説明

歯科用組成物

(a)反応性粒子状ガラス、(b)セメント反応において粒子状ガラスと反応性があり、ポリマー骨格および任意選択でペンダント側鎖を有する、酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマー、(c)任意選択で、分散状ナノ粒子、および(d)任意選択で、低分子化合物を含む水性歯科用グラスアイオノマー組成物であって、前記グラスアイオノマー組成物が、粒子状ガラスおよび/または線状ポリカルボン酸および/または任意選択の分散状ナノ粒子および/または任意選択の低分子化合物を架橋する−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)を含むことを特徴とする水性歯科用グラスアイオノマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性歯科用グラスアイオノマー組成物に関する。さらに、本発明は、反応性粒子状ガラスとのアイオノマー反応における、酸性基を含む特定のポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アイオノマーセメントは公知である。従来のアイオノマーセメントは、一般に、アルミノシリケートを含む粉末成分、ならびにポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸などの酸性基を含むポリマーまたはこれらの酸の少なくとも2種からなるコポリマーを通常は含む液体部分を含む(「New Aspects of the Setting of Glass−ionomer Cements」Wassonら、Journal of Dental Research;72巻、2号、1993年2月、481〜483頁を参照されたい)。酸性基を含む最も一般的なポリマーは、ポリアクリル酸、またはアクリル酸とイタコン酸(S.Crispの論文)、アクリル酸とマレイン酸のコポリマーから誘導される。
【0003】
グラスアイオノマーセメントにおいて、グラスアイオノマーセメントの硬化を引き起こす主な反応は、ガラスから放出される金属イオンによるイオン力に基づく、酸性基を含むポリマーの架橋である。さらに、グラスアイオノマーセメントの酸は、硬化中にガラス構造体からの金属カチオンを部分的に希釈し、その結果、硬化工程中に、金属カチオンのイオン性カルボキシレートが形成される可能性がある。
【0004】
歯科用アイオノマーセメントは、エナメルおよび象牙質に対する良好な接着特性、およびフッ化物含有ガラス充填材からのフッ化物の放出による抗う蝕特性に関する可能性を特徴とする。さらに、一般的なセメントは、発熱反応が実質的に存在しないこと、硬化中に収縮がないこと、硬化組成物中に遊離モノマーがないこと、および高い寸法安定性などの、歯科学での応用にとってさらに重要ないくつかの利点を有する。したがって、アイオノマーセメントは、窩洞充填、歯冠接着、インレー、ブリッジ、歯科矯正用バンド、窩洞裏装、歯根管密封、支台築造、および予防的密封のために、歯科領域で広範に使用される。
【0005】
しかし、グラスアイオノマー材料は本質的に脆いので、グラスアイオノマーセメントの機械的特性は、通常、問題含みである。したがって、グラスアイオノマーセメントの主な制約は、それらの相対的な強度欠如、ならびに剥離および磨耗に対する低い抵抗性である。従来のグラスアイオノマーセメントは、低い曲げ強度を有するが、高い弾性率を有し、そのため、大きく破壊する傾向がある。さらに、それらは、どちらかと言えば貧弱な光学特性を呈示する。
【0006】
したがって、後方歯におけるアイオノマーセメントの修復的適用は、通常、応力非支持領域に限定される。アイオノマーセメント材料は、永続的な後方歯の修復における使用、とりわけ大きな修復に関してかなり制約を有することが続いている。
【0007】
機械的特性、特に曲げ強度および破壊靭性を改善するために、アミノ酸で修飾されたポリマーの使用(Z.Ouyang、S.K.Sneckberger、E.C.Kao、B.M.Culbertson、P.W.Jagodzinski、Appl.Spectros 53(1999)297〜301頁;B.M.Culbertson、D.Xie、A.Thakur、J.Macromol.Sci.Pure Appl.Chem.A36(1999)681〜96頁)、ポリ(N−ビニルピロリドン)を使用する水溶性コポリマーの応用(D.Xie、B.M.Culbertson、G.J.Wang、J.Macromol.Sci.Pure Appl.Chem.A35(1998)54761頁)、狭い分子量分布を有するポリ酸(DE10058829)および分岐状のポリ酸(DE10058830)の使用などの多くの研究が実施された。20,000〜50,000Da(EP0797975)および1,000〜50,000Da(国際公開第02/41845号)の範囲の限定された分子質量を有するさらなるポリ酸が提案された。さらなる取組みは、球状アイオノマー粒子の適用であった(国際公開第00/05182号)。
【0008】
フッ化物放出および接着性などの利点をなお維持しながら、従来のグラスアイオノマーの脆性破壊への傾向に付随する諸問題を克服する目的で、樹脂で修飾されたグラスアイオノマーセメントが導入された(EP0323120、米国特許第4872936号、および米国特許第5154762号)。したがって、従来のグラスアイオノマーセメント中の水の一部を親水性モノマーで置き換えること、あるいはポリマー酸を、酸基の一部を重合性部分で置き換え、結果としてポリマー酸が重合反応に関与することもできるように修飾することが提案された
【0009】
さらに、アイオノマーセメント材料の機械的特性を改善する問題に対処するために、米国特許第5369142号は、特定の酸性成分、すなわちアミノ酸のアクリロイルまたはメタクリロイル誘導体とアクリル酸またはメタクリル酸とのコポリマーの使用を提案している。国際公開第02/062861(A)号には、改善された曲げ抵抗性および捻り抵抗性を有し、ポリマーが少なくとも2種の特定ポリマーから形成される、グラスアイオノマー歯科修復物中で使用するためのポリマー組成物が開示されている。国際公開第03/061606(A)号には、機械的特性を改善するアミノ酸を含むアイオノマーセメントが開示されている。
【0010】
4〜50個の炭素原子および少なくとも1個の二重結合からなる直鎖または分枝の有機鎖を有する、縮合可能なケイ素のモノマー化合物をベースにした重縮合物またはヘテロ重縮合物が記載されている(米国特許第6124491号)。
【0011】
自己架橋特性を有するチオール化ポリマーおよびそれらの粘膜付着特性が、Marschutz,M.K;Bernkop−Schnurch A、European Journal of Pharmaceutical Sciences 15(2002)387〜394頁に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】DE10058829
【特許文献2】DE10058830
【特許文献3】EP0797975
【特許文献4】国際公開第02/41845号
【特許文献5】国際公開第00/05182号
【特許文献6】EP0323120
【特許文献7】米国特許第4872936号
【特許文献8】米国特許第5154762号
【特許文献9】米国特許第5369142号
【特許文献10】国際公開第02/062861(A)号
【特許文献11】国際公開第03/061606(A)号
【特許文献12】米国特許第6124491号
【特許文献13】米国特許第3655605号
【特許文献14】米国特許第3814717号
【特許文献15】米国特許第4143018号
【特許文献16】米国特許第4209434号
【特許文献17】米国特許第4360605号
【特許文献18】米国特許第4376835号
【特許文献19】米国特許第4035321号
【特許文献20】米国特許第5130347号
【特許文献21】米国特許第5063257号
【特許文献22】米国特許第5520725号
【特許文献23】米国特許第5859089号
【特許文献24】米国特許第5962550号
【特許文献25】米国特許第5227413号
【特許文献26】米国特許第5367002号
【特許文献27】米国特許第5965632号
【特許文献28】米国特許第4089830号
【特許文献29】米国特許第4317681号
【特許文献30】米国特許第4374936号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Wassonら、「New Aspects of the Setting of Glass−ionomer Cements」、Journal of Dental Research;72巻、2号、1993年2月、481〜483頁
【非特許文献2】Z.Ouyang、S.K.Sneckberger、E.C.Kao、B.M.Culbertson、P.W.Jagodzinski、Appl.Spectros 53(1999)297〜301頁
【非特許文献3】B.M.Culbertson、D.Xie、A.Thakur、J.Macromol.Sci.Pure Appl.Chem.A36(1999)681〜96頁
【非特許文献4】D.Xie、B.M.Culbertson、G.J.Wang、J.Macromol.Sci.Pure Appl.Chem.A35(1998)54761頁
【非特許文献5】Marschutz,M.K;Bernkop−Schnurch A、European Journal of Pharmaceutical Sciences 15(2002)387〜394頁
【非特許文献6】Mathisら、「Properties of a New Glass Ionomer/Composite Resin Hybrid Restorative」、Abstract No.51、J.Dent Res.、66:113頁(1987)
【非特許文献7】Crispら、「Glass ionomer cement formulations.II.The synthesis of novel polycarboxylic acids」、J.Dent.Res.59(6):1055〜1063頁(1980)
【非特許文献8】Prosser,J.、Chem.Tech.Biotechnol.29:69〜87頁(1979)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、セメント反応によって硬化し、それによって、硬化したセメントが改善された曲げ強度および破壊靭性を有する、新規の歯科用セメント系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、本発明により、
(a)反応性粒子状ガラス、
(b)セメント反応において粒子状ガラスと反応性があり、ポリマー骨格および任意選択でペンダント側鎖を有する、酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマー、
(c)任意選択で、分散状ナノ粒子、および
(d)任意選択で、低分子化合物、
を含む水性歯科用グラスアイオノマー組成物であって、前記グラスアイオノマー組成物が、粒子状ガラスおよび/または酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマーおよび/または任意選択の分散状ナノ粒子および/または任意選択の低分子化合物を架橋する−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)を含むことを特徴とする水性歯科用グラスアイオノマー組成物によって解決される。
【0016】
本発明は、また、セメント反応において反応性粒子状ガラスと反応性があり、ポリマー骨格および任意選択でペンダント側鎖を有し、かつ−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)を含む、酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマーの、反応性粒子状ガラスとのセメント反応における使用を提供する。
【0017】
本発明の水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、セメント反応および−SH基の付加的架橋によって硬化する新規の歯科用セメント系を意味し、硬化したセメントは、改善された曲げ強度および破壊靭性を有する。
【0018】
架橋反応は、−SH基の酸化カップリングおよび/または−SH基の反応性二重結合へのエン型付加および/または−SH基の反応性α,β−不飽和部分へのマイケル付加に基づく可能性がある。
【0019】
組成物中の反応性二重結合は、ラジカル重合によってほとんど重合することのできない第1グループの反応性二重結合におおまかに分類することができる。このような二重結合の例が、アリル基である。しかし、この基中の二重結合は、−SH基の反応性二重結合への、好ましくはラジカル開始剤の存在下でのエン型付加に有用である。組成物中の反応性二重結合は、ラジカル重合によって容易に反応することのできる第2グループの反応性二重結合にさらにおおまかに分類することができる。このような反応性二重結合の例が、アクリレート基である。この基中の反応性二重結合は、−SH基の反応性二重結合への、好ましくはラジカル開始剤の存在下でのマイケル型付加に有用である。
【0020】
−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)は、反応性粒子状ガラス、酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマー、任意選択の分散状ナノ粒子のいずれか上に、または組成物中に存在する任意選択の付加的低分子化合物上に存在することができる。−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)の酸化カップリングは、好ましくは、金属イオン/酸化剤系の存在下で実施される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、反応性粒子状ガラスを含む。粒子状反応性ガラスは、水の存在下でアイオノマーと反応してヒドロゲルを形成する能力のある、粉末状の金属酸化物または水酸化物、無機シリケート、あるいはイオン浸出性ガラスまたはセラミックである。粒子状ガラスは、Ca、Ba、Sr、Al、Si、Zn、Na、K、B、AgまたはPの混合酸化物を含むことができる。粒子状反応性ガラス材料の例には、カルシウムまたはストロンチウム含有およびアルミニウム含有材料などの、ガラスアイオノマーセメントの技術分野で一般的に知られている材料が含まれる。好ましくは、粒子状反応性充填材が、浸出性フッ化物イオンを含む。
【0022】
粒子状反応性ガラスの具体例は、カルシウムアルミノシリケート・ガラス、カルシウムアルミニウムフルオロシリケート・ガラス、カルシウムアルミニウムフルオロボロシリケート・ガラス、ストロンチウムアルミノシリケート・ガラス、ストロンチウムアルミノフルオロシリケート・ガラス、ストロンチウムアルミノフルオロボロシリケート・ガラスから選択される。適切な粒子状反応性ガラスは、さらに、酸化亜鉛および酸化マグネシウムなどの金属酸化物、ならびに、例えば米国特許第3655605号、米国特許第3814717号、米国特許第4143018号、米国特許第4209434号、米国特許第4360605号および米国特許第4376835号中に記載のようなイオン浸出性ガラスを含む。好ましい実施形態において、粒子状ガラスは、バリウムおよび/またはストロンチウムフルオロアルミノシリケート・ガラスである。
【0023】
粒子状反応性ガラスは、表面修飾剤で表面修飾することができる。表面修飾剤は、二重の機能をもたらす修飾化合物を含む。修飾化合物は、粒子状反応性ガラスの表面原子と反応し、それによって、粒子状反応性ガラスの表面原子と修飾化合物との間で共有結合を形成する能力がある。
【0024】
さらに、修飾化合物は、架橋反応に関与し、それによって、付加的架橋を促進できる1つまたは複数を含んでもよく、その結果、硬化したセメントは、改善された曲げ強度および破壊靭性を有する。修飾剤は、1種または複数の修飾化合物を含むことができる。
【0025】
好ましくは、表面修飾剤は、加水分解性有機官能性ケイ素化合物を含む。加水分解性有機官能性ケイ素化合物は、次式(I)、(II)および(III)、またはそれらの加水分解生成物中の1種の化合物でよい:
3−mSiL (I)
2−mSiL’L’’ (II)
SiL’L’’L’’’ (III)
ここで、
Xは、加水分解性基を表し、
Rは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、またはアリール基を表し、
L、L’、L’’およびL’’’は、同一または異なってもよく、互いに独立に、1つまたは複数の−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)を含む有機基を表し、
mは、1以上の整数であり、ここで、
X、R、L、L’、L’’およびL’’’の和は、式(I)、(II)および(III)のそれぞれにおいて4である。
【0026】
好ましくは、Xは、ハロゲン原子またはORであり、ここでRは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、またはアリール基である。より好ましくは、RまたはRは、独立に、アルキル基である。
【0027】
有機官能性ケイ素化合物に架橋能力を付与するために、L、L’、L’’およびL’’’は、−SH基を含み、ここで、nは、1〜6の整数である。好ましい実施形態において、L、L’、L’’およびL’’’は、次式で表すことができる:
−[(CHZ](CH
ここで、
Zは、同一または異なってよく、かつ互いに独立に、−NR’−、−O−、SまたはPR’(ここで、R’は、独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表す)を表し、
oおよびpは、互いに独立であり、同一または異なってよく、1〜6の整数を表し、
qは、0〜12の整数を表し、かつ
xは1〜6の整数である。
【0028】
さらなる好ましい実施形態において、L、L’、L’’およびL’’’は、次式で表すことができる:
−[(CHNR’](CH
ここで、
R’は、互いに独立であり、同一または異なってよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基、またはアリール基を表し、
oおよびpは、互いに独立であり、同一または異なってよく、1〜6の整数を表し、
qは、0〜12の整数を表し、かつ
xは1〜6の整数である。
【0029】
よりさらなる好ましい実施形態において、L、L’、L’’およびL’’’は、次式で表すことができる:
−[(CHZ](CH
ここで、
Zは、酸素原子または硫黄原子を表し、
oおよびpは、互いに独立であり、同一または異なってよく、1〜6の整数を表し、
qは、0〜12の整数を表し、かつ
xは1〜6の整数である。
【0030】
アルキル基は、直鎖または分岐状のC1〜16アルキル基、典型的にはC1〜8アルキル基でよい。C1〜6アルキル基の例としては、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する線状または分岐状のアルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、およびn−ヘキシルを挙げることができる。シクロアルキル基は、C3〜16シクロアルキル基でよい。シクロアルキル基の例としては、3〜14個の炭素原子を有するもの、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルを挙げることができる。シクロアルキルアルキル基としては、4〜22個の炭素原子を有するものを挙げることができる。シクロアルキルアルキル基の例としては、1〜6個の炭素原子を有する線状または分岐状のアルキル基と3〜14個の炭素原子を有するシクロアルキル基との組合せを挙げることができる。シクロアルキルアルキル基の例としては、例えば、メチルシクロプロピル、メチルシクロブチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロプロピル、エチルシクロブチル、エチルシクロペンチル、エチルシクロヘキシル、プロピルシクロプロピル、プロピルシクロブチル、プロピルシクロペンチル、プロピルシクロヘキシルを挙げることができる。アラルキル基は、C7〜26アラルキル基、典型的には、1〜6個の炭素原子を有する線状または分岐状のアルキル基と6〜10個の炭素原子を有するアリール基との組合せでよい。アラルキル基の具体例が、ベンジル基またはフェニルエチル基である。アリール基としては、6〜10個の炭素原子を有するアリール基を挙げることができる。アリール基の例が、フェニルおよびナフチルである。
【0031】
1〜6アルキル基およびC3〜14シクロアルキル基は、C1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、フェニル基、およびヒドロキシ基から選択される基の1つまたは複数のメンバーで任意に置換されていてもよい。C1〜4アルキル基の例としては、1〜4個の炭素原子を有する線状または分岐状のアルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルを挙げることができる。C1〜4アルコキシ基の例としては、1〜4個の炭素原子を有する線状または分岐状のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、およびtert−ブトキシを挙げることができる。
【0032】
アリール基は、1〜3個の置換基を含むことができる。このような置換基の例としては、ハロゲン原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、C1〜4アルキルチオ基、C1〜4アルキルスルホニル基、カルボキシル基、C2〜5アルコキシカルボニル基、およびC1〜4アルキルアミノ基を挙げることができる。ここで、ハロゲン原子の実例は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素でよい。C1〜4アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、およびn−ブチルである。C1〜4アルコキシ基の実例は、例えば、メトキシ、エトキシ、およびプロポキシである。C1〜4アルキルチオ基の実例は、例えば、メチルチオ、エチルチオ、およびプロピルチオである。C1〜4アルキルスルホニル基の実例は、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、およびプロピルスルホニルである。C2〜5アルコキシカルボニルの実例は、そのそれぞれが1〜4個の炭素原子を含むアルコキシ基を有するもの、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、およびプロポキシカルボニルでよい。C1〜8アルキルアミノ基の実例は、それぞれが1〜4個の炭素原子を含む1つまたは2つのアルキル基を有するもの、例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、およびプロピルアミノでよい。これらの置換基中のアルキル部分は、線状、分岐状、または環状でよい。
【0033】
本発明中で使用される表面修飾剤中に含まれる修飾化合物の具体例は、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルエトキシシランである。前記化合物は、単独で、あるいは2種以上の異なる化合物を組み合わせて使用することができる。
【0034】
粒子状反応性ガラスの表面活性化剤での処理に基づいて、反応性充填材の表面は、−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)を示す。−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)は、例えば、前に記載のような基L、L’、L’’およびL’’’に相当する。
【0035】
表面修飾剤は、それ自体で、あるいは適切な溶媒中に溶解または分散して使用することができる。適切な溶媒の例は、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、および酢酸エチルである。
【0036】
粒子状反応性ガラスは、例えば電子顕微鏡法を使用することによって、あるいはMALVERN Mastersizer SまたはMALVERN Mastersizer 2000装置により具体化されるような通常のレーザー回折粒度分布測定法を使用することによって測定した場合、通常、0.005〜100μm、好ましくは0.01〜40μmの平均粒径を有する。粒子状反応性ガラスは、異なる平均粒径を有する2つ以上の粒子画分の混合物を表す多峰型の粒子状反応性ガラスでよい。粒子状反応性ガラスは、異なる化学組成の粒子の混合物でもよい。特に、粒子状反応性材料と粒子状非反応性材料との混合物を使用することが可能である。
【0037】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、好ましくは、組成物の全重量を基準にして、40〜80重量%、より好ましくは45〜70重量%の反応性粒子状ガラスを含む。
【0038】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、さらに、セメント反応において粒子状ガラスと反応性のある、酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマーを含む。
【0039】
酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマーは、酸性基、炭素−炭素二重結合、α,β−不飽和部分、および−SH基(ここで、xは、1〜6の、好ましくは1〜3の、より好ましくは1または2の整数である)から選択される1つまたは複数の基を含むペンダント基を好ましくは含む。好ましい実施形態において、酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマーは、ペンダントチオール基を有する。
【0040】
酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマーは、ポリマー骨格および任意選択でペンダント側鎖を有する。ポリマー骨格は、1種または複数のモノマーを含む混合物を重合するステップを含む方法によって得ることができる。モノマーとしては、アクリル酸、イタコン酸、メタクリル酸、およびそのエステルまたは無水物を挙げることができる。酸性基を含むポリマーのペンダント酸性基は、粒子状反応性ガラスの存在下で固化または硬化反応を引き起こすために、その数または重量%において十分でなければならない。酸性基は、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、およびスルホン酸基から選択することができる。これらの酸性基の中で、カルボン酸基が好ましい。
【0041】
酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマーは、任意選択でペンダント側鎖を含むことができる。ペンダント側鎖は、−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)を含むことができる。−SH基を含む側鎖は、とりわけカルボキシル基酸性基の一部を二官能性化合物と反応させることによってポリマー骨格に導入することができる。適切な二官能性モノマーの例は、アミノチオール、具体的には次の化合物を挙げることができる:
【0042】
【化1】

【0043】
アイオノマーセメントに−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)を含む樹脂成分を添加することによって、脆性をさらに改善できるだけでなく、機械的強度および歯構造体に対する接着性などの物理的特性も改善される。
【0044】
カルボン酸基の一部を、組成物中に存在する−SH基とのエン型反応に関与することのできる炭素−炭素二重結合を含むさらなる二官能性モノマーと、ならびに/あるいは組成物中に存在する−SH基とのマイケル付加反応、および任意選択でラジカル重合反応に関与することのできる反応性α,β−不飽和部分を含む二官能性モノマーと反応させることによって、最終のアイオノマーセメント組成物にさらなる強度を付与する、付加的な共有結合性架橋の供給源を作り出すことが可能である。
【0045】
適切な二官能性モノマーの例には、アクリロイルクロリド、メタクリロイルクロリド、ビニルアザラクトン、アリルイソシアネート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−アミノエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート(IEM)、アクリル酸、メタクリル酸、およびN−ビニルピロリドンが含まれる。適切な二官能性モノマーのその他の例は、米国特許第4035321号、米国特許第5130347号中に記載されている。
【0046】
酸性基を含む線状または分岐状のポリマーは、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは5,000〜180,000の範囲の分子量Mwを有する。
【0047】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、組成物の全重量を基準にして、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%の、酸性基を含む線状または分岐状のポリマーを含む。
【0048】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、任意選択で、分散状ナノ粒子を含む。前記ナノ粒子は、前に定義したような式(I)、(II)または(III)の1種または複数の化合物を含む混合物を縮合することによって得ることのできるナノ縮合物でよい。シランの縮合は、酸触媒を用いて実施することができる。適切な酸は、フッ化水素酸、塩酸、リン酸、および硫酸などの無機酸から選択することができる。縮合は、チタン、ジルコニウム、セリウム、イッテルビウム、アルミニウム、錫、およびイットリウムのアルコキシドから選択される金属アルコキシドなどのさらなる加水分解性金属化合物の存在下で実施することができる。共縮合性金属化合物の不在下では、粒度分布は、通常、共縮合性金属化合物の存在する場合よりも狭い。好ましい実施形態において、本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物の分散状ナノ粒子は、ペンダントチオール基を有する。
【0049】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、組成物の全重量を基準にして、0〜75重量%の分散状ナノ粒子を含むことができる。好ましくは、組成物は、組成物の全重量を基準にして、5〜50重量%の分散状ナノ粒子を含む。好ましい実施形態において、分散状ナノ粒子は、1〜100nmの平均粒径を有する。
【0050】
本発明のガラスアイオノマー組成物は、任意選択でさらに、低分子化合物を含むことができる。低分子化合物は、100〜5000の範囲、好ましくは200〜2000の範囲の分子量Mwを有することができる。低分子化合物は、1種または複数の−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)を含むことができる。あるいは、低分子化合物は、グラスアイオノマー組成物中に存在する−SH基とエン型反応またはマイケル付加反応で反応することのできる部分を含むことができる。適切なポリチオール化合物の具体例が、PEGジチオール(例えば、Aldrich704369、平均分子量:1,500;Aldrich704539 平均分子量:3,400)、1,16−ヘキサデカンジチオール、Asn−Arg−Cys−Ser−Gln−Gly−Ser−Cys−Trp−Asn(還元して85%(HPLC)C44671716=1154.24)などのペプチド、トリチオシアヌル酸、テトラチオール−およびテトラピロールで置換されたテトラチアフルバレン誘導体、ペンタエリスリチルテトラチオール、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、2,2’−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、およびペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)である。さらに、適切なポリチオール化合物は、次の化合物から選択することもできる:
【0051】
【化2】

【0052】
さらに、適切な化合物は、次のポリエン化合物:トリメチロールプロパントリアリルエーテル、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、またはトリアリル−1,3,4−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオンから選択することもできる。
【0053】
本発明のグラスアイオノマー組成物は、前記グラスアイオノマー組成物が、粒子状ガラス、および/または酸性基を含む線状ポリマー、および/または任意選択で分散状ナノ粒子、および/または低分子化合物を架橋する−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)を含むことを特徴とする。
【0054】
−SH基(ここで、1〜6の整数である)は、スルファンまたはポリスルファン基(ここで、xは好ましくは1〜3である)である。具体的には、−SH基は、好ましくは、チオール基(−SH)、ジスルファン基(−S−SH)、またはトリスルファン基(−S−S−SH)である。より好ましい実施形態において、−SH基は、第1級または第2級チオール基でよいチオール基である。
【0055】
架橋反応が−SH基の酸化カップリングに基づく場合、−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)は、組成物中に存在する、反応性粒子状ガラス、酸性基を含む線状または分岐状のポリマー、任意選択の分散状ナノ粒子のいずれかの上に、あるいは任意選択の低分子化合物上に存在することができる。好ましくは、酸化カップリングは、酸化剤の存在下での金属で触媒される酸化カップリングである。したがって、組成物は、好ましくは、遷移金属イオンおよび酸化剤を含む。遷移金属イオンの例が、鉄およびマンガンイオンである。さらに、組成物は、好ましくは、酸化剤を含む。適切な酸化試薬の例が、ラジカル重合開始剤として一般的に使用される過酸化水素またはパーオキシド化合物などのパーオキシドである。
【0056】
第1の好ましい実施形態において、−SH基は、反応性粒子状ガラス、酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマー、または任意選択の分散状ナノ粒子のいずれかの上にもっぱら存在する。−SH基が、組成物中に存在する任意選択の付加的低分子成分上にもっぱら存在する場合は、反応性粒子状ガラス、酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマー、および/または任意選択の分散状ナノ粒子が、−SH基とのエン型反応またはマイケル付加に関与できる反応性炭素−炭素二重結合を含む必要があろう。具体的には、−SH基は、酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマー上に存在することができる。
【0057】
第2の好ましい実施形態において、−SH基は、反応性粒子状ガラス、酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマー、任意選択の分散状ナノ粒子、または任意選択の低分子化合物のいずれかの群から選択される少なくとも2種のメンバー上に存在する。この群から選択される他のメンバーは、−SH基とのエン型反応またはマイケル付加に関与できる反応性炭素−炭素二重結合を含むことができる。
【0058】
第3の好ましい実施形態において、反応性粒子状ガラス、酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマー、任意選択の分散状ナノ粒子、または任意選択の低分子化合物の群から選択されるメンバーのそれぞれは、−SH基、または−SH基とのエン型反応に関与できる反応性炭素−炭素二重結合のいずれかを含む。
【0059】
したがって、本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物において、−SH基は、粒子状ガラス、および/または酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマー、および/または任意選択で分散状ナノ粒子を酸化カップリングによって架橋することができる。
【0060】
さらなる好ましい実施形態において、本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物のスルファンまたはポリスルファンは、粒子状ガラス、および/または酸性基を含む線状ポリマー、および/または任意選択で分散状ナノ粒子を酸素の不在下で架橋する。好ましくは、本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物中の−SH基は、−SHエンの反応またはマイケル付加によって架橋する。
【0061】
本発明の歯科用グラスアイオノマー組成物は、さらに、架橋反応用触媒、ラジカル重合開始剤、安定剤、非反応性充填材、溶媒、顔料、非ガラス質充填材、フリーラジカル捕捉剤、重合抑制剤、反応性および非反応性希釈剤、充填材の反応性を高めるためのカップリング剤、レオロジー調節剤、ならびに界面活性剤(抑制剤の溶解性を高めるためなど、例えばポリオキシエチレン)を含むことができる。
【0062】
架橋反応に適切な触媒は、金属カチオン、金属錯体、および/または金属粉末もしくは金属コロイドなどの金属粒子を、単独で、あるいは酸素、パーオキシド、および/または酸化性金属錯体などの酸化剤と組み合わせて含むことができる。一態様において、触媒および酸化剤は、同一材料を含むことができる。金属カチオン、金属錯体、および/または金属粒子は、鉄、ニッケル、銅、コバルトまたは白金原子を、あるいはその対応するイオンを含むことができる。パーオキシドは、過酸化水素、尿素−過酸化水素、エチルメチルケトンパーオキシド、またはベンゾイルパーオキシドを含むことができる。
【0063】
適切なラジカル重合開始剤は、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、アセトンパーオキシド、およびtert−ブチルヒドロパーオキシドなどの有機パーオキシド、アゾビスイソブチロニトリルおよび1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ化合物、ならびに塩素、臭素、またはヨウ素などのハロゲンから選択することができる。
【0064】
適切な安定剤は、ビタミンC、無機スルフィドおよびポリスルフィドなどの還元剤から選択することができる。
【0065】
適切な非反応性充填材は、歯科用補修組成物中で現在使用されている充填材から選択することができる。充填材は、微細に粉砕され、かつ好ましくは約100μm未満の最大粒子直径および約10μm未満の平均粒子直径を有するべきである。充填材は、単峰型または多峰型(例えば、双峰型)の粒度分布を有することができる。充填材は無機材料でもよい。それは、重合性樹脂に不溶性で、無機充填材で場合により満たされている架橋も有機材料であってもよい。充填材は、放射線不透過性、放射線透過性または放射線非不透過性でもよい。適切な非反応性無機充填材の例が、天然または合成の材料、例えば、石英、窒化ケイ素などの窒化物、例えば、Ce、Sb、Sn、Zr、Sr、BaおよびAlから誘導されるガラス、コロイド状シリカ、長石、ボロシリケート・ガラス、カオリン、タルク、チタニア、および亜鉛系ガラス、ならびに焼成シリカなどのサブミクロンシリカ粒子である。適切な非反応性有機充填材粒子の例には、充填または非充填の微粉化ポリカーボネートまたはポリエポキシドが含まれる。好ましくは、充填材粒子の表面は、充填材とマトリックスとの間の結合を増強するために、カップリング剤で処理される。適切なカップリング剤の使用は、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどを含む。
【0066】
適切な溶媒または非反応性希釈剤には、エタノールおよびプロパノールなどのアルコールが含まれる。適切な反応性希釈剤は、靭性、接着性、および硬化時間などの改変された特性をもたらすためのα,β−不飽和モノマー、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレートである。
【0067】
適切なα,β−不飽和モノマーは、水溶性、水混和性、または水分散性でよい。水溶性、水混和性または水分散性のアクリレートおよびメタクリレート、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルメタクリレート(「bis−GMA」)、グリセロールモノ−およびジ−アクリレート、グリセロールモノ−およびジ−メタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングルコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(ここで、エチレンオキシド単位の繰返し数は2から30まで変化する)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(ここで、エチレンオキシド単位の繰返し数は2から30まで変化する)特にトリエチレングリコールジメタクリレート(「TEGDMA」)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールのモノ−、ジ−およびテトラ−アクリレートおよびメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルジメチルベンゼンジカルバメート、
メチレン−ビス−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−トリメチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタ−クリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル4−シクロヘキシルカルバメート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2’ビス(4−アクリロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ−フェニル)]プロパン、2,2’−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−アクリロキシ−フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[3(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−メタクリレート]プロパン、および2,2’−ビス[3(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−アクリレート]プロパンを挙げることができる。重合性成分のその他の適切な例は、イソプロペニルオキサゾリン、ビニルアザラクトン、ビニルピロリドン、スチレン、ジビニルベンゼン、ウレタンアクリレートまたはメタクリレート、エポキシアクリレートまたはメタクリレート、およびポリオールアクリレートまたはメタクリレートである。
【0068】
所望なら、α,β−不飽和モノマーの混合物を添加することができる。好ましくは、混合されているが未硬化の本発明のセメントは、混合されているが未硬化のセメント成分の全重量(水、溶媒、希釈剤、およびα,β−不飽和モノマーを含む)を基準にして、合わせて約0.5〜約40重量%、より好ましくは約1〜約30重量%、最も好ましくは約5〜約20重量%の水、溶媒、希釈剤およびα,β−不飽和モノマーを含むであろう。
【0069】
適切なフリーラジカル捕捉剤の例は、4−メトキシフェノールである。
【0070】
適切な重合抑制剤は、ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン、1,4−ベンゾキノン、tert−ブチルピロカテコール、トルヒドロキノン、および3,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールから選択することができる。抑制剤の量は、コポリマー/コモノマー/水混合物の全重量を基準にして、0.001〜2%、好ましくは0.02〜0.5%から選択することができる。
【0071】
−SH基を酸化カップリングによって架橋するために、外部エネルギーを代わりにまたは付加的に採用することができる。外部エネルギーの供給源は、熱エネルギー源、超音波エネルギー源、および/または紫外ランプもしくは可視ランプのような光エネルギー源などの放射エネルギー源から選択することができる。−SH基を酸化カップリングによって架橋するのに光エネルギーを採用する場合、歯科用グラスアイオノマー組成物は、分子状酸素、α−ジケトン、オルトキノン、有機染料、蛍光染料もしくは着色剤、および/またはアゾビスイソブチロニトリルおよび1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ化合物などの光開始剤および/または光増感剤を付加的に含むことができる。
【0072】
歯科用グラスアイオノマー組成物は、歯科用アイオノマーセメント中で使用することができる。このようなセメントは2つの主な部類に区別することができる。第1の部類は、α,β−不飽和カルボン酸のホモポリマーまたはコポリマー(例えば、ポリアクリル酸、コポリ(アクリル、イタコン酸など))、修飾されたフルオロアルミノシリケート・ガラスなどの修飾された粒子状反応性充填材、水、および酒石酸などのキレート化剤を主要成分として採用する従来のグラスアイオノマーに関する。このような歯科用アイオノマーセメントは、使用直前に混合される粉末/液体製剤で供給することができる。混合物は、ポリカルボン酸の酸性基とガラスから浸出されるカチオンとの間のイオン反応、および−SH基に基づく架橋反応により、暗所で自己硬化を受けるであろう。第2の主な部類は、樹脂で修飾されたグラスアイオノマーセメントに関する。従来のグラスアイオノマーと同様、樹脂で修飾されたグラスアイオノマーセメントは、本発明の方法により得ることのできる修飾された粒子状反応性充填材を採用するが、樹脂で修飾されたグラスアイオノマーセメントの有機部分が異なる。樹脂で修飾されたグラスアイオノマーセメントの1種類において、ポリカルボン酸は、酸性繰返し単位の一部をペンダント硬化性基で置き換え、または末端キャップするように修飾され、例えば、米国特許第5130347号中に記載のように、第2の硬化機構をもたらすために光開始剤が添加される。アクリレートまたはメタクリレート基を、ペンダント硬化性基として採用することができる。米国特許第5154762号中に記載のように、酸化還元硬化系を添加して第3の硬化機構をもたらすことができる。樹脂で修飾されたグラスアイオノマーセメントの別の種類において、前記セメントは、例えば、Mathisら、「Properties of a New Glass Ionomer/Composite Resin Hybrid Restorative」、Abstract No.51、J.Dent Res.、66:113頁(1987)、ならびに米国特許第5063257号、米国特許第5520725号、米国特許第5859089号および米国特許第5962550号に記載のように、ポリカルボン酸、アクリレートまたはメタクリレート官能性モノマー、および光開始剤を含む。種々のモノマーを含む、または樹脂を含むセメントも、米国特許第4872936号、米国特許第5227413号、米国特許第5367002号および米国特許第5965632号に示されている。樹脂で修飾されたグラスアイオノマーセメントは、粉末/液体またはペースト/ペースト系として製剤化され、混合および適用する際に、水を含むことができる。そうしたセメントは、ポリカルボン酸の酸性基とガラスから浸出されるカチオンとの間のイオン反応と水性歯科用グラスアイオノマー組成物のpHが、粒子状ガラスと反応性のある線状ポリカルボン酸の主な硬化反応の終了時に少なくとも6である場合における、粒子状ガラスおよび/または線状ポリカルボン酸および/または任意選択で分散状ナノ粒子の架橋反応とのために、暗所で硬化する。さらに、樹脂で修飾されたグラスアイオノマーセメントは、セメントを歯科用硬化ランプからの光に暴露することでも硬化する。
【0073】
グラスアイオノマー組成物の調製方法は周知である(Crispら、「Glass ionomer cement formulations.II.The synthesis of novel polycarboxylic acids」、J.Dent.Res.59(6):1055〜1063頁(1980))。歯科用アイオノマーセメントは、アイオノマーを粒子状反応性充填材および任意選択でナノ粒子と水の存在下で混合することによって調製される。アイオノマーセメント系の成分は、本発明のアイオノマーセメントを形成するために、種々の方式および量で組み合わせることができる(混合またはブレンドなどによって)。例えば、アイオノマーの濃厚水性溶液を、修飾された粒子状反応性充填材および任意選択でさらなる成分と使用時に混合することができる。アイオノマー、修飾された粒子状反応性充填材および水から得られる組合せは、硬化反応の開始を可能にする。別法として、アイオノマーおよび修飾された粒子状反応性充填材は、硬化反応が進行することを可能にする十分な水が存在しない条件下で、フリーズドライまたは凍結乾燥された粉末状ブレンドとして供給される。このような系は、次いで、硬化反応を開始するために、使用時に水と組み合わせることができる。いったん硬化反応が始まると、得られる混合物を、その所望の形状に形成し、続いて硬化し、混合物を完全に硬くすることが可能になる。一般に、アイオノマーの水に対する重量比は、約1:10〜約10:1である。一般に、水中のアイオノマー濃度は、25〜90重量%、好ましくは40〜65重量%の範囲である。得られる水溶液は、一般には約1.5〜8の範囲のポリマーの液体に対する比率を有する。
【0074】
反応混合物は、米国特許第4089830号、米国特許第4209434号、米国特許第4317681号および米国特許第4374936号に記載のようにセメントを調製する場合、それぞれ加工時間および硬化時間を調節するために、酒石酸などの調節剤を含むこともできる。一般に、加工時間の増大は、硬化時間の増大ももたらす。「加工時間」は、アイオノマーおよび修飾された粒子状反応性充填材が水の存在下で混合した際の硬化反応の開始と、目的とする歯科、または医療用途のために、系にさらなる物理的加工を実施すること、例えば、スパチュラ操作、または再成形がもはや実際的でない段階まで硬化反応が進行する時点との間の時間である。「硬化時間」は、修復物における硬化反応の開始から、その後の臨床的または外科的処置を修復物の表面に施すことを可能にするのに十分な硬化を終えてしまう時間までの測定した時間である。
【0075】
硬化反応において、修飾された粒子状反応性ガラスは、塩基のように挙動し、酸性アイオノマーと反応して、結合マトリックスとして機能を果たす金属ポリ塩を形成する(Prosser,J.、Chem.Tech.Biotechnol.29:69〜87頁(1979))。さらに、−SH基が存在するため、水性歯科用グラスアイオノマー組成物のpHが、粒子状ガラスと反応性のある線状ポリカルボン酸の反応中に少なくとも6である場合に、粒子状ガラスおよび/または線状ポリカルボン酸および/または任意選択で分散状ナノ粒子の架橋が起こる。それによって、セメント内の結合は、機械的特性に関して問題のあるイオン塩ブリッジのみならず、共有結合および錯結合にも依拠する。硬化反応は、したがって、水の存在下で自動的に進行する二重の化学硬化系として特徴付けられる。セメントは、数分以内にゲル様状態に硬化し、急速に硬化して強度を発現する。さらなる反応は、重合反応および重付加反応である。
【0076】
歯科用組成物は、複数パック、好ましくは2パック組成物である。組成物は、ペースト/ペースト系、粉末/液体系、または液体/ペースト系でよい。組成物は、組成物の早すぎる硬化を回避するように設計される。この目的のために、反応性無機充填材成分および任意の酸基含有成分は、早すぎるセメント反応を回避するように処方しなければならない。第1の実施形態において、反応性無機ガラスは、第1パック中に収容され、任意の酸基含有成分は、第2パック中に収容される。第1パックは、粉末またはペーストでよい。第2パックは、液体またはペーストでよい。第2の実施形態において、第1パックは、反応性無機充填材、およびポリアクリル酸などの固形ポリ酸を含む粉末であり、第2パックは、ペーストまたは液体であり、さらなる酸基含有成分を含む。
【0077】
粉末の液体に対する比率は、混合型アイオノマーセメント系の加工性に影響を及ぼす。20:1より大きい重量比は、不十分な加工性を示す傾向があり、一方、1:1未満の比率は、不十分な機械的特性(例えば、強度)を示す傾向があり、それゆえ好ましくない。好ましい比率は、約1:3〜約6:1、好ましくは約1:1〜4:1程度である。
【0078】
これより、以下の実施例によって本発明をさらに説明する。すべてのパーセンテージは、特記しない限り、重量パーセンテージである。
【実施例】
【0079】
調製例1および2
M.K.Marschutz,A.Bernkop−Schurch、Europ.J.Pharm.Sci.15(2002)387〜394頁による、ポリアクリル酸(PAA)とアミノアルキルチオールとの類似のポリマー反応のための一般的手順
PAAを脱塩水中で水和し、水酸化ナトリウム水溶液を添加してPAA溶液のpH値を6に調整した。次いで、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDAC、Sigma Aldrich社)を添加した。室温で20分間撹拌した後、アミノアルキルチオールを添加し、pHを6に再調整した。次いで、反応混合物を撹拌下に室温で24時間反応させた。生じた反応生成物を透析で単離した。沈殿したポリマーを濃水酸化ナトリウム溶液中に溶解し、中和し、次いで透析した。
【0080】
【表1】

【0081】
システアミンの転換率は、窒素の元素分析によって測定した。
【0082】
【表2】

【0083】
調製例3〜5
ポリアクリル酸(PAA)とアリルアミンとの類似のポリマー反応のための一般的手順
PAAを15mLのDMFに60℃で溶解し、アリルアミンを添加した。ジシクロヘキシルカルボジイミドを、1mLのDMFに溶解し、ポリマー溶液に添加した。溶液を60℃で24時間撹拌した。溶液を真空下で濃縮し、ポリマーを酢酸エチル中で沈殿させた。アリルアミンの転換率はH−NMR分光法で判定した。
H−NMR[ppm]:δ(500MHz、DMSO−D)=1.32〜1.9(CH);2.1〜2.5(CH);5〜5.2(CH=CH);7.99(1 OH)
【0084】
【表3】

【0085】
調製例6
調製例3〜5と同様に、PAAを15mLのDMF中に60℃で溶解し、アリルアミンを添加して、12%の転換率を達成した。ジシクロヘキシルカルボジイミドを、1mLのDMFに溶解させ、ポリマー溶液に添加した。
【0086】
溶液を、60℃で24時間撹拌した。溶液を真空下で濃縮し、ポリマーを酢酸エチル中で沈殿させた。アリルアミンの転換率は、H−NMR分光法で12%(アリルアミン)であることが確認された。
【0087】
応用例
調製例1のアミノアルキルチオール修飾ポリ酸2.4gおよび酒石酸0.39gを、3.21mLの脱塩水に溶解した(液体1)。
7.9wt%のカンファーキノンおよび5.25wt%のN,N−ジメチルエチレンジアミンを含む、調製例6のアリルアミン修飾ポリ酸の30wt%水溶液(液体2)を調製した。
液体1および液体2を、6:4の比率で、手作業で混合した。
次のステップで、この混合物を、粉末状のストロンチウム−ナトリウム−リン−アルミニウム−フルオロシリケート・ガラスと2:1の比率で、手作業で混合した。
二軸曲げ強度を、直径20mm、厚さ1mmのディスク形状の試験片を使用して測定した。
試験片の調製は、黄色光の条件下で実施した。
試験片を、LicuLite照射オーブン中でそれぞれの側を60秒間照射し、37℃、相対湿度95%で1時間、続いて脱塩水中に37℃で23±0.5時間貯蔵した。
参照例として、非照射試験片を使用した。
すべての試験は、Zwick Z020ユニバーサル試験機で実施した。
【0088】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)反応性粒子状ガラス、
(b)セメント反応において粒子状ガラスと反応性があり、ポリマー骨格および任意選択でペンダント側鎖を有する、酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマー、
(c)任意選択で、分散状ナノ粒子、および
(d)任意選択で、低分子化合物、
を含む水性歯科用グラスアイオノマー組成物であって、該グラスアイオノマー組成物が、粒子状ガラスおよび/または酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマーおよび/または任意選択の分散状ナノ粒子および/または任意選択の低分子化合物を架橋する−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)を含むことを特徴とする、水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項2】
−SH基が、酸化剤の存在下での金属で触媒される酸化カップリングによって架橋する、請求項1に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項3】
−SH基が、−SHのエン反応によって架橋する、請求項1に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項4】
−SH基が、マイケル付加によって架橋する、請求項1に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項5】
−SH基が、チオール基を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項6】
チオール基が、第1級チオール基である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項7】
酸性基を含む線状または分岐状のポリマーが、酸性基、炭素−炭素二重結合、および−SH基(ここで、xは、請求項1で定義した通りである)から選択される1つまたは複数の基を含むペンダント基を有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項8】
酸性基を含む線状ポリマーが、ペンダントチオール基を有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項9】
分散状ナノ粒子が、ペンダントチオール基を有する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項10】
低分子化合物が、多くとも5000の分子量を有し、かつチオール基を含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項11】
組成物の全重量を基準にして40〜80重量%の反応性粒子状ガラス、および/または組成物の全重量を基準にして10〜60重量%の酸性基を含むポリマー、および/または組成物の全重量を基準にして75重量%までの分散状ナノ粒子を含む、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項12】
酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマーが、1000を超え200000までの範囲の分子量Mwを有する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項13】
粒子状ガラスが、Ca、Ba、Sr、Al、Si、Zn、Na、K、B、Ag、Pの混合酸化物を含むか、あるいは粒子状ガラスがフッ化物を含む、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項14】
二成分組成物である、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項15】
セメント反応において反応性粒子状ガラスと反応性があり、ポリマー骨格および任意選択でペンダント側鎖を有し、かつ−SH基(ここで、xは1〜6の整数である)を含む、酸性基を含む線状もしくは分岐状のポリマーの、反応性粒子状ガラスとのセメント反応における使用。

【公表番号】特表2012−519719(P2012−519719A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553342(P2011−553342)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001458
【国際公開番号】WO2010/102786
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(502289695)デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー. (28)
【Fターム(参考)】