説明

歯科用硬化性組成物及びその硬化物

【課題】本発明の目的は、重合収縮が小さい歯科用硬化性組成物およびその硬化物を提供することにある。
【解決手段】重合性単量体(A)、金属酸化物多孔質粒子(B)、及び、重合開始剤および/または増感剤(C)を含み、金属酸化物多孔質粒子(B)は平均細孔径が10〜300nmであり、比表面積が80m/g以上であり、かつ空孔率が50体積%以上であることを特徴とする歯科用硬化性組成物、その硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、重合収縮がない歯科用組成物(低重合収縮性歯科用組成物)、低重合収縮性硬化物に関する。
さらに詳しくは、本発明は、重合収縮がない、または小さく、重合収縮に由来する問題の発生を低減することができる、歯科用途に適した歯科用組成物(低重合収縮性歯科用組成物)、低重合収縮性硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
齲蝕により損傷を受けた歯牙の修復には、歯科用材料(組成物)が広く使用されている。例えば、(メタ)アクリレート基含有重合性化合物を含む歯科用組成物が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フルオレン骨格に(メタ)アクリル酸エステル基を有する重合性物質が開示され、この重合性物質は、硬化性が良好で、かつ、その重合体が歯科材料に求められる機械的特性を満たすことが報告されている(特許文献1)。
【0004】
このような従来の歯科用材料の短所の一つとしては、歯科用材料が、重合(硬化)する際に、一般的に収縮することが挙げられる。歯科用材料の重合反応により、モノマーが、化学的に結合し、高分子となるために、より規則正しく配向し、分子が相互により密に詰められやすくなる。そのため、通常、分子がより規則正しいコンフィグレーションを構成し、高分子材料の体積は減少する。このような、重合によって生じる高分子材料の体積の減少は、「重合収縮」として知られている。この重合収縮は、歯科用途においても、多数の問題を引き起こし得る。例えば、歯科用材料を重合して、歯科材料と歯牙構造とを接着させたとしても、重合収縮によって、歯科用材料と歯牙構造との間に間隙が生じてしまう場合がある。これは術後性の過敏症、マイクロリーケージ、エナメル質辺縁亀裂(ホワイトクラック)、および二次的齲蝕等を引き起こし、修復した歯牙にダメージを与え寿命を縮めることが知られている。このため、重合収縮がない、または小さく、重合収縮に由来する問題の発生を低減することができる歯科用材料が望まれている。
【0005】
(メタ)アクリレート基含有重合性化合物の重合収縮を補うため、100質量部の重合性単量体、100〜400質量部の無機フィラー、及び有効量の光重合開始剤を含んでなる歯科用光重合性組成物において、該無機フィラーのうちの粒径が0.03μm以上0.1μm未満の粒子の60質量%以上が、シリカ−ジルコニア系の球状無機酸化物粒子であることを特徴とする歯科用光重合性組成物が報告されている(特許文献2)。
【0006】
しかしながら、硬化収縮を抑制するために、多量のフィラーを添加することにより、急激に粘度が増加し、良好な流動性が得られなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−55977
【特許文献2】特開2005−89312
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、金属酸化物多孔質粒子をフィラーとして用い、ペーストの状態では金属酸化物多孔質粒子の細孔中に光重合性単量体を充填し、重合時に放出させるホストゲス
ト化合物として作用させる(図1)ことにより、重合収縮が小さい歯科用硬化性組成物、その硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]重合性単量体(A)、金属酸化物多孔質粒子(B)、及び、重合開始剤および/または増感剤(C)を含み、金属酸化物多孔質粒子(B)は平均細孔径が10〜300nmであり、比表面積が80m2/g以上であり、かつ空孔率が50体積%以上であることを特徴とする歯科用硬化性組成物。
【0010】
[2]前記金属酸化物多孔質粒子(B)の細孔構造がキュービック相構造であり、細孔間が3nm以上の孔径で連結されていることを特徴とする[1]に記載の歯科用硬化性組成物。
【0011】
[3]前記金属酸化物多孔質粒子(B)は珪素、チタン、ジルコニウム、イットリウム、およびアルミニウムからなる群から選択される金属を含有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の歯科用硬化性組成物。
【0012】
[4]前記重合性単量体(A)が光ラジカル重合性物質であり、重合開始剤および/または増感剤が光重合開始剤および/または光増感剤であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【0013】
[5]前記光重合性単量体(A)に対して、金属酸化物粒子(B)が5〜80重量%及び重合開始剤および/または増感剤(C)が0.001〜10重量%含まれていることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【0014】
[6]光重合促進剤としてさらにアミン系化合物を含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【0015】
[7]さらに、金属酸化物多孔質粒子(B)以外の無機粒子、有機粒子および有機無機複合粒子からなる群から選択される少なくとも1つのフィラーを含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【0016】
[8]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の歯科用組成物を重合して得られる硬化物。
【発明の効果】
【0017】
従来の歯科用組成物では解決できなかった、重合収縮がない、または小さく、重合収縮に由来する問題の発生を低減することができ、実使用に耐え得る、歯科治療分野の用途に適した低重合収縮性歯科用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】金属酸化物多孔質体がホストゲスト化合物として作用する模式図を示す。
【図2】立体規則構造の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
【0020】
1.重合性単量体(A)
本発明の低重合収縮性歯科用組成物に含まれる重合性単量体(A)は、(メタ)アクリル酸エステル基を有する限り特に限定されるものではないが、光にてラジカル重合を開始できる光ラジカル重合性物質(A1)が好ましい。
【0021】
光ラジカル重合性物質(A1)としては、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートとしては分子内にアルキルやアルキレン等の直鎖構造を有するもの、芳香環やシクロ環やスピロ環、縮合環等の環構造を有するもの、酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン等のヘテロ原子を有するもの、複素環やヘテロ原子含有置換基を有するものが挙げられる。また光ラジカル重合性物質(A1)は、その分子内に酸性基、または歯科の修復処置中の条件で酸に容易に転換される酸の塩あるいは酸の前駆物質を有しているものであってもよい。
【0022】
光ラジカル重合性物質(A1)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス{4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体等を挙げることができる。
【0023】
また、分子内に酸性基を有している光ラジカル重合性物質(A1)を具体的に例示すれば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、p−ビニル安息香酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸(MAC−10)、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメリット酸およびその無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート、N−o−ジ(メタ)アクリロイルオキシチロシン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル4−アミノサリチル酸、N−フェニルグリシンまたはN−トリルグリシンとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシドホスフェート、2および3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシドホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルアシドホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルアシドホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルアシドホスフェート、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2または1−スルホ−1または2−プロピル(メタ)アクリレート、1または3−スルホ−2−ブチル(メタ)アクリレート、3−ブロモ−2−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシ−1−スルホ−2−プロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。
【0024】
2.金属酸化物多孔質粒子(B)
本発明で用いる金属酸化物多孔質粒子(B)は10〜300nmの細孔を有している。金属としては珪素、チタン、ジルコニウム、イットリウム、およびアルミニウムからなる群から選択される金属が好ましい。また比表面積が80m/g以上であり、空孔率が50体積%以上であることを特徴とする。一般的に、均一な立体規則構造の例としては、図2の模式図に示すような、ラメラ相構造、ヘキサゴナル相構造、キュービック相構造がある。ラメラ相構造は平板状無機層と板状空気層とが交互に積み重なる構造で、孔は板状層形態となる。ヘキサゴナル相構造としては、中空状の柱(理想的には六角柱)構造が蜂の巣状に集合した構造であり、均一な孔が規則的に密度高く存在する多孔体構造である。キュービック相構造には数種の形態が存在する。代表的な例としては、図2の模式図を示すように、Pm3n、Im3m、Fm3m、Fd3m、さらには細孔が双連続的に結合したIa3d、Pn3m、Im3mなどがあるが、本発明においては強度的に優れたキュービック相構造が好ましい。
【0025】
細孔径は金属酸化物多孔質粒子をフィラーとして用い、ペーストの状態では金属酸化物多孔質粒子の細孔中に光重合性単量体を充填し、重合時に放出させるホストゲスト化合物として作用させるためには10nm以上であることが好ましい。細孔径が10nmより小さいと光重合性単量体を充填、放出することが難しい。細孔径が300nmより大きくなると粒子が脆くなるため、歯科材料用組成物に用いるのは好ましくない。光重合性単量体(A)が金属酸化物多孔質粒子の表面だけでなく、内部まで充填されるためには細孔同士が連結されていることが好ましい。比表面積は80m/g以上がより好ましく、85〜800m/gが特に好ましい。空孔率は50体積%以上がより好ましく、60〜90体積%がであることが特に好ましい。
【0026】
10〜300nm以上の細孔径を持つキュービック相構造を持つ金属酸化物粒子はポリオレフィン系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリアクリロニトリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ酢酸ビニル系、ポリブタジエン系から選ばれる非水溶性有機ポリマー粒子と、金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応により得られた有機無機複合体から、前記非水溶性有機ポリマー粒子を除去することにより得られる。
【0027】
特に10〜30nmの細孔径を持つキュービック相構造の金属酸化物多孔質粒子は、例えば水系媒体に分散したポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子を用いることにより安定的に製造することが出来る。
【0028】
まず、末端分岐型共重合体粒子について説明する。[ポリオレフィン系末端分岐型共重合体]
本発明で用いる重合体粒子を構成するポリオレフィン系末端分岐型共重合体は、下記の一般式(1)で表される構造を有する。
【0029】
【化13】

【0030】
(式中、Aはポリオレフィン鎖を表す。RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基でありかつ少なくともどちらか一方は水素原子であり、XおよびXは、同一または相異なり、直鎖または分岐のポリアルキレングリコール基を有する基を表す。)
【0031】
一般式(1)で表される末端分岐型共重合体の数平均分子量は2.5×10以下、好ましくは5.5×10〜1.5×10、より好ましくは8×10〜4.0×10である。その数平均分子量は、Aで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量とXおよびXで表されるポリアルキレングリコール基を有する基の数平均分子量とR,RおよびCH分の分子量の和で表される。
【0032】
ポリオレフィン系末端分岐型共重合体の数平均分子量が上記範囲にあると、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体を分散質とした際の分散液中の粒子の安定性、水および/または水と親和性を有する有機溶媒への分散性が良好となる傾向があり、かつ分散液の調製が容易になるため好ましい。
【0033】
一般式(1)のAであるポリオレフィン鎖は、炭素数2〜20のオレフィンを重合したものである。炭素数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンが挙げられる。本発明においては、これらのオレフィンの単独重合体又は共重合体であってもよく、特性を損なわない範囲で他の重合性の不飽和化合物と共重合したものであってもよい。これらのオレフィンの中でも特にエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
【0034】
一般式(1)中、Aで表されるポリオレフィン鎖の、GPCにより測定された数平均分子量は、400〜8000であり、好ましくは500〜4000、さらに好ましくは500〜2000である。ここで数平均分子量はポリスチレン換算の値である。
【0035】
Aで表されるポリオレフィン鎖の数平均分子量が上記範囲にあると、ポリオレフィン部分の結晶性が高く、分散液の安定性が良好になる傾向があり、かつ溶融粘度が低く分散液の調製が容易になる傾向があるため好ましい。
【0036】
一般式(1)においてAで表されるポリオレフィン鎖の、GPCにより測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はなく、通常1.0〜数十であるが、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。
【0037】
一般式(1)においてAで表される基の分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲にあると、分散液中の粒子の形状や粒子径の均一性などの点で好ましい。
【0038】
GPCによる、Aで表される基の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、ミリポア社製GPC−150を用い以下の条件の下で測定できる。
分離カラム:TSK GNH HT(カラムサイズ:直径7.5mm,長さ:300mm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロルベンゼン(和光純薬社製)
酸化防止剤:ブチルヒドロキシトルエン(武田薬品工業社製)0.025質量%
移動速度:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:500マイクロリットル
検出器:示差屈折計。
【0039】
なお、Aで表されるポリオレフィン鎖の分子量は、後述の、一方の末端に不飽和基を有するポリオレフィンの分子量を測定し、末端の分子量相当を差し引くことで測定できる。
【0040】
,Rとしては、Aを構成するポリオレフィンの2重結合に結合した置換基である
水素原子または炭素数1〜18の炭化水素基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0041】
一般式(1)において、X,Xは同一または相異なり、直鎖または分岐の数平均分子量がそれぞれ50〜10000のポリアルキレングリコール基を有する基を表す。分岐アルキレングリコール基の分岐態様は、多価の炭価水素基あるいは窒素原子を介した分岐等である。例えば、主骨格の他に2つ以上の窒素原子または酸素原子または硫黄原子に結合した炭化水素基による分岐や、主骨格の他に2つのアルキレン基と結合した窒素原子による分岐等が挙げられる。
【0042】
ポリアルキレングリコール基を有する基の数平均分子量が上記範囲にあると、分散液の分散性が良好になる傾向があり、かつ溶融粘度が低く分散液の調製が容易になるため好ましい。
【0043】
一般式(1)のX,Xが上記の構造を有することにより、界面活性剤を用いることなく、体積50%平均粒子径が1nmから1000nmの粒子径を有する、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体からなる重合体粒子が得られる。
【0044】
一般式(1)において、XおよびXの好ましい例としては、それぞれ同一または相異なり、一般式(2)、
【0045】
【化14】

【0046】
(式中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、Xはポリアルキレングリコール基、または下記一般式(3)
【0047】
【化15】

【0048】
(式中、Rはm+1価の炭化水素基を表し、Gは同一または相異なり、−OX、−NX(X〜Xはポリアルキレングリコール基を表す。)で表される基を表し、mはRとGとの結合数であり1〜10の整数を表す。)で表される基を表す。)
または、一般式(4)
【0049】
【化16】

【0050】
(式中、X,Xは同一または相異なり、ポリアルキレングリコール基または上記一般式(3)で表される基を表す。)で表される基である。
【0051】
一般式(3)において、Rで表される基としては、炭素数1〜20のm+1価の炭化水素基である。mは1〜10であり、1〜6が好ましく、1〜2が特に好ましい。
【0052】
一般式(1)の好ましい例としては、一般式(1)中、X、Xのどちらか一方が、一般式(4)で表される基であるポリオレフィン系末端分岐型共重合体が挙げられる。さらに好ましい例としては、X、Xのどちらか一方が一般式(4)で表され、他方が、一般式(2)で表される基であるポリオレフィン系末端分岐型共重合体が挙げられる。
【0053】
一般式(1)の別の好ましい例としては、一般式(1)中、XおよびXの一方が、一般式(2)で表される基であり、さらに好ましくはXおよびXの両方が一般式(2)で表される基であるポリオレフィン系末端分岐型共重合体が挙げられる。
一般式(4)で表されるXおよびXのさらに好ましい構造としては、一般式(5)
【0054】
【化17】

【0055】
(式中、X、X10は同一または相異なり、ポリアルキレングリコール基を表し、Q、Qは同一または相異なり、それぞれ2価の炭化水素基を表す。)で表される基である。
【0056】
一般式(5)においてQ,Qで表される2価の炭化水素基は、2価のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜20のアルキレン基であることがより好ましい。炭素数2〜20のアルキレン基は、置換基を有していてもいなくてもよく、例えば、エチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、ジメチルエチレン基、フェニルエチレン基、クロロメチルエチレン基、ブロモメチルエチレン基、メトキシメチルエチレン基、アリールオキシメチルエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。好ましいアルキレン基としては、炭化水素系のアルキレン基であり、特に好ましくは、エチレン基、メチルエチレン基であり、さらに好ましくは、エチレン基である。Q,Qは1種類のアルキレン基でもよく2種以上のアルキレン基が混在していてもよい。
【0057】
一般式(2)で表されるXおよびXのさらに好ましい構造としては、一般式(6)
【0058】
【化18】

【0059】
(式中、X11はポリアルキレングリコール基を表す。)で表される基である。
【0060】
〜X11で表されるポリアルキレングリコール基とは、アルキレンオキシドを付加
重合することによって得られる基である。X〜X11で表されるポリアルキレングリコール基を構成するアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中で、好ましくは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドである。より好ましくはプロピレンオキシド、およびエチレンオキシドであり、特に好ましくは、エチレンオキシドである。X〜X11で表されるポリアルキレングリコール基としては、これらのアルキレンオキシドの単独重合により得られる基でもよいし、もしくは2種以上の共重合により得られる基でもよい。好ましいポリアルキレングリコール基の例としては、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、またはポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合により得られる基であり、特に好ましい基としては、ポリエチレングリコール基である。
【0061】
一般式(1)においてX、Xが上記構造を有すると、本発明のポリオレフィン系末端分岐型共重合体を分散質とした際の水および/または水と親和性を有する有機溶媒への分散性が良好となるため好ましい。
【0062】
本発明で用いることができるポリオレフィン系末端分岐型共重合体としては、下記一般式(1a)または(1b)で表される重合体を用いることが好ましい。
【0063】
【化19】

【0064】
式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。アルキル基としては、炭素数1〜9のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。
【0065】
およびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。
l+mは2以上450以下、好ましくは5以上200以下の整数を表す。
nは、20以上300以下、好ましくは25以上200以下の整数を表す
【0066】
【化20】

【0067】
式中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。アルキル基としては、炭素数1〜9のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。
【0068】
およびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。RおよびRは、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。R10およびR11は、水素原子あるいはメチル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。
l+m+oは3以上450以下、好ましくは5以上200以下の整数を表す。
nは、20以上300以下、好ましくは25以上200以下の整数を表す。
【0069】
一般式(1b)で表される重合体としては、下記一般式(1c)で表される重合体を用いることがさらに好ましい。
【0070】
【化21】

【0071】
式中、l+m+o、nは一般式(1b)と同様である。
ポリエチレン鎖のエチレンユニット数(n)は、一般式(1)におけるポリオレフィン基Aの数平均分子量(Mn)をエチレンユニットの分子量で割ることにより算出した。また、ポリエチレングリコール鎖のエチレングリコールユニット総数(l+mもしくはl+m+o)は、ポリエチレングリコール基付加反応時の重合体原料と使用したエチレンオキシドとの重量比が、重合体原料とポリエチレングリコール基の数平均分子量(Mn)との比に同じであると仮定して算出できる。
【0072】
また、n、l+mもしくはl+m+oはH−NMRによっても測定することができる。例えば本発明の実施例で用いたポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)およびそれを含む分散系粒子においては、一般式(1)におけるポリオレフィン基Aの末端メチル基(シフト値:0.88ppm)の積分値を3プロトン分とした際の、ポリオレフィン基Aのメチレン基(シフト値:1.06−1.50ppm)の積分値およびPEGのアルキレン基(シフト値:3.33−3.72ppm)の積分値から算出することできる。
【0073】
具体的には、メチル基の分子量は15、メチレン基の分子量は14、エチレンオキサイド基の分子量は44であることから、各積分値の値よりポリオレフィン基Aおよびアルキレン基の数平均分子量が計算できる。ここで得られたポリオレフィン基Aの数平均分子量をエチレンユニットの分子量で割ることによりnを、アルキレン基の数平均分子量をエチレングリコールユニットの分子量で割ることで、PEG鎖のエチレングリコールユニット総数(l+mもしくはl+m+o)を算出することができる。
【0074】
ポリオレフィン基Aがエチレン―プロピレン共重合体よりなる場合は、IR、13C−NMRなどで測定できるプロピレンの含有率と、H−NMRにおける積分値の両者を用いることでnおよびl+mもしくはl+m+oを算出することができる。H−NMRにおいて、内部標準を用いる方法も有効である。
【0075】
[ポリオレフィン系末端分岐型共重合体の製造方法]
ポリオレフィン系末端分岐型共重合体は、次の方法によって製造することができる。
最初に、目的とするポリオレフィン系末端分岐型共重合体中、一般式(1)で示されるAの構造に対応するポリマーとして、一般式(7)
【0076】
【化22】

【0077】
(式中、Aはポリオレフィン鎖を表わし、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1〜18のアルキル基でありかつ少なくともどちらか一方は水素原子を表す。)で示される、片末端に二重結合を有するポリオレフィンを製造する。
【0078】
このポリオレフィンは、以下の方法によって製造することができる。
(1)特開2000−239312号公報、特開2001−2731号公報、特開2003−73412号公報などに示されているようなサリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物を重合触媒として用いる重合方法。
(2)チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒を用いる重合方法。
(3)バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いる重合方法。
(4)ジルコノセンなどのメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)とからなるチーグラー型触媒を用いる重合方法。
【0079】
上記(1)〜(4)の方法の中でも、特に(1)の方法によれば、上記ポリオレフィンを収率よく製造することができる。(1)の方法では、上記サリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物の存在下で、前述したポリオレフィンを重合または共重合することで上記片方の末端に二重結合を有するポリオレフィンを製造することができる。
【0080】
(1)の方法によるポリオレフィンの重合は、溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれによっても実施できる。詳細な条件などは既に公知であり上記特許文献を参照することができる。
【0081】
(1)の方法によって得られるポリオレフィンの分子量は、重合系に水素を存在させるか、重合温度を変化させるか、または使用する触媒の種類を変えることによって調節することができる。
【0082】
次に、上記ポリオレフィンをエポキシ化して、すなわち上記ポリオレフィンの末端の二重結合を酸化して、一般式(8)で示される末端にエポキシ基を含有する重合体を得る。
【0083】
【化23】

【0084】
(式中、A、RおよびRは前述の通り。)
かかるエポキシ化方法は特に限定されるものではないが、以下の方法を例示することができる。
(1)過ギ酸、過酢酸、過安息香酸などの過酸による酸化
(2)チタノシリケートおよび過酸化水素による酸化
(3)メチルトリオキソレニウム等のレニウム酸化物触媒と過酸化水素による酸化
(4)マンガンポルフィリンまたは鉄ポルフィリン等のポルフィリン錯体触媒と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(5)マンガンSalen等のSalen錯体と過酸化水素または次亜塩素酸塩による酸化
(6)マンガン−トリアザシクロノナン(TACN)錯体等のTACN錯体と過酸化水素による酸化
(7)タングステン化合物などのVI族遷移金属触媒と相間移動触媒存在下、過酸化水素による酸化
上記(1)〜(7)の方法の中でも、活性面で特に(1)および(7)の方法が好ましい。
【0085】
また、例えばMw400〜600程度の低分子量の末端エポキシ基含有重合体はVIKOLOXTM(登録商標、Arkema社製)を用いることができる。
【0086】
上記方法で得られた一般式(8)で表される末端エポキシ基含有重合体に種々の反応試剤を反応させることにより、一般式(9)で表されるようなポリマー末端のα、β位に様々な置換基Y、Yが導入された重合体(重合体(I))を得ることが出来る。
【0087】
【化24】

【0088】
(式中、A、R,Rは前述の通り。Y、Yは同一または相異なり水酸基、アミノ基、または下記一般式(10a)〜(10c)を表す。)
【0089】
【化25】

【0090】
【化26】

【0091】
【化27】

【0092】
(一般式(10a)〜(10c)中、Eは酸素原子または硫黄原子を表し、Rはm+1価の炭化水素基を表し、Tは同一または相異なり水酸基、アミノ基を表し、mは1〜10の整数を表す。)
例えば、一般式(8)で表される末端エポキシ基含有重合体を加水分解することにより、一般式(9)においてY、Yが両方とも水酸基である重合体が得られ、アンモニアを反応させることによりY、Yの一方がアミノ基、他方が水酸基の重合体が得られる。
【0093】
また、一般式(8)で表される末端エポキシ基含有重合体と一般式(11a)で示される反応試剤Aとを反応させることにより、一般式(9)においてY、Yの一方が一般式(10a)に示される基で他方が水酸基の重合体が得られる。
【0094】
【化28】

【0095】
(式中、E、R、T、mは前述の通りである。)
また、末端エポキシ基含有重合体と一般式(11b)、(11c)で示される反応試剤Bを反応させることにより、一般式(9)においてY、Yの一方が一般式(10b)または(10c)に示される基で他方が水酸基の重合体が得られる。
【0096】
【化29】

【0097】
【化30】

【0098】
(式中、R、T、mは前述の通りである。)
一般式(11a)で示される反応試剤Aとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、ブタントリオール、ジペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン等を挙げることができる。
【0099】
一般式(11b)、(11c)で示される反応試剤Bとしては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノフェノール、ヘキサメチレンイミン、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジエチレントリアミン、N−(アミノエチル)プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、スペルミジン、スペルミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン等を挙げることができる。
【0100】
エポキシ体とアルコール類、アミン類との付加反応は周知であり、通常の方法により容易に反応が可能である。
【0101】
一般式(1)は一般式(9)で示される重合体(I)を原料として、アルキレンオキシドを付加重合することにより製造することができる。アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは2種以上併用してもよい。これらの中で、好ましくは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドである。より好ましくはプロピレンオキシド、およびエチレンオキシドである。
【0102】
触媒、重合条件などについては、公知のアルキレンオキシドの開環重合方法を利用することができ、例えば、大津隆行著,「改訂高分子合成の化学」,株式会社化学同人,1971年1月,p.172−180には、種々の単量体を重合してポリオールを得る例が開示されている。開環重合に用いられる触媒としては、上記文献に開示されたように、カチオン重合向けにAlCl、SbCl、BF、FeClのようなルイス酸、アニオン重合向けにアルカリ金属の水酸化物またはアルコキシド、アミン類、フォスファゼン触媒、配位アニオン重合向けにアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、アルコキシドあるいは、Al、Zn、Feなどのアルコキシドを用いることができる。ここで、ホスファゼン触媒としては、例えば、特開平10−77289号公報に開示された化合物、具体的には市販のテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)フォスフォラニリデンアミノ]フォスフォニウムクロリドのアニオンをアルカリ金属のアルコキシドを用いてアルコキシアニオンとしたものなどが利用できる。
【0103】
反応溶媒を使用する場合は、重合体(I)、アルキレンオキシドに対して不活性なものが使用でき、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0104】
触媒の使用量はホスファゼン触媒以外については原料の重合体(I)の1モルに対して、0.05〜5モルが好ましく、より好ましくは0.1〜3モルの範囲である。ホスファゼン触媒の使用量は、重合速度、経済性等の点から、重合体(I)の1モルに対して1×10−4〜5×10−1モルが好ましく、より好ましくは5×10−4〜1×10−1モルである。
【0105】
反応温度は通常25〜180℃、好ましくは50〜150℃とし、反応時間は使用する
触媒の量、反応温度、ポリオレフィン類の反応性等の反応条件により変わるが、通常数分〜50時間である。
【0106】
一般式(1)の数平均分子量は、前述の通り一般式(8)で示される重合体(I)の数平均分子量と、重合させるアルキレンオキシドの重量から計算する方法や、NMRを用いる方法により算出することができる。
【0107】
[重合体粒子]
このようなポリオレフィン系末端分岐型共重合体からなる本発明の重合体粒子は、一般式(1)のAで表されるポリオレフィン鎖部分が、内方向に配向した構造を有し、このポリオレフィン鎖部分が結晶性を有するリジットな粒子である。
本発明の重合体粒子は、ポリオレフィン鎖部分が結晶性を有するため、分散液の乾燥による粒子の取り出し後も再度溶媒等の液体中に分散することが可能である。本発明の重合体粒子は、粒子が含むポリオレフィン鎖部分の融点が好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上のリジッドな粒子である。
ポリオレフィン鎖部分の融点が上記の範囲にあると、結晶性が良好なリジッドな粒子になり、より高温で加熱した場合においても粒子の崩壊が抑制される。
【0108】
このため、後述する各種用途における製造工程や使用場面において、粒子の崩壊が抑制されるので、本発明の重合体粒子が有する特性を失うことがなく、製品の歩留まりや製品の品質がより安定する。
本発明の重合体粒子は、溶媒等に分散させたとしても、希釈濃度によらず粒子径が一定である。つまり、再分散性および均一な分散粒子径を有することから、液体中に分散しているミセル粒子とは異なるものである。
【0109】
[ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子分散液]
本発明の分散液は前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体を分散質に含み、該分散質を水および/または水と親和性を有する有機溶媒に粒子として分散している。
【0110】
本発明において、分散液とは、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子が分散されてなる分散液であり、
(1)ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子を製造する際に得られた、該重合体粒子を含む分散液、
(2)ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子を製造する際に得られた該重合体粒子を含む分散液に、さらに他の分散質や添加剤等を分散または溶解してなる分散液、
(3)ポリオレフィン系末端分岐型共重合体粒子を水や水と親和性を有する有機溶媒に分散させるとともに、他の分散質や添加剤等を分散または溶解してなる分散液、
の何れをも含む。
【0111】
本発明の分散液における前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体の含有割合は、全分散液を100質量%としたときに、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1〜40質量%、さらに好ましくは1〜20質量%である。
【0112】
ポリオレフィン系末端分岐型共重合体の含有割合が上記範囲にあると、分散液の実用性が良好であり、かつ粘度を適正に保つことができ、取り扱いが容易になるため好ましい。また、本発明の分散液中の粒子の体積50%平均粒子径は好ましくは10nm以上30nm以下である。
【0113】
粒子の体積50%平均粒子径は、前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体のポリオレフィン部分の構造および末端分岐部分の構造を変えることにより調節可能である。
【0114】
なお、本発明における体積50%平均粒子径とは、全体積を100%としたときの累積体積が50%時の粒子の直径をいい、動的光散乱式粒子径分布測定装置やマイクロトラック粒度分布測定装置を使用して測定することができる。
【0115】
また、その形状は、例えばリンタングステン酸によりネガティブ染色を施した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することができる。
【0116】
本発明における分散液は、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体を水および/または水と親和性を有する有機溶媒に分散化することにより得られる。
【0117】
本発明における分散化は、機械的せん断力によりポリオレフィン系末端分岐型共重合体を水および/または水と親和性を有する有機溶媒に物理的に分散化する方法で行なうことができる。
【0118】
分散化方法としては特に限定されるものではないが、各種の分散化方法を利用することができる。具体的に言えば、一般式(1)で表されるポリオレフィン系末端分岐型共重合体と水および/または水と親和性を有する有機溶媒とを混合した後、溶融状態にして高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサー、押出混練機、オートクレーブ等で分散化する方法、高圧で噴射粉砕する方法、細孔より噴霧させる方法が挙げられる。また、前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体を水以外の溶媒に予め溶解した後、水および/または水と親和性を有する有機溶媒とを混合して高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサー等により分散化する方法も可能である。この際、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体の溶解に使用する溶媒は、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体が溶解するのであれば特に限定されないが、トルエン、シクロヘキサンや前記の水と親和性を有する有機溶媒などが挙げられる。水以外の有機溶媒が分散液に混入することが好ましくない場合には、蒸留等の操作により除去することが可能である。
【0119】
さらに具体的には、例えば、せん断力をかけることが可能な撹拌機付きのオートクレーブ中、100℃以上、好ましくは120〜200℃の温度でせん断力をかけながら加熱撹拌することによって分散液を得ることができる。
【0120】
上記温度範囲にあると、前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体が溶融状態にあるため分散化が容易であり、かつ前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体が加熱により劣化しにくいため好ましい。
【0121】
分散化に要する時間は、分散化温度やその他の分散化条件によっても異なるが、1〜300分程度である。
【0122】
上記の撹拌時間では分散化を十分に行うことができ、かつ前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体が劣化しにくいため好ましい。反応後は、分散液中の温度が100℃以下になるまで、好ましくは60℃以下になるまでせん断力をかけた状態を保つことが好ましい。
【0123】
本発明に用いる分散液の製造において、界面活性剤の添加は不可欠ではないが、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などを共存させても良い。
【0124】
アニオン界面活性剤として、例えば、カルボン酸塩、単純アルキル・スルフォネート、変性アルキル・スルフォネート、アルキル・アリル・スルフォネート、アルキル硫酸エス
テル塩、硫酸化油、硫酸エステル、硫酸化脂肪酸モノグリセライド、硫酸化アルカノール・アミド、硫酸化エーテル、アルキル燐酸エステル塩、アルキル・ベンゼン・フォスフォン酸塩、ナフタレンスルホン酸・ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0125】
カチオン界面活性剤として、例えば、単純アミン塩、変性アミン塩、テトラアルキル第4級アンモニウム塩、変性トリアルキル第4級アンモニウム塩、トリアルキル・ベンジル第4級アンモニウム塩、変性トリアルキル・ベンジル第4級アンモニウム塩、アルキル・ピリジニウム塩、変性アルキル・ピリジニウム塩、アルキル・キノリニウム塩、アルキル・フォスフォニウム塩、アルキル・スルフォニウム塩などが挙げられる。
【0126】
両性界面活性剤として、例えば、ベタイン、スルフォベタイン、サルフェートベタインなどが挙げられる。
【0127】
ノニオン界面活性剤として、例えば、脂肪酸モノグリセリン・エステル、脂肪酸ポリグリコール・エステル、脂肪酸ソルビタン・エステル、脂肪酸蔗糖エステル、脂肪酸アルカノール・アミド、脂肪酸ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸アミド・ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸アルコール・ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸アミン・ポリエチレン・グリコール縮合物、脂肪酸メルカプタン・ポリエチレン・グリコール縮合物、アルキル・フェノール・ポリエチレン・グリコール縮合物、ポリプロピレン・グリコール・ポリエチレン・グリコール縮合物などが挙げられる。
これら界面活性剤は、単独または2種以上を併用することができる。
【0128】
本発明に用いる分散液の製造にあたっては、異物などを除去する目的で、工程中に濾過工程を設けてもよい。このような場合には、たとえば、300メッシュ程度のステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を設置し、加圧濾過(空気圧0.2MPa)をおこなえばよい。
【0129】
上記の方法で得られる分散液は、各種の酸や塩基、例えば塩酸、硫酸、リン酸などの酸や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどの塩基を添加することによりpHを1から13まで変化させても、凝集、沈殿を起こさない。また、この分散液を常圧下で加熱還流もしくは凍結解凍を繰り返すような、幅広い温度範囲においても凝集、沈殿を起こさない。
【0130】
上記方法における水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などを使用可能であるが、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
【0131】
また、上記方法における水と親和性を有する有機溶媒は、ポリオレフィン系末端共重合体粒子、界面活性剤等の分散質が分散可能なものであれば特に限定されないが、例えばエチレングリコール、テトラエチレングリコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノンなどが挙げられる。分散液中への有機溶媒の混入が好ましくない場合には、該分散質を含有した分散液を調製した後、蒸留等により、前記有機溶媒を除去することが可能である。
【0132】
本発明における分散液は、前記ポリオレフィン系末端分岐型共重合体を100質量部としたときに、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体以外の分散質を0.001質量部〜20質量部、好ましくは0.01質量部〜10質量部、さらに好ましくは0.1質量部〜5質量部含有することができる。
【0133】
該分散質の含有量が上記範囲にあると、分散液の物性が実用面で良好であり、且つ分散
液が凝集、沈殿を生じにくいため好ましい。
30nmを超え300nm以下の平均細孔径を持つキュービック相構造の金属酸化物多孔質体は、例えば水系媒体の分散したポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子を用いることにより安定的に製造することができる。
【0134】
次にポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子について説明する。
[(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子水分散液]
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、アクリル酸エステル及び/又はメタアクリル酸エステル由来の繰り返し単位を有する単独重合体または共重合体である。
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子の水分散液は一般的にアクリルエマルジョンと呼ばれ、公知の乳化重合法により得ることができる。例えば、不飽和単量体(不飽和ビニルモノマー等)を重合開始剤、及び界面活性剤を存在させた水中において乳化重合することによって得ることができる。
【0135】
アクリル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−へキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、フェニルアクリレート、 ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート等が挙げられる。
メタアクリル酸エステルの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。本発明のポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル以外の不飽和単量体が共重合されていてもよい。
【0136】
併用できる不飽和単量体としては、酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン化単量体類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、クロロプレン等のジエン類;ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン等のビニル単量体類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有単量体類等が挙げられ、これらを単独または二種以上混合して使用することができる。
【0137】
また、重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体も使用することができる。重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体の例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート化合物、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート
等のトリアクリレート化合物、ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のテトラアクリレート化合物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のヘキサアクリレート化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物、メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらを単独または二種以上混合して使用することができる。
【0138】
また、乳化重合の際に使用される重合開始剤及び界面活性剤の他に、連鎖移動剤、さらには中和剤等も常法に準じて使用してよい。特に中和剤としては、アンモニア、無機アルカリの水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が好ましい。
ポリ(メタ)アクリル酸系重合体粒子の粒径は水中での分散安定性の観点から、その平均粒子径が30nmを超え300nm以下が好ましく、40〜250nmがより好ましく、特に50〜200nmであることが好ましい。
【0139】
また、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体粒子としては、単相構造及び複相構造(コアシェル型)の何れのものも使用できる。
なお、「アクリルエマルジョン」というときは、ディスパージョン、ラテックス、サスペンジョンと呼ばれる固/液の分散体をも包含したものを意味するものとする。
アクリルエマルジョンは、例えば、次のようにして製造される。
【0140】
〔アクリルエマルジョンの製造方法例〕
滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー及び攪拌機を備えた反応容器に、イオン交換水100部を入れ、窒素雰囲気下、温度70℃で攪拌しながら、重合開始剤0.2部を添加する。これに、別途調製したモノマー溶液を滴下し重合反応させて、1次物質を調製する。その後、温度70℃で、該1次物質に、重合開始剤の10%水溶液2部を添加して攪拌し、更に別途調製した反応液を添加し攪拌して重合反応させ、重合反応物を得る。該重合反応物はそのまま用いても良いし、中和剤で中和してpHが8〜8.5になるように調整しても良い。その後フィルターでろ過し粗大粒子を除去して、樹脂粒子を分散質とするアクリルエマルジョンを得る。
【0141】
重合開始剤としては、通常のラジカル重合に用いられるものと同様のものが用いられ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシド等が挙げられる。特に、前述の如く、重合反応を水中で行う場合には、水溶性の重合開始剤が好ましい。
また、重合反応で用いられる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムの他、一般にアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤として用いられているもの等が挙げられる。
【0142】
また、重合反応で用いられる連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、ジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテン等が挙げられる。
アクリルエマルジョンは、溶剤として、水以外に、有機溶剤を併用することもできる。このような有機溶剤としては、水と相溶性を有するものが好ましく、例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類、2−ピロリドン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0143】
以下、前記に説明した非水溶性有機ポリマー粒子を用いた金属酸化物多孔質体の製造方法について説明する。
【0144】
<金属酸化物多孔質体の製造方法>
本発明の金属酸化物多孔体は、非水溶性有機ポリマー粒子と金属酸化物の有機無機複合体を形成した後、鋳型である非水溶性有機ポリマー粒子を除去することにより製造される。
【0145】
具体的には、以下の工程を含む。
工程(a):上述の非水溶性有機ポリマー粒子の存在下で、金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行う。
工程(b):前記工程(a)において得られた反応溶液を乾燥し、ゾル−ゲル反応を完結し有機無機複合体を得る。
工程(c):前記有機無機複合体から非水溶性有機ポリマー粒子を除去し、金属酸化物多孔質体を調製する。
【0146】
以下、各工程を順に説明する。
[工程(a)]
工程(a)においては、具体的に、前記非水溶性有機ポリマー粒子(X)、前記金属酸化物前駆体(Y)、水および/または水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒(Z)を混合して混合組成物を調製するとともに、前記金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物のゾル−ゲル反応を行う。なお、混合組成物には、金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応を促進させる目的で、ゾル−ゲル反応用触媒(W)を含んでいてもよい。
【0147】
混合組成物は、さらに具体的には、成分(Y)または成分(Y)を「水および/または水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒(Z)」に溶解した溶液に、「ゾル−ゲル反応用触媒(W)」、さらに必要に応じて水を添加して攪拌混合して、成分(Y)のゾル−ゲル反応を行い、このゾル−ゲル反応を継続させながら非水溶性有機ポリマー粒子(X)を添加することにより調製される。非水溶性有機ポリマー粒子(X)は水性分散液と
して添加することができる。
【0148】
また、成分(Y)または成分(Y)を前記溶媒(Z)に溶解した溶液に、非水溶性有機ポリマー粒子(X)の水性分散液を添加して攪拌混合した後に、触媒(W)、さらに必要に応じて水を添加して攪拌混合することで調製することもできる。
[金属酸化物前駆体(Y)]
金属酸化物前駆体としては、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物、金属ハロゲン化物、金属アセテート、金属硝酸塩、金属硫酸塩等が挙げられる。
【0149】
本発明における金属アルコキシドは、下記式(12)で表されるものを指す。
(R)xM(OR)y (12)
式中、Rは、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、アリール基(フェニル基、トリル基など)、炭素−炭素二重結合含有有機基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)、ハロゲン含有基(クロロプロピル基、フルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基など)などを表す。Rは、炭素数1以上6以下、好ましくは炭素数1以上4以下の低級アルキル基を表す。xおよびyは、x+y=4かつ、xは2以下となる整数を表す。
【0150】
Mとしては、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi、希土類金属等が挙げられ、歯科材料として利用する観点から、Si、Al、Zn、Zr、In、Sn、Ti、Pb、Hfなどゾル−ゲル反応で無色の金属酸化物となる金属(アルコキシド)が好ましい。それらの中でも珪素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)などが好ましく用いられ、それらを組み合わせて使ってもよい。中でも珪素化合物は、比較的安価で入手しやすく、反応が緩やかに進行するため、工業的な利用価値が高い。また、金属アルコキシドおよび/またはその加水分解縮合物(Y)(以下、「成分(Y)」ということもある)は、水および触媒の添加により、ゾル−ゲル反応することで、後述する金属酸化物となる化合物であってもよい。
【0151】
具体例を挙げると、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、これらに対応するアルコキシアルミニウム、アルコキシジルコニウム、アルコキシチタンが挙げられる。
【0152】
さらに、これらの金属アルコキシドに加えて、以下1)〜4)に示すようなR1に各種官能基をもつ金属アルコキシドを使用することもできる。
1)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基とアルコキシシリル基とを有する化合物
2)3−グリシドキシプロピルプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基とアルコキシシリル基とを有する化合物
3)3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基とアルコキシシリル基とを有する化合物
4)3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等のウレイド基とアルコキシシリル基とを有する化合物
本発明において、金属アルコキシドとしては、上記式(12)において、Mが珪素(Si)であるアルコキシシラン、Mがジルコニウム(Zr)であるアルコキシジルコニウム、Mがアルミニウム(Al)であるアルコキシアルミニウムおよびMがチタン(Ti)であるアルコキシチタンが好ましい。
【0153】
金属アルコキシドの部分加水分解縮合物は、これらの1種以上の金属アルコキシドにゾル−ゲル反応用触媒(W)を用いて部分的に加水分解されたものが、重縮合することにより得られる化合物であり、たとえば金属アルコキシドの部分加水分解重縮合化合物である。
【0154】
本発明において、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物としては、アルコキシシランの縮合物、アルコキシジルコニウムの縮合物、アルコキシアルミニウムの縮合物、およびアルコキシチタンの縮合物が好ましい。
【0155】
本発明における金属ハロゲン化物としては、下記式(13)で表されるものを用いることができる。
(R1)xMZy (13)
式中、R1は、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など)、アリール基(フェニル基、トリル基など)、炭素−炭素二重結合含有有機基(アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基など)、ハロゲン含有基(クロロプロピル基、フルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基など)などを表す。ZはF、Cl、Br、Iを表す。xおよびyは、x+y≦4かつ、xは2以下となる整数を表す。Mとしては、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi、希土類金属等が挙げられ、歯科材料として利用する観点から、Si、Al、Zn、Zr、In、Sn、Ti、Pb、Hfなどゾル−ゲル反応で無色の金属酸化物となる金属(アルコキシド)が好ましい。それらの中でも珪素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)などが好ましく用いられ、それらを組み合わせて使ってもよい。
【0156】
具体例を挙げると、テトラクロロ−ジメチルジシラン、クロロプロピルジクロロメチルシラン、クロロメチル(ジクロロ)メチルシラン、ジ-tert-ブチルジクロロシラン、ジブチ
ルジクロロシラン、ジクロロ(メチル)-n-オクチルシラン、ジクロロ(メチル)フェニルシラン、ジクロロシクロヘキシルメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、ジクロロジヘキシルシラン、ジクロロジイソプロピルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジフェニルシラン、ジクロロエチルシラン、ジクロロヘキシルメチルシラン、ジクロロメチルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、テトラクロロシラン、1,2-ビス(トリクロロシリル)エタン、3-クロロプロピルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、ヘキサクロロジシラン、フェニルトリクロロシラン、テキシルトリクロロシラン、トリクロロ(メチル)シラン、トリクロロ(プロピル)シラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロシラン、トリクロロビニルシラン、これらに対応するフロロシラン類、
ブロモシラン類、ヨードシラン類、および、これらに対応するハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ジルコニウム、ハロゲン化チタン、ハロゲン化コバルト、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化バリウム、ハロゲン化鉄、ハロゲン化マンガン及びそれらの水和物が挙げられる。
【0157】
本発明において、金属アセテートとしては、酢酸コバルト、アセト酢酸コバルト、酢酸リチウム、アセト酢酸リチウム、酢酸鉄、アセト酢酸鉄、酢酸マンガン、アセト酢酸マンガン、あるいはそれらの水和物が挙げられる。金属硝酸塩としては、硝酸コバルト、硝酸リチウム、硝酸鉄、硝酸マンガン、あるいはそれらの水和物が挙げられる。
金属硫酸塩としては、硫酸チタン、硫酸ジルコニウム、硫酸インジウム、硫酸亜鉛、硫酸セレン、硫酸アンチモン、硫酸スズ、硫酸イットリウムあるいはそれらの水和物が挙げられる。
【0158】
[水および/または水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒(Z)」
本発明の組成物において、成分(Z)は、金属アルコキシドおよび/またはその部分加水分解縮合物(Y)、金属ハロゲン化物、金属アセテート、金属硝酸塩を、さらに加水分解させる目的で添加される。
【0159】
また、成分(Z)は、非水溶性有機ポリマーを用いて水性分散液を得るときに使用する溶媒と、水性分散液、成分(Y)および後述するゾル−ゲル反応用触媒(W)(以下、「成分W」ということもある)を混合するときに使用する溶媒の両方を含む。
【0160】
水については特に制限されず、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水などを使用可能であるが、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。
【0161】
水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒としては、水と親和性を有する有機溶媒であって、非水溶性有機ポリマーが分散可能なものであれば特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−メトキシエタノール(メチルセルソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセルソルブ)、酢酸エチルなどが挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンは、水との親和性が高いため、好ましい。
【0162】
水を用いる場合、添加する水の量は、通常は前記成分(Z)および前記成分(W)の混合物100重量部に対し、例えば1重量部以上1000000重量部以下の範囲であり、好ましくは10重量部以上10000重量部以下の範囲である。
【0163】
水の一部または全部を任意の割合で溶解する溶媒としては、添加する溶媒の量は、通常は前記成分(Z)および前記成分(W)の混合物100重量部に対し、例えば1重量部以上1000000重量部以下の範囲であり、好ましくは10重量部以上10000重量部以下の範囲である。
【0164】
また、金属アルコキシド類の加水分解重縮合時の好ましい反応温度は、1℃以上100℃以下であり、より好ましくは20℃以上60℃以下であり、反応時間は10分以上72時間以下であり、より好ましくは1時間以上24時間以下である。
[ゾル−ゲル反応用触媒(W)]
本発明で用いる混合組成物において、金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応における反応を促進させる目的で、以下に示すような加水分解・重縮合反応の触媒となりうるものを含んでいてもよい。
【0165】
金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応の触媒として使用されるものは、「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作製技術」(平島碩著、株式会社総合技術センター、29頁)や「ゾル−ゲル法の科学」(作花済夫著、アグネ承風社、154頁)等に記載されている一般的なゾル−ゲル反応で用いられる触媒である。
【0166】
触媒(W)としては、酸触媒、アルカリ触媒、有機スズ化合物、チタニウムテトライソプロポキシド、ジイソプロポキシチタニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトナート、トリメトキシボランなどの金属アルコキシド等が挙げられる。
【0167】
これら触媒の中でも、酸触媒、アルカリ触媒が好適に使用される。具体的には、酸触媒では塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、蓚酸、酒石酸、トルエンスルホン酸等の無機および有機酸類、アルカリ触媒では、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム水酸化物、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン類などが挙げられる。
【0168】
反応性の観点から、比較的穏やかに反応が進行する塩酸、硝酸等、酸触媒を使用することが好ましい。好ましい触媒の使用量は、前記成分(Y)の金属アルコキシド1モルに対して0.001モル以上0.05モル以下、好ましくは0.001モル以上0.04モル以下、さらに好ましくは0.001モル以上0.03モル以下の程度である。
【0169】
工程(a)における混合組成物は、例えば、触媒(W)の存在下、溶媒(Z)を除去しないでゾル−ゲル反応させることによって得られるゾル−ゲル反応物の形態で使用することができる。
【0170】
[工程(b)]
工程(b)においては、前記工程(a)において得られた反応溶液(混合組成物)を乾燥して有機無機複合体を得る。
【0171】
複合体粒子の製造方法としては、本発明の混合分散液を所定温度で加熱乾燥し水または溶媒を除去した後、得られた固体を粉砕や分級等の処理により成形する方法、あるいは凍結乾燥法のように低温度で水または溶媒除去して乾燥した後、さらに所定の温度で加熱乾燥させ、得られた固体を粉砕や分級の処理により成形する方法、さらにはスプレードライヤーにより、10μm以下の複合体微粒子を噴霧乾燥装置(スプレードライヤー)により噴霧し、溶媒を揮発させることにより粉体を得る方法などがある。
【0172】
つまり、混合組成物(反応溶液)を加熱乾燥することによりゾル−ゲル反応が完結し、成分(Y)より金属酸化物が得られ、この金属酸化物を主とするマトリックスが形成される。ゾル−ゲル反応を完結させるための加熱温度は室温以上300℃以下であり、より好ましくは80℃以上200℃以下である。有機無機複合体は、このマトリックス中に、非水溶性有機ポリマー微粒子が分散した構造となる。
【0173】
なお、ゾル-ゲル反応が完結した状態とは、理想的には全てがM−O−Mの結合を形成した状態であるが、一部アルコキシル基(M−OR)、M−OH基を残すものの、固体(ゲル)の状態に移行した状態を含むものである。
【0174】
[工程(c)]
工程(c)においては、工程(b)で得られた有機無機複合体から有機ポリマー粒子を除去し、金属酸化物多孔質体を調製する。
【0175】
有機ポリマー粒子を除去する方法としては、焼成により分解除去する方法、VUV光(真空紫外光)、遠赤外線、マイクロ波、プラズマを照射して分解除去する方法、溶剤や水を用いて抽出除去する方法などが挙げられる。焼成により分解除去する場合、好ましい温度は200℃〜1000℃、より好ましくは300℃〜700℃である。焼成温度が低すぎる場合、有機ポリマー粒子が除去されず、一方高すぎる場合、金属酸化物の融点に近くなるため細孔が崩れる場合がある。焼成は、一定温度で行っても良いし、室温から除々に昇温しても構わない。焼成の時間は、温度に応じて変えられるが、1時間から24時間の範囲で行うのが好ましい。焼成は空気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で行ってもよい。また、減圧下、または真空中で行っても構わない。VUV光を照射して分解除去する場合、VUVランプ、エキシマレーザー、エキシマランプを使用することが出来る。空気中でVUV光を照射する際に発生するオゾン(O)の酸化作用を併用しても構わない。マイクロ波としては、2.45GHzまたは28GHzの周波数いずれでも構わない。マイクロ波の出力は特に制限されず非水溶性有機ポリマー粒子が除去される条件が選ばれる。
【0176】
溶剤や水を用いて抽出を行う場合、例えば、溶剤としてはエチレングリコール、テトラエチレングリコール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、シクロヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、キシレン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンなどを使用することができる。抽出の操作は、加温下で行っても良い。また超音波(US)処理を併用しても良い。なお、抽出操作を行った後は細孔に残存する水分、溶剤を取り除くため減圧下、熱処理を行うのが好ましい。
このようにして得られる本発明の金属酸化物多孔質粒子は、均一な細孔を有し、その平均孔径が10〜300nm、好ましくは10〜200nmである。本発明の金属酸化物多孔質体はメソポーラス構造体であり、キュービック構造を呈することが好ましい。
【0177】
なお、前記有機ポリマー粒子を鋳型として用いることにより、細孔がキュービック相構造を形成している金属酸化物多孔質体が得られる理由については明らかでないが、以下のように推察される。
【0178】
上述した「金属酸化物多孔質体の製造方法」の工程(a)において、金属酸化物前駆体のゾル−ゲル反応を行いながら、複数の非水溶性有機ポリマー粒子を添加すると、複数の非水溶性有機ポリマー粒子は所定の表面電荷により互いに反発し合い、所定の距離をおいた熱力学的に安定した状態、すなわちFm3mなどのキュービック構造に分散される。
【0179】
よって、このように分散された非水溶性有機ポリマー粒子を焼成により除去することで形成される金属酸化物多孔質粒子の細孔は、キュービック相を形成する。
【0180】
ここで、金属酸化物多孔質体表面の構造および平均孔径は、走査型電子顕微鏡により評価および測定することができ、金属酸化物多孔質粒子内部の構造および平均孔径は、透過電子顕微鏡(TEM)により、細孔の分散状態により適宜視野範囲を設定して、視野範囲内の細孔の径を測定し、平均することにより、評価および測定することができる。
【0181】
金属酸化物多孔質粒子の細孔容積(ml/g)は、窒素吸着によって求めることができる。粒子の窒素吸脱着測定を、オートソーブ3(カンタクローム社製)を用いて測定し、全細孔容積はBJH(Barrett−Joyner−Halenda)法により算出することが出来る。さらに空孔率(体積%)、嵩比重は得られた全細孔容積の値から算出することが出来る。
【0182】
金属酸化物多孔質粒子(B)は、重合性単量体との馴染みを良くし機械的強度や耐水性を向上させるために、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で処理しても良い。
【0183】
表面処理の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、3−エチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。特に重合性単量体がカチオン重合成単量体である場合、カチオン重合性の官能基を有するシランカップリング剤である3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、3−エチル−3−[3−(トリエトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン等が望ましい。上記シランカップリング剤は1種類あるいは2種類以上を合わせて用いることができる。
【0184】
本発明の金属酸化物多孔質粒子(B)の使用量は特に限定するものではないが、光重合性単量体(A)に対して5〜80重量%が好ましく、10〜70重量%がより好ましい。
【0185】
3.重合開始剤および/または増感剤(C)
重合開始剤および/または増感剤(C)としては、ベンジル、カンファ−キノン、α−ナフチル、p,p’−ジメトキシベンジル、ペンタジオン、1,4−フェナントレンキノン、ナフトキノン、トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(η−5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H
−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどの可視光あるいは紫外光の照射で励起され重合を開始する公知のα−ジケトン化合物類およびリン原子含有化合物、チタン原子含有化合物、ベンゾフェノン類、ベンゾインアルキルケタール類などの光重合開始剤および/または光増感剤が挙げられる。これらの化合物は単独で使用されてもよく、あるいは、2種類以上を混合して使用されても差し支えない。
また、所望により光重合促進剤を併用することができる。
【0186】
光重合促進剤としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジンなどの第3級アミン類;前記第3級アミンとクエン酸、リンゴ酸、2−ヒドロキシプロパン酸との組み合わせ;5−ブチルアミノバビルツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバビルツ−ル酸などのバルビツール酸類;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物などが例示される。これらの化合物は、単独で使用されてもよく、あるいは、2種類以上を混合して使用されても差し支えない。
【0187】
これら化合物の中でも、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートなど芳香族に直接窒素原子が結合した第3級芳香族アミンもしくは重合性基を有する脂肪族第3級アミンは、好ましい化合物である。
【0188】
硬化を速やかに終了させるためには、光増感剤と光重合促進剤とを組み合わせて使用することは好ましく、カンファーキノンまたはトリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドと、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルもしくはp−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチルなど芳香族に直接窒素原子が結合した第3級芳香族アミンのエステル化合物と組み合わせて使用することが好ましい。
【0189】
重合開始剤として、有機過酸化物、ジアゾ系化合物を使用することもできる。
有機過酸化物として、例えば、ジアセチルパ−オキサイド、ジイソブチルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルネオデカネート、クメンパーオキシネオデカネートなどのパーオキシエステル類;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシドなどの過酸化スルホネート類等が挙げられる。
【0190】
また、ジアゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)などを挙げることができる。
【0191】
重合を短時間で終了させたい場合には、80℃での分解半減期が10時間以下である化合物は好ましく、上記化合物の中でも、ベンゾイルパ−オキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルは好ましい化合物である。
【0192】
重合開始剤としてレドックス開始剤系を使用する場合において、特に限定はなく、公知の各種開始剤が使用される。
【0193】
前記の有機過酸化物と第3級アミンの組み合わせ;有機過酸化物/スルフィン酸もしく
はそのアルカリ金属塩類/第3級アミンの組み合わせ;過硫酸カリウムなどの無機過酸化物と亜硫酸ナトリウム、無機過酸化物と亜硫酸水素ナトリウムのような無機過酸化物と無機還元剤の組み合わせなどを挙げることができる。中でも、ベンゾイルパ−オキサイドとN,N−ジメチル−p−トルイジン、ベンゾイルパ−オキサイドとN,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジンが好適に使用される。
【0194】
これらの重合開始剤及び/又は増感剤(C)の使用量は、特に限定するものではないが、通常、重合性単量体(A)に対して、0.001〜10重量%の範囲内であり、好ましくは0.001〜5重量%の範囲内である。
本発明の歯科用組成物において配合成分として金属酸化物多孔質粒子(B)以外のフィラーを含むことができるが、かかるフィラーは特に制限されるものではなく、通常、公知の無機粒子、有機粒子および有機無機複合粒子が挙げられる。
【0195】
無機粒子としては、非晶質シリカ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカーチタニアー酸化バリウム、石英、アルミナ等が挙げられる。さらに、これら無機酸化物粒子を高温で焼成する際に緻密な無機酸化物粒子を得やすくする等の目的で、少量の周期律表第I族の金属酸化物を該無機酸化物粒子中に存在させた複合酸化物の粒子を用いることもできる。歯科用としては、シリカとジルコニアとを主な構成成分とする複合酸化物の無機粒子がX線造影性を有することから、特に好適に用いられる。
【0196】
これら無機粒子の粒径、形状は特に限定されず、一般的に歯科用材料として使用されている、球状や不定形の、平均粒子径0.01μm〜100μmのフィラーを目的に応じて適宜使用すればよい。また、これら粒子の屈折率も特に限定されず、一般的な歯科用組成物の粒子が有する1.4〜1.7の範囲のものが制限なく使用できる。中でもより高い表面滑沢性や、対磨耗性を得るために、形状が球状もしくは略球状の無機紛体及び/またはその凝集体を用いることが好適である。
【0197】
上記無機球状粒子の粒径等は特に制限される物ではないが、より高い表面滑沢性や対磨耗性を得る為には、平均粒径が0.01μm〜1μmの無機粒子及び/又は該無機粒子の凝集体からなる無機球状粒子を用いるのが好適である。これら無機球状粒子は、単一の粒子系、及び平均粒子経が異なる2つあるいはそれ以上の群からなる混合粒子系で使用することができる。
【0198】
また、更に高い粒子充填率と良好な操作性を両立する目的で、有機無機複合粒子を好適に使用できる。有機無機複合粒子とは、重合性単量体と、無機粒子を主成分とする重合硬化性組成物を重合硬化させた後に粉砕して得られるものであり、公知の製造方法によって製造される有機無機複合粒子が何ら制限なく用いられる。
これらの粒子は、単独で使用されてもよく、あるいは、2種類以上を混合して使用されても差し支えない。
【0199】
これらの金属酸化物多孔質粒子(B)以外のフィラーを本発明の歯科用組成物に配合することにより、より重合収縮を小さくすることができ、または、硬化前の歯科用組成物の操作性の改良、あるいは、硬化後の機械的物性の向上を計ることができる。
かかるフィラーの配合量は、光重合性単量体(A)、金属酸化物多孔質粒子(B)の合計量100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部の範囲であり、より好ましくは3〜50重量部の範囲である。
【0200】
さらに、これら無機粒子、有機−無機複合粒子等のフィラーは各々単独で用いても良いし、材質、粒径、形状等の異なる複数種のものを併用しても良いが、硬化後の機械的物性に優れる点で、無機粒子単独、或いは無機粒子と有機−無機複合粒子を併用して用いるこ
とが特に好ましい。
【0201】
さらに本発明の歯科用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、重合禁止剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤等の安定化剤、その他染料、帯電防止剤、顔料、香料、有機溶媒や増粘剤等の公知の添加剤が配合されていても良い。
本発明の歯科用組成物は上記のような歯科用充填修復材料として特に好適に使用されるが、それに限定されるものではなく、歯科用接着材や義歯床用材料等その他の歯科治療分野の用途にも使用できる。
【実施例】
【0202】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない
【0203】
<シリカ多孔質粒子の形成−1>
<ポリオレフィン系末端分岐型共重合体の合成>
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)はGPCを用い、本文中に記載した方法で測定した。また、融点(Tm)はDSCを用い、測定して得られたピークトップ温度を採用した。なお、測定条件によりポリアルキレングリコール部分の融点も確認されるが、ここでは特に断りのない場合ポリオレフィン部分の融点のことを指す。H−NMRについては、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンのピークを5.92ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。分散液中の粒子の粒子径はマイクロトラックUPA(HONEYWELL社製)にて、体積50%平均粒子径を測定した。分散液中の粒子の形状観察は、試料を200倍から500倍に希釈し、リンタングステン酸によりネガティブ染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM/日立製作所製H−7650)で100kVの条件にて行なった。
【0204】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)の合成)
以下の手順(例えば、特開2006−131870号公報の合成例2参照)に従って、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)を合成した。
【0205】
充分に窒素置換した内容積2000mlのステンレス製オートクレーブに、室温でヘプタン1000mlを装入し、150℃に昇温した。続いてオートクレーブ内をエチレンで30kg/cmG加圧し、温度を維持した。MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)0.5ml(0.5mmol)を圧入し、次いで下記式の化合物のトルエン溶液(0.0002mmol/ml)0.5ml(0.0001mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガス雰囲気下、150℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られたポリマー溶液を、少量の塩酸を含む3リットルのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、片末端二重結合含有エチレン系重合体(P)を得た。
【0206】
【化31】

【0207】
500mlセパラブルフラスコに上記片末端二重結合含有エチレン系重合体(P)100g(Mn850として,ビニル基108mmol)、トルエン300g、NaWO0.85g(2.6mmol)、CH(nC17NHSO0.60g(1.3mmol)、およびリン酸0.11g(1.3mmol)を仕込み、撹拌しながら30分間加熱還流し、重合物を完全に溶融させた。内温を90℃にした後、30%過酸化水素水37g(326mmol)を3時間かけて滴下した後、内温90〜92℃で3時間撹拌した。その後、90℃に保ったまま25%チオ硫酸ナトリウム水溶液34.4g(54.4mmol)を添加して30分撹拌し、過酸化物試験紙で反応系内の過酸化物が完全に分解されたことを確認した。次いで、内温90℃でジオキサン200gを加え、生成物を晶析させ、固体をろ取しジオキサンで洗浄した。得られた固体を室温下、50%メタノール水溶液中で撹拌、固体をろ取しメタノールで洗浄した。更に当該固体をメタノール400g中で撹拌して、ろ取しメタノールで洗浄した。室温、1〜2hPaの減圧下乾燥させることにより、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)の白色固体96.3gを得た(収率99%,ポリオレフィン転化率100%)。
【0208】
得られた末端エポキシ基含有エチレン重合体(E)は、Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)であった。(末端エポキシ基含有率:90mol%)
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88(t, 3H, J = 6.92 Hz), 1.18 - 1.66 (m), 2.38 (dd,1H, J = 2.64, 5.28 Hz), 2.66 (dd, 1H, J = 4.29, 5.28 Hz), 2.80-2.87 (m, 1H)
融点(Tm) 121℃
Mw=2058、Mn=1118、Mw/Mn=1.84(GPC)
【0209】
1000mLフラスコに、末端エポキシ基含有エチレン重合体(E) 84重量部、ジエタノールアミン39.4重量部、トルエン150重量部 を仕込み、150℃にて4時間撹拌した。その後、冷却しながらアセトンを加え、反応生成物を析出させ、固体を濾取した。得られた固体をアセトン水溶液で1回、更にアセトンで3回撹拌洗浄した後、固体を濾取した。その後、室温にて減圧下乾燥させることにより、重合体(I)(Mn=1223、一般式(9)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R=R=水素原子、Y、Yの一方が水酸基、他方がビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ基)を得た。
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88 (t, 3H, J = 6.6 Hz), 0.95-1.92 (m), 2.38-2.85 (m, 6H), 3.54-3.71 (m, 5H)
融点 (Tm) 121℃
【0210】
窒素導入管、温度計、冷却管、撹拌装置を備えた500mLフラスコに、重合体(I)20.0重量部、トルエン100重量部を仕込み、撹拌しながら125℃のオイルバスで
加熱し、固体を完全に溶解した。90℃まで冷却後、予め5.0重量部の水に溶解した0.323重量部の85%KOHをフラスコに加え、還流条件で2時間混合した。その後、フラスコ内温度を120℃まで徐々に上げながら、水及びトルエンを留去した。さらに、フラスコ内にわずかな窒素を供給しながらフラスコ内を減圧とし、さらに内温を150℃まで昇温後、4時間保ち、フラスコ内の水及びトルエンをさらに留去した。室温まで冷却後、フラスコ内で凝固した固体を砕き、取り出した。
【0211】
加熱装置、撹拌装置、温度計、圧力計、安全弁を備えたステンレス製1.5L加圧反応器に、得られた固体のうち18.0重量部及び脱水トルエン200重量部を仕込み、気相を窒素に置換した後、撹拌しながら130℃まで昇温した。30分後、エチレンオキシド9.0重量部を加え、さらに5時間、130℃で保った後、室温まで冷却し、反応物を得た。得られた反応物より溶媒を乾燥して除き、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)(Mn=1835、一般式(1)においてA:エチレンの重合により形成される基(Mn=1075)、R=R=水素原子、X、Xの一方が一般式(6)で示される基(X11=ポリエチレングリコール基)、他方が一般式(5)で示される基(Q=Q=エチレン基、X=X10=ポリエチレングリコール基))を得た。
1H-NMR : δ(C2D2Cl4) 0.88(3H, t, J= 6.8 Hz), 1.06 - 1.50 (m), 2.80 - 3.20 (m), 3.33 - 3.72 (m)
融点(Tm) −16℃(ポリエチレングリコール)、116℃
【0212】
<ポリオレフィン系末端分岐型共重合水性分散体の調製例>
(10重量%ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液の調製)
前記合成例で得られたポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)10重量部と蒸留水40重量部を100mlのオートクレーブに装入し、140℃、800rpmの速度で30分間加熱撹拌の後、撹拌を保ったまま室温まで冷却した。得られた分散系の体積50%平均粒子径は0.018μmであった。(体積10%平均粒子径0.014μm、体積90%平均粒子径0.022μm)得られた分散系の透過型電子顕微鏡観察結果から測定した粒子径は0.015−0.030μmであった。更に、この(T)水性分散液(固形分20重量%)75重量部に対して蒸留水75重量部を加えることで10重量%ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)水性分散液を得た。
【0213】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TMOS脱水縮合物溶液の調製)
テトラメトキシシラン(TMOS)10重量部に溶媒のメタノール15重量部を添加し、室温で攪拌した。さらに触媒の1M−シュウ酸水溶液2重量部を滴下した後(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体添加後のpHを3付近にするため)、室温で攪拌し、TMOSの脱水縮合物を得た。
【0214】
得られたTMOSの脱水縮合物に、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)の水性分散体(固形分10重量%)を73重量部滴下し、室温で攪拌し、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TMOS脱水縮合物溶液を調製した。(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカ:SiO2換算の重量比が65/35)
【0215】
シリカ含有量は、複合粒子中に占めるシリカの含有の割合を示し、以下の方法で算出した。シリカ含有率は、TMOSが100重量%反応し、SiO2になったと仮定して算出した。すなわち
TMOS:Mw=152
SiO2:Mw=60
より、
SiO2/TMOS=60/152=0.395である。つまり、TMOSの添加量に0.395を掛けた値が、粒子中のSiO2含量となる。
【0216】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカ複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置(ヤマト科学社製スプレードライヤーADL311S)に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカの複合微粒子を得た。
【0217】
(シリカ多孔質粒子(S−1)の形成)
得られたポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカ複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成することによってポリオレフィン系末端分岐型共重合体を除去してシリカ多孔質粒子(S−1)を得た。粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM/JEOL社製JSM−6701F型)を用い、1.5kVの条件で観察した。その結果、1〜10μmを球形状の粒子が観察された。収束イオンビーム(FIB)加工によって粒子の断面切片を切り出した。続いて、この断面の形状を、透過型電子顕微鏡(TEM/日立製作所製H−7650)を用い200kVの条件にて観察したところ、10−20nmの細孔がキュービック相構造を呈し配列していることがわかった。シリカ多孔質粒子(S−1)の窒素吸脱着測定から全細孔容積を算出した結果、細孔径分布のピークは12.3nm、連結孔の分布のピークは3.7nm、比表面積697m/g、全細孔容積1.15ml/g、全細孔容積から求められる空孔率は71.7%であった。(嵩密度:1/(1.15/0.717)=0.623)
【0218】
<シリカ多孔質粒子の形成−2>
(ポリメタアクリル酸エステル系共重合体/TMOS脱水縮合物溶液の調製)
ポリメタアクリル酸エステル系共重合体の水性分散体(アクリルエマルジョン)として、三井化学社製PAN−6(粒子径:90−130nm)を用いた。
【0219】
テトラメトキシシラン(TMOS)10重量部に溶媒のメタノール15重量部を添加し、室温で攪拌した。さらに触媒の1M−シュウ酸水溶液2重量部を滴下した後(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体添加後のpHを3付近にするため)、室温で攪拌し、TMOSの脱水縮合物を得た。
【0220】
得られたTMOSの脱水縮合物に、PAN−6(固形分10重量%)を73重量部滴下し、室温で攪拌し、ポリメタアクリル酸エステル系共重合体/TMOS脱水縮合物溶液を調製した。(ポリメタアクリル酸エステル系共重合体/シリカ:SiO2換算の重量比が65/35)
【0221】
(ポリメタアクリル酸エステル系共重合体/シリカ複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置(ヤマト科学社製スプレードライヤーADL311S)に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、ポリメタアクリル酸エステル系共重合体/シリカの複合微粒子を得た。
【0222】
(シリカ多孔質粒子(S−2)の形成)
得られたポリメタアクリル酸エステル系共重合体/シリカ複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成することによってポリメタアクリル酸エステル系共重合体を除去してシリカ多孔質粒子(S−2)を得た。SEMによる観察では1〜10μmを球形状の粒子が観察された。TEMにより粒子断面を観察したところ100〜150nmの細孔がキュービック相構造を呈し配列していることがわかった。窒素吸着測定から求めた細孔径分布のピークは143nmであり、全細孔容連結孔の分布のピークは44nm、比表面積88m/g、全細孔容積1.21ml/g、空孔率は72.6%であった。(嵩密度:1/(1.21/0.726)=0.6)
【0223】
<シリカ多孔質粒子の形成−3>
(界面活性剤Pluronic P123/TEOS脱水縮合物溶液の調製)
テトラエトキシシラン(TEOS)1.04重量部に溶媒のエタノール1.2重量部を添加し、室温で攪拌した。さらに触媒の0.01N―塩酸水溶液0.54重量部を滴下した後、20℃で20分攪拌し、TEOSの脱水縮合物を得た。さらに、別途エタノール0.8重量部にPluronic P123を0.275重量部溶解させた溶液を滴下し、室温で攪拌し、P123/TEOS脱水縮合物溶液を調製した。
【0224】
(界面活性剤Pluronic P123/シリカ複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置(ヤマト科学社製スプレードライヤーADL311S)に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、界面活性剤Pluronic P123/シリカの複合微粒子を得た。
【0225】
(シリカ多孔質粒子(S−3)の形成)
得られたPluronic P123/シリカ複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成することによって界面活性剤Pluronic P123を除去してシリカ多孔質粒子(S−3)を得た。SEMによる観察では1〜15μmを球形状の粒子が観察された。TEMにより粒子断面を観察したところ、4nmの細孔がヘキサゴナル相構造を呈し配列していることがわかった。窒素吸着測定から求めた細孔径分布のピークは4nmであり、比表面積825m/g、全細孔容積1.07ml/g、空孔率は70.0%であった。(嵩密度:1/(1.07/0.70)=0.65)
【0226】
<シリカ多孔質粒子の形成−4>
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TMOS脱水縮合物溶液の調製)
テトラメトキシシラン(TMOS)34.3重量部に溶媒のメタノール15重量部を添加し、室温で攪拌した。さらに触媒の1M−シュウ酸水溶液2重量部を滴下した後(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体添加後のpHを3付近にするため)、室温で攪拌し、TMOSの脱水縮合物を得た。
【0227】
得られたTMOSの脱水縮合物に、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体(T)の水性分散体(固形分10重量%)を73重量部滴下し、室温で攪拌し、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/TMOS脱水縮合物溶液を調製した。(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカ:SiO2換算の重量比が35/65)
【0228】
(ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカ複合粒子の形成)
この組成物をスプレードライヤー装置(ヤマト科学社製スプレードライヤーADL311S)に流し込み、ノズル出口温度190℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧することで、ポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカの複合微粒子を得た。
【0229】
(シリカ多孔質粒子(S−4)の形成)
得られたポリオレフィン系末端分岐型共重合体/シリカ複合粒子を、電気炉を用いて、室温から600℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに600℃で2時間焼成することによってポリオレフィン系末端分岐型共重合体を除去してシリカ多孔質粒子(S−4)を得た。粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM/JEOL社製JSM−6701F型)を用い、1.5kVの条件で観察した。その結果、1〜10μmを球形状の粒子が観察された。収束イオンビーム(FIB)加工によって粒子の断面切片を切り出した。続いて、この断面の形状を、透過型電子顕微鏡(TEM/日立製作所製H−7650)を用い200kVの条件にて観察したところ、10−20nmの細孔がキュービック相構造を呈し配列していることがわかった。シリカ多孔質粒子(S−4)の窒素吸脱着測定から全細孔容積を算出した結果、細孔径分布のピークは12.2nm、連結孔の分布のピークは3.7nm、比表面積200m/g、全細孔容積0.4ml/g、全細孔容積から求められる空孔率は46.8%であった。(嵩密度:1/(0.4/0.468)=1.17)
【0230】
前記(S−1)〜(S−4)の形成において、窒素吸脱着測定は次の通り行った。
オートソーブ3(カンタクローム社製)を使用し、液体窒素温度下(77K)における窒素ガス吸着法にて測定した。
なお、シリカ多孔質粒子、アエロジルOX−50の特性は表1に記載した。
【0231】
評価試験
[体積収縮率試験]
セル内に歯科用組成物を充填した後、セルを90℃で2時間加熱して、歯科用組成物を熱硬化させた。気体置換型ピクノメータ(島津製作所社製:アキュピックII)を用い、熱硬化後の歯科用組成物の密度(D1)を測定した。
【0232】
次いで、歯科用光照射器(JETLITE3000)を用いて、熱硬化後の歯科用組成物を30秒間光照射して、光重合させた。気体置換型ピクノメータ(島津製作所社製:アキュピックII)を用い、光重合後の歯科用組成物の密度(D2)を測定した。
【0233】
得られた熱硬化後の歯科用組成物の密度(D1)と光重合後の歯科用組成物の密度(D2)とから、下記式に基づいて、歯科用組成物の収縮率を算出した。
収縮率(%)={(硬化後密度D2−硬化前密度D1)/硬化後密度D2)}×100
【0234】
(参考例1)
ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物(Bis−GMA)とトリエチレングリコールジメタクリレート(3G)が重量比で60:40となるように混合した。得られた混合物(Bis−GMA/3G)にカンファ−キノン(CQ)とN,N−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルを混合物に対して各々0.3重量%添加し組成物(ペースト)を調製し、実施例1と同様の方法で組成物の密度および硬化物の密度を測定し収縮率を計算した。
【0235】
(実施例1)
ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物(Bis−GMA)とトリエチレングリコールジメタクリレート(3G)が重量比で60:40となるように混合した。得られた混合物(Bis−GMA/3G)を0.658g、金属酸化物多孔質粒子の形成−1で得られたシリカ多孔質粒子(S−1)を0.296g、シリカフィラー(アエロジルOX−50 EVONIC社製)0.046gを混合し、カンファ−キノン(CQ)とN,N−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルを混合物に対して各々0.3重量%添加し組成物(ペースト)を調製し、密度測定装置(ガスピクノメーター アキュピックII 1340)を用いて室温下、密度を測定した。次いで、ガラス板上に置いた直径10mm、高さ5mm円柱状の鋳型を開けたシリコンシートに組成物を入れ、上部にセロファンフィルムを乗せて歯科用光照射装置(ジェットライト3000 モリタ製)を用いて上面より1分、下面より30秒照射した。得られた硬化物の密度を前記の密度測定装置を用いて測定し収縮率を計算した。
【0236】
(実施例2〜4)
混合物(Bis−GMA/3G)、シリカ多孔質粒子(S−1)、シリカフィラーの配合比を表1に示すように変える以外実施例1と同様の方法で組成物を調製し密度を測定し、硬化物を形成し、組成物の密度および硬化物の密度を測定し収縮率を計算した。
【0237】
(実施例5)
シリカ多孔質粒子を金属酸化物多孔質粒子の形成−1で得られたシリカ多孔質粒子(S−2)変更する以外は実施例1と同様の方法で組成物の密度および硬化物の密度を測定し収縮率を計算した。
【0238】
(比較例1)
混合物(Bis−GMA/3G)を0.658g、金属酸化物多孔質粒子の形成−3で得られたシリカ多孔質粒子(S−3)を0.296g、シリカフィラー(アエロジルOX−50 EVONIC社製)0.046gを混合し、カンファ−キノン(CQ)とN,N−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルを各々0.003g添加し組成物(ペースト)を調製し、実施例1と同様の方法で組成物の密度および硬化物の密度を測定し収縮率を計算した。
【0239】
(比較例2)
混合物(Bis−GMA/3G)を0.658g、金属酸化物多孔質粒子の形成−4で得られたシリカ多孔質粒子(S−4)を0.296g、シリカフィラー(アエロジルOX−50 EVONIC社製)0.046gを混合し、カンファ−キノン(CQ)とN,N−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルを各々0.003g添加し組成物(ペースト)を調製し、実施例1と同様の方法で組成物の密度および硬化物の密度を測定し収縮率を計算した。
【0240】
(参考例2)
3Gのみにカンファ−キノン(CQ)とN,N−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルを3Gに対して各々0.3重量%添加し組成物(ペースト)を調製し、実施例1と同様の方法で組成物の密度および硬化物の密度を測定し収縮率を計算した。
【0241】
(実施例6)
3Gを0.700gにし、金属酸化物多孔質粒子の形成−1で得られたシリカ多孔質粒子(S−1)を0.300gとする以外は実施例1と同様の方法で組成物の密度および硬化物の密度を測定し収縮率を計算した。
【0242】
(比較例3)
シリカ多孔質粒子を混合せず、(3G)を0.700g、シリカフィラー(アエロジルOX−50 EVONIC社製)を0.300gとする以外は実施例1と同様の方法で組成物の密度および硬化物の密度を測定し収縮率を計算した。
表2に示すようにシリカ多孔質粒子を配合した場合低い収縮率を示すことがわかった。シリカ多孔質粒子がペーストの状態では金属酸化物多孔質粒子の細孔中に光重合性単量体を充填し、重合時に放出させるホストゲスト化合物として働いているか検証した。実施例1で測定した値に基づいて説明する。
【0243】
まず、実施例1において、光重合性単量体(Bis−GMA/3G)とシリカ多孔質粒子(S−1)、シリカフィラー、光重合開始剤を混合した際の光重合性単量体の移動について説明する。
【0244】
組成物の硬化前の体積(実測値)=1g/1.229(硬化前密度:D1)=0.814ml。光重合性単量体のみの体積=0.658g/1.128(光重合性単量体の密度)=0.580ml。一方、理論的には、シリカ多孔質粒子(S−1)のみの体積=0.296g/0.623(S−1の嵩密度)=0.475ml。シリカフィラーの体積=0.046g/2.206(シリカフィラーの密度)=0.021ml。よって組成物の硬化前の体積(理論値)=0.580+0.475+0.021=1.076ml。組成物の硬化前の体積の理論値と実測値間(VB1−VB2)には0.814-1.076=−0.262mlの差が見られる。ちなみにシリカ多孔質粒子(S−1)の空孔の体積は=0.475ml×0.717(空孔率)=0.337mlである。このことから混合時に光重合性単量体0.262mlがS−1の空孔内に侵入していることが推察出来る。
【0245】
次に組成物の光重合時における光重合性単量体の移動について説明する。
組成物の光硬化後の体積(実測値)=1g/1.2612(硬化後密度:D2)=0.793mlと計算される。一方、収縮率に関係するのは光重合性単量体のみであるので、理論的には光重合後の体積(理論値)=(0.580-0.262)×(1-1×0.0813)(光重合性単量体の収縮率:8.13% 参考例1)=0.292ml。よって体積は0.292+0.475+0.021=0.788mlと計算される。
【0246】
硬化後の体積の理論値と実測値間(VA1−VA2)には0.005mlの差が生じており、この差分は光重合時にS−1の空孔から光重合性単量体が放出されたものと推察出来る。
【0247】
実施例2〜実施例6、比較例1、2についても実施例1と同様に求めた値を表2に載せた。
これらから、明らかにシリカ多孔質粒子(S−1)、(S−2)を添加した場合には、それらがホストゲスト化合物として作用していることは明らかである。一方、シリカ多孔質粒子(S−3)、(S−4)を添加した場合はホストゲストの作用が見られなかった。これは細孔径が小さいこと、空孔率が小さいこと、および細孔の構造に関係しているものと推察される。
【0248】
【表1】

【0249】
表1中、−は孔が小さすぎるか存在しないため測定不可であることを示す。
【0250】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体(A)、金属酸化物多孔質粒子(B)、及び、重合開始剤および/または増感剤(C)を含み、金属酸化物多孔質粒子(B)は平均細孔径が10〜300nmであり、比表面積が80m/g以上であり、かつ空孔率が50体積%以上であることを特徴とする歯科用硬化性組成物。
【請求項2】
前記金属酸化物多孔質粒子(B)の細孔構造がキュービック相構造であり、細孔間が3nm以上の孔径で連結されていることを特徴とする請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物多孔質粒子(B)は珪素、チタン、ジルコニウム、イットリウム、およびアルミニウムからなる群から選択される金属を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項4】
前記重合性単量体(A)が光ラジカル重合性物質であり、重合開始剤および/または増感剤が光重合開始剤および/または光増感剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項5】
前記光重合性単量体(A)に対して、金属酸化物粒子(B)が5〜80重量%及び重合開始剤および/または増感剤(C)が0.001〜10重量%含まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項6】
光重合促進剤としてさらにアミン系化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項7】
さらに、金属酸化物多孔質粒子(B)以外の無機粒子、有機粒子および有機無機複合粒子からなる群から選択される少なくとも1つのフィラーを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の歯科用組成物を重合して得られる硬化物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−224582(P2012−224582A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93837(P2011−93837)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】