説明

歯科用窯

【課題】歯科用窯に関して特段の追加的な費用を投資する必要なく歯科補綴部材の品質に関して改善することができる歯科用窯ならびに歯科用窯の操作方法を提供する。
【解決手段】燃焼室12は吸引ライン38を介して負圧源40に接続される。燃焼室と吸引ラインの間にバルブ構成22を配置し、前記バルブ構成の支援によって前記燃焼室内の負圧を維持するために前記吸引ラインを前記燃焼室に対して閉鎖し得るようにする。前記吸引ラインは前記バルブ構成と前記負圧源の間で特に周囲環境空気接続部32を介してガス抜き可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は請求項1前段に記載の歯科用窯、ならびに請求項13前段に記載の特に歯科用窯の操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のいわゆる焼成サイクル内で歯科補綴部材を焼成する歯科用窯は久しい以前から知られている。
【0003】
すなわち、独国特許出願公開第1160777号A明細書によって負圧ポンプとしてのピストンポンプの形式の負圧源を備えた電気的に加熱可能な歯科用窯が開示されている。ポンプはその設計により重大なレベルの騒音を発生させるため、数mの長さの負圧ラインあるいは吸引ラインを介して動作することが好適であり、すなわち歯科用窯からいくらか空間的に離間する。ここでその種の吸引ラインは負圧に対して耐久性であるとともにある程度柔軟であるホースとして形成される。加えて、歯科用窯の燃焼室によって放出される空気が窯の壁部を通過する際に冷却されるにもかかわらず比較的高温であるため、ホースは耐熱性でなければならない。
【0004】
通常、実際に歯科用窯が例えば1200℃の焼成温度で稼働中であるかあるいは1600℃の高温焼成温度で稼働中であるかにかかわらず、大凡で見て300℃までの耐熱性を提供する必要がある。
【0005】
近年、歯科補綴部材を製造するためにいわゆるマッフル窯が歯科用窯として使用されている。その一例が独国特許第4002358号C1明細書に開示されている。その種の歯科用窯内において、成形/製造されるセラミック部材が半加工品あるいは“未加工材料”として用意された石膏性のマッフル内に形成されたスプルー内に挿入される。マッフルは、通常いわゆる予加熱窯内で例えば700℃の開始温度に既に加熱された後に、歯科補綴部材と共に加熱される。この歯科用窯の燃焼室は、負圧、すなわちいわゆる“真空”を形成する負圧ポンプによる負圧下に曝される。その後、押しプランジャが半加工材を押圧し、上昇する温度のために歯科補綴部材材料が軟化すると燃焼室全体に存在する負圧の効果によって製造すべき歯科補綴部材の形状に相当する型空洞部内に細孔を伴うことなく到達する。
【0006】
この方法は長く知られていて信頼性が確立されているが、その際勿論歯科補綴部材の製造を達成するための要件は燃焼室全体、すなわちさらにマッフル自体にも充分な大きさの負圧が存在することである。
【0007】
石膏あるいは同様な鋳込み材料は気密性でも液密性でもないがある程度の流体抵抗を有し、従って燃焼室内における完全に均一な負圧の形成には負圧源を形成する吸引ポンプの少なくとも数秒あるいは数分の動作が要求される。特に予加熱されたマッフルにおいて“開始温度”が既に室温よりも大幅に高くなっており、吸引ポンプがターンオンすると同時に高温の空気が吸引ライン内に流入する。
【0008】
汚染されている可能性もある高温の空気によって吸引ポンプが損傷することを防止するために、少なくともポンプの製造者、場合によっては歯科用窯の製造者も負圧ラインを例えば3mとされる所定の長さよりも短くしてはいけないことを提示している。負圧ラインの所要の柔軟性を保証するために内径(従ってさらに外径)が製造上適宜な大きさに限定され、それによって標準の負圧ラインの使用も可能になる。その種の負圧ラインはメートル単位で入手可能であるため、その長さを歯科技工所内の特定の環境に適合させることもできる。
【0009】
幾らか長い吸引ラインの別の利点は、ある程度の“圧力弾性”が提供されることであり;負圧ラインがバッファとして作用すると同時に負圧ポンプの構造によってその負圧ポンプによって生成されることがあり得る負圧ピークを防止する。
【0010】
現在まで任意の長さの所要の負圧ラインの設計を妨害していた重大な難点は、それが目詰まりする傾向を有する点である。燃焼室と周囲空気との間の大きな温度格差のため、吸い出されなかった燃焼室からの湿気が負圧ライン内で凝結する。このことは流動抵抗の増加につながるばかりでなく、負圧ライン内における水滴の蒸発熱が負圧を増加させるよりもむしろ低下させるため特に負圧の質の悪化につながる。
【0011】
この観点から、歯科用窯の製造者は常に特殊な除湿プログラムを開発しており、負圧ライン内の水滴を除去するための種々の試みを実施してきた。
【0012】
さらに、追加的な負担を伴わずに複数の負圧ラインを提供し、水滴の形成が過度に多くなった際に単純にラインを交換することも提案されている。しかしながらこのことは実用的でない上に追加的な所蔵場所を必要とし、また新しい負圧ラインの取り付けに際して密封性の問題が生じる可能性もある。
【0013】
マッフル自体および/またはセラミックから形成された歯科補綴部材材料が重大なレベルの残留湿気を含む可能性があることが古くから知られている。
【0014】
残留湿気を除去するために、歯科用窯が負圧下において除湿温度で稼働される。この除湿プログラムの間に歯科用窯のバルブが外部の負圧源に向かって開放され従って水蒸気を含有する空気が吸引ラインを介して負圧源に流れる。従って吸引ラインが過剰に湿潤し、そのことは歯科用セラミックがその後加熱される場合、ならびにプレス工程の間に負圧を必ず所要の質に維持する必要がある場合に問題となり得る。
【0015】
長い吸引ライン内における湿気の沈着が過度に大きいとそのラインはもはや機能せず、それによって補綴に対して悪影響がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って本発明の目的は、歯科用窯に関して特段の追加的な費用を投資する必要なく歯科補綴部材の品質に関して改善することができる請求項1前段に記載の歯科用窯ならびに請求項13前段に記載の歯科用窯の操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の課題は本発明に従って請求項1および13によって解決される。従属請求項によって好適な追加構成が定義される。
【0018】
本発明によれば吸引ラインあるいは負圧ラインのための特殊なフラッシングプログラムを提供することが特に好適であり、それによって一方でラインを浄化、すなわち流体抵抗を元の程度に回帰させ、他方では水滴の形態で存在する湿気を除去する。このフラッシングプログラムの間本発明に従って燃焼室内の負圧が保持され、そのことはいずれにしても歯科用窯上あるいは歯科用窯内に設けられるバルブ構成によって達成される。
【0019】
このようにして、本発明に係るフラッシングプログラムは前述の歯科用窯の除湿プログラムの間でも実施することができるが、さらに焼成プロセス中または燃焼窯がターンオフされている際または負圧試験プログラムの間等の他の任意の時点で実施することができる。
【0020】
本発明によれば、吸引ラインを形成する冷温のホースが完全にフラッシングおよび除湿されることが極めて好適である。燃焼窯自体の領域内、すなわちバルブ構成と燃焼室の間において吸引ホースあるいは吸引ラインが比較的高温になり従ってそこでは沈着は発生しない。吸引ホースが歯科用窯を出るとそのホースは直ちに周囲環境温度に曝され、それが吸引ライン内の高温かつ高湿度の空気に対して冷却トラップを形成し、それが水滴の沈着につながる。
【0021】
本発明によれば経済性の高い負圧ポンプでも使用可能であることが好適であり、それには負圧下における負圧ポンプの再始動を許容しないポンプも含まれる。その種のポンプを再始動するために一時的かつ追加的な手間をかけずにそれをフラッシングに切換えることができ、それによってポンプを再始動することができる。しかしながら、ポンプの新たな再始動の間も本発明に従って燃焼室内の負圧が保持される。
【0022】
本発明によれば負圧源および歯科用窯の外部に延在する吸引ホースの要素が燃焼室を密封するバルブ構成を介して完全に分離され得ることが特に好適である。圧力的に分離することにより、例えばポンプを交換することによってメンテナンス作業を容易に実施することができ、他方燃焼室内の負圧は保持される。この方式によって負圧ポンプの再始動も容易に可能になることが理解される。
【0023】
本発明によれば比較的高コストなフリーホイーリングを内蔵したポンプを伴わずに実施することも好適である。その種の真空ポンプは負圧ラインに影響を与えることなくポンプ自体のフラッシングを可能にするものとして既に提案されており、本発明に利点がその支援によって達成されるものではない。
【0024】
それに対して本発明によれば、冷却トラップとして特に凝結に曝される吸引ラインあるいは負圧ラインがポンプを使用して浄化可能であるかまたはフラッシング可能である。毎分14lないし毎分20lのポンプ出力において1分間に1モルを幾らか上回る水が吸引ラインから最終的に除去され、従って燃焼室へのポンプ圧力の短時間の中断(しかしながらその際も燃焼室内の負圧は保持されるが)で大抵の場合において所要のフラッシングを保証するために充分である。
【0025】
好適な実施形態によれば、前記の作用を達成するためにバルブ(群)を手動あるいは自動的にターンオンするバルブ構成の制御装置が使用される。オン/オフバルブは例えばフラッシングプログラムのために使用することができ、それは吸引ラインと燃焼室の間に延在するとともにフラッシングプログラムが開始される際は閉じられる。この実施形態によればそのバルブに近接して、すなわち吸引ラインの前部分に別のオン/オフバルブが設けられ、それもバルブ構成の一部を形成するとともに吸引ラインの入力をフラッシング入力と結合する。フラッシング入力は好適にはフィルタを介して周囲環境空気に接続することができ、前記フィルタが吸引ラインからの汚染物質の周囲環境空気への放出を防止する。
【0026】
2個のオン/オフバルブの使用に代えて、同様な機能を提供し特に吸引ライン入力を“周囲環境空気”と燃焼“室”の接続の間で切り替える単一の切り換えバルブを使用することもできる。
【0027】
燃焼室接続は直接的(勿論密封される)にフランジ取り付けによって燃焼室の金属製の外被に行うことができる。通常断熱材は比較的多孔性であり、従って断熱材を貫通する独立したラインは不要である。加えて、例えば軽量耐火煉瓦等の断熱材が吸引ラインの追加的な入力フィルタとして機能する。
【0028】
代替的な実施形態によれば、吸引入力上の断熱材が交換可能な特殊フィルタ要素を備える。従って燃焼室の排気がそのフィルタ要素を通過し、従って化学汚染物質が既にそのフィルタ上で遮断される。設計に応じてこのフィルタ要素は同時に断熱材として機能することができ、従って軽量耐火煉瓦と異なって追加的な熱損失が発生しない。必要に応じて、フィルタ要素が触媒変換可能な化学材料のための触媒を備えることもできる。
【0029】
軽量耐火煉瓦よりもさらに吸湿性の繊維材料を断熱材として使用する場合、断熱材量はそれが繊維質に形成されているとしても比較的に強力に加熱さるために湿気沈着は発生しないので、本発明に従って吸引接続部を窯の壁部上に取り付けることができる。
【0030】
本発明に従って、燃焼室の外被と歯科用窯のケーシングとの間にバルブ構成と対応する制御装置が設けられる。この実施形態において燃焼室温度が1600℃であってもバルブ構成が過熱することはない。これは短いパイプを介して燃焼室壁部から離間して配置され、周囲環境空気によって冷却される。
【0031】
本発明によればバルブ構成を有する歯科用窯が既に公知であったことが特に好適である。このため、本発明に係る歯科用窯は、例えば唯1個の追加的バルブを付加するかあるいは制御を変更することによる改造によって実現することもできる。
【0032】
本発明によれば、制御装置を介して燃焼室の内部圧力を記録し、フラッシングプログラムを開始するために得られた測定信号を使用することも可能である。この方式によって、燃焼室内における負圧の生成中に燃焼室内の内部圧力の低下が過度に停滞しすなわち水滴が凝結して吸引ラインが目詰まりしているためポンプが充分な出力を形成できないことが検知された際にフラッシングプログラムを自動的に追加することができる。
【0033】
負圧の測定は前述したものと同じ燃焼室の外被の接続で実施するか、あるいは必要に応じて別の測定用接続で実施することができる。
【0034】
変更された実施形態によれば、燃焼室の外被上に2つの吸引接続部が設けられ、それらに対して別々に負圧を付加することができる。切り換えは例えばそのために設けられた切り換えバルブを使用して行うことができ、また接続部のうち一方を窯の基底部に設け他方の接続部を窯の最上部あるいは窯天蓋部材上に設けることも可能である。
【0035】
本発明の好適な実施形態によれば、バルブ構成の制御装置が例えば1分等の予め設定された時間周期でガス抜きプログラムを選択することによって吸引ラインをガス抜きし、また特に繰り返しサイクルでフラッシングプログラムを実施する。
【0036】
本発明の好適な追加構成によれば、バルブ構成が切り換えバルブを備え、それの出力接続部が吸引ラインに結合され、それの一切り換え接続部が周囲環境空気接続部に接続され、それの他方の切り換え接続部は燃焼室吸引接続部とされ、前記切り換えバルブが制御装置によって制御可能である。
【0037】
本発明の好適な追加構成によれば、歯科用窯の制御装置が特に負圧ポンプを備えた負圧源にも作用し、前記負圧源はそれをターンオンおよびターンオフするために制御線を介してあるいはワイヤレス方式で制御装置に接続され、前記制御装置は特に吸引ラインがガス抜きされるべきと判断された際に負圧源をターンオンする。
【0038】
本発明の好適な追加構成によれば、バルブ構成が1つのバルブを備えていてそのバルブ介しつまりそれの開放に応じて前記バルブ構成の燃焼室接続部が周囲環境空気に接続可能であり、このバルブ構成の状態において特に歯科用窯の制御装置が負圧源をターンオフする。
【0039】
本発明の好適な追加構成によれば、燃焼室に負圧センサを接続して燃焼室内の圧力あるいは負圧を測定し、その出力信号を歯科用窯の制御装置によって記録し制御装置は負圧源をターンオンすることによって燃焼室内の所要の負圧を設定する。
【0040】
本発明の好適な追加構成によれば、燃焼室内の負圧を継続的に記録し負圧が過度に少ない際に負圧源をターンオンし、特に負圧源のターンオンにもかかわらず負圧が充分に増加しない場合にバルブ構成を制御して請求項1に記載のフラッシングプログラムをターンオンする。
【0041】
本発明の好適な追加構成によれば、焼成サイクル中、歯科用窯の特殊機能プログラム中、または各焼成サイクルの中間にフラッシングプログラムがターンオンされる。
【0042】
本発明の好適な追加構成によれば、制御装置が歯科用窯の負圧センサの出力信号を継続的あるいは繰り返し記録しかつ負圧源がターンオンされている間の圧力降下勾配、すなわち単位時間当たりの圧力降下を記録し、圧力降下勾配が所与の閾値未満になった際にフラッシングプログラムをターンオンする。
【0043】
本発明の好適な追加構成によれば、歯科用窯の燃焼室が第2の吸引ラインを介して負圧源に接続され、切り換えバルブを介して両方の吸引ラインを選択的にターンオン可能にし、従っていずれの時点においても吸引ラインのうちの一方がターンオンされ他方が遮断される。
【0044】
本発明の好適な追加構成によれば、少なくとも2個のバルブあるいは少なくとも1個の切り換えバルブおよび制御装置からなり上述したフラッシングプログラムを可能にするバルブ構成を設けて周知の歯科用窯を改造することができる。
【0045】
本発明の好適な追加構成によれば、負圧源、すなわちバルブ構成を介して相互接続された吸引ラインがターンオンされている際に燃焼室内の負圧の形成を継続的あるいは周期的に繰り返して測定し、燃焼室内の圧力(負圧)が所与の閾値相当よりも遅滞して降下した際にフラッシングプログラムを起動する。
【0046】
本発明のその他の詳細、特徴ならびに種々の利点は添付図面を参照しながら以下に記述する2つの実施例の説明によって理解される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る歯科用窯の第1の実施例を示した概略図である。
【図2】本発明に係る歯科用窯の第2の実施例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1に示されている歯科用窯10は歯科補綴部材を熱処理するための燃焼室12を備えている。図2に概略的に示されているように、周知の方式によって扉を使用するかあるいは燃焼室の基底と窯天蓋部材との間の分割によって燃焼室を開放することができる。
【0049】
燃焼室12は周囲環境に対して密封される。これは良好な断熱を保持するために周知のように比較的肉厚に形成された断熱材14によって被包される。断熱材は周知のようにガス透過性であり、気密性の燃焼室外被16によって被包される。
【0050】
燃焼室の外被は、吸引パイプの形式の吸引ラインに接続される吸引ライン接続部18を備える。吸引パイプが燃焼室16の外被とバルブ構成22の間の接続を形成し、そのバルブ構成の機能について以下に詳細に説明する。
【0051】
さらに、吸引パイプ20からスタブが圧力ゲージ24に向かって指向している。従って圧力ゲージ24あるいは負圧ゲージが吸引パイプ20を介して燃焼室12内の圧力を測定する。吸引パイプ20は比較的高い耐熱安定性を有するとともに比較的短いものであり、例えば5cmないし20cmである。これは以下に詳細に機能を説明するバルブ構成22に接続される。
【0052】
燃焼室12、圧力ゲージ24、およびバルブ構成22は各ライン接続を含めて全て歯科用窯10のケーシング26内に収容される。燃焼室12はその燃焼室12内に収容された歯科補綴部材28を加熱するための発熱ユニット27を備えている。比較的厚い断熱材14にもかかわらず、発熱ユニット27がターンオンされている際はケーシング26内部の幾らかの加熱は回避できない。このことは同様にケーシング26内に配置されている吸引パイプ20ならびにある程度はバルブ構成22に対しても該当する。しかしながら、燃焼室12からの距離が増加するに従って温度は低下する。しかしながら、燃焼室12が長時間にわたって1600℃に加熱されるとバルブ構成22が例えば100℃超まで昇温する。このことがバルブ構成22を耐熱性に形成する理由であり、それによって例えば200℃の温度でも問題なく機能するようにする。
【0053】
バルブ構成22は、燃焼室吸引ライン接続部30と、周囲環境空気接続部32と、フランジ36を介した流体接続の形式で吸引ライン38と結合された出力接続部34を備えている。吸引ライン38は数m、例えば2mないし10mの長さとされる。このラインのケーシング26とは逆側の末端には、負圧ポンプとして作用するピストンポンプ40が設けられる。
【0054】
ピストンポンプに代えて薄膜ポンプあるいはその他の任意のポンプを問題なく使用可能であることが理解される。周囲環境空気に曝される吸引ライン38の長さのため燃焼室12から吸引された空気が例えば50℃まで大幅に冷却されまたこの種の目的で使用される全てのポンプがその程度の環境を許容するため、ポンプは特段の耐熱性レベルを有する必要はない。
【0055】
以下に、バルブ構成22の機能について説明する。
【0056】
焼成サイクルの開始に際してピストンポンプ40はターンオンされておらず、バルブ構成22は燃焼室吸引ライン接続部30と出力接続部34の間の接続を形成する。しかしながら周囲環境空気接続部32はロックされている。
【0057】
この状態において、燃焼室12は大気圧下にあり歯科補綴部材28を挿入するために任意の好適な方式で開閉することができる。好適には、歯科補綴部材28は予加熱された(図示されていない)マッフル内に収容し、歯科用窯10をプレス窯として形成する。それに代えて、焼成のみに使用し歯科補綴部材を即座に焼成する窯も本発明に従って使用し得ることが理解される。
【0058】
焼成サイクルを開始するために発熱ユニット27をターンオンしてそれと同時にピストンポンプ40をターンオンする。この状態においても、バルブ構成22は燃焼室吸引ライン接続部30と出力接続部34の間で接続され、従って熱風が漸増的に燃焼室12の外に排出され徐々に負圧が生成される。
【0059】
通常マッフルおよび歯科補綴部材はある程度の残留湿気を含んでいる。残留湿気があまり低くない場合いわゆる除湿プログラムが通常は実質的な焼成サイクルの前に実施され、そのプログラムが湿気を除去するよう機能する。このため、燃焼室12内部の温度が例えば140℃になるような方式で発熱ユニットがターンオンする。水蒸気を含有した空気がピストンポンプ40を介して排出され外部に到達する。
【0060】
しかしながら、少なくともピストンポンプ側の端部において吸引ライン38が100℃よりも大幅に低温であるため吸引ライン38の内部で湿気が凝結して水滴を形成する。水滴は一方で通流断面を妨害して流体抵抗が増加する。他方では、それが生成される負圧の質に(悪い)影響を与える。その理由は、圧力が低下(すなわち減圧が増加)すると水の蒸発温度が顕著に低下し、従って水滴が増々気化してそのようにして生成された水蒸気が排気される空気に代わって排出されるためである。
【0061】
除湿プログラムが終了すると通常実質的な焼成サイクルがより高められた温度で実施され、その間ピストンポンプ40が同時に動作し従って燃焼室12内の圧力は低下し続ける。実質的な焼成サイクル温度は通常1000℃よりも顕著に高くなり、例えば二珪酸リチウムセラミックに対して約1150℃または二酸化ジルコニウムに対して1600℃となる。
【0062】
焼成サイクル加熱相の間圧力ゲージ24によって測定される燃焼室12の内部圧力がさらに低下する。これは圧力ゲージ24によって記録される。燃焼室内の圧力降下がピストンポンプ40の定格出力に従って所要の方式で実施され続ける限り、バルブ構成22は前述した状態を維持する。
【0063】
圧力ゲージ24はその圧力ゲージ24の出力信号を評価する制御装置50に接続される。制御装置50はバルブ構成22を電気的に制御する。圧力勾配が過小でありすなわち燃焼室12内の圧力降下が遅滞していると制御装置50が判定した場合、制御装置50がバルブ構成22を切り換える。これによって本発明に係るフラッシングプログラムが実施される。このバルブ構成22の状態において燃焼室吸引ライン接続部30がロックされる。
【0064】
しかしながら、この状態において周囲環境空気接続部32と出力接続部34の間の接続は存在する。周囲環境空気はエアフィルタ52を介して吸入される。この状態、すなわちフラッシングプログラムの間、ピストンポンプ40は例えば20l/分である最大ポンプ出力において動作する吸引ライン38内の流速も同様に高くなる。このためならびに吸引ライン38内に流入する乾燥した周囲環境空気によって吸引ライン38がフラッシングされる。フラッシングプログラムは吸引ライン38の内部が乾燥するまで、例えば数分間実施される。代替として、ピストンポンプ40の速度を記録し、吸引ライン38が完全にフラッシングされたことをピストンポンプ40の速度が示した際にフラッシングプログラムを停止することもできる。
【0065】
その場合燃焼室12からの空気の吸い出しは継続される。その間に燃焼室吸引ライン接続部30がロックされるため形成された負圧は流失せず、目詰まりした吸引ライン38によって妨害されるとなくピストンポンプ40の最大出力によって圧力がさらに降下する。
【0066】
その場合バルブ構成22の機能は切り換えバルブに相当する。しかしながら、燃焼室12内の負圧を維持するために、周囲環境空気接続がまずロックされピストンポンプ40が数mの長さの吸引ライン38と出力接続部34にも適宜な負圧を提供している際にのみ吸引ライン接続部30が開放されるような程度にバルブ構成のフラッシング位置から通常位置への切り換えを遅延させることが好適である。
【0067】
そうでなければ、ピストンポンプ40がまず負圧を充分に再形成することができないため吸引ライン38内にある空気がフラッシングプログラムのため燃焼室12内に逆流することが考えられる。
【0068】
その限りにおいて、バルブ構成22の“切り換えバルブ”が前述した方式で制御装置50によって制御される2個の個別のバルブからなることがより好適である。
【0069】
従って、フラッシングプログラムを本発明によって任意の時点で実行することができる。基本的にこれは除湿プログラムの間にも可能であるが、除湿プログラムによって発生した湿気を吸引ライン38から予め除去するために、焼成プログラムによる実質的な焼成サイクルに際して実施することが好適である。
【0070】
しかしながら、フラッシングプログラムを歯科用窯の特殊な機能プログラム中に実施するか、あるいは各焼成サイクルの中間、すなわち歯科用窯10が当然開いている際に実施することも可能である。
【0071】
図2には本発明に係る歯科用窯10の変更された実施例が示されている。図1と同一あるいは同等な構成要素は本実施例においても同一の参照符号を付して示す。
【0072】
図2に示されているように、歯科用窯10はその燃焼室12に関して分割面56を有している。分割面上において窯上部とも呼ばれる窯天蓋部材58が窯基底60から分割可能である。このことは前記窯天蓋部材58を持上げるかあるいは小さな角度で上方に旋回させることによって実施可能であり、一方窯基底60は不動である。この実施例は、燃焼室12内に収容される歯科補綴部材が振動に曝されないために好適である。それに代えて窯天蓋部材58が不動で窯基底60を降下させることも可能であるが;その設計は発熱ユニット27も不動となるためより低コストに製造することができる。
【0073】
いずれの場合も分割面56が充分に密封されることが重要である。
【0074】
この設計方式において、燃焼室12が2個の吸引接続部18と62を備え、その際吸引接続部62は窯天蓋部材58上に取り付けられ吸引接続部18は窯基底60上に取り付けられる。
【0075】
両方の吸引接続部が吸引パイプ20を介してバルブ構成22に接続する。バルブ構成22は第1の3口/2口バルブ64と第2の3口/2口バルブ66を備える。バルブ66は吸引接続部から相当離間しているように示されているが、そこには1本の短い吸引パイプ20のみが設けられることが理解される。各バルブ64および66の下流に吸引ライン38が接続され、それがピストンポンプ40に向かって数m延在する。
【0076】
このため、バルブ64および66の出力吸引ライン38が周知の方式によって合流することが理解される。
【0077】
バルブ64および66は、図示されていない制御装置50によって任意の所要の方式でそれぞれ独立して個別に切り換え可能である。それらは吸引ライン38を介して周囲環境空気を交互に吸い出すことができるような方式で接続され、従ってある時点まで使用されていた吸引ライン38が目詰まりした場合に難なく切り換えを実施することができる。
【0078】
この実施例は、1本の吸引ライン38が予備ラインとして使用可能であるため、フラッシングプログラムを実施しなければならない頻度をより少なくできるという利点を有する。例えば、吸引接続部62を介して、すなわち連通接続されたバルブ66において除湿プログラムを実施することができる。除湿プログラムが終了すると同時にバルブ66が閉じられる。その後比較的高湿度の該当する吸引ライン38はまずそのままの状態を維持し、バルブ64が閉じられる。バルブ64からポンプ40に延在する吸引ライン38は未だ目詰まりしておらず、従って最大ポンプ出力によって燃焼室12内に負圧を形成することができる。
【0079】
焼成サイクルが終了した後、フラッシングプログラムを使用して両方の吸引ライン38を洗浄することができ、それによってそれらが次の焼成サイクルで使用可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科補綴部材を熱処理するための燃焼室を備え、前記燃焼室が吸引ラインを介して負圧源に接続される歯科用窯であり、
燃焼室(12)と吸引ライン(38)の間にバルブ構成(22)を配置し、前記バルブ構成の支援によって前記燃焼室(12)内の負圧を維持するために前記吸引ライン(38)を前記燃焼室(12)に対して閉鎖し得るようにし、前記吸引ライン(38)を前記バルブ構成(22)と前記負圧源の間で特に周囲環境空気接続部(32)を介してガス抜き可能にし;
前記バルブ構成(22)に対して制御装置(50)を設け、前記バルブ構成(22)が燃焼室吸引ライン接続部(30)を閉鎖して前記周囲環境空気接続部を前記吸引ライン(38)に接続しかつ前記負圧源が前記吸引ライン(38)を介して周囲環境空気を吸引するフラッシングプログラムをターンオンするために前記制御装置を使用することを特徴とする歯科用窯。
【請求項2】
バルブ構成(22)の制御装置(50)が特に1分等の予め設定された時間周期でガス抜きプログラムを選択することによって吸引ライン(38)をガス抜きし、また特に繰り返しサイクルでフラッシングプログラムを実施することを特徴とする請求項1記載の歯科用窯。
【請求項3】
バルブ構成(22)が切り換えバルブを備え、それの出力接続部(34)が吸引ライン(38)に結合され、それの一切り換え接続部が周囲環境空気接続部(32)に接続され、それの他方の切り換え接続部は燃焼室吸引接続部(30)とされ、前記切り換えバルブが制御装置によって制御可能であることを特徴とする請求項1または2記載の歯科用窯。
【請求項4】
歯科用窯(10)の制御装置(50)が特に負圧ポンプを備えた負圧源にも作用し、前記負圧源はそれをターンオンおよびターンオフするために制御線を介してあるいはワイヤレス方式で制御装置(50)に接続され、前記制御装置(50)は特に吸引ライン(38)がガス抜きされるべきと判断された際に負圧源をターンオンすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の歯科用窯。
【請求項5】
バルブ構成(22)が1つのバルブを備えていてそのバルブ介しつまりそれの開放に応じて前記バルブ構成(22)の燃焼室接続部(30)が周囲環境空気に接続可能であり、このバルブ構成(22)の状態において特に歯科用窯(10)の制御装置が負圧源をターンオフすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の歯科用窯。
【請求項6】
燃焼室(12)に負圧センサ(24)を接続して燃焼室(12)内の圧力あるいは負圧を測定し、その出力信号を歯科用窯(10)の制御装置(50)によって記録し制御装置は負圧源をターンオンすることによって燃焼室(12)内の所要の負圧を設定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の歯科用窯。
【請求項7】
燃焼室(12)内の負圧を継続的に記録し負圧が過度に少ない際に負圧源をターンオンし、特に負圧源のターンオンにもかかわらず負圧が充分に増加しない場合にバルブ構成(22)を制御して請求項1に記載のフラッシングプログラムをターンオンすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の歯科用窯。
【請求項8】
焼成サイクル中、歯科用窯(10)の特殊機能プログラム中、または各焼成サイクルの中間にフラッシングプログラムがターンオンされることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の歯科用窯。
【請求項9】
制御装置が歯科用窯(10)の負圧センサの出力信号を継続的あるいは繰り返し記録しかつ負圧源がターンオンされている間の圧力降下勾配、すなわち単位時間当たりの圧力降下を記録し、圧力降下勾配が所与の閾値未満になった際にフラッシングプログラムをターンオンすることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の歯科用窯。
【請求項10】
歯科用窯(10)の燃焼室(12)が第2の吸引ライン(38)を介して負圧源に接続され、切り換えバルブを介して両方の吸引ライン(38)を選択的にターンオン可能にし、従っていずれの時点においても吸引ライン(38)のうちの一方がターンオンされ他方が遮断されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の歯科用窯。
【請求項11】
少なくとも2個のバルブあるいは少なくとも1個の切り換えバルブおよび制御装置からなり請求項1ないし10のいずれかに記載のフラッシングプログラムを可能にするバルブ構成(22)を設けて周知の歯科用窯(10)を改造することを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の歯科用窯。
【請求項12】
歯科補綴部材を負圧下に曝しながら熱処理し、その際燃焼室(12)と負圧源の間に吸引ライン(38)を延在させ、前記負圧源の支援によって燃焼室(12)内に負圧を形成する歯科用窯の操作方法であり、燃焼室(12)と吸引ライン(38)の間のバルブ構成(22)が前記燃焼室(12)内の負圧を維持するために前記吸引ライン(38)を前記燃焼室(12)に対して閉鎖し、前記吸引ライン(38)を前記バルブ構成(22)と前記負圧源の間で特に周囲環境空気接続部(32)を介してガス抜きし;前記バルブ構成(22)がそのバルブ構成(22)の一出力接続部(34)と周囲環境空気との接続を形成するフラッシングプログラムを前記バルブ構成(22)の制御装置がターンオンしてそれによって前記吸引ライン(38)をフラッシングし得るようにし、その際負圧源が吸引ラインを介して空気を吸い出し、それ同時にバルブ構成(22)がそのバルブ構成(22)から燃焼室(12)への接続をロックすることを特徴とする方法。
【請求項13】
負圧源、すなわちバルブ構成(22)を介して相互接続された吸引ライン(38)がターンオンされている際に燃焼室(12)内の負圧の形成を継続的あるいは周期的に繰り返して測定し、燃焼室(12)内の圧力が所与の閾値相当よりも遅滞して降下した際にフラッシングプログラムを起動することを特徴とする請求項12記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−27703(P2013−27703A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−164238(P2012−164238)
【出願日】平成24年7月24日(2012.7.24)
【出願人】(596032878)イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト (63)