パラジウム合金板をサンドブラスド、洗浄、乾燥した後、直径4.8mmの円孔をあけた両面テープで接着面積を規定した。金属表面処理剤V−プライマー(サンメディカル株式会社製)で処理し、上記象牙質接着強さの測定と同様に本発明の組成物を充填し、ポリエステルフィルムを介して平坦なガラス板にて圧接し、37℃、湿度100%の恒温槽に遮光した状態にて30分間静置させた。ポリエステルフィルムを除去して硬化面にアクリル棒をスーパーボンドC&Bにて植立した。その後、接着
したサンプルを37℃下の水中に24時間浸漬後、引張接着強さ(クロスヘッドスピード2mm/min)を測定した。
【0126】
<辺縁封鎖性の評価>
水中で冷蔵保存したヒト上顎小臼歯にダイヤモンドバーを用いて外側性窩洞を形成し、シリコン印象材にて歯冠部分の印象を採取しレジンクラウンを作製した。レジンクラウン内面をポーセレンライナー(サンメディカル株式会社製)で処理した後、本発明の組成物を用いて外側性窩洞に合着させ、37℃、湿度100%の恒温槽に遮光した状態にて30分間静置させた。その後、合着したサンプルにTC5000を実施した後、5%メチレンブルー水溶液に24時間浸漬させ、水洗、乾燥した。次に近遠心方向と歯軸方向に対して平行に二分割し、レジンクラウンおよび組成物の硬化体を除去し、気銃にて乾燥した状態で色素の浸入度合を評価した。割断した外側性窩洞の全面積で色素浸入した面積を除した数値を、小数点第二位以下を四捨五入して処理し以下の通りに分類した。数値が低いもの程、辺縁封鎖性に優れる。
◎:0〜0.1、
○:0.2〜0.4、
△:0.5〜0.7、
×:0.8〜1
<光重合率の算出>
FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)にて光照射前後の本発明の組成物を全反射法(ATR法)にて測定した。1640cm-1付近のC=C由来のピークと、1710cm-1付近のC=O由来のピークの高さ比から重合率を算出した。以下にその算出方法を示
す。
重合率(%)=(1−Ra/Rb)×100
Ra:光重合後のピーク高さ比(C=C/C=O)
Rb:光重合前のピーク高さ比(C=C/C=O)
なお、以下に示す実施例および比較例において記載した略号の意味は次の通りである。4−MET:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸
4−META:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物
P−2M:ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
A−9300:エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート
GDMA:グリセリンジメタクリレート
2.6E:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン
A−DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
NPG:N−フェニルグリシン
NPG−K:N−フェニルグリシンカリウム
NPG−Na:N−フェニルグリシンナトリウム
NPG−Fe:N−フェニルグリシン鉄(III)
N4HPG:N−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン
PTSNa:p−トルエンスルフィン酸ナトリウム
CQ:カンファーキノン
DTMPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルポスフィンオキシド
F−Al23:フルオロアルミノシリケートガラス
TMPT−f:有機質複合フィラー
MgO:酸化マグネシウム
ZrO2:酸化ジルコニウム
SiO2:微粒子シリカ
DEPT:ジエタノールp−トルイジン
DMPT:ジメチルp−トルイジン
Na228:過硫酸ナトリウム
[実施例1〜16(実施例5は除く)]
本発明の歯科用硬化性組成物(実施例5を除いた実施例1〜16)として、表1〜5に記載の成分(A)〜(H)を各配合比になるように採取し、組成物を調製した。なお、表1において、秤量値に基づいて、有効桁に納まるように四捨五入して重量比を算出しているので、当該重量比の値はその分の誤差を有する。これらの本組成物の硬化時間、象牙質接着強さ、金属接着強さおよび辺縁封鎖性試験をそれぞれ実施した結果、硬化時間は何れも2分〜10分であった。象牙質接着強さは何れも5MPa以上で組成物硬化物の凝集破壊が主であった。また、金属接着強さは何れも5MPa以上、辺縁封鎖性試験は0〜0.4の範囲であり、良好な結果を示した。
【0127】
[実施例5]
本発明の歯科用硬化性組成物として、表1に記載の成分である(A)重合性単量体:4−METを9.3g(24.3重量部)、HEMAを16.5g(43.0重量部)及びA−9300を11.2g(29.2重量部)、(B)有機アミン化合物:NPG−Naを1.25g(3.3重量部)、(C)遷移金属化合物:塩化鉄(III)を0.08g(0.2重量部、(E)ヒドロキシ酸化合物:クエン酸を0.04g(0.1重量部)、(F)水系溶媒:水を0.42g(1.1重量部)、(G)充填材:フルオロアルミノシリケートガラスを55.0g(143.5重量部)、有機質複合フィラー(TMPT−f)を5.0g(13.0重量部)、酸化マグネシウムを1.2g(3.1重量部)、(H
)重合開始剤:過硫酸ナトリウムを0.01g(0.03重量部)の混合比になるように採取し、組成物を調製した。尚、(D)〜(H)成分の重量部表示は(A)〜(C)成分の合計100重量部に対した場合におけるものである。
【0128】
本組成物の硬化時間は2.1分、象牙質接着強さは8.8MPa、金属接着強さは8.1MPa、辺縁封鎖性は0〜0.1で何れも良好な結果を示した。
[比較例1〜4]
表6に記載の成分(A)〜(G)を各配合比になるように採取し各組成物を調製した。これらの組成物を用いて硬化時間、象牙質接着強さ、金属接着強さおよび辺縁封鎖性試験をそれぞれ実施した。DSCによる硬化時間の測定では、2時間連続測定を実施したが何れも発熱ピークが確認されなかった。また、象牙質および金属への接着試験では何れも引張り試験を実施する前に脱落した。辺縁封鎖性は何れも0.8〜1の範囲であった。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【0133】
【表5】

【0134】
【表6】

【0135】
表1〜6に示したように、本発明の歯科用硬化性組成物は重合開始剤として過酸化物を含有しない場合でも重合することが可能で、湿潤環境下でも水による重合阻害を受けず、歯面処理を行っていない歯牙に対して簡単な操作手順にて優れた接着性、接着界面に隙間を生じさせない特性を有し機械的性質に優れ、合着用セメントとして非常に有用であるばかりでなく、歯科医療に大いに貢献できるものである。
【0136】
[実施例17]
上記の実施例1の歯科用硬化性組成物と同組成のものを十分に練和し、FI−IR測定検出部に所定量置き、測定を行った。はじめに光照射を行わない場合におけるスペクトルを得た後、ピーク高さ比(C=C/C=O)を算出した。次に可視光照射器を用いて光照射を3分間行った場合におけるスペクトルを得た後、ピーク高さ比(C=C/C=O)を算出した。上述の計算方法から光重合率を算出した結果、光重合率は40%であった。
【0137】
[実施例18]
上記の実施例12を用いて実施例16と同様の方法にて光重合率を算出した結果、光重合率は66%であった。
【0138】
[実施例19]
上記の実施例14を用いて実施例16と同様の方法にて光重合率を算出した結果、光重合率は51%であった。
【0139】
[比較例5]
上記の比較例3を用いて実施例17と同様の方法にて光重合率を算出した結果、光重合率は0%であった。
【0140】
【表7】

【0141】
【表8】

【0142】
表7および8より明らかなように、本発明の歯科用硬化性組成物はNPG、NPG−NaおよびN4HPG等を用いることにより、光重合開始剤を用いることなく重合を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の歯科用硬化性組成物は、上述のように過酸化物系の重合開始剤を使用することなく重合させることが可能であり、しかも光重合開始剤を含有せずとも光重合特性を有する。さらに前処理を行っていない歯牙に対しても簡便な操作で優れた歯質接着性、辺縁封鎖性、接着耐久性を有し、金属に対しても優れた接着性を有することから、極めて効果的に歯科治療を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性単量体、
(B)有機アミン化合物(ただし、(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を除く)、
(C)遷移金属化合物(ただし、(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を除く)、
および
(BC)遷移金属含有有機アミン化合物を含有する、
歯科用硬化性組成物であって、
(A)成分が60〜99.99重量部、
(B)成分と(BC)成分との合計が0.01〜30重量部(ただし、(B)成分が0〜30重量部であり、(BC)成分が0〜10重量部であり、(B)成分と(BC)成分とが同時に0重量部でない)、
(C)成分と(BC)成分との合計が0.001〜10重量部(ただし、(C)成分が0〜10重量部であり、(BC)成分が0〜10重量部であり、(C)成分と(BC)成分とが同時に0重量部でない)の量で含有することを特徴とする歯科用硬化性組成物(ただし、上記(A)、(B)、(C)および(BC)成分の合計を100重量部とする)。
【請求項2】
上記(A)重合性単量体が、カルボン酸基、燐酸基、チオ燐酸基、スルホン酸基、ピロ燐酸基およびスルフィン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸性基を有する重合性単量体を含むことを特徴とする請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項3】
上記(A)重合性単量体が、少なくとも1個の水酸基を有する重合性単量体を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項4】
上記(A)重合性単量体が、エチレン性不飽和結合を3個以上有する重合性多官能(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項5】
上記(A)重合性単量体が、トリアジン環誘導体を有する重合性単量体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項6】
上記(A)重合性単量体が、ジペンタエリスリトール系重合性単量体を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項7】
上記(B)有機アミン化合物が、下記式(I)および/または(II)で表されるアミン化合物を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【化1】

(ここで、R1、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリ
ール基、アリールオキシ基、アルコキシル基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシル基、またはハロゲン原子を表す。R6は水素原子、アルキル基、またはアリー
ル基、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基、R9は水素原子または
金属原子(ただし、遷移金属原子を除く)である。nはR9が水素である場合には1であ
り、金属原子である場合には該金属原子の価数と同じ整数である。)
【化2】

(ここで、R10、R11、R12、R13およびR14はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アルコキシル基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシル基、またはハロゲン原子を表す。R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ原子を含む置換アルキル基である)。
【請求項8】
上記歯科用硬化性化合物が、さらに、(D)含硫黄還元性化合物を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項9】
上記(D)成分の含有量が、0.01〜10重量部の量で含有されている(ただし、(A)、(B)、(C)および(BC)成分の合計を100重量部とする)ことを特徴とする請求項8記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項10】
上記歯科用硬化性化合物が、さらに、(E)ヒドロキシ酸化合物を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項11】
上記(E)ヒドロキシ酸化合物が0.005〜20重量部の量で含有されている(ただし、(A)、(B)、(C)および(BC)成分の合計を100重量部とする)ことを特徴とする請求項10記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項12】
上記歯科用硬化性組成物が、さらに(F)水系溶媒を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項13】
上記(F)水系溶媒が0.1〜70重量部の量で含有されている(ただし、(A)、(B)、(C)および(BC)成分の合計を100重量部とする)ことを特徴とする請求項12記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項14】
上記歯科用硬化性化合物が、さらに(G)無機充填材、有機充填材および有機質複合充填材から選択される少なくとも1種の充填材をさらに含有することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項15】
上記(G)無機充填材、有機充填材および有機質複合充填材から選択される少なくとも1種の充填材が1〜400重量部の量で含有されている(ただし、(A)、(B)、(C)および(BC)成分の合計を100重量部とする)ことを特徴とする請求項14記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項16】
上記請求項1〜15のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物に可視光を照射することにより得られる硬化物。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物を得るためのキットであって、(A)重合性単量体が、酸性基を有する重合性単量体を含み、
該酸性基を有する重合性単量体が容器Aに収容されており、
(B)有機アミン化合物が容器Bに収容されていることを特徴とする歯科用硬化性組成物
用キット。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物を得るためのキットであって、(A)重合性単量体と(C)遷移金属化合物とが容器Aに収容されており、
(B)有機アミン化合物が容器Bに収容されていることを特徴とする歯科用硬化性組成物用キット。
【請求項19】
前記容器Aおよび/または容器Bに光重合開始剤が収容されていることを特徴とする請求項17または18に記載の歯科用硬化性組成物用キット。
【請求項20】
(A)重合性単量体が酸性基を有しない重合性単量体を含み、
該酸性基を有しない重合性単量体が、容器Aおよび/または容器Bに収容されていることを特徴とする請求項17または19に記載の歯科用硬化性組成物用キット。
【請求項21】
(A)重合性単量体と(C)遷移金属化合物とが容器Aに収容されており、
(B)有機アミン化合物が容器Bに粉末組成物として収容されていることを特徴とする請求項18に記載の歯科用硬化性組成物用キット。
【請求項22】
請求項1〜15のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物を得るためのキットであって、
(A)重合性単量体と(C)遷移金属化合物とが容器Aに収容されており、
上記(B)成分の一部もしくは全部、(D)成分の一部もしくは全部、または(B)成分と(D)成分との一部もしくは全部が、使用する治具に予め含有されていることを特徴とする記載の歯科用硬化性組成物用キット。
【請求項23】
2つ以上のペースト状組成物を有する形態であることを特徴とする請求項17〜22のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物用キット。

【公開番号】特開2008−308418(P2008−308418A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156171(P2007−156171)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(592093578)サンメディカル株式会社 (61)
【Fターム(参考)】