説明

歯科用超音波治療器

【課題】単一の歯科用超音波治療器を用いて、超音波による歯周・根管治療と、治療後の殺菌をも行えるようにした。
【解決手段】超音波振動子を内蔵する超音波ハンドピース10と、該超音波ハンドピース10に着脱自在に装着される超音波チップ20とを有する。超音波ハンドピースの先端部に光源11を、超音波チップ20の先端部近傍に液体放出口21を有し、超音波治療後、液体放出口21より光感受性物質液を放出し、次いで、光源11より光を照射して、超音波治療後の箇所を殺菌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用超音波治療器、より詳細には、超音波による歯周・根管治療と、治療部の殺菌をも行えるようにした歯科用超音波治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療において、従来、超音波により歯周、根管治療(歯石除去等)を行った後に、光(LED、レーザ)と薬液との組み合わせによる殺菌治療(aPDT:antimicrobial Photo Dynamic Therapy)を行っている。
【0003】
PDT(光線力学的療法)は、光感受性物質を生体内に投与した後、レーザ光等である波長の光を照射することで前記光感受性物質を活性化させて薬理作用を得る治療法で、医科では、肺がん・黄斑変性などの治療に応用されている。PDTの中でも、抗菌目的で行われるものをaPDT(抗菌光線力学的療法)といい、標的細菌を薬液で染色して光感受性を励起した後に、これに反応する光をアクチベータとして照射して殺菌するものである。
【0004】
而して、歯科治療において、aPDT治療を行うには、まず、超音波治療器により歯周、根管の治療を行い、次いで、光感受性薬液(バイオジェル)を供給し、その後、220mw程度の弱いレーザ光(670nm)等の光の照射を行わなければならないが、これら一連の作業を行うに当り、その都度、治療器具を取り替えなければならず、その取り替え作業が面倒であり、また、時間の浪費でもあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、前述のaPDTを行うに当り、単一の器具で、超音波による治療、薬液の供給、光の照射による殺菌を行えるようにすることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、超音波振動子を内蔵する超音波ハンドピースと、該超音波ハンドピースに着脱自在に装着される超音波チップとを有する歯科用超音波治療器において、前記超音波ハンドピースの先端部に光源を、前記超音波チップの先端部近傍に液体放出口を有することを特徴としたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記超音波チップから放出される液体は、光感受性物質液又は洗浄水・冷却水であることを特徴としたものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記光源から照射される光(LED、レーザ等)は、前記超音波チップから放出される液体が、光感受性物質液である時、洗浄水・冷却水の時それぞれに合った波長、出力の光であることを特徴としたものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記ハンドピースの先端部に、光感受性物質液放出口及び洗浄水・冷却水放出口を有することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、歯科治療において、aPDTを行うに当り、歯周の治療、治療後の殺菌を単一の器具で行うことができ、器具を取り替える必要がなく、一連の作業を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による歯科用超音波治療器の一実施例を説明するための全体構成図である。
【図2】本発明による歯科用超音波治療器の要部断面構成を示す図である。
【図3】超音波振動子と超音波チップの連結を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明による歯科用多目的超音波治療器の一実施例を説明するための全体外観図で、図中、10は、内部に超音波振動子等を含む周知の超音波ハンドピースで、該超音波ハンドピース10には、周知のように、超音波チップ20が着脱自在に装着され、該超音波チップ20によって歯周や根管の治療(歯石除去等)が行われる。
【0013】
本発明は、上述のごとき周知の超音波治療器において、ハンドピース10の先端部には光源(LED、レーザ等)11を設け、超音波チップ20には薬液放出口21を設け、治療後の箇所に薬液を供給し、次いで、光を照射することによって殺菌を可能にしている。
【0014】
図2は、上述のごとき本発明による歯科用超音波治療器の要部断面構成を示す図で、ハンドピース10内には、超音波振動子1が設けられ、該振動子1の振動が超音波振動体2を通して超音波チップ20に伝達される。3は超音波振動子1を励振するための電源線、4は多数本の光ファイバから成り、該光ファイバを通して伝達されてきたレーザ光は、図1に示したように、ハンドピース10の先端から光源11として照射される。なお、光源11としてLEDを用いる場合には、前記ファイバ4に代って電線を用い、該電線を通してLEDを点灯制御するようにしてもよい。
【0015】
5は薬液供給チューブで、該薬液供給チューブ5を通して伝送されてきた薬液は、超音波振動体2の軸心に設けられた軸孔2’内に導入され、該軸孔2’を通して超音波チップ20の軸孔20’内に導入される。
【0016】
図3は、超音波振動子1と超音波チップ20の連結を説明するための図で、超音波振動子1に一体的に連結された超音波振動体2の先端部側には、前述の軸孔2’が設けられており、この軸孔2’の内壁には雌ネジ2aが設けられており、この雌ネジ2aに超音波チップ20に設けられた雄ネジ20aが螺合されて、超音波振動子1の振動が超音波チップ20に伝達される。超音波振動体2の側面には、薬液供給用の孔2bが設けられており、この孔2bを通してチューブ5を通して伝送されてきた薬液が超音波振動体2の軸孔2’を通して超音波チップ20の軸孔20’内に伝達され、該超音波チップ20の先端部近傍に設けられた孔21を通して治療箇所に供給される。
【0017】
なお、以上には、超音波チップ20から薬液を供給した後、弱いパワーのレーザ光又はLED光を照射してaPDTを行う例について説明したが、薬液に代って洗浄水を供給し、治療箇所を洗浄した後に405nm程度の波長の強パワーのレーザ光又はLED光を照射して殺菌を行うようにしてもよい。換言すれば、超音波チップ20から放出される液が、光感受性物質液であるが、洗浄水・冷却水であるかにより、それに合った波長、パワーの光を用いる。更には、別途水供給回路を設け、ハンドピース10の先端から放水するようにしてもよい。
【0018】
上述のように、本発明によると、単一の歯科用超音波治療器を用いて、歯周、根管治療(歯石除去等)、及び、治療後の殺菌又は洗浄等を行うことができ、効果的に歯科治療を行うことができる。
【符号の説明】
【0019】
1…超音波振動子、2…超音波振動体、2a…雌ネジ、2b…側孔、10…超音波ハンドピース、11…光源、13…薬液供給チューブ、20…超音波チップ、20’…軸孔、20a…雄ネジ、21…薬液放出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子を内蔵する超音波ハンドピースと、該超音波ハンドピースに着脱自在に装着される超音波チップとを有する歯科用超音波治療器において、前記超音波ハンドピースの先端部に光源を、前記超音波チップの先端部近傍に液体放出口を有することを特徴とする歯科用超音波治療器。
【請求項2】
前記超音波チップから放出される液体は、光感受性物質液又は洗浄水・冷却水であることを特徴とする請求項1に記載の歯科用超音波治療器。
【請求項3】
前記光源から照射される光(LED、レーザ等)は、前記超音波チップから放出される液体が、光感受性物質液である時、洗浄水・冷却水の時それぞれに合った波長、出力の光であることを特徴とする請求項2に記載の歯科用超音波治療器。
【請求項4】
前記ハンドピースの先端部に、光感受性物質液放出口及び洗浄水・冷却水放出口を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の歯科用超音波治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−102847(P2013−102847A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247323(P2011−247323)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000150671)株式会社長田中央研究所 (194)
【Fターム(参考)】