歯車対の評価装置及びこの評価装置を用いて最適化された歯車対
【課題】各種歯車対のバックラッシュを精度よく定量的に把握することができる歯車対の評価装置を提供する。
【解決手段】演算部6は、ギヤ歯面102G及びピニオン歯面102P上の各3次元座標データを所定の噛合回転位置で互いに関連付けギヤ101Gを基準とする円筒座標系の3次元座標データに変換する。2次元の媒介変数を用いてピニオン歯面102P上の各点を表す関数を作成し、ギヤ歯面102G上の各点に対応するピニオン歯面102P上の各点をニュートン法を用いて演算する。これらの演算により歯面のドライブ側及びコースト側の歯面間隙間情報を求め、この歯面間隙間情報に基づいてバックラッシュ情報を求める。
【解決手段】演算部6は、ギヤ歯面102G及びピニオン歯面102P上の各3次元座標データを所定の噛合回転位置で互いに関連付けギヤ101Gを基準とする円筒座標系の3次元座標データに変換する。2次元の媒介変数を用いてピニオン歯面102P上の各点を表す関数を作成し、ギヤ歯面102G上の各点に対応するピニオン歯面102P上の各点をニュートン法を用いて演算する。これらの演算により歯面のドライブ側及びコースト側の歯面間隙間情報を求め、この歯面間隙間情報に基づいてバックラッシュ情報を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、平歯車や傘歯車或いはハイポイドギヤ等のような外歯歯車対や、アウタロータの内周でインナロータが噛合するトロコイドポンプ等のような内歯歯車対等のような各種歯車対についてのバックラッシュを解析可能な歯車対の評価装置及びこの評価装置を用いて最適化された歯車対に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯車対においては、その噛合形態が外歯式或いは内歯式であるかに関わらず、歯車間で回転をスムーズに無理なく伝達するためのバックラッシュが必要である。しかしながら、バックラッシュは、大きすぎる場合には振動や騒音等の原因となり、逆に、小さすぎる場合には組付誤差を吸収できずに回転不良や摩耗或いは焼付き等の原因となることがある。従って、歯車対に最適なバックラッシュを付与することは、歯車対の性能を決定する上で重要となる。
【0003】
このため、一般には、歯車対を製造するに際し、バックラッシュは設計段階である程度決定され、その値に応じて歯面加工時の工具の刃厚等が調整される。そして、例えば、ヘリカルギヤからなる歯車対の場合、歯面加工された各歯車の歯厚をまたぎ歯厚法やオーバーピン法等を用いて計測し、計測した歯厚に基づき、非特許文献1に開示された方法を用いてバックラッシュを評価(確認)することが可能となっている。そして、このような評価結果等を工具の刃厚等にフィードバックさせることにより、バックラッシュの最適化を図ることが可能となる。
【非特許文献1】小原歯車工業(株)、「歯車中級編 4 歯車のバックラッシ」、[平成20年11月6日検索]、インターネットURL<http://www.khkgears.co.jp/gear_technology/intermediate_guide/KHK406_2.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の非特許文献1に開示されたようなバックラッシュの評価方法は、ヘリカルギヤ等の限られた歯車対以外に適用することが困難である。従って、限られた歯車対以外においては、試験機や実機上でダイヤルゲージ等を用いて人為的にバックラッシュを計測する等の方法が未だに採用されており、人為的誤差のない定量的なバックラッシュの把握が困難であった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、各種歯車対のバックラッシュを精度よく定量的に把握することができる歯車対の評価装置及びこの評価装置を用いて最適化された歯車対を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の歯車対の評価装置は、第1の歯車の歯面上に設定された各格子点での3次元座標データと、上記第1の歯車に噛合する第2の歯車の歯面上に設定された各格子点での3次元座標データとを歯車対の組立諸元を用いて所定の噛合回転位置で互いに関連付け、上記各3次元座標データを上記第1の歯車或いは上記第2の歯車を基準とする円筒座標系上の3次元座標データに変換する座標変換手段と、上記第2の歯車の歯面上に設定した2次元の媒介変数を用い、上記第2の歯車の歯面上の各3次元座標データに基づいて当該第2の歯車の歯面上の点を表す半径座標の関数、軸座標の関数、及び角度座標の関数を作成する関数作成手段と、上記第1の歯車の歯面上の点と上記円筒座標系上で同一周上に存在する上記第2の歯車の歯面上の点を示す上記媒介変数を、上記半径座標の関数及び上記軸座標の関数から演算し、当該演算した媒介変数に基づき、上記第1の歯車の歯面上の点と当該点に対応する上記第2の歯車の歯面上の点との間の隙間を示す相対角度情報を上記角度座標の関数を用いて算出する歯面間隙間情報演算手段と、所定の噛合回転位置において演算される上記第1の歯車と上記第2の歯車とのドライブ歯面側の上記各相対角度情報の中から最小の上記相対角度情報を抽出するとともに、上記所定の噛合回転位置において演算される上記第1の歯車と上記第2の歯車とのコースト歯面側の上記相対角度情報の中から最小の上記相対角度情報を抽出し、ドライブ歯面側の上記相対角度情報の最小値とコースト歯面側の上記相対角度情報の最小値とに基づいて上記所定の噛合回転位置におけるバックラッシュ情報を演算するバックラッシュ情報演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の歯車対は、上記歯車対の評価装置による評価結果を用いて諸元を最適化したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の歯車対の評価装置によれば、各種歯車対のバックラッシュを精度よく定量的に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一形態に係わり、図1は歯車対の評価装置の概略構成図、図2は歯車対の評価装置を実現するためのコンピュータシステムの一例を示す概略構成図、図3は歯車対評価ルーチンを示すフローチャート、図4は歯面間隙間演算サブルーチンを示すフローチャート、図5は包絡面演算サブルーチンを示すフローチャート、図6はバックラッシュ演算サブルーチンを示すフローチャート、図7はハイポイドギヤの斜視図、図8はギヤ及びピニオンの各歯面上の各格子点を規定する円柱座標系を示す説明図、図9はギヤ歯面上の格子点とピニオン歯面上の収束点との関係を示す説明図、図10は曲面座標の計算方法を示す説明図、図11はギヤ歯面を基準とした相対歯面を示す説明図、図12は各ピニオン回転ステップでの相対歯面を示す説明図、図13は図12の各相対歯面を合成した包絡面を示す説明図、図14は歯車対の歯面距離分布を示す説明図、図15は歯面間角度を示す説明図、図16はバックラッシュの解析結果を示す説明図である。
【0010】
図7において、符号100は歯車対を示し、本実施形態において、歯車対100は、例えば、大径をなす一方の歯車である第1の歯車(以下、ギヤともいう)101Gと、小径をなす他方の歯車である第2の歯車(以下、ピニオンともいう)101Pとが互いに噛合するハイポイドギヤである。
【0011】
この歯車対100は、例えば図1に示す評価装置1を用いて評価される。評価装置1は、実際の歯車対100の情報としてギヤ101G及びピニオン101Pの各歯面の3次元座標データ(実測値)やディメンジョンデータ等を入力するための入力部5と、入力された歯車対情報に基づいて各種演算等を行う演算部6と、演算部6で実行される各種プログラムを格納するとともに、入力された歯車対情報や演算部6での演算結果等を適宜記憶する記憶部7と、演算部6での演算結果等を出力する出力部8とを有して構成されている。
【0012】
具体的に説明すると、評価装置1には、ギヤ101Gの実歯面情報として、例えば、ギヤ101Gの注目する歯面(ギヤ歯面)上に設定したj×i個(例えば、歯丈方向に15個×歯筋方向に15個)の各格子点でそれぞれ計測された3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)が入力される。また、評価装置1には、ピニオン101Pの実歯面情報として、例えば、ピニオン101Pの注目する歯面(ピニオン歯面)上に設定したj×i個(例えば、歯丈方向に15個×歯筋方向に15個)の各格子点でそれぞれ計測された3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)が入力される。より具体的には、評価装置1には、ギヤ101Gの実歯面情報として、ギヤ101Gの注目するドライブ側ギヤ歯面102Gd上に設定したj×i個の各格子点でそれぞれ計測された3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)が入力されるとともに、コースト側ギヤ歯面102Gc上に設定したj×i個の各格子点でそれぞれ計測された3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)が入力される。また、評価装置1には、ピニオン101Pの実歯面情報として、ピニオン101Pの注目するドライブ側ピニオン歯面102Pd上に設定したj×i個の各格子点でそれぞれ計測された3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)が入力されるとともに、コースト側ピニオン歯面102Pc上に設定したj×i個の各格子点でそれぞれ計測された3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)が入力される。なお、以下の説明において、ドライブ側及びコースト側のギヤ歯面102Gd,102Gcを総称してギヤ歯面102Gとも呼ぶ。同様に、ドライブ側及びコースト側のピニオン歯面102Pd,102Pcを総称してピニオン歯面102Pとも呼ぶ。
【0013】
ここで、ギヤ101Gの実歯面情報として評価装置1に入力される各3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)は、ギヤ101Gの回転軸上に原点OGを持つX−Y−Zの直交座標系で規定される座標データであり、本実施形態において、Z軸はギヤ101Gの回転軸と同軸上に設定されている。同様に、ピニオン101Pの実歯面情報として評価装置1に入力される各3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)は、ピニオン101Pの回転軸上に原点OPを持つX−Y−Zの直交座標系で規定される座標データであり、本実施形態において、Z軸はピニオン101Pの回転軸と同軸上に設定されている。
【0014】
ここで、本実施形態において、各歯面のドライブ側とコースト側の回転角度の基準を共通化するため、例えば、ドライブ側ピニオン歯面102Pd及びコースト側ピニオン歯面102Pcの各回転角度は、図15(b)に示すように、ピニオン歯溝が与えられる。また、例えば、ドライブ側ギヤ歯面102Gd及びコースト側ギヤ歯面102Gcの各回転角度は、図15(c)に示すように、ギヤ歯厚が与えられる。
【0015】
また、評価装置1には、歯車対100のディメンジョンデータとして、ギヤ比ratio、組立諸元(オフセットΕ、交差角Σ)、及び、各デフレクション値δΕ,δΣ,δG,δP等が入力される。ここで、各デフレクション値は歯車対100に所定トルクが加わった際の撓み等に起因するずれ量(組付誤差量)であり、δΕはオフセットΕのずれ量、δΣは交差角Σのずれ量、δGはギヤ101Gの回転軸方向のずれ量、δPはピニオン101Pの回転軸方向のずれ量である(図7参照)。
【0016】
そして、評価装置1は、ギヤ歯面102G上の各3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)と、ピニオン歯面102P上の各3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)とを歯車対100の組立諸元を用いて所定の噛合回転位置で互いに関連付け、これらを、ギヤ101Gを基準とするR−Z−Θの円筒座標系上の3次元座標データ(rGji,zGji,θGji)及び(rPji,zPji,θPji)に変換する(図8参照)。ここで、評価装置1は、ギヤ歯面102G上の各3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)と、ピニオン歯面102P上の各3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)とを互いに関連付ける際に、デフレクション値を用いた補正を行う。
【0017】
さらに、評価装置1は、ピニオン歯面102P上に、該ピニオン歯面102P上の各格子点の番号と関連付けて2次元の媒介変数(j,i)を設定し、これら媒介変数(j,i)を用い、各3次元座標データ(rPji,zPji,θPji)に基づいて、ピニオン歯面102P上の点を表す半径座標の関数fR(j,i)、軸座標の関数fZ(j,i)、及び角度座標の関数fΘ(j,i)を作成する。
【0018】
さらに、評価装置1は、R−Z−Θの円筒座標系上において、ギヤ歯面102G上の各格子点と同一の周上に存在するピニオン歯面102P上の各点を示す各媒介変数(j,i)を、関数fR(j,i)及びfZ(j,i)からニュートン法を用いて演算し、演算した各媒介変数(j,i)を用いて関数fΘ(j,i)から得られる角度情報θPjiを基に、所定の噛合回転位置においてギヤ歯面102G上の点(格子点)と当該格子点に対応するピニオン歯面102P上の点との隙間を示す相対角度情報(歯面間角度)を算出する。
【0019】
ここで、評価装置1は、ピニオン101Pの1ピッチを所定の分割数で分割した回転角(ピニオン回転角)θs毎に(すなわち、ピニオン回転角θsで規定されるギヤ101Gとピニオン101Pの噛合回転位置毎に)、ギヤ歯面102G上の各格子点を基準とする相対歯面情報を演算する。本実施形態において、評価装置1は、噛合回転位置毎に、ドライブ歯面側の各相対歯面情報とコースト歯面側の各相対歯面情報とを演算する。
【0020】
そして、評価装置1は、各噛合回転位置で演算した相対歯面情報を合成することにより、ギヤ歯面102Gとピニオン歯面102Pとの噛合開始から終了までの相対的な隙間距離を示す包絡面を演算する。さらに、評価装置1は、各噛合回転位置で演算したドライブ歯面側の相対歯面情報とコースト歯面側の相対歯面情報とに基づいて、ギヤ歯面102Gとピニオン歯面102Gとの噛合開始から終了までの各噛合回転位置Mでのバックラッシュ情報として、円筒座標系におけるバックラッシュの角度情報θBL(M)を演算する。
【0021】
すなわち、評価装置1の記憶部7には、上述の各種演算等を行うためのプログラムが格納されており、演算部6は、これらのプログラムを実行することにより、座標変換手段、関数作成手段、歯面間隙間情報演算手段、及び、バックラッシュ情報演算手段としての各機能を実現する。
【0022】
なお、本実施形態の評価装置1は、例えば図2に示すコンピュータシステム10で実現される。コンピュータシステム10は、例えば、コンピュータ本体11に、キーボード12と、表示手段の一例としてのディスプレイ装置13と、プリンタ14とがケーブル15を介して接続されて要部が構成されている。そして、このコンピュータシステム10において、例えば、コンピュータ本体11に配設された各種ドライブ装置やキーボード12等が入力部15として機能するとともに、コンピュータ本体11に内蔵されたCPU,ROM,RAM等が演算部6として機能する。また、コンピュータ本体11に内蔵されたハードディスク等が記憶部7として機能するとともに、ディスプレイ装置13やプリンタ14等が出力部8として機能する。
【0023】
次に、演算部6で実行される歯車対の解析について、図3に示す歯車対評価ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンがスタートすると、演算部6は、先ず、ステップS101において、ギヤ101Gの歯面102G上の各格子点で計測された3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)、ピニオン101Pの歯面102P上の各格子点で計測された3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)、ギヤ比ratio、オフセットΕ、交差角Σ、各組付誤差量δΕ,δΣ,δG,δP等の歯車対情報を読み込む。
【0024】
続くステップS102において、演算部6は、ピニオン101Pの1ピッチ当たりの分割数、及び、1ステップ当りのピニオン回転角θsを、以下の(1)〜(4)式を用いて演算する。
Swagl=(2π/nP)・Swn …(1)
opn=Round((2π/nP)/(Swagl/max(jmax,imax))・chn)
…(2)
θs=(2π/nP)・(1/opn) …(3)
Mmax=Round(Swagl/θs)+Mα …(4)
ここで、Swaglは噛合い始点−終点間のピニオン回転角度、nPはピニオン歯数、Swnは同時噛合い歯数(噛合い率)、opnは1噛合いピッチ当りの角度ステップ数(整数)、Chnはグリッド間隔当りの角度ステップ数、Mαは計算範囲の修正値である。
【0025】
また、Mmaxは計算すべき角度の範囲を示すものであり、歯車回転最大ステップ数Mmaxとする。
【0026】
そして、ステップS102からステップS103に進むと、演算部6は、歯車回転ステップ数M=1をセットし、続くステップS104において、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達したか否かを調べる。
【0027】
そして、演算部6は、ステップS104において、歯車回転ステップ数Mが未だ歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していないと判定した場合にはステップS105に進み、以下のS111までの処理をMmax回繰り返すことにより、ピニオン101Pがθs(rad)回転する噛合回転位置毎の相対歯面データを演算する。なお、個別の説明は省略するが、演算部6は、ステップS105乃至ステップS110の処理において、ドライブ歯面側及びコースト歯面側の相対歯面データをそれぞれ演算する。一方、ステップS104において、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達したと判定すると、演算部6は、ステップS112に進む。
【0028】
ステップS104からステップS105に進むと、演算部6は、現在の歯車回転ステップ数Mに対応するピニオン101P及びギヤ101Gの回転角度rotP,rotGを、以下の(5)、(6)式を用いて演算する。
rotP=θs・(M−1)−(θs・Mmax) …(5)
rotG=rotP・(−1/ratio) …(6)
続くステップS106において、演算部6は、ピニオン101Pの直交座標系上の各格子点の座標をZ軸回りにrotP(rad)移動させるとともに、ギヤ101Gの直交座標系上の各格子点の座標をZ軸回りにrotG(rad)移動させる。さらに、演算部6は、ピニオンの直交座標系を、ギヤ101Gの直交座標系と一致させた状態から(クロスポイントの基準位置から)、オフセットΕだけ移動させるとともに、交差角Σだけ回転させることにより、現ステップ回転位置における両歯面102G,102Pの関係をギヤ101Gの直交座標系上に設定する。すなわち、演算部6は、現ステップ回転位置におけるピニオン歯面102P上の各格子点の座標データ(xPji,yPji,zPji)を、ギヤ101Gの直交座標系上の座標データ(xP’ji,yP’ji,zP’ji)に変換する。その際、演算部6は、ピニオン101P及びギヤ101Gの各座標系の原点OP,OGをデフレクション値δP,δGで補正するとともに、オフセットΕをデフレクション値δΕで補正し、交差角Σをデフレクション値δΣで補正する。
【0029】
続くステップS107において、演算部6は、ステップS106でギヤ101G基準の直交座標系上に表したギヤ101G及びピニオン101Pの全計測点(全ギヤ格子点及びピニオン格子点)の座標データを、以下の(7)〜(12)式を用いて、ギヤ101Gを基準とするR−Z−Θの円筒座標系の座標データにそれぞれ変換する。
rGji=(xGji2+yGji2)1/2 …(7)
zGji=zGji …(8)
θGji=tan−1(yGji/xGji) …(9)
rPji=(xP’ji2+yP’ji2)1/2 …(10)
zPji=zP’ji …(11)
θPji=tan−1(yP’ji/xP’ji) …(12)
続くステップS108において、演算部6は、ピニオン歯面102P上に各格子点の番号と関連付けて2次元の媒介変数j,iを設定し、これら媒介変数j,iを用い、ピニオン歯面102Pの各格子点の座標データ(rPji,zPji,θPji)に基づいて、ピニオン歯面102P上の格子点間を補間する関数fR(i,j)、fZ(i,j)、fθ(i,j)を演算する。ここで、各関数fR(i,j)、fZ(i,j)、fθ(i,j)は、例えば、それぞれスプライン関数で構成される。
【0030】
そして、ステップS108からステップS109に進むと、演算部6は、図4に示す歯面間隙間演算サブルーチンのフローチャートに従って、ギヤ歯面102G上の各格子点とこれら各格子点にピニオン歯面102P上で対応する点との間の歯面間角度(相対歯面情報)を演算する。ここで、以下の説明において、ギヤ歯面102G上の各格子点を規定するグリッド数(j,i)を、ピニオン歯面102P上のものと区別するため、これらを(jG,iG)と表記する。
【0031】
このサブルーチンがスタートすると、演算部6は、ステップS201において、媒介変数の初期値(j=jini,i=iini)を設定し、ステップS202において、初期値jini,iiniで(例えば、jini=iini=8)規定されるピニオン歯面102P上の基準点の座標r1(=R(jini,iini)),z1(=Z(jini,iini))を求める。
【0032】
続くステップS203において、演算部6は、後述する歯面間角度θ(jG,iG,M)の計算を、ギヤ歯面102G上の全格子点jG,iGに対して行ったか否かを調べる。そして、ギヤ歯面102G上の全格子点に対する歯面間角度θ(jG,iG,M)の演算が終了していないと判定すると、演算部6は、歯面間角度θ(jG,iG,M)の計算対象とする格子点を新たな格子点に更新した後、ステップS204に進み、以下のステップS209までの処理により、ニュートン法を用いて歯面間角度θ(jG,iG,M)を演算する。一方、ステップS203において、歯面間角度θ(jG,iG,M)の計算をギヤ歯面102G上の全格子点(jG,iG)に対して行ったと判定すると、演算部6は、サブルーチンを抜け、メインルーチンに戻る。
【0033】
ステップS203からステップS204に進むと、演算部6は、今回歯面間角度θ(jG,iG,M)の計算対象として選択したギヤ歯面102G上の(jG,iG)番目の格子点での3次元座標データを(r0,z0,θ0)とし、このjG,iG番目の格子点とR−Z−Θの円筒座標系上で同一周上に存在するピニオン歯面102P上の点(収束点)での3次元座標データを(rc,zc,θc)とし、さらに、(rc,zc,θc)=(r0,z0,θc)であると仮定して、ピニオン歯面102P上に設定した基準点の3次元座標データ(r1,z1,θ1)と、収束点の3次元座標データ(r0,z0,θc)とから、以下の(13),(14)式を作成する。
r0=r1+(∂r/∂i)Δi+(∂r/∂j)Δj …(13)
z0=z1+(∂z/∂i)Δi+(∂z/∂j)Δj …(14)
ここで、ピニオン歯面102P上の任意の点(j,i)の円筒座標系上での半径座標(R座標)成分rは、以下の(15)式を用いて演算することが可能であり、座標rでのi方向への傾き(∂r/∂i)、及びj方向への傾き(∂r/∂j)は、以下の(16),(17)式を用いて演算することが可能である。
r=−(j1−j)・(i1−i)・R(j0,i0)
−(j1−j)・(i−i0)・R(j0,i1)
−(j−j0)・(i1−i)・R(j1,i0)
−(j−j0)・(i−i0)・R(j1,i1)
+(j1−j)・fRi0(i)+(j−j0)・fRj1(i)
+(i1−i)・fRi0(j)+(i−i0)・fRi1(j)
…(15)
∂r/∂i
=(j1−j)・{R(j0,i0)−R(j0,i1)+(∂fRj0(i)/∂i)}
+(j−j0)・{R(j1,i0)−R(j1,i1)+(∂fRj1(i)/∂i)}
−R(j,i0)+R(j,i1)
…(16)
∂r/∂j
=(i1−i)・{R(j0,i0)−R(j1,i0)+(∂fRi0(j)/∂j)}
+(i−i0)・{R(j0,i1)−R(j1,i1)+(∂fRi1(j)/∂j)}
−R(j0,i)+R(j1,i)
…(17)
なお、(15)〜(17)式中において、fRj0(i)、fRj1(i)、fRj0(j)、fRi1(j)は、図10に示すように、点(j,i)を囲繞する関数上の任意点での半径座標成分であり、これらは上述のステップS108で作成した関数に基づいて演算される。R(j0,i0)、R(j0,i1)、R(j1,i0)、R(j1,i1)は点(j,i)を囲繞する各格子点での半径座標成分である。
【0034】
同様に、ピニオン歯面102P上の任意の点(j,i)の円筒座標系上での軸座標(Z座標)成分zは、以下の(18)式を用いて演算することが可能であり、座標zでのi方向への傾き(∂z/∂i)、及びj方向への傾き(∂z/∂j)は、以下の(19),(20)式を用いて演算することが可能である。
【0035】
z=−(j1−j)・(i1−i)・Z(j0,i0)
−(j1−j)・(i−i0)・Z(j0,i1)
−(j−j0)・(i1−i)・Z(j1,i0)
−(j−j0)・(i−i0)・Z(j1,i1)
+(j1−j)・fZj0(i)+(j−j0)・fZj1(i)
+(i1−i)・fZi0(j)+(i−i0)・fZi1(j)
…(18)
∂z/∂i
=(j1−j)・{Z(j0,i0)−Z(j0,i1)+(∂fZj0(i)/∂i)}
+(j−j0)・{Z(j1,i0)−Z(j1,i1)+(∂fZj1(i)/∂i)}
−Z(j,i0)+Z(j,i1)
…(19)
∂z/∂j
=(i1−i)・{Z(j0,i0)−Z(j1,i0)+(∂fZi0(j)/∂j)}
+(i−i0)・{Z(j0,i1)−Z(j1,i1)+(∂fZi1(j)/∂j)}
−Z(j0,i)+Z(j1,i)
…(20)
なお、(18)〜(20)式中において、fZj0(i)、fZj1(i)、fZi0(j)、fZi1(j)は、点(j,i)を囲繞する関数上の任意点での軸座標成分であり、これらは上述のステップS108で作成した関数に基づいて演算される。Z(j0,i0)、Z(j0,i1)、Z(j1,i0)、Z(i1,j1)は点(j,i)を囲繞する各格子点での軸座標成分である。
【0036】
そして、演算部6は、(13)、(14)式による連立方程式を解くことにより、基準点から収束点までの媒介変数の偏差Δi,Δjを求める。
【0037】
続くステップS205において、演算部6は、ステップS204で求めた偏差Δi,Δjを用い、以下の(21)、(22)式を用いて基準点の媒介変数(j,i)を更新する。
i=i+Δi …(21)
j=j+Δj …(22)
そして、ステップS206に進むと、演算部6は、ステップS205で更新した媒介変数(j,i)を基に、上述の(15)、(18)式、及び以下の(23)式を用いて基準点での3次元座標データ(r1,z1,θ1)を更新する。
θ=−(j1−j)・(i1−i)・θ(j0,i0)
−(j1−j)・(i−i0)・θ(j0,i1)
−(j−j0)・(i1−i)・θ(j1,i0)
−(j−j0)・(i−i0)・θ(j1,i1)
+(j1−j)・fθj0(i)+(j−j0)・fθj1(i)
+(i1−i)・fθi0(j)+(i−i0)・fθi1(j)
…(23)
なお、(23)式中において、fθj0(i)、fθj1(i)、fθi0(j)、fθi1(j)は、点(j,i)を囲繞する各点での角度座標成分であり、これらは上述のステップS108で作成した関数に基づいて演算される。θ(j0,i0)、θ(j0,i1)、θ(j1,i0)、θ(j1,i1)は点(j,i)を囲繞する各格子点での角度座標成分である。
【0038】
そして、ステップS207に進むと、演算部6は、ステップS206で演算した基準点のR軸座標成分r1及びZ軸座標成分z1が収束点のR座標成分rc及びZ軸座標成分zcに収束しているか否か(すなわち、r1及びz1とr0及びz0とが予め設定した範囲内でそれぞれ一致するか否か)を調べ、収束していないと判定した場合にはステップS208に進み、収束していると判定した場合にはステップS208に進む。
【0039】
ステップS207からステップS208に進むと、演算部6は、現在選択されているギヤ歯面102G上の格子点に対して行われたステップS204〜S206の演算回数が例えば10回以上であるか否かを調べ、演算回数が10回よりも少ない場合にはステップS204に戻り、演算回数が10回以上である場合にはステップS209に進む。
【0040】
そして、ステップS207或いはステップS208からステップS209に進むと、演算部6は、相対角度情報として、現在のギヤグリッドjG,iG、歯車回転ステップ数Mにおける歯面間角度θ(jG,iG,M)を演算した後、ステップS203に戻る。ここで、ステップS207で基準点のR軸座標成分r1及びZ軸座標成分z1が収束点のR座標成分rc及びZ軸座標成分zcに収束したと判定してステップS209に進んだ場合(すなわち、現在選択されているギヤ歯面102G上の格子点に対応する点がピニオン歯面102P内に存在する場合)、歯面間角度θ(jG,iG,M)は、以下の(24)式によって算出される。
θ(jG,iG,M)=θ1−θ0 …(24)
一方、ステップS208からステップS209に進んだ場合、現在選択されているギヤ歯面102G上の格子点に対応する点がピニオン歯面102P外に存在することを示す判定用の角度値(例えば、θ(jG,iG,M)=2000)が設定される。
【0041】
メインルーチンにおいて、ステップS109からステップS110に進むと、演算部6は、ステップS109で演算した各歯面間角度θ(jG,iG,M)を基に、ギヤ歯面102Gを基準とする相対歯面データ(例えば、図11参照)を作成し、続くステップS111において、歯車回転ステップMをインクリメント(M=M+1)した後、ステップS104に戻る。
【0042】
また、ステップS104からステップS112に進むと、演算部6は、図5に示す包絡面演算サブルーチンのフローチャートに従って、ギヤ歯面102Gとピニオン歯面102Pの噛合開始から終了までの歯面間の相対的な隙間距離を示す包絡面の演算を行う。
【0043】
このサブルーチンがスタートすると、演算部6は、ステップS301において、歯車回転ステップM=1をセットし、続くステップS302において、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達したか否かを調べる。
【0044】
そして、演算部6は、ステップS302において、歯車回転ステップ数Mが未だ歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していないと判定した場合には、ステップS303に進む。一方、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していると判定した場合には、演算部6は、ステップS307に進む。
【0045】
ステップS302からステップS303に進むと、演算部6は、現歯車回転ステップ数Mにおいて、ギヤ歯面102G上の全格子点での歯面間角度θ(jG,iG,M)に対して後述する歯面間角度最小値θSmin(M)の抽出計算が終了したか否かを調べる。
【0046】
そして、ステップS303において、全格子点での歯面間角度θ(jG,iG,M)に対して歯面間角度最小値θSminの抽出計算が終了していないと判定すると、演算部6は、ステップS304に進み、以下の(25)式により、現歯車回転ステップ数Mでの歯面間角度最小値θSmin(M)を、現在選択されている格子点の歯面間角度θ(jG,iG,M)で適宜更新する。
θSmin(M)=min(θ(jG,iG,M)) …(25)
さらに、演算部6は、現在選択されている格子点の歯面間角度θ(jG,iG,M)で歯面間角度最小値θSmin(M)が更新された場合には、現歯車回転ステップMにおける相対歯面の最凸点の座標(POCj(M),POCi(M))を現格子点の(jG,iG)に更新した後、ステップS303に戻る。
【0047】
一方、ステップS303において、全格子点での歯面間角度θ(jG,iG,M)に対して歯面間角度最小値θSminの抽出計算が終了したと判定すると、演算部6は、ステップS305に進む。
【0048】
そして、ステップS305において、演算部6は、以下の(26)式により、全歯車回転ステップでの歯面間角度最小値θminminを、現歯車回転ステップMでの歯面間角度最小値θSminで適宜更新する。
θminmin=min(θSmin(M)) …(26)
さらに、演算部6は、現歯車回転ステップMの歯面間角度最小値θSminで全歯車回転ステップの歯面間角度最小値θminminが更新された場合には、全歯車回転ステップにおける相対歯面の最凸点(すなわち、歯車対100の最凸点)の座標(APEXj,APEXi)を現歯車回転ステップMにおける最凸点の座標(POCj(M),POCi(M))に更新する。
【0049】
そして、ステップS305からステップS306に進むと、演算部6は、歯車回転数ステップMを更新(M=M+1)した後、ステップS302に戻る。
【0050】
また、ステップS302からステップS307に進むと、演算部6は、歯車回転ステップ数M毎にそれぞれ演算された全歯面間角度θ(jG,iG,M)を用い、ステップS312までの処理により、ギヤ歯面102Gとピニオン歯面102Pの噛合開始から終了までの相対的な隙間距離をギヤ歯面102G上の格子点(jG,iG)毎に角度値で示す相対歯面データθEO(jG,iG)を演算する。
【0051】
具体的に説明すると、演算部6は、ステップS307において、歯車回転ステップ数M=1をセットし、続くステップS308において、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達したか否かを調べる。
【0052】
そして、ステップS308において、歯車回転ステップ数Mが未だ歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していないと判定した場合には、演算部6は、ステップS309に進む。一方、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していると判定した場合には、演算部6は、ステップS313に進む。
【0053】
ステップS308からステップS309に進むと、演算部6は、現歯車回転ステップ数Mにおいて、ギヤ歯面102G上の全格子点(jG,iG)に対して、後述する相対歯面データθEOM(jG,iG,M)の計算が終了したか否かを調べる。
【0054】
そして、ステップS309において、全格子点(jG,iG)に対して相対歯面データθEOM(jG,iG,M)の計算が終了していないと判定すると、演算部6は、ステップS310に進み、以下の(27)式により、歯面間角度最小値θminminを基準とする相対歯面データθEOM(Ease−Off)を演算する。
θEOM(jG,iG,M)=θ(jG,iG,M)−θminmin …(27)
続くステップS311において、演算部6は、以下の(28)式により、現在選択されている格子点(jG,iG)の相対歯面データθEOM(jG,iG,M)を用いて、対応する相対歯面データθEO(jG,iG)を適宜更新した後、ステップS309に戻る。
θEO(jG,iG)=min(θEOM(jG,iG,M)) …(28)
一方、ステップS309において、現歯車回転ステップ数Mでの全格子点(jG,iG)に対して相対歯面データθEOM(jG,iG,M)の計算が終了したと判定すると、演算部6は、ステップS312に進み、歯車回転ステップ数Mをインクリメント(M=M+1)した後、ステップS308に戻る。
【0055】
また、ステップS308からステップS313に進むと、演算部6は、以下の(29)式により、ギヤ歯面102G上の格子点(jG,iG)毎の相対歯面データθEO(jG,iG)を、距離情報(相対歯面データEO(jG,iG)に変換した後、サブルーチンを抜け、メインルーチンに戻る。
EO(jG,iG)=θEO(jG,iG)・r0(jG,iG) …(29)
これにより、歯車回転ステップ数M毎の各相対歯面(例えば、図12参照)を合成した包絡面(例えば、図13参照)が生成される。ここで、演算部6は、生成した3次元の包絡面データを2次元の等高線データ(例えば、図14参照)に変換することも可能となっており、当該等高線データをディスプレイ装置13等の出力部を通じて出力することも可能となっている。
【0056】
ステップS112からステップS113に進むと、演算部6は、図6に示すバックラッシュ演算サブルーチンに従って、噛合回転位置M毎のバックラッシュ情報を演算する。このサブルーチンにおいて、演算部6は、バックラッシュ情報として、円筒座標系(R−Z−Θ)上におけるバックラッシュ角度θBLを演算する。
【0057】
このサブルーチンがスタートすると、演算部6は、ステップS401において、歯車回転ステップM=1をセットし、続くステップS402において、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達したか否かを調べる。
【0058】
そして、演算部6は、ステップS402において、歯車回転ステップ数Mが未だ歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していないと判定した場合には、ステップS403に進む。一方、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していると判定した場合には、演算部6は、サブルーチンを抜けた後、メインルーチンを終了する。
【0059】
ステップS402からステップS403に進むと、演算部6は、現歯車回転ステップ数Mにおいて、ギヤ歯面102G上の全格子点(ドライブ側ギヤ歯面102Gd上及びコースト側ギヤ歯面102Gc上それぞれにおける全格子点)での歯面間角度θ(jG,iG,M)に対して後述する歯面間角度最小値θSmin(M)の抽出計算が終了したか否かを調べる。
【0060】
そして、ステップS403において、全格子点での歯面間角度θ(jG,iG,M)に対して歯面間角度最小値θSminの抽出計算が終了していないと判定すると、演算部6は、ステップS404に進み、上述の(25)式により、現歯車回転ステップ数Mでの歯面間角度最小値θSmin(M)を、現在選択されている格子点の歯面間角度θ(jG,iG,M)で適宜更新する。
【0061】
さらに、演算部6は、現在選択されている格子点の歯面間角度θ(jG,iG,M)で歯面間角度最小値θSmin(M)が更新された場合には、現歯車回転ステップMにおける相対歯面の最凸点の座標(POCj(M),POCi(M))を現格子点の(jG,iG)に更新した後、ステップS403に戻る。
【0062】
一方、ステップS403において、全格子点での歯面間角度θ(jG,iG,M)に対して歯面間角度最小値θSminの抽出計算が終了したと判定すると、演算部6は、ステップS405に進む。
【0063】
そして、ステップS405において、演算部6は、ステップS404で抽出したドライブ側及びコースト側の各歯面間角度最小値θSmind(M),θSminc(M)を用い(図15(a)参照)、以下の(30)式により、現歯車回転ステップ数Mでのバックラッシュ角度θBL(M)を演算する。
θBL(M)=θSmind(M)+θSminc(M)−2π …(30)
そして、ステップS405からステップS406に進むと、演算部6は、歯車回転ステップ数Mをインクリメント(M=M+1)した後、ステップS403に戻る。
【0064】
ここで、演算部6は、歯車回転ステップ数M毎に演算した各バックラッシュ角度θBL(M)に対し、例えば、ギヤ101のピッチ円半径r’Gを乗算することにより噛合回転位置毎のバックラッシュ量(距離)BLを演算することが可能となっており(例えば、図16参照)、当該バックラッシュ量の推移を、ディスプレイ装置13等の出力部を通じて出力することも可能となっている。
【0065】
このような実施形態によれば、ギヤ歯面102G上の各3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)とピニオン歯面102P上の各3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)とを歯車対100の組立諸元を用いて所定の噛合回転位置で互いに関連づけてギヤ101Gを基準とする円筒座標系の3次元座標データ(rGji,zGji,θGji)及び(rPji,zPji,θPji)に変換するとともに、ピニオン歯面102P上に設定した2次元の媒介変数(j,i)を用い各3次元座標データ(rPji,zPji,θPji)に基づいてピニオン歯面102P上の点を表す関数fR(j,i)、fZ(j,i)、fΘ(j,i)を作成することにより、ギヤ歯面102G上の各点(格子点)に対応するピニオン歯面102P上の各点を示す媒介変数(j,i)を、関数fR(j,i)、fZ(j,i)からニュートン法を用いて容易且つ精度よく演算することができる。そして、演算した各媒介変数(j,i)を用いて関数fΘ(j,i)から得られる角度情報θPjiを基に、所定の噛合回転位置においてギヤ歯面102G上の点(格子点)と当該格子点に対応するピニオン歯面102P上の点との隙間を示す歯面間角度θ(jG,iG,M)を求めることにより、歯車対の基準歯面に関する情報を指標とすることなく、実歯面の計測情報に基づいて精度のよい歯面解析を実現することができる。そして、所定の噛合回転位置において演算されるドライブ歯面側の歯面間角度θ(jG,iG,M)の中から最小値θSmind(M)を抽出するとともに、コースト歯面側の歯面間角度θ(jG,iG,M)の中から最小値θSminc(M)を抽出し、これらに基づいて当該噛合回転位置におけるバックラッシュ情報(バックラッシュ角度θBL(M))を算出することにより、人為的な計測等に頼ることなく、歯車対のバックラッシュ情報を精度よく定量的に把握することができる。
【0066】
その際、歯車対100の組立諸元を用いて互いに関連付けた各3次元座標データを、歯車対100のデフレクション値で補正することにより、歯面解析の精度をより向上させることができる。
【0067】
そして、このようなバックラッシュについての評価結果等をフィードバックして歯車対の諸元を最適化することにより、振動や騒音等の抑制と、回転不良や摩耗或いは焼付き等の防止とを高いレベルで両立した歯車対100を得ることができる。
【0068】
ここで、上述の解析においては歯車対100の各歯面102G,102P上の実測データを用いてバックラッシュ等の評価を行った一例について説明したが、例えば、設計段階で得られる理論的な歯面データをもちいてバックラッシュ等の評価を行うことも可能である。
【0069】
ところで、上述の歯車対評価は、ハイポイドギヤ以外の各種外歯式歯車対にも適用が可能であることは勿論のこと、各種内歯式の歯車対にも広く適用可能であり、例えば、広義の意味で内歯式の歯車対として分類されるトロコイド式のオイルポンプ200(図17参照)等にも適用することが可能である。ここで、図示のように、オイルポンプ200は、第1の歯車としてのアウタロータ201Oの内周に、第2の歯車としてのインナロータ201Iが噛合して要部が構成されている。
【0070】
このオイルポンプ200の評価では、例えば、上述のギヤ101Gに対してアウタロータ201Oが対応付けられ、上述のピニオン101Pに対してインナロータ201Iが対応付けられる。そして、例えば、図18に示すように、インナロータ201Iの回転中心且つ歯幅中央に直交座標系(X−Y−Z)の原点が設定され、この直交座標系(及び、当該直交座標系に基づく円筒座標系(R−Z−Θ))のZ軸は、各ロータ201O,201Iの回転軸に設定される。
【0071】
演算部6は、基本的には、図3に示した歯車対評価ルーチンのフローチャートに従って、オイルポンプ200の評価を行う。但し、このようなオイルポンプ200の評価を行う場合、ステップS101において、演算部6は、オフセットEとして両ロータ201O,201Iの中心軸間距離を読み込むとともに、交差角Σとして「0」を読み込む。また、ステップS101において、演算部6は、デフレクション値(組付誤差量)として、X軸方向の誤差量δX、Y軸方向の誤差量δY、X軸回りの誤差量δXR、Y軸回りの誤差量δYR(図18参照)をそれぞれ読み込む。また、オイルポンプ200のアウタロータ201Oとインナロータ201Iとは互いに同一方向に回転することに鑑み、ステップS105において、演算部6は、歯車回転ステップMに対応するアウタロータ201O及びインナロータ201Iの回転角度rotP,rotGを、以下の(5)’、(6)’式を用いて演算する。
rotP=θs・(M−1)−(θs・Mmax) …(5)’
rotG=rotP・(1/ratio) …(6)’
その他の処理について、演算部6は、上述のハイポイドギヤ100と略同様の処理を行う。これにより、オイルポンプ200についても、歯面間隙間情報やバックラッシュ情報等を精度よく定量的に把握することができる。
【0072】
ここで、上述のように、ハイポイドギヤのみならずオイルポンプ等の各種歯車対に対する評価を実現するため、例えば、図19に示すように、演算部6は、ディスプレイ13装置等の出力部を通じて表示される組付誤差量の設定画面上に、多岐に亘る組付誤差量についての項目を表示させる。具体的には、演算部6は、例えば、主としてハイポイドギヤ等のような食違軸を有する歯車対に対応する項目E,P,G,Σを表示するとともに、主としてオイルポンプ等のように平行軸を有する歯車対に対応する項目としてX,Y,XR,YRを表示する。さらに、演算部6は、該当する歯車対についての組付誤差量の組み合わせをユーザ等が複数パターン設定することを可能とするため、組付誤差量の設定画面上に各項目に対応する複数段(例えば、10段)の入力枠を表示する。なお、図示の例は、オイルポンプ200に対する組付誤差量を設定する場合の一例について説明するもので、例えば、第1段目には、オイルポンプ200に対応する全項目(X、Y、XR、及び、YR)に組付誤差量を設定しない場合が示されている。また、例えば、第2段目には、X軸方向にのみ所定の組付誤差量を与えた場合が示されている。
【0073】
ところで、評価装置1は、上述の歯車対評価ルーチンを用い、評価対象となる歯車対がバックラッシュを確保する上で許容される限界組付誤差量を検索することが可能となっている。この限界組付誤差量の検索において、評価装置1は、例えば、上述の図3に示した歯車対評価ルーチンのステップS101で読み込む各種組付誤差量を可変設定し、設定した組付誤差量毎のバックラッシュ情報を逐次演算する。そして、例えば、各項目の組付誤差量について、バックラッシュを確保する上で限界となる値を特定する。すなわち、評価装置1の記憶部7には、上述の各種演算等を行うためのプログラムが格納されており、演算部6は、これらのプログラムを実行することにより限界組付誤差量検索手段としての機能を実現する。
【0074】
また、評価装置1は、上述の歯車対評価ルーチンを用い、評価対象となる歯車対の各種組付誤差に対するバックラッシュ特性を演算することが可能となっている。このバックラッシュ特性の演算において、評価装置1は、例えば、上述の図3に示した歯車対評価ルーチンのステップS101で読み込む各種組付誤差量を予め設定された範囲内で可変設定し、設定した組付誤差量毎のバックラッシュ情報を逐次演算する。そして、例えば、可変設定された各組付誤差量とバックラッシュ情報との関係に基づいて、組付誤差量に対するバックラッシュ特性情報を生成する。すなわち、評価装置1の記憶部7には、上述の各種演算等を行うためのプログラムが格納されており、演算部6は、これらのプログラムを実行することによりバックラッシュ特性演算手段としての機能を実現する。
【0075】
次に、演算部6で実行される限界組付誤差検索について、図20に示す限界組付誤差検索ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンがスタートすると、演算部6は、先ず、ステップS501において、全項目の組付誤差についてバックラッシュ演算が終了したか否かを調べる。例えば、図17に示した上述のオイルポンプ200が評価対象である場合、組付誤差量X,Y,XR,YR全て異ついてバックラッシュ演算が終了したか否かを調べる。
【0076】
そして、ステップS501において、全ての項目の組付誤差量についてのバックラッシュ演算が終了していないと判定すると、演算部6は、ステップS502に進み、未だ選択されていない項目の中から所定の項目を選択し、当該選択した項目についてのプラス側の組付誤差量e1及びマイナス側の組付誤差量e2をそれぞれ「0」に設定した後、ステップS503に進む。
【0077】
そして、ステップS503において、演算部6は、現在選択された項目について設定されているプラス側及びマイナス側の各組付誤差量e1,e2を用い、図3に示した歯車対評価ルーチンに従ってバックラッシュ情報(バックラッシュ角度θBL(M))をそれぞれ演算する。なお、この場合において、現在選択されていない項目の組付誤差量は、例えば、一律「0」が設定される。或いは、ユーザ等によって設定された任意の各組付誤差量を用いることも可能である。そして、各組付誤差量e1,e2を用いて噛合開始から噛合終了までの各噛合回転位置M毎のバックラッシュ角度θBL(M)の演算が終了すると、演算部6は、各バックラッシュ情報θBL(M)の中の最小値をそれぞれ抽出し、これらを距離情報に換算した値(バックラッシュBL1,BL2)を演算する。
【0078】
ステップS503からステップS504に進むと、演算部6は、ステップS503で算出したバックラッシュBL1、及び、BL2が共に負値であるか否かを調べる。
【0079】
そして、ステップS504において、バックラッシュBL1、或いは、BL2の少なくとも何れか一方が正値である場合、演算部6は、ステップS505に進み、正値であった方の組付誤差量を再設定e(=e±Δe)して,ステップS503に戻る。
【0080】
一方、ステップS504において、バックラッシュBL1、及び、BL2が負値である場合、演算部6は、ステップS501に戻る。
【0081】
また、ステップS501において、全ての項目の組付誤差量についてバックラッシュ演算が終了したと判定すると、演算部6は、ステップS506に進み、各項目において、BL1<0となったときの組付誤差量e1をプラス側の限界組付誤差として認識するとともに、BL2<0となったときの組付誤差量e2をマイナス側の限界組付誤差として認識し、これら各項目のプラス側及びマイナス側の各限界組付誤差を出力データとしてセットした後、ルーチンを終了する。
【0082】
次に、演算部6で実行されるバックラッシュ特性演算について、図21に示すバックラッシュ特性演算ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンがスタートすると、演算部6は、先ず、ステップS601において、全項目の組付誤差についてバックラッシュ演算が終了したか否かを調べる。例えば、図17に示した上述のオイルポンプ200が評価対象である場合、組付誤差量X,Y,XR,YR全て異ついてバックラッシュ演算が終了したか否かを調べる。
【0083】
そして、ステップS601において、全ての項目の組付誤差量についてのバックラッシュ演算が終了していないと判定すると、演算部6は、ステップS602に進み、未だ選択されていない項目の中から所定の項目を選択する。ここで、このバックラッシュ特性演算に際し、評価装置1には、入力部5を通じたユーザ入力等によって、各項目の組付誤差量について解析を組付誤差量の範囲(emin〜emax)が予め設定されるようになっており、演算部6は、選択された項目の組付誤差量の下限値eminを組付誤差量eの初期値に設定(e=emin)した後、ステップS603に進む。
【0084】
そして、ステップS603において、演算部6は、現在選択された項目について設定されている組付誤差量eを用い、図3に示した歯車対評価ルーチンに従ってバックラッシュ情報(バックラッシュ角度θBL(M))を演算する。なお、この場合において、現在選択されていない項目の組付誤差量は、例えば、一律「0」が設定される。或いは、ユーザ等によって設定された任意の各組付誤差量を用いることも可能である。そして、組付誤差量eを用いて噛合開始から噛合終了までの各噛合回転位置M毎のバックラッシュ角度θBL(M)の演算が終了すると、演算部6は、各バックラッシュ情報θBL(M)の中の最小値を抽出し、これを距離情報に換算した値(バックラッシュBL)を演算する。
【0085】
ステップS603からステップS604に進むと、演算部6は、現在の組付誤差量eが予め設定された最大値emaxよりも大きいか否かを調べる。
【0086】
そして、ステップS604において、現在の組付誤差量eが最大値emax以下であると判定した場合、演算部6は、ステップS605に進み、現在の組付誤差量eを設定量Δe増加させて新たな組付誤差量e(=e+Δe)を設定した後、ステップS603に戻る。
【0087】
一方、ステップS604において、現在の組付誤差量eが予め設定された最大値emaxよりも大きいと判定した場合、演算部6は、ステップS601に戻る。
【0088】
また、ステップS601において、全ての項目の組付誤差量についてバックラッシュ演算が終了したと判定すると、演算部6は、ステップS606に進み、各項目毎に組付誤差量を変化させたときのバックラッシュBLの推移を示すバックラッシュ情報(例えば、図22,23参照)を出力データとしてセットした後、ルーチンを終了する。
【0089】
ここで、上述の実施形態においては、歯車対の各歯面上の3次元座標データとして実測値を用いた一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、歯車対の設計値に基づき設計段階で得られる理論歯面データを用いることも可能である。そして、例えば、このように理論歯面データを用いて歯車対の評価を行い、バックラッシュ等に対する諸元の最適化を行った後、当該諸元に基づいて製造された歯車対の各歯面上で実測された3次元座標データを用いて歯車対を再度評価してバックラッシュ等に対する諸元の最適化を行うことにより、歯車対の諸元設計を効率よく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】歯車対の評価装置の概略構成図
【図2】歯車対の評価装置を実現するためのコンピュータシステムの一例を示す概略構成図
【図3】歯車対評価ルーチンを示すフローチャート
【図4】歯面間隙間演算サブルーチンを示すフローチャート
【図5】包絡面演算サブルーチンを示すフローチャート
【図6】バックラッシュ演算サブルーチンを示すフローチャート
【図7】ハイポイドギヤの斜視図
【図8】ギヤ及びピニオンの各歯面上の各格子点を規定する円柱座標系を示す説明図
【図9】ギヤ歯面上の格子点とピニオン歯面上の収束点との関係を示す説明図
【図10】曲面座標の計算方法を示す説明図
【図11】ギヤ歯面を基準とした相対歯面を示す説明図
【図12】各ピニオン回転ステップでの相対歯面を示す説明図
【図13】図12の各相対歯面を合成した包絡面を示す説明図
【図14】歯車対の歯面距離分布を示す説明図
【図15】歯面間角度を示す説明図
【図16】バックラッシュの解析結果を示す説明図
【図17】オイルポンプの要部断面図
【図18】バックラッシュ演算時に定義されるインナロータとアウタロータの座標を示す説明図
【図19】組付誤差の設定画面を示す説明図
【図20】限界組付誤差検索ルーチンを示すフローチャート
【図21】バックラッシュ特性演算ルーチンを示すフローチャート
【図22】図18のX軸方向及びY軸方向に組付誤差を与えたときのバックラッシュの変化を示す説明図
【図23】図18のX軸回り及びY軸回りに組付誤差を与えたときのバックラッシュの変化を示す説明図
【符号の説明】
【0091】
1 … 評価装置
6 … 演算部(座標変換手段、関数作成手段、歯面間隙間情報演算手段、バックラッシュ情報演算手段、限界組付誤差演算手段、バックラッシュ特性演算手段)
100 … ハイポイドギヤ(歯車対)
101G … ギヤ(第1の歯車)
101P … ピニオン(第2の歯車)
102G … ギヤ歯面(第1の歯車の歯面)
102P … ピニオン歯面(第2の歯車の歯面)
200 … オイルポンプ(歯車対)
201O … アウタロータ(第1の歯車)
201I … インナロータ(第2の歯車)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、平歯車や傘歯車或いはハイポイドギヤ等のような外歯歯車対や、アウタロータの内周でインナロータが噛合するトロコイドポンプ等のような内歯歯車対等のような各種歯車対についてのバックラッシュを解析可能な歯車対の評価装置及びこの評価装置を用いて最適化された歯車対に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯車対においては、その噛合形態が外歯式或いは内歯式であるかに関わらず、歯車間で回転をスムーズに無理なく伝達するためのバックラッシュが必要である。しかしながら、バックラッシュは、大きすぎる場合には振動や騒音等の原因となり、逆に、小さすぎる場合には組付誤差を吸収できずに回転不良や摩耗或いは焼付き等の原因となることがある。従って、歯車対に最適なバックラッシュを付与することは、歯車対の性能を決定する上で重要となる。
【0003】
このため、一般には、歯車対を製造するに際し、バックラッシュは設計段階である程度決定され、その値に応じて歯面加工時の工具の刃厚等が調整される。そして、例えば、ヘリカルギヤからなる歯車対の場合、歯面加工された各歯車の歯厚をまたぎ歯厚法やオーバーピン法等を用いて計測し、計測した歯厚に基づき、非特許文献1に開示された方法を用いてバックラッシュを評価(確認)することが可能となっている。そして、このような評価結果等を工具の刃厚等にフィードバックさせることにより、バックラッシュの最適化を図ることが可能となる。
【非特許文献1】小原歯車工業(株)、「歯車中級編 4 歯車のバックラッシ」、[平成20年11月6日検索]、インターネットURL<http://www.khkgears.co.jp/gear_technology/intermediate_guide/KHK406_2.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の非特許文献1に開示されたようなバックラッシュの評価方法は、ヘリカルギヤ等の限られた歯車対以外に適用することが困難である。従って、限られた歯車対以外においては、試験機や実機上でダイヤルゲージ等を用いて人為的にバックラッシュを計測する等の方法が未だに採用されており、人為的誤差のない定量的なバックラッシュの把握が困難であった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、各種歯車対のバックラッシュを精度よく定量的に把握することができる歯車対の評価装置及びこの評価装置を用いて最適化された歯車対を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の歯車対の評価装置は、第1の歯車の歯面上に設定された各格子点での3次元座標データと、上記第1の歯車に噛合する第2の歯車の歯面上に設定された各格子点での3次元座標データとを歯車対の組立諸元を用いて所定の噛合回転位置で互いに関連付け、上記各3次元座標データを上記第1の歯車或いは上記第2の歯車を基準とする円筒座標系上の3次元座標データに変換する座標変換手段と、上記第2の歯車の歯面上に設定した2次元の媒介変数を用い、上記第2の歯車の歯面上の各3次元座標データに基づいて当該第2の歯車の歯面上の点を表す半径座標の関数、軸座標の関数、及び角度座標の関数を作成する関数作成手段と、上記第1の歯車の歯面上の点と上記円筒座標系上で同一周上に存在する上記第2の歯車の歯面上の点を示す上記媒介変数を、上記半径座標の関数及び上記軸座標の関数から演算し、当該演算した媒介変数に基づき、上記第1の歯車の歯面上の点と当該点に対応する上記第2の歯車の歯面上の点との間の隙間を示す相対角度情報を上記角度座標の関数を用いて算出する歯面間隙間情報演算手段と、所定の噛合回転位置において演算される上記第1の歯車と上記第2の歯車とのドライブ歯面側の上記各相対角度情報の中から最小の上記相対角度情報を抽出するとともに、上記所定の噛合回転位置において演算される上記第1の歯車と上記第2の歯車とのコースト歯面側の上記相対角度情報の中から最小の上記相対角度情報を抽出し、ドライブ歯面側の上記相対角度情報の最小値とコースト歯面側の上記相対角度情報の最小値とに基づいて上記所定の噛合回転位置におけるバックラッシュ情報を演算するバックラッシュ情報演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の歯車対は、上記歯車対の評価装置による評価結果を用いて諸元を最適化したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の歯車対の評価装置によれば、各種歯車対のバックラッシュを精度よく定量的に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一形態に係わり、図1は歯車対の評価装置の概略構成図、図2は歯車対の評価装置を実現するためのコンピュータシステムの一例を示す概略構成図、図3は歯車対評価ルーチンを示すフローチャート、図4は歯面間隙間演算サブルーチンを示すフローチャート、図5は包絡面演算サブルーチンを示すフローチャート、図6はバックラッシュ演算サブルーチンを示すフローチャート、図7はハイポイドギヤの斜視図、図8はギヤ及びピニオンの各歯面上の各格子点を規定する円柱座標系を示す説明図、図9はギヤ歯面上の格子点とピニオン歯面上の収束点との関係を示す説明図、図10は曲面座標の計算方法を示す説明図、図11はギヤ歯面を基準とした相対歯面を示す説明図、図12は各ピニオン回転ステップでの相対歯面を示す説明図、図13は図12の各相対歯面を合成した包絡面を示す説明図、図14は歯車対の歯面距離分布を示す説明図、図15は歯面間角度を示す説明図、図16はバックラッシュの解析結果を示す説明図である。
【0010】
図7において、符号100は歯車対を示し、本実施形態において、歯車対100は、例えば、大径をなす一方の歯車である第1の歯車(以下、ギヤともいう)101Gと、小径をなす他方の歯車である第2の歯車(以下、ピニオンともいう)101Pとが互いに噛合するハイポイドギヤである。
【0011】
この歯車対100は、例えば図1に示す評価装置1を用いて評価される。評価装置1は、実際の歯車対100の情報としてギヤ101G及びピニオン101Pの各歯面の3次元座標データ(実測値)やディメンジョンデータ等を入力するための入力部5と、入力された歯車対情報に基づいて各種演算等を行う演算部6と、演算部6で実行される各種プログラムを格納するとともに、入力された歯車対情報や演算部6での演算結果等を適宜記憶する記憶部7と、演算部6での演算結果等を出力する出力部8とを有して構成されている。
【0012】
具体的に説明すると、評価装置1には、ギヤ101Gの実歯面情報として、例えば、ギヤ101Gの注目する歯面(ギヤ歯面)上に設定したj×i個(例えば、歯丈方向に15個×歯筋方向に15個)の各格子点でそれぞれ計測された3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)が入力される。また、評価装置1には、ピニオン101Pの実歯面情報として、例えば、ピニオン101Pの注目する歯面(ピニオン歯面)上に設定したj×i個(例えば、歯丈方向に15個×歯筋方向に15個)の各格子点でそれぞれ計測された3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)が入力される。より具体的には、評価装置1には、ギヤ101Gの実歯面情報として、ギヤ101Gの注目するドライブ側ギヤ歯面102Gd上に設定したj×i個の各格子点でそれぞれ計測された3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)が入力されるとともに、コースト側ギヤ歯面102Gc上に設定したj×i個の各格子点でそれぞれ計測された3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)が入力される。また、評価装置1には、ピニオン101Pの実歯面情報として、ピニオン101Pの注目するドライブ側ピニオン歯面102Pd上に設定したj×i個の各格子点でそれぞれ計測された3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)が入力されるとともに、コースト側ピニオン歯面102Pc上に設定したj×i個の各格子点でそれぞれ計測された3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)が入力される。なお、以下の説明において、ドライブ側及びコースト側のギヤ歯面102Gd,102Gcを総称してギヤ歯面102Gとも呼ぶ。同様に、ドライブ側及びコースト側のピニオン歯面102Pd,102Pcを総称してピニオン歯面102Pとも呼ぶ。
【0013】
ここで、ギヤ101Gの実歯面情報として評価装置1に入力される各3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)は、ギヤ101Gの回転軸上に原点OGを持つX−Y−Zの直交座標系で規定される座標データであり、本実施形態において、Z軸はギヤ101Gの回転軸と同軸上に設定されている。同様に、ピニオン101Pの実歯面情報として評価装置1に入力される各3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)は、ピニオン101Pの回転軸上に原点OPを持つX−Y−Zの直交座標系で規定される座標データであり、本実施形態において、Z軸はピニオン101Pの回転軸と同軸上に設定されている。
【0014】
ここで、本実施形態において、各歯面のドライブ側とコースト側の回転角度の基準を共通化するため、例えば、ドライブ側ピニオン歯面102Pd及びコースト側ピニオン歯面102Pcの各回転角度は、図15(b)に示すように、ピニオン歯溝が与えられる。また、例えば、ドライブ側ギヤ歯面102Gd及びコースト側ギヤ歯面102Gcの各回転角度は、図15(c)に示すように、ギヤ歯厚が与えられる。
【0015】
また、評価装置1には、歯車対100のディメンジョンデータとして、ギヤ比ratio、組立諸元(オフセットΕ、交差角Σ)、及び、各デフレクション値δΕ,δΣ,δG,δP等が入力される。ここで、各デフレクション値は歯車対100に所定トルクが加わった際の撓み等に起因するずれ量(組付誤差量)であり、δΕはオフセットΕのずれ量、δΣは交差角Σのずれ量、δGはギヤ101Gの回転軸方向のずれ量、δPはピニオン101Pの回転軸方向のずれ量である(図7参照)。
【0016】
そして、評価装置1は、ギヤ歯面102G上の各3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)と、ピニオン歯面102P上の各3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)とを歯車対100の組立諸元を用いて所定の噛合回転位置で互いに関連付け、これらを、ギヤ101Gを基準とするR−Z−Θの円筒座標系上の3次元座標データ(rGji,zGji,θGji)及び(rPji,zPji,θPji)に変換する(図8参照)。ここで、評価装置1は、ギヤ歯面102G上の各3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)と、ピニオン歯面102P上の各3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)とを互いに関連付ける際に、デフレクション値を用いた補正を行う。
【0017】
さらに、評価装置1は、ピニオン歯面102P上に、該ピニオン歯面102P上の各格子点の番号と関連付けて2次元の媒介変数(j,i)を設定し、これら媒介変数(j,i)を用い、各3次元座標データ(rPji,zPji,θPji)に基づいて、ピニオン歯面102P上の点を表す半径座標の関数fR(j,i)、軸座標の関数fZ(j,i)、及び角度座標の関数fΘ(j,i)を作成する。
【0018】
さらに、評価装置1は、R−Z−Θの円筒座標系上において、ギヤ歯面102G上の各格子点と同一の周上に存在するピニオン歯面102P上の各点を示す各媒介変数(j,i)を、関数fR(j,i)及びfZ(j,i)からニュートン法を用いて演算し、演算した各媒介変数(j,i)を用いて関数fΘ(j,i)から得られる角度情報θPjiを基に、所定の噛合回転位置においてギヤ歯面102G上の点(格子点)と当該格子点に対応するピニオン歯面102P上の点との隙間を示す相対角度情報(歯面間角度)を算出する。
【0019】
ここで、評価装置1は、ピニオン101Pの1ピッチを所定の分割数で分割した回転角(ピニオン回転角)θs毎に(すなわち、ピニオン回転角θsで規定されるギヤ101Gとピニオン101Pの噛合回転位置毎に)、ギヤ歯面102G上の各格子点を基準とする相対歯面情報を演算する。本実施形態において、評価装置1は、噛合回転位置毎に、ドライブ歯面側の各相対歯面情報とコースト歯面側の各相対歯面情報とを演算する。
【0020】
そして、評価装置1は、各噛合回転位置で演算した相対歯面情報を合成することにより、ギヤ歯面102Gとピニオン歯面102Pとの噛合開始から終了までの相対的な隙間距離を示す包絡面を演算する。さらに、評価装置1は、各噛合回転位置で演算したドライブ歯面側の相対歯面情報とコースト歯面側の相対歯面情報とに基づいて、ギヤ歯面102Gとピニオン歯面102Gとの噛合開始から終了までの各噛合回転位置Mでのバックラッシュ情報として、円筒座標系におけるバックラッシュの角度情報θBL(M)を演算する。
【0021】
すなわち、評価装置1の記憶部7には、上述の各種演算等を行うためのプログラムが格納されており、演算部6は、これらのプログラムを実行することにより、座標変換手段、関数作成手段、歯面間隙間情報演算手段、及び、バックラッシュ情報演算手段としての各機能を実現する。
【0022】
なお、本実施形態の評価装置1は、例えば図2に示すコンピュータシステム10で実現される。コンピュータシステム10は、例えば、コンピュータ本体11に、キーボード12と、表示手段の一例としてのディスプレイ装置13と、プリンタ14とがケーブル15を介して接続されて要部が構成されている。そして、このコンピュータシステム10において、例えば、コンピュータ本体11に配設された各種ドライブ装置やキーボード12等が入力部15として機能するとともに、コンピュータ本体11に内蔵されたCPU,ROM,RAM等が演算部6として機能する。また、コンピュータ本体11に内蔵されたハードディスク等が記憶部7として機能するとともに、ディスプレイ装置13やプリンタ14等が出力部8として機能する。
【0023】
次に、演算部6で実行される歯車対の解析について、図3に示す歯車対評価ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンがスタートすると、演算部6は、先ず、ステップS101において、ギヤ101Gの歯面102G上の各格子点で計測された3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)、ピニオン101Pの歯面102P上の各格子点で計測された3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)、ギヤ比ratio、オフセットΕ、交差角Σ、各組付誤差量δΕ,δΣ,δG,δP等の歯車対情報を読み込む。
【0024】
続くステップS102において、演算部6は、ピニオン101Pの1ピッチ当たりの分割数、及び、1ステップ当りのピニオン回転角θsを、以下の(1)〜(4)式を用いて演算する。
Swagl=(2π/nP)・Swn …(1)
opn=Round((2π/nP)/(Swagl/max(jmax,imax))・chn)
…(2)
θs=(2π/nP)・(1/opn) …(3)
Mmax=Round(Swagl/θs)+Mα …(4)
ここで、Swaglは噛合い始点−終点間のピニオン回転角度、nPはピニオン歯数、Swnは同時噛合い歯数(噛合い率)、opnは1噛合いピッチ当りの角度ステップ数(整数)、Chnはグリッド間隔当りの角度ステップ数、Mαは計算範囲の修正値である。
【0025】
また、Mmaxは計算すべき角度の範囲を示すものであり、歯車回転最大ステップ数Mmaxとする。
【0026】
そして、ステップS102からステップS103に進むと、演算部6は、歯車回転ステップ数M=1をセットし、続くステップS104において、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達したか否かを調べる。
【0027】
そして、演算部6は、ステップS104において、歯車回転ステップ数Mが未だ歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していないと判定した場合にはステップS105に進み、以下のS111までの処理をMmax回繰り返すことにより、ピニオン101Pがθs(rad)回転する噛合回転位置毎の相対歯面データを演算する。なお、個別の説明は省略するが、演算部6は、ステップS105乃至ステップS110の処理において、ドライブ歯面側及びコースト歯面側の相対歯面データをそれぞれ演算する。一方、ステップS104において、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達したと判定すると、演算部6は、ステップS112に進む。
【0028】
ステップS104からステップS105に進むと、演算部6は、現在の歯車回転ステップ数Mに対応するピニオン101P及びギヤ101Gの回転角度rotP,rotGを、以下の(5)、(6)式を用いて演算する。
rotP=θs・(M−1)−(θs・Mmax) …(5)
rotG=rotP・(−1/ratio) …(6)
続くステップS106において、演算部6は、ピニオン101Pの直交座標系上の各格子点の座標をZ軸回りにrotP(rad)移動させるとともに、ギヤ101Gの直交座標系上の各格子点の座標をZ軸回りにrotG(rad)移動させる。さらに、演算部6は、ピニオンの直交座標系を、ギヤ101Gの直交座標系と一致させた状態から(クロスポイントの基準位置から)、オフセットΕだけ移動させるとともに、交差角Σだけ回転させることにより、現ステップ回転位置における両歯面102G,102Pの関係をギヤ101Gの直交座標系上に設定する。すなわち、演算部6は、現ステップ回転位置におけるピニオン歯面102P上の各格子点の座標データ(xPji,yPji,zPji)を、ギヤ101Gの直交座標系上の座標データ(xP’ji,yP’ji,zP’ji)に変換する。その際、演算部6は、ピニオン101P及びギヤ101Gの各座標系の原点OP,OGをデフレクション値δP,δGで補正するとともに、オフセットΕをデフレクション値δΕで補正し、交差角Σをデフレクション値δΣで補正する。
【0029】
続くステップS107において、演算部6は、ステップS106でギヤ101G基準の直交座標系上に表したギヤ101G及びピニオン101Pの全計測点(全ギヤ格子点及びピニオン格子点)の座標データを、以下の(7)〜(12)式を用いて、ギヤ101Gを基準とするR−Z−Θの円筒座標系の座標データにそれぞれ変換する。
rGji=(xGji2+yGji2)1/2 …(7)
zGji=zGji …(8)
θGji=tan−1(yGji/xGji) …(9)
rPji=(xP’ji2+yP’ji2)1/2 …(10)
zPji=zP’ji …(11)
θPji=tan−1(yP’ji/xP’ji) …(12)
続くステップS108において、演算部6は、ピニオン歯面102P上に各格子点の番号と関連付けて2次元の媒介変数j,iを設定し、これら媒介変数j,iを用い、ピニオン歯面102Pの各格子点の座標データ(rPji,zPji,θPji)に基づいて、ピニオン歯面102P上の格子点間を補間する関数fR(i,j)、fZ(i,j)、fθ(i,j)を演算する。ここで、各関数fR(i,j)、fZ(i,j)、fθ(i,j)は、例えば、それぞれスプライン関数で構成される。
【0030】
そして、ステップS108からステップS109に進むと、演算部6は、図4に示す歯面間隙間演算サブルーチンのフローチャートに従って、ギヤ歯面102G上の各格子点とこれら各格子点にピニオン歯面102P上で対応する点との間の歯面間角度(相対歯面情報)を演算する。ここで、以下の説明において、ギヤ歯面102G上の各格子点を規定するグリッド数(j,i)を、ピニオン歯面102P上のものと区別するため、これらを(jG,iG)と表記する。
【0031】
このサブルーチンがスタートすると、演算部6は、ステップS201において、媒介変数の初期値(j=jini,i=iini)を設定し、ステップS202において、初期値jini,iiniで(例えば、jini=iini=8)規定されるピニオン歯面102P上の基準点の座標r1(=R(jini,iini)),z1(=Z(jini,iini))を求める。
【0032】
続くステップS203において、演算部6は、後述する歯面間角度θ(jG,iG,M)の計算を、ギヤ歯面102G上の全格子点jG,iGに対して行ったか否かを調べる。そして、ギヤ歯面102G上の全格子点に対する歯面間角度θ(jG,iG,M)の演算が終了していないと判定すると、演算部6は、歯面間角度θ(jG,iG,M)の計算対象とする格子点を新たな格子点に更新した後、ステップS204に進み、以下のステップS209までの処理により、ニュートン法を用いて歯面間角度θ(jG,iG,M)を演算する。一方、ステップS203において、歯面間角度θ(jG,iG,M)の計算をギヤ歯面102G上の全格子点(jG,iG)に対して行ったと判定すると、演算部6は、サブルーチンを抜け、メインルーチンに戻る。
【0033】
ステップS203からステップS204に進むと、演算部6は、今回歯面間角度θ(jG,iG,M)の計算対象として選択したギヤ歯面102G上の(jG,iG)番目の格子点での3次元座標データを(r0,z0,θ0)とし、このjG,iG番目の格子点とR−Z−Θの円筒座標系上で同一周上に存在するピニオン歯面102P上の点(収束点)での3次元座標データを(rc,zc,θc)とし、さらに、(rc,zc,θc)=(r0,z0,θc)であると仮定して、ピニオン歯面102P上に設定した基準点の3次元座標データ(r1,z1,θ1)と、収束点の3次元座標データ(r0,z0,θc)とから、以下の(13),(14)式を作成する。
r0=r1+(∂r/∂i)Δi+(∂r/∂j)Δj …(13)
z0=z1+(∂z/∂i)Δi+(∂z/∂j)Δj …(14)
ここで、ピニオン歯面102P上の任意の点(j,i)の円筒座標系上での半径座標(R座標)成分rは、以下の(15)式を用いて演算することが可能であり、座標rでのi方向への傾き(∂r/∂i)、及びj方向への傾き(∂r/∂j)は、以下の(16),(17)式を用いて演算することが可能である。
r=−(j1−j)・(i1−i)・R(j0,i0)
−(j1−j)・(i−i0)・R(j0,i1)
−(j−j0)・(i1−i)・R(j1,i0)
−(j−j0)・(i−i0)・R(j1,i1)
+(j1−j)・fRi0(i)+(j−j0)・fRj1(i)
+(i1−i)・fRi0(j)+(i−i0)・fRi1(j)
…(15)
∂r/∂i
=(j1−j)・{R(j0,i0)−R(j0,i1)+(∂fRj0(i)/∂i)}
+(j−j0)・{R(j1,i0)−R(j1,i1)+(∂fRj1(i)/∂i)}
−R(j,i0)+R(j,i1)
…(16)
∂r/∂j
=(i1−i)・{R(j0,i0)−R(j1,i0)+(∂fRi0(j)/∂j)}
+(i−i0)・{R(j0,i1)−R(j1,i1)+(∂fRi1(j)/∂j)}
−R(j0,i)+R(j1,i)
…(17)
なお、(15)〜(17)式中において、fRj0(i)、fRj1(i)、fRj0(j)、fRi1(j)は、図10に示すように、点(j,i)を囲繞する関数上の任意点での半径座標成分であり、これらは上述のステップS108で作成した関数に基づいて演算される。R(j0,i0)、R(j0,i1)、R(j1,i0)、R(j1,i1)は点(j,i)を囲繞する各格子点での半径座標成分である。
【0034】
同様に、ピニオン歯面102P上の任意の点(j,i)の円筒座標系上での軸座標(Z座標)成分zは、以下の(18)式を用いて演算することが可能であり、座標zでのi方向への傾き(∂z/∂i)、及びj方向への傾き(∂z/∂j)は、以下の(19),(20)式を用いて演算することが可能である。
【0035】
z=−(j1−j)・(i1−i)・Z(j0,i0)
−(j1−j)・(i−i0)・Z(j0,i1)
−(j−j0)・(i1−i)・Z(j1,i0)
−(j−j0)・(i−i0)・Z(j1,i1)
+(j1−j)・fZj0(i)+(j−j0)・fZj1(i)
+(i1−i)・fZi0(j)+(i−i0)・fZi1(j)
…(18)
∂z/∂i
=(j1−j)・{Z(j0,i0)−Z(j0,i1)+(∂fZj0(i)/∂i)}
+(j−j0)・{Z(j1,i0)−Z(j1,i1)+(∂fZj1(i)/∂i)}
−Z(j,i0)+Z(j,i1)
…(19)
∂z/∂j
=(i1−i)・{Z(j0,i0)−Z(j1,i0)+(∂fZi0(j)/∂j)}
+(i−i0)・{Z(j0,i1)−Z(j1,i1)+(∂fZi1(j)/∂j)}
−Z(j0,i)+Z(j1,i)
…(20)
なお、(18)〜(20)式中において、fZj0(i)、fZj1(i)、fZi0(j)、fZi1(j)は、点(j,i)を囲繞する関数上の任意点での軸座標成分であり、これらは上述のステップS108で作成した関数に基づいて演算される。Z(j0,i0)、Z(j0,i1)、Z(j1,i0)、Z(i1,j1)は点(j,i)を囲繞する各格子点での軸座標成分である。
【0036】
そして、演算部6は、(13)、(14)式による連立方程式を解くことにより、基準点から収束点までの媒介変数の偏差Δi,Δjを求める。
【0037】
続くステップS205において、演算部6は、ステップS204で求めた偏差Δi,Δjを用い、以下の(21)、(22)式を用いて基準点の媒介変数(j,i)を更新する。
i=i+Δi …(21)
j=j+Δj …(22)
そして、ステップS206に進むと、演算部6は、ステップS205で更新した媒介変数(j,i)を基に、上述の(15)、(18)式、及び以下の(23)式を用いて基準点での3次元座標データ(r1,z1,θ1)を更新する。
θ=−(j1−j)・(i1−i)・θ(j0,i0)
−(j1−j)・(i−i0)・θ(j0,i1)
−(j−j0)・(i1−i)・θ(j1,i0)
−(j−j0)・(i−i0)・θ(j1,i1)
+(j1−j)・fθj0(i)+(j−j0)・fθj1(i)
+(i1−i)・fθi0(j)+(i−i0)・fθi1(j)
…(23)
なお、(23)式中において、fθj0(i)、fθj1(i)、fθi0(j)、fθi1(j)は、点(j,i)を囲繞する各点での角度座標成分であり、これらは上述のステップS108で作成した関数に基づいて演算される。θ(j0,i0)、θ(j0,i1)、θ(j1,i0)、θ(j1,i1)は点(j,i)を囲繞する各格子点での角度座標成分である。
【0038】
そして、ステップS207に進むと、演算部6は、ステップS206で演算した基準点のR軸座標成分r1及びZ軸座標成分z1が収束点のR座標成分rc及びZ軸座標成分zcに収束しているか否か(すなわち、r1及びz1とr0及びz0とが予め設定した範囲内でそれぞれ一致するか否か)を調べ、収束していないと判定した場合にはステップS208に進み、収束していると判定した場合にはステップS208に進む。
【0039】
ステップS207からステップS208に進むと、演算部6は、現在選択されているギヤ歯面102G上の格子点に対して行われたステップS204〜S206の演算回数が例えば10回以上であるか否かを調べ、演算回数が10回よりも少ない場合にはステップS204に戻り、演算回数が10回以上である場合にはステップS209に進む。
【0040】
そして、ステップS207或いはステップS208からステップS209に進むと、演算部6は、相対角度情報として、現在のギヤグリッドjG,iG、歯車回転ステップ数Mにおける歯面間角度θ(jG,iG,M)を演算した後、ステップS203に戻る。ここで、ステップS207で基準点のR軸座標成分r1及びZ軸座標成分z1が収束点のR座標成分rc及びZ軸座標成分zcに収束したと判定してステップS209に進んだ場合(すなわち、現在選択されているギヤ歯面102G上の格子点に対応する点がピニオン歯面102P内に存在する場合)、歯面間角度θ(jG,iG,M)は、以下の(24)式によって算出される。
θ(jG,iG,M)=θ1−θ0 …(24)
一方、ステップS208からステップS209に進んだ場合、現在選択されているギヤ歯面102G上の格子点に対応する点がピニオン歯面102P外に存在することを示す判定用の角度値(例えば、θ(jG,iG,M)=2000)が設定される。
【0041】
メインルーチンにおいて、ステップS109からステップS110に進むと、演算部6は、ステップS109で演算した各歯面間角度θ(jG,iG,M)を基に、ギヤ歯面102Gを基準とする相対歯面データ(例えば、図11参照)を作成し、続くステップS111において、歯車回転ステップMをインクリメント(M=M+1)した後、ステップS104に戻る。
【0042】
また、ステップS104からステップS112に進むと、演算部6は、図5に示す包絡面演算サブルーチンのフローチャートに従って、ギヤ歯面102Gとピニオン歯面102Pの噛合開始から終了までの歯面間の相対的な隙間距離を示す包絡面の演算を行う。
【0043】
このサブルーチンがスタートすると、演算部6は、ステップS301において、歯車回転ステップM=1をセットし、続くステップS302において、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達したか否かを調べる。
【0044】
そして、演算部6は、ステップS302において、歯車回転ステップ数Mが未だ歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していないと判定した場合には、ステップS303に進む。一方、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していると判定した場合には、演算部6は、ステップS307に進む。
【0045】
ステップS302からステップS303に進むと、演算部6は、現歯車回転ステップ数Mにおいて、ギヤ歯面102G上の全格子点での歯面間角度θ(jG,iG,M)に対して後述する歯面間角度最小値θSmin(M)の抽出計算が終了したか否かを調べる。
【0046】
そして、ステップS303において、全格子点での歯面間角度θ(jG,iG,M)に対して歯面間角度最小値θSminの抽出計算が終了していないと判定すると、演算部6は、ステップS304に進み、以下の(25)式により、現歯車回転ステップ数Mでの歯面間角度最小値θSmin(M)を、現在選択されている格子点の歯面間角度θ(jG,iG,M)で適宜更新する。
θSmin(M)=min(θ(jG,iG,M)) …(25)
さらに、演算部6は、現在選択されている格子点の歯面間角度θ(jG,iG,M)で歯面間角度最小値θSmin(M)が更新された場合には、現歯車回転ステップMにおける相対歯面の最凸点の座標(POCj(M),POCi(M))を現格子点の(jG,iG)に更新した後、ステップS303に戻る。
【0047】
一方、ステップS303において、全格子点での歯面間角度θ(jG,iG,M)に対して歯面間角度最小値θSminの抽出計算が終了したと判定すると、演算部6は、ステップS305に進む。
【0048】
そして、ステップS305において、演算部6は、以下の(26)式により、全歯車回転ステップでの歯面間角度最小値θminminを、現歯車回転ステップMでの歯面間角度最小値θSminで適宜更新する。
θminmin=min(θSmin(M)) …(26)
さらに、演算部6は、現歯車回転ステップMの歯面間角度最小値θSminで全歯車回転ステップの歯面間角度最小値θminminが更新された場合には、全歯車回転ステップにおける相対歯面の最凸点(すなわち、歯車対100の最凸点)の座標(APEXj,APEXi)を現歯車回転ステップMにおける最凸点の座標(POCj(M),POCi(M))に更新する。
【0049】
そして、ステップS305からステップS306に進むと、演算部6は、歯車回転数ステップMを更新(M=M+1)した後、ステップS302に戻る。
【0050】
また、ステップS302からステップS307に進むと、演算部6は、歯車回転ステップ数M毎にそれぞれ演算された全歯面間角度θ(jG,iG,M)を用い、ステップS312までの処理により、ギヤ歯面102Gとピニオン歯面102Pの噛合開始から終了までの相対的な隙間距離をギヤ歯面102G上の格子点(jG,iG)毎に角度値で示す相対歯面データθEO(jG,iG)を演算する。
【0051】
具体的に説明すると、演算部6は、ステップS307において、歯車回転ステップ数M=1をセットし、続くステップS308において、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達したか否かを調べる。
【0052】
そして、ステップS308において、歯車回転ステップ数Mが未だ歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していないと判定した場合には、演算部6は、ステップS309に進む。一方、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していると判定した場合には、演算部6は、ステップS313に進む。
【0053】
ステップS308からステップS309に進むと、演算部6は、現歯車回転ステップ数Mにおいて、ギヤ歯面102G上の全格子点(jG,iG)に対して、後述する相対歯面データθEOM(jG,iG,M)の計算が終了したか否かを調べる。
【0054】
そして、ステップS309において、全格子点(jG,iG)に対して相対歯面データθEOM(jG,iG,M)の計算が終了していないと判定すると、演算部6は、ステップS310に進み、以下の(27)式により、歯面間角度最小値θminminを基準とする相対歯面データθEOM(Ease−Off)を演算する。
θEOM(jG,iG,M)=θ(jG,iG,M)−θminmin …(27)
続くステップS311において、演算部6は、以下の(28)式により、現在選択されている格子点(jG,iG)の相対歯面データθEOM(jG,iG,M)を用いて、対応する相対歯面データθEO(jG,iG)を適宜更新した後、ステップS309に戻る。
θEO(jG,iG)=min(θEOM(jG,iG,M)) …(28)
一方、ステップS309において、現歯車回転ステップ数Mでの全格子点(jG,iG)に対して相対歯面データθEOM(jG,iG,M)の計算が終了したと判定すると、演算部6は、ステップS312に進み、歯車回転ステップ数Mをインクリメント(M=M+1)した後、ステップS308に戻る。
【0055】
また、ステップS308からステップS313に進むと、演算部6は、以下の(29)式により、ギヤ歯面102G上の格子点(jG,iG)毎の相対歯面データθEO(jG,iG)を、距離情報(相対歯面データEO(jG,iG)に変換した後、サブルーチンを抜け、メインルーチンに戻る。
EO(jG,iG)=θEO(jG,iG)・r0(jG,iG) …(29)
これにより、歯車回転ステップ数M毎の各相対歯面(例えば、図12参照)を合成した包絡面(例えば、図13参照)が生成される。ここで、演算部6は、生成した3次元の包絡面データを2次元の等高線データ(例えば、図14参照)に変換することも可能となっており、当該等高線データをディスプレイ装置13等の出力部を通じて出力することも可能となっている。
【0056】
ステップS112からステップS113に進むと、演算部6は、図6に示すバックラッシュ演算サブルーチンに従って、噛合回転位置M毎のバックラッシュ情報を演算する。このサブルーチンにおいて、演算部6は、バックラッシュ情報として、円筒座標系(R−Z−Θ)上におけるバックラッシュ角度θBLを演算する。
【0057】
このサブルーチンがスタートすると、演算部6は、ステップS401において、歯車回転ステップM=1をセットし、続くステップS402において、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達したか否かを調べる。
【0058】
そして、演算部6は、ステップS402において、歯車回転ステップ数Mが未だ歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していないと判定した場合には、ステップS403に進む。一方、歯車回転ステップ数Mが歯車回転最大ステップ数Mmaxに達していると判定した場合には、演算部6は、サブルーチンを抜けた後、メインルーチンを終了する。
【0059】
ステップS402からステップS403に進むと、演算部6は、現歯車回転ステップ数Mにおいて、ギヤ歯面102G上の全格子点(ドライブ側ギヤ歯面102Gd上及びコースト側ギヤ歯面102Gc上それぞれにおける全格子点)での歯面間角度θ(jG,iG,M)に対して後述する歯面間角度最小値θSmin(M)の抽出計算が終了したか否かを調べる。
【0060】
そして、ステップS403において、全格子点での歯面間角度θ(jG,iG,M)に対して歯面間角度最小値θSminの抽出計算が終了していないと判定すると、演算部6は、ステップS404に進み、上述の(25)式により、現歯車回転ステップ数Mでの歯面間角度最小値θSmin(M)を、現在選択されている格子点の歯面間角度θ(jG,iG,M)で適宜更新する。
【0061】
さらに、演算部6は、現在選択されている格子点の歯面間角度θ(jG,iG,M)で歯面間角度最小値θSmin(M)が更新された場合には、現歯車回転ステップMにおける相対歯面の最凸点の座標(POCj(M),POCi(M))を現格子点の(jG,iG)に更新した後、ステップS403に戻る。
【0062】
一方、ステップS403において、全格子点での歯面間角度θ(jG,iG,M)に対して歯面間角度最小値θSminの抽出計算が終了したと判定すると、演算部6は、ステップS405に進む。
【0063】
そして、ステップS405において、演算部6は、ステップS404で抽出したドライブ側及びコースト側の各歯面間角度最小値θSmind(M),θSminc(M)を用い(図15(a)参照)、以下の(30)式により、現歯車回転ステップ数Mでのバックラッシュ角度θBL(M)を演算する。
θBL(M)=θSmind(M)+θSminc(M)−2π …(30)
そして、ステップS405からステップS406に進むと、演算部6は、歯車回転ステップ数Mをインクリメント(M=M+1)した後、ステップS403に戻る。
【0064】
ここで、演算部6は、歯車回転ステップ数M毎に演算した各バックラッシュ角度θBL(M)に対し、例えば、ギヤ101のピッチ円半径r’Gを乗算することにより噛合回転位置毎のバックラッシュ量(距離)BLを演算することが可能となっており(例えば、図16参照)、当該バックラッシュ量の推移を、ディスプレイ装置13等の出力部を通じて出力することも可能となっている。
【0065】
このような実施形態によれば、ギヤ歯面102G上の各3次元座標データ(xGji,yGji,zGji)とピニオン歯面102P上の各3次元座標データ(xPji,yPji,zPji)とを歯車対100の組立諸元を用いて所定の噛合回転位置で互いに関連づけてギヤ101Gを基準とする円筒座標系の3次元座標データ(rGji,zGji,θGji)及び(rPji,zPji,θPji)に変換するとともに、ピニオン歯面102P上に設定した2次元の媒介変数(j,i)を用い各3次元座標データ(rPji,zPji,θPji)に基づいてピニオン歯面102P上の点を表す関数fR(j,i)、fZ(j,i)、fΘ(j,i)を作成することにより、ギヤ歯面102G上の各点(格子点)に対応するピニオン歯面102P上の各点を示す媒介変数(j,i)を、関数fR(j,i)、fZ(j,i)からニュートン法を用いて容易且つ精度よく演算することができる。そして、演算した各媒介変数(j,i)を用いて関数fΘ(j,i)から得られる角度情報θPjiを基に、所定の噛合回転位置においてギヤ歯面102G上の点(格子点)と当該格子点に対応するピニオン歯面102P上の点との隙間を示す歯面間角度θ(jG,iG,M)を求めることにより、歯車対の基準歯面に関する情報を指標とすることなく、実歯面の計測情報に基づいて精度のよい歯面解析を実現することができる。そして、所定の噛合回転位置において演算されるドライブ歯面側の歯面間角度θ(jG,iG,M)の中から最小値θSmind(M)を抽出するとともに、コースト歯面側の歯面間角度θ(jG,iG,M)の中から最小値θSminc(M)を抽出し、これらに基づいて当該噛合回転位置におけるバックラッシュ情報(バックラッシュ角度θBL(M))を算出することにより、人為的な計測等に頼ることなく、歯車対のバックラッシュ情報を精度よく定量的に把握することができる。
【0066】
その際、歯車対100の組立諸元を用いて互いに関連付けた各3次元座標データを、歯車対100のデフレクション値で補正することにより、歯面解析の精度をより向上させることができる。
【0067】
そして、このようなバックラッシュについての評価結果等をフィードバックして歯車対の諸元を最適化することにより、振動や騒音等の抑制と、回転不良や摩耗或いは焼付き等の防止とを高いレベルで両立した歯車対100を得ることができる。
【0068】
ここで、上述の解析においては歯車対100の各歯面102G,102P上の実測データを用いてバックラッシュ等の評価を行った一例について説明したが、例えば、設計段階で得られる理論的な歯面データをもちいてバックラッシュ等の評価を行うことも可能である。
【0069】
ところで、上述の歯車対評価は、ハイポイドギヤ以外の各種外歯式歯車対にも適用が可能であることは勿論のこと、各種内歯式の歯車対にも広く適用可能であり、例えば、広義の意味で内歯式の歯車対として分類されるトロコイド式のオイルポンプ200(図17参照)等にも適用することが可能である。ここで、図示のように、オイルポンプ200は、第1の歯車としてのアウタロータ201Oの内周に、第2の歯車としてのインナロータ201Iが噛合して要部が構成されている。
【0070】
このオイルポンプ200の評価では、例えば、上述のギヤ101Gに対してアウタロータ201Oが対応付けられ、上述のピニオン101Pに対してインナロータ201Iが対応付けられる。そして、例えば、図18に示すように、インナロータ201Iの回転中心且つ歯幅中央に直交座標系(X−Y−Z)の原点が設定され、この直交座標系(及び、当該直交座標系に基づく円筒座標系(R−Z−Θ))のZ軸は、各ロータ201O,201Iの回転軸に設定される。
【0071】
演算部6は、基本的には、図3に示した歯車対評価ルーチンのフローチャートに従って、オイルポンプ200の評価を行う。但し、このようなオイルポンプ200の評価を行う場合、ステップS101において、演算部6は、オフセットEとして両ロータ201O,201Iの中心軸間距離を読み込むとともに、交差角Σとして「0」を読み込む。また、ステップS101において、演算部6は、デフレクション値(組付誤差量)として、X軸方向の誤差量δX、Y軸方向の誤差量δY、X軸回りの誤差量δXR、Y軸回りの誤差量δYR(図18参照)をそれぞれ読み込む。また、オイルポンプ200のアウタロータ201Oとインナロータ201Iとは互いに同一方向に回転することに鑑み、ステップS105において、演算部6は、歯車回転ステップMに対応するアウタロータ201O及びインナロータ201Iの回転角度rotP,rotGを、以下の(5)’、(6)’式を用いて演算する。
rotP=θs・(M−1)−(θs・Mmax) …(5)’
rotG=rotP・(1/ratio) …(6)’
その他の処理について、演算部6は、上述のハイポイドギヤ100と略同様の処理を行う。これにより、オイルポンプ200についても、歯面間隙間情報やバックラッシュ情報等を精度よく定量的に把握することができる。
【0072】
ここで、上述のように、ハイポイドギヤのみならずオイルポンプ等の各種歯車対に対する評価を実現するため、例えば、図19に示すように、演算部6は、ディスプレイ13装置等の出力部を通じて表示される組付誤差量の設定画面上に、多岐に亘る組付誤差量についての項目を表示させる。具体的には、演算部6は、例えば、主としてハイポイドギヤ等のような食違軸を有する歯車対に対応する項目E,P,G,Σを表示するとともに、主としてオイルポンプ等のように平行軸を有する歯車対に対応する項目としてX,Y,XR,YRを表示する。さらに、演算部6は、該当する歯車対についての組付誤差量の組み合わせをユーザ等が複数パターン設定することを可能とするため、組付誤差量の設定画面上に各項目に対応する複数段(例えば、10段)の入力枠を表示する。なお、図示の例は、オイルポンプ200に対する組付誤差量を設定する場合の一例について説明するもので、例えば、第1段目には、オイルポンプ200に対応する全項目(X、Y、XR、及び、YR)に組付誤差量を設定しない場合が示されている。また、例えば、第2段目には、X軸方向にのみ所定の組付誤差量を与えた場合が示されている。
【0073】
ところで、評価装置1は、上述の歯車対評価ルーチンを用い、評価対象となる歯車対がバックラッシュを確保する上で許容される限界組付誤差量を検索することが可能となっている。この限界組付誤差量の検索において、評価装置1は、例えば、上述の図3に示した歯車対評価ルーチンのステップS101で読み込む各種組付誤差量を可変設定し、設定した組付誤差量毎のバックラッシュ情報を逐次演算する。そして、例えば、各項目の組付誤差量について、バックラッシュを確保する上で限界となる値を特定する。すなわち、評価装置1の記憶部7には、上述の各種演算等を行うためのプログラムが格納されており、演算部6は、これらのプログラムを実行することにより限界組付誤差量検索手段としての機能を実現する。
【0074】
また、評価装置1は、上述の歯車対評価ルーチンを用い、評価対象となる歯車対の各種組付誤差に対するバックラッシュ特性を演算することが可能となっている。このバックラッシュ特性の演算において、評価装置1は、例えば、上述の図3に示した歯車対評価ルーチンのステップS101で読み込む各種組付誤差量を予め設定された範囲内で可変設定し、設定した組付誤差量毎のバックラッシュ情報を逐次演算する。そして、例えば、可変設定された各組付誤差量とバックラッシュ情報との関係に基づいて、組付誤差量に対するバックラッシュ特性情報を生成する。すなわち、評価装置1の記憶部7には、上述の各種演算等を行うためのプログラムが格納されており、演算部6は、これらのプログラムを実行することによりバックラッシュ特性演算手段としての機能を実現する。
【0075】
次に、演算部6で実行される限界組付誤差検索について、図20に示す限界組付誤差検索ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンがスタートすると、演算部6は、先ず、ステップS501において、全項目の組付誤差についてバックラッシュ演算が終了したか否かを調べる。例えば、図17に示した上述のオイルポンプ200が評価対象である場合、組付誤差量X,Y,XR,YR全て異ついてバックラッシュ演算が終了したか否かを調べる。
【0076】
そして、ステップS501において、全ての項目の組付誤差量についてのバックラッシュ演算が終了していないと判定すると、演算部6は、ステップS502に進み、未だ選択されていない項目の中から所定の項目を選択し、当該選択した項目についてのプラス側の組付誤差量e1及びマイナス側の組付誤差量e2をそれぞれ「0」に設定した後、ステップS503に進む。
【0077】
そして、ステップS503において、演算部6は、現在選択された項目について設定されているプラス側及びマイナス側の各組付誤差量e1,e2を用い、図3に示した歯車対評価ルーチンに従ってバックラッシュ情報(バックラッシュ角度θBL(M))をそれぞれ演算する。なお、この場合において、現在選択されていない項目の組付誤差量は、例えば、一律「0」が設定される。或いは、ユーザ等によって設定された任意の各組付誤差量を用いることも可能である。そして、各組付誤差量e1,e2を用いて噛合開始から噛合終了までの各噛合回転位置M毎のバックラッシュ角度θBL(M)の演算が終了すると、演算部6は、各バックラッシュ情報θBL(M)の中の最小値をそれぞれ抽出し、これらを距離情報に換算した値(バックラッシュBL1,BL2)を演算する。
【0078】
ステップS503からステップS504に進むと、演算部6は、ステップS503で算出したバックラッシュBL1、及び、BL2が共に負値であるか否かを調べる。
【0079】
そして、ステップS504において、バックラッシュBL1、或いは、BL2の少なくとも何れか一方が正値である場合、演算部6は、ステップS505に進み、正値であった方の組付誤差量を再設定e(=e±Δe)して,ステップS503に戻る。
【0080】
一方、ステップS504において、バックラッシュBL1、及び、BL2が負値である場合、演算部6は、ステップS501に戻る。
【0081】
また、ステップS501において、全ての項目の組付誤差量についてバックラッシュ演算が終了したと判定すると、演算部6は、ステップS506に進み、各項目において、BL1<0となったときの組付誤差量e1をプラス側の限界組付誤差として認識するとともに、BL2<0となったときの組付誤差量e2をマイナス側の限界組付誤差として認識し、これら各項目のプラス側及びマイナス側の各限界組付誤差を出力データとしてセットした後、ルーチンを終了する。
【0082】
次に、演算部6で実行されるバックラッシュ特性演算について、図21に示すバックラッシュ特性演算ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンがスタートすると、演算部6は、先ず、ステップS601において、全項目の組付誤差についてバックラッシュ演算が終了したか否かを調べる。例えば、図17に示した上述のオイルポンプ200が評価対象である場合、組付誤差量X,Y,XR,YR全て異ついてバックラッシュ演算が終了したか否かを調べる。
【0083】
そして、ステップS601において、全ての項目の組付誤差量についてのバックラッシュ演算が終了していないと判定すると、演算部6は、ステップS602に進み、未だ選択されていない項目の中から所定の項目を選択する。ここで、このバックラッシュ特性演算に際し、評価装置1には、入力部5を通じたユーザ入力等によって、各項目の組付誤差量について解析を組付誤差量の範囲(emin〜emax)が予め設定されるようになっており、演算部6は、選択された項目の組付誤差量の下限値eminを組付誤差量eの初期値に設定(e=emin)した後、ステップS603に進む。
【0084】
そして、ステップS603において、演算部6は、現在選択された項目について設定されている組付誤差量eを用い、図3に示した歯車対評価ルーチンに従ってバックラッシュ情報(バックラッシュ角度θBL(M))を演算する。なお、この場合において、現在選択されていない項目の組付誤差量は、例えば、一律「0」が設定される。或いは、ユーザ等によって設定された任意の各組付誤差量を用いることも可能である。そして、組付誤差量eを用いて噛合開始から噛合終了までの各噛合回転位置M毎のバックラッシュ角度θBL(M)の演算が終了すると、演算部6は、各バックラッシュ情報θBL(M)の中の最小値を抽出し、これを距離情報に換算した値(バックラッシュBL)を演算する。
【0085】
ステップS603からステップS604に進むと、演算部6は、現在の組付誤差量eが予め設定された最大値emaxよりも大きいか否かを調べる。
【0086】
そして、ステップS604において、現在の組付誤差量eが最大値emax以下であると判定した場合、演算部6は、ステップS605に進み、現在の組付誤差量eを設定量Δe増加させて新たな組付誤差量e(=e+Δe)を設定した後、ステップS603に戻る。
【0087】
一方、ステップS604において、現在の組付誤差量eが予め設定された最大値emaxよりも大きいと判定した場合、演算部6は、ステップS601に戻る。
【0088】
また、ステップS601において、全ての項目の組付誤差量についてバックラッシュ演算が終了したと判定すると、演算部6は、ステップS606に進み、各項目毎に組付誤差量を変化させたときのバックラッシュBLの推移を示すバックラッシュ情報(例えば、図22,23参照)を出力データとしてセットした後、ルーチンを終了する。
【0089】
ここで、上述の実施形態においては、歯車対の各歯面上の3次元座標データとして実測値を用いた一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、歯車対の設計値に基づき設計段階で得られる理論歯面データを用いることも可能である。そして、例えば、このように理論歯面データを用いて歯車対の評価を行い、バックラッシュ等に対する諸元の最適化を行った後、当該諸元に基づいて製造された歯車対の各歯面上で実測された3次元座標データを用いて歯車対を再度評価してバックラッシュ等に対する諸元の最適化を行うことにより、歯車対の諸元設計を効率よく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】歯車対の評価装置の概略構成図
【図2】歯車対の評価装置を実現するためのコンピュータシステムの一例を示す概略構成図
【図3】歯車対評価ルーチンを示すフローチャート
【図4】歯面間隙間演算サブルーチンを示すフローチャート
【図5】包絡面演算サブルーチンを示すフローチャート
【図6】バックラッシュ演算サブルーチンを示すフローチャート
【図7】ハイポイドギヤの斜視図
【図8】ギヤ及びピニオンの各歯面上の各格子点を規定する円柱座標系を示す説明図
【図9】ギヤ歯面上の格子点とピニオン歯面上の収束点との関係を示す説明図
【図10】曲面座標の計算方法を示す説明図
【図11】ギヤ歯面を基準とした相対歯面を示す説明図
【図12】各ピニオン回転ステップでの相対歯面を示す説明図
【図13】図12の各相対歯面を合成した包絡面を示す説明図
【図14】歯車対の歯面距離分布を示す説明図
【図15】歯面間角度を示す説明図
【図16】バックラッシュの解析結果を示す説明図
【図17】オイルポンプの要部断面図
【図18】バックラッシュ演算時に定義されるインナロータとアウタロータの座標を示す説明図
【図19】組付誤差の設定画面を示す説明図
【図20】限界組付誤差検索ルーチンを示すフローチャート
【図21】バックラッシュ特性演算ルーチンを示すフローチャート
【図22】図18のX軸方向及びY軸方向に組付誤差を与えたときのバックラッシュの変化を示す説明図
【図23】図18のX軸回り及びY軸回りに組付誤差を与えたときのバックラッシュの変化を示す説明図
【符号の説明】
【0091】
1 … 評価装置
6 … 演算部(座標変換手段、関数作成手段、歯面間隙間情報演算手段、バックラッシュ情報演算手段、限界組付誤差演算手段、バックラッシュ特性演算手段)
100 … ハイポイドギヤ(歯車対)
101G … ギヤ(第1の歯車)
101P … ピニオン(第2の歯車)
102G … ギヤ歯面(第1の歯車の歯面)
102P … ピニオン歯面(第2の歯車の歯面)
200 … オイルポンプ(歯車対)
201O … アウタロータ(第1の歯車)
201I … インナロータ(第2の歯車)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の歯車の歯面上に設定された各格子点での3次元座標データと、上記第1の歯車に噛合する第2の歯車の歯面上に設定された各格子点での3次元座標データとを歯車対の組立諸元を用いて所定の噛合回転位置で互いに関連付け、上記各3次元座標データを上記第1の歯車或いは上記第2の歯車を基準とする円筒座標系上の3次元座標データに変換する座標変換手段と、
上記第2の歯車の歯面上に設定した2次元の媒介変数を用い、上記第2の歯車の歯面上の各3次元座標データに基づいて当該第2の歯車の歯面上の点を表す半径座標の関数、軸座標の関数、及び角度座標の関数を作成する関数作成手段と、
上記第1の歯車の歯面上の点と上記円筒座標系上で同一周上に存在する上記第2の歯車の歯面上の点を示す上記媒介変数を、上記半径座標の関数及び上記軸座標の関数から演算し、当該演算した媒介変数に基づき、上記第1の歯車の歯面上の点と当該点に対応する上記第2の歯車の歯面上の点との間の隙間を示す相対角度情報を上記角度座標の関数を用いて算出する歯面間隙間情報演算手段と、
所定の噛合回転位置において演算される上記第1の歯車と上記第2の歯車とのドライブ歯面側の上記各相対角度情報の中から最小の上記相対角度情報を抽出するとともに、上記所定の噛合回転位置において演算される上記第1の歯車と上記第2の歯車とのコースト歯面側の上記相対角度情報の中から最小の上記相対角度情報を抽出し、ドライブ歯面側の上記相対角度情報の最小値とコースト歯面側の上記相対角度情報の最小値とに基づいて上記所定の噛合回転位置におけるバックラッシュ情報を演算するバックラッシュ情報演算手段と、を備えたことを特徴とする歯車対の評価装置。
【請求項2】
上記座標変換手段は、歯車対の組立諸元を用いて互いに関連付けた上記各3次元座標データを、歯車対の組付誤差量で補正することを特徴とする請求項1記載の歯車対の評価装置。
【請求項3】
上記座標変換手段で上記3次元座標データを補正するための上記組付誤差量を可変設定し、可変設定した上記組付誤差量で補正された上記3次元座標データ毎に上記バックラッシュ情報演算手段で演算された上記バックラッシュ情報に基づいて歯車対がバックラッシュを確保する上で許容される限界組付誤差量を検索する限界組付誤差量検索手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の歯車対の評価装置。
【請求項4】
上記座標変換手段で上記3次元座標データを補正するための上記組付誤差量を可変設定し、可変設定した上記組付誤差量で補正された上記3次元座標データ毎に上記バックラッシュ情報演算手段で演算された上記バックラッシュ情報に基づいて組付誤差量に対するバックラッシュ特性を演算するバックラッシュ特性演算手段を備えたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の歯車対の評価装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の歯車対の評価装置による評価結果を用いて諸元を最適化したことを特徴とする歯車対。
【請求項1】
第1の歯車の歯面上に設定された各格子点での3次元座標データと、上記第1の歯車に噛合する第2の歯車の歯面上に設定された各格子点での3次元座標データとを歯車対の組立諸元を用いて所定の噛合回転位置で互いに関連付け、上記各3次元座標データを上記第1の歯車或いは上記第2の歯車を基準とする円筒座標系上の3次元座標データに変換する座標変換手段と、
上記第2の歯車の歯面上に設定した2次元の媒介変数を用い、上記第2の歯車の歯面上の各3次元座標データに基づいて当該第2の歯車の歯面上の点を表す半径座標の関数、軸座標の関数、及び角度座標の関数を作成する関数作成手段と、
上記第1の歯車の歯面上の点と上記円筒座標系上で同一周上に存在する上記第2の歯車の歯面上の点を示す上記媒介変数を、上記半径座標の関数及び上記軸座標の関数から演算し、当該演算した媒介変数に基づき、上記第1の歯車の歯面上の点と当該点に対応する上記第2の歯車の歯面上の点との間の隙間を示す相対角度情報を上記角度座標の関数を用いて算出する歯面間隙間情報演算手段と、
所定の噛合回転位置において演算される上記第1の歯車と上記第2の歯車とのドライブ歯面側の上記各相対角度情報の中から最小の上記相対角度情報を抽出するとともに、上記所定の噛合回転位置において演算される上記第1の歯車と上記第2の歯車とのコースト歯面側の上記相対角度情報の中から最小の上記相対角度情報を抽出し、ドライブ歯面側の上記相対角度情報の最小値とコースト歯面側の上記相対角度情報の最小値とに基づいて上記所定の噛合回転位置におけるバックラッシュ情報を演算するバックラッシュ情報演算手段と、を備えたことを特徴とする歯車対の評価装置。
【請求項2】
上記座標変換手段は、歯車対の組立諸元を用いて互いに関連付けた上記各3次元座標データを、歯車対の組付誤差量で補正することを特徴とする請求項1記載の歯車対の評価装置。
【請求項3】
上記座標変換手段で上記3次元座標データを補正するための上記組付誤差量を可変設定し、可変設定した上記組付誤差量で補正された上記3次元座標データ毎に上記バックラッシュ情報演算手段で演算された上記バックラッシュ情報に基づいて歯車対がバックラッシュを確保する上で許容される限界組付誤差量を検索する限界組付誤差量検索手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の歯車対の評価装置。
【請求項4】
上記座標変換手段で上記3次元座標データを補正するための上記組付誤差量を可変設定し、可変設定した上記組付誤差量で補正された上記3次元座標データ毎に上記バックラッシュ情報演算手段で演算された上記バックラッシュ情報に基づいて組付誤差量に対するバックラッシュ特性を演算するバックラッシュ特性演算手段を備えたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の歯車対の評価装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の歯車対の評価装置による評価結果を用いて諸元を最適化したことを特徴とする歯車対。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
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【図10】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
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【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−151657(P2010−151657A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330904(P2008−330904)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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