説明

歯車伝動装置

【課題】アキシャルギャップモータを備え、安定したトルクを出力することができる歯車伝動装置を提供する。
【解決手段】歯車伝動装置100は、ケース6とキャリア8とクランクシャフト12と外歯歯車24とアキシャルギャップモータ18,48を備える。ケース6の内周に内歯歯車32が形成されている。キャリア8は、内歯歯車32と同軸にケース6に支持されている。クランクシャフト12は、一対の軸受50によってキャリア8に支持されている。クランクシャフト12は、偏心体22を有する。外歯歯車24は、偏心体22に係合しており、内歯歯車32と噛み合いながら偏心回転する。アキシャルギャップモータ18のロータ16が、クランクシャフト12に取り付けられている。アキシャルギャップモータ48のロータ46も、クランクシャフト12に取り付けられている。歯車伝動装置100では、ロータ16,48が、一対の軸受50の間に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアキシャルギャップモータを備える歯車伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外歯歯車が内歯歯車と噛み合いながら偏心回転する歯車伝動装置が知られている。このような歯車伝動装置はサイクロイド減速機と呼ばれることがあり、その一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の歯車伝動装置では、外歯歯車が、クランクシャフトに固定されている偏心体に係合して偏心回転する。クランクシャフトには、ラジアルギャップモータのロータが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2009/081793号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薄型の歯車伝動装置を実現するためには、薄型のモータを利用することが好ましい。そのため、薄型の歯車伝動装置を実現するためには、アキシャルギャップモータを利用することが好ましい。
【0005】
一方、ロータとステータが軸方向で対向しているアキシャルギャップモータでは、ロータとステータのギャップの幅が変化し易い。回転中にギャップの幅が変化すると、発生するトルクが変化してしまう。本明細書は、偏心揺動型の歯車伝動装置に特有の構造を利用し、ロータとステータのギャップ幅を一定に保つ新たな構造の歯車伝動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する歯車伝動装置は、ケースと、キャリアと、クランクシャフトと、外歯歯車と、アキシャルギャップモータを備えている。ケースの内周には、内歯歯車が形成されている。キャリアは、内歯歯車と同軸にケースに支持されている。クランクシャフトは、一対の軸受によってキャリアに支持されている。また、クランクシャフトは偏心体を有する。外歯歯車は、偏心体に係合しており、内歯歯車と噛み合いながら偏心回転する。アキシャルギャップモータのモータが、クランクシャフトに取り付けられている。この歯車伝動装置では、アキシャルギャップのロータが、クランクシャフトを支持している一対の軸受の間に位置している。
【0007】
一対の軸受の間では、回転するクランクシャフトの振動が厳しく抑制される。しかしながら、一対の軸受の外側では、クランクシャフトは片持ち支持されており、回転に伴って軸ぶれが起こり得る。アキシャルギャップモータのロータを一対の軸受の間でクランクシャフトに固定すれば、ロータを定位置に維持することができ、ロータとステータのギャップ幅を一定に維持することができる。その結果、アキシャルギャップモータの出力トルクを一定に維持することができる。
【0008】
本明細書で開示する歯車伝動装置では、2個のアキシャルギャップモータがクランクシャフトに向かい合わせに取り付けられていてよい。この場合、双方のアキシャルギャップモータのロータが、上記一対の軸受の間に位置しているとよい。2個のアキシャルギャップモータに生じる吸引力がバランスし、ロータとステータのギャップを、一層変化しにくくすることができる。
【0009】
クランクシャフトは、キャリアと同軸に配置されていてもよいし、キャリアの軸線からオフセットした位置に配置されていてもよい。クランクシャフトがキャリアと同軸に配置されていれば、外歯歯車の中央部分にトルクを伝達することができる。外歯歯車に均一にトルクを伝達することができる。
【0010】
クランクシャフトがキャリアと同軸に配置されている場合、そのクランクシャフトにキャリアの軸線と同心の貫通孔が形成されており、その貫通孔内にアキシャルギャップモータのロータが固定されているとよい。貫通孔を有効に利用し、コンパクトなモータを備えた歯車伝動装置を実現することができる。
【0011】
クランクシャフトがキャリアと同軸に配置されている場合、キャリアの軸線からオフセットした位置で外歯歯車に係合しているとともに、外歯歯車の偏心回転に伴って回転する複数の従動クランクシャフトを備えていてよい。この場合、夫々の従動クランクシャフトが、キャリアの軸線の周りに等間隔に配置されているとよい。従動クランクを備えることにより、外歯歯車のがたつき等が抑制され、外歯歯車をスムーズに回転させることができる。
【0012】
本明細書が開示する歯車伝動装置では、クランクシャフトが複数の偏心体を備えていてよい。この場合、夫々の偏心体の偏心の向きが異なり、夫々の偏心体の中心がクランクシャフトの軸線と同心円上で等間隔に位置するように偏心体がクランクシャフトに固定されているとよい。このような形態の歯車伝動装置では、複数の外歯歯車の偏心の向きが異なる。夫々の外歯歯車が内歯歯車に噛み合う位置が、歯車伝動装置の周方向でバランスよく分散する。駆動バランスのよい歯車伝動装置を実現することができる。
【0013】
本明細書が開示する歯車伝動装置では、偏心体が、クランクシャフトを支持している一対の軸受の間に位置していてよい。偏心体のがたつきが抑制されるので、偏心体に係合している外歯歯車を一層スムーズに回転させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本明細書が開示する技術は、アキシャルギャップモータを備える歯車伝動装置において、クランクシャフトを駆動するアキシャルギャップモータが安定したトルクを出力する歯車伝動装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施例の歯車伝動装置の断面図を示す。
【図2】図1の破線で囲った部分IIの拡大断面図を示す。
【図3】第1実施例の歯車伝動装置について、キャリアからカバーを取り外した状態の平面図を示す。
【図4】第2実施例の歯車伝動装置の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施例)
図1に示す歯車伝動装置100は、外歯歯車24が内歯歯車32と噛み合いながら偏心回転する偏心揺動型の減速装置である。歯車伝動装置100は、外歯歯車24の歯数と内歯歯車32の歯数の差に応じて、キャリア8が回転する。内歯歯車32は、ケース6と、ケース6の内周に配置されている複数の内歯ピン34で構成されている。なお、このタイプの歯車伝動装置は、サイクロイド減速機と呼ばれることがある。
【0017】
歯車伝動装置100は、ケース6とキャリア8とクランクシャフト12と外歯歯車24とアキシャルギャップモータ18,48を備えている。キャリア8は、第1プレート8aと第2プレート8cで構成されている。第1プレート8aから第2プレート8cに向けて柱状部8bが延びている。柱状部8bと第2プレート8cは固定されている。柱状部8bは、外歯歯車24の貫通孔52を通過している。キャリア8は、一対のアンギュラ玉軸受4によって、内歯歯車32と同軸にケース6に支持されている。別言すると、キャリア8は、アンギュラ玉軸受4によって、アキシャル方向及びラジアル方向への移動が規制されている。軸線40が、キャリア8の軸線に相当する。軸線40は、内歯歯車32(ケース6)の軸線にも相当する。なお、キャリア8に形成されている溝が、アンギュラ玉軸受4のインナーレースに相当する。
【0018】
クランクシャフト12は、キャリア8と同軸に配置されている。すなわち、クランクシャフト12の軸線は、キャリア8の軸線40に等しい。クランクシャフト12は、一対の深溝玉軸受50によって、キャリア8に支持されている。すなわち、クランクシャフト12は、一対の深溝玉軸受50によって、アキシャル方向とラジアル方向の移動が規制されている。クランクシャフト12は、2個の偏心体22を備えている。偏心体22は、軸線40方向において、一対の深溝玉軸受50の間に位置している。また、夫々の偏心体22は、軸線40に対して対称に偏心している。夫々の偏心体22は、円筒ころ軸受23を介して、個別の外歯歯車24に係合している。クランクシャフト12は貫通孔12aを有しており、その貫通孔12a内に、アキシャルギャップモータ18,48が取り付けられている(図2を参照)。また、クランクシャフト12には、エンコーダ20が取り付けられている。エンコーダ20とアキシャルギャップモータ18,48の詳細については後述する。
【0019】
従動クランクシャフト26が、軸線40からオフセットした位置に配置されている。従動クランクシャフト26は、クランクシャフト12に平行に延びている。別言すると、従動クランクシャフト26の軸線36は、クランクシャフト12の軸線40と平行である。従動クランクシャフト26は、一対の円錐ころ軸受38によって、キャリア8に支持されている。従動クランクシャフト26は、2個の従動偏心体35を備えている。従動偏心体35は、軸線36方向において、一対の円錐ころ軸受38の間に位置している。また、夫々の従動偏心体35は、軸線36に対して対称に偏心している。夫々の従動偏心体35は、個別の外歯歯車24に係合している。従動クランクシャフト26の端部に、ブレーキ28が取り付けられている。なお、従動クランクシャフト26には、モータは取り付けられていない。
【0020】
クランクシャフト12が回転すると、偏心体22が軸線40の周りを偏心回転する。偏心体22の偏心回転に伴って、外歯歯車24が、内歯歯車32と噛み合いながら軸線40の周りを偏心回転する。外歯歯車24の歯数と内歯歯車32の歯数(内歯ピン34の数)は異なる。そのため、外歯歯車24が偏心回転すると、外歯歯車24と内歯歯車32の歯数差に応じて、キャリア8が、内歯歯車32(ケース6)に対して回転する。なお、従動クランクシャフト26は、モータのトルクが直接伝達されず、外歯歯車24の偏心回転に伴って回転する。従動クランクシャフト26は、外歯歯車24のがたつきを抑制し、外歯歯車24がスムーズに偏心回転することを補助する。
【0021】
図1及び図2を参照し、アキシャルギャップモータ18,48について詳細に説明する。以下の説明では、第1アキシャルギャップモータ18及び第2アキシャルギャップモータ48と称することがある。第1アキシャルギャップモータ18は、第1ロータ16と第1ステータ14で構成されている。第1ロータ16と第1ステータ14の間には、ギャップ60が存在する。第1ロータ16は、ロータプレート17と第1永久磁石15で構成されている。第1永久磁石15は、ロータプレート17の一方の表面に固定されている。ロータプレート17は、クランクシャフト12の貫通孔12aの内壁に圧入されている。そのため、第1ロータ16は、クランクシャフト12の貫通孔12a内で、クランクシャフト12に取り付けられていると表現することもできる。なお、貫通孔12aは、キャリア8の軸線40と同心に形成されている。また、ロータプレート17は、一方の表面から軸線40に沿って延びている延長部17aを備えている。
【0022】
第1ステータ14は、第1ステータコア13と第1巻線11を備える。第1ステータ14は、貫通孔12a内に配置されている。そのため、第1アキシャルギャップモータ18は、クランクシャフト12の貫通孔12a内に配置されていると表現することができる。第1巻線11は、圧粉磁心で形成されている第1ステータコア13に巻き付けられている。第1ステータコア13は第1ステータプレート21に固定されている。第1ステータプレート21は、キャリア8(第1プレート8a)に固定されている。そのため、第1ステータ14は、キャリア8に固定されていると表現することもできる。貫通孔13aが、第1ステータコア13に形成されている。貫通孔13aを、ロータプレート17の延長部17aが通過している。エンコーダ20が、延長部17aの端部に固定されている。すなわち、エンコーダ20は、第1ステータプレート21の外側で、ロータプレート17の延長部17aに固定されている。エンコーダ20によって、クランクシャフト12の回転角を検出することができる。
【0023】
なお、図示は省略するが、第1永久磁石15には、N極が外側を向いている永久磁石と、S極が外側を向いている永久磁石がある。ロータプレート17には、N極が外側を向いている永久磁石と、S極が外側を向いている永久磁石とが、周方向に交互に固定されている。第1ステータ14では、U相の電流が流れる巻線、V相の電流が流れる巻線及びW相の電流が流れる巻線が、周方向に順番に並んでいる。
【0024】
第2アキシャルギャップモータ48の構造は、実質的に、第1アキシャルギャップモータ18の構造と同じである。第2アキシャルギャップモータ48については、第1アキシャルギャップモータ18と重複する説明は省略し、以下に簡単に説明する。
【0025】
第2アキシャルギャップモータ48は、第2ロータ46と第2ステータ44で構成されている。第2ロータ46と第2ステータ44の間には、ギャップ62が存在する。第2ロータ46は、ロータプレート17と第2永久磁石45で構成されている。第2ロータ46は、第1ロータ16と一体化している。すなわち、第1ロータ16と第2ロータ46は、共通のロータプレート17を利用している。より詳細には、ロータプレート17の一方の表面に第1永久磁石15が固定され、ロータプレート17の他方の表面に第2永久磁石45が固定されている。第2ステータ44は、第2ステータコア43と第2巻線41を備える。第2ステータコア43は第2ステータプレート39に固定されている。第2ステータプレート39は、キャリア8(第2プレート8c)に固定されている。第2ステータ44も、キャリア8に固定されていると表現することができる。また、第2アキシャルギャップモータ48も、クランクシャフト12の貫通孔12a内に配置されていると表現することができる。なお、第1アキシャルギャップモータ18と第2アキシャルギャップモータ48は、位相が等しい。
【0026】
歯車伝動装置100の特徴について説明する。上記したように、クランクシャフト12は、一対の深溝玉軸受50によって、キャリア8に支持されている。一対の深溝玉軸受50に挟まれた範囲72では、クランクシャフト12は両持ち支持されている。すなわち、範囲72内では、クランクシャフト12は、回転中のアキシャル方向とラジアル方向の移動(振動)が厳しく制限される。他方、範囲72の外側では、クランクシャフト12は片持ち支持されているといえる。そのため、範囲72の外側では、クランクシャフト12が振動し易い。歯車伝動装置100では、ロータ16,46が、範囲72内でクランクシャフト12に取り付けられている。ロータ16,46の位置が変化しないので、第1ロータ16と第1ステータ14のギャップ60と、第2ロータ46と第2ステータ44のギャップ62とが一定に維持される。その結果、アキシャルギャップモータ18,48が一定のトルクを出力することができるので、歯車伝動装置100の出力トルクを一定に維持することができる。
【0027】
歯車伝動装置100の他の特徴を説明する。第1アキシャルギャップモータ18と第2アキシャルギャップモータ48は、向かい合わせになるように、クランクシャフト12に取り付けられている。より詳細には、第1ロータ16と第2ロータ46が、第1ステータ14と第2ステータ44の間に配置されている。アキシャルギャップモータの場合、ロータとステータの間に吸引力が作用する。2個のアキシャルギャップモータ18,48をクランクシャフト12に向かい合わせに取り付けることにより、2個のアキシャルギャップモータ18,48の吸引力が、互いに逆向きにクランクシャフト12に作用する。軸線40方向において、クランクシャフト12に加わる力がバランスする。
【0028】
上記したように、アキシャルギャップモータ18,48は、クランクシャフト12の貫通孔12a内に配置されている。アキシャルギャップモータの場合、径の大きさに伴って慣性力が大きくなる。アキシャルギャップモータの慣性力が大きくなると、例えば歯車伝動装置の駆動を停止する場合に、停止動作に遅れが生じる。アキシャルギャップモータ18,48をクランクシャフト12の貫通孔12a内に配置することにより、慣性力の小さなモータで歯車伝動装置100を駆動することができる。また、2個のアキシャルギャップモータを貫通孔12a内に配置することによって、モータ付き歯車伝動装置の全体のサイズを小型化することができる。
【0029】
上記したように、2個の偏心体22は、夫々軸線40に対して対称に偏心している。外歯歯車24の偏心の向きが対称となり、歯車伝動装置100を駆動しているときに、バランスを良好に維持することができる。なお、偏心体22とクランクシャフト12の関係は、次のように表現することもできる。クランクシャフト12は、2個の偏心体22を備えている。夫々の偏心体22の偏心の向きは異なる。夫々の偏心体22の中心がクランクシャフトの軸線40の周りに180°離れて位置するように、偏心体22がクランクシャフト12に固定されている。
【0030】
2個のオイルシール70が、クランクシャフト12とキャリア8の間に配置されている(図2を参照)。オイルシール70は、一対の深溝玉軸受50の外側に夫々配置されている。別言すると、一対の深溝玉軸受50が、2個のオイルシール70の間に配置されている。オイルシール70によって、クランクシャフト12の外側(外歯歯車24,内歯歯車32等が存在する空間)から、クランクシャフト12の内側(アキシャルギャップモータ18,48及びエンコーダ20が存在する空間)に潤滑剤が浸入することを防止できる。
【0031】
オイルシール25が、従動クランクシャフト26とキャリア8の間に配置されている(図1を参照)。オイルシール25は、軸線36方向において、円錐ころ軸受38とブレーキ28の間に位置している。オイルシール25によって、外歯歯車24等が存在する空間から、ブレーキ28が存在する空間に潤滑剤が浸入することを防止できる。また、カバー30が、エンコーダ20とブレーキを覆うように、キャリア8に固定されている。
【0032】
2個のオイルシール2が、ケース6とキャリア8の間に配置されている。オイルシール2は、一対のアンギュラ玉軸受4の外側に夫々配置されている。別言すると、一対のアンギュラ玉軸受4が、2個のオイルシール2の間に配置されている。また、第2プレート8cに形成されている孔にキャップ37が嵌められている。上記したオイルシール70、25、及び、オイルシール2,キャップ37によって、歯車伝動装置100内(外歯歯車24,内歯歯車32等が存在する空間)に封止された潤滑剤が、歯車伝動装置100の外部に漏れることを防止している。
【0033】
図1及び図3を参照し、従動クランクシャフト26を有する利点について説明する。図3は、キャリア8からカバー30を外した状態の歯車伝動装置100の平面図を表している。図3のI-I線に沿った断面が、図1の断面図に対応する。図3に示すように、歯車伝動装置100は、3個の従動クランクシャフト26を備えている。3個の従動クランクシャフト26は、軸線40の周りに等間隔に配置されている。また、3個の従動クランクシャフト26の夫々に、ブレーキ28が取り付けられている。上記したように、従動クランクシャフト26は、外歯歯車24にモータのトルクを伝達しない。従動クランクシャフト26は、外歯歯車24ががたつくことを抑制する。別言すると、従動クランクシャフト26は、外歯歯車24の姿勢を保持する。外歯歯車24の偏心回転がスムーズになり、バックラッシ等を起こりにくくすることができる。また、従動クランクシャフト26にブレーキ28を取り付けることにより、クランクシャフト12にエンコーダ20とブレーキの両方を取り付ける必要がない。その結果、歯車伝動装置100の軸方向の厚みを薄くすることができる。
【0034】
(第2実施例)
図4を参照し、歯車伝動装置200について説明する。歯車伝動装置200は歯車伝動装置100の変形例であり、歯車伝動装置100と同じ部品には、同じ符号又は下二桁が同じ符号を付すことにより説明を省略することがある。
【0035】
歯車伝動装置200は、軸線40と同心の中央貫通孔80を備えている。歯車伝動装置200では、2個の中空アキシャルギャップモータ218,248を使用する。より詳細には第1中空アキシャルギャップモータ218の第1ステータプレート221に貫通孔221aが形成されており、第1ステータ214に貫通孔214aが形成されており、第1ロータ216に貫通孔216aが形成されている。また、第2中空アキシャルギャップモータ248の第2ロータ244に貫通孔244aが形成されており、第2ステータ246に貫通孔246aが形成されており、第2ステータプレート239に貫通孔239aが形成されている。歯車伝動装置ではさらに、カバー230に貫通孔230aが形成されている。
【0036】
中空シャフト82が、貫通孔230aと239aに固定されている。中空シャフト82は、貫通孔221a,214a,216a,244a及び246aを通過している。中央貫通孔80を利用することにより、歯車伝動装置200の内部を、ケーブル,シャフト等を軸線40方向に通過させることができる。
【0037】
歯車伝動装置200は、歯車伝動装置100と同様に、3個の従動クランクシャフト226を備えている。なお、図4では1本のクランクシャフト226だけが現れており、他の2本のクランクシャフト226は隠れている。歯車伝動装置200では、1個の従動クランクシャフト226にエンコーダ220が取り付けられている。他の2個の従動クランクシャフト226にはブレーキ(図示省略)が取り付けられている。
【0038】
実施例の留意点を記す。上記実施例では、一対の深溝玉軸受を用いてクランクシャフトを支持する形態について説明した。深溝玉軸受に代えて、アンギュラ玉軸受、アンギュラころ軸受、円錐ころ軸受等を用いてもよい。クランクシャフトを支持する軸受は、アキシャル方向とラジアル方向の荷重を負担するタイプであればよい。
【0039】
上記実施例では、クランクシャフトが2個の偏心体を備える形態について説明した。偏心体の数は、1個でもよいし、3個以上でもよい。別言すると、外歯歯車の数は、1個でもよいし、3個以上でもよい。なお、クランクシャフトが複数の偏心体を備える場合、夫々の偏心体の偏心の向きが異なり、夫々の偏心体の中心がクランクシャフトの軸線の周りに等間隔に位置するように、偏心体がクランクシャフトに固定されていることが好ましい。なお、偏心体の数(外歯歯車の数)が多くなるほど、歯車伝動装置のバランスを向上させることができる。
【0040】
上記実施例では3個の従動クランクシャフトを備える形態について説明した。従動クランクシャフトの数は、2個でもよいし、4個以上でもよい。歯車伝動装置は従動クランクシャフトを備えていなくてもよい。歯車伝動装置の直径、すなわち、外歯歯車の直径が大きくなる程、外歯歯車ががたつき易くなるので、従動クランクシャフトの有用性が増す。
【0041】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0042】
6:ケース
8:キャリア
12:クランクシャフト
16:第1ロータ
18:第1アキシャルギャップモータ
22:偏心体
24:外歯歯車
32:内歯歯車
46:第2ロータ
48:第2アキシャルギャップモータ
50:深溝玉軸受(一対の軸受)
100:歯車伝動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に内歯歯車が形成されているケースと、
内歯歯車と同軸にケースに支持されているキャリアと、
一対の軸受によってキャリアに支持されているとともに、偏心体を有するクランクシャフトと、
偏心体に係合しており、内歯歯車と噛み合いながら偏心回転する外歯歯車と、
ロータがクランクシャフトに取り付けられているアキシャルギャップモータと、を備えており、
前記ロータが、前記一対の軸受の間に位置することを特徴とする歯車伝動装置。
【請求項2】
2個のアキシャルギャップモータがクランクシャフトに向かい合わせに取り付けられており、
双方のアキシャルギャップモータのロータが、前記一対の軸受の間に位置することを特徴とする請求項1に記載の歯車伝動装置。
【請求項3】
クランクシャフトが、キャリアと同軸に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯車伝動装置。
【請求項4】
クランクシャフトにキャリアの軸線と同心の貫通孔が形成されており、
前記貫通孔内にアキシャルギャップモータのロータが固定されていることを特徴とする請求項3に記載の歯車伝動装置。
【請求項5】
キャリアの軸線からオフセットした位置で外歯歯車に係合しているとともに、外歯歯車の偏心回転に伴って回転する複数の従動クランクシャフトを備えており、
夫々の従動クランクシャフトが、キャリアの軸線の周りに等間隔に配置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の歯車伝動装置。
【請求項6】
クランクシャフトが複数の偏心体を備えており、
夫々の偏心体の偏心の向きが異なり、
夫々の偏心体の中心がクランクシャフトの軸線と同心円上で等間隔に位置するように、偏心体がクランクシャフトに固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の歯車伝動装置。
【請求項7】
偏心体が、前記一対の軸受の間に位置していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の歯車伝動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104434(P2013−104434A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246285(P2011−246285)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】