説明

歯科用組成物

【課題】 歯科用組成物の操作性が良好で、しかも、耐衝撃性に優れた義歯床等の重合硬化物が得られる歯科用組成物を提供する。
【解決手段】 レジンマトリックスモノマーとしての(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、ポリブタジエンジメタクリレートに例示される液状の共役ジエン系モノマーまたはオリゴマー、または、スチレン−ブタジエンゴムに例示される共役ジエン系ゴム状(共)重合体等の共役ジエン系化合物を含有するポリメチル(メタ)アクリレートの粒子を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歯科用組成物に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、操作性および耐衝撃性に優れた歯科用材料に有用な歯科用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリブタジエンゴム等を粉砕したエラストマー粉末、メチルメタクリレート又は不飽和ウレタン系モノマー、重合開始剤からなる歯科用組成物や更にPMMAパール粉末等を含む歯科用組成物が記載されており、この歯科用組成物を重合硬化させた歯科用重合物は、衝撃吸収能に優れ、歯冠、人工歯、義歯床等に有用であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−275509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の歯科用組成物におけるエラストマー粉末は粉砕物であって形状が不定形であるために、モノマーとの濡れ性が悪く、餅状態になるのに時間がかかったり、餅状時間が短く、餅状化後迅速に成形型に充填しないと、比較的早く硬くなってしまい成形型に馴染ませ難い等、操作性が良いとはいえない。また、この歯科用組成物は、粉砕したエラストマー粉末とモノマーとの単なる混合物に過ぎず、得られる重合物中における粉末は不均一に存在することにから耐衝撃性が充分とはいえない。
この発明は、上記のような実情に鑑み鋭意研究の結果創案されたものであり、歯科用組成物の操作性が良好で、しかも、耐衝撃性に優れた義歯床等の重合硬化物が得られる歯科用組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明の歯科用組成物は、(1)レジンマトリックスモノマーとしての(メタ)アクリレート、共役ジエン系化合物を含有するポリメチル(メタ)アクリレートの粒子を含有することを特徴とする。
(2)前記(1)において、前記ポリメチル(メタ)アクリレートの粒子は、前記ポリメチル(メタ)アクリレート95〜90重量部に対し、前記共役ジエン系化合物を5〜10重量部含有するものであることが好ましい。
(3)前記(1)または(2)において、前記ポリメチル(メタ)アクリレートの粒子100重量部に対し、前記レジンマトリックスモノマーが40〜60重量部であることが好ましい。
(4)前記(1)、(2)または(3)において、前記共役ジエン系化合物は、液状の共役ジエン系モノマー、またはオリゴマーであることが好ましい。
(5)前記(4)において、前記液状の共役ジエン系モノマーまたはオリゴマーは、ポリブタジエンジアクリレート、ポリブタジエンジメタクリレートのうちから選択された少なくとも1種であることが好ましい。
(6)前記(1)、(2)または(3)において、前記共役ジエン系化合物は、共役ジエン系ゴム状(共)重合体であることが好ましい。
(7)前記(6)において、前記共役ジエン系ゴム状(共)重合体は、スチレン−ブタジエンゴムであることが好ましい。
(8)前記(1)ないし(7)のいずれかにおいて、前記ポリメチル(メタ)アクリレートの粒子がポリメチルメタクリレートの粒子であることが好ましい。
(9)前記(1)ないし(8)のいずれかにおいて、前記レジンマトリックスモノマーが、重合開始剤を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
この発明の歯科用組成物は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
すなわち、共役ジエン系化合物を含有するポリメチル(メタ)アクリレートの粒子は、形状も球状であり、レジンマトリックスモノマーとの濡れ性も良く、餅状化時間が短く、餅状態が安定して長く維持されることから成形型に馴染ませ易い等操作性が良く、欠損等のない義歯床等の成形物を効率よく得ることができる。
また、歯科用組成物が餅状態において、通法に従い目的とする義歯床等の形状に成形させ、レジンマトリックスモノマーを重合させることで、耐衝撃性(ダインスタット衝撃値で9kJ/m以上)に優れた義歯床等を安価で容易にしかも確実に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明を実施するための形態を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。もちろんこの発明は以下の実施の形態によって限定されるものではない。
【0008】
この発明において使用されるレジンマトリックスモノマーとしての(メタ)アクリレートとしては、1つの不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレート、2つ以上の不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートが使用可能である。
【0009】
1つの不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート及びこれらのアクリレートが例示できる。
【0010】
2つ以上の不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス(メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート及びこれらのアクリレート、また分子中にウレタン結合を有するメタクリレート及びアクリレートが例示できる。
【0011】
(メタ)アクリレートは、1種の1つの不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートであってもよく、または、2種以上を併用してもよい。また、1つの不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートと、2つ以上の不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートを併用してもよい。この場合、1種の1つの不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートと、1種の2つ以上の不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートの組合せ、2種以上の1つの不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートと、1種の2つ以上の不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートの組合せ、2種以上の1つの不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートと、2種以上の2つ以上の不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートの組合せが採用できる。その組合せは、歯科用組成物の用途、すなわち、人工歯、歯科修復材等に応じ適宜決定される。
【0012】
この発明において使用できる共役ジエン系化合物としては、液状の共役ジエン系モノマー、またはオリゴマーであってもよく、また、共役ジエン系ゴム状(共)重合体であってもよいが、これらに限られるものではない。
液状の共役ジエン系モノマー、またはオリゴマーとしては、ポリブタジエンジアクリレート、ポリブタジエンジメタクリレート等が例示できるが、これらに限られるものではない。
ここで、「液状」とは、常温で液状であることを意味する。
【0013】
共役ジエン系ゴム状(共)重合体としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等が例示できるが、これに限られるものではない。これらのうちSBRが、入手が容易で比較的安価であることから好ましい。
共役ジエン系ゴム状(共)重合体としては、後述するメチル(メタ)アクリレートへの溶解性が良好であればどの様な形態でもよく、粉末粒子、ペレット、不定形半固形状等の各種形態のものが採用できる。
【0014】
メチル(メタ)アクリレートとしては、メチルメタクリレート、メチルアクリレートが例示できる。これらメチル(メタ)アクリレートは、1種であってもよく、または、2種以上を併用してもよい。
【0015】
共役ジエン系化合物としての液状の共役ジエン系モノマー、またはオリゴマーを含有するポリメチル(メタ)アクリレートの粒子としては、これらモノマー、またはオリゴマーが前記メチル(メタ)アクリレートに溶解した混合物を懸濁重合したものであることが好ましい。これによって、共役ジエン系モノマー、またはオリゴマーがポリメチル(メタ)アクリレートの粒子内に均一に分散したものが得られる。
【0016】
共役ジエン系化合物としての共役ジエン系ゴム状(共)重合体を含有するポリメチル(メタ)アクリレートの粒子としては、共役ジエン系ゴム状(共)重合体が前記メチル(メタ)アクリレートに溶解することで得られた混合物を懸濁重合したものであることが好ましい。これによって、共役ジエン系ゴム状(共)重合体がポリメチル(メタ)アクリレートの粒子内に均一に分散したものが得られる。
【0017】
懸濁重合後、ポリメチル(メタ)アクリレートの粒子は分離、洗浄、乾燥、分級される。
【0018】
共役ジエン系化合物を含有するポリメチル(メタ)アクリレートの粒子を得るには、重合開始剤を用いることが好ましい。
懸濁重合には、後述する加熱重合型開始剤を用いることが好ましい。
【0019】
ポリメチル(メタ)アクリレートの粒子は、ポリメチル(メタ)アクリレート95〜90重量部に対し、前記共役ジエン系化合物は5〜10重量部を含有するものであることが好ましい。共役ジエン系化合物が5重量部未満では、耐衝撃性が劣ることになり好ましくない。共役ジエン系化合物が10重量部を超えると、操作性が劣ることになり好ましくない。
【0020】
ポリメチル(メタ)アクリレートの粒子100重量部に対し、レジンマトリックスモノマーは40〜60重量部であることが好ましい。レジンマトリックスモノマーが40重量部未満では、ポリメチル(メタ)アクリレートの粒子が過剰で、バサつき、成形が困難となり好ましくない。レジンマトリックスモノマーが60重量部を超えると、成形性や作業性が悪くなり、また、レジンマトリックスモノマーが重合硬化したものの耐摩耗性が劣ることになり好ましくない。
【0021】
この発明の歯科用組成物を硬化させるには、重合開始剤を用いることが好ましい。
重合開始剤としては、加熱重合型開始剤、化学重合型開始剤、光重合型開始剤が使用できる。例えば、加熱重合型開始剤は、通常レジンマトリックスモノマーに混合される。
加熱重合型開始剤としては、主に有機過酸化物や、アゾ化合物等が用いられる。有機過酸化物としては、芳香族を有するジアシルパーオキシド類や過安息香酸のエステルと見なされるようなパーオキシエステル類が好ましく、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキシド、m−トリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ{(o−ベンゾイル)ベンゾイルパーオキシ}ヘキサンが例示できる。また、アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル等、他にもトリブチルホウ素等のような有機金属化合物等が使用できる。
【0022】
化学重合型開始剤としては、有機過酸化物と第3級アミンの組み合わせが挙げられる。
有機過酸化物としては、芳香族を有するジアシルパーオキシド類や過安息香酸のエステルと見なされるようなパーオキシエステル類が好ましく、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキシド、m−トリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ{(o−ベンゾイル)ベンゾイルパーオキシ}ヘキサンが例示できる。
第3級アミンとしては、p−トリルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチル−N−β−ヒドロキシアニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキプロピル)−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルが例示できる。
また、化学重合型開始剤としては、ピリミジントリオン誘導体、有機金属化合物、有機ハロゲン化合物の組み合わせが挙げられる。これ等は、レジンマトリックスモノマーまたはポリメチル(メタ)アクリレートの粒子の一方にピリミジントリオン誘導体と有機化合物とを、他方に有機ハロゲン化合物を配合するようにして使用する。
ピリミジントリオン誘導体としては、1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオン、1−ベンジル−5フェニルピリミジントリオン、5−ブチルピリミジントリオン、5−フェニルピリミジントリオン、1,3−ジメチルピリミジントリオン、5−エチルピリミジントリオンが例示できる。
有機金属化合物としては、アセチルアセトン銅、4−シクロヘキシル酪酸銅、酢酸第二銅、オレイン酸銅、アセチルアセトンマンガン、ナフテン酸マンガン、オクチル酸マンガン、アセチルアセトンコバルト、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトンリチウム、酢酸リチウム、アセチルアセトン亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトンニッケル、酢酸ニッケル、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトンカルシウム、アセチルアセトンクロム、アセチルアセトン鉄、ナフテン酸ナトリウム、レアアースオクトエートが例示できる。
有機ハロゲン化合物としては、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライドが例示できる。
【0023】
光重合型開始剤としては、増感剤と還元剤の組合わせが一般に用いられる。
増感剤としては、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4′−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アシルフォスフィンオキサイドの誘導体、アジド基を含む化合物等が例示でき、これらは、単独もしくは混合して使用される。
【0024】
還元剤としては、第3級アミンが一般に使用される。第3級アミンとしては、p−トリルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルが例示できる。また、他の還元剤として、ベンゾイルパーオキサイド、スルフィン酸ソーダ誘導体、有機金属化合物等が挙げられる。
【0025】
光重合型開始剤は、紫外線または可視光線などの活性光線を照射することにより重合反応が達せられる。光源としては超高圧、高圧、中圧および低圧の各種水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、キセノンランプ、アルゴンイオンレーザー等が使用される。
【0026】
この発明の歯科用組成物においては、共役ジエン系化合物を含有するポリメチル(メタ)アクリレートの粒子の一部を粒子状のポリメチルメタクリレート等の有機質充填材としてもよい。
また、この発明の歯科用組成物においては、シリカ等の無機質粉末をカップリング処理した無機質充填材を使用することもできる。
さらに、この発明の歯科用組成物においては、カップリング処理されたシリカ等の無機質粉末と、この発明において使用するとして説明した前記のレジンマトリックスモノマーから選択された少なくとも1種のモノマーとを混合し、重合させ、次いで、粉砕した有機無機複合充填材を使用することもできる。
【0027】
この他、必要に応じ重合禁止剤、酸化安定剤、変色防止剤、可塑剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、繊維等をレジンマトリックスモノマー、または、ポリメチル(メタ)アクリレートの粒子に添加することができる。
繊維は、義歯床の疑似毛細血管を表すために使用される。
なお、共役ジエン系化合物を含有するポリメチル(メタ)アクリレートの粒子を懸濁重合によって製造する際に、モノマーであるメチル(メタ)アクリレートに、必要に応じ重合禁止剤、酸化安定剤、変色防止剤、可塑剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、繊維等を添加してもよいことはいうまでもない。
【実施例】
【0028】
次に、実施例を比較例とともに示しさらに詳しく説明する。
(実施例1)
メチルメタクリレート90重量部に平均分子量3,000の液状ポリブタジエンジアクリレート(商品名;BAC−45、大阪有機化学工業(株)製)10重量部を溶解し、ベンゾイルパーオキサイド0.5重量部を用い懸濁重合させ、平均粒子径80μmのポリメチルメタクリレートの粒子を得た。平均粒子径の測定は、粒度計(レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA LA−950V2、(株)堀場製作所製)による(以下の実施例、比較例も同様)。
粉成分として、得られたポリメチルメタクリレートの粒子99.9重量部、セルロース繊維と赤色顔料とで0.1重量部を調整した。
液成分として、メチルメタクリレート89.9重量部、エチレングリコールジメタクリレート10.0重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.3重量部を調整した。
歯科用組成物として粉成分10g、液成分4.5gを混和し、餅状化するまで10分間放置し、得られた餅状物を65×40×5mmの石膏型に充填し、歯科技工用加熱重合器にて、室温から30分で70℃にまで上昇させ、70℃の温度を30分維持して予備重合し、その後、10分かけて100℃まで昇温後、100℃の温度を40分間維持し、本重合させて重合硬化物を得た。
歯科用組成物の操作性、耐衝撃性を以下の評価方法で評価した。結果は表1に示すとおりである。
【0029】
[操作性評価方法]
粉成分と液成分を混和して得られた餅状物を石膏型に充填する時の操作性の良否を官能評価する。
[耐衝撃性評価方法]
得られた重合硬化物を10×15×2.5mmに切り出し、表面を耐水研磨紙(#120,#800、#1200、#1500)で順次研磨した後、アルミナ懸濁液を用いて鏡面研磨して試験体を得る。
試験体を37℃の水中に1日浸漬後、ダインスタットテスタ((株)東洋精機製作所製)にて、ウエイトは取り付けず、ハンマーの持上角90゜で、固定した試験体の下から12mmの位置にハンマーを当てて、衝撃試験を行う。
【0030】
(実施例2)
メチルメタクリレート91.5重量部に平均分子量150,000のスチレン−ブタジエンゴム(商品名;KRATON D1192、クレイトン(株)製)8.5重量部を溶解し、ベンゾイルパーオキサイド0.5重量部を用い懸濁重合させ、平均粒子径80μmのポリメチルメタクリレートの粒子を得た。
粉成分として、得られたポリメチルメタクリレートの粒子99.9重量部、セルロース繊維と赤色顔料とで0.1重量部を調整した。
液成分として、メチルメタクリレート99.7重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.3重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.3重量部を調整した。
歯科用組成物として粉成分10g、液成分4.5gを混和し、実施例1と同様にして重合硬化物を得た。
歯科用組成物の操作性、耐衝撃性を実施例1と同様の評価方法で評価した。結果は表1に示すとおりである。
【0031】
(実施例3)
メチルメタクリレート90重量部に実施例2で用いたと同じスチレン−ブタジエンゴム10重量部を溶解し、ベンゾイルパーオキサイド0.5重量部を用い懸濁重合させ、平均粒子径80μmのポリメチルメタクリレートの粒子を得た。
粉成分として、得られたポリメチルメタクリレートの粒子99.9重量部、セルロース繊維と赤色顔料とで0.1重量部を調整した。
液成分として、メチルメタクリレート99.7重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.3重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.3重量部を調整した。
歯科用組成物として粉成分10g、液成分4.5gを混和し、実施例1と同様にして重合硬化物を得た。
歯科用組成物の操作性、耐衝撃性を実施例1と同様の評価方法で評価した。結果は表1に示すとおりである。
【0032】
(比較例1)
メチルメタクリレート100重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.5重量部を用い懸濁重合させ、平均粒子径80μmのポリメチルメタクリレートの粒子を得た。
粉成分として、得られたポリメチルメタクリレートの粒子を99.9重量部、セルロース繊維と赤色顔料とで0.1重量部を調整した。
液成分として、メチルメタクリレート99.7重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.3重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.3重量部を調整した。
歯科用組成物として粉成分10g、液成分3.9gを混和し、実施例1と同様にして重合硬化物を得た。
歯科用組成物の操作性、耐衝撃性を実施例1と同様の評価方法で評価した。結果は表1に示すとおりである。
【0033】
(比較例2)
メチルメタクリレート88重量部に実施例2で用いたと同じスチレン−ブタジエンゴム12重量部を溶解し、ベンゾイルパーオキサイド0.5重量部を用い懸濁重合させ、平均粒子径80μmのポリメチルメタクリレートの粒子を得た。
粉成分として、得られたポリメチルメタクリレートの粒子99.9重量部、セルロース繊維と赤色顔料とで0.1重量部を調整した。
液成分として、メチルメタクリレート99.7重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.3重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.3重量部を調整した。
歯科用組成物として粉成分10g、液成分4.5gを混和し、実施例1と同様にして重合硬化物を得た。
歯科用組成物の操作性、耐衝撃性を実施例1と同様の評価方法で評価した。結果は表1に示すとおりである。
【0034】
(比較例3)
メチルメタクリレート97重量部に実施例1で用いたと同じポリブタジエンジアクリレート3重量部を溶解し、ベンゾイルパーオキサイド0.5重量部を用い懸濁重合させ、平均粒子径80μmのポリメチルメタクリレートの粒子を得た。
粉成分として、得られたポリメチルメタクリレートの粒子99.9重量部、セルロース繊維と赤色顔料とで0.1重量部を調整した。
液成分として、メチルメタクリレート89.9重量部、エチレングリコールジメタクリレート10.0重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.3重量部を調整した。
歯科用組成物として粉成分10g、液成分4.5gを混和し、実施例1と同様にして重合硬化物を得た。
歯科用組成物の操作性、耐衝撃性を実施例1と同様の評価方法で評価した。結果は表1に示すとおりである。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジンマトリックスモノマーとしての(メタ)アクリレート、
共役ジエン系化合物を含有するポリメチル(メタ)アクリレートの粒子を
含有することを特徴とする歯科用組成物。
【請求項2】
前記ポリメチル(メタ)アクリレートの粒子は、前記ポリメチル(メタ)アクリレート95〜90重量部に対し、前記共役ジエン系化合物を5〜10重量部含有するものであることを特徴とする請求項1記載の歯科用組成物。
【請求項3】
前記ポリメチル(メタ)アクリレートの粒子100重量部に対し、前記レジンマトリックスモノマーが40〜60重量部であることを特徴とする請求項1または2記載の歯科用組成物。
【請求項4】
前記共役ジエン系化合物は、液状の共役ジエン系モノマー、またはオリゴマーであることを特徴とする請求項1、2または3記載の歯科用組成物。
【請求項5】
前記液状の共役ジエン系モノマーまたはオリゴマーは、ポリブタジエンジアクリレート、ポリブタジエンジメタクリレートのうちから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項4記載の歯科用組成物。
【請求項6】
前記共役ジエン系化合物は、共役ジエン系ゴム状(共)重合体であることを特徴とする請求項1、2または3記載の歯科用組成物。
【請求項7】
前記共役ジエン系ゴム状(共)重合体は、スチレン−ブタジエンゴムであることを特徴とする請求項6記載の歯科用組成物。
【請求項8】
前記ポリメチル(メタ)アクリレートの粒子がポリメチルメタクリレートの粒子であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の歯科用組成物。
【請求項9】
前記レジンマトリックスモノマーが、重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の歯科用組成物。