説明

歯車ポンプ又はモータ

【課題】互いに噛み合わせてなるはすば歯車をそれぞれ利用した駆動歯車及び従動歯車からなる歯車対と、この歯車対を収納する歯車収納室を内部に有するとともに前記駆動歯車を軸支する駆動軸及び前記従動歯車を軸支する従動軸を収納するための軸受孔を有するケーシングと、前記歯車対の各歯車の両側面に添接する側板とを具備する歯車ポンプ又はモータにおいて、簡単な構造により大きなスラスト作用が側板にかかることを防ぐことができるようにする。
【解決手段】駆動軸4及び従動軸5の運転時に発生するスラスト作用が向かう側の端面すなわち後端面4b、5bと、これら駆動軸4及び従動軸5の後端面4b、5bに対向する面である軸受挿入穴14x、14yの底面14x1、14y1との間に、前記駆動軸4及び従動軸5の前記後端面4b、5bに接触しスラスト荷重を支持するスラスト軸受8を配している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はすば歯車を利用した駆動歯車と従動歯車とを互いに噛み合わせてなる外接歯車対を備え、この外接歯車対をケーシング内部の歯車収納室に収納してなる歯車ポンプ又はモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動歯車と従動歯車とを互いに噛み合わせてなる外接歯車対を備え、この外接歯車対をケーシング内部の歯車収納室に収納してなる歯車ポンプ又はモータにおいて、駆動歯車と従動歯車は直歯が主流で周囲の歯は軸芯に平行な歯が形成されたものである。この直歯同士が噛合う場合、その噛合い点が歯幅全域で同時的に行われ、その連続波動的な噛合いとなり、振動や騒音の原因となっている。この問題を解決すべく駆動歯車と従動歯車にはすば歯車を採用する工夫が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような歯車ポンプ又はモータは、例えば、以下に示すような構成を有する。すなわち、この歯車ポンプPPは、図4に示すように、歯車収納室X11aを内部に有するケーシングX1と、このケーシングX1の歯車収納室X11a内に収納保持され互いに噛み合わせてなる外接歯車対、すなわち駆動歯車X2及び従動歯車X3と、各歯車X2、X3の両側面X2a、X3aにそれぞれ添接する前側板X61及び後側板X62とを具備する。
【0004】
駆動歯車X2及び従動歯車X3は、複数の歯体を外周面に沿って所定間隔で設けた周知のはすば歯車である。ここで、これら駆動歯車X2と従動歯車X3の歯は、これらを噛み合わせた状態で歯車ポンプとして作動させる際に、これらの間の噛合部から、駆動歯車X2は後方に向かう作用、従動歯車X3は前方に向かう作用をそれぞれ受けるように構成している。本実施形態では、前記駆動歯車X2の中心から駆動軸X4を回転軸方向に一体に延伸させて設けているとともに、従動歯車X3から従動軸X5を回転軸方向に一体に延伸させて設けている。
【0005】
ケーシングX1は、前記歯車収納室X11aを有するボディX11と、歯車収納室X11aの一開口面を閉塞するカバーたるフロントカバーX12と、このフロントカバーX12と前記駆動歯車X2及び従動歯車X3との間に配してなり前記駆動軸X4及び従動軸X5をそれぞれ嵌入可能な軸受孔X13a、X13bを有するフロントベアリングケースX13と、歯車収納室X11aの他開口面を閉塞するカバーたるリアカバーX14と、このリアカバーX14と前記駆動歯車X2及び従動歯車X3との間に配してなり前記駆動軸X4及び従動軸X5がそれぞれ嵌入可能な軸受孔X15a、X15bを有するリアベアリングケースX15とを備えている。
【0006】
ボディX11には、その内部に前記歯車対すなわち駆動歯車X2及び従動歯車X3を噛合状態で収容する略眼鏡状の前記歯車収納室X11aを備えているとともに、この歯車収納室X11aの前方に前記フロントベアリングケースX13を、またこの歯車収納室X11aの後方に前記リアベアリングケースX15を収納するようにしている。また、ボディX11には、図示は省略しているが、前記駆動歯車X2と従動歯車X3との噛合部位に臨む位置に吸込口及び吐出口をそれぞれ開口させてある。そして、前記吸込口と前記歯車収納室11aとの間に、吸込通路を設けている。
【0007】
前記フロントカバーX12は、例えばボディX11にボルト等によって着脱可能に装着されて前記歯車収納室X11aの開口面を閉塞する。
【0008】
前記フロントベアリングケースX13は、上述したようにフロントカバーX12と前記駆動歯車X2及び従動歯車X3との間に配してなる。駆動軸X4を挿入すべき軸受孔X13aにはブッシュX7を嵌装し、このブッシュX7に前記駆動軸X4の前端部を挿入し回転可能に軸承している。一方、従動軸X5を挿入すべき軸受孔X13bにもブッシュX7を嵌装していて、このブッシュX7に前記従動軸X5の前端部を挿入し回転可能に軸承している。これら軸受孔X13a、X13bの断面形状は、その長手方向の全域にわたって同径の円形状である。
【0009】
前記リアベアリングケースX15は、上述したようにリアカバーX14と前記駆動歯車X2及び従動歯車X3との間に配してなる。駆動軸X4を挿入すべき軸受孔X15aにはブッシュX7を嵌装し、このブッシュX7に前記駆動軸X4の後端部を挿入し回転可能に軸承している。一方、従動軸X5を挿入すべき軸受孔X15bにもブッシュX7を嵌装していて、このブッシュX7に前記従動軸X5の後端部を挿入し回転可能に軸承している。これら軸受孔X15a、X15bの断面形状も、その長手方向の全域にわたって同径の円形状である。
【0010】
一方、前側板X61及び後側板X62は、それぞれ前記駆動歯車X2及び従動歯車X3の前側の側面X2a、X3a及び後側の側面X2b、X3bにそれぞれ添接させるべく配され、駆動歯車X2及び従動歯車X3の各側面X2a、X2b、X3a、X3bをそれぞれシールするためのものである。
【0011】
ここで、歯車ポンプまたはモータにおける歯車をはすば歯形の歯車とすることによって歯形同士の噛合い点はその歯幅全域において軸芯方向に順次移動し、なめらかな噛合いが行われることになる。そのため、上述したような振動や騒音発生といった問題は解消される。しかしながら、両歯車の噛合い時、歯形に作用する力によって軸芯方向に分力が発生し歯車全体にスラスト方向の力が発生する。このスラスト力と液圧によるスラスト力とが合成されることにより、駆動歯車及び従動歯車がそれぞれ異なるスラスト力を受ける。このスラスト力を直歯歯車を利用した従来の歯車ポンプ又はモータのリア側の側板が受けると側板の面圧が過大となり強度的に困難となるため、例えば、図4の構成では、これら駆動歯車X2及び従動歯車X3をそれぞれ軸支する駆動軸X4及び従動軸X5の後端面にバランスピストンX8を接触させ、高圧領域にポンプとして機能する場合の吐出側から作動液圧を導入し、側板に大きなスラスト圧が作用することを防ぐようにしている。
【0012】
ところが、このような構成では、バランスピストンを追加する必要があるとともに、高圧領域に作動液圧を導入するための高圧通路を設ける必要があるため、リアカバーの構造が複雑なものとなる。また、高圧領域の作動液はピストン摺動面の隙間からも漏れるので、容積性能が低下するという不具合も発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−330330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は以上の点に着目したものであり、簡単な構成により、側板に大きなスラスト圧が作用することを防ぐことを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち本発明に係る歯車ポンプ又はモータは、互いに噛み合わせてなるはすば歯車をそれぞれ利用した駆動歯車及び従動歯車からなる歯車対と、この歯車対を収納する歯車収納室を内部に有するとともに前記駆動歯車を軸支する駆動軸及び前記従動歯車を軸支する従動軸を収納するための軸受孔を有するケーシングと、前記歯車対の各歯車の両側面に添接する側板とを具備する歯車ポンプ又はモータであって、前記駆動軸及び従動軸の運転時に発生するスラスト作用が向かう側の一端面と前記ケーシングの軸受孔の底面との間に、前記駆動軸及び従動軸の前記一端面に接触しスラスト荷重を支持するスラスト軸受を配していることを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、駆動歯車及び従動歯車が受けるスラスト力を受ける機能はスラスト軸受が担うこととなるので、側板は駆動歯車及び従動歯車の一側面を被覆し作動液のシールを行う機能のみを担うものとして設計することができる。従って、特殊な部材や作動液通路を追加する必要がなく、また容積性能の低下を伴うことなく、簡単な構成で側板に大きなスラスト圧が作用することを防ぐことができる。なお、本発明において、「軸受孔の底面」とは、駆動軸又は従動軸を収納した状態においてその端面と対向する面を示す概念である。
【0017】
上述した効果を効果的に得ることができる構成の一例として、前記ケーシングが、前記歯車収納室、及びこの歯車収納室の前記駆動軸及び従動軸の軸心方向両側にそれぞれ配され前記駆動軸及び従動軸を収納する1対の軸ケースを内部に収納しているケーシング本体と、このケーシング本体の前記スラスト作用が向かう側の面を被覆する第1のカバーと、前記のケーシング本体の前記スラスト作用が向かう側と反対側の面を被覆する第2のカバーと備えたものであって、前記第1のカバーの内面と前記第2のカバーの内面との前記軸心方向に沿った距離が、前記歯車収納室及び1対の軸ケースの前記軸心方向に沿った距離の和に所定の隙間寸法を加えたものであるものが挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡単な構成により、側板に大きなスラスト圧が作用することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係る歯車ポンプ又はモータを示す概略図。
【図2】本発明の第二実施形態に係る歯車ポンプ又はモータを示す概略図。
【図3】本発明の第三実施形態に係る歯車ポンプ又はモータを示す概略図。
【図4】従来の歯車ポンプ又はモータを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態に係る歯車ポンプP1は、図1に示すように、主として、歯車収納室11aを内部に有するケーシング1と、このケーシング1の歯車収納室11a内に収納保持され互いに噛み合わせてなる外接歯車対、すなわち駆動歯車2及び従動歯車3とを具備する。
【0022】
駆動歯車2及び従動歯車3は、複数の歯体を外周面に沿って所定間隔で設けた周知のはすば歯車である。ここで、これら駆動歯車2と従動歯車3の歯は、これらを噛み合わせた状態で歯車ポンプとして作動させる際に、これらの間の噛合部から、駆動歯車2は後方に向かう作用、従動歯車3は前方に向かう作用をそれぞれ受けるように構成している。本実施形態では、前記駆動歯車2の中心から駆動軸4を回転軸方向に一体に延伸させて設けているとともに、従動歯車3から従動軸5を回転軸方向に一体に延伸させて設けている。ここで、前記駆動軸4及び従動軸5のうち前記ケーシング1の後述するフロントベアリングケース13及びリアベアリングケース15に対向する部分は、その断面形状が長手方向の全域にわたって同径の円形となる円柱状をなしている。なお、駆動歯車2と駆動軸4とを別体に構成してもよく、また、従動歯車3と従動軸5とを別体に構成してもよい。
【0023】
ケーシング1は、前記歯車収納室11aを有するボディ11と、歯車収納室11aの一開口面を閉塞するカバーたるフロントカバー12と、このフロントカバー12と前記駆動歯車2及び従動歯車3との間に配してなり前記駆動軸4及び従動軸5がそれぞれ嵌入可能な軸受孔13a、13bを有するフロントベアリングケース13と、歯車収納室11aの他開口面を閉塞するカバーたるリアカバー14と、このリアカバー14と前記駆動歯車2及び従動歯車3との間に配してなり前記駆動軸4及び従動軸5がそれぞれ嵌入可能な軸受孔15a、15bを有するリアベアリングケース15とを備えている。ここで、前記フロントベアリングケース13及びリアベアリングケース15は、各歯車2、3の両側面2a、3aに添接する側板としての機能を備えている。ここで、フロントカバー12の後面とリアカバー14の前面との間の前後方向距離Aは、前記歯車収納室11aの前後寸法Bに、前記フロントベアリングケース13の前後寸法C及びリアベアリングケース15の前後寸法Cを加え、さらに所定の隙間寸法δを加えた値に設定している。
【0024】
ボディ11には、その内部に前記歯車対すなわち駆動歯車2及び従動歯車3を噛合状態で収容する略眼鏡状の前記歯車収納室11aを備えているとともに、この歯車収納室11aの前方に前記フロントベアリングケース13を、またこの歯車収納室11aの後方に前記リアベアリングケース15を収納するようにしている。また、ボディ11には、図示は省略しているが、前記駆動歯車2と従動歯車3との噛合部位に臨む位置に吸込口及び吐出口をそれぞれ開口させてある。そして、前記吸込口と前記歯車収納室11aとの間に、吸込通路を設けている。
【0025】
前記フロントカバー12は、例えばボディ11にボルト等によって着脱可能に装着されて前記歯車収納室11aの前側開口面を閉塞する。
【0026】
前記フロントベアリングケース13は、上述したようにフロントカバー12と前記駆動歯車2及び従動歯車3との間に配してなる。駆動軸4を挿入すべき軸受孔13aにはブッシュ7を嵌装し、このブッシュ7に前記駆動軸4の前端部を挿入し回転可能に軸承している。一方、従動軸5を挿入すべき軸受孔13bにもブッシュ7を嵌装していて、このブッシュ7に前記従動軸5の前端部を挿入し回転可能に軸承している。これら軸受孔13a、13bの断面形状は、その長手方向の全域にわたって同径の円形状である。
【0027】
前記リアカバー14は、例えばボディ11にボルト等によって着脱可能に装着されて前記歯車収納室11aの後側開口面を閉塞する。
【0028】
前記リアベアリングケース15は、上述したようにリアカバー14と前記駆動歯車2及び従動歯車3との間に配してなる。駆動軸4を挿入すべき軸受孔15aにはブッシュ7を嵌装し、このブッシュ7に前記駆動軸4の後端部を挿入し回転可能に軸承している。一方、従動軸5を挿入すべき軸受孔15bにもブッシュ7を嵌装していて、ブッシュ7に前記従動軸5の後端部を挿入し回転可能に軸承している。これら軸受孔15a、15bの断面形状も、その長手方向の全域にわたって同径の円形状である。
【0029】
しかして本実施形態では、駆動軸4の後方、及び従動軸5の後方に、これら駆動軸4の後端面4b又は従動軸5の後端面5bにそれぞれ接触し、スラスト荷重を支持するスラスト軸受8を配している。これらスラスト軸受8は、ころがり軸受を利用して形成したもので、前記リアカバー14における駆動軸4の後方及び従動軸5の後方にそれぞれ形成した駆動軸受挿入穴14x及び従動軸受挿入穴14y内に挿入させてなる。換言すれば、スラスト軸受8は、前記駆動軸4の後端面4bと前記駆動軸受挿入穴14xの底面14x1との間、及び前記従動軸5の後端面5bと前記従動軸受挿入穴14yの底面14y1との間に配している。なお、前記駆動軸受挿入穴14xは前記リアベアリングケース15の駆動軸4を挿入すべき軸受孔15aと連通している。また、この駆動軸受挿入穴14xの底面14x1は駆動軸4を収納した状態においてその後端面4bと対向し、請求項中の「ケーシングの軸受孔の底面」としての機能を有する。一方、従動軸受挿入穴14yは前記リアベアリングケース15の従動軸5を挿入すべき軸受孔15bと連通している。そして、この従動軸受挿入穴14yの底面14y1は駆動軸又は従動軸5を収納した状態においてその端面5bと対向し、請求項中の「ケーシングの軸受孔の底面」としての機能を有する。
【0030】
この歯車ポンプP1は、一端を外部に延出させてなる前記駆動軸4を介して前記駆動歯車2及び従動歯車3を同期逆回転駆動した場合に、前記吸込口と前記吐出口との間で高低圧差が生じ、前記駆動歯車2及び従動歯車3の歯体同士が漸次離反する側のボディ11内空間、つまり前記吸込口側が低圧領域になるとともに、歯体同士が漸次噛合する側のボディ11内空間、つまり吐出口側が高圧領域になる。そして、吸込口より導入した作動液を、前記駆動歯車2及び従動歯車3の歯先とケーシング1の内周との間に閉成される容積空間に閉じ込めて吐出口にまで導き吐出するポンプ作用を営むようにしている。なお、この歯車ポンプP1は、吐出口より高圧の作動液を導入し、これにより前記駆動軸4から回転トルクを取り出して外部負荷を駆動するとともに、低圧となった作動液を前記吸込口から吐出するというモータ作用を営む歯車モータとして機能させることもできるものであることはいうまでもない。
【0031】
ここで、この歯車ポンプP1をポンプとして作動させた場合、上述したように、駆動歯車2と従動歯車3との間の噛合部から、駆動歯車2は後方に向かう作用、従動歯車3は前方に向かう作用をそれぞれ受ける。また、これら駆動歯車2及び従動歯車3は、作動液の液圧を受けて後方に向かう作用を受ける。これら噛合部から受ける作用及び作動液の液圧による作用を合わせて、駆動歯車2は後方に向かう大きなスラスト力、従動歯車3は駆動歯車2が受けるものよりは小さな後方に向かうスラスト力をそれぞれ受ける。
【0032】
そして、これら駆動歯車2及び従動歯車3が受けるスラスト力は、駆動軸4及び従動軸5の後端面4b、5bからスラスト軸受8に伝達され、このスラスト軸受8からさらにリアカバー14に伝達される。そして、このリアカバー14をボディ11に装着するためのボルトBが最終的にスラスト力を受ける。
【0033】
以上に述べたように、本実施形態に係る歯車ポンプP1の構成によれば、前記駆動軸4及び従動軸5の後端面4b、5bと前記リアカバー14の両軸受挿入穴14x、14yの底面14x1、14y1との間に、それぞれ前記駆動軸4及び従動軸5の後端面4b、5bに接触しスラスト荷重を支持するスラスト軸受8を配しているので、駆動歯車2及び従動歯車3からのスラスト力を受ける機能はスラスト軸受8が担うこととなる。すなわち、前記リアベアリングケース15を設計するに際してはスラスト力に対する剛性を考慮する必要がなくなる。従って、特殊な部材や作動液通路を追加する必要がなく、また容積性能の低下を伴うことなく、簡単な構成で側板としてのリアベアリングケース15に大きなスラスト圧が作用することを防ぐことができる。
【0034】
また、フロントカバー12の後面とリアカバー14の前面との間の前後方向距離Aを、前記歯車収納室11aの前後寸法Bに、前記フロントベアリングケース13の前後寸法C及びリアベアリングケース15の前後寸法Cを加え、さらに所定の隙間寸法δを加えたものに設定しているので、リアベアリングケース15が圧力バランス以外の荷重を受けることがなく、上述した効果をより効果的に得ることができる。
【0035】
次いで、本発明の第二実施形態を、図面を参照して説明する。なお、前述した第一実施形態に係るものに対応する各部位には、同一の名称及び符号を付している。
【0036】
本実施形態に係る歯車ポンプP2は、図2に示すように、主として、歯車収納室11aを内部に有するケーシング1と、このケーシング1の歯車収納室11a内に収納保持され互いに噛み合わせてなる外接歯車対、すなわち駆動歯車2及び従動歯車3とを具備する。
【0037】
以下、前述した第一実施形態に係る歯車ポンプP1との相違点についてのみ述べる。
【0038】
本実施形態では、駆動歯車2の前側の側面2a及び従動歯車3の前側の側面3aに、前側板61を添接させて設けている。また、駆動歯車2の後側の側面2b及び従動歯車3の後側の側面3aに、後側板62を添接させて設けている。
【0039】
また、本実施形態に係るケーシング1は、例えば、前記歯車収納室11aを有するとともにこの歯車収納室11aの後側他開口面を閉塞するボディ11と、歯車収納室11aの前側開口面を閉塞するカバーたるフロントカバー12とを備えている。
【0040】
ボディ11には、その内部に前記歯車対すなわち駆動歯車2及び従動歯車3を噛合状態で収容する略眼鏡状の前記歯車収納室11aを備えている。また、この歯車収納室11aの後方には、前記駆動軸4及び従動軸5がそれぞれ嵌入可能な軸受孔11x、11yを設けている。前記駆動軸4を挿入すべき軸受孔11xにはブッシュ7を嵌装し、このブッシュ7に前記駆動軸4の後端部を挿入し回転可能に軸承している。一方、従動軸5を挿入すべき軸受孔11yにもブッシュ7を嵌装していて、このブッシュ7に前記従動軸5の後端部を挿入し回転可能に軸承している。これら軸受孔11x、11yの断面形状は、本実施形態では、長手方向の全域にわたって同径の円形状である。そして、前記軸受孔11x、11yの側面は、駆動軸4及び従動軸5の後端部の側面と平行、換言すれば駆動軸4及び従動軸5の後端部の側面と等間隔の隙間を隔てて対向していて、この隙間に前記ブッシュ7を挿入している。そして、ボディ11には、図示は省略しているが、前記駆動歯車2と従動歯車3との噛合部位に臨む位置に吸込口及び吐出口をそれぞれ開口させてある。そして、前記吸込口と前記歯車収納室11aとの間に、吸込通路を設けている。すなわち、このボディ11は、前述した第一実施形態に係るボディ11、リアカバー14及びリアベアリングケース15を一体に構成したものである。但し、このボディ11は、側板としての機能は有しない。
【0041】
しかして本実施形態では、駆動軸4の後方、及び従動軸5の後方に、これら駆動軸4の後端面4b又は従動軸5の後端面5bにそれぞれ接触し、スラスト荷重を支持するスラスト軸受8を配している。これらスラスト軸受8は、ころがり軸受を利用して形成したもので、前記ボディ11における駆動軸4の後方及び従動軸5の後方にそれぞれ形成した駆動軸受挿入穴11p及び従動軸受挿入穴11q内に挿入させてなる。換言すれば、スラスト軸受8は、前記駆動軸4の後端面4bと前記駆動軸受挿入穴11pの底面11p1との間、及び前記従動軸5の後端面5bと前記従動軸受挿入穴11qの底面11q1との間に配している。
【0042】
一方、前記フロントカバー12は、例えばボディ11にボルト等によって着脱可能に装着されて前記歯車収納室11aの開口面を閉塞するとともに、駆動軸4及び従動軸5を挿入すべき軸受孔12x、12yを有する。駆動軸4を挿入すべき軸受孔12xにはブッシュ7を嵌装し、このブッシュ7に前記駆動軸4の前端部を挿入し回転可能に軸承している。一方、従動軸5を挿入すべき軸受孔12yにもブッシュ7を嵌装していて、このブッシュ7に前記従動軸5の前端部を挿入し回転可能に軸承している。これら軸受孔12x、12yの断面形状は、その長手方向の全域にわたって同径の円形状である。すなわち、このフロントカバー12は、前述した第一実施形態に係るフロントカバー12及びフロントベアリングケース13を一体に構成したものである。
【0043】
ここで、この歯車ポンプP2をポンプとして作動させた場合、上述したように、駆動歯車2と従動歯車3との間の噛合部から、駆動歯車2は後方に向かう作用、従動歯車3は前方に向かう作用をそれぞれ受ける。また、これら駆動歯車2及び従動歯車3は、作動液の液圧を受けて後方に向かう作用を受ける。これら噛合部から受ける作用及び作動液の液圧による作用を合わせて、駆動歯車2は後方に向かう大きなスラスト力、従動歯車3は駆動歯車2が受けるものよりは小さな後方に向かうスラスト力をそれぞれ受ける。
【0044】
そして、これら駆動歯車2及び従動歯車3が受けるスラスト力は、駆動軸4及び従動軸5の後端面からスラスト軸受8に伝達され、このスラスト軸受8からさらにボディ11に伝達される。そして、フロントカバー12をボディ11に装着するためのボルトBが最終的にスラスト力を受ける。
【0045】
以上に述べたように、本実施形態に係る歯車ポンプP2の構成によれば、前記駆動軸4及び従動軸5の後端面4b、5bと前記ボディ11の両軸受挿入穴11p、11qの底面11p1、11q1との間に、前記駆動軸4及び従動軸5の後端面4b、5bに接触しスラスト荷重を支持するスラスト軸受8を配しているので、駆動歯車2及び従動歯車3からのスラスト力を受ける機能はスラスト軸受8が担うこととなる。従って、後側板62は駆動歯車2及び従動歯車3の後側面を被覆し作動液のシールを行う機能のみを担うものとして設計することができる。よって、特殊な部材や作動液通路を追加する必要がなく、また容積性能の低下を伴うことなく、簡単な構成で後側板62に大きなスラスト圧が作用することを防ぐことができる。
【0046】
以下、本発明の第三実施形態を、図面を参照して説明する。なお、前述した第一実施形態に係るものに対応する各部位には、同一の名称及び符号を付している。
【0047】
本実施形態に係る歯車ポンプP3は、前述した第二実施形態に係る歯車ポンプとほぼ同様の構成を有する。すなわち、この歯車ポンプP3は、図3に示すように、主として、歯車収納室11aを内部に有するケーシング1と、このケーシング1の歯車収納室11a内に収納保持され互いに噛み合わせてなる外接歯車対、すなわち駆動歯車2及び従動歯車3と、駆動歯車2の前側の側面2a及び従動歯車3の前側の側面3aに添接する前側板61と、駆動歯車2の後側の側面2b及び従動歯車3の後側の側面3aに添接する後側板62とを具備する
以下、前述した第二実施形態に係る歯車ポンプP2との相違点についてのみ述べる。
【0048】
この歯車ポンプP3においては、駆動軸4の後方、及び従動軸5の後方に、これら駆動軸4の後端面4b又は従動軸5の後端面5bにそれぞれ接触し、スラスト荷重を支持するスラスト軸受8を配している。これらスラスト軸受8は、すべり軸受を利用して形成したもので、前記ボディ11における駆動軸4の後方及び従動軸5の後方にそれぞれ形成した駆動軸受挿入穴11p及び従動軸受挿入穴11q内に挿入させてなる。換言すれば、スラスト軸受8は、前記駆動軸4の後端面4bと前記駆動軸受挿入穴11pの底面11p1との間、及び前記従動軸5の後端面5bと前記従動軸受挿入穴11qの底面11q1との間に配している。なお、本実施形態では、前記駆動軸受挿入穴11pの底面11p1と前記従動軸受挿入穴11qの底面11q1とが連続し同一平面上に位置している。
【0049】
この歯車ポンプP3は、上述した相違点以外は前述した第二実施形態に係る歯車ポンプP2と全く同一の構成を有するので、各部の詳細な説明、及び各部の作用についての説明は省略する。
【0050】
すなわち、本実施形態に係る歯車ポンプP3の構成によっても、前記駆動軸4及び従動軸5の後端面4b、5bと前記ボディ11の両軸受挿入穴11p、11qの底面11p1、11q1との間に、前記駆動軸4及び従動軸5の後端面4b、5bに接触しスラスト荷重を支持するスラスト軸受8を配しているので、駆動歯車2及び従動歯車3からのスラスト力を受ける機能はスラスト軸受8が担うこととなる。従って、後側板62は駆動歯車2及び従動歯車3の後側面を被覆し作動液のシールを行う機能のみを担うものとして設計することができる。よって、特殊な部材や作動液通路を追加する必要がなく、また容積性能の低下を伴うことなく、簡単な構成で後側板62に大きなスラスト圧が作用することを防ぐことができる。
【0051】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らず、種々に変形してよい。
【0052】
例えば、上述した第一実施形態において、フロントカバーとフロントベアリングケースとを一体に形成してもよく、また、リアカバーとリアベアリングケースとを一体に形成してもよい。
【0053】
さらに、上述した第一実施形態において、スラスト軸受としてすべり軸受を利用したものを採用してももちろんよい。
【0054】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0055】
P1、P2、P3…歯車ポンプ
1…ケーシング
11a…歯車収納室
11x、11y…軸受孔
15…リアベアリングケース(側板)
15a、15b…軸受孔
2…駆動歯車
3…従動歯車
4…駆動軸
4b…駆動軸の後端面
5…従動軸
5b…従動軸の後端面
61…(前)側板
62…(後)側板
8…スラスト軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛み合わせてなるはすば歯車をそれぞれ利用した駆動歯車及び従動歯車からなる歯車対と、この歯車対を収納する歯車収納室を内部に有するとともに前記駆動歯車を軸支する駆動軸及び前記従動歯車を軸支する従動軸を収納するための軸受孔を有するケーシングと、前記歯車対の各歯車の両側面に添接する側板とを具備する歯車ポンプ又はモータであって、
前記駆動軸及び従動軸の運転時に発生するスラスト作用が向かう側の一端面と前記ケーシングの軸受孔の底面との間に、前記駆動軸及び従動軸の前記一端面に接触しスラスト荷重を支持するスラスト軸受を配していることを特徴とする歯車ポンプ又はモータ。
【請求項2】
前記ケーシングが、前記歯車収納室、及びこの歯車収納室の前記駆動軸及び従動軸の軸心方向両側にそれぞれ配され前記駆動軸及び従動軸を収納する1対の軸ケースを内部に収納しているケーシング本体と、このケーシング本体の前記スラスト作用が向かう側の面を被覆する第1のカバーと、前記のケーシング本体の前記スラスト作用が向かう側と反対側の面を被覆する第2のカバーと備えたものであって、前記第1のカバーの内面と前記第2のカバーの内面との前記軸心方向に沿った距離が、前記歯車収納室及び1対の軸ケースの前記軸心方向に沿った距離の和に所定の隙間寸法を加えたものである請求項1記載の歯車ポンプ又はモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64336(P2013−64336A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202394(P2011−202394)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】