説明

歯科用組成物

水性歯科用グラスアイオノマー組成物であって、(a)反応性粒子状ガラス、(b)セメント反応において前記粒子状ガラスと反応性であり、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する、酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマー、(c)任意で、酸性基を含み、ポリマー骨格を有するグラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖を含む分散ナノ粒子を含み、成分(b)の前記線状若しくは分岐状のポリマー及び/又は成分(c)が存在する場合に成分(c)の前記グラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖のポリマー骨格が、(i)1つ又は複数の以下の式(I):
【化1】


の化合物を環化重合又は環化共重合することを含むプロセスによって得られることを特徴とする、水性歯科用グラスアイオノマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨格内に環状繰り返し単位を有する、酸性基及び任意で更なる架橋性基を含む特定のポリマーを含む水性歯科用グラスアイオノマー組成物に関する。また、本発明は、酸性基及び任意で更なる架橋性基を含む特定のポリマーを、環化重合又は環化共重合、及び任意でその後の更なる官能基化によって調製する方法に関する。さらに、本発明は、酸性基を含むグラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖を含む分散ナノ粒子を調製する方法にも関する。最後に、本発明は、反応性粒子状ガラスとのセメント反応における、酸性基及び任意で更なる架橋性基を含む特定のポリマーの使用に関する。酸性基及び任意で更なる架橋性基を含む特定のポリマーが関与するセメント反応によって固化した歯科用セメントは、収縮率が低下しており、特に曲げ強度及び破壊靱性に関する機械的性質が改善されている。
【背景技術】
【0002】
従来のグラスアイオノマーセメントは概して、アルミノケイ酸塩を含有する粉末成分と、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸等の酸性基を含むポリマー、又は少なくとも2つのこれらの酸のコポリマーを含有する水性混合物を通常含有する液体成分とを含有している(非特許文献1を参照されたい)。酸性基を含む最も一般的なポリマーは、ポリアクリル酸、又はアクリル酸とイタコン酸のコポリマー(S. Crisp)、アクリル酸とマレイン酸のコポリマーから誘導される。
【0003】
グラスアイオノマーセメントでは、グラスアイオノマーセメントを固化させる一次反応は、ガラスから放出される金属イオンと、酸性基を含むポリマーとの間のイオン力に基づく架橋である。また、グラスアイオノマーセメントの酸によって、金属カチオンが硬化中にガラス構造から部分的に溶出するため、金属カチオンのイオン性カルボン酸塩が硬化プロセス中に形成される可能性がある。
【0004】
歯科用修復材として使用されるグラスアイオノマーは、幾つかの理由のために従来の樹脂含有複合材に優る利点を有する。例えば、グラスアイオノマーは湿潤表面への適用に耐容性があり、収縮率が低く、自己接着性である。グラスアイオノマーはモノマーではなくポリマーを含有するため、感作及びアレルギー反応につながる可能性のあるアクリルモノマー浸出のリスクがない。さらに、グラスアイオノマーは歯の硬組織に化学的に結合し、再発性齲蝕の予防に役立つ有益なレベルのフッ化物放出をもたらすことができる。このため、アイオノマーセメントは歯科分野において、歯腔の充填、クラウン、インレー、ブリッジ又は矯正用バンドの合着、歯腔の裏装、根管の填塞、支台築造及び予防填塞のために広く使用されている。
【0005】
しかしながら、市販のグラスアイオノマーの主な弱点は、望ましくない脆弱性として現れる、その低い曲げ強度であり、これは修復物の端部での破壊、及び最悪の場合には修復物のバルク破壊をもたらす可能性がある。したがって、臼歯におけるアイオノマーセメントの修復材用途は、通常は非圧負担域に限定される。アイオノマーセメント材料は依然として、永久臼歯修復物における使用に対する重大な制限を、特に大きな修復物に関して有している。
【0006】
機械的性質、とりわけ曲げ強度及び破壊靱性を改善するために、アミノ酸修飾ポリマーの使用(非特許文献2、非特許文献3)、ポリ(N−ビニルピロリドン)を用いた水溶性コポリマーの適用(非特許文献4)、分子量分布の狭いポリ酸(特許文献1)及び分岐ポリ酸(特許文献2)の使用等といった数多くの研究が行われた。20000Da〜50000Da(特許文献3)及び1000Da〜50000Da(特許文献4)という範囲の限定的な分子質量を有する更なるポリ酸が提唱されている。更なるアプローチは球状アイオノマー粒子の適用であった(特許文献5)。
【0007】
樹脂改質グラスアイオノマーセメントは、フッ化物の放出及び付着等のような利点を残しつつ、従来のグラスアイオノマーの脆性破壊傾向に伴う問題を克服することを目的として導入された(特許文献6、特許文献7及び特許文献8)。このため、従来のグラスアイオノマーセメント中の水の一部を親水性モノマーで置き換えること、又はポリマー酸が同様に重合反応に関与することができるように、ポリマー酸を修飾して酸基の一部を重合性部分で置き換えることが提案された。
【0008】
また、アイオノマーセメント材料の機械的性質を改善するという問題に対処するために、特許文献9は、特定の酸性成分、すなわちアミノ酸のアクリロイル誘導体又はメタクリロイル誘導体とアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマーの使用を提案している。特許文献10は、少なくとも2つの特定のポリマーから形成される、曲げ抵抗及びねじり抵抗の改善されたグラスアイオノマー歯科用修復材に使用されるポリマー組成物を開示している。特許文献11は、機械的性質を改善するアミノ酸を含有するアイオノマーセメントを開示している。
【0009】
炭素原子数4〜50の直鎖状又は分岐状の有機鎖及び少なくとも1つの二重結合を有する、ケイ素の縮合性モノマー化合物に基づく重縮合体又はヘテロ重縮合体が記載されている(特許文献12)。
【0010】
自己架橋性を有するチオール化ポリマー及びその粘膜付着性が非特許文献5に開示されている。
【0011】
環化重合性ビスアクリレート及び多官能性オリゴマーから形成される合成歯科用組成物が特許文献13から知られている。多官能性アクリレート類及びその合成が特許文献14から知られている。これらの参照文献は、を含む水性歯科用グラスアイオノマー組成物を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許第10058829号
【特許文献2】独国特許第10058830号
【特許文献3】欧州特許第0797975号
【特許文献4】国際公開第02/41845号
【特許文献5】国際公開第00/05182号
【特許文献6】欧州特許第0323120号
【特許文献7】米国特許第4,872,936号
【特許文献8】米国特許第5,154,762号
【特許文献9】米国特許第5,369,142号
【特許文献10】国際公開第02/062861号
【特許文献11】国際公開第03/061606号
【特許文献12】米国特許第6,124,491号
【特許文献13】米国特許第5,145,374号
【特許文献14】米国特許第5,380,901号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】"New Aspects of the Setting of Glass-ionomer Cements," Wasson et al., Journal of Dental Research; Vol. 72, No. 2, February, 1993; pages 481-483
【非特許文献2】Z. Ouyang, S.K. Sneckberger, E.C. Kao, B.M. Culbertson, P.W. Jagodzinski, Appl. Spectros 53 (1999) 297-301
【非特許文献3】B.M. Culbertson, D. Xie, A. Thakur, J. Macromol. Sci. Pure Appl. Chem. A 36 (1999) 681-96
【非特許文献4】D. Xie, B.M. Culbertson, G.J. Wang, J. Macromol. Sci. Pure Appl. Chem. A 35 (1998) 54761
【非特許文献5】Marschuetz, M.K.; Bernkop-Schnuerch A. European Journal of Pharmaceutical Sciences 15 (2002) 387-394
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
硬化したセメントが改善された曲げ強度及び破壊靱性を有する、セメント反応によって硬化する新規の歯科用セメント系を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、水性歯科用グラスアイオノマー組成物であって、
(a)反応性粒子状ガラス、
(b)セメント反応において前記粒子状ガラスと反応性であり、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する、酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマー、
(c)任意で、酸性基を含むとともにポリマー骨格を有するグラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖を含む分散ナノ粒子
を含み、成分(b)の前記線状若しくは分岐状のポリマー及び/又は成分(c)が存在する場合に成分(c)の前記グラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖のポリマー骨格が、
(i)1つ又は複数の以下の式(I):
【化1】

(式中、
Xは酸素原子、硫黄原子、NR基又はCR基であり、
及びYは互いに独立して、CR基又は単結合を表し、
、R、R、R、R、R、R、R及びRは互いに独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ZCOOR10、ZCN、ZC(O)NHR11及びZC(O)NR1213を表し、
10、R11、R12及びR13は互いに独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、
Zは単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表し、
及びR、又はR及びR中に存在するカルボン酸基が、カルボン酸無水物部分を形成していてもよい)
の化合物を環化重合又は環化共重合することと、任意で、
(ii)工程(i)を含むプロセスによって得られるポリマー又はコポリマーを、重合性二重結合、チオール基又はカルボン酸基から選択される1つ又は複数の官能基を導入するための化合物と反応させることと、任意で、
(iii)工程(ii)及び工程(iii)を含むプロセスによって得られるポリマー又はコポリマーを用いて工程(ii)を繰り返すことと
を含むプロセスによって得られることを特徴とする、水性歯科用グラスアイオノマー組成物による本発明に従って解決される。
【0016】
さらに、本発明は、セメント反応において粒子状ガラスと反応性であり、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する、酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーを調製する方法であって、
(i)1つ又は複数の以下の式(I):
【化2】

(式中、
Xは酸素原子、硫黄原子、NR基又はCR基であり、
及びYは互いに独立して、CR基又は単結合を表し、
、R、R、R、R、R、R、R及びRは互いに独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ZCOOR10、ZCN、ZC(O)NHR11及びZC(O)NR1213を表し、
10、R11、R12及びR13は互いに独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、
Zは単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表し、
及びR、又はR及びR中に存在するカルボン酸基が、カルボン酸無水物部分を形成していてもよい)
の化合物を、任意でアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、スチレン、8−メチルスチレン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ハロゲン化ビニリデン及びアクリロニトリルの群から選択される1つ又は複数の化合物の存在下で、環化重合又は環化共重合することと、任意で、
(ii)工程(i)を含むプロセスによって得られるポリマー又はコポリマーを、重合性二重結合、チオール基又はカルボン酸基から選択される1つ又は複数の官能基を導入するための化合物と反応させることと、任意で、
(iii)工程(i)及び工程(ii)を含むプロセスによって得られるポリマー又はコポリマーを用いて、工程(ii)を繰り返すことと
を含む、セメント反応において粒子状ガラスと反応性であり、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する、酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーを調製する方法を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、請求項1で規定されるプロセスで得られる、酸性基を含もとともにポリマー骨格を有するグラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖を含む分散ナノ粒子を調製する方法であって、1つ又は複数の以下の式(II)、式(III)若しくは式(IV):
X’3−mSiL (II)
X’2−mSiL’L’’ (III)
X’SiL’L’’L’’’ (IV)
(式中、
X’は加水分解性基を表し、
Rはアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、
L、L’、L’’及びL’’’は同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、有機基を表し、
mは1以上の整数であり、
X、R、L、L’、L’’及びL’’’の和は式(II)、式(III)及び式(IV)の各々について4であり、L、L’、L’’及びL’’’の一部が、以下の式:
−[(CHZ](CHiv
(式中、
Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、
ivは、請求項1において規定されるような式(I)の化合物を環化重合又は環化共重合する工程を含むプロセスによって得られる酸性基を含み、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する線状若しくは分岐状のポリマー部分を表し、
o及びpは同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、1〜6の整数を表し、
qは0〜12の整数を表す)
によって表される)
の化合物、又はその加水分解生成物を含有する混合物を縮合する工程を含む、方法も提供する。
【0018】
最後に、本発明は、セメント反応において反応性粒子状ガラスと反応性である、酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーの反応性粒子状ガラスとのセメント反応における使用であって、該酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーが、ポリマー骨格及び任意でペンダント側鎖を有し、本発明によるプロセスによって得られる、セメント反応において反応性粒子状ガラスと反応性である、酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーの反応性粒子状ガラスとのセメント反応における使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によると、アルキル基は直鎖状又は分岐状のC1〜16アルキル基、通常はC1〜8アルキル基であり得る。C1〜6アルキル基の例としては、炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4の線状若しくは分岐状のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル及びn−ヘキシルを挙げることができる。シクロアルキル基はC3〜16シクロアルキル基であり得る。シクロアルキル基の例としては、炭素原子数3〜14の基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを挙げることができる。シクロアルキルアルキル基としては、炭素原子数4〜22の基を挙げることができる。シクロアルキルアルキル基の例としては、炭素原子数1〜6の線状若しくは分岐状のアルキル基と、炭素原子数3〜14のシクロアルキル基との組み合わせを挙げることができる。シクロアルキルアルキル基の例としては、例えばメチルシクロプロピル、メチルシクロブチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロプロピル、エチルシクロブチル、エチルシクロペンチル、エチルシクロヘキシル、プロピルシクロプロピル、プロピルシクロブチル、プロピルシクロペンチル、プロピルシクロヘキシルを挙げることができる。アラルキル基はC7〜26アラルキル基、通常は炭素原子数1〜6の線状若しくは分岐状のアルキル基と、炭素原子数6〜10のアリール基との組み合わせであり得る。アラルキル基の具体例はベンジル基又はフェニルエチル基である。アリール基としては、炭素原子数6〜10のアリール基を挙げることができる。アリール基の例はフェニル及びナフチルである。
【0020】
1〜6アルキル基及びC3〜14シクロアルキル基は、C1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、フェニル基及びヒドロキシ基から選択される群の1つ又は複数によって任意で置換されていてもよい。C1〜4アルキル基の例としては、炭素原子数1〜4の線状若しくは分岐状のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルを挙げることができる。C1〜4アルコキシ基の例としては、炭素原子数1〜4の線状若しくは分岐状のアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ及びtert−ブトキシを挙げることができる。
【0021】
アリール基は1つ〜3つの置換基を含有していてもよい。かかる置換基の例としては、ハロゲン原子、C1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、C1〜4アルキルチオ基、C1〜4アルキルスルホニル基、カルボキシル基、C2〜5アルコキシカルボニル基及びC1〜4アルキルアミノ基を挙げることができる。ここで、ハロゲン原子の実例はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素であり得る。C1〜4アルキル基は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル及びn−ブチルである。C1〜4アルコキシ基の実例は、例えばメトキシ、エトキシ及びプロポキシである。C1〜4アルキルチオ基の実例は、例えばメチルチオ、エチルチオ及びプロピルチオである。C1〜4アルキルスルホニル基の実例は、例えばメチルスルホニル、エチルスルホニル及びプロピルスルホニルである。C2〜5アルコキシカルボニル基の実例は、各々が1個〜4個の炭素原子を含有するアルコキシ基を有する基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル及びプロポキシカルボニルであり得る。C1〜8アルキルアミノ基の実例は、各々が1個〜4個の炭素原子を含有する1つ又は2つのアルキル基を有する基、例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ及びプロピルアミノであり得る。これらの置換基中のアルキル部分は、線状、分岐状又は環状であり得る。
【0022】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、成分(a)として反応性粒子状ガラスを含む。粒子状反応性ガラスは、水の存在下でアイオノマーと反応してヒドロゲルを形成することが可能な、粉末状の金属酸化物若しくは金属水酸化物、鉱物のケイ酸塩又はイオン浸出性のガラス若しくはセラミックである。粒子状ガラスは、Ca、Ba、Sr、Al、Si、Zn、Na、K、B、Ag又はPの混合酸化物を含有し得る。粒子状反応性ガラス材料の例としては、カルシウム又はストロンチウム含有材料及びアルミニウム含有材料等といったグラスアイオノマーセメントの技術分野で一般に知られる材料が挙げられる。好ましくは、粒子状反応性充填剤は浸出可能なフッ化物イオンを含有する。
【0023】
粒子状反応性ガラスの具体例は、カルシウムアルミノケイ酸塩ガラス、カルシウムアルミニウムフルオロケイ酸塩ガラス、カルシウムアルミニウムフルオロホウケイ酸塩ガラス、ストロンチウムアルミノケイ酸塩ガラス、ストロンチウムアルミノフルオロケイ酸塩ガラス、ストロンチウムアルミノフルオロホウケイ酸塩ガラスから選択される。
【0024】
好適な粒子状反応性ガラスには、例えば米国特許第3,655,605号、米国特許第3,814,717号、米国特許第4,143,018号、米国特許第4,209,434号、米国特許第4,360,605号及び米国特許第4,376,835号に記載されているような、酸化亜鉛及び酸化マグネシウム等の金属酸化物、並びにイオン浸出性のガラスが更に含まれる。好ましい実施形態では、粒子状ガラスはバリウムフルオロアルミノケイ酸塩ガラス及び/又はストロンチウムフルオロアルミノケイ酸塩ガラスである。
【0025】
好ましい実施形態によると、反応性粒子状ガラスは、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、リン及びフッ素を必須要素として含有するが、ケイ素、アルミニウム、亜鉛及びリンは組成物中に主に酸化物として含有される。具体的には、前記反応性粒子状ガラスが、
a.10重量%〜35重量%のシリカ、
b.10重量%〜35重量%のアルミナ、
c.3重量%〜30重量%の酸化亜鉛、
d.4重量%〜30重量%のP2O5、
e.3重量%〜25重量%のフッ化物
を含み得る。
【0026】
シリカ(SiOとして計算される)は、ガラス組成物中に好ましくは10重量%〜35重量%の量で含有される。より好ましい実施形態では、シリカは20重量%〜25重量%の量で含有される。アルミナ(Alとして計算される)は、好ましくは10重量%〜35重量%の量で含有される。より好ましい実施形態では、アルミナは20重量%〜25重量%の量で含有される。シリカとアルミナとの間の重量比は、好ましくは1.2〜0.8の範囲内、より好ましくは1.15〜1.0の範囲内である。
【0027】
酸化亜鉛(ZnOとして計算される)は、本発明に従って使用されるガラス組成物中に好ましくは3重量%〜30重量%の量で含有される。より好ましい実施形態では、酸化亜鉛は13重量%〜18重量%の量で含有される。
【0028】
五酸化リン(Pとして計算される)は、本発明に従って使用されるガラス組成物中に好ましくは4重量%〜30重量%の量で含有される。好ましい実施形態では、五酸化リンは14重量%〜18重量%の量で含有される。
【0029】
フッ化物は、本発明によるガラス組成物中に好ましくは3重量%〜25重量%の量で含有される。好ましい実施形態では、フッ化物は4重量%〜7重量%の量で含有される。
【0030】
好ましい必須要素に加えて、本発明の粒子状ガラス組成物は、18重量%〜21重量%の酸化カルシウム+酸化ストロンチウムを更に含み得る。
【0031】
粒子状ガラス組成物は、本質的にいかなるアルカリ金属酸化物も含有しないのが好ましい。特に、ガラス組成物は多くとも2重量%、好ましくは多くとも1.5重量%のアルカリ金属酸化物MO(式中、MはLi、Na又はKである)しか含有しない。好ましい実施形態では、粒子状ガラス中のNaOの含有量は1重量%未満である。
【0032】
粒子状反応性ガラスは表面改質剤によって表面改質されていてもよい。改質化合物は、粒子状反応性ガラスの表面原子と反応し、それにより粒子状反応性ガラスの表面原子と改質化合物との間に共有結合を形成することが可能である。
【0033】
表面改質剤は、二重の機能をもたらす改質化合物を含有していてもよい。例えば、改質化合物は、架橋反応に関与することが可能な1つ又は複数の官能基を含有することによって更なる架橋を促進することができ、それにより硬化したセメントは改善された曲げ強度及び破壊靱性を有する。改質剤は1つ又は複数の改質化合物を含有していてもよい。
【0034】
好ましくは、表面改質剤は、加水分解性の有機官能性ケイ素化合物を含有する。加水分解性の有機官能性ケイ素化合物は、以下の式(II)、式(III)及び式(IV):
X’3−mSiL (II)
X’2−mSiL’L’’ (III)
X’SiL’L’’L’’’ (IV)
(式中、
X’は加水分解性基を表し、
Rはアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、
L、L’、L’’及びL’’’は同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、1つ又は複数の−SH基(式中、xは1〜6の整数である)を含有する有機基を表し、
mは1以上の整数であり、
X、R、L、L’、L’’及びL’’’の和は式(II)、式(III)及び式(IV)の各々について4である)
のうち1つの化合物、又はその加水分解生成物であり得る。
【0035】
好ましくは、Xはハロゲン原子又はORであり、Rはアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基又はアリール基である。より好ましくは、R又はRは独立してアルキル基である。
【0036】
有機官能性ケイ素化合物に架橋能力を付与するために、L、L’、L’’及びL’’’は、−SH基(式中、xは1〜6の整数、好ましくは1である)、又は(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基若しくはビニル基等の重合性基を含有していてもよい。
【0037】
好ましい実施形態では、L、L’、L’’及びL’’’は、以下の式:
−[(CHZ’](CHiv
(式中、
Z’は同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、−NR’−、−O−、S又はPR’(式中、R’は独立して水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す)を表し、
ivは、上記で規定されるような式(I)の化合物を環化重合若しくは環化共重合する工程を含むプロセスによって得られる、酸性基を含み、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する線状若しくは分岐状のポリマー部分、又は−SH、又は(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基若しくはビニル基等の重合性二重結合を表し、
o及びpは同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、1〜6の整数を表し、
qは0〜12の整数を表し、
xは1〜6の整数である)
によって表すことができる。
【0038】
更に好ましい実施形態では、L、L’、L’’及びL’’’は、以下の式:
−[(CHNR’](CHiv
(式中、
R’は同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、
ivは、上記で規定されるような式(I)の化合物を環化重合若しくは環化共重合する工程を含むプロセスによって得られる、酸性基を含み、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する線状若しくは分岐状のポリマー部分、又は−SH、又は(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基若しくはビニル基等の重合性二重結合を表し、
o及びpは同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、1〜6の整数を表し、
qは0〜12の整数を表し
xは1〜6の整数である)
によって表すことができる。
【0039】
また更に好ましい実施形態では、L、L’、L’’及びL’’’は、以下の式:
−[(CHZ’’](CHiv
(式中、
Z’’は酸素原子又は硫黄原子を表し、
ivは、上記で規定されるような式(I)の化合物を環化重合又は環化共重合する工程を含むプロセスによって得られる、酸性基を含み、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する線状若しくは分岐状のポリマー部分を表し、
o及びpは同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、1〜6の整数を表し、
qは0〜12の整数を表す)
によって表すことができる。
【0040】
本発明において使用される表面改質剤中に含有される改質化合物の具体例は、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルエトキシシランである。該化合物は単独で、又は2つ以上の異なる化合物の組み合わせで使用することができる。
【0041】
表面活性剤を用いた粒子状反応性ガラスの処理によって、反応性充填剤の表面は、更なる硬化反応(α,β−不飽和エステル基に対する−SH基のマイケル付加、−SH基の酸化カップリング反応、エン型反応、縮合反応又はラジカル重合等)に使用することのできるLiv基等の官能基を提示し得る。
【0042】
表面改質剤はそのまま、又は好適な溶媒中に溶解若しくは分散させて使用することができる。好適な溶媒の例はトルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール及び酢酸エチルである。
【0043】
粒子状反応性ガラスは、例えば電子顕微鏡法によって、又は従来のレーザー回折式粒度測定法(MALVERNのMastersizer S装置又はMALVERNのMastersizer 2000装置によって具体化されるようなもの)を用いて測定される平均粒度が、通常は0.005μm〜100μm、好ましくは0.01μm〜40μmである。粒子状反応性ガラスは、平均粒度の異なる2つ以上の粒子画分の混合物である多モードの粒子状反応性ガラスであってもよい。粒子状反応性ガラスはまた、化学組成の異なる粒子の混合物であってもよい。特に、粒子状反応性材料と粒子状非反応性材料との混合物を使用することが可能である。
【0044】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、組成物全体の重量に基づいて、好ましくは20重量パーセント〜80重量パーセント、より好ましくは40重量パーセント〜70重量パーセントの反応性粒子状ガラスを含む。
【0045】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、成分(b)として、セメント反応において粒子状ガラスと反応性であり、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する、酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーを更に含む。骨格が酸性基を含んでいてもよく、かつ/又はペンダント基が酸性基を含んでいてもよい。酸性基は好ましくはカルボン酸基である。
【0046】
さらに、本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、成分(c)として、酸性基を含むとともにポリマー骨格を有するグラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖を含む分散ナノ粒子を任意で更に含んでいてもよい。
【0047】
成分(b)の前記線状若しくは分岐状のポリマー及び/又は成分(c)が存在する場合に成分(c)の前記グラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖のポリマー骨格は、以下の式(I):
【化3】

(式中、
Xは酸素原子、硫黄原子、NR基又はCR基であり、
及びYは互いに独立して、CR基又は単結合を表し、
、R、R、R、R、R、R、R及びRは互いに独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ZCOOR10、ZCN、ZC(O)NHR11及びZC(O)NR1213を表し、
10、R11、R12及びR13は互いに独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、
Zは単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表し、
及びR、又はR及びR中に存在するカルボン酸基が、カルボン酸無水物部分を形成していてもよい)
の化合物を環化重合又は環化共重合することによって得られる。
【0048】
式(I)によると、Xは酸素原子、硫黄原子、NR基又はCR基である。好ましくは、Xは酸素原子、NR基又はCR基であり、R、R及びRは互いに独立して、好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ZCOOR10、ZCN、ZC(O)NHR11及びZC(O)NR1213を表し、R10、R11、R12及びR13は互いに独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zは結合又はC1〜6アルキレン基である。
【0049】
好ましい実施形態によると、Xは酸素原子又はCR基であり、R及びRは水素原子、ZCOOR10、ZCN、ZC(O)NHR11及びZC(O)NR1213から選択され、R10、R11、R12、R13及びZは請求項1において規定されるとおりである。
【0050】
更に好ましい実施形態によると、R、R、R、Rは互いに独立して、水素原子、ZCOOR10、ZC(O)NHR11又はZC(O)NR1213を表し、R10、R11、R12及びR13は互いに独立して水素原子又はアルキル基を表し、Zは単結合又はC1〜3アルキレン基である。好ましくは、R、R、R及びRのうち少なくとも1つがZCOOR10を表し、R10が水素原子であり、Zが単結合又はC1〜3アルキレン基である。特定の実施形態によると、R、R、R及びRは水素原子である。
【0051】
更に好ましい実施形態によると、R及びRは互いに独立して、ZCOOR10、ZCN、ZC(O)NHR11又はZC(O)NR1213を表し、R10、R11、R12、R13及びZは請求項1において規定されるとおりである。より好ましくは、R及びRは互いに独立してZCOOR10を表してもよく、R10及びZは請求項1において規定されるとおりである。
【0052】
好ましい実施形態によると、Y及びYは互いに独立してCR基を表す。更に好ましい実施形態によると、Y及びYのうち少なくとも1つが互いに独立して単結合を表す。
【0053】
好ましい実施形態によると、R及びRは互いに独立して、ZCOOR10、ZC(O)NHR11又はZC(O)NR1213を表し、R10、R11、R12及びR13は互いに独立して、水素原子又はアルキル基を表し、Zは単結合又はC1〜6アルキレン基を表す。好ましくは、R及びRのうち少なくとも1つがZCOOR10を表し、R10が水素原子であり、Zが単結合又はC1〜3アルキレン基である。
【0054】
本発明による特定のポリマー骨格をアイオノマーセメントに組み込むことによって、脆弱性を更に改善することができるだけでなく、機械的強度及び物理的性質が改善される。
【0055】
式(I)に包含される或る一定の化合物は市販の化合物である。他の化合物を既報の手順に従って合成してもよい。特に、或る一定の式(I)の化合物は、国際公開第95/04026号に開示されている方法に従って合成することができる。
【0056】
式(I)の化合物は単独重合又は共重合の対象となる。例えば、式(I)の化合物のフリーラジカル単独重合は、o−キシレン中で開始剤としてAIBNを用いると起こる。したがって、本発明は、セメント反応において粒子状ガラスと反応性であり、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する、酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーを調製する方法であって、以下の式(I):
【化4】

(式中、
Xは酸素原子、硫黄原子、NR基又はCR基であり、
及びYは互いに独立して、CR基又は単結合を表し、
、R、R、R、R、R、R、R及びRは互いに独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ZCOOR10、ZCN、ZC(O)NHR11及びZC(O)NR1213を表し、
10、R11、R12及びR13は互いに独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、
Zは単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表し、
及びR、又はR及びR中に存在するカルボン酸基が、カルボン酸無水物部分を形成していてもよい)
の化合物を、任意で1つ又は複数の重合性化合物の存在下で、環化重合又は環化共重合する工程を含む、セメント反応において粒子状ガラスと反応性であり、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する、酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーを調製する方法を提供する。式(I)の化合物を重合性モノマーと共重合する場合、かかるモノマーとしては、例えば重合性ジカルボン酸無水物モノマー、アクリルモノマー、スチレンモノマー、アクリルアミドモノマーを挙げることができる。
【0057】
好ましいコモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、スチレン、8−メチルスチレン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ハロゲン化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸エチルトリエチレングリコール、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸1−テトラデシル、アクリル酸1−ヘキサデシル、メタクリル酸1−ヘキサデシル、アクリル酸n−オクタデシル、メタクリル酸n−オクタデシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸テトラヒドロピラニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−シアノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、ポリ(エチレングリコール)(n)モノメタクリレート(n=200及び400)、ポリ(エチレングリコール)(n)モノメチルエーテルモノメタクリレート(n=200;400及び1000)、アクリル酸2−イソシアナトエチル、メタクリル酸2−イソシアナトエチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−スルホエチル、アクリル酸3−スルホプロピル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、スチレン、a−メチルスチレン、4−シアノスチレン、4−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ハロゲン化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシメチルジアセトンアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、酢酸ビニル及びN−ビニルピロリドンである。
【0058】
重合性化合物は、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、スチレン、8−メチルスチレン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ハロゲン化ビニリデン及びアクリロニトリルの群から選択することができる。
【0059】
特定の実施形態では、コモノマーはマレイン酸無水物又はイタコン酸無水物等の重合性無水物であり、これをポリマー骨格の形成後に加水分解してもよく、又は後続工程において更なる官能基を導入する化合物と更に反応させてもよい。このため、更なる酸性基がポリマー骨格中で利用可能であり、これは硬化及び/又は更なる官能基化に有用である。
【0060】
本発明による方法は、式(1)の化合物を、好適な溶媒中、ラジカル重合開始剤の存在下、所定の温度で所定の時間反応させることによって行うことができる。
【0061】
本発明の方法に使用される好適な溶媒は、芳香族炭化水素又は脂肪族炭化水素から選択することができる。好適な溶媒の例としては、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、トルエン及びベンゼンが挙げられ、o−キシレンが好ましい。反応を進行させるためには、反応の前に溶媒から酸素を全て取り除くことが好ましく、これは溶媒をアルゴン又は窒素等の不活性ガスで飽和させることによって好都合に達成することができる。
【0062】
好適なラジカル重合開始剤としては、ラジカル重合を開始させる従来の化合物、例えば過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシド、過酸化アセトン及びtert−ブチルヒドロペルオキシド等の有機過酸化物、N,N−アゾビスイソブチロニトリル及び1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)ペルオキシド等のアゾ化合物が挙げられるが、N,N−アゾイソブチロニトリルが好ましい。重合開始剤は、0.001:1〜0.1:1のモル比(開始剤:モノマー)で使用することができる。
【0063】
反応温度は特に限定されない。しかしながら、反応温度は、好ましくは25℃から溶媒の沸点までの範囲内であり、より好ましくは30℃〜80℃の範囲内である。
【0064】
反応時間は特に限定されない。しかしながら、反応時間は、好ましくは30分〜72時間の範囲内であり、好ましくは1時間〜48時間の範囲内である。
【0065】
ポリマーは、好適な溶媒を用いることによる反応混合物からの沈殿によって回収することができる。
【0066】
カルボン酸基又はカルボン酸無水物基の一部を、組成物中に存在する−SH基とのエン型反応に関与することのできる炭素−炭素二重結合を含有する更なる二官能性モノマー、並びに/又は組成物中に存在する−SH基とのマイケル付加反応、及び任意でラジカル重合反応に関与することのできる反応性α、β−不飽和部分を含有する二官能性モノマーと反応させることによって、最終的なアイオノマーセメント組成物に更なる強度を付与する更なる共有結合架橋源を作り出すことが可能である。
【0067】
このため、本発明は、工程(i)に従って1つ又は複数の式(I)の化合物を環化重合又は環化共重合することと、続いて工程(i)を含むプロセスによって得られるポリマー又はコポリマーを、重合性二重結合、チオール基又はカルボン酸基から選択される1つ又は複数の官能基を導入するための化合物と反応させることと、任意で工程(ii)及び工程(iii)を含むプロセスによって得られるポリマー又はコポリマーを用いて工程(ii)を繰り返すこととを含む方法によって得られる、成分(b)の線状若しくは分岐状のポリマーにも関する。
【0068】
重合性二重結合、チオール基又はカルボン酸基から選択される1つ又は複数の官能基を導入するための化合物は、カルボン酸無水物基、カルボン酸基、又はカルボン酸塩化物であり得る活性化型カルボン酸基と反応性の官能基と、重合性二重結合、チオール基又はカルボン酸基であり得る更なる官能基とを有する二官能性化合物であってもよい。
【0069】
好適な二官能性モノマーの例としては、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、ビニルアズラクトン、アリルイソシアネート、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸2−アミノエチル、メタクリル酸2−イソシアナトエチル(IEM)、アクリル酸、メタクリル酸及びN−ビニルピロリドン、システアミン、アリルアミン等が挙げられる。好適な二官能性モノマーの他の例は、米国特許第4,035,321号、米国特許第5,130,347号に記載されている。
【0070】
酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーは、好ましくは1000〜1000000、より好ましくは5000〜400000の範囲の分子量Mwを有する。
【0071】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、酸性基を含有する線状若しくは分岐状のポリマーを、組成物全体の重量に基づいて、好ましくは10重量パーセント〜80重量パーセント、より好ましくは15重量パーセント〜55重量パーセント含む。
【0072】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、任意で分散ナノ粒子を含む。ナノ粒子は、上記で規定されるような1つ又は複数の式(II)、式(III)又は式(IV)の化合物を含有する混合物を縮合することによって得られるナノ縮合体であってもよく、ここで、L、L’、L’’及びL’’’は以下の式:
−[(CHZ](CHiv
(式中、
Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、
ivは、上記で規定されるような式(I)の化合物を環化重合又は環化共重合する工程を含むプロセスによって得られる、酸性基を含むとともにポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する線状若しくは分岐状のポリマー部分を表し、
o及びpは同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、1〜6の整数を表し、
qは0〜12の整数を表す)
によって表すことができる。
【0073】
シランの縮合は酸触媒作用によって行うことができる。好適な酸は、フッ化水素酸、塩酸、リン酸及び硫酸等の鉱酸から選択することができる。縮合は、更なる加水分解性金属化合物、例えばチタン、ジルコニウム、セリウム、イッテルビウム、アルミニウム、スズ及びイットリウムのアルコキシドから選択される金属アルコキシド等の存在下で行ってもよい。粒度分布は、共縮合性金属化合物の非存在下では、通常は共縮合性金属化合物が存在する場合よりも狭い。好ましい実施形態では、本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物の分散ナノ粒子はペンダントチオール基を有する。
【0074】
本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物は、組成物全体の重量に基づいて0重量パーセント〜75重量パーセントの分散ナノ粒子を含み得る。好ましくは、組成物は、組成物全体の重量に基づいて5重量パーセント〜50重量パーセントの分散ナノ粒子を含有する。好ましい実施形態では、分散ナノ粒子は、1nm〜100nmの平均粒度を有する。
【0075】
本発明のグラスアイオノマー組成物は、任意で低分子化合物を更に含有していてもよい。低分子化合物は、100〜5000の範囲、好ましくは200〜2000の範囲の分子量Mwを有し得る。低分子化合物は1つ又は複数の−SH基(式中、xは1〜6の整数である)を含有してもよい。代替的には、低分子化合物は、エン型反応又はマイケル付加反応においてグラスアイオノマー組成物中に存在する−SH基と反応することのできる部分を含有してもよい。好適なポリチオール化合物の具体例は、PEGジチオール(例えばAldrichの704369、平均分子量:1500;Aldrichの704539、平均分子量:3400)、1,16−ヘキサデカンジチオール、Asn−Arg−Cys−Ser−Gln−Gly−Ser−Cys−Trp−Asn(還元=85%(HPLC)C44H67N17O16S2、1154.24)等のペプチド、トリチオシアヌル酸、テトラチオール及びテトラピロールで置換されたテトラチアフルバレン誘導体、ペンタエリスリチルテトラチオール、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、2,2’−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール並びにペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)である。
【0076】
本発明のグラスアイオノマー組成物は、粒子状ガラス及び/又は酸性基を含む線状ポリマー及び/又は任意の分散ナノ粒子及び/又は低分子化合物を架橋する−SH基(式中、xは1〜6の整数である)を含み得る。−SH基(式中、xは1〜6の整数である)はスルファン基又はポリスルファン基であり、xは好ましくは1〜3である。具体的には、−SH基は好ましくはチオール基(−SH)、ジスルファン基(−S−SH)又はトリスルファン基(−S−S−SH)である。より好ましい実施形態では、−SH基はチオール基であり、第一級チオール基であっても、又は第二級チオール基であってもよい。
【0077】
架橋反応が−SH基の酸化カップリングに基づく場合、−SH基(式中、xは1〜6の整数である)は反応性粒子状ガラス、酸性基を含有する線状若しくは分岐状のポリマー、任意の分散ナノ粒子のいずれか、又は組成物中に存在する任意の低分子化合物に存在し得る。好ましくは、酸化カップリングは酸化剤の存在下での金属触媒酸化カップリングである。このため、組成物は好ましくは遷移金属イオン及び酸化剤を含有する。遷移金属イオンの例は鉄イオン及びマンガンイオンである。また、組成物は好ましくは酸化剤を含有する。好適な酸化試薬の例は、過酸化水素等の過酸化物、又はフリーラジカル重合開始剤として一般に使用される過酸化合物である。
【0078】
第1の好ましい実施形態では、−SH基は、反応性粒子状ガラス、酸性基を含有する線状若しくは分岐状のポリマー、又は任意の分散ナノ粒子のいずれかにのみ存在する。−SH基が組成物中に存在する任意の更なる低分子成分にのみ存在する場合、反応性粒子状ガラス、酸性基を含有する線状若しくは分岐状のポリマー、及び/又は任意の分散ナノ粒子は、−SH基とのエン型反応又はマイケル付加に関与することのできる反応性炭素−炭素二重結合を含有することが必要であろう。具体的には、−SH基は酸性基を含有する線状若しくは分岐状のポリマーに存在し得る。
【0079】
第2の好ましい実施形態では、−SH基は反応性粒子状ガラス、酸性基を含有する線状若しくは分岐状のポリマー、任意の分散ナノ粒子又は任意の低分子化合物のいずれかの群から選択される少なくとも2つに存在する。この群から選択される任意の他のものは、−SH基とのエン型反応又はマイケル付加に関与することのできる反応性炭素−炭素二重結合を含有してもよい。
【0080】
第3の好ましい実施形態では、反応性粒子状ガラス、酸性基を含有する線状若しくは分岐状のポリマー、任意の分散ナノ粒子又は任意の低分子化合物の群から選択される各々が、−SH基、又は−SH基とのエン型反応に関与することのできる反応性炭素−炭素二重結合のいずれかを含有する。
【0081】
このため、本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物では、−SH基は、酸化カップリングによって、粒子状ガラス、及び/又は酸性基を含有する線状若しくは分岐状のポリマー、及び/又は任意の分散ナノ粒子を架橋することができる。
【0082】
更なる好ましい実施形態では、本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物のスルファン基又はポリスルファン基は、粒子状ガラス、及び/又は酸性基を含有する線状ポリマー、及び/又は任意の分散ナノ粒子を酸素の非存在下で架橋する。好ましくは、本発明による水性歯科用グラスアイオノマー組成物中の−SH基は、−SHエン型反応又はマイケル付加によって架橋される。
【0083】
本発明の歯科用グラスアイオノマー組成物は、架橋反応触媒、遅延剤、フリーラジカル重合開始剤、安定剤、非反応性充填剤、溶媒、顔料、非ガラス質充填剤、フリーラジカル捕捉剤、重合防止剤、反応性希釈剤及び非反応性希釈剤、充填剤の反応性を高めるカップリング剤、レオロジー調整剤並びに界面活性剤(防止剤の溶解度を高めるため等、例えばポリオキシエチレン)を更に含有していてもよい。
【0084】
好適な架橋反応触媒は、金属カチオン、金属錯体、及び/又は金属粉末若しくは金属コロイド等の金属粒子を単独で、又は酸素、過酸化物及び/若しくは酸化性金属錯体等の酸化剤と組み合わせて含んでいてもよい。一態様では、触媒及び酸化剤は同じ材料を含み得る。金属カチオン、金属錯体及び/又は金属粒子は鉄原子、ニッケル原子、銅原子、コバルト原子若しくは白金原子、又は対応するそのイオンを含み得る。過酸化物は過酸化水素、過酸化尿素、エチルメチルケトンペルオキシド又は過酸化ベンゾイルを含み得る。
【0085】
好適な遅延剤は、酒石酸等の複数のカルボン酸基を有する低分子量化合物である。
【0086】
好適なフリーラジカル重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキシド、過酸化アセトン及びtert−ブチルヒドロペルオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル及び1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物、並びに塩素、臭素又はヨウ素等のハロゲンから選択することができる。
【0087】
好適な安定剤は、ビタミンC、無機硫化物及びポリスルフィド等の還元剤から選択することができる。
【0088】
好適な非反応性充填剤は、歯科用修復材組成物に現在使用されている充填剤から選択することができる。充填剤は微粉化されているものとし、好ましくは約100μm未満の最大粒径及び約10μm未満の平均粒径を有する。充填剤は単峰性又は多峰性(例えば二峰性)の粒度分布を有し得る。充填剤は無機材料であってもよい。充填剤は、重合性樹脂に不溶性であり、任意で無機充填剤で充填された架橋有機材料であってもよい。充填剤は放射線不透性、放射線透過性又は非放射線不透性であり得る。
【0089】
好適な非反応性無機充填剤の例は、石英、窒化ケイ素等の窒化物、例えばCe、Sb、Sn、Zr、Sr、Ba及びAlから誘導されたガラス、コロイドシリカ、長石、ホウケイ酸ガラス、カオリン、タルク、チタニア及び亜鉛ガラス、並びに焼成シリカ等のサブミクロンシリカ粒子等のような天然材料又は合成材料である。
【0090】
好適な非反応性有機充填剤粒子の例としては、充填又は無充填の微粉ポリカーボネート又はポリエポキシドが挙げられる。
【0091】
好ましくは、充填剤粒子の表面は、充填剤と基質との間の結合を増強するためにカップリング剤で処理されている。好適なカップリング剤の使用には、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が含まれる。
【0092】
好適な溶媒又は非反応性希釈剤としては、エタノール及びプロパノール等のアルコールが挙げられる。好適な反応性希釈剤は、靱性、付着性及び硬化時間等の性質を変化させるα,β−不飽和モノマー、例えばメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸ヒドロキシプロピルである。
【0093】
好適なα,β−不飽和モノマーは、水溶性、水和性又は水分散性であり得る。水溶性、水和性又は水分散性のアクリレート及びメタクリレート、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ビス−フェノールA(「bis−GMA」)のメタクリル酸ジグリシジル、モノアクリル酸グリセロール及びジアクリル酸グリセロール、モノメタクリル酸グリセロール及びジメタクリル酸グリセロール、ジアクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール(エチレンオキシド繰り返し単位の数は2〜30で変化する)、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール(エチレンオキシド繰り返し単位の数は2〜30で変化する)、特にジメタクリル酸トリエチレングリコール(「TEGDMA」)、ジアクリル酸ネオペンチルグリコール、ジメタクリル酸ネオペンチルグリコール、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールのモノアクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート及びテトラアクリレート、及びペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールのモノメタクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート及びテトラメタクリレート、ジアクリル酸1,3−ブタンジオール、ジメタクリル酸1,3−ブタンジオール、ジアクリル酸1,4−ブタンジオール、ジメタクリル酸1,4−ブタンジオール、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルヘキサンエチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルジメチルベンゼンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−トリメチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−クロロメチル−2−メタクリロキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ−フェニル)]プロパン、2,2’−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−アクリロキシ−フェニル)]プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[3(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−メタクリレート]プロパン、並びに2,2’−ビス[3(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−アクリレート)プロパンに言及することができる。重合性成分の他の好適な例は、イソプロペニルオキサゾリン、ビニルアズラクトン、ビニルピロリドン、スチレン、ジビニルベンゼン、アクリル酸ウレタン又はメタクリル酸ウレタン、エポキシアクリレート又はエポキシメタクリレート、及びアクリル酸ポリオール又はメタクリル酸ポリオールである。
【0094】
また、更に好ましい化合物群は、ジアリルアミン等のジアリル化合物である。
【0095】
α、β−不飽和モノマーの混合物を所望に応じて添加することができる。好ましくは、混合済みであるが未硬化の本発明のセメントは、混合済みであるが未硬化のセメント成分の全重量(水、溶媒、希釈剤及びα,β−不飽和モノマーを含む)に基づいて、約0.5%〜約40%、より好ましくは約1%〜約30%、最も好ましくは約5%〜20%の総重量の水、溶媒、希釈剤及びα,β−不飽和モノマーを含有する。
【0096】
好適なフリーラジカル捕捉剤の一例は4−メトキシフェノールである。
【0097】
好適な重合防止剤は、ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン、1,4−ベンゾキノン、tert−ブチルピロカテコール、トルヒドロキノン及び3,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールから選択することができる。防止剤の量は、コポリマー/コモノマー/水混合物の全重量に基づいて、0.001%〜2%、好ましくは0.02%〜0.5%から選択することができる。
【0098】
酸化カップリングによって−SH基を架橋するために、外部エネルギーを代替的又は付加的に利用することができる。外部エネルギー源は、熱エネルギー源、超音波エネルギー源、及び/又は紫外線ランプ若しくは可視光ランプ等の光エネルギー源等といった放射エネルギー源から選択することができる。酸化カップリングによって−SH基を架橋するために光エネルギーを利用する場合には、歯科用グラスアイオノマー組成物は、分子状酸素、α−ジケトン、オルトキノン、有機色素、蛍光色素若しくは着色剤等の光開始剤及び/若しくは光増感剤、並びに/又はアゾビスイソブチロニトリル及び1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物を更に含み得る。
【0099】
歯科用グラスアイオノマー組成物は、歯科用アイオノマーセメントに使用することができる。かかるセメントは2つの主要な群に分類することができる。第1の群は、その主成分として、α,β−不飽和カルボン酸のホモポリマー又はコポリマー(例えばポリアクリル酸、コポリ(アクリル酸、イタコン酸)等)、改質フルオロアルミノケイ酸塩ガラス等の改質粒子状反応性充填剤、水、及び酒石酸等のキレート剤を利用する従来のグラスアイオノマーに関する。かかる歯科用アイオノマーセメントは、使用直前に混合される粉末形態/液体形態で供給することができる。この混合物は、ポリカルボン酸の酸性基とガラスから浸出したカチオンとの間のイオン反応、並びに−SH基に基づく架橋反応のために暗所で自己固化する。第2の主要な群は樹脂改質グラスアイオノマーセメントに関する。従来のグラスアイオノマーと同様、樹脂改質グラスアイオノマーセメントも、本発明の方法に従って得られる改質粒子状反応性充填剤を用いるが、樹脂改質グラスアイオノマーセメントの有機部は異なる。或るタイプの樹脂改質グラスアイオノマーセメントでは、例えば米国特許第5,130,347号に記載のように、酸性繰り返し単位の一部をペンダント硬化性基で置き換えるか、又は末端キャップするようにポリカルボン酸が修飾され、光開始剤を添加することで第2の硬化機構がもたらされる。アクリレート基又はメタクリレート基をペンダント硬化性基として利用することができる。例えば特許文献8に記載のように、レドックス硬化系を添加して第3の硬化機構をもたらすことができる。別のタイプの樹脂改質グラスアイオノマーセメントでは、例えばMathis et al., "Properties of a New Glass Ionomer/Composite Resin Hybrid Restorative", Abstract No. 51, J. Dent Res., 66:113 (1987)、並びに米国特許第5,063,257号、米国特許第5,520,725号、米国特許第5,859,089号及び米国特許第5,962,550号に記載のように、セメントはポリカルボン酸、アクリレート機能性又はメタクリレート機能性モノマー、及び光開始剤を含む。様々なモノマー含有セメント又は樹脂含有セメントが、特許文献7、米国特許第5,227,413号、米国特許第5,367,002号及び米国特許第5,965,632号にも示されている。樹脂改質グラスアイオノマーセメントは粉末/液体系又はペースト/ペースト系として配合することができ、混合及び適用された水を含有する。樹脂改質グラスアイオノマーセメントは、ポリカルボン酸の酸性基とガラスから浸出したカチオンとの間のイオン反応、並びに水性歯科用グラスアイオノマー組成物のpHが、粒子状ガラスと反応性の線状ポリカルボン酸の主要な硬化反応の終了時に少なくとも6である場合に、粒子状ガラス及び/又は線状ポリカルボン酸及び/又は任意の分散ナノ粒子の架橋反応のために暗所で固化する。また、樹脂改質グラスアイオノマーセメントは、セメントを歯科用硬化ランプからの光に暴露することによっても硬化する。
【0100】
グラスアイオノマー組成物を調製する方法は既知である(Crisp et al., "Glass ionomer cement formulations. II. The synthesis of novel polycarboxylic acids," in J. Dent. Res. 59 (6): 1055-1063 (1980))。歯科用アイオノマーセメントは、アイオノマーを粒子状反応性充填剤及び任意的ナノ粒子と水の存在下で混合することによって調製される。アイオノマーセメント系の成分を様々な方法及び量で(例えば混合するか又はブレンドすることによって)組み合わせることによって、本発明のアイオノマーセメントを形成することができる。例えば、アイオノマーの濃縮水溶液を、使用時に改質粒子状反応性充填剤及び任意で更なる成分と混合することができる。得られるアイオノマー、改質粒子状反応性充填剤及び水の組み合わせによって硬化反応が開始する。代替的には、アイオノマー及び改質粒子状反応性充填剤は、硬化反応を進行させるのに十分な水が存在しない条件下で、フリーズドライ又は凍結乾燥させた粉末状のブレンド物として提供される。その後、かかる系を使用時に水と組み合わせることによって、硬化反応を開始させることができる。硬化反応が開始した後、得られる混合物をその所望の形状に形成し、その後硬化させて混合物を完全に固化することができる。概して、アイオノマー対水の重量/重量比は約1:10〜約10:1である。概して、水中のアイオノマーの濃度は、25重量%〜90重量%、好ましくは40重量%〜65重量%の範囲である。得られる水溶液の液体に対するポリマーの比は概して、約1.5〜8の範囲である。
【0101】
米国特許第4,089、830号、米国特許第4,209,434号、米国特許第4,317,681号及び米国特許第4,374,936号に記載されているように、セメントを調製する際の作業時間及び硬化時間をそれぞれ調整するために、反応混合物は酒石酸等の遅延剤又は改質剤を更に含んでいてもよい。概して、作業時間の増加は硬化時間の増加にもつながる。「作業時間」は、アイオノマー及び改質粒子状反応性充填剤を水の存在下で組み合わせた際の硬化反応の開始と、その意図する歯科用途又は医学的用途のために更なる物理的作業を系に対して行うこと、例えばそれをスパチュラで扱うか又は再形成することが実際的でなくなる時点まで硬化反応が進行した時点との間の時間である。「硬化時間」は、修復物における硬化反応の開始から、その後の臨床処置又は外科処置を修復物の表面に対して行うのに十分な固化が起こった時点までに測定される時間である。
【0102】
硬化反応においては、改質粒子状反応性ガラスは塩基として振る舞い、酸性アイオノマーと反応して、結合基質として働く金属ポリ塩を形成する(Prosser, J. Chem. Tech. Biotechnol. 29: 69-87(1979))。また、−SH基の存在のために、粒子状ガラスと反応性の線状ポリカルボン酸の反応中に水性歯科用グラスアイオノマー組成物のpHが少なくとも6である場合、粒子状ガラス及び/又は線状ポリカルボン酸及び/又は任意の分散ナノ粒子の架橋が起こる。このため、セメント内の結合は、機械的性質に関して問題となるイオン性塩架橋だけでなく、共有結合及び錯体結合にも依存する。硬化反応はしたがって、水の存在下で自動的に進行する二重化学硬化系とみなされる。セメントは数分以内にゲル様状態まで硬化し、急速に固化して強度を発現する。更なる反応は重合反応及び重付加反応である。
【0103】
歯科用組成物はマルチパック組成物、好ましくは2パック組成物である。組成物はペースト/ペースト系、粉末/液体系又は液体/ペースト系であり得る。組成物は成分の早期硬化を回避するように設計される。この目的で、反応性無機充填剤成分及び任意の酸基含有成分を、早期セメント反応を回避するように配合しなくてはならない。第1の実施形態では、反応性無機ガラスが第1のパックに含有され、任意の酸基含有成分が第2のパックに含有される。第1のパックは粉末又はペーストであり得る。第2のパックは液体又はペーストであり得る。第2の実施形態では、第1のパックは反応性無機充填剤及びポリアクリル酸等の固体ポリ酸を含む粉末であり、第2のパックはペースト又は液体であり、更なる酸基含有成分を含有する。
【0104】
粉末対液体の比は混合したアイオノマーセメント系の加工性に影響を及ぼす。20:1より高い重量比は加工性の低下を示す傾向があり、1:1を下回る比率は機械的性質、例えば強度の低下を示す傾向があるため、好ましくない。好ましい比率は約1:3〜約6:1、好ましくは約1:1〜4:1程度である。
【0105】
ここで、本発明を以下の実施例によって更に説明する。全ての百分率は、特に指定のない限り重量百分率を指す。
【実施例】
【0106】
調製実施例1
ポリテトラヒドロピラン−3,5−ジカルボン酸の合成
1. 2−ヒドロキシメタクリル酸エチルエステルの合成
【化5】

100ml容のフラスコに、10.0g(0.1mol)のアクリル酸エチルエステル、2.2g(0.072mol)のパラホルムアルデヒド及び0.80g(7.2mmol)の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを導入し、数日間にわたって室温で攪拌する。初めは濁っていた反応混合物が最終的に透明になる。この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン、1:1)で精製する。分画物を合わせて、ヒドロキノンを添加し、溶媒を真空下で除去する。透明な液体が得られる。
画分2〜画分7:
IR:2982、2936、2910、2872(ν、−CH、−CH)、1710(ν、−COOR)、1637(ν、−C=C)、1460、1447、1375(δ、−CH、−CH)、1156、1093(ν、−C−O−C−)、948(ν、RCH=CH)cmー1
H−NMR(500MHz、CDCl):d6.31、5.89(δ、4H、RC−CH=CH)、4.25(s、4H、RC−CH−O−CH−CR)、4.22(q、4H、RCO−CH−CH)、1.30(t、6H、RC−CH)ppm。
GC/MS:m/z197(C10H13O4+)、169(C9H13O3+)、129(C6H9O3+)、113(C6H9O2+)、73(C3H5O2+)、69(C4H5O+)、57(C3H5O+)、55(C3H3O+)、45(C2H5O+)。
画分9〜画分13:
IR:3415(ννν、−OH)、2983、2939、2907、2872(ν、−CH、−CH)、1706(ν、−COOR)、1636(ν、−C=C)、1463、1448、1387(δ、−CH、−CH)、1152、1051(ν、−C−O−)、947(ν、RCH=CH)cmー1
H−NMR(500MHz、CDCl):d6.25、5.82(s、2H、RC−CH=CH)、4.33(s、2H、RC−CH−OH)、4.25(q、2H、RCO−CH−CH)、2.28(s、1H、−OH)、1.32(t、3H、RC−CH)ppm。
GC/MS:m/z129(M−H+)、113(C6H9O2+)、101(C4H5O3+)、85(C4H5O2+)、73(C3H5O2+)、57(C3H5O+)、45(C2H5O+)。
【0107】
2. ポリジエチルテトラヒドロピラン−3,5−ジカルボキシレートの合成
【化6】

マグネチックスターラー及びガス注入口を備えた100mL容の二つ口フラスコに、10.0gのo−キシレン及び1.0g(4.13mmol)のオキシビスメタクリレートを導入し、混合物をアルゴンガスで30分間飽和させる。続いて、6.78mg(0.041mmol)のN,N−アゾイソブチロニトリルを添加し、反応混合物を60℃まで加熱する。攪拌をアルゴン雰囲気下で24時間継続する。このポリマー溶液をn−ヘキサンで沈殿させ、乾燥させて、白色粉末を得る。
IR:2981、2933、2904、2869(ν、−CH、−CH)、1724(ν、−COOR)、1638(ν、−C=C)、1467、1445、1384(δ、−CH、−CH)、1154、1098、860(ν、−C−O−C−)cm−1
H−NMR(500MHz、CDCl):d4.21(br q、2H、RCOOCHCH)、4.10、3.78(br dd、2H、RCHOCHR)、2.83(br d、2H、ROCCCHCCOR)、1.63(br s、R−CH−シクロ)、1.30(br t、RCOOCHCH)ppm。
GPC(THF):M=21381g/mol、M=54807g/mol、PD=2.563
=21481g/mol、M=80523g/mol、PD=3.748
【0108】
マグネチックスターラー及びガス注入口を備えた100mL容の二つ口フラスコに、25.0gのo−キシレン及び0.5g(2.07mmol)のオキシビスメタクリレートを導入し、混合物をアルゴンガスで30分間飽和させる。続いて、3.39mg(0.020mmol)のN,N−アゾイソブチロニトリルを添加し、反応混合物を60℃まで加熱する。攪拌をアルゴン雰囲気下で48時間継続する。このポリマー溶液をn−ヘキサンで沈殿させ、乾燥させる。
GPC(THF):Mn=7825g/mol、M=13259g/mol、PD=1.694
【0109】
3. ポリジメチルテトラヒドロピラン−3,5−ジカルボキシレートの合成
【化7】

マグネチックスターラー及びガス注入口を備えた100mL容の二つ口フラスコに、33.3gのo−キシレン及び1.0g(4.67mmol)のメチル−4−オキサヘプタ−1,6−ジエン−2,6−ジカルボキシレートを導入し、混合物をアルゴンガスで30分間飽和させる。続いて、7.66mg(0.046mmol)のN,N−アゾイソブチロニトリルを添加し、反応混合物を60℃まで加熱する。攪拌をアルゴン雰囲気下で24時間継続する。このポリマー溶液をn−ヘキサンで沈殿させ、白色ポリマーを乾燥させる。
IR:2999、2952、2904、2850(ν、−CH3、−CH2)、1730(ν、−COOR)、1638(ν、−C=C)、1435、1391(δ、−CH3、−CH2)、1155、1104(ν、−C−O−C−)cm
GPC(THF):M=4461g/mol、M=8478g/mol、PD=1.900
=3749g/mol、M=7478g/mol、PD=1.994
【0110】
マグネチックスターラー及びガス注入口を備えた250mL容の二つ口フラスコに、150gのo−キシレン及び5.0g(23.3mmol)のメチル−4−オキサヘプタ−1,6−ジエン−2,6−ジカルボキシレートを導入し、混合物をアルゴンガスで30分間飽和させる。続いて、38.3mg(0.233mmol)のN,N−アゾイソブチロニトリルを添加し、反応混合物を60℃まで加熱する。攪拌をアルゴン雰囲気下で72時間継続する。このポリマー溶液をn−ヘキサンで沈殿させ、白色ポリマー粉末を乾燥させる。
IR:2996、2951、2860(ν、−CH、−CH)、1730(ν、−COOR)、1634(ν、−C=C)、1435、1384(δ、−CH、−CH)、1154、1105(ν、−C−O−C−)cm−1
H−NMR(500MHz、CDCl3):d4.28、4.18(br dd、2H、RCHOCHR)、3.64(br t、RCOOCH)、2.83(br d、2H、ROCCCHCCOR)、1.78(br s、R−CH−シクロ)ppm。
13C{H}−NMR(500MHz、CDCl):d173.38(RCOOCH)、71.21(RCHOCHR)、52.54(RCOOCH)、44.63(Cq)、36.42(ROCCCHCCOR)、20.15(R−CH−シクロ)ppm。
GPC(DMF):M=7811g/mol、M=24538g/mol、PD=3.141、Tg約140℃
【0111】
4. ポリテトラヒドロピラン−3,5−ジカルボン酸の合成
【化8】

が反応の過程で溶解する。続いて、このポリマー溶液を酸性化し、ポリテトラヒドロピラン−3,5−ジカルボン酸を沈殿させる。ポリカルボン酸を乾燥させる(その後塩基水溶液に溶解させてもよい)。
IR:2998、2952、2863(ν、−CH、−CH)、1717(ν、−COOH)、1437、1398(δ、−CH、−CH)、1157、1097(ν、−C−O−C−)cmー1
H−NMR(500MHz、DO):d4.22、4.07(br dd、2H、RCHOCHR)、3.50(br t、RCOOCH)、2.98(br d、2H、ROCCCHCCOR)、2.38、2.14(br dd、2H、HOCCCHCCOH)、1.37(br s、R−CH−シクロ)ppm。
【0112】
調製実施例2
ポリ−1,3−ジエチル−5,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3,5,5−テトラカルボキシレートの合成
1. 2−ブロモメチルアクリル酸エチルエステルの合成
【化9】

マグネチックスターラー、滴下漏斗及び乾燥管を備えた100ml容のフラスコにおいて、2.3g(17.7mmol)の2−ヒドロキシメタクリル酸エチルエステルを10mLの無水ジエチルエーテルに添加する。氷冷下で、5mLの無水ジエチルエーテル中の1.92g(7.08mmol)の三臭化リンを滴下する。室温で18時間攪拌した後、氷冷下で10mLの水を添加することによって過剰の三臭化リンを全て加水分解する。有機層を飽和NaHCO溶液で2回洗浄し、NaSOで乾燥させて、少量のヒドロキノンで安定化させる。ジエチルエーテルを真空下で除去する。
IR:2981、2933、2901、2869(ν、−CH、−CH)、1718(ν、−COOR)、1628(ν、−C=C)、1463、1444、1398(δ、−CH、−CH)、1182、1115(ν、−C−O−)、957(ν、RCH=CH)、607(ν、C−Br)cm−1
GC/MS:m/z 192(M−H+)、164(C4H6BrO2+)、146(C4H4BrO+)、118(C3H4Br+)、113(C6H9O2+)、85(C4H5O2+)、69(C4H5O+)、57(C3H5O+)、41(C3H5+)。
H−NMR(500MHz、CDCl):d6.32.5.93(s、2H、RC−CH=CH)、4.26(q、2H、RCOO−CH−CH)、4.17(s、2H、RC−CH−Br)、1.32(t、3H、RC−CH)ppm。
【0113】
2. 2,6−ジエチル−4,4−ジメチル−ヘプタ−1,6−ジエン−2,4,4,6−テトラカルボキシレートの合成
【化10】

50mL容のフラスコに、9mLのアセトニトリル(p.a.)中の0.23g(5.83mmol)の水素化ナトリウム(60%鉱油分散物)の冷却懸濁液を導入し、0.34g(2.59mmol)のマロン酸ジメチルエステルを添加する。反応混合物を4℃で15分間攪拌し、続いて2mLのアセトニトリル(p.a.)中の1.0g(5.18mmol)の2−ブロモメチル−アクリル酸エチルエステルの溶液を添加する。混合物を2時間にわたって室温で攪拌する。続いて、10mLの飽和NaCl溶液を添加し、それぞれ10mLのジエチルエーテルで3回の抽出を行う。合わせた有機層を蒸留水及びNaCO水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させて、少量のヒドロキノンで安定化させる。ジエチルエーテルを真空下で除去する。
IR:2983、2954、2904(ν、−CH、−CH)、1712(ν、−COOR)、1629(ν、−C=C)、1436、1370(δ、−CH、−CH)、1147、1115(ν、−C−O−)、954(ν、RCH=CH)cm−1
GC/MS:m/z356(M+)、325(C16H21O7+)、311(C15H19O7+)、298(C14H18O7+)、283(C14H19O6+)、281(C14H17O6+)、267(C13H15O6+)、251(C13H15O5+)、237(C12H13O5+)、213(C10H13O5+)、211(C11H15O4+)、207(C11H11O4+)、197(C10H13O4+)、129(C6H9O32+)、113(C6H9O2+)、69(C4H5O+)、59(C2H3O2+)、44(CHO2+)。
【0114】
3. ポリ−1,3−ジエチル−5,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3,5,5−テトラカルボキシレートの合成
3. ポリ−1,3−ジエチル−5,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3,5,5−テトラカルボキシレートの合成
【化11】

マグネチックスターラー及びガス注入口を備えた25mL容のフラスコに、3.0gのo−キシレン及び0.3g(0.84mmol)の2,6−ジエチル−4,4−ジメチル−ヘプタ−1,6−ジエン−2,4,4,6−テトラカルボキシレートを導入し、混合物をアルゴンガスで30分間飽和させる。続いて、1.38mg(8.42μmol)のN,N−アゾイソブチロニトリルを添加し、反応混合物を60℃まで加熱する。攪拌をアルゴン雰囲気下で48時間継続する。このポリマー溶液をn−ヘキサンで沈殿させ、白色ポリマーを乾燥させる。
IR:2977、2955、2904(ν、−CH、−CH)、1733(ν、−COOR)、1434、1382(δ、−CH、−CH)、1136(ν、−C−O−)cm−1
GPC(THF):M=1810g/mol、M=2271g/mol、PD=1.255
【0115】
調製実施例3
ジビニルエーテル及びマレイン酸無水物に由来するシクロコポリマー(DIVEMA)の合成
1. ジビニルエーテルの合成
【化12】

マグネチックスターラー及び蒸留ブリッジを備えた100mLの二つ口フラスコに、40mLの無水tert−ブタノール中の9.39g(83.7mmol)のカリウムtert−ブチレートを導入し、50℃まで加熱する。セプタムを用いて、6.0g(41.9mmol)の2−クロロエチルエーテルを、100℃に加熱した混合物に滴下する。反応混合物は混濁する。蒸留ヘッドをアセトン/ドライアイスで冷却する。
GC/MS:m/z70(M+)、44(C2H4O2+)、43(C2H3O+)、31(CH3O+)、27(C2H3+)。
H−NMR(200MHz、CDCl):d6.51〜6.41(dd、2H、RO−CH=CH)、4.62〜4.54(dd、2H、RO−CH=CH)、4.29〜4.25(dd、2H、RO−CH=CH)ppm。
【0116】
2. ジビニルエーテル及びマレイン酸無水物に由来するシクロコポリマー(DIVEMA)の合成
【化13】

マグネチックスターラーを備えた25mL容のフラスコに、0.5g(7.13mmol)のジビニルエーテルを導入する。氷冷下で、9mLのo−キシレン中の1.40g(0.014mol)のマレイン酸無水物及び17.3mg(0.105mmol)のAIBNのアルゴン飽和溶液を添加する。混合物を50℃の温度で1時間、続いて70℃で3時間加熱する。このポリマーを濾過し、高温o−キシレンで洗浄し、80℃で乾燥させる。
IR:2938(ν、−CH2)、1850、1775(ν、環状無水物)、1625(ν、−C=C)、1438、1392(δ、−CH)、1223(ν、環状無水物)、1089(ν、−C−O−C−)cm−1
H−NMR(500MHz、DMSO−d):d4.26(br、2H、RCHOCHR)、3.90、3.81(br、2H、無水物−シクロ)、3.20、2.76(br、2H、無水物−骨格)、1.90(br、ROCHRCHR、R−CH−シクロ)ppm。
softening:約280℃、Tdecompostision:約320℃
DSC(10℃/分):溶融域=139.37℃〜220.64℃、250.26℃〜266.20℃
DSC(20℃/分):溶融域=129.72℃〜212.02℃
DLS(10mg/mL HO):流体力学直径=3.063nm
【0117】
調製実施例4
無水物基の開環
a)加水分解開環
無水物基の加水分解を、シクロコポリマーを蒸留水中、60℃で2時間加熱することによって行った。続いて、ポリマー溶液をフリーズドライした。
【化14】

IR:2926(ν、−CH)、1698(ν、−COOH)、1409(d、−CH)、1176、1082(ν、−C−O−C−)cm−1
DLS(5mg/mL HO):流体力学直径=4.500nm
=38600Da、M=151000Da、M/M=3.90
【0118】
b)ヒドロキシメチルアクリル酸を用いた開環
c)HEMAを用いた開環
官能基化シクロコポリマーを合成するために、DIVEMAを室温又は100℃でメタクリル酸2−ヒドロキシエチルによって処理した:
【化15】

【0119】
このシクロコポリマーを部分的に官能基化した。この反応からメタクリル酸2−ヒドロキシエチルの重合が示される。
【0120】
d)システアミン及びアリルアミンを用いた開環
官能基化シクロコポリマーを合成するために、DIVEMAをアリルアミン及びシステアミンによって処理した。このポリマーは水に可溶である。
【化16】

IR:2929(ν、−CH)、1853、1777(ν、環状無水物)、1712(ν、−COOH)、1639(ν、−C=C)、1639、1536(ν、−CO−NH−)、1421、1356(d、−CH)、1207(ν、環状無水物)、1087(ν、−C−O−C−)、991、923(d、RCH=CH)cm−1
H−NMR(500MHz、DMSO−d):d11.64(br、4H、RCOOH)、8.01(br、2H、−CO−NH−)、5.82(br、2H、RCH=CH)、5.21、5.08(br、4H、RCH=CH)、3.98(br、2H、RCHOCHR)、3.81(br、4H、−CO−NH−CHR)、3.74(br、2H、無水物−シクロ)、3.23(br、2H、無水物−骨格)、2.95、2.70(br、2H、RCH−シクロ)、2.70、2.64(br、2H、RCH−骨格)、2.11、1.91(br、2H、ROCHRCHR)、1.84(br、2H、R−CH−シクロ)ppm。
【化17】

【0121】
水への低い溶解度からジスルフィド架橋の形成が示される。
IR:2929(ν、−CH)、2551(ν、−SH)、1703(ν、−COOH)、1634、1536(ν、−CO−NH−)、1381(d、−CH)、1192、1077(ν、−C−O−C−)、753(ν、−S−C−)cm−1
DLS(5mg/mL HO):流体力学直径=13.41nm
【0122】
調製実施例5
DIVEMAの合成
【化18】

5.44g(77.6mmol)のジビニルエーテルを、マグネチックスターラーを備えた250mL容のフラスコに導入する。185mLのアセトン中の15.2g(0.155mol)のマレイン酸無水物(cMonomer=1.28mol/L)及び0.24g(1.46mmol、0.8×10−2mol/L)のAIBNのアルゴンガス飽和溶液を添加する。混合物を60℃で5時間加熱する。このポリマー溶液を乾燥ジエチルエーテル中に沈殿させて、ポリマーを乾燥させる。
GPC(HO):M=25700g/mol、M=96700g/mol、PD=3.76
【0123】
類似ポリマーの修飾
【化19】

【0124】
ポリ(アクリル酸−コ−1,3−ジエチル−5,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3,5,5−テトラカルボキシレート)の合成
【化20】

17.6gのDMF、2.50g(34.7mmol)のアクリル酸、及び1.23g(3.46mmol)の2,6−ジエチル−4,4−ジメチル−ヘプタ−1,6−ジエン−2,4,4,6−テトラカルボキシレートを、マグネチックスターラー、及び混合物をアルゴンガスで飽和させるガス注入口を備えた50mL容のフラスコに導入する。続いて、57.0mg(0.35mmol)のAIBNを添加し、反応混合物をアルゴン雰囲気下で60℃まで加熱する。48時間後、このポリマー溶液を蒸留アセトンで沈殿させる。ポリマーを遠心分離することによって分離し、粘性のポリマーを蒸留水に溶解させた後、凍結乾燥する。
IR(DB49−6/1002):2931(ν、−CH、−CH)、1703(ν、−COOH)、1636(ν、−C=C)、1436、1384(δ、−CH、−CH)、1247、1161(ν、−C−O−)cm−1
H−NMR(DB49−6/1002、500MHz、DMSO−d):δ 12.24(br、RCOOH)、4.14、3.98(br、RCOOCHCH)、3.60(br、RCOOCH)、2.54(br、RCHCCOOCH)、2.19(br、RCHCOOH)、1.90(br、RCHCCOOCHCH)、1.73(br、R−CH−シクロ)、1.49(br、R−CH−COOH)、1.15(br、RCOOCHCH)ppm。
【0125】
応用実施例1:
1.8gの実施例4のポリ酸(M=151000Da)及び0.2gの酒石酸を、3.00mLの脱塩水に溶解させた。粉砕した亜鉛−ストロンチウム−カルシウム−リン−アルミニウム−フルオロケイ酸塩ガラスの粉末及びこの液体を、2:1の比率で手作業によって混合した。二軸曲げ強度を、直径20mm、厚さ1mmの円盤状の試験片を用いてEN ISO 6872に従って求めた。圧縮強度を、直径4mm、高さ6mmの試験片を用いてISO 9917−1:2007に従って求めた。全ての試験はZwickのZ020万能試験機上で行った。結果を以下の表に示す:
【0126】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性歯科用グラスアイオノマー組成物であって、
(a)反応性粒子状ガラス、
(b)セメント反応において前記粒子状ガラスと反応性であり、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する、酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマー、
(c)任意で、酸性基を含むとともにポリマー骨格を有するグラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖を含む分散ナノ粒子
を含み、成分(b)の前記線状若しくは分岐状のポリマー及び/又は成分(c)が存在する場合に成分(c)の前記グラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖のポリマー骨格が、
(i)1つ又は複数の以下の式(I):
【化1】

(式中、
Xは酸素原子、硫黄原子、NR基又はCR基であり、
及びYは互いに独立して、CR基又は単結合を表し、
、R、R、R、R、R、R、R及びRは互いに独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ZCOOR10、ZCN、ZC(O)NHR11及びZC(O)NR1213を表し、
10、R11、R12及びR13は互いに独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、
Zは単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表し、
及びR、又はR及びR中に存在するカルボン酸基が、カルボン酸無水物部分を形成していてもよい)
の化合物を環化重合又は環化共重合することと、任意で、
(ii)工程(i)を含むプロセスによって得られるポリマー又はコポリマーを、重合性二重結合、チオール基又はカルボン酸基から選択される1つ又は複数の官能基を導入するための化合物と反応させることと、任意で、
(iii)工程(ii)及び工程(iii)を含むプロセスによって得られるポリマー又はコポリマーを用いて工程(ii)を繰り返すことと
を含むプロセスによって得られることを特徴とする、水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項2】
成分(b)の前記線状若しくは分岐状のポリマー及び/又は成分(c)が存在する場合に成分(c)の前記グラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖のポリマー骨格が、以下の式(I)の化合物を、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、スチレン、8−メチルスチレン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ハロゲン化ビニリデン及びアクリロニトリルの群から選択される1つ又は複数の化合物とともに環化共重合することによって得られる、請求項1に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項3】
成分(b)の前記線状若しくは分岐状のポリマー及び/又は成分(c)が存在する場合に成分(c)の前記グラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖のポリマー骨格が、工程(i)を含むプロセスによって得られるポリマー又はコポリマーを、重合性二重結合、チオール基又はカルボン酸基から選択される1つ又は複数の官能基を導入するための化合物と反応させる更なる工程によって取得可能であり、該化合物が、カルボン酸無水物基、カルボン酸基、又はカルボン酸塩化物であり得る活性化型カルボン酸基と反応性の官能基と、重合性二重結合、チオール基又はカルボン酸基であり得る更なる官能基とを有する二官能性化合物である、請求項1又は2に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項4】
前記骨格が酸性基を含み、かつ/又は前記ペンダント基が酸性基を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項5】
前記酸性基がカルボン酸基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項6】
Xが酸素原子又はCR基であり、R及びRが水素原子、ZCOOR10、ZCN、ZC(O)NHR11及びZC(O)NR1213から選択され、R10、R11、R12、R13及びZが請求項1において規定されるとおりである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項7】
、R、R及びRが水素原子である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項8】
及びRが互いに独立して、COOR10、CN、C(O)NHR11又はC(O)NR1213を表し、R10、R11、R12及びR13が請求項1において規定されるとおりである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項9】
及びRが互いに独立して、ZCOOR10を表し、R10及びZが請求項1において規定されるとおりである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項10】
前記酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーが、1000超〜1000000の範囲の分子量Mwを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項11】
前記粒子状ガラス反応性粒子状ガラスが、
a.10重量%〜35重量%のシリカ、
b.10重量%〜35重量%のアルミナ、
c.3重量%〜30重量%の酸化亜鉛、
d.4重量%〜30重量%のP
e.3重量%〜25重量%のフッ化物
を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項12】
前記反応性粒子状ガラスを組成物全体の重量に基づいて20重量パーセント〜80重量パーセント含み、かつ/又は前記酸性基を含むポリマーを組成物全体の重量に基づいて10重量パーセント〜80重量パーセント含み、かつ/又は分散ナノ粒子を組成物全体の重量に基づいて最大で75重量パーセント含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の水性歯科用グラスアイオノマー組成物。
【請求項13】
セメント反応において粒子状ガラスと反応性であり、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する、酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーを調製する方法であって、
(i)1つ又は複数の以下の式(I):
【化2】

(式中、
Xは酸素原子、硫黄原子、NR基又はCR基であり、
及びYは互いに独立して、CR基又は単結合を表し、
、R、R、R、R、R、R、R及びRは互いに独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ZCOOR10、ZCN、ZC(O)NHR11及びZC(O)NR1213を表し、
10、R11、R12及びR13は互いに独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、
Zは単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表し、
及びR、又はR及びR中に存在するカルボン酸基が、カルボン酸無水物部分を形成していてもよい)
の化合物を、任意でアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、スチレン、8−メチルスチレン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ハロゲン化ビニリデン及びアクリロニトリルの群から選択される1つ又は複数の化合物の存在下で、環化重合又は環化共重合する工程と、任意で、
(ii)工程(i)を含むプロセスによって得られるポリマー又はコポリマーを、重合性二重結合、チオール基又はカルボン酸基から選択される1つ又は複数の官能基を導入するための化合物と反応させる工程と、任意で、
(iii)工程(i)及び工程(ii)を含むプロセスによって得られるポリマー又はコポリマーを用いて、工程(ii)を繰り返す工程と
を含む、セメント反応において粒子状ガラスと反応性であり、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する、酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーを調製する方法。
【請求項14】
酸性基を含むとともにポリマー骨格を有するグラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖を含む分散ナノ粒子を調製する方法であって、前記グラフト化した線状若しくは分岐状のポリマー鎖の線状若しくは分岐状のポリマーのポリマー骨格が、請求項1によって規定されるように取得可能であることを特徴とし、該方法が、1つ又は複数の以下の式(II)、式(III)若しくは式(IV):
X’3−mSiL (II)
X’2−mSiL’L’’ (III)
X’SiL’L’’L’’’ (IV)
(式中、
X’は加水分解性基を表し、
Rはアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、
L、L’、L’’及びL’’’は同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、有機基を表し、
mは1以上の整数であり、
X、R、L、L’、L’’及びL’’’の和は式(II)、式(III)及び式(IV)の各々について4であり、L、L’、L’’及びL’’’の一部が、以下の式:
−[(CHZ](CHiv
(式中、
Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、
ivは、請求項1において規定される式(I)の化合物を環化重合又は環化共重合する工程を含むプロセスによって得られる、酸性基を含み、ポリマー骨格及び任意でペンダント基を有する線状若しくは分岐状のポリマー部分を表し、
o及びpは同じであっても又は異なっていてもよく、互いに独立して、1〜6の整数を表し、
qは0〜12の整数を表す)
によって表される)
の化合物、又はその加水分解生成物を含有する混合物を縮合する工程を含む、方法。
【請求項15】
セメント反応において反応性粒子状ガラスと反応性である、酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーの反応性粒子状ガラスとのセメント反応における使用であって、該酸性基を含む線状若しくは分岐状のポリマーが、ポリマー骨格及び任意でペンダント側鎖を有し、請求項13に記載のプロセスによって得られることを特徴とする使用。

【公表番号】特表2013−509364(P2013−509364A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535685(P2012−535685)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006677
【国際公開番号】WO2011/050995
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(502289695)デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー. (28)
【Fターム(参考)】