説明

歯科用補綴物作製支援装置およびプログラム

【課題】様々な患者の症状に対応することができ、治療に歯科医の判断を反映させることを可能とすることで、患者に最適な歯科用補綴物が作製可能な歯科用補綴物作製支援装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】ブラウザが動作する歯科医用コンピュータであるクライアント20aとインターネットNを介して接続される歯科用補綴物作製支援サーバ10とを備え、歯科用補綴物作製支援サーバ10は、患者画像データを含む操作画面をクライアント20aのブラウザに表示させる。歯科用補綴物作製支援サーバ10は、操作画面により患者画像データに重ねて入力された歯科用補綴物を模した歯牙パターンと歯科用補綴物の色調に関する文字情報とを、歯科用補綴物画像データとして生成するようクライアント20aのブラウザを動作させる。そして歯科用補綴物作製支援サーバ10は、歯科用補綴物画像データとして生成された患者画像データを受信して登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用補綴物が必要な歯牙の状態を撮像した画像データを表示するブラウザが動作する歯科医用コンピュータとネットワークを介して接続される歯科用補綴物作製支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用補綴物は、治療が必要な歯と合致した形状とすることは元より、色も治療が必要な歯だけでなく隣在歯とも調和させる必要がある。しかし歯科医と遠方にいる歯科技工士との間で、電話やファクシミリなどだけでやり取りしても、治療が必要な歯の微妙な色調まで再現することが、困難な場合がある。そのような場合には、歯科技工士かまたはその代わりの者がわざわざ歯科医のところまで出向いて打ち合わせを行うことが、度々行われている。近年、ネットワークの一例であるインターネットの普及で、画像データの送受信が遠方にいても容易になった。このインターネットを利用すれば、例えば患者の歯をデジタルカメラなどで撮像し、撮像した画像データを電子メールの添付ファイルなどで歯科技工士の元へ送信することで、歯科医と歯科技工士とが離れていても、実際の患者の歯の状態を観察することは可能である。しかし、デジタルカメラの機種の違いや、撮像環境によっては同じ色であっても異なる色に見えることがある。そうなると作製した歯科用補綴物を歯科医の元へ配送して、患者に取り付ける段階で、初めて色が異なることが判明するので、再度作製し直しという事態となる。
【0003】
このような事態を回避するための技術として特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載の歯牙材料色調選択支援プログラムおよび歯牙材料色調選択支援方法は、複数の歯牙基準色の識別情報データとその歯牙基準色の色調情報データとが対応したデータテーブルをコンピュータに予め記憶させ、歯牙または隣在歯と歯牙基準色の色調を有する基準具とを同時に撮影した画像データを入力し、画像データ内で分析された基準具の歯牙基準色と、その歯牙基準色とが一致した色調補正値を算出して歯牙又は隣在歯の色調を補正し、補正された色調の色調情報データと一致した色調情報データの歯牙基準色の識別情報データをデータテーブルから抽出し出力することで、作製しようとする歯牙補綴物の歯牙、または隣在歯の色調と最も調和の取れた色調の歯牙材料を選択決定することを可能とするものである。
【0004】
【特許文献1】特開2005−176915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の歯牙材料色調選択支援プログラムおよび歯牙材料色調選択支援方法では、予め基準具の歯牙基準色の設定を識別情報データとして入力しておかなければならないので煩雑である。また、一度、基準具の歯牙基準色の識別情報データを入力しておけば、次からは入力処理する手間が省けるので、いつも同じ基準具を使用することを推奨しているが、患者によっては歯科用補綴物の形状や色調などが様々であるので、いつも同じ基準具を使用することは困難である。また、隣在歯や歯列の状態などから歯科医が判断する歯科用補綴物の色調は、必ずしも隣在歯と同じ色調とは限らないので、隣在歯の色調を分析して数値化することで色調補正値を算出しているのでは、歯科医の判断を反映させるのが困難である。
【0006】
そこで本発明の目的は、様々な患者の症状に対応することができ、治療に歯科医の判断を反映させることを可能とすることで、患者に最適な歯科用補綴物が作製可能な歯科用補綴物作製支援装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の歯科用補綴物作製支援装置は、歯科用補綴物が必要な歯牙の状態を撮像した患者画像データを表示するブラウザが動作する歯科医用コンピュータとネットワークを介して接続される歯科用補綴物作製支援装置であって、前記歯科医用コンピュータから送信された前記患者画像データを記憶する記憶部と、前記患者画像データを含む操作画面を前記ブラウザに表示させ、前記操作画面により前記患者画像データに重ねて入力された前記歯科用補綴物を模した歯牙パターンおよび前記歯科用補綴物の色調に関する文字情報を歯科用補綴物画像データとして生成するよう前記ブラウザを動作させ、前記歯科用補綴物画像データとして生成された患者画像データを受信して前記記憶部に登録するブラウザ制御部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の歯科用補綴物作製支援装置は、ネットワークを介して歯科医用コンピュータと接続されている。この歯科医用コンピュータでは、ブラウザが動作している。ブラウザ制御部は、歯科用補綴物が必要な歯牙を含む患者の歯列状態を撮像した患者画像データを含む操作画面を送信してブラウザに表示させる。ブラウザ制御部は、操作画面により患者画像データに重ねて入力された歯科用補綴物を模した歯牙パターンおよび歯科用補綴物の色調に関する文字情報を歯科用補綴物画像データとして生成するようブラウザを動作させる。ブラウザ制御部は、歯科用補綴物画像データとして生成された患者画像データを受信して記憶部に登録する。つまり歯科医がブラウザの操作画面を操作して、表示されている患者の歯牙の状態を見ながら治療の必要な歯牙の画像に重ねて歯牙パターンを入力することで、記憶部に歯科用補綴物画像データとして登録されるので、歯科技工士が歯科用補綴物画像データを参照することで、歯科用補綴物が必要な歯牙の位置や形状(状態)を判別することができる。また歯科用補綴物画像データには、その歯科用補綴物の色調に関する文字情報が入力されているので、歯科用補綴物の微妙な色調の指定や、撮像環境によって変わる色の違いなどを歯科医が文字で直接色調に関する情報として入力することができる。従って、歯科医と歯科技工士との間で、色調の取り違いや誤解が発生することが防止できる。
【0009】
前記ブラウザ制御部は、前記歯牙パターンとして、色の境界を示す区分線を1本以上設けたパターンを生成するよう前記ブラウザを動作させることが望ましい。歯科医は、作製しようとする歯科用補綴物に複数色の色を指定するときに、その色の境界に合わせて、区分線が1本以上設けられた歯牙パターンを患者画像データに重ねて入力する。例えば区分線が1本であれば2つの異なる領域を指定することができ、2本であれば3つの異なる領域を指定することができる。従って、その歯牙パターンの各領域に応じて文字情報を入力すれば、段階的に変化する歯科用補綴物の表面の色調を、極め細やかに表現することができる。
【0010】
前記ブラウザ制御部は、前記操作画面を操作することで、前記ブラウザに表示された患者画像データに重ねて、長さが調整自在な直線パターンを配置自在に生成するよう前記ブラウザを動作させることが望ましい。歯科用補綴物の表面の色調が予め準備された歯牙パターンにないときには歯牙パターンに直線パターンを追加したり、歯並びや噛み合わせ位置を表現するときには患者画像データの歯列に沿って直線パターンを追加したりすることで、更に歯科医が伝えようとする歯科用補綴物の色調や形状を正確に歯科技工士に伝達させることができる。
【0011】
前記ブラウザ制御部は、前記操作画面を操作することで、前記歯牙パターンの大きさ、または角度を調整自在とするように前記ブラウザを動作させることが望ましい。歯科医が治療の必要な歯牙に重ねて歯牙パターンの大きさや角度を調整して入力することで、治療が必要な歯牙により近い歯牙パターンとすることができるので、歯科技工士が作製する歯科用補綴物のイメージを把握しやすい。
【0012】
前記ブラウザ制御部は、前記歯科医用コンピュータから前記歯科用補綴物画像データとして生成された患者画像データを受信して、前記ネットワークに接続された歯科技工士用コンピュータで動作するブラウザに、操作画面と共に表示させ、前記歯科技工士用コンピュータで動作するブラウザの操作画面により入力された歯科用補綴物画像データとして生成された患者画像データを、前記歯科医用コンピュータに送信する機能を備えるのが望ましい。ブラウザ制御部が、歯科技工士用コンピュータで動作するブラウザに操作画面と共に歯科医用コンピュータからの歯科用補綴物画像データとして生成された患者画像データを受信して表示する。そして、ブラウザ制御部が、歯科技工士用コンピュータで動作するブラウザの操作画面により入力された歯科用補綴物画像データとして生成された患者画像データを、歯科医用コンピュータに送信する。つまり、歯科医用コンピュータで作成された補綴物画像データが歯科技工士用コンピュータへ本発明の歯科用補綴物作製支援装置を介して送信され、歯科技工士用コンピュータで変更や修正をした補綴物画像データが本発明の歯科用補綴物作製支援装置を介して送信される。従って、ネットワークを介して歯科医と歯科技工士とが共通した患者画像データを操作しながら歯科用補綴物の形状や色などの選択を行うことができるので、歯科用補綴物を作製するに当たって、より確実に歯科医の意志を歯科技工士に伝達することができる。
【発明の効果】
【0013】
歯科医がブラウザの操作画面を操作して、表示されている患者の状態を見ながら治療の必要な歯牙の画像に重ねて歯牙パターンを入力し、歯科用補綴物の色調に関する文字情報を入力することで、歯科用補綴物の形状や微妙な色調の指定や、撮像環境によって変わる色の違いなどを歯科医が文字で直接色調に関する情報として入力することができるので、様々な患者の症状に対応することができ、治療に歯科医の判断を反映させることができる。よって、歯科医と歯科技工士との間で、色調の取り違いや誤解が発生することが防止できると共に、患者に最適な歯科用補綴物が作製可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る歯科用補綴物作製支援装置を図面に基づいて説明する。まずは、歯科用補綴物支援装置を用いた歯科用補綴物作製支援システム全体について、図1に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る歯科用補綴物作製支援システム全体を示す図である。
【0015】
図1に示すように、歯科用補綴物作製支援システム1は、補綴物作製支援サーバ10と、クライアント20とを備えている。補綴物作製支援サーバ10は、歯科技工士M1が作業する場所または歯科技工士M1の勤務先などのサーバ室S1などに設置されている。クライアント20a〜20dは、歯科医D1〜D3がいる歯科医院C1〜C3に設置される他、補綴物作製支援サーバ10が設置されているサーバ室S1にも設置されている。補綴物作製支援サーバ10およびクライアント20a〜20dは、それぞれネットワークの一例であるインターネットNに、アクセス可能に接続されている。
【0016】
ここで、補綴物作製支援サーバ10について、図2に基づいて詳細に説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る補綴物作製支援サーバの構成を示す図である。
図2に示すように、補綴物作製支援サーバ10は、クライアント20からのHTTP(HyperText Transfer Protocol)によるアクセスに応じてウェブページを提供する補綴物支援作製装置として機能するコンピュータである。このウェブページは、HTML(HyperText Markup Language)で記述され、CGI(Common Gateway Interface)やFLASH(登録商標)などのファイルを含み、クライアント20で実行されることで、クライアント20で動作するブラウザを制御する機能を備えている。
【0017】
補綴物作製支援サーバ10は、インターネットNとのデータの送受信を行う通信部11と、患者画像データや、患者画像データに様々な情報が付加された歯科用補綴物画像データが登録される記憶部12と、クライアント20に表示されるウェブページを制御するブラウザ制御部13とを備えている。
【0018】
通信部11は、インターネットNを介して患者画像データの送受信を行うため、高速でデータの転送を行うことが可能なLAN(Local Area Network)とするのが望ましい。また、記憶部12は、補綴物作製支援サーバ10の電源が切断されてもデータの内容が残る不揮発性メモリであれば使用することができるが、ハードディスクドライブ装置とするのが、安価で大容量なので望ましい。この記憶部12に、患者画像データだけでなく、この補綴物作製支援サーバ10上で動作するOS(Operating System)や、補綴物支援作製装置として機能させるための補綴物支援作製プログラムや、他のアプリケーションプログラムなどもインストールされている。ブラウザ制御部13は、補綴物作製支援サーバ10上で補綴物作製支援プログラムが動作することで、クライアント20で動作するブラウザを制御する制御手段である。
【0019】
補綴物支援作製プログラムは、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)や、DVD(Digital Versatile Disk)や、フレキシブルディスクなどの記録媒体で提供され、図示しない読み取り装置で読み取られ、インストーラによって記憶部12にインストールされるアプリケーションソフトである。また、インターネットNに接続されている他のサーバから通信部11を介して補綴物支援作製プログラムをダウンロードすることでインストールすることも可能である。
【0020】
また、補綴物作製支援サーバ10には、表示装置30と、入力装置40とが接続されている。表示装置30は、CRT(Cathode Ray Tube)や、LCD(Liquid Crystal Display)などのモニタ装置が使用できる。表示装置30は、精細な画像表示を行う必要がないので解像度が低くてもよい。入力装置40は、直接、キー入力可能なキーボードが使用できる。また操作性を向上するために、キーボートともに、ポインティングデバイスなどのマウス、ジョイスティック、トラックパッド、トラックボールなどや、タッチパネルなども併用するのが望ましい。この表示装置30として高解像度のものを使用することで、歯科技工士用のクライアント20dの代わりに、補綴物作製支援サーバ10を使用することも可能である。
【0021】
クライアント20は、デスクトップ型あるいはノートブック型のパーソナルコンピュータを使用することが可能である。このクライアント20としてのコンピュータは、インターネットNと接続するための通信部と、ウェブページを表示する表示部と、キー入力可能なキーボートおよび表示部に表示されたウェブページを操作するポインティングデバイスなどの入力部とを備えると共に、コンピュータを管理するOSに、ウェブページが表示可能な閲覧ソフトであるブラウザなどのアプリケーションソフトを備えたものである。ブラウザとしては、インターネットエクスプローラ(Internet Explorer、登録商標)、ネットスケープナビゲイター(Netscape Navigator、登録商標)などが使用できるが、補綴物作製支援サーバ10が提供するウェブページが表示できれば、他のブラウザとしてもよい。また、クライアント20には、マイク、スピーカおよびカメラが設けられており、歯科技工士M1または歯科医D1〜D3は、このマイク、スピーカおよびカメラを通じて、映像を見ながら会話することが可能である。
【0022】
以上のように構成される本発明の実施の形態に係る補綴物支援システムの動作を、更に図3から図14を参照しながら説明する。図3は、クラアント20aでのログイン画面を示す図である。図4は、メインページP1を示す図である。図5は、画像登録ページP2を示す図である。図6は、共有ボードを示す図である。図7は、共有ボードの作成ツールを示す図である。図8は、1本の区分線で2分割された歯牙パターンを示す図である。図9は、歯牙パターンの拡大縮小ポイントを示す図である。図10は、歯牙パターンの回転ポイントを示す図である。図11は、2本の区分線で3分割された歯牙パターンを示す図である。図12は、3本の区分線で4分割された歯牙パターンを示す図である。図13および図14は、区分線とした直線パターンを示す図である。図15は、引き出し線とした直線パターンを示す図である。図16は、歯式パターンを示す図である。なお本実施の形態では、歯科医D1が、歯科技工士M1とで話し合いながら、治療する患者の歯科用補綴物を作製するものとする。
【0023】
まず歯科医D1が、治療している患者の歯牙状態を、デジタルカメラで撮像し、デジタルカメラからクライアント20aへ患者画像データとして転送する。そして、歯科医D1は、クライアント20aのブラウザから補綴物作製支援サーバ10が提供するウェブページのURL(Uniform Resource Locator)をアクセスする。
【0024】
図3に示すように、クライアント20aからアクセスされた補綴物作製支援サーバ10のブラウザ制御部13は、誤ってアクセスされて操作されることを防止すると共に、アクセスした歯科医を特定するために、ユーザ名と、このユーザ名に対応するパスワードを要求するログイン表示ウィンドウをブラウザからポップアップさせて表示させる。
【0025】
歯科医D1が、このログイン表示ウィンドウに予め割り振られたユーザ名とパスワードを入力して「OK」ボタンを押下することで、クライアント20aから入力したユーザ名とパスワードが補綴物作製支援サーバ10へ送信される。
【0026】
補綴物作製支援サーバ10のブラウザ制御部13は、記憶部12に格納されたユーザ名およびパスワードと一致して承認が取れればログインを許可し、図4に示すような操作画面であるメインページP1をクライアント20aへ送信して、クライアント20aのブラウザに表示させる。このとき、補綴物作製支援サーバ10は、患者画像データが記憶部12に登録されていれば患者画像データも送信を行う。
【0027】
図4に示すように、メインページP1としては、左側に配置されたメニュー部P100と、中央部に配置された画像表示部P110と、右側に配置された画像切り替え部P120とがクライアント20aのブラウザに表示される。
【0028】
メニュー部P100は、「最新画像順」ボタンP101と、カレンダP102と、「画像の登録」ボタンP103と、電子メールソフトを起動する「電子メール」ボタンP104とを備えている。
【0029】
「最新画像順」ボタンは、画像表示部P110に表示される患者画像データの表示順を、最近登録順に切り替えるボタンである。カレンダP102は、指定した日付を押下することで、画像表示部P110の表示を、指定した日に登録された患者画像データに切り替えることができる。「画像の登録」ボタンP103は、患者画像データの登録を行う際に押下するボタンである。ここで、患者画像データの登録について、図5に基づいて詳細に説明する。
【0030】
図5に示すようにメインページP1の「画像の登録」ボタンP103を押下すると、画像登録ページP2が表示される。歯科医D1は、この画像登録ページP2で、デジタルカメラで撮像した患者の歯牙状態を示す患者画像データを、補綴物作製支援サーバ10へ送信して登録する。
【0031】
画像登録ページP2は、左側のメニュー部P100をメインページP1の表示そのままに、画像ファイルパス入力領域P201と、タイトル入力領域P202と、コメント入力領域P203とが表示される。この画像ファイルパス入力領域P201に、患者画像データが格納されているクライアント20aのパスを入力する。そして、タイトル入力領域P202に、患者の名前などや治療名などをタイトルとして入力し、更に必要に応じてコメント入力領域P203にコメントを入力して、「送信」ボタンP204を押下することで、クライアント20aに格納された患者画像データが、タイトルおよびコメントの文字データと共に、インターネットNを介して補綴物作製支援サーバ10へアップロードされる。
【0032】
補綴物作製支援サーバ10のブラウザ制御部13は、クライアント20aから送信された患者画像データを、通信部11を介して受信し、記憶部12にアップロード日付と関連付けられて格納される。この関連付けは、カレンダP102に反映される。歯科医D1は、このようにして患者画像データをアップロードして、補綴物作製支援サーバ10に登録する。この患者画像データのアップロードによる登録で、画像表示部P110に歯牙画像として表示することができる。
【0033】
図4に戻って、画像切り替え部P120は、「原寸」ボタンP121と、「返信」ボタンP122と、「共有ボード」ボタンP123とが表示されている。
「原寸」ボタンP121は、患者画像データの画像サイズによっては画像表示部P110に歯牙画像として表示したときに縮小されることがあるため、患者画像データを縮小せず、撮像された患者画像データの画像をそのままの状態で、ブラウザを別ウィンドウで起動して表示させるボタンである。「返信」ボタンP122は、歯科技工士M1が、歯科医D1に対してコメントを返信するときに使用するボタンである。「共有ボード」ボタンP123は、登録した患者画像データに重ねて歯科用補綴物に関する情報を付加して歯科用補綴物画像データを作成する共有ボートと称される画面へ遷移するボタンである。
【0034】
歯科医D1は、患者画像データの登録を行うと、この「共有ボード」ボタンP123を押下して、この歯科用補綴物画像データを作成する共有ボードへ遷移する。この共有ボードは、メインページP1から別ウィンドウで起動され、歯科技工士M1も、歯科技工士用コンピュータであるクライアント20dでログインして、この共有ボードP3にアクセスすることが可能である。つまり、この共有ボードは、歯科医D1と歯科技工士M1とが、共通した患者画像データを表示した歯牙画像を参照しながら、歯科用補綴物画像データを作成することができる画面である。
【0035】
図6に示すように、共有ボードP3には、歯牙画像P300と、歯牙画像の右側に配置された動画表示部P310と、歯牙画像の上側に配置された作成ツールP320とが表示されている。
動画表示部P310には、歯科技工士M1が使用するクライアント20dからの送信された映像が表示される歯科技工士側表示部P311と、歯科医D1が使用するクライアント20aから送信された映像が表示される歯科医側表示部P312とが設けられている。この映像は、クライアント20aあるいはクライアント20dから送信された映像データを、補綴物作製支援サーバ10が中継して、それぞれクライアント20aまたはクライアント20dへ配送されるものである。従って、クライアント20aおよびクライアント20dには同じ画面が表示されている。歯科医D1は、共有ボードP3の歯牙画像P300を参照しながら、歯科用補綴物を作製するための歯科用補綴物画像データを作成する。
【0036】
ここで、共有ボードP3による歯科用補綴物画像データの作成方法について詳細に説明する。
図7に示すように、作成ツールP320は、色選択パレットP321と、図形シンボルアイコンP322とがあり、図形シンボルアイコンP322には、線ツールアイコンP323と、テキストツールAアイコンP324と、テキストツールBアイコンP325と、歯式ツールアイコンP326と、歯牙ツールAアイコンP327と、歯牙ツールBアイコンP328と、歯牙ツールCアイコンP329とが設けられている。この作成ツールP320を使用して、患者画像データを表示した歯牙画像P300に、様々な歯科用補綴物に関する情報を重ねて入力することで、歯科用補綴物画像データが作成される。
【0037】
例えば、まず歯科医D1は、歯牙ツールAアイコンP327をマウスでドラッグした状態で、歯牙が欠落した箇所に移動させてドロップする。そうすることで図8に示すように、ブラウザに表示されている共有ボードP3のP300に、歯科用補綴物を模した歯牙パターンP351が表示される。この歯牙ツールAアイコンP327による歯牙パターンP351は、1本の区分線により2分割されたパターンである。
【0038】
この歯牙パターンP351の表示サイズを変更したい場合には、図9に示すようにマウスポイントを歯牙パターンP351の右側下端に移動させることで、逆L字状の拡大縮小ポイントP354が表示されるので、この拡大縮小ポイントP354をドラッグした状態でマウスポイントを移動させて、歯牙パターンP351の拡大または縮小を行う。また歯牙パターンP351の表示角度を変更したい場合には、図10に示すようにマウスポイントを歯牙パターンP351の右側中央に移動させることで、円形状の回転ポイントP355が表示されるので、この回転ポイントP355をドラッグした状態でマウスポイントを移動させて、歯牙パターンP351の回転を行う。このようにして、歯牙パターンP351を作製する歯科用補綴物のサイズに合致した大きさおよび角度に調整することができる。
【0039】
歯科用補綴物を模した歯牙パターンP351では、1本の区分線により2分割されたパターンであるので、隣在歯の色調が2段階で、その色調に合った歯科用補綴物を作製するような場合に好適である。例えば、色調が3段階となるような場合には、歯牙ツールBアイコンP328をマウスでドラッグした状態で、歯牙が欠落した箇所に移動させてドロップする。そうすることで図11に示すようにブラウザに表示されている共有ボードP3のP300に、2本の区分線により3分割された歯牙パターンP352を表示させることができる。同様に、歯牙ツールCアイコンP329を用いると、図12に示すように、3本の区分線により4分割された歯牙パターンP353を表示されることができる。
【0040】
歯牙パターンP351〜P353は、予め定められた位置に区分線が設けられたパターンである。従って、色調の境界が予め定められた位置と異なる場合には、新たに区分線を入力することで、色調が変化する位置の指定を任意の場所とすることも可能である。例えば、図13に示すように、歯牙パターンP352に区分線を追加して入力する場合には、まず線ツールアイコンP323をドラックした状態で歯牙画像P300上まで移動させてドロップすることで、所定長さの直線パターンP356が表示される。次に、その直線パターンP356の一方の端部をドラックして歯牙パターンP352上の色調が変化する位置まで移動する。そして、図14に示すように、直線パターンP356の他方の端部をドラックして、同様に所望の位置まで移動することで3つに区分されていた歯牙パターンP352を、4つに区分された歯牙パターンとすることができる。従って、段階的に変化する色調を、極め細かに領域指定して表現することができる。
【0041】
線ツールアイコンP323は、区部線として使用する以外に、引き出し線としても使用することができる。例えば、歯牙パターンP352の下部の色調が「A2」であるときには、「A2」の位置を示す引き出し線とすることができる。まずテキストツールAアイコンP324をドラッグして所定位置でドロップする。ドロップすることでその位置にテキスト入力領域P357が作成されるので、キーボードから「A2」などの入力を行う。そして線ツールアイコンP323をドラッグした状態でテキスト入力した位置まで移動させてドロップして直線パターンP356を表示させる。そして表示させた直線パターンの長さおよび位置を、一方の端部および他方の端部をそれぞれドラッグして移動しながら調整する。図15に示すように、歯牙パターンP352の色調を示す直線パターンP356を引き出し線として作成することができる。このように歯牙パターンP352から色調を示すテキストを入力して直線パターンP356でその位置を示すことで、色調の取り違いや誤解が発生させることなく、正確に色調の指定を行うことができる。また直線パターンP356は、歯並びや噛み合わせを示す直線としても使用することができる。
【0042】
色調の入力にテキストツールAアイコンP324を使用したが、テキストツールBアイコンP325を使用してもよい。テキストツールAアイコンP324を用いると、背景が白色の矩形状の領域となるが、テキストツールBアイコンP325を用いると文字背景がないため、背景である歯牙画像P300とテキストとの区別がつきにくい場合にはテキストツールAアイコンP324を用いるのが望ましい。
【0043】
また、歯牙画像P300に歯式を表示させることも可能である。そのときには、歯式ツールアイコンP326をドラッグして、歯牙画像P300上でドロップする。そうすると図16に示されるような歯式パターンP358が表示される。この歯式パターンP358は、数字をクリックすると、最初のクリックで数字に「○」が付加され、次のクリックで数字が「−」となり、もう一度クリックすることで元の数字の状態に復帰するように表示される。
【0044】
このようにして歯科医D1が共有ボードP3を操作して、歯牙パターンP351〜P353や、直線パターンP356、およびテキストなどの様々な歯科用補綴物に関する情報を、歯牙画像P300に重ねて入力することができる。このように重ねて入力された歯牙画像P300は、入力される度にクライアント20aから歯科用補綴物画像データとして、補綴物作製支援サーバ10へ送信される。補綴物作製支援サーバ10のブラウザ制御部13は、この歯科用補綴物画像データを受信すると、記憶部12に格納すると共に、歯科技工士M1が使用するクライアント20dへ送信する。
【0045】
クライアント20dのブラウザに表示されている共有ボードP3では、クライアント20aで、歯牙パターンP351〜P353や、直線パターンP356、およびテキストが入力する度に、送信される歯科用補綴物画像データが歯牙画像P300として表示される。従って、歯科医D1が作成する歯科用補綴物画像データをリアルタイムに歯科技工士M1側で確認することができる。また、歯科技工士M1は、動画表示部P310で歯科医D1の映像と、マイクおよびスピーカによる歯科医D1との通話とで、色調の取り違いや誤解が発生することなく、より詳しい情報を歯科医D1から得ることができる。
【0046】
そして、歯科技工士M1の共有ボードP3から入力された歯牙パターンP351〜P353や、直線パターンP356、およびテキストは、同様に補綴物作製支援サーバ10を介して歯科医D1が使用するクライアント20aへ送信される。従って、様々な患者の症状に対応した歯科用補綴物を作製する元となる歯科用補綴物画像データを、歯科医D1と歯科技工士M1とが意志を疎通させ、歯科技工士M1が歯科医D1の判断を仰ぎながら共有ボードP3で作成することができる。
【0047】
図6から図16に示すように、共有ボードP3では、「閉じる」ボタンP330を押下することで、共有ボードP3のウィンドウが閉じる。本実施の形態では、歯科医D1と歯科技工士M1とが会話しながら歯科用補綴物を作製する元となる歯科用補綴物画像データを作成したが、歯科医D1が単独で作成した後に、歯科技工士M1が共有ボードP3を開き内容を確認することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、歯科医の意志が歯科技工士に端的に伝わるので、歯科用補綴物の作製を支援する歯科用補綴物作製支援装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係る作製支援システム全体を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る補綴物作製支援サーバの構成を示す図である。
【図3】クラアントでのログイン画面を示す図である。
【図4】メインページP1を示す図である。
【図5】画像登録ページP2を示す図である。
【図6】共有ボードを示す図である。
【図7】共有ボードの作成ツールを示す図である。
【図8】1本の区分線で2分割された歯牙パターンを示す図である。
【図9】歯牙パターンの拡大縮小ポイントを示す図である。
【図10】歯牙パターンの回転ポイントを示す図である。
【図11】2本の区分線で3分割された歯牙パターンを示す図である。
【図12】3本の区分線で4分割された歯牙パターンを示す図である。
【図13】区分線とした直線パターンを示す図である。
【図14】区分線とした直線パターンを示す図である。
【図15】引き出し線とした直線パターンを示す図である。
【図16】歯式パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 歯科用補綴物作製支援システム
10 補綴物作製支援サーバ
11 通信部
12 記憶部
13 ブラウザ制御部
20,20a〜20d クライアント
30 表示装置
40 入力装置
P1 メインページ
P100 メニュー部
P101 「最新画像順」ボタン
P102 カレンダ
P103 「画像の登録」ボタン
P104 「電子メール」ボタン
P120 画像切り替え部
P121 「原寸」ボタン
P122 「返信」ボタン
P123 「共有ボード」ボタン
P2 画像登録ページ
P201 画像ファイルパス入力領域
P202 タイトル入力領域
P203 コメント入力領域
P204 「送信」ボタン
P3 共有ボード
P300 歯牙画像
P310 動画表示部
P311 歯科技工士側表示部
P312 歯科医側表示部
P320 作成ツール
P321 色選択パレット
P322 図形シンボルアイコン
P323 線ツールアイコン
P324 テキストツールAアイコン
P325 テキストツールBアイコン
P326 歯式ツールアイコン
P327 歯牙ツールAアイコン
P328 歯牙ツールBアイコン
P329 歯牙ツールCアイコン
P330 「閉じる」ボタン
P351,P352,P353 歯牙パターン
P354 拡大縮小ポイント
P355 回転ポイント
P356 直線パターン
P357 テキスト入力領域
P358 歯式パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用補綴物が必要な歯牙の状態を撮像した患者画像データを表示するブラウザが動作する歯科医用コンピュータとネットワークを介して接続される歯科用補綴物作製支援装置であって、
前記歯科医用コンピュータから送信された前記患者画像データを記憶する記憶部と、
前記患者画像データを含む操作画面を前記ブラウザに表示させ、前記操作画面により前記患者画像データに重ねて入力された前記歯科用補綴物を模した歯牙パターンおよび前記歯科用補綴物の色調に関する文字情報を歯科用補綴物画像データとして生成するよう前記ブラウザを動作させ、前記歯科用補綴物画像データとして生成された患者画像データを受信して前記記憶部に登録するブラウザ制御部とを備えたことを特徴とする歯科用補綴物作製支援装置。
【請求項2】
前記ブラウザ制御部は、前記歯牙パターンとして、色の境界を示す区分線を1本以上設けたパターンを生成するよう前記ブラウザを動作させる機能を備えたことを特徴とする請求項1記載の歯科用補綴物作製支援装置。
【請求項3】
前記ブラウザ制御部は、前記操作画面を操作することで、前記ブラウザに表示された患者画像データに重ねて、長さが調整自在な直線パターンを配置自在に生成するよう前記ブラウザを動作させる機能を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の歯科用補綴物作製支援装置。
【請求項4】
前記ブラウザ制御部は、前記操作画面を操作することで、前記歯牙パターンの大きさ、または角度を調整自在とするように前記ブラウザを動作させる機能を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の歯科用補綴物作製支援装置。
【請求項5】
前記ブラウザ制御部は、前記歯科医用コンピュータから前記歯科用補綴物画像データとして生成された患者画像データを受信して、前記ネットワークに接続された歯科技工士用コンピュータで動作するブラウザに、操作画面と共に表示させ、前記歯科技工士用コンピュータで動作するブラウザの操作画面により入力された歯科用補綴物画像データとして生成された患者画像データを、前記歯科医用コンピュータに送信する機能を備えたことを特徴とする1から4のいずれかの項に記載の歯科用補綴物作製支援装置。
【請求項6】
コンピュータを、前記請求項1から5のいずれかの項に記載の歯科用補綴物作製支援装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−209473(P2007−209473A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31501(P2006−31501)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(505420703)株式会社ギコウ (3)