説明

歯科用配合物中の疎水性有効物質の捕捉および放出を調節するための、高洗浄および低研磨シリカ材料

本明細書において、歯科用配合物中の香味料および他の有効物質の捕捉および放出を調節する組成物を記述する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001] この出願は2009年12月17日に出願された米国仮特許出願第61/287,300号に対して優先権を主張し、それを本明細書に援用する。
【0002】
[0002] 本態様は、歯磨組成物、より詳細には香味化合物の保持および送達を制御するための高洗浄および低研磨シリカ材料を含有する歯磨組成物に関する。本態様は、有効量の有効物質および/または再石灰化剤の保持および送達を制御するための、高洗浄および低研磨シリカ材料を含有する歯磨組成物にも関する。
【0003】
[0003] この発明は、その場で(in situ)生成される沈降シリカおよびゲルシリカの組成物の形の研磨剤を含有する独特の歯磨配合物に関する。これらの歯磨剤は、それらが含有する高洗浄および低研磨混成ゲル/シリカ研磨剤の特別な構造および表面の化学的性質に基づく様々な有益な特徴を示す。その混成ゲル/シリカ研磨剤の特別なパラメーターに依存して、この発明は意外な有益な質、例えば増進された香味保持および有効物質の優秀な調節を示す。
【背景技術】
【0004】
[0004] 歯は内側の象牙質の層および歯の保護層である外側の硬いエナメル質の層からなる。歯のエナメル質の層は本来は乳白色またはわずかに灰白色である。染みがつく、または変色する可能性があるのは、このエナメル質の層である。歯のエナメル質の層はヒドロキシアパタイトの鉱物の結晶からなり、それはいくらか多孔性の表面を作り出している。エナメル質の層のこの多孔性の性質が、染みを付ける薬剤および変色させる物質がそのエナメル質に浸透してその歯を変色させることを可能にするものであると信じられている。
【0005】
[0005] 人が日常的に直面する、または接触する多くの物質は、彼らの歯に“染みを付ける”、または彼らの歯の“白さ”を低減させる可能性がある。特に、人が消費する食物、タバコ製品ならびに流体、例えば茶およびコーヒーは、歯に染みを付ける傾向がある。これらの製品または物質は歯のエナメル質の層の上に蓄積し、歯の上にペリクルの薄膜を形成する傾向がある。次いでこれらの染みを付け、変色させる物質はエナメル質の層に浸透する可能性がある。この問題は長年にわたって徐々に起こるが、人の歯のエナメル質の目立つ変色を与える。
【0006】
[0006] 研磨性物質は歴史的に、そのような歯の変色を引き起こし得る様々な沈着物および物質を除去するために歯磨組成物中で用いられてきた。これらの沈着物および物質は時々ペリクルの薄膜の形になり、それはその歯に堅固に接着して黄色または褐色の外観を生じさせる。様々なタイプのシリカ性歯科用研磨剤が、それらの歯のエナメル質または象牙質を過度にすり減らすことのない格別な歯の洗浄および研磨性能の独特の利益のため好まれている。
【0007】
[0007] 伝統的なシリカ材料では、機械的な染みの除去および研磨の間に強い関係が存在し、洗浄性能における利益の増加は結果として象牙質研磨性における著しい増大をもたらす。研磨剤は、洗浄の際に歯に害を与えるべきではない。従って、染みを機械的に除去する標準的なアプローチは、それらの限界に達している。
【0008】
[0008] 業界のリーダーにより促進される動向は、歯磨剤の研磨特性は、特に食事性の源からの酸への長期の曝露の間に歯の磨耗を促進する可能性があるという公言を納得させる試みに焦点を合わせてきた。新規の高洗浄シリカ技術の現在の限界は、結果として白化用製品において優秀な染みの除去を提供する一方で低レベルの研磨性を支持する高洗浄物質の開発に関する、新しく一般化された市場の需要をもたらしてきた。
【0009】
[0009] 香味は、食物、飲料、医薬品および口腔衛生製品、例えば練り歯磨きが含まれるがそれらに限定されない、経口で適用または摂取されるあらゆる製品のより重要な属性の1つである。米国における香味研究の黄金の年代は1960年代および1970年代であり、ほとんどは食品産業内であり[Reineccius, G. (1999) Sourcebook of Flavors, 第2版. Aspen Publishers Inc.]、それ以来、香味組成物および香味放出特性を定量化するために数多くの方法論が利用可能にされてきた。全ての製品において、用いられる原材料はそれら自身の化学的性質に寄与しており、香味化合物と異なって相互作用する可能性があり、従って香味放出プロファイリングは所与の製品におけるあらゆる原材料の開発および/または置き換えにおける典型的な工程になる。
【0010】
[0010] 理想的な次世代の高洗浄歯磨剤は、その香味の放出プロフィール、保持および強度の点でいくらかの独特さを有する。その次世代の歯磨剤は、感覚の口当たりの特性および/または追加の療法的利益も有するべきである。
【0011】
[0011] 米国特許第7,267,814号は、10〜60体積%のシリカゲルを含み、100〜150mL/100gの亜麻仁油吸収量を有する、その場で生成されるゲル/沈降シリカ複合体が含まれる(icncluding)歯磨組成物を開示している。
【0012】
[0012] 米国特許第7,303,742号も、その場で生成されるゲル/沈降シリカ複合体が含まれる歯磨組成物を開示している。その複合体は20〜85体積%のシリカゲルからなり、100〜150mL/100gの亜麻仁油吸収量を有する。約0.80から約3.5までのPCR:RDA(ペリクル洗浄比:放射性象牙質研磨(Radioactive Dentin Abrasion))比、約50〜80のPCR値、および約20〜約80のRDAレベルを示すそのような研磨剤を含有する様々な歯磨き組成物も開示されている。
【0013】
[0013] 米国特許出願第2006/0140878号(2006年6月29日に出願された)は、非晶質の沈降シリカ粒子からなる歯磨組成物を開示しており、ここでそのシリカ粒子は50〜90mL/100gの亜麻仁油吸収量を示す。加えて、この出願は約130〜200のRDAレベルおよび約100〜140のPCR、ならびに0.65〜1.1のPCR:RDA比を示す上記の歯磨組成物を開示している。
【0014】
[0014] 米国特許第7,306,788号はその場で生成されるゲル/沈降シリカ複合体を開示しており、ここでその複合体は5から50体積%までのシリカゲルからなり、約0.45から約0.7までのPCR:RDA(ペリクル洗浄比:放射性象牙質研磨)比、約90〜160のPCR値、および最大で240のRDAレベルを有する。
【0015】
[0015] 本明細書における、既知の組成物、方法および装置の特定の利点および不利な点の記述は、その態様の範囲をそれらの除外(または場合により包含)に限定することを意図するものではない。実際、特定の態様には、前記の不利な点に悩まされることなく1種類以上の既知の化合物、方法、または装置が含まれてよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第7,267,814号
【特許文献2】米国特許第7,303,742号
【特許文献3】米国特許出願第2006/0140878号
【特許文献4】米国特許第7,306,788号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Reineccius, G. (1999) Sourcebook of Flavors, 第2版. Aspen Publishers Inc.
【発明の概要】
【0018】
[0016] この発明は、低構造沈降シリカ(研磨性)およびより高い構造のゲル様シリカ(増粘性)の間の中間の特性を有する混成シリカを利用した歯磨剤を具体化し、それは感覚受容の(organoplectic)許容性を向上させるか、または新規の療法的および/または感覚的利益を提供するかのどちらかのための疎水性化合物の保持および放出を調節するために利用することができる。
【0019】
[0017] 一部の態様は、疎水性芳香族化合物、例えば香味構成要素を保持する傾向がある混成沈降/ゲル様シリカを利用し、それは続いてブラッシングの間に放出され、独特の香味に関連する感覚認知をもたらすことができる。一部の態様は、ブラッシングの際に歯の表面上に沈着するようにシリカの表面の中に組み込まれた(built into)有効量の再石灰化剤も含有していてよい。
【0020】
[0018] 他の態様は、有効量の適切な化粧用および/または療法的有効物質を含有していてよい。そのような有効物質には、一般に口腔中での使用に関して安全であると考えられており、口腔の全体的な外観および/または健康状態に変化を提供するあらゆる物質が含まれ、それには以下のものが含まれるが、それらに限定されない:抗歯石剤、フッ化物イオンの源、第1スズイオンの源、白化剤、抗微生物物質、抗プラーク剤、抗炎症剤、栄養素、抗酸化剤、抗ウイルス剤、鎮痛および麻酔剤、H−2拮抗薬、およびそれらの混合物。存在する場合、その歯磨剤中の化粧用および/または療法的有効物質のレベルは、1態様においてその歯磨剤の約0.001重量%から約90重量%まで、別の態様において約0.01重量%から約50重量%まで、別の態様において約0.1重量%から約30重量%までである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0019] 下記の定義および限定的ではないガイドラインは、本明細書で述べる本発明の記述の再吟味において考慮されるべきである。本明細書で用いられる見出し(例えば“背景技術”および“発明の概要”)および副見出しは、本発明の開示内の題目の全体的な組織化だけを意図しており、本発明の開示またはそのいずれかの観点を制限することを意図していない。特に、“背景技術”において開示されている主題は本発明の範囲内の技術の観点を含んでいてよく、先行技術の列挙を構成してはならない。“発明の概要”において開示されている主題は、本発明の範囲全体またはそのあらゆる態様の余すところのない、または完全な開示では無い。この明細書の節の中での物質の特定の有用性を有するものとしての(例えば“有効な”または“キャリヤー”成分であるとしての)分類または論考は便宜のためになされており、その物質が、それがあらゆる所与の組成物中で用いられた際に、本明細書におけるそれの分類に必ず従って、またはそれにのみ従って機能しなければならないという推論を引き出すべきでは無い。
【0022】
[0020] 本明細書で言及されている全ての刊行物、特許出願、および発行された特許を、本明細書にそのまま援用する。文書の引用は、それらの文書が先行技術である、または本明細書で開示される本発明の特許性に何らかの関連を有するという自認を構成しない。導入において引用されている文書の内容のあらゆる論考は、単にその文書の著者によりなされた主張の概略的な要約を提供することを意図しており、そのような文書の内容の正確さに関する自認を構成しない。
【0023】
[0021] その記述および具体的な実施例は本発明の態様を示すものであるが、説明の目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定することは意図していない。さらに、明記された特徴を有する多数の態様の列挙は、追加の特徴を有する他の態様またはその明記された特徴の異なる組み合わせを組み込む他の態様を除外することを意図していない。具体的な実施例は、この発明の組成物および方法をどのように作る、および用いるかの説明的な目的のために提供されており、別途明示的に記載しない限り、この発明の所与の態様が作られた、もしくは試験された、または作られていない、もしくは試験されていないという表現であることを意図していない。
【0024】
[0022] 本明細書で用いられる際、語“好ましい”および“好ましくは”は、特定の状況の下で特定の利益を与える本発明の態様を指す。しかし、同じ、または他の状況の下で他の態様も好ましくてよい。さらに、1個以上の好ましい態様の列挙は他の態様が有用ではないことを暗に意味せず、本発明の範囲から他の態様を除外することを意図していない。
【0025】
[0023] 本明細書で用いられる際、“含む”は“からなる”および“本質的に〜からなる”を含む。本明細書で用いられる際、語“含む”およびその変形は、リスト中の品目の列挙が、それもこの発明の材料、組成物、装置、および方法において有用である可能性がある他の同様の品目の除外では無いように限定的で無いことを意図している。
【0026】
[0024] 本明細書で用いられる際、用語“約”は、この発明の組成物または方法のパラメーターに関する値に適用される場合、その値の計算または測定が、その組成物または方法の化学的または物理的特性への実質的な作用を有しないいくらかのわずかな不正確さを許すことを示す。何らかの理由により、“約”により提供される不正確さが、当技術において別の状況でこの通常の意味では理解されない場合、本明細書で用いられる“約”はその値の5%までの可能性のある変動を示す。
【0027】
[0025] 本明細書で用いられる全ての百分率は、別途明記されない限り、その歯磨組成物全体の重量によるものである。本明細書で用いられる比率は、別途明記されない限り、そのそれぞれの構成要素の重量比である。全ての測定は、別途明記されない限り、25℃においてなされる。
【0028】
[0026] 全体において用いられるように、範囲はその範囲内にあるそれぞれおよび全ての値を記述するための略記として用いられる。範囲内のあらゆる値は、範囲の末端として選択することができる。
【0029】
[0027] 本明細書において、“有効量”は、明確な利益、好ましくは口の健康の利益を有意に誘導するのに十分であるが、重篤な副作用を避けるのに十分に低い、すなわち理にかなった利益のリスクに対する比率を提供する化合物または組成物の量を意味し、それは当業者の適切な判断の範囲内である。
【0030】
[0028] 歯磨組成物は、通常の投与経路において、特定の療法剤の全身投与のために意図して飲み込まれるのでは無く、むしろ口での活性のために歯の表面および/または口の組織の実質的に全部と接触するのに十分な時間の間口腔中で保持される製品である。本発明の歯磨組成物は、練り歯磨きまたは歯磨剤の形であってよい。用語“歯磨剤”は、本明細書で用いられる際、別途明記されない限り、ペーストまたはゲル配合物を意味する。その歯磨組成物は、あらゆる望まれる形、例えば深い筋が入った(deep striped)形、表面に筋が入った形、多層の形、そのペーストを取り巻くゲルを有する形、またはそれらのあらゆる組み合わせであることができる。
【0031】
[0029] 本明細書は本発明を詳細に指摘し明確に特許請求する特許請求の範囲で終了するが、本発明は以下の好ましい態様の記述からよりよく理解されるであろうと信じる。
[0030] この発明は、香味化合物の保持および送達を制御するための高洗浄および低研磨シリカ材料の使用を具体化し、それは結果としてブラッシングの間に香味の独特の感覚認知をもたらす。その沈降/ゲル混成シリカ材料のその場での形成には、好ましくは明確に制御された製粉プロセスが続き、それは好ましくはそれらが著しく高いレベルの疎水性化合物を捕捉することを可能にする粒径(例えば約5〜30ミクロン、好ましくは約9〜14ミクロンの粒径の中央値)、およびシリカのアクセス可能な細孔容積の全細孔容積に対する比率(60〜110m2/gのCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)表面積、80〜130cc/100gの吸油量、0.7〜1のCTAB/OA比)を有するシリカを提供する。好ましくは、そのCTAB表面積は85から110m2/gまでである。そのシリカのこの能力は、結果として香味の放出の調節をもたらし、それによりブラッシングの間の消費者の知覚に重大な影響をもたらす。同時に、そのシリカは従来の高洗浄シリカと比較して高い洗浄および低い研磨性能を提供する。
【0032】
[0031] 香味の捕捉は、混成シリカにより形成される独特のコロイド性網状構造(20%装填(loading)において線形粘弾性領域内で従来の高洗浄シリカ(HCS)と比較して5倍のG’値)によりさらに増進され得る。
【0033】
[0032] 合成沈降シリカ粉末は一般に、鉱酸または酸のガスの添加による可溶性ケイ酸アルカリからの非晶質シリカの不安定化および沈降により生成される。そのような条件下で、一次粒子が形成され、続いて互いに会合して様々な大きさの凝集体を形成する[Davis, W. B., and Winter, P. J., (1976) “歯磨剤によるエナメル質研磨のインビトロ測定”, J. Dent. Res., 55: 970 ]。沈降した粒子および凝集体の形態および孔の構造は、具体的な反応条件に高度に依存する。結果として生じた沈降物を反応混合物の水性画分から濾過、洗浄、および乾燥手順により分離し、次いでその乾燥した生成物を、適切な粒径および径分布をもたらすために、機械的に製粉する。
【0034】
[0033] 全ての工程はその最終製品の物理的および化学的特性に寄与していると信じられ、従ってシリカの孔の構造および形態への修正はその製造プロセスのあらゆる面、例えば用いられる試薬、反応の速度、濾過および乾燥、ならびに製粉における変動により達成され得る。その修正の一部のマイナスの面は、例えば研磨における増大であり、または一方では、流動学的不均衡を引き起こし再形成を必要とする構造特性における変化である。当業者は、本明細書で提供する指針を用いて本明細書で記述する加工工程を修正してそのシリカの物理的および化学的特性を変化させることができるであろう。
【0035】
[0034] 歯磨配合物中で一般に用いられるシリカ材料は、これらの特性に対する正確な制御はその材料のコストを著しく増大させる傾向があるため、孔径分布および表面の化学的性質の点でそれほど特別ではない。結果として、商業的な口腔ケアグレードのシリカは、ミクロ細孔(2nm未満)、メソ細孔(2〜50nm)およびマクロ細孔(50nmより大きい)が含まれる広い孔径分布を含有する。そのメソ細孔およびマクロ細孔はそのシリカの“アクセス可能な表面領域”であり、有効物質の保持およびそれに続く送達は、これらの長さのスケールにおける形態および表面特性により制御されるであろう。
【0036】
[0035] 本発明で利用される好ましいシリカの1つは、それがゲルおよび沈降シリカのその場での形成の組み合わせである点で、上記で記述した従来の沈降シリカとは似ていない。そのようなシリカ材料は、例えば米国特許出願公開第2006/0110338号、第2006/0110307号、第2006/0110339号、第2006/0110336号、および第2006/0140878号において記述されており、そのそれぞれの開示を本明細書にそのまま援用する。そのその場で形成されるゲルおよび沈降シリカ粒子は、前記の文献において開示されている方法のいずれかにより作ることができる。このプロセスにおいて、まずシリカゲルが、洗浄または精製なしでシリケートに酸を添加することにより形成される。同じプロセス内の続く工程において、シリケートおよび酸の材料の追加の導入により沈降シリカ材料が作り出される。この混成のゲル状および沈降シリカ材料を同じ反応容器内で作り出した後洗浄、乾燥および製粉する方法論は、そのゲルの沈降物に対する比率を制御することにより、異なる洗浄および研磨能力を有するある範囲のシリカ製品を作り出す柔軟性を提供する。その結果は、明確な物理的特性、例えば細孔の構造および形態を有する材料である。
【0037】
[0036] 本発明の好ましい態様は、上記のシリカを含有する歯磨剤である。そのような態様は、例えば、均質性を少なくとも数日間維持するために0.2%水性キサンタンガム溶液中で調製された10〜30重量%のシリカを含有していてよい。次いで、0.5重量%の濃度の香味を添加し、続いてその香味が乳化された状態を保つために用いられる0.5重量%のラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を添加する。
【0038】
[0037] 好ましい態様において、その香味化合物(flavor compound)は2.0以上の分配の対数(log P)の値を示すであろう。その分配(P)係数は、2種類の不混和性の溶媒の混合物の2つの相中の、平衡におけるある化合物の濃度の比である。従って、この係数は、その化合物のこれらの2種類の溶媒の間の差のある溶解度(differential solubility)の尺度である。香味料(flavorant)の場合、そのP(およびPの対数)がより高いほど、その香味化合物の疎水性の性質がより大きい。
【0039】
[0038] 本発明の好ましい態様において、その香味料は、2.0以上のlog Pを示す以下の香味化合物の1種類以上の組み合わせである:カルボンラエボ(Carvone Laevo)、ケイ皮アルデヒド、ユージノール、メントール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、メントン(Menthone)、イソメントン、アネトール、酢酸メンチル、リモネン。これらの、および他の香味料の個々の明細に関しては表2を参照。
【0040】
[0039] 本発明の歯磨組成物は、好ましくはそのシリカ“中に組み込まれた”再石灰化剤を組み入れることができるであろう。療法的有効物質の送達における適用の可能性も存在する。1つの例は、歯のウェア(ware)の予防および軽減のための有効物質の送達である。その混成物は、それは低研磨での高洗浄およびその大きい細孔容積内に有効物質を収容する能力を提供するため、そのような適用において用いるのに理想的なシリカ材料である。再石灰化剤は、ブラッシングの際に歯の表面上に沈着させるためにそのシリカ表面の“中に組み込む”ことができる。骨の置換および修復のための骨組織の再石灰化において、類似のアプローチが用いられてきた。
【0041】
[0040] 本発明は、有効量の1種類以上の湿潤剤も含有していてよい。湿潤剤はその歯磨組成物が空気に曝露された際に硬化しないようにするのを助けることができ、それは口の中で湿った感触を提供することができる。本発明における使用のための適切な湿潤剤には、水、食用多価アルコール類、例えばグリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびそれらの組み合わせが含まれる。ソルビトール、グリセリン、水、およびそれらの組み合わせが好ましい湿潤剤である。その湿潤剤は、約0.1%から約99%まで、約0.5%から約95%まで、および約1%から約90%までの量で存在することができる。
【0042】
[0041] その結合剤系は、さらに追加の無機性増粘剤、例えばコロイド性ケイ酸アルミニウムマグネシウムまたは微細に分割されたシリカを、質感をさらに向上させるために含むことができる。追加の無機性増粘剤は、存在する場合、その歯磨組成物の約0.1重量%から約15重量%まで、より好ましくは約0.1重量%から約5重量%までの量で用いることができる。
【0043】
[0042] 本発明は、その組成物中に過酸化物の源も含んでいてよい。その過酸化物の源は、過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化尿素、およびそれらの混合物からなるグループから選択されてよい。好ましい過酸化物の源は過酸化カルシウムである。以下の量は過酸化物の原材料の量を表すが、その過酸化物の源はその過酸化物の原材料以外の成分を含有していてよい。本組成物は、その歯磨組成物の約0.01重量%から約10重量%まで、好ましくは約0.1重量%から約5重量%まで、より好ましくは約0.2重量%から約3重量%まで、最も好ましくは約0.3重量%から約0.8重量%までの過酸化物の源を含有していてよい。
【0044】
[0043] その組成物にはアルカリ金属重炭酸塩も含まれていてよい。アルカリ金属重炭酸塩類は水中で可溶性であり、安定化されなければ、水性系中で二酸化炭素を放出する傾向がある。重曹としても知られる重炭酸ナトリウムが好ましいアルカリ金属重炭酸塩である。そのアルカリ金属重炭酸塩は、緩衝剤としても機能する。本組成物は、その歯磨組成物の約0.5重量%から約50重量%まで、好ましくは約0.5重量%から約30重量%まで、より好ましくは約2重量%から約20重量%まで、最も好ましくは約5重量%から約18重量%までのアルカリ金属重炭酸塩を含有していてよい。
【0045】
[0044] その組成物は、一般に石鹸泡剤(sudsing agents)とも呼ばれる界面活性剤も含んでいてよい。適切な界面活性剤は、広いpH範囲全体にわたって適度に安定であり、発泡する界面活性剤である。その界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性、両性、双性イオン性、陽イオン性、またはそれらの混合物であってよい。本明細書において有用な陰イオン性界面活性剤には、アルキル基中に8から20個までの炭素原子を有するアルキルサルフェート類の水溶性塩類(例えばアルキル硫酸ナトリウム)および8から20個までの炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリド類の水溶性塩類が含まれる。ラウリル硫酸ナトリウムおよびナトリウム ココナッツ(coconut) モノグリセリド サルフェート類は、このタイプの陰イオン性界面活性剤の例である。他の適切な陰イオン性界面活性剤は、サルコシネート類、例えばナトリウム ラウロイルサルコシネート、タウレート類、ナトリウム ラウリルスルホアセテート、ナトリウム ラウロイルイセチオネート、ナトリウム ラウレスカルボキシレート、およびナトリウム ドデシルベンゼンスルホネートである。陰イオン性界面活性剤の混合物を用いることもできる。多くの適切な陰イオン性界面活性剤が、Agricolaらにより、1976年5月25日に発行された米国特許第3,959,458号において開示されている。
【0046】
[0045] その組成物中で用いることができる非イオン性界面活性剤は、アルキレンオキシド基(本質的に親水性である)と本質的に脂肪族またはアルキル芳香族であってよい有機疎水性化合物の縮合により生成される化合物として広く定義することができる。適切な非イオン性界面活性剤の例には、ポロキサマー類(商標名PLURONIC(登録商標)の下で販売されている)、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル類(商標名TWEENS(登録商標)の下で販売されている)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、脂肪アルコールエトキシレート類、アルキルフェノール類のポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドのプロピレンオキシドおよびエチレンジアミンの反応生成物との縮合に由来する生成物、脂肪族アルコール類のエチレンオキシド縮合物、長鎖第三級アミンオキシド類、長鎖第三級ホスフィンオキシド類、長鎖ジアルキルスルホキシド類、ならびにそのような物質の混合物が含まれる。本発明において有用な両性界面活性剤は、脂肪族第二級および第三級アミン類の誘導体として広く記述することができ、ここでその脂肪族基は直鎖または分枝状であることができ、ここで、その脂肪族置換基の1個は約8から約18個までの炭素原子を含有し、1個は陰イオン性の水可溶化基(water−solubilizing group)、例えばカルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスフェートまたはホスホネートを含有する。他の適切な両性界面活性剤は、ベタイン類、具体的にはコカミドプロピルベタイン(cocamidopropyl betaine)である。両性界面活性剤の混合物を用いることもできる。これらの適切な非イオン性および両性界面活性剤の多くは、Gieskeらにより米国特許第4,051,234号において開示されている。本組成物は、典型的には1種類以上の界面活性剤をそれぞれその組成物の約0.25重量%から約12重量%まで、好ましくは約0.5重量%から約8重量%まで、最も好ましくは約1重量%から約6重量%までのレベルで含む。
【0047】
[0046] 二酸化チタンも本組成物に添加されてよい。二酸化チタンは白色粉末であり、それはその組成物に不透明性を加える。二酸化チタンは一般にその組成物の約0.25重量%から約5重量%までを構成する。
【0048】
[0047] 着色剤も本組成物に添加されてよい。その着色剤は水溶液の形であってよく、好ましくは水の溶液中1%の着色剤である。色の溶液は一般にその組成物の約0.01重量%から約5重量%までを構成する。
【0049】
[0048] 甘味剤をその組成物に添加することができる。これらには、サッカリン、デキストロース、スクロース、ラクトース、キシリトール、マルトース、レブロース、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン類、アセスルファム、およびそれらの混合物が含まれる。様々な着色剤も本発明中に組み入れられてよい。甘味剤および着色剤は、一般に練り歯磨き中でその組成物の約0.005重量%から約5重量%までのレベルで用いられる。
【0050】
[0049] 本発明には他の薬剤、例えば抗微生物剤も含まれてよい。そのような薬剤の中に含まれるのは、水に不溶性の非陽イオン性抗微生物剤、例えばハロゲン化ジフェニルエーテル類、フェノールおよびそれの同族体、モノおよびポリアルキルならびに芳香族ハロフェノール類、レゾルシノールおよびそれの誘導体、ビスフェノール化合物ならびにハロゲン化サリチルアニリド類が含まれるフェノール化合物、安息香酸エステル類、ならびにハロゲン化カルバニリド類、ポリフェノール類、ならびに草本である。水溶性抗微生物物質には、とりわけ第四級アンモニウム塩類およびビス−ビクアニド塩類(bis−biquanide salts)が含まれる。トリクロサンモノホスフェートが好ましい追加の水溶性抗微生物剤である。その第四級アンモニウム剤には、その第四級窒素上の置換基の1または2個が炭素原子約8から約20個まで、典型的には約10から約18個までのの炭素鎖長(典型的にはアルキル基)を有し、一方で残りの置換基(典型的にはアルキルまたはベンジル基)はより少ない数の炭素原子、例えば炭素原子約1から約7個までを有する、典型的にはメチルまたはエチル基である、第四級アンモニウム剤が含まれる。臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルピリジニウム、臭化ドミフェン、塩化N−テトラデシル−4−エチルピリジニウム、臭化ドデシルジメチル(2−フェノキシエチル)アンモニウム、塩化ベンジルジメチルステアリルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、四級化5−アミノ−1,3−ビス(2−エチル−ヘキシル)−5−メチルヘキサヒドロピリミジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムおよび塩化メチルベンゼトニウムは、典型的な第四級アンモニウム抗細菌剤の代表的なもの(examplary)である。他の化合物は、1980年6月3日にBaileyに発行された米国特許第4,206,215号において開示されているようなビス[4−(R−アミノ)−1−ピリジニウム]アルカン類である。
【0051】
[0050] 他の抗微生物剤、例えば銅ビスグリシネート、銅グリシネート、クエン酸亜鉛および乳酸亜鉛も含まれていてよい。酵素も有用であり、それにはエンドグリコシダーゼ、パパイン、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、およびそれらの混合物が含まれる。そのような薬剤は、Norrisらへの米国特許第2,946,725号(1960年7月26日)において、およびGieskeらへの米国特許第4,051,234号(1977年9月27日)において開示されている。具体的な抗微生物剤には、クロルヘキシジン、トリクロサン、トリクロサンモノホスフェート、および香味油、例えばチモールが含まれる。トリクロサンは本組成物中に含ませるのに好ましい抗微生物剤である。トリクロサンおよびこのタイプの他の薬剤は、Parran,Jr.らの米国特許第5,015,466号(1991年5月14日発行)、およびNabiらへの米国特許第4,894,220号(1990年1月16日)において開示されている。その水に不溶性の抗微生物剤、水溶性薬剤、および酵素は、第1または第2歯磨組成物のどちらかの中に存在していてよい。その第四級アンモニウム剤、第1スズ塩類、および置換グアニジン類は、好ましくは第2歯磨組成物中に存在する。これらの薬剤は、その歯磨組成物の約0.01重量%から約1.5重量%までのレベルで存在していてよい。
【0052】
[0051] ゴールデンスレッド(golden thread)抽出物、スイカズラ抽出物、マグノロール(magnolol)、ホノキオール(honokiol)、および他の既知の草本性の薬剤およびそれらの混合物が含まれるがそれらに限定されない草本性の薬剤も、本明細書における組成物中に約0.01%から約0.05%までのレベルで存在していてよい。そのような草本性の薬剤は抗細菌効能を提供すると信じられている。さらにポリフェノール類が約0.01%から約2%までのレベルで含まれていてよい。好ましいポリフェノールは茶のポリフェノールである。
【0053】
[0052] 有効量の脱感作剤も本組成物中に組み入れられてよい。その脱感作剤には、塩化物とのアルカリ金属塩類、II族金属もしくはアルミニウムの硝酸塩、硫酸塩、もしくは酢酸塩、または細管を塞ぐための重合可能なモノマー、硝酸アルカリ金属もしくはアンモニウム、アンモニウムオキシレート(oxylate)、クエン酸およびクエン酸ナトリウムから選択される脱感作剤が含まれる。好ましい塩類は、硝酸カリウム、クエン酸カリウム、およびそれらの混合物である。そのような脱感作剤は、例えば米国特許第5,718,885号において開示されている。
【0054】
[0053] その歯磨組成物は、ペースト、ゲル、またはそれらのあらゆる配置(configuration)または組み合わせであってよい。その歯磨組成物のためのディスペンサーは、チューブ、ポンプ、または練り歯磨きを分配するのに適したあらゆる他の容器であってよい。二重相口腔用組成物では、それぞれの口腔用組成物がディスペンサーの物理的に隔てられた区画中に含有され、並んで分配されるであろう。
【0055】
[0054] 本発明の好ましい態様をここで、以下の実施例によりより詳細に説明する。その実施例は本発明の組成物の特定の特性の測定において用いられる方法論も記述する。
【実施例】
【0056】
実施例1:香味放出プロファイリング
[0055] 香味の放出をプロファイルするため、以下の条件下で静的ヘッドスペースGC−MS実験を行った:2mLの試料を、バイアル中のヘッドスペースの空気から香味化合物が漏れるのを防ぐように特別に設計された20mLスクリューキャップバイアルの中に装填した。その試料を、恒温器中で370℃において穏やかな撹拌の下で設定された期間(スラリーに関して10分間、および練り歯磨きに関して1時間)の間平衡化させた。平衡化の後、2.5mLヘッドスペース注射器を利用して、Gerstel MPS2自動注入システムを用いた自動化された注入により、そのフラスコから300μLのヘッドスペースの空気を集めた。次いで、揮発した香味化合物を含有するHSの空気の分割量(aliquot)を、5%ジフェニル−ポリシロキサンおよび95%ジメチル−ポリシロキサンを詰め込んだ、0.25mm×250μm×0.25μmのカラム直径を有するAgilent GCカラム(モデル# 19091S−433)中に注入した。そのカラムを一定流量モードで動かし、MSD検出器を利用し、ヘリウムをキャリヤーガスとして利用した。オーブン温度の勾配は20℃/分で40から250℃までであり、最初のホールド時間は40℃で1.5分間であった。注入口はスプリットレスモードに設定し、総運転時間は12.50分間であった。
【0057】
[0056] 実施された静的ヘッドスペースGC−MS実験からの結果は、本意図(intention)の全ての試料が、一般に用いられるシリカ(Zeodent 105)であった対照スラリーよりもおおよそ8〜16%ぐらい多い総香味(total flavor)を保持していることを示している。107のCTABを有する実施例1は、対照と比較して最も多いおおよそ15.80%の総香味を保持している。CTABの89までの減少は結果としてわずかな向上をもたらしたが、CTABの79以下までの減少は結果として総香味の保持における有意な向上(16%から約8%まで)をもたらした。下記の表1を参照:
【0058】
【表1】

【0059】
[0057] その試料により放出された総香味を統計的回帰においてCTABに対してプロットすると、CTAB表面積の増大は香味化合物のより大きい保持と強く相関している(R2=0.8998)。その観察された相関は指数関数的であり、これはなぜCTABにおける107から79までの減少は著しい向上につながるが60までのさらなる減少は結果として最小限の追加の向上をもたらすのかを説明している。その混成シリカの比較的高いアクセス可能な内部の細孔の容積は、それが本質的に自然状態では疎水性である香味化合物を優先的に捕捉することを可能にし、結果として放出される香味の総量の低減をもたらすと信じられる。
【0060】
[0058] 上記で記述した混成シリカは疎水性香味化合物の保持において非常に優れており、一般に用いられるシリカ(Zeodent 105)である対照よりもはるかに優れている。これは、疎水性化合物が相互作用するためのはるかに大きな利用可能な細孔容積につながる、対照(d約593)と比較してより小さい細孔の直径(約200A)によるものであると信じられる。香味化合物の結合は優先的であり、従って表面の化学的性質における変化により駆動される可能性があることも、ここで示した結果から明らかである。
【0061】
【表2】

【0062】
[0059] その歯磨剤の香味放出プロフィールを時間の関数として定量化するため、ブラッシングプロセスを模擬実験するために装置を設計し、時間の経過に対して様々な香味化合物の強度を測定するためにAPCI−MSプロトコルを開発した。この仕組みにおいて、水を押し上げた(water−jacked)、完全に密封されたガラスフラスコが、そこで練り歯磨きおよび人工の唾液がブラッシングの間のように混合されるチャンバーの役目を果たす。そのフラスコは3つの開口部を有し、1つはその試料をパージするためにそのフラスコの中に空気が入るのを可能にし;2つめはガス分析のためにAPCI−MSに接続され、3つめは電動ラボミキサーに接続されたブラシ(ブラッシングを模する)の導入のために用いられる。最後の開口部は、フラスコから漏れるのを避けるため、隔壁を用いてブラシの軸部の周りでしっかりと閉じられている。試料採取のため、20mlプラスチック注射器に15mLの練り歯磨きゲルを装填し、そのフラスコの中に導入する。30ミリリットルの水を添加し、そのフラスコの中にブラシを導入してミキサーに接続する。次いで、一度パージガスの流れを開き(流速=100mL/分)、ミキサーを160rpmでオンにする。パージガスは揮発性物質の放出を促進し、一部はAPCI−MS機器の入口に入り、それはその化合物の凝縮を避けるために90℃まで加熱されている。
【0063】
[0060] 一度機器の内部でその化合物のそれぞれがプロトン化されると、主にある特定の強度のM+1イオン(Mは分子イオンまたは親イオンである)を与える。この研究のために用いられるAPCI−MSはその分子イオンの二次断片化を可能にし、2種類の化合物が同じ分子イオンを有することはあり得るがそれらが同じ二次断片化パターンを有する可能性は極めて低いため、そうして様々な化合物の同定の成功および正確な定量の可能性を増大させる。その機器は0.03秒ごとに50〜200原子質量単位(uma)の間の質量を走査し、それぞれの完全質量走査の間の時間に、その機器は目的の特定の質量の断片、すなわち個々の香味組成物の分子イオンに対応する断片の断片化および走査を行う。それぞれの実験の間、データを合計3分間集め、それぞれの試料を3通り(triplicates)で分析する。
【0064】
[0061] それぞれの実験の終了時に、存在するそれぞれの香味化合物に関して芳香放出曲線(時間の経過に対する強度)の形で出力を集める。その芳香放出曲線は、ブラッシングの間のある単一の芳香化合物に対応していそうな1つのイオンの強度における変動を表す。
【0065】
[0062] 特定の香味化合物の放出は、そのシリカのタイプに従って異なる。対照を用いて、および3種類の本発明の実施例を用いて作られた歯磨剤からのリモネン、メントン、メントール、およびカルボンのリアルタイムの放出を、下記の表3〜6で示す。最初の実施例(CTAB 107)は、全ての香味構成要素の最も顕著な放出を示した。放出の遅延はほとんど観察されず、全ての場合において20秒未満で最大強度に達した。実施例2(CTAB 79)はメントールの放出において顕著な遅延を示し(約30秒で最大強度)、メントンおよびカルボンの放出においてわずかな遅延を示した(約25秒で最大強度)。そのシリカの特性を上記のように操作してブラッシングの間の香味の放出を修正することができる。可能性のある適用には、香味のモーフィング(morphing)および長続きするさわやかな息が含まれる。下記の表で示したデータは、その芳香放出曲線から概算された。
【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
実施例2:流動学的試験
[0063] 本発明はさらに、その混成シリカを歯磨配合物中で特定の量:10〜30%重量%で用いる際の意外な粘性の属性を示す。これは、その歯磨剤中に含有されるシリカにより形成される独特のコロイド性網状構造(20%装填において線形粘弾性領域内で従来のHCSと比較して5倍のG’値)によるものであると信じられる。
【0071】
[0064] 混成シリカの構造特性および流動挙動を既知の高洗浄シリカ材料対照に対して比較する流動学的特性の評価は、この結果を支持する。その高洗浄シリカ材料は、J.M. Huber Corp.(メリーランド州ハバー・ド・グラス)から商業的に入手可能なZeodent(登録商標)115であった。この実施例において用いられた流動学機器、幾何学、およびプロトコルは周知であり、文書で裏付けられている(例えば、[Larson, R.G. (1999) The structure and rheology of complex fluids. Oxford UniversityPress; Macosko, C.W. (1994) Rheology: Principles, Measurements, and Applications. Wiley-VCH Inc.]およびその中の参考文献を参照)。
【0072】
[0065] 様々な製品の線形粘弾性挙動を、動的振動実験、すなわち周波数および歪み掃引により定量化することができる。周波数掃引では、試料をrads/sの範囲内の異なる周波数において小さい固定された振幅の振動歪み(ここで報告されている全ての測定に関して0.05%)にさらした。歪み掃引実験では、適用される歪みの振幅をその範囲で変化させ、一方で振動の周波数は1Hzで一定に保った。その材料のこの振動歪みに対する粘弾性反応を、周波数または歪みの関数としてG’およびG”に換算して測定し、それによりその試験された材料の構造特性に関する価値のある情報を得た。例えば線形粘弾性領域(LVR)を振動実験から決定することができ、同様に弾性の寄与の粘性の寄与に対する比率(G’/G”)はしばしば個々の配合物の安定性および“剛性”と関連している。この情報を用いて、ある特定の粘弾性材料がより固体様の特性を示すか、またはより流体様の特性を示すかを決定することが可能である。
【0073】
[0066] ちょうど振動剪断を用いて試料の平衡時の構造および動的特性を調べることができるように、定常状態剪断を用いてその系の流動挙動を例えば時間、温度、または剪断速度の関数として調べることもできる。ここで、定常状態実験を利用して粘性および剪断応力プロフィールを0.1〜100s−1の範囲(rage)で剪断速度の関数として定量化する。
【0074】
[0067] 本発明の粘弾性特性も対照の粘弾性特性とは異なっている。0.5s−1の低い剪断速度における粘性プロフィールから得られた低剪断粘度は対照配合物(formula)に関して161,000cpsであり、それは本発明の混成シリカを含有する配合物に関する361,700cpsに対して2倍より大きい。歪み掃引の線形粘弾性領域(LVR)から引き出された構造パラメーターG’(弾性率)は、対照および実施例1の配合物に関してそれぞれ11,040dyn/cmおよび73,350dyn/cmであり、これはほとんど1桁近い差に相当する。さらに、対照配合物のコロイド性網状構造を破壊するのに必要な振動応力の量は、本発明の混成シリカ配合物に関する122.7dyn/cmと比較した場合、対照に関して29.87dyn/cmであった。
【0075】
[0068] 従って、本発明により形成されるコロイド性網状構造は、その混成シリカの高洗浄/増粘性の性質により、対照により形成される網状構造よりも破壊に対して強く、より破壊されにくいと信じられる。粘性および構造パラメーターにおけるこれらの違いは、結果として消費者に知覚可能な質感の違いをもたらし、香味の放出自体の速度にも影響を及ぼすであろう。
【0076】
[0069] 後者は、希釈の際の香味放出挙動により明示される。下記の表7は、ヘッドスペース中の総香味濃度をPBSによる練り歯磨きの希釈の関数として示している。0%希釈では対照配合物からより多くの香味がヘッドスペース中に放出されるが、試料をPBSで100および200%希釈すると、ヘッドスペース中の濃度は本発明の歯磨配合物に関してより高くなる。これは、混成シリカにより形成される強固なコロイド性網状構造の内部に最初に捕捉された香味構成要素が続いてブラッシングの際に放出されることを実証している。そのより強い、いくらか遅延した香味の放出は、結果として吐き出した後の(post−expectorating)より強い燃えるような、およびしびれさせる(numbing)感覚をもたらし、それは本発明の歯磨剤により達成することができる。
【0077】
【表7】

【0078】
[0070] その混成シリカの独特の内部の細孔構造は、放出される香味の総量への作用を有するだけでなく、それはその中にそのシリカ材料が組み入れられる組成物の流動学プロフィールにも影響を及ぼすと信じられる。シリカ材料のパラメーターが流動学に対して有する作用は、その最終製品の粘性プロフィールおよび構造パラメーターはその配合された練り歯磨きの消費者受容および加工性を左右し、香味の保持およびその後の放出に影響を与えるため、重要である可能性がある。水性コロイド性シリカ分散液において、一次粒子およびクラスターはその水性環境中で凝集する傾向がある。従って、存在する凝集体の大きさは、乾燥した粒子自体の大きさよりも数桁高い可能性がある。特定の臨界体積分率より上では、その個々のクラスターが相互に接続し、その溶液にそれの構造および粘性を与える粒子の網状構造を形成する。この現象が起こる臨界粒子濃度は、その材料の細孔構造に、それはその凝集体のフラクタル次元(fractal dimension)を、従って“開放性(openness)”または密度を支配しているため、大きな程度まで依存する。
【0079】
[0071] 3種類の異なる混成シリカの流動学的特性を表7で提供する。その混成シリカのスラリーを、3種類の異なる粒子濃度装填:10、20および30重量%で作り、同じ濃度の対照スラリーと比較した。2種類の流動学的パラメーター:構造パラメーターG’および低剪断粘度ηを測定した。G’および粘性のシリカ濃度の関数としての試験は、全ての本発明の組成物は対照よりも安定した(faster)構造および粘性を作り上げることを確証する。20%シリカ濃度において、実施例1のスラリーに関するG’の値は対照に関するG’の値よりもおおよそ10倍高い:それぞれ347.6dyn/cm対40.27dyn/cm。同様に、本発明の歯磨剤の低剪断粘度は対照に関する1243cpsと比較して7974cpsであり、おおよそ7倍高い。そのスラリーがより濃縮されると(すなわち30重量%シリカ)、これらの差はさらにもっと顕著になる。
【0080】
[0072] 表7は、CTAB表面積およびバルク(bulk)流動学的特性の間に相関が存在することも示している。CTAB表面積の減少は、結果として本発明の流動学的特性の有意な向上をもたらす。65のCTAB値を有する実施例4はより対照に近い流動学的プロフィールを有するが;粘性および構造パラメーターの値はまだ少なくとも50%高い。従って、対照シリカの本発明における新規の混成シリカによる一対一置換は、結果としてより粘性があり、より堅い製品をもたらし、消費者に異なる口の中での感触を伝える。
【0081】
[0073] 上記で言及したように、その細孔の構造は水性媒体中で形成されるシリカの網状構造の凝集挙動を駆動し、その形成される凝集体は、最終的に香味を捕捉し、それによりそのシリカの網状構造内の香味の保持を駆動すると信じられているものである。下記の表8における結果は、この概念を示している。ここで、シリカのスラリーをCTAB値がある範囲にわたる4種類の異なる原材料から作った。全てのシリカのスラリーの濃度は10から30重量%までに及び、それは臨界凝集濃度の下からその限界の十分に上までの濃度の範囲を含んでいた。結果は、10%シリカ濃度(臨界凝集濃度の下)では、ヘッドスペース中に放出された香味の総量およびCTAB表面積の間にほとんど〜全く相関がない(R2=0.1625)ことを示している。一方で、20および30%シリカ濃度では強い相関が観察され、CTAB表面積の増大の結果、放出された総香味の有意な減少がもたらされた。
【0082】
【表8】

【0083】
[0074] そのシリカの細孔構造が直接香味の捕捉につながると信じられるわけではないが;それは凝集の程度に影響を及ぼし、それが今度は香味の放出に影響を及ぼすようである。これは、構造パラメーターG’の大きさおよび放出された総香味の間で確立された強い相関によりさらに強められる。結果は、そのスラリーを作るためにどのシリカ材料を利用するかに関わらず、G’およびヘッドスペース中の香味濃度の間に普遍的な指数関数的相関が存在することを示している。低いG’の値において、香味の放出はG’が増大すると共に劇的に減少し、最終的にプラトーになる。
【0084】
[0075] 本発明を好ましい態様の詳細な記述および好ましい実施例に関連して記述したが、当業者は本発明がこれらの好ましい態様に限定されないことを理解しているであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その場で生成されたゲル/沈降シリカ複合体および配合物の約0.6重量%までの量の有効量の香味料を含む歯磨配合物であって、前記の複合体が10〜30体積%のシリカゲル/沈降物複合体を含み、約60から約110m/gまでのCTAB表面積および約0.7から約1.0までのCTAB表面積の吸油量に対する比率を示す、前記歯磨配合物。
【請求項2】
その場で生成されたゲル/沈降物複合体が、約9〜約14ミクロンの粒径の中央値の範囲を有する粒子の形である、請求項1に記載の歯磨剤。
【請求項3】
その複合体が約85から約110m/gまでのCTAB表面積を示す、請求項1または請求項2に記載の歯磨剤。
【請求項4】
前記の複合体が80〜130ml/100gの亜麻仁油吸収量を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯磨剤。
【請求項5】
前記の組成物が約81から約100までのPCR(ペリクル洗浄比)値、約75から約135までのRDA(放射性象牙質研磨)レベル、および約0.70から約1.25までのPCR対RDA比を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯磨剤。
【請求項6】
さらに有効量の香味化合物を含み、その香味化合物が2.0以上の分配の対数(log P)の値を示す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯磨剤。
【請求項7】
その香味化合物がカルボンラエボ(Carvone Laevo)、ケイ皮アルデヒド、ユージノール、メントール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、メントン、イソメントン、アネトール、酢酸メンチル、リモネン、およびそれらの混合物からなるグループから選択される1種類以上の香味の組み合わせである、請求項6に記載の歯磨剤。
【請求項8】
その歯磨剤が約4.1以上の香味強度値を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯磨剤。
【請求項9】
その歯磨剤が少なくとも7.0%の香味保持値を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の歯磨剤。
【請求項10】
その歯磨剤の弾性率が約65,000から約100,000dyn/cmまでの範囲内である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の歯磨剤。
【請求項11】
さらに有効量の再石灰化剤を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の歯磨剤。

【公表番号】特表2013−514988(P2013−514988A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544876(P2012−544876)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/060975
【国際公開番号】WO2011/084676
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】