説明

歯科用硬化性組成物及び歯科用修復材料

【課題】天然歯の色調に近似した色調を与えるだけでなく、太陽光に長時間暴露しても、審美性に影響を与えるほどの変色のない(太陽光安定性に優れる)歯科用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】重合性単量体(A)、重合開始剤(B)、及び下記一般式(I)で表されるマロン酸エステル化合物(C)を含有する歯科用硬化性組成物とする。(式中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然歯に対する色調適合性に優れ、なお且つ太陽光に長期間暴露しても硬化体の変色が少ない、歯科用修復材料に好適な歯科用硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歯科用修復材料として(メタ)アクリル系樹脂組成物等の硬化性樹脂組成物が汎用されている。硬化性樹脂組成物を用いた歯科用修復材料は、レジン系歯科用修復材料と呼ばれ、一般に、重合性単量体、重合開始剤、光安定剤(重合禁止剤、紫外線吸収剤など)、フィラーなどで構成される。
【0003】
レジン系歯科用修復材料が、従前の金属材料やセラミックスに代わる材料として歯科治療において使用されるようになった理由は、それが審美性及び操作性に優れ、天然歯の色調に近似した色調を修復部に与えるからである。最近では、臨床での操作が簡便であることから、可視光を照射することにより重合性単量体を重合硬化させることができる光重合性の歯科用修復材料が汎用されている。
【0004】
色調に関し、従来より、硬化物の色安定性を改善してその経時的な変色を防止するために、レジン系歯科用修復材料に紫外線吸収剤を配合することが行われている。主な紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(例、特許文献1及び2)、トリアジン系紫外線吸収剤(例、特許文献3)、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が使用されている。
【0005】
特許文献1は、重合性単量体、α−ジケトン、芳香族第三級アミン、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有する光重合性歯科用修復材料に関するものである。硬化後の機械的強度が高く、硬化前のペースト状態における環境光に対する安定性、及び硬化後の色調安定性に優れた歯科用修復材料を得ることができるとされている。しかし、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤自身が、黄色を呈し、天然歯の色調に近似した硬化物本来の色調に影響を与えるため、改善の余地があった。
【0006】
特許文献2は、ラジカル重合性単量体、α−ジケトン、トリハロメチル基により置換されたトリアジン化合物、芳香族アミン化合物、脂肪族アミン化合物、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有する光重合性歯科用修復材料に関するものである。硬化時間を短縮し、なおかつ硬化後の機械的強度が高く、硬化前のペースト状態における環境光に対する安定性、及び硬化後の色調安定性に優れた歯科用修復材料を得ることができるとされている。しかし、トリハロメチル基により置換されたトリアジン化合物を含有する修復材料は、太陽光による変色が大きく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を使用しても、色調安定性は低く、改善が望まれていた。また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤自身が、黄色を呈し、天然歯の色調に近似した硬化物本来の色調に影響を与えるため、改善の余地があった。
【0007】
特許文献3は、ラジカル重合性単量体、α−ジケトン、トリハロメチル基により置換されたトリアジン化合物、芳香族アミン化合物、脂肪族アミン化合物、及びトリアジン系紫外線吸収剤を含有する光重合性歯科用修復材料に関するものである。硬化時間を短縮し、なおかつ硬化後の機械的強度が高く、硬化前のペースト状態における環境光に対する安定性、及び硬化後の色調安定性に優れた歯科用修復材料を得ることができるとされている。しかし、トリハロメチル基により置換されたトリアジン化合物を含有する修復材料は、太陽光による変色が大きく、トリアジン系紫外線吸収剤を使用しても、色調安定性は低く、改善が望まれていた。また、トリアジン系紫外線吸収剤自身が、黄色を呈し、天然歯の色調に近似した硬化物本来の色調に影響を与えるため、改善の余地があった。
【0008】
さらに、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、化学重合性歯科用修復材料のころから使用されている紫外線吸収剤であるが、十分に高い機械的強度を硬化物に発現させ得る量の光重合開始剤を配合したレジン系歯科用修復材料にベンゾフェノン系紫外線吸収剤を配合しても、硬化物の色安定性を十分に改善することができないばかりでなく、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤自身が黄緑色を呈したり蛍光物質であったりすると天然歯の色調に近似した硬化物本来の色調に影響を与えるため、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−231913号公報
【特許文献2】特開2006−076912号公報
【特許文献3】特開2006−117543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、天然歯の色調に近似した色調を与えるだけでなく、太陽光に長時間暴露しても、審美性に影響を与えるほどの変色のない(太陽光安定性に優れる)歯科用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、重合性単量体(A)、重合開始剤(B)、及び下記一般式(I)で表されるマロン酸エステル化合物(C)を含有する歯科用硬化性組成物である。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0014】
本発明の歯科用硬化性組成物は、好ましくは、重合促進剤(D)をさらに含有する。本発明の歯科用硬化性組成物は、好ましくは、平均粒子径が0.1μm以上の無機粒子(E)をさらに含有する。
【0015】
本発明の歯科用硬化性組成物においては、前記R1、R2、及びR3が、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。前記重合性単量体(A)が、(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。前記重合開始剤(B)が、光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0016】
本発明はまた、上記の歯科用硬化性組成物を用いた歯科用修復材料である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、天然歯の色調に近似した色調を与えるだけでなく、太陽光に長時間暴露しても、審美性に影響を与えるほどの変色のない(太陽光安定性に優れる)歯科用硬化性組成物が提供される。このことにより、歯科治療において、天然歯に近似した色調を有し(審美性が高く)、なおかつ長期間にわたって、審美性が低下しにくい、優れた歯科用修復材料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の歯科用硬化性組成物は、重合性単量体(A)、重合開始剤(B)、及び下記一般式(I)で表されるマロン酸エステル化合物(C)を含有するものである。
【0019】
【化2】

【0020】
一般式(I)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基を示す。
【0021】
重合性単量体(A)としては、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。重合性単量体(A)におけるラジカル重合性単量体の具体例としては、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸などのエステル類、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体などが挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。なお、本発明において(メタ)アクリルの表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体系の重合性単量体の例を以下に示す。
(I)一官能性(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド誘導体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0023】
(II)二官能性(メタ)アクリレートの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート(2,2−ビス[4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、通称BisGMA)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)などが挙げられる。
【0024】
(III)三官能性以上の(メタ)アクリレートの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどが挙げられる。
【0025】
前記重合性単量体は、いずれも、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
なお、歯質、金属、セラミックスなどに対する接着性を向上させる場合、本発明の歯科用硬化性組成物には、これらの被着体に対する接着性を付与する機能性モノマーを重合性単量体(A)として含有させることが好ましい場合がある。
【0027】
機能性モノマーとして、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェートなどのリン酸基を有するモノマー、及び11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸などのカルボン酸基を有するモノマーは、歯質や卑金属に対して優れた接着性を呈するので好ましい。
【0028】
また、機能性モノマーとして、例えば、10−メルカプトデシル(メタ)アクリレート、6−(4−ビニルベンジル−n−プロピル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオン、特開平10−1473号公報に記載のチオウラシル誘導体や特開平11−92461号公報に記載の硫黄元素を有する化合物は、貴金属に対して優れた接着性を呈するので好ましい。
【0029】
さらに、機能性モノマーとして、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤は、セラミックス、陶材、歯科用コンポジットレジンへの接着に効果的である。
【0030】
特に歯科用修復材料としての良好な硬化体物性(機械的強度、非溶出性など)を得るためには、これら機能性モノマーの配合量は、重合性単量体(A)100重量部中に30重量部以下、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下とするのがよい。
【0031】
本発明に用いられる重合開始剤(B)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。特に、光重合及び化学重合の重合開始剤が、単独で又は2種以上適宜組み合わせて使用される。歯科用硬化性組成物の汎用性の観点からは、重合開始剤(B)は、光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0032】
光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、水溶性アシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α−ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α−アミノケトン系化合物などが挙げられる。
【0033】
上記光重合開始剤として用いられる(ビス)アシルホスフィンオキサイド類のうち、アシルホスフィンオキサイド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネートなどが挙げられる。ビスアシルホスフィンオキサイド類としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0034】
上記光重合開始剤として用いられる水溶性アシルホスフィンオキサイド類は、アシルホスフィンオキサイド分子内にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ピリジニウムイオン又はアンモニウムイオンを有することが好ましい。例えば、水溶性アシルホスフィンオキサイド類は、欧州特許第0009348号明細書又は特開昭57−197289号公報に開示されている方法により合成することができる。
【0035】
上記水溶性アシルホスフィンオキサイド類の具体例としては、モノメチルアセチルホスホネート・ナトリウム、モノメチル(1−オキソプロピル)ホスホネート・ナトリウム、モノメチルベンゾイルホスホネート・ナトリウム、モノメチル(1−オキソブチル)ホスホネート・ナトリウム、モノメチル(2−メチル−1−オキソプロピル)ホスホネート・ナトリウム、アセチルホスホネート・ナトリウム、モノメチルアセチルホスホネート・ナトリウム、アセチルメチルホスホネート・ナトリウム、メチル4−(ヒドロキシメトキシホスフィニル)−4−オキソブタノエート・ナトリウム塩、メチル−4−オキソホスホノブタノエート・モノナトリウム塩、アセチルフェニールホスフィネート・ナトリウム塩、(1−オキソプロピル)ペンチルホスフィネート・ナトリウム、メチル−4−(ヒドロキシペンチルホスフィニル)−4−オキソブタノエート・ナトリウム塩、アセチルペンチルホスフィネート・ナトリウム、アセチルエチルホスフィネート・ナトリウム、メチル(1,1−ジメチル)メチルホスフィネート・ナトリウム、(1,1−ジエトキシエチル)メチルホスフィネート・ナトリウム、(1,1−ジエトキシエチル)メチルホスフィネート・ナトリウム、メチル−4−(ヒドロキシメチルホスフィニル)−4−オキソブタノエート・リチウム塩、4−(ヒドロキシメチルホスフィニル)−4−オキソブタノイックアシッド・ジリチウム塩、メチル(2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−チアゾリディン−2−イル)ホスホナイト・ナトリウム塩、(2−メチルパーヒドロ−1,3−ディアジン−2−イル)ホスホナイト・ナトリウム塩、アセチルホスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジエトキシエチル)ホスホナイト・ナトリウム塩、(1,1−ジエトキシエチル)メチルホスホナイト・ナトリウム塩、メチル(2−メチルオキサチオラン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2,4,5−トリメチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1,1−プロポキシエチル)ホスフィネート・ナトリウム塩、(1−メトキシビニル)メチルホスフィネート・ナトリウム塩、(1−エチルチオビニル)メチルホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチルパーヒドロ−1,3−ジアジン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチルパーヒドロ−1,3−チアジン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−ジアゾリジン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(2−メチル−1,3−チアゾリジン−2−イル)ホスフィネート・ナトリウム塩、(2,2−ジシアノ−1−メチルエチニル)ホスフィネート・ナトリウム塩、アセチルメチルホスフィネートオキシム・ナトリウム塩、アセチルメチルホスフィネート−O−ベンジルオキシム・ナトリウム塩、1−[(N−エトキシイミノ)エチル]メチルホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−フェニルイミノエチル)ホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−フェニルヒドラゾンエチル)ホスフィネート・ナトリウム塩、[1−(2,4−ジニトロフェニルヒドラゾノ)エチル]メチルホスフィネート・ナトリウム塩、アセチルメチルホスフィネートセミカルバゾン・ナトリウム塩、(1−シアノ−1−ヒドロキシエチル)メチルホスフィネート・ナトリウム塩、(ジメトキシメチル)メチルホスフィネート・ナトリウム塩、フォーミルメチルホスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルホスフィネート・ナトリウム塩、メチル(1−オキソプロピル)ホスフィネート・ナトリウム塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルホスフィネート・ドデシルグアニジン塩、(1,1−ジメトキシプロピル)メチルホスフィネート・イソプロピルアミン塩、アセチルメチルホスフィネートチオセミカルバゾン・ナトリウム塩、1,3,5−トリブチル−4−メチルアミノ−1,2,4−トリアゾリウム(1,1−ジメトキシエチル)−メチルホスフィネート、1−ブチル−4−ブチルアミノメチルアミノ−3,5−ジプロピル−1,2,4−トリアゾリウム(1,1−ジメトキシエチル)−メチルホスフィネート、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイドナトリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイドカリウム塩、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイドのアンモニウム塩などが挙げられる。さらに、特開2000−159621号公報に記載されている化合物も挙げられる。
【0036】
これら(ビス)アシルホスフィンオキサイド類及び水溶性アシルホスフィンオキサイド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイドナトリウム塩が特に好ましい。
【0037】
上記光重合開始剤として用いられるチオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩としては、例えば、チオキサントン、2−クロルチオキサンセン−9−オン、2−ヒドロキシ−3−(9−オキシ−9H−チオキサンテン−4−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(1−メチル−9−オキシ−9H−チオキサンテン−4−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−(1,3,4−トリメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドなどが使用できる。
【0038】
これらチオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩の中でも、特に好適なチオキサントン類は、2−クロルチオキサンセン−9−オンであり、特に好適なチオキサントン類の第4級アンモニウム塩は、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドである。
【0039】
上記光重合開始剤として用いられるケタール類の例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等が挙げられる。
【0040】
上記光重合開始剤として用いられるα−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ジベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。この中でも、可視光域に極大吸収波長を有している観点から、カンファーキノンが特に好ましい。
【0041】
上記光重合開始剤として用いられるクマリン化合物の例としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−チェノイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイルクマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3,5−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3−ベンゾイル−6−ブロモクマリン、3,3’−カルボニルビスクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3−カルボキシクマリン、3−カルボキシ−7−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−6−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−8−メトキシクマリン、3−アセチルベンゾ[f]クマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−ニトロクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノ)クマリン、7−メトキシ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−(4−ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3−(4−エトキシシンナモイル)−7−メトキシクマリン、3−(4−ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3−(4−ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3−[(3−ジメチルベンゾチアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3−[(1−メチルナフト[1,2−d]チアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3,3’−カルボニルビス(6−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジメチルアミノクマリン)、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−アセチル−7−(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン、10−(2−ベンゾチアゾイル)−2,3,6、7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン等の特開平9−3109号公報、特開平10−245525号公報に記載されている化合物が挙げられる。
【0042】
上述のクマリン化合物の中でも、特に、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)及び3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)が好適である。
【0043】
上記光重合開始剤として用いられるアントラキノン類の例としては、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノンなどが挙げられる。
【0044】
上記光重合開始剤として用いられるベンゾインアルキルエーテル類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0045】
上記光重合開始剤として用いられるα−アミノケトン類の例としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0046】
これらの光重合開始剤の中でも、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類及びその塩、α−ジケトン類、及びクマリン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、可視及び近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す組成物が得られる。
【0047】
本発明に用いられる重合開始剤のうち化学重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。上記の化学重合開始剤に使用される有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0048】
上記化学重合開始剤として用いられるケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
【0049】
上記化学重合開始剤として用いられるハイドロパーオキサイドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0050】
上記化学重合開始剤として用いられるジアシルパーオキサイドとしては、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0051】
上記化学重合開始剤として用いられるジアルキルパーオキサイドとしては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等が挙げられる。
【0052】
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン及び4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等が挙げられる。
【0053】
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシエステルとしては、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート及びt−ブチルパーオキシマレリックアシッド等が挙げられる。
【0054】
上記化学重合開始剤として用いられるパーオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0055】
これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルパーオキサイドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルパーオキサイドが特に好ましく用いられる。
【0056】
本発明に用いられる重合開始剤(B)の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体(A)100重量部に対して、重合開始剤(B)を0.01〜10重量部含有してなることが好ましい。重合開始剤(B)の配合量が0.01重量部未満の場合、重合が十分に進行せず、機械的強度の低下を招くおそれがあり、より好適には0.1重量部以上である。一方、重合開始剤(B)の配合量が10重量部を超える場合、重合開始剤(B)自体の重合性能が低い場合には、十分な機械的強度が得られなくなるおそれがあり、さらには組成物からの析出を招くおそれがあるため、より好適には5重量部以下である。
【0057】
本発明に用いられるマロン酸エステル化合物(C)は、下記一般式(I)で表される構造を有する。
【0058】
【化3】

【0059】
一般式(I)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基を示す。
【0060】
このような構造を有するマロン酸エステル化合物(C)を紫外線吸収剤として用いることにより、組成物の硬化体の色調を損なわず、さらに硬化体に優れた太陽光安定性を付与することができる。
【0061】
1〜R3で示される炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。R1〜R3としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0062】
以下、マロン酸エステル化合物(C)を具体的に例示すると、4−メトキシベンジリデンジメチルマロネート、4−メトキシベンジリデンジエチルマロネート、4−メトキシベンジリデン−ジ(n−プロピル)マロネート、4−メトキシベンジリデンジイソプロピルマロネート、4−メトキシベンジリデン−ジ(n−ブチル)マロネート、4−メトキシベンジリデン−ジ(t−ブチル)マロネート、4−メトキシベンジリデン−ジ(1−メチルブチル)マロネート、4−メトキシベンジリデン−ジ(2−メチルブチル)マロネート、4−メトキシベンジリデン−ジ(n−ペンチル)マロネート、4−メトキシベンジリデン−ジ(1,1−ジメチルプロピル)マロネート、4−メトキシベンジリデン−ジ(1−メチルペンチル)マロネート、4−メトキシベンジリデン−ジ(2,2−ジメチルプロピル)マロネート、4−メトキシベンジリデン−ジ(1−メチルプロピル)マロネート、4−メトキシベンジリデン−ジ(2−メチルプロピル)マロネート、4−メトキシベンジリデン−ジ(3−メチルブチル)マロネート、4−メトキシベンジリデン−ジシクロヘキシルマロネート、4−エトキシベンジリデンジイソプロピルマロネート、4−プロポキシベンジリデンジイソプロピルマロネート、4−ブトキシベンジリデンジイソプロピルマロネート等が挙げられる。
【0063】
これらマロン酸エステル化合物(C)は、1種又は2種以上を混合して用いても構わない。該マロン酸エステル化合物(C)の配合量は本発明の効果を得られる範囲であれば特に限定されることはないが、多すぎると硬化体の強度に影響を与える場合があるので、一般的には重合性単量体(A)100重量部に対して0.01〜10重量部であり、より好ましくは0.02〜5重量部である。
【0064】
本発明の歯科用硬化性組成物には、審美性を損なわない範囲で、必要に応じてマロン酸エステル化合物(C)以外の紫外線吸収剤を配合してもよい。
【0065】
好ましい実施態様では、重合促進剤(D)が用いられる。本発明に用いられる重合促進剤(D)としては、アミン類、スルフィン酸及びその塩、アルデヒド類、チオール化合物、トリアジン化合物等が挙げられる。
【0066】
重合促進剤(D)として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミン等が挙げられる。これらの中でも、組成物の硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、その中でもN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましく用いられる。
【0067】
また、芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル及び4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0068】
重合促進剤(D)として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0069】
重合促進剤(D)として用いられるアルデヒド類としては、例えば、テレフタルアルデヒドやベンズアルデヒド誘導体等が挙げられる。ベンズアルデヒド誘導体としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−メチルオキシベンズアルデヒド、p−エチルオキシベンズアルデヒド、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒド等が挙げられる。これらの中でも、硬化性の観点から、p−n−オクチルオキシベンズアルデヒドが好ましく用いられる。
【0070】
重合促進剤(D)として用いられるチオール化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0071】
重合促進剤(D)として用いられるトリアジン化合物としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,4−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(o−メトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(p−ブトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−エチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−{N,N−ジアリルアミノ}エトキシ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が例示される。
【0072】
上記で例示したトリアジン化合物の中で好ましいものは、重合活性の点で2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンであり、また保存安定性の点で、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。上記トリアジン化合物は1種又は2種以上を混合して用いても構わない。
【0073】
本発明に用いられる重合促進剤(D)の配合量は特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体(A)100重量部に対して、重合促進剤(D)を、0.001〜10重量部含有してなることが好ましい。重合促進剤(D)の配合量が0.001重量部未満の場合、重合が十分に進行せず、機械的強度の低下を招くおそれがあり、より好適には、0.05重量部以上である。一方、重合促進剤(D)の配合量が10重量部を超える場合には、重合開始剤自体の重合性能が低い場合には、十分な機械的強度が得られなくなるおそれがあり、より好適には5重量部以下である。
【0074】
次に、本発明の歯科用硬化性組成物には、さらなる高性能化を目的とし、本発明の効果を阻害しない範囲で、無機粒子(E)、無機超微粒子(F)等の成分を含有させてもよい。
【0075】
本発明の歯科用硬化性組成物は、硬化物の機械的特性などの向上を目的として、無機粒子(E)を含むことが好ましい。本発明において、無機粒子(E)とは、平均粒子径が0.1μm以上の無機粒子のことをいう。無機粒子(E)の平均粒子径としては、0.1〜1.0μmが好ましく、0.15〜0.9μmがより好ましく、0.15〜0.7μmが特に好ましい。平均粒子径が0.1μm未満では、組成物を歯科用修復材料に用いる場合に、機械的強度が不十分であったり、ペーストにべたつきを生じ操作性が不十分となるおそれがあり、1.0μmを超えると、硬化物の研磨滑沢性や滑沢耐久性を損なうおそれがある。
【0076】
なお、無機粒子(E)の平均粒子径は、レーザー回折散乱法により、求めることができる。具体的に例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100:島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することができる。
【0077】
無機粒子(E)としては、歯科用硬化性組成物に使用される公知の無機粒子が何ら制限なく使用される。当該無機粒子としては、各種ガラス類〔シリカを主成分とし、必要に応じ、重金属、ホウ素、アルミニウム等の酸化物を含有する。例えば、溶融シリカ、石英、ソーダライムシリカガラス、Eガラス、Cガラス、ボロシリケートガラス(パイレックス(登録商標)ガラス)等の一般的な組成のガラス粉末;バリウムガラス(GM27884、8235、ショット社製、Ray−SorbE2000、Ray−SorbE3000、SpecialtyGlass社製)、ストロンチウム・ボロシリケートガラス(Ray−SorbE4000、SpecialtyGlass社製)、ランタンガラスセラミックス(GM31684、ショット社製)、フルオロアルミノシリケートガラス(GM35429、G018−091、G018−117、ショット社製)などの歯科用ガラス粉末〕、各種セラミック類、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア等の複合酸化物、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイトなど)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、フッ化イットリウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、シリカを主成分として含むもの(シリカを25重量%以上、好ましくは40重量%以上含むもの)が好適である。
【0078】
無機粒子(E)は、重合性単量体(A)と組み合わせて歯科用硬化性組成物に用いることから、無機粒子(E)と重合性単量体(A)との親和性を改善したり、無機粒子(E)と重合性単量体(A)との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させるために、予め表面処理剤で表面処理を施しておくことが望ましい。
【0079】
かかる表面処理剤として、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物が挙げられる。有機金属化合物を2種以上使用する場合は、2種以上の有機金属化合物の混合物の表面処理層としてもよいし、複数の有機金属化合物層が積層した複層構造の表面処理層としてもよい。
【0080】
有機ケイ素化合物としては、R4nSiX4-nで表される化合物が挙げられる(式中、R4は、炭素数1〜12の置換又は無置換の炭化水素基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、nは、0〜3の整数である。R4及びXが複数ある場合にはそれぞれ、同一でも異なっていてもよい。)
【0081】
具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン((メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン((メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等)等が挙げられる。
【0082】
この中でも、重合性単量体(A)と共重合し得る官能基を有するカップリング剤、例えばω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン((メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12)、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン((メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が特に好ましく用いられる。
【0083】
有機チタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等が挙げられる。
【0084】
有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニルアセテート等が挙げられる。
【0085】
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物等が挙げられる。
【0086】
無機粒子(E)の形状としては特に制限されることなく、不定形もしくは球形の粒子の粉末として用いることができる。不定形の無機粒子(E)を用いると、機械的強度及び耐磨耗性に特に優れ、球形の無機粒子(E)を用いると、研磨滑沢性及び滑沢耐久性に特に優れる。無機粒子(E)の形状は歯科用硬化性組成物の目的に応じて適宜選択すればよい。
【0087】
無機粒子(E)の配合量としては、重合性単量体(A)100重量部に対して50〜400重量部が好ましく、100〜350重量部がより好ましく、150〜300重量部が特に好ましい。
【0088】
本発明の歯科用組成物は、ペースト操作性などの向上を目的として、無機超微粒子(F)を含んでいてもよい。本発明において、無機超微粒子(F)とは、平均粒子径が0.1μm(100nm)未満の無機粒子のことをいう。無機超微粒子(F)の平均粒子径としては、5〜50nmが好ましく、10〜40nmがより好ましい。なお、無機超微粒子(F)の平均粒子径は、超微粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、無作為に選択した100個の超微粒子の粒子径の平均値として測定できる。なお、超微粒子が非球状である場合には、粒子径は、超微粒子の最長と最短の長さの算術平均をもって粒子径とし、凝集粒子である場合には、一次粒子の粒子径とする。
【0089】
本発明における無機超微粒子(F)としては、歯科用硬化性組成物に使用される公知の無機超微粒子が何ら制限なく使用される。好ましくは、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物粒子、又はこれらからなる複合酸化物粒子、燐酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フッ化イットリウム、フッ化イッテルビウム等が挙げられる。好ましくは、火炎熱分解法で作製されるシリカ、アルミナ、チタニア等の粒子であり、例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル、アエロキサイドAluC、アエロキサイドTiO2P25、アエロキサイドTiO2P25S、VP Zirconium Oxide 3−YSZ、VP Zirconium Oxide 3−YSZ PHが挙げられる。
【0090】
無機超微粒子(F)は、無機粒子(E)と同様に、重合性単量体(A)と組み合わせて歯科用組成物に用いることから、該無機超微粒子(F)と重合性単量体(A)との親和性を改善したり、該無機超微粒子(F)と重合性単量体(A)との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させるために、予め表面処理剤で表面処理を施しておくことが望ましい。かかる表面処理剤としては無機粒子(E)で例示した有機金属化合物を同様に用いることができる。
【0091】
無機超微粒子(F)の配合量としては、重合性単量体(A)100重量部に対して10〜50重量部が好ましく、10〜40重量部がより好ましく、15〜30重量部が特に好ましい。
【0092】
本発明の歯科用硬化性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、pH調整剤、酸化防止剤、重合禁止剤、着色剤、抗菌剤、X線造影剤、増粘剤、蛍光剤などをさらに添加することも可能である。
【0093】
例えば、硬化後の表面からフッ素イオン徐放性を期待する場合、フルオロアルミノシリケートガラス、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッ素イオン徐放性フィラーを添加することもできる。
【0094】
また、抗菌性を期待する場合は、例えば、セチルピリジニウムクロライド、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイドなどの抗菌活性を有する界面活性剤や光触媒性酸化チタンを添加することができる。
【0095】
本発明の歯科用硬化性組成物は、天然歯の色調に近似した色調を有し、太陽光に長時間暴露しても、審美性に影響を与えるほどの変色のない(太陽光安定性に優れる)硬化体を与える。さらに、本発明の歯科用硬化性組成物は、硬化体の機械的強度が高く、無機粒子(E)を配合することで、機械的強度をさらに高めることも可能である。
【0096】
本発明の歯科用硬化性組成物は、歯科用修復材料に好適に用いることができ、当該歯科用修復材料は、天然歯の色調に近似した色調を有し、太陽光に長時間暴露しても、審美性に影響を与えるほどの変色のない(太陽光安定性に優れる)審美性に優れた歯科用修復材料となる。本発明において、歯科用修復材料とは、歯の形態を修復する材料のことをいい、歯科用コンポジットレジンなどの充填修復材料、クラウン、インレーなどの歯冠修復材料、人工歯、義歯、CAD/CAM用レジンブロック等のことをいう。本発明の歯科用硬化性組成物は、なかでも、歯科用コンポジットレジンとして特に好適に用いることができる。また、本発明の歯科用硬化性組成物は、歯列矯正用接着材、窩洞塗布用接着材及び歯牙裂溝封鎖材などの歯科用接着材、義歯床用材料、義歯床用粘膜調整材、フィッシャーシーラント、歯面や歯科用補綴物へのコーティング材、表面滑沢材、歯科用マニキュアなどの歯科材料として用いることもできる。
【0097】
本発明の歯科用硬化性組成物を歯科用修復材料に用いる場合、すべての配合成分が事前に混合ペースト化された1ペースト型のものでも、2つのペーストに分けて製造、保管、供給され、使用直前に両ペーストを混合して用いる2ペースト型のものでも、あるいは他の形態のいずれのものでもよいが、使用時の混合操作が不要なため操作性に優れ、また安定した物性のものとして供給することが容易な点で、1ペースト型のものであることが好ましい。
【0098】
このような1ペースト型の歯科用修復材料を製造する方法は特に限定されず、公知の1ペースト型の光重合型歯科用修復材料の製造方法に従えばよい。一般的には、遮光下、配合する各成分を所定量秤とり、均一になるまで混練し、必要に応じて混練時に混入した気泡の脱泡を行えばよい。得られた組成物のペーストは、遮光容器に小分けされその状態で、歯科医院や歯科技工所へ供給される。また2ペースト型の場合など他の形態を採用する場合も同様である。
【実施例】
【0099】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例に用いた各紫外線吸収剤を以下に示す。
【0100】
マロン酸エステル化合物:4−メトキシベンジリデンジメチルマロネート(「ホスタビンPR−25」、クラリアント社製)(以後、MBM)
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(以後、BCT)
トリアジン系紫外線吸収剤:2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール(以後、BDT)
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤:2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(以後、BPN)
【0101】
〔製造例1〕重合性単量体組成物1の製造
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数:2.6)(D2.6Eと称する)70重量部と、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMAと称する)30重量部を混合し、得られた重合性単量体100重量部に対して、重合開始剤としてα−カンファーキノン0.5重量部、及び重合促進剤として4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル1.0重量部を溶解させ、さらに、紫外線吸収剤として、MBM、又は、BCT、又は、BDT、又は、BPNを表1に記載の重量部で配合し、重合性単量体組成物1を得た。
【0102】
〔製造例2〕重合性単量体組成物2の製造
D2.6E70重量部と、TEGDMA30重量部を混合し、得られた重合性単量体100重量部に対して、重合開始剤としてα−カンファーキノン0.2重量部、並びに重合促進剤として2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン0.2重量部、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル1.0重量部、及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート0.5重量部を溶解させ、さらに、紫外線吸収剤として、MBM、又は、BCT、又は、BDT、又は、BPNを表2に記載の重量部で配合し、重合性単量体組成物2を得た。
【0103】
〔製造例3〕重合性単量体組成物3の製造
ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート(通称BisGMA)70重量部と、TEGDMA30重量部を混合し、得られた重合性単量体100重量部に対して、重合開始剤としてα−カンファーキノン0.2重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド1.0重量部、並びに重合促進剤として4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル1.0重量部、及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート0.5重量部を溶解させ、さらに、紫外線吸収剤として、MBM、又は、BCT、又は、BDT、又は、BPNを表3に記載の重量部で配合し、重合性単量体組成物3を得た。
【0104】
〔製造例4〕無機粒子Eの製造
市販バリウムガラス(GM27884NF180、ショット社製、平均粒子径0.18μm)100gをエタノール500mLに分散し、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10gと水5gを加えて、室温で2時間撹拌した後、溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって表面処理して、無機粒子Eを得た。
【0105】
〔製造例5〕無機超微粒子Fの製造
市販微粒子アルミナ(AEROXIDE Alu C、日本アエロジル社製、平均粒子径13nm)100gに対して、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30gと水15gを加えて、製造例3と同様の方法により表面処理して、無機超微粒子Fを得た。
【0106】
〔実施例1〜3及び比較例1〜3〕
重合性単量体組成物1を30重量部と無機粒子Eを65重量部と無機超微粒子Fを5重量部混合し、均一のペースト状になるまで乳鉢中でよく混練した。さらにこれを真空脱泡して、実施例1〜3及び比較例1〜3の歯科用硬化性組成物を得た。
【0107】
〔実施例4及び比較例4〜6〕
重合性単量体組成物2を30重量部と無機粒子Eを65重量部と無機超微粒子Fを5重量部混合し、実施例1〜3と同様の方法により、実施例4及び比較例4〜6の歯科用硬化性組成物を得た。
【0108】
〔実施例5及び比較例7〜9〕
重合性単量体組成物3を30重量部と無機粒子Eを65重量部と無機超微粒子Fを5重量部混合し、実施例1〜3と同様の方法により、実施例5及び比較例7〜9の歯科用硬化性組成物を得た。
【0109】
〔試験例1〕 黄着色の測定
実施例及び比較例で得られた歯科用硬化性組成物をハロゲン照射器を用いて光硬化させ、硬化物試験片(10mmφ×1mm)を作製した。また、紫外線吸収剤を含有していない対照となる硬化物試験片を作製した。具体的には、D2.6E70重量部と、TEGDMA30重量部を混合し、得られた重合性単量体100重量部に対して、重合開始剤としてα−カンファーキノン0.5重量部、及び重合促進剤として4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル1.0重量部を溶解させ、重合性単量体組成物を得た。この重合性単量体組成物を30重量部と無機粒子Eを65重量部と無機超微粒子Fを5重量部混合し、均一のペースト状になるまで乳鉢中でよく混練した後、真空脱泡して歯科用硬化性組成物を得た。これをハロゲン照射器を用いて光硬化させ、対照となる硬化物試験片(10mmφ×1mm)を作製した。実施例及び比較例の硬化物試験片と対照となる硬化物試験片の黄色味(白背景のb*)を、色差計(SE6000、日本電色工業社製、光源D65/2)を用いて測定し、下式から、その差を黄着色Δb*で表した。
Δb*=b1*−b2
なお、b1*:実施例及び比較例の試験片の黄色味、b2*:対照の試験片の黄色味である。なお、黄着色Δb*は小さいほど良く、3以下が好ましい。
【0110】
〔試験例2〕 耐変色性の測定
直径15mmの貫通孔を開けた厚さ1mmのステンレス製型に歯科用硬化性組成物を填入し、ポリプロピレンフィルムで圧接して、歯科用光照射器(JETライト3000、モリタ社製)で歯科用硬化性組成物全体に光があたるように5箇所を各20秒ずつ光照射した。試験片の半分をアルミ箔で覆い、耐光試験機サンテストCPS(東洋精機製)に入れ、24時間暴露した。アルミ箔で覆った部分(未露光部)と直射日光に暴露した部分(露光部)の色調(白背景のL*,a*,b*)を、色差計(SE6000、日本電色工業社製、光源D65/2)を用いて測定し、下式から、その差を耐変色性ΔE*で表した。
ΔE*={(L1*−L2*)2+(a1*−a2*)2+(b1*−b2*)21/2
なお、L1*,a1*,b1*:未露光部の色調、L2*,a2*,b2*:露光部の色調である。なお、耐変色性ΔE*は小さいほど良く、3以下が好ましい。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

【0114】
実施例1〜3の結果が示すように、紫外線吸収剤として特定構造のマロン酸エステル化合物を配合した場合には、黄着色を抑えながら、十分な耐変色性が得られる。一方、比較例1〜3の結果が示すように、従来の紫外線吸収剤を配合した場合には、十分な耐変色性が得られるものの、黄着色が大きい。これは、紫外線吸収剤そのものが黄色を呈しているためである。また、表2に示すように重合促進剤としてトリハロメチル基により置換されたトリアジン化合物を配合した場合、従来の紫外線吸収剤を用いたのでは全体的に黄着色が大きくなり、耐変色性が低下するが、実施例4に示すように、マロン酸エステル化合物を配合した場合、黄着色、耐変色性とも十分に許容できるレベルとなる。さらに、表3に示すように重合開始剤として(ビス)アシルホスフィンオキサイド類を配合した場合にも、従来の紫外線吸収剤を用いたのでは全体的に黄着色が大きくなり、耐変色性が低下するが、実施例5に示すように、マロン酸エステル化合物を配合した場合、黄着色、耐変色性とも十分に許容できるレベルとなる。
【0115】
以上の結果から、特定構造のマロン酸エステル化合物を配合することによって、黄着色を抑えつつ、太陽光安定性に優れた歯科用硬化性組成物が得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の歯科用硬化性組成物は、歯科医療分野において、天然歯に対する色調適合性に優れ、なお且つ太陽光に長期間暴露しても硬化体の変色が少ない歯科用修復材料として、好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体(A)、重合開始剤(B)、及び下記一般式(I)で表されるマロン酸エステル化合物(C)を含有する歯科用硬化性組成物。
【化1】

(式中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【請求項2】
重合促進剤(D)をさらに含有する請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項3】
平均粒子径が0.1μm以上の無機粒子(E)をさらに含有する請求項1又は2に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項4】
前記R1、R2、及びR3が、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項5】
前記重合性単量体(A)が、(メタ)アクリル酸エステルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項6】
前記重合開始剤(B)が、光重合開始剤を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物を用いた歯科用修復材料。

【公開番号】特開2012−171955(P2012−171955A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38814(P2011−38814)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(301069384)クラレノリタケデンタル株式会社 (110)
【Fターム(参考)】