歯茎マッサージ用ブラシ
【課題】歯茎の柔らかい部分であっても、歯茎を傷付けることなく充分にマッサージできるように構成した歯茎マッサージ用ブラシを提供する。
【解決手段】歯茎マッサージ用ブラシのブラシ部12について、基部12aの一平面の外側に低硬度の突起毛13aを形成し、その内側に突起毛13aに比較して高硬度の突起13cを形成する。マッサージを行う場合は、柔らかな突起毛13aによって歯茎の辺縁部等をマッサージできるので、歯茎の傷付きを防止できる。また、突起毛13aの高さに対し、突起13cを低く構成したので、ブラシ部に凹状空間が形成され、ここにマッサージ用ジェルを保持することができるので、マッサージ効果を高めることができる。
【解決手段】歯茎マッサージ用ブラシのブラシ部12について、基部12aの一平面の外側に低硬度の突起毛13aを形成し、その内側に突起毛13aに比較して高硬度の突起13cを形成する。マッサージを行う場合は、柔らかな突起毛13aによって歯茎の辺縁部等をマッサージできるので、歯茎の傷付きを防止できる。また、突起毛13aの高さに対し、突起13cを低く構成したので、ブラシ部に凹状空間が形成され、ここにマッサージ用ジェルを保持することができるので、マッサージ効果を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯茎を傷つけることなく充分にマッサージを行い得るように構成した歯茎マッサージ用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯茎マッサージ用ブラシは、長手状の把持部の一方の端部にブラシ部を装着した構成になっている。ブラシ部には、下記特許文献1に開示されているように、板状部の上下両面に複数の凸部を形成したものがある。ブラシ部の上面には、幅方向に一定間隔で凸部が形成され、ブラシ部を歯茎の側面に接触させた状態で軸方向に動かすことで、歯茎を横方向からマッサージするようになっている。
【0003】
また、ブラシ部の下面には、長手方向に一定間隔で離間した凸部が形成され、ブラシ部を歯茎の側面に接触させた状態で縦方向に動かすことで、歯茎を縦方向からマッサージするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−70043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記構成の歯茎マッサージ用ブラシは、歯茎に直接接触してマッサージする部分、即ちブラシ部に一定間隔で凸部を形成した構成であるが、各凸部の硬さは一定である。
【0006】
一方、人間の歯茎は個人差がありその硬さにも違いがあり、例えば、歯頬部に近い辺縁歯肉は柔らかく、根元に近い付着歯肉は比較的硬くなっている。従って、前記マッサージ用ブラシで歯茎のマッサージを行うと、前記辺縁歯肉をマッサージする際に痛みを感じたり、傷つける恐れがある。また、歯肉炎は辺縁歯肉に生じることが多いため、歯肉の炎症を悪化させる一因ともなる。そして、辺縁歯肉を傷つけないように、前記マッサージ用ブラシの各凸部を柔らかくすれば、硬い付着歯肉部において充分なマッサージ効果が得られなくなるという問題が生じる。
【0007】
前記特許文献1の図8及び図9には、比較的背の低い略半球状凸部と比較的背の高い略針状凸部の2種類の凸部を有するブラシ部の構成が開示されているが、略半球状凸部は周囲を完全に囲繞されていないので、硬い略半球状の凸部が歯茎の辺縁歯肉に接して痛みを与えたり、歯肉を傷つけるおそれがあるので充分なマッサージができない。また、炎症部位に過度な圧力が加わり、炎症を悪化させる原因にもなる。特に、炎症を起こし、そのために痛みを感じ易くなっている辺縁歯肉部を、上記マッサージ用ブラシでマッサージを行うと、歯肉を傷付けて歯肉の退縮を引き起こしたり痛みを感じたりするので充分なマッサージができない。
【0008】
また、前記ブラシ部は、軸部にバネ部を介して取付けられているが、バネ部の弾性だけでは歯茎への接触具合を調整するのは困難である。また、軸部やバネ部の構成が複雑になる等の問題もある。
【0009】
一方、マッサージを行う際に、マッサージ用ジェルを併用すると、歯肉の血液循環が改善することが知られているが、前記凸部の形状ではマッサージ用ジェルをブラシ面に溜めにくい。即ち、前記凸部は、板状部の表面に一定間隔で複数の凸状部を並べて形成したものであるから、各凸部間に浅い谷部ができるだけである。このため、マッサージ用ジェルは、ブラシ部の表面に形成された浅い谷部に溜められるだけであり、マッサージ時に垂れやすい、といった問題がある。
【0010】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、辺縁歯肉等の歯茎の柔らかい部位などを傷つけることなく、また歯肉炎等により炎症が生じている部位に痛みを感じることなく、充分にマッサージできる上に、マッサージ用ジェルを用いて良好な歯茎マッサージを行い得るように構成した歯茎マッサージ用ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の前記目的は、下記構成により達成される。
(1) 長手状に形成された把持部の端部に歯茎をマッサージするブラシ部を設けた歯茎マッサージ用ブラシであって、
前記ブラシ部は、平面部に直立状に低反発弾性材料からなり頭部が曲面である複数の突起毛を環状に形成されるとともに、前記環状に形成された突起毛列の内側に、頭部が曲面であり前記突起毛よりも高さが低い突起を形成され、前記突起毛が前記突起よりも軟らかいことを特徴とする歯茎マッサージ用ブラシ。
【0012】
(2) 前記ブラシ部は、前記突起毛の高さが異なることにより、マッサージ用ジェルを保持するための凹状空間が形成されていることを特徴とする前記(1)記載の歯茎マッサージ用ブラシ。
【0013】
(3) 前記低反発弾性材料がシリコンゴム又はスチレン系エラストマーであることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の歯茎マッサージ用ブラシ。
【0014】
前記(1)の歯茎マッサージ用ブラシによれば、ブラシ部の一平面部に直立状に突起毛を環状に形成するとともに、前記突起毛の内側に突起毛よりも高さが低い突起を形成したものである。しかも、突起毛の硬さは突起の硬さに比較して低く設定されているので、柔らかくなっている。このため、歯茎マッサージを行う際、外側の突起毛が歯肉の柔らかな辺縁部等に接触するので辺縁部を傷つけることがなく、歯肉炎を罹患していても充分にマッサージができ、歯茎の比較的硬い部分は突起毛の内側の前記突起によりマッサージされる。
【0015】
前記(2)の構成によれば、前記突起毛と前記突起との高低差によって、前記突起毛に囲まれた凹状の空間が形成される。従って、前記凹状空間に充分なマッサージ用ジェルを保持してマッサージを行うことができる。
【0016】
前記(3)の構成によれば、前記ブラシ部全体が軟質のシリコンゴム又はスチレン系エラストマーにより形成されているので、歯茎を傷つけることがなく充分にマッサージを行うことができ、更にマッサージ時に痛さを感じることがなく、安心感が得られる。
【0017】
ここで、本発明に用いられる低反発弾性材料としては、シリコンゴムが挙げられ、シリコンゴムとしては、天然ゴムや合成ゴムと同様にロール作業で可塑化させて形成されるミラブル型、例えば、ビニルメチルシリコンゴム、フェニルメチルシリコンゴム、フルオロシリコンゴム等が挙げられる。この他にも、低粘度の液状で、室温又は加熱により硬化してゴム形状となる液状シリコン、例えば、縮合型シリコン、付加型シリコン等が挙げられる。この他に熱可塑性エラストマーを用いることができ、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系、塩ビ系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ニトリル系、ポリアミド系、フッ素系、塩素化ポリエチレン系、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイ系、エステルハロゲン系ポリマー系などから挙げられる。これらの中でも、ビニルメチルシリコンゴム、スチレン系エラストマーが柔軟性を付与でき、薬剤や劣化に耐性があることから好ましい。また、柔軟性などを向上させるため可塑剤を添加しても良い。ここでスチレン系エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体、部分水添スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン(エチレン−エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0018】
更には、低反発弾性材料からなる突起毛の硬さとして、1〜20N/cm2とするのが、歯茎への刺激をより抑制できるので好ましい。ここで、毛の硬さとは、後述のとおり日本工業規格の「歯ブラシ」にある圧縮試験機を用いる方法(JIS S3016)に準じて測定されるものである。
本発明における突起毛の仕様は下記であることが好ましい。
数:6〜90
直径:0.8〜2.0mm
長さ:3〜10mm
硬さ:1〜20N/cm2
また、本発明における突起の仕様は下記であることが好ましい。
数:1〜8
直径:2.0〜5mm
長さ:1〜8mm
硬さ:50N/cm2 より大きい
【0019】
ここで、本発明の歯茎マッサージ用ブラシと一緒に用いると好ましいマッサージ用ジェルについて詳述する。
【0020】
本発明に用いられるマッサージ用ジェルは、以下の各種成分から成り、20℃条件下で20〜4000mPa、好ましくは50〜2000mPaの粘性を有するように調製されている。
【0021】
ここでの粘性は、液温20℃条件下での測定値であり、例えば、RB80H型粘度計(東機産業社製)で測定することができる。
【0022】
用いられる各種成分としては、例えば、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、イソプロピルメチルフェノール、塩化リゾチーム、デキストラナーゼ、ムタステイン、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、酢酸トコフェロール、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩などの有効成分、精製水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の溶剤、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、寒天、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム等の増粘剤、POEアルキルエーテル、POE硬化ヒマシ油、POE・POP共重合体、ラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤、サッカリンナトリウム、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、メントール、ミントなどの香味剤、安息香酸ナトリウム、パラベン等の防腐剤、クエン酸、リン酸ナトリウム等のPH調整剤、色素、香料等が挙げられる。
【0023】
以下の表1に、本発明に用いられる歯茎マッサージ剤の処方例1〜4を示す。(質量%にて表示)
【0024】
【表1】
【発明の効果】
【0025】
以上に説明したように、本発明によれば、歯茎マッサージ用ブラシのブラシ部全体をシリコンゴム、スチレン系エラストマー等の低反発弾性材料で形成するとともに、ブラシ部の外側に形成された突起毛の硬さをその内側に形成された突起に比較して柔らかめに設定した。これにより、突起毛は、マッサージ時に歯茎の柔らかい辺縁部等に接触するので、辺縁部を傷付ける恐れがない。また、歯茎の比較的硬い付着歯肉部分は、頭部が曲面状の突起によりマッサージされるので、充分なマッサージ効果を得ることができる。また、歯肉の血流促進効果を得ることができる。
【0026】
更に、突起毛の高さに比較して突起の高さを低くしたので、ブラシ部に凹状の空間が形成され、この空間にマッサージ用ジェルを充分に保持してマッサージを行うことができる。マッサージ用ジェルを併用してマッサージを行うことにより、マッサージ効果、及び歯肉の血流促進効果が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態を示す歯茎マッサージ用ブラシの斜視図である。
【図2】歯茎マッサージ用ブラシの構成を示す側面図である。
【図3】ブラシ部の構成を示す斜視図である。
【図4】ブラシ部の着脱構成を示す斜視図である。
【図5】ブラシ部の構成を示す平面図である。
【図6】図5のA−A矢視断面図である。
【図7】図5のB−B矢視断面図である。
【図8】完熟トマトを使ったブラッシング試験の方法を示す模式図である。
【図9】完熟トマトに傷が発生しなかった形態を示す写真である。
【図10】完熟トマトに傷が発生した形態を示す写真である。
【図11】完熟トマトに傷が発生した他の形態を示す写真である。
【図12】(a)、(b)、(c)は図9〜図11に示したトマトの側面図である。
【図13】マッサージによる血流変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る歯茎マッサージ用ブラシの斜視図、図2は歯茎マッサージ用ブラシの側面図、図3はブラシ部の構成を示す斜視図、図4はブラシ部の着脱を示す斜視図、図5はブラシ部の構成を示す平面図、図6は図5のA−A矢視断面図、図7は図5のB−B矢視断面図、図8はトマトを使ったブラッシング試験の方法を示す模式図、図9は試験に用いられたトマトの側面写真、図10及び図11はトマトの傷付き状態を示すトマトの側面写真、図12(a)(b)(c)は図9〜図11の写真の内容を表すトマトの側面図、図13はマッサージによる血流値の変化を示す特性図である。
【0029】
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態である歯茎マッサージ用ブラシ10は、低反発弾性材料からなる複数の突起毛13aと複数の突起13cとからなる複数種の突起13を形成したブラシ部12と、ブラシ部12に接続して延びる首部14と、首部14から延びる棒状握り部16とを備え、前記棒状握り部16の前端部には中間部周方向凸部17が設けられ、後端部には後端部周方向凸部18が設けられている。
突起毛13aと突起13cの仕様は下記の通りである。
突起毛13a
数:23
直径:2mm
長さ:4,5,6mm
硬さ:3.6N/cm2
突起13c
数:2
直径:4mm
長さ:4mm
硬さ:85N/cm2 より大きい
【0030】
棒状握り部16の中間部周方向凸部17近くには滑り止めとしてゴム部材部分19が部分縞状に埋め込まれている。ブラシ部12は、図4に示すように首部24の先端に形成された板状のブラシ固定部25に差し込み等により装着される。ブラシ部12は着脱自在に設けられており、ブラシ部12が汚れたり破損した場合、簡単に交換することができる。
【0031】
ブラシ部12は、装着状態でブラシ固定部25を覆う基部12aと一体に、複数の突起毛13a,突起13cを例えばシリコンゴム等の低反発弾性材料を用いて一体成形したものである。各突起毛13aの頭部及び突起13cの頭部は全て半球状に形成されているが、マッサージ用ジェルが溜まり易く、隅々までマッサージ効果を得られるように、高さは一定ではない。
【0032】
また、複数の突起毛13aは柔らかく、突起13cは突起毛13aに比較して硬く、座屈しにくくなっている。これは、突起毛13aが小径で、突起13cが大径であることによる。
【0033】
複数の突起毛13aは、図3及び図5に示すように基部12aの外周囲に沿うように形成され、図5から明らかなように環状の列になっている。但し、突起毛13aによる環状列は、図6及び図7に示すように高低差がある。環状に且つ列状に形成された突起毛13aの内側には、突起毛13aに囲まれるようにして2個の突起13cが形成されている。
【0034】
突起13cの高さは、図6及び図7から明らかなように、突起毛13aの高さに比較して低く形成されている。従って、ブラシ部2のブラシ面には、図6に点線Xで、図7に点線Yで示すような凹状空間が形成される。
【0035】
次に、前記構成の歯茎マッサージ用ブラシ10の使用方法を説明する。
歯茎のマッサージを行う場合、ブラシ部12の突起毛13a,突起13cを歯茎の側面に当て付け、左右(必要ならば上下)に摺動する。この際、歯頬部に近い辺縁部には柔らかい突起毛13aを接触させ、その下部(下歯茎の場合)にある付着歯肉には突起13cを強く接触させる。従って、歯茎表面の柔らかな辺縁部は、硬度が低く柔らかい突起毛13aによってマッサージされることになり、それ以外の歯茎表面は突起13cによってマッサージされることになる。したがって、歯茎の柔らかな辺縁部はマッサージによっても傷つくことがなく、歯肉炎でも痛くない。
【0036】
また、前記のように、突起13cは直径が大きく、頭部が半球形に形成されているので、歯茎表面に刺激なく接触することになり、歯茎の痛みもなく、充分にマッサージすることができ、血流促進ができる。
【0037】
なお、歯茎マッサージ時に、マッサージ用ジェルを使用することで、歯茎の血流をより向上させることができる。
【0038】
この場合、突起毛13aの内側にマッサージ用ジェルを保持するのであるが、ブラシ部12には、点線X,Yで示したような凹状空間に充填されるので、適量(0.2〜1ml)であればブラシ部12から垂れ落ちることはない。しかも、突起毛13aは隙間を塞ぐように分散して配設されているので、各突起毛13a間の隙間からマッサージ用ジェルが垂れ落ちるのを防止することができる。従って、マッサージ用ジェルを無駄遣いすることなく、良好な歯茎マッサージを行い得る。
【0039】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は前記に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、突起毛13aの高さを互い違いとしたり、部分的に高低差を設けて形成してもよい。また、突起毛13aの直径を変えてもよい。更に、突起13cの数は、2個に限定されるものではなく、1個又は3個以上であってもよい。突起13cについては、平面形状が楕円形であってもよい。
【0040】
また、突起毛13aと突起13cとを材質を変えることにより硬さを変えてもよい。例えば、突起毛13aを軟質材料で形成し、突起13cを硬質材料で形成してもよい。
【0041】
実施例
前記歯茎マッサージ用ブラシ10は、ナイロン製の市販ブラシに比較して突起毛13a及び突起13cが柔らかいため、歯茎を傷つけにくいという効果がある。この効果を具体的に確認するため、本実施形態に係る歯茎マッサージ用ブラシと市販歯ブラシとを比較するための試験を行った。
【0042】
[試験方法]
図8に示すように、前記ブラシ部12及び市販歯ブラシのブラシ部分を板31に固定し、板31は圧力ゲージ(オートグラフ)32の下端に固定した。そして、ブラシ部12の下部において、完熟トマト33を振とう機34に固定し、60rpmで横方向に往復動を行うように構成した。
【0043】
この方法によれば、圧力ゲージ32を下降させることにより、ブラシ部12が完熟トマト33に当接し、振とう機34を駆動することによりブラッシングが行われる。この際、上からの圧力が一定(3.0N)になる位置でブラシ部12を固定し、完熟トマト33を一定の速度(60rpm)で往復動させて60秒間ブラッシングを行い、完熟トマト33の表面に傷がつくまでの回数を計測した。
【0044】
試験に用いたブラシは下記の通りである。
実施例1
本実施形態で示した歯茎マッサージ用ブラシ
突起毛13aと突起13cの仕様は下記の通りである。
突起毛13a
材質:シリコンゴム(硬度20度)
数:23
直径:2mm
長さ:4,5,6mm
硬さ:3.6N/cm2
突起13c
材質:シリコンゴム(硬度20度)
数:2
直径:4mm
長さ:4mm
硬さ:85N/cm2 より大きい
【0045】
実施例2
実施例1の歯茎マッサージ用ブラシに変えて、突起毛13a及び突起13cをスチレン系エラストマー(水添型スチレンイソプレン共重合体(硬度20度)/「セプトンコンパウンド(クラレプラスチックス株式会社製)」)で成形した歯茎マッサージ用ブラシを用いた。なお、突起毛13a及び突起13cの材料と硬さ以外の仕様は実施例1と同じである。
【0046】
比較例1 デントヘルス歯ブラシ やわらかめ(ライオン株式会社製)
比較例2 GUMデンタルブラシ#166ウルトラソフト(サンスター株式会社製)
【0047】
[試験結果]
ブラッシングの結果を表2及び図9〜図12に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
実施例1の歯茎マッサージ用ブラシの場合、60回のブラッシングを行っても、図9及び図12(a)に示すように完熟トマト33表面は無傷であった。比較例1の歯ブラシの場合、図10及び図12(b)に示すような傷Saが12回目に形成された。比較例2の歯ブラシの場合、図11及び図12(c)に示すような傷Sbが39回目に形成された。
【0050】
実施例2の歯茎マッサージ用ブラシの場合、60回のブラッシングを行っても、完熟トマト33表面は無傷であった。トマトの状態は、図9及び図12(a)に示したものと同じであった。
【0051】
この結果から、突起毛13a及び突起13cの材質をシリコンゴム(硬度20度)からスチレン系エラストマー(硬度20度)に変更しても、トマトブラッシング時に傷は見られないので、シリコンゴム製の突起毛13a及び突起13cを有するブラシと同様に歯茎を傷つけにくいと考えられる。
【0052】
実施例1の歯茎マッサージ用ブラシの硬さについて、下記の試験を行った。
[試験方法]
試験は、JIS S−3016に示されている方法に準じて行った。
突起毛の長さを約7mmに切り揃えてプレート上に四角形状に均等に貼り付け、このプレートを固定して10mm/minの速度で荷重を加え、デジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製)にて座屈時の荷重を求めた。
なお、表3に一般的な歯ブラシの硬さ区分を示す。
【0053】
【表3】
【0054】
[試料]
(1)周囲の突起毛(φ2mm)
突起毛の材質:シリコンゴム(硬度20度)
突起毛の長さ:7mm
植設部の面積:1cm2
突起毛の断面積合計:0,50cm2 (突起毛本数16本)
(2)中央の突起(φ4mm)
突起の材質:シリコンゴム(硬度20度)
突起の長さ:7mm
植設部の面積:1cm2
突起の断面積合計:0.50cm2 (突起本数4本)
【0055】
実施例2の歯茎マッサージ用ブラシの硬さについても、実施例1と同様の試験を行った。試験方法は実施例1と同じである。
実施例2の試料は、突起毛13a及び突起13cの材質がスチレン系エラストマーである以外は、実施例1と同じである。
測定結果を表4に示す。なお、表4の結果は、3個の試料の測定値の平均値である。
【0056】
【表4】
【0057】
実施例1,2とも、中央の突起、即ち本実施形態における突起13cは座屈せず、一般的なブラシ圧(200〜300g程度)では全く座屈しない。また、「硬め」のブラシの基準である75(85)Nを超えても座屈は見られない。
【0058】
一方、周囲の突起毛、即ち本実施形態における突起毛13aは、「柔らかめ」の基準である60N/cm2を大きく下回っている。
【0059】
次に、マッサージケアの血流促進効果の評価について説明する。
[試験方法]
歯茎マッサージを行う前と、本発明実施形態の歯茎マッサージ用ブラシを用いてマッサージを行った後の血流量をレーザードップラー血流計で測定した。座位にて3分間のマッサージを行い、マッサージ後のすすぎは行わず、吐き出しのみとした。
被験者は椅子に座って開口状態かつ鼻呼吸を保ち、プローブを右側犬歯と第一臼歯の間の歯間乳頭部に垂直に当て、振幅が安定してから30秒間の値を記録した。血流量の測定値から、安静時(定常時)の血流量を100%として血流上昇率を算出した。
【0060】
マッサージ用ジェルの物性、性状は下記の通りである。
[外観] 無色透明の粘調なジェル状
[pH] 約6.7(中性)
[粘度] 約1100mPa・s
条件:20℃、B型粘度計(東機産業株式会社製RB80H型)、
H4ローター、50rpm
[組成]
表1における処方例1
【0061】
[歯茎マッサージ用ブラシによる血流促進効果の評価]
結果を表5及び図13に示す。
3分間のマッサージ後、図13に示すように一時的な血流量の低下が見られたが、すぐに回復し、血流量の上昇が見られた。一方、マッサージ用ジェル使用時(0.5ml使用)は、表5及び図13に示すようにマッサージ直後から血流量の増加が見られ、歯茎マッサージ用ブラシのみのマッサージと比較して、血流値の増加が顕著であった。
【0062】
【表5】
【0063】
図13において、特性laは表5に示した定常状態の数値データを表したものであり、血流に変化は表れない。特性lbは、表5に示した歯茎マッサージ用ブラシの数値データを表したものであり、血流は一旦低下した後、上昇している。特性lcは、表5に示した歯茎マッサージ用ブラシとマッサージ用ジェルとを併用した数値データを表したものであり、マッサージ直後から血流値が上昇していることを示している。
【0064】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は前記に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、突起毛13aの直径を変えてもよい。更に、突起13cの数は、2個に限定されるものではなく、1個又は3個以上であってもよい。突起13cについては、平面形状が楕円形であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 歯茎マッサージ用ブラシ
12 ブラシ部
12a 基部
13 複数種の突起
13a 突起毛
13c 突起
14 首部
16 棒状握り部
25 ブラシ固定部
31 板
32 圧力ゲージ
33 完熟トマト
34 振とう機
Sa,Sb 完熟トマトの傷
la,lb,lc 特性
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯茎を傷つけることなく充分にマッサージを行い得るように構成した歯茎マッサージ用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯茎マッサージ用ブラシは、長手状の把持部の一方の端部にブラシ部を装着した構成になっている。ブラシ部には、下記特許文献1に開示されているように、板状部の上下両面に複数の凸部を形成したものがある。ブラシ部の上面には、幅方向に一定間隔で凸部が形成され、ブラシ部を歯茎の側面に接触させた状態で軸方向に動かすことで、歯茎を横方向からマッサージするようになっている。
【0003】
また、ブラシ部の下面には、長手方向に一定間隔で離間した凸部が形成され、ブラシ部を歯茎の側面に接触させた状態で縦方向に動かすことで、歯茎を縦方向からマッサージするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−70043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記構成の歯茎マッサージ用ブラシは、歯茎に直接接触してマッサージする部分、即ちブラシ部に一定間隔で凸部を形成した構成であるが、各凸部の硬さは一定である。
【0006】
一方、人間の歯茎は個人差がありその硬さにも違いがあり、例えば、歯頬部に近い辺縁歯肉は柔らかく、根元に近い付着歯肉は比較的硬くなっている。従って、前記マッサージ用ブラシで歯茎のマッサージを行うと、前記辺縁歯肉をマッサージする際に痛みを感じたり、傷つける恐れがある。また、歯肉炎は辺縁歯肉に生じることが多いため、歯肉の炎症を悪化させる一因ともなる。そして、辺縁歯肉を傷つけないように、前記マッサージ用ブラシの各凸部を柔らかくすれば、硬い付着歯肉部において充分なマッサージ効果が得られなくなるという問題が生じる。
【0007】
前記特許文献1の図8及び図9には、比較的背の低い略半球状凸部と比較的背の高い略針状凸部の2種類の凸部を有するブラシ部の構成が開示されているが、略半球状凸部は周囲を完全に囲繞されていないので、硬い略半球状の凸部が歯茎の辺縁歯肉に接して痛みを与えたり、歯肉を傷つけるおそれがあるので充分なマッサージができない。また、炎症部位に過度な圧力が加わり、炎症を悪化させる原因にもなる。特に、炎症を起こし、そのために痛みを感じ易くなっている辺縁歯肉部を、上記マッサージ用ブラシでマッサージを行うと、歯肉を傷付けて歯肉の退縮を引き起こしたり痛みを感じたりするので充分なマッサージができない。
【0008】
また、前記ブラシ部は、軸部にバネ部を介して取付けられているが、バネ部の弾性だけでは歯茎への接触具合を調整するのは困難である。また、軸部やバネ部の構成が複雑になる等の問題もある。
【0009】
一方、マッサージを行う際に、マッサージ用ジェルを併用すると、歯肉の血液循環が改善することが知られているが、前記凸部の形状ではマッサージ用ジェルをブラシ面に溜めにくい。即ち、前記凸部は、板状部の表面に一定間隔で複数の凸状部を並べて形成したものであるから、各凸部間に浅い谷部ができるだけである。このため、マッサージ用ジェルは、ブラシ部の表面に形成された浅い谷部に溜められるだけであり、マッサージ時に垂れやすい、といった問題がある。
【0010】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、辺縁歯肉等の歯茎の柔らかい部位などを傷つけることなく、また歯肉炎等により炎症が生じている部位に痛みを感じることなく、充分にマッサージできる上に、マッサージ用ジェルを用いて良好な歯茎マッサージを行い得るように構成した歯茎マッサージ用ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の前記目的は、下記構成により達成される。
(1) 長手状に形成された把持部の端部に歯茎をマッサージするブラシ部を設けた歯茎マッサージ用ブラシであって、
前記ブラシ部は、平面部に直立状に低反発弾性材料からなり頭部が曲面である複数の突起毛を環状に形成されるとともに、前記環状に形成された突起毛列の内側に、頭部が曲面であり前記突起毛よりも高さが低い突起を形成され、前記突起毛が前記突起よりも軟らかいことを特徴とする歯茎マッサージ用ブラシ。
【0012】
(2) 前記ブラシ部は、前記突起毛の高さが異なることにより、マッサージ用ジェルを保持するための凹状空間が形成されていることを特徴とする前記(1)記載の歯茎マッサージ用ブラシ。
【0013】
(3) 前記低反発弾性材料がシリコンゴム又はスチレン系エラストマーであることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の歯茎マッサージ用ブラシ。
【0014】
前記(1)の歯茎マッサージ用ブラシによれば、ブラシ部の一平面部に直立状に突起毛を環状に形成するとともに、前記突起毛の内側に突起毛よりも高さが低い突起を形成したものである。しかも、突起毛の硬さは突起の硬さに比較して低く設定されているので、柔らかくなっている。このため、歯茎マッサージを行う際、外側の突起毛が歯肉の柔らかな辺縁部等に接触するので辺縁部を傷つけることがなく、歯肉炎を罹患していても充分にマッサージができ、歯茎の比較的硬い部分は突起毛の内側の前記突起によりマッサージされる。
【0015】
前記(2)の構成によれば、前記突起毛と前記突起との高低差によって、前記突起毛に囲まれた凹状の空間が形成される。従って、前記凹状空間に充分なマッサージ用ジェルを保持してマッサージを行うことができる。
【0016】
前記(3)の構成によれば、前記ブラシ部全体が軟質のシリコンゴム又はスチレン系エラストマーにより形成されているので、歯茎を傷つけることがなく充分にマッサージを行うことができ、更にマッサージ時に痛さを感じることがなく、安心感が得られる。
【0017】
ここで、本発明に用いられる低反発弾性材料としては、シリコンゴムが挙げられ、シリコンゴムとしては、天然ゴムや合成ゴムと同様にロール作業で可塑化させて形成されるミラブル型、例えば、ビニルメチルシリコンゴム、フェニルメチルシリコンゴム、フルオロシリコンゴム等が挙げられる。この他にも、低粘度の液状で、室温又は加熱により硬化してゴム形状となる液状シリコン、例えば、縮合型シリコン、付加型シリコン等が挙げられる。この他に熱可塑性エラストマーを用いることができ、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系、塩ビ系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ニトリル系、ポリアミド系、フッ素系、塩素化ポリエチレン系、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイ系、エステルハロゲン系ポリマー系などから挙げられる。これらの中でも、ビニルメチルシリコンゴム、スチレン系エラストマーが柔軟性を付与でき、薬剤や劣化に耐性があることから好ましい。また、柔軟性などを向上させるため可塑剤を添加しても良い。ここでスチレン系エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体、部分水添スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン(エチレン−エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0018】
更には、低反発弾性材料からなる突起毛の硬さとして、1〜20N/cm2とするのが、歯茎への刺激をより抑制できるので好ましい。ここで、毛の硬さとは、後述のとおり日本工業規格の「歯ブラシ」にある圧縮試験機を用いる方法(JIS S3016)に準じて測定されるものである。
本発明における突起毛の仕様は下記であることが好ましい。
数:6〜90
直径:0.8〜2.0mm
長さ:3〜10mm
硬さ:1〜20N/cm2
また、本発明における突起の仕様は下記であることが好ましい。
数:1〜8
直径:2.0〜5mm
長さ:1〜8mm
硬さ:50N/cm2 より大きい
【0019】
ここで、本発明の歯茎マッサージ用ブラシと一緒に用いると好ましいマッサージ用ジェルについて詳述する。
【0020】
本発明に用いられるマッサージ用ジェルは、以下の各種成分から成り、20℃条件下で20〜4000mPa、好ましくは50〜2000mPaの粘性を有するように調製されている。
【0021】
ここでの粘性は、液温20℃条件下での測定値であり、例えば、RB80H型粘度計(東機産業社製)で測定することができる。
【0022】
用いられる各種成分としては、例えば、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、イソプロピルメチルフェノール、塩化リゾチーム、デキストラナーゼ、ムタステイン、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、酢酸トコフェロール、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩などの有効成分、精製水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の溶剤、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、寒天、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム等の増粘剤、POEアルキルエーテル、POE硬化ヒマシ油、POE・POP共重合体、ラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤、サッカリンナトリウム、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、メントール、ミントなどの香味剤、安息香酸ナトリウム、パラベン等の防腐剤、クエン酸、リン酸ナトリウム等のPH調整剤、色素、香料等が挙げられる。
【0023】
以下の表1に、本発明に用いられる歯茎マッサージ剤の処方例1〜4を示す。(質量%にて表示)
【0024】
【表1】
【発明の効果】
【0025】
以上に説明したように、本発明によれば、歯茎マッサージ用ブラシのブラシ部全体をシリコンゴム、スチレン系エラストマー等の低反発弾性材料で形成するとともに、ブラシ部の外側に形成された突起毛の硬さをその内側に形成された突起に比較して柔らかめに設定した。これにより、突起毛は、マッサージ時に歯茎の柔らかい辺縁部等に接触するので、辺縁部を傷付ける恐れがない。また、歯茎の比較的硬い付着歯肉部分は、頭部が曲面状の突起によりマッサージされるので、充分なマッサージ効果を得ることができる。また、歯肉の血流促進効果を得ることができる。
【0026】
更に、突起毛の高さに比較して突起の高さを低くしたので、ブラシ部に凹状の空間が形成され、この空間にマッサージ用ジェルを充分に保持してマッサージを行うことができる。マッサージ用ジェルを併用してマッサージを行うことにより、マッサージ効果、及び歯肉の血流促進効果が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態を示す歯茎マッサージ用ブラシの斜視図である。
【図2】歯茎マッサージ用ブラシの構成を示す側面図である。
【図3】ブラシ部の構成を示す斜視図である。
【図4】ブラシ部の着脱構成を示す斜視図である。
【図5】ブラシ部の構成を示す平面図である。
【図6】図5のA−A矢視断面図である。
【図7】図5のB−B矢視断面図である。
【図8】完熟トマトを使ったブラッシング試験の方法を示す模式図である。
【図9】完熟トマトに傷が発生しなかった形態を示す写真である。
【図10】完熟トマトに傷が発生した形態を示す写真である。
【図11】完熟トマトに傷が発生した他の形態を示す写真である。
【図12】(a)、(b)、(c)は図9〜図11に示したトマトの側面図である。
【図13】マッサージによる血流変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る歯茎マッサージ用ブラシの斜視図、図2は歯茎マッサージ用ブラシの側面図、図3はブラシ部の構成を示す斜視図、図4はブラシ部の着脱を示す斜視図、図5はブラシ部の構成を示す平面図、図6は図5のA−A矢視断面図、図7は図5のB−B矢視断面図、図8はトマトを使ったブラッシング試験の方法を示す模式図、図9は試験に用いられたトマトの側面写真、図10及び図11はトマトの傷付き状態を示すトマトの側面写真、図12(a)(b)(c)は図9〜図11の写真の内容を表すトマトの側面図、図13はマッサージによる血流値の変化を示す特性図である。
【0029】
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態である歯茎マッサージ用ブラシ10は、低反発弾性材料からなる複数の突起毛13aと複数の突起13cとからなる複数種の突起13を形成したブラシ部12と、ブラシ部12に接続して延びる首部14と、首部14から延びる棒状握り部16とを備え、前記棒状握り部16の前端部には中間部周方向凸部17が設けられ、後端部には後端部周方向凸部18が設けられている。
突起毛13aと突起13cの仕様は下記の通りである。
突起毛13a
数:23
直径:2mm
長さ:4,5,6mm
硬さ:3.6N/cm2
突起13c
数:2
直径:4mm
長さ:4mm
硬さ:85N/cm2 より大きい
【0030】
棒状握り部16の中間部周方向凸部17近くには滑り止めとしてゴム部材部分19が部分縞状に埋め込まれている。ブラシ部12は、図4に示すように首部24の先端に形成された板状のブラシ固定部25に差し込み等により装着される。ブラシ部12は着脱自在に設けられており、ブラシ部12が汚れたり破損した場合、簡単に交換することができる。
【0031】
ブラシ部12は、装着状態でブラシ固定部25を覆う基部12aと一体に、複数の突起毛13a,突起13cを例えばシリコンゴム等の低反発弾性材料を用いて一体成形したものである。各突起毛13aの頭部及び突起13cの頭部は全て半球状に形成されているが、マッサージ用ジェルが溜まり易く、隅々までマッサージ効果を得られるように、高さは一定ではない。
【0032】
また、複数の突起毛13aは柔らかく、突起13cは突起毛13aに比較して硬く、座屈しにくくなっている。これは、突起毛13aが小径で、突起13cが大径であることによる。
【0033】
複数の突起毛13aは、図3及び図5に示すように基部12aの外周囲に沿うように形成され、図5から明らかなように環状の列になっている。但し、突起毛13aによる環状列は、図6及び図7に示すように高低差がある。環状に且つ列状に形成された突起毛13aの内側には、突起毛13aに囲まれるようにして2個の突起13cが形成されている。
【0034】
突起13cの高さは、図6及び図7から明らかなように、突起毛13aの高さに比較して低く形成されている。従って、ブラシ部2のブラシ面には、図6に点線Xで、図7に点線Yで示すような凹状空間が形成される。
【0035】
次に、前記構成の歯茎マッサージ用ブラシ10の使用方法を説明する。
歯茎のマッサージを行う場合、ブラシ部12の突起毛13a,突起13cを歯茎の側面に当て付け、左右(必要ならば上下)に摺動する。この際、歯頬部に近い辺縁部には柔らかい突起毛13aを接触させ、その下部(下歯茎の場合)にある付着歯肉には突起13cを強く接触させる。従って、歯茎表面の柔らかな辺縁部は、硬度が低く柔らかい突起毛13aによってマッサージされることになり、それ以外の歯茎表面は突起13cによってマッサージされることになる。したがって、歯茎の柔らかな辺縁部はマッサージによっても傷つくことがなく、歯肉炎でも痛くない。
【0036】
また、前記のように、突起13cは直径が大きく、頭部が半球形に形成されているので、歯茎表面に刺激なく接触することになり、歯茎の痛みもなく、充分にマッサージすることができ、血流促進ができる。
【0037】
なお、歯茎マッサージ時に、マッサージ用ジェルを使用することで、歯茎の血流をより向上させることができる。
【0038】
この場合、突起毛13aの内側にマッサージ用ジェルを保持するのであるが、ブラシ部12には、点線X,Yで示したような凹状空間に充填されるので、適量(0.2〜1ml)であればブラシ部12から垂れ落ちることはない。しかも、突起毛13aは隙間を塞ぐように分散して配設されているので、各突起毛13a間の隙間からマッサージ用ジェルが垂れ落ちるのを防止することができる。従って、マッサージ用ジェルを無駄遣いすることなく、良好な歯茎マッサージを行い得る。
【0039】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は前記に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、突起毛13aの高さを互い違いとしたり、部分的に高低差を設けて形成してもよい。また、突起毛13aの直径を変えてもよい。更に、突起13cの数は、2個に限定されるものではなく、1個又は3個以上であってもよい。突起13cについては、平面形状が楕円形であってもよい。
【0040】
また、突起毛13aと突起13cとを材質を変えることにより硬さを変えてもよい。例えば、突起毛13aを軟質材料で形成し、突起13cを硬質材料で形成してもよい。
【0041】
実施例
前記歯茎マッサージ用ブラシ10は、ナイロン製の市販ブラシに比較して突起毛13a及び突起13cが柔らかいため、歯茎を傷つけにくいという効果がある。この効果を具体的に確認するため、本実施形態に係る歯茎マッサージ用ブラシと市販歯ブラシとを比較するための試験を行った。
【0042】
[試験方法]
図8に示すように、前記ブラシ部12及び市販歯ブラシのブラシ部分を板31に固定し、板31は圧力ゲージ(オートグラフ)32の下端に固定した。そして、ブラシ部12の下部において、完熟トマト33を振とう機34に固定し、60rpmで横方向に往復動を行うように構成した。
【0043】
この方法によれば、圧力ゲージ32を下降させることにより、ブラシ部12が完熟トマト33に当接し、振とう機34を駆動することによりブラッシングが行われる。この際、上からの圧力が一定(3.0N)になる位置でブラシ部12を固定し、完熟トマト33を一定の速度(60rpm)で往復動させて60秒間ブラッシングを行い、完熟トマト33の表面に傷がつくまでの回数を計測した。
【0044】
試験に用いたブラシは下記の通りである。
実施例1
本実施形態で示した歯茎マッサージ用ブラシ
突起毛13aと突起13cの仕様は下記の通りである。
突起毛13a
材質:シリコンゴム(硬度20度)
数:23
直径:2mm
長さ:4,5,6mm
硬さ:3.6N/cm2
突起13c
材質:シリコンゴム(硬度20度)
数:2
直径:4mm
長さ:4mm
硬さ:85N/cm2 より大きい
【0045】
実施例2
実施例1の歯茎マッサージ用ブラシに変えて、突起毛13a及び突起13cをスチレン系エラストマー(水添型スチレンイソプレン共重合体(硬度20度)/「セプトンコンパウンド(クラレプラスチックス株式会社製)」)で成形した歯茎マッサージ用ブラシを用いた。なお、突起毛13a及び突起13cの材料と硬さ以外の仕様は実施例1と同じである。
【0046】
比較例1 デントヘルス歯ブラシ やわらかめ(ライオン株式会社製)
比較例2 GUMデンタルブラシ#166ウルトラソフト(サンスター株式会社製)
【0047】
[試験結果]
ブラッシングの結果を表2及び図9〜図12に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
実施例1の歯茎マッサージ用ブラシの場合、60回のブラッシングを行っても、図9及び図12(a)に示すように完熟トマト33表面は無傷であった。比較例1の歯ブラシの場合、図10及び図12(b)に示すような傷Saが12回目に形成された。比較例2の歯ブラシの場合、図11及び図12(c)に示すような傷Sbが39回目に形成された。
【0050】
実施例2の歯茎マッサージ用ブラシの場合、60回のブラッシングを行っても、完熟トマト33表面は無傷であった。トマトの状態は、図9及び図12(a)に示したものと同じであった。
【0051】
この結果から、突起毛13a及び突起13cの材質をシリコンゴム(硬度20度)からスチレン系エラストマー(硬度20度)に変更しても、トマトブラッシング時に傷は見られないので、シリコンゴム製の突起毛13a及び突起13cを有するブラシと同様に歯茎を傷つけにくいと考えられる。
【0052】
実施例1の歯茎マッサージ用ブラシの硬さについて、下記の試験を行った。
[試験方法]
試験は、JIS S−3016に示されている方法に準じて行った。
突起毛の長さを約7mmに切り揃えてプレート上に四角形状に均等に貼り付け、このプレートを固定して10mm/minの速度で荷重を加え、デジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製)にて座屈時の荷重を求めた。
なお、表3に一般的な歯ブラシの硬さ区分を示す。
【0053】
【表3】
【0054】
[試料]
(1)周囲の突起毛(φ2mm)
突起毛の材質:シリコンゴム(硬度20度)
突起毛の長さ:7mm
植設部の面積:1cm2
突起毛の断面積合計:0,50cm2 (突起毛本数16本)
(2)中央の突起(φ4mm)
突起の材質:シリコンゴム(硬度20度)
突起の長さ:7mm
植設部の面積:1cm2
突起の断面積合計:0.50cm2 (突起本数4本)
【0055】
実施例2の歯茎マッサージ用ブラシの硬さについても、実施例1と同様の試験を行った。試験方法は実施例1と同じである。
実施例2の試料は、突起毛13a及び突起13cの材質がスチレン系エラストマーである以外は、実施例1と同じである。
測定結果を表4に示す。なお、表4の結果は、3個の試料の測定値の平均値である。
【0056】
【表4】
【0057】
実施例1,2とも、中央の突起、即ち本実施形態における突起13cは座屈せず、一般的なブラシ圧(200〜300g程度)では全く座屈しない。また、「硬め」のブラシの基準である75(85)Nを超えても座屈は見られない。
【0058】
一方、周囲の突起毛、即ち本実施形態における突起毛13aは、「柔らかめ」の基準である60N/cm2を大きく下回っている。
【0059】
次に、マッサージケアの血流促進効果の評価について説明する。
[試験方法]
歯茎マッサージを行う前と、本発明実施形態の歯茎マッサージ用ブラシを用いてマッサージを行った後の血流量をレーザードップラー血流計で測定した。座位にて3分間のマッサージを行い、マッサージ後のすすぎは行わず、吐き出しのみとした。
被験者は椅子に座って開口状態かつ鼻呼吸を保ち、プローブを右側犬歯と第一臼歯の間の歯間乳頭部に垂直に当て、振幅が安定してから30秒間の値を記録した。血流量の測定値から、安静時(定常時)の血流量を100%として血流上昇率を算出した。
【0060】
マッサージ用ジェルの物性、性状は下記の通りである。
[外観] 無色透明の粘調なジェル状
[pH] 約6.7(中性)
[粘度] 約1100mPa・s
条件:20℃、B型粘度計(東機産業株式会社製RB80H型)、
H4ローター、50rpm
[組成]
表1における処方例1
【0061】
[歯茎マッサージ用ブラシによる血流促進効果の評価]
結果を表5及び図13に示す。
3分間のマッサージ後、図13に示すように一時的な血流量の低下が見られたが、すぐに回復し、血流量の上昇が見られた。一方、マッサージ用ジェル使用時(0.5ml使用)は、表5及び図13に示すようにマッサージ直後から血流量の増加が見られ、歯茎マッサージ用ブラシのみのマッサージと比較して、血流値の増加が顕著であった。
【0062】
【表5】
【0063】
図13において、特性laは表5に示した定常状態の数値データを表したものであり、血流に変化は表れない。特性lbは、表5に示した歯茎マッサージ用ブラシの数値データを表したものであり、血流は一旦低下した後、上昇している。特性lcは、表5に示した歯茎マッサージ用ブラシとマッサージ用ジェルとを併用した数値データを表したものであり、マッサージ直後から血流値が上昇していることを示している。
【0064】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は前記に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、突起毛13aの直径を変えてもよい。更に、突起13cの数は、2個に限定されるものではなく、1個又は3個以上であってもよい。突起13cについては、平面形状が楕円形であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 歯茎マッサージ用ブラシ
12 ブラシ部
12a 基部
13 複数種の突起
13a 突起毛
13c 突起
14 首部
16 棒状握り部
25 ブラシ固定部
31 板
32 圧力ゲージ
33 完熟トマト
34 振とう機
Sa,Sb 完熟トマトの傷
la,lb,lc 特性
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手状に形成された把持部の端部に歯茎をマッサージするブラシ部を設けた歯茎マッサージ用ブラシであって、
前記ブラシ部は、平面部に直立状に低反発弾性材料からなり頭部が曲面である複数の突起毛を環状に形成されるとともに、前記環状に形成された突起毛列の内側に、頭部が曲面であり前記突起毛よりも高さが低い突起を形成され、前記突起毛が前記突起よりも軟らかいことを特徴とする歯茎マッサージ用ブラシ。
【請求項2】
前記ブラシ部は、前記突起毛の高さが異なることにより、マッサージ用ジェルを保持するための凹状空間が形成されていることを特徴とする請求項1記載の歯茎マッサージ用ブラシ。
【請求項3】
前記低反発弾性材料がシリコンゴム又はスチレン系エラストマーであることを特徴とする請求項1又は2記載の歯茎マッサージ用ブラシ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の歯茎マッサージ用ブラシとマッサージ用ジェルとを用いて歯茎をマッサージすることを特徴とする歯茎マッサージ方法。
【請求項1】
長手状に形成された把持部の端部に歯茎をマッサージするブラシ部を設けた歯茎マッサージ用ブラシであって、
前記ブラシ部は、平面部に直立状に低反発弾性材料からなり頭部が曲面である複数の突起毛を環状に形成されるとともに、前記環状に形成された突起毛列の内側に、頭部が曲面であり前記突起毛よりも高さが低い突起を形成され、前記突起毛が前記突起よりも軟らかいことを特徴とする歯茎マッサージ用ブラシ。
【請求項2】
前記ブラシ部は、前記突起毛の高さが異なることにより、マッサージ用ジェルを保持するための凹状空間が形成されていることを特徴とする請求項1記載の歯茎マッサージ用ブラシ。
【請求項3】
前記低反発弾性材料がシリコンゴム又はスチレン系エラストマーであることを特徴とする請求項1又は2記載の歯茎マッサージ用ブラシ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の歯茎マッサージ用ブラシとマッサージ用ジェルとを用いて歯茎をマッサージすることを特徴とする歯茎マッサージ方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−51795(P2010−51795A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180870(P2009−180870)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】
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