説明

歯車検査装置

【課題】歯車検査を簡易かつ短時間で行う。
【解決手段】検査歯車(30)を検査する歯車検査装置(10)において、検査歯車に回転可能に係合する基準歯車(20)と、基準歯車および検査歯車のうちの一方を駆動する駆動手段(53)と、基準歯車および検査歯車の回転時に、基準歯車および検査歯車により形成される振動加速度を検出する振動加速度検出手段(51)と、基準歯車および検査歯車のそれぞれの回転軸の回転トリガ信号を検出する回転トリガ信号検出手段(54)と、振動加速度検出手段により検出された振動加速度と回転トリガ信号検出手段により検出された回転トリガ信号とに基づいて、検査歯車を検査する検査手段(40)とを具備する歯車検査装置が提供される。基準歯車の歯数と検査歯車の歯数とは互いに素であるか、またはこれらの最大公約数はかなり小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造された歯車を検査する歯車検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において歯車を検査する検査装置は歯車の形状が設計通りに製造されたか否かを確認する一種の座標測定器である(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。例えばインボリュート歯車については、歯車軸の回転角と歯面に接触させたスタイラス(測定子)の直線運動との関係に基づいて歯車の外形検査が行われている。
【0003】
ISO(国際標準化機構)等の規格においては、歯車の複数の歯部のうちの三つの歯を計測するか、もしくは複数の歯部のうちの一つの歯部における三箇所または四箇所の歯形を計測することが推奨されている。
【特許文献1】特開平08−029157号公報
【特許文献2】特開平08−029156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、歯面の形状は歯車の歯部ごとにバラついているので、特許文献1および特許文献2に開示される検査装置によって歯車を検査した場合には、複数の歯部のうちの一部の歯部の形状が適正であったとしても、他の歯部が適正であるか否かまでは判断しきれない。
【0005】
さらに近年では、歯車を低振動で駆動させることが要求されている。歯部の形状特性のうちの一部、例えば表面のうねりは歯車の駆動時に振動を生じさせる原因となる場合もある。例えば表面のうねりが0.1マイクロメートル程度であったとしても、周波数によっては、歯車の駆動時に振動を生じさせうる。歯車を低振動で駆動可能かを判断するためには、全ての歯部が適正であることを確認する必要があり、このような場合には検査作業が繁雑になると共に検査時間も遅延するという問題が生じていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、歯車検査を簡易かつ短時間で行うことのできる歯車検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、検査歯車を検査する歯車検査装置において、前記検査歯車に回転可能に係合する基準歯車を具備し、該基準歯車の歯数と前記検査歯車の歯数とは互いに素になっており、さらに、前記基準歯車および前記検査歯車のうちの一方を駆動しつつ前記基準歯車および前記検査歯車のうちの他方に負荷を与える駆動手段と、前記基準歯車および前記検査歯車の回転時に、前記基準歯車および前記検査歯車により形成される振動加速度を検出する振動加速度検出手段と、前記基準歯車および前記検査歯車のそれぞれの回転軸の回転トリガ信号を検出する回転トリガ信号検出手段と、前記振動加速度検出手段により検出された前記振動加速度と前記回転トリガ信号検出手段により検出された前記回転トリガ信号とに基づいて、前記検査歯車を検査する検査手段とを具備する歯車検査装置が提供される。
【0008】
すなわち1番目の発明においては、振動加速度と回転トリガ信号とに基づいて検査歯車を検査するようにしているので、測定子を用いる従来技術の検査装置よりも簡易かつ短時間で検査歯車の検査を行うことが可能となる。
【0009】
2番目の発明によれば、検査歯車を検査する歯車検査装置において、前記検査歯車に回転可能に係合する基準歯車を具備し、該基準歯車の歯数と前記検査歯車の歯数との間の最大公約数がこれら歯数よりも大幅に小さくなっており、さらに、前記基準歯車および前記検査歯車のうちの一方を駆動しつつ前記基準歯車および前記検査歯車のうちの他方に負荷を与える駆動手段と、前記基準歯車および前記検査歯車の回転時に、前記基準歯車および前記検査歯車により形成される振動加速度を検出する振動加速度検出手段と、前記基準歯車および前記検査歯車のそれぞれの回転軸の回転トリガ信号を検出する回転トリガ信号検出手段と、前記振動加速度検出手段により検出された前記振動加速度と前記回転トリガ信号検出手段により検出された前記回転トリガ信号とに基づいて、前記検査歯車を検査する検査手段とを具備する歯車検査装置が提供される。
【0010】
すなわち2番目の発明においては、振動加速度と回転トリガ信号とに基づいて検査歯車を検査するようにしているので、測定子を用いる従来技術の検査装置よりも簡易かつ短時間で検査歯車の検査を行うことが可能となる。好ましい態様においては、前記最大公約数は2,3または5である。
【0011】
3番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、前記検査手段は、前記振動加速度を前記回転トリガ信号によって同期平均することにより、前記検査歯車の振動特性と前記基準歯車の振動特性とを分離する分離手段と、前記基準歯車および前記検査歯車に関する周波数応答関数を算出して定量化する周波数応答関数算出手段と、前記分離手段によって分離された前記検査歯車の振動特性と、前記周波数応答関数算出手段により算出された定量化された周波数応答関数とから前記検査歯車の歯面形状を求める歯面形状算出手段とを含む。
すなわち3番目の発明においては、基準歯車および検査歯車の歯数が互いに素であるかまたはその最大公約数がかなり小さいようになっているので、検査歯車の一つの歯部は基準歯車の全てまたは一周にわたって分布するほぼ全ての歯部とかみあう。従って、分離手段によって同期平均することにより、基準歯車は概ね平均的な歯面形状を持つ検査歯車と係合するものとみなすことができる。また、周波数応答関数算出手段を用いているので、振動数が高い場合にはわずかな振幅の振動でも容易に検出することが可能となる。
【0012】
4番目の発明によれば、3番目の発明において、前記検査手段は、さらに、前記検査歯車のための複数の歯面形状パターンを記憶する記憶手段と、前記歯面形状算出手段により算出された前記検査歯車の歯面形状と前記記憶手段に記憶された歯面形状パターンとを比較する比較手段とを具備する。
すなわち4番目の発明においては、歯面形状に関する比較結果に基づいて、検査歯車を製造した歯車製造装置固有の問題点を明確にすると共に、低振動で駆動することのできる検査歯車の組み合わせを適切に選択することも可能となる。
【0013】
5番目の発明によれば、4番目の発明において、前記検査手段は、さらに、前記分離手段によって分離された前記検査歯車の振動特性に基づいて前記検査歯車の振動波形を算出する波形算出手段と、前記検査歯車のための複数の振動波形パターンを記憶する記憶手段と、前記波形算出手段により算出された前記検査歯車の振動波形と前記記憶手段に記憶された振動波形パターンとを比較する比較手段とを具備する。
すなわち5番目の発明においては、振動波形に関する比較結果に基づいて、検査歯車を製造した歯車製造装置固有の問題点を明確にすると共に、低振動で駆動することのできる検査歯車の組み合わせを適切に選択することも可能となる。
【0014】
7番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、前記検査手段は、前記振動加速度を前記回転トリガ信号によって同期平均することにより、前記検査歯車の振動特性と前記基準歯車の振動特性とを分離する分離手段と、該分離手段により分離された前記検査歯車の振動特性からかみ合い振動成分を抽出するかみ合い振動成分抽出手段と、前記検査歯車に関する周波数応答関数を算出して定量化する周波数応答関数算出手段と、前記かみ合い振動成分抽出手段により抽出された前記検査歯車のかみ合い振動成分と前記周波数応答関数算出手段により算出された前記検査歯車に関する周波数応答関数とを用いて、前記検査歯車の歯面形状に対応した励振力を算出する励振力算出手段とを含む。
すなわち7番目の発明においては、算出された励振力は歯車の回転速度の影響および歯車検査装置の振動系としての特性の影響を含んでいない。従って、7番目の発明においては、励振力を用いることにより、検査歯車の歯面形状に代表される幾何学的特徴を普遍的に示すことが可能となる。このため、この励振力を予め求めた他の励振力と比較すれば、検査歯車を検査することができる。
【0015】
8番目の発明によれば、7番目の発明において、前記かみ合い振動成分抽出手段は、前記検査歯車の振動特性から抽出されたかみ合い周波数およびその高調波成分のそれぞれの振幅および位相のスペクトルを複素平面上で表すことによりかみ合い振動成分を取得するようになっている。
すなわち8番目の発明においては、かみ合い振動成分の振幅および位相を同一の複素平面上に示すことができるので、歯面形状を正確に判断することができる。
【0016】
9番目の発明によれば、8番目の発明において、前記複素平面においては、かみ合い一次成分の位相を零にするようにした。
すなわち9番目の発明においては、かみ合い一次成分の位相を零にすることにより、かみ合い一次成分が基準時間軸として機能し、それにより、同じ波形の場合には同一のパターンを複素平面上に描くことができる。
【0017】
10番目の発明によれば、7番目から9番目のいずれかの発明において、前記周波数応答関数算出手段は、前記検査歯車の振動特性から抽出されたかみ合い周波数およびその高調波成分のそれぞれの振幅のスペクトルを連結すると共に、前記かみ合い周波数およびその高調波成分のそれぞれの位相のスペクトルを連結することにより前記周波数応答関数を取得するようになっている。
すなわち10番目の発明においては、実験的手法により周波数応答関数を取得することができる。なお、10番目の発明において使用される検査歯車の振動特性は、トルクを一定にした状態で回転数を変化させつつ同期平均処理を行うことにより得られる。
【0018】
11番目の発明によれば、7番目から10番目のいずれかの発明において、前記検査手段は、さらに、前記検査歯車のための複数の歯面情報を記憶する記憶手段と、前記励振力算出手段により算出された前記検査歯車の前記励振力と前記記憶手段に記憶された前記歯面情報とを複素平面上で比較する比較手段とを含む。
すなわち11番目の発明においては、複素平面上での比較により、検査歯車の歯面形状を把握でき、歯車の製造へのフィードバックが容易になる。
【0019】
12番目の発明によれば、11番目の発明において、前記歯面情報が他の複数の歯車に対して予め求められた複数の励振力である。
すなわち12番目の発明においては、比較的簡易な手法により検査歯車の歯面形状の比較を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同一の部材には同一の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明に基づく歯車検査装置の概略図である。歯車検査装置10は歯車箱11に内包される基準歯車20を含んでいる。図示されるように基準歯車20の回転軸部21は軸受25a、25bを介して歯車箱11に回転可能に支持されている。基準歯車20は後述する検査歯車30を検査するために歯車検査装置10に当初から備えられている。このため、基準歯車20は高精度インボリュート歯車であるのが好ましいが、基準歯車20は通常の代表的な歯車であってもよい。いずれの場合であっても、基準歯車20の全ての歯面は周知の歯車測定器などにより計測されていて、基準歯車20の特性、特に幾何学的形状は明確であるものとする。通常の代表的歯車、すなわち検査歯車にかみあわせて用いる歯車から選んだ代表的歯車においては、その幾何学的形状は計測されていなくてもよい。この場合には既知の検査歯車があることが望ましい。
【0021】
一方、歯車検査装置10によって検査される検査歯車30は検査時に歯車検査装置10に搭載される。図1においては、検査歯車30の回転軸部31が軸受35a、35bを介して歯車箱11に回転可能に支持される検査歯車30は基準歯車20に係合している。
【0022】
検査歯車30の回転軸部31は、図示しないVベルト等を介してモータ53に接続されている。このモータ53は後述する検査手段40からの指令により検査歯車30を回転させるように駆動する。また、モータ53は基準歯車20に負荷を与える役目も果たす。なお、モータ53が基準歯車20の回転軸部21に接続されていて、モータ53によって基準歯車20が回転駆動する構成であってもよい。
【0023】
本発明の一つの実施形態においては、検査歯車30の歯数と基準歯車20の歯数とが「互いに素」の関係にある。歯数が様々に異なる検査歯車30を検査できるようにするために、基準歯車20の歯数は比較的大きな素数であるのが好ましい。或る実施形態においては、基準歯車20の歯数は「53」であり、検査歯車30の歯数は「30」である。なお、検査歯車30の歯数が異なる場合には検査歯車30の直径が異なりうるので、軸受35a、35b等の位置を歯車箱11に沿って変更することにより、検査歯車30を基準歯車20に係合可能に配置することができるものとする。
【0024】
ところで、図1に示されるように基準歯車20の一方の端面には二つの加速度ピックアップ29が直径方向に対向して設けられている。これら加速度ピックアップ29によって基準歯車20および検査歯車30の回転方向の振動が検出される。この歯車の回転方向と密接に関わる振動は、スリップリングまたはテレメータ51(以下、「テレメータ51」と略す)を通じて検査手段40に入力される。なお、基準歯車20の端面に設けられた加速度ピックアップ29の代わりに、歯車箱11に設けられた加速度ピックアップ29'によって回転方向の振動を求めるようにしてもよい。また、加速度ピックアップ29を軸受35a、35bに取り付けて、歯車の回転方向と密接に関わる振動を求めるようにしてもよい。この場合にはテレメータ51を用いる必要がない。
【0025】
さらに、基準歯車20の回転軸部21の軸出力を検出する動力計52も検査手段40に接続されている。基準歯車20を駆動する場合には動力計52は回転軸部31に接続される。また、図示されるように、回転軸部21および回転軸部31のそれぞれに設けられた回転検出器54、54'により、回転軸部21および回転軸部31の一回転につき一回のそれぞれの回転トリガ信号も検査手段40に入力される。
【0026】
図2は、図1に示される歯車検査装置の検査手段40を示す機能ブロック図である。検査手段40は一般的にデジタルコンピュータから構成される。検査手段40は、振動加速度を回転トリガ信号によって同期平均することにより、検査歯車30の振動特性と基準歯車20の振動特性とを分離する分離手段41と、基準歯車20および検査歯車30に関する周波数応答関数を算出して定量化する周波数応答関数算出手段42と、分離手段41によって分離された検査歯車30の振動特性と、周波数応答関数算出手段42により算出された定量化された周波数応答関数とから検査歯車30の歯面形状を求める歯面形状算出手段43とを含んでいる。さらに、検査手段40は、検査歯車30のための複数の歯面形状パターンを記憶するデータベース50と、歯面形状算出手段43により算出された検査歯車30の歯面形状とデータベース50に記憶された歯面形状パターンとを比較する比較手段45とを含んでいる。図示されるように、比較手段45において得られた比較結果および歯面形状算出手段43において得られた歯面形状は、検査歯車30の検査結果として、歯車検査装置10の出力手段60、例えばモニタ、プリンタ等に出力することができる。
【0027】
さらに、検査手段40は、分離手段41によって分離された検査歯車30の振動特性に基づいて検査歯車30の振動波形を算出する波形算出手段44を含んでおり、データベース50には検査歯車30の複数の振動波形パターンも記憶されている。そして、比較手段45は、波形算出手段44によって算出された検査歯車30の振動波形とデータベース50に記憶された振動波形パターンとを比較することもできる。比較手段45において得られた比較結果および波形算出手段44において得られた振動波形は、同様に出力手段60に出力されるようになっている。なお、波形算出手段44においては、分離手段41によって分離された検査歯車30の振動特性と歯面形状算出手段において得られた歯面形状とに基づいて検査歯車の振動波形が算出されるようにしてもよい。
【0028】
以下、歯車検査装置10による検査歯車30の検査手法について具体的に説明する。なお、以下の手法は歯車検査装置10の検査手段40において行われるものとする。
【0029】
図1に示されるように検査歯車30を基準歯車20に係合するように取り付けた後、検査手段40からの指令によりモータ53を通電し、検査歯車30を所定の回転数およびトルクで回転させる。一つの実施形態においては、検査歯車30の回転数が約1800rpmである。また、検査歯車30の駆動時に基準歯車20に掛かるトルクは約245Nmである。
【0030】
検査歯車30が回転することによって基準歯車20は反対方向に回転し、回転時における基準歯車20の回転方向振動が加速度ピックアップ29により検出されてテレメータ51を通じて検査手段40に入力される。この回転方向振動は基準歯車20および検査歯車30のそれぞれの歯車の特性、つまり歯面形状に基づく振動特性を重ね合わせたものである。従って、検査手段40の分離手段41によって、基準歯車20および検査歯車30のそれぞれの振動特性を分離する。
【0031】
図2に示されるように、分離手段41には、テレメータ51からの回転方向振動が入力される。さらに、回転軸部21、31の一回転当たり一回のそれぞれの回転トリガ信号は回転検出器54、54'を通じて検査手段40の分離手段41に入力される。
【0032】
分離手段41においては、回転方向振動の振動波形に対して、回転トリガ信号によって同期平均処理を行うことにより、基準歯車20の回転軸部21および検査歯車30の回転軸部31のそれぞれに同期した振動成分のみが抽出される。振動の計測結果は歯面ごとの誤差、または組立誤差によって変動しうるので、同期平均処理を行うことによって、信頼性の高い波形を得ることが可能となる。
【0033】
同期平均の具体的手法は既に公知であるので詳細には説明しないが、同期平均の具体的手法については、Ratanasumawong C.,Houjoh H.,Matsumura S.,Saitoh M., and Ueda Y.,による「Utilization of synchronous averaging of vibration for diagnosis of gear system to estimate tooth error. Proc. of DETC'03, Chicago USA Sep 2−6 2003」を参照されたい。
【0034】
本発明においては基準歯車20の歯数と検査歯車30の歯数とが互いに素の関係にあるので、検査歯車30の一つの歯部は基準歯車20の全ての歯部とかみあうことになる。そして、各歯部に関する振動を同期平均により平均化するので、基準歯車20は平均的な歯面形状を持つ検査歯車30と係合するものとみなされると共に、検査歯車30は平均的な歯面形状を持つ基準歯車20と係合するものとみなすことができる。
【0035】
さらに本発明においては、同期平均の回数は比較的少ない回数で足りる。例えば基準歯車20の歯数が「53」であり、検査歯車30の歯数が「30」である場合には、基準歯車20が30回転(検査歯車30の歯数に相当する)すれば、検査歯車30の全ての歯部に関するデータが得られることになる。すなわち、回転開始時に基準歯車20と係合していた検査歯車30の特定の歯部は、基準歯車20が30回転することにより、基準歯車20と再び係合するようになる。
【0036】
ただし、基準歯車20の振動特性と検査歯車30の振動特性とを完全に分離するために、同期平均の平均回数は十分に大きいことが好ましく、或る実施形態においては、同期平均の平均回数は256回以上である。
【0037】
図3(a)は回転軸部31の回転トリガ信号に基づいて算出された検査歯車30の波形を示す図である。図3(a)においては横軸は時間を示しており、横軸の長さは回転軸部31の回転周期に合わせている。なお、図3(a)における縦軸は振動加速度を示す。
【0038】
図3(a)に示されるような同期平均後の信号は厳密に一回転の周期を持つので、回転周期をウィンドウ幅としてDFT(Discrete Fourier Transform)処理を行うと、ハニングウィンドウによる重み付けが不要となる。DFT処理によって、図3(b)に示されるように回転一次を基本周波数とするラインスペクトルが得られる。図3(b)において参照符号fzは検査歯車30の基準歯車20に対するかみあいの基本周波数を示し、その整数倍に相当する参照符号2fz、3fzは基本周波数fzの高調波成分を示している。なお、これら基本周波数fzおよび高調波成分2fz、3fzをまとめて「かみあい成分」と適宜呼ぶこととする。
【0039】
このように信号を処理する場合には、検査歯車30の振動特性を重複または取りこぼしなく獲得することができる。
【0040】
なお、任意のデータ長さでDFT処理を行うようにしてもよい。図3(c)は回転軸部31の回転周期よりも長いウィンドウ幅について求めた図3(b)と同様な図である。この場合、周波数漏れのために一般にハニングウィンドウを用いる必要がある。図3(c)においては、図3(b)に示されるラインスペクトルと比較してレベルが小さくなり、スペクトルが広がりを持っているのが分かる。このことは、振動特性の一部分が捨てられていることを意味する。
【0041】
一方、図4(a)は回転軸部21の回転トリガ信号に基づいて算出された基準歯車20の波形を示す図3(a)と同様の図である。同様に、図4(b)および図4(c)は、基準歯車20について求められた図3(b)および図3(c)とそれぞれ同様の図である。
【0042】
特に、図3(b)と図4(b)とを比較して分かるように、これら図面におけるそれぞれのかみあい成分fz、2fz、3fzは互いに等しい。そして、図3(b)における非整数次成分fa、fb等は基準歯車20の同様な位置の非整数次成分(図4(b)を参照されたい)とは異なる。
【0043】
すなわち、テレメータ51から入力された同一の回転方向振動を用いた場合であっても、使用される回転トリガ信号に応じて同期平均処理の結果は異なり、検査歯車30および基準歯車20についての特性が分離できたことになる。また、非整数次成分fa、fbは検査歯車30の歯面形状に基づく特性を表している。これら非整数次成分fa、fbのうちの非整数次成分faは、かみあい成分fz、2fz、3fzの両側に生ずる側帯波であり、歯部の平均的形状からのわずかなずれが各歯部ごとに存在することを示している。このようなずれは、ピッチ誤差および/または圧力角誤差のばらつきに関するものである。また、非整数次成分fbは、検査歯車製造時に歯車製造機械が個別に有する癖および/または個性によって歯面に転写されるわずかなうねりの成分である。
【0044】
図5は、基準歯車20および検査歯車30からなる歯車対の振動加速度のスペクトルを回転数の順に並べたカスケード線図を示している。図5は、同期平均しないスペクトルを並べたものである。図5においては三角印で示される複数の固有振動数が存在し、3600Hzと4000Hz近辺の固有振動数の影響が図3(b)と図4(b)において高調波成分2fz、3fzの間に出現する。このことは、図3(b)と図4(b)のスペクトルが歯面の凹凸の大きさを直接表している訳ではないことを意味している。歯面の凹凸を検出するためには、歯面の凹凸と観測されたかみあい非整数次成分fa、fb等の関係が必要とされる。
【0045】
かみあい非整数次成分fa、fb等は歯面形状による系の変位加振と系の応答関数の積として式(1)で表され、共振などによって振動の大きさが変化する。
A(ω)=H(ω)×E(ω) (1)
【0046】
式(1)において、A(ω)はかみあい非整数次振動成分を示し、H(ω)は系の周波数応答関数を示し、E(ω)は歯面の凹凸の情報を示している。従って、振動系の周波数応答関数H(ω)を知ることにより、振動計測結果(A(ω))から歯面の凹凸情報E(ω)が分かる。
【0047】
歯面の凹凸情報E(ω)は検査手段40の周波数応答関数算出手段42によって以下の手順で推定される。
【0048】
(1)周波数応答関数形状の推定
歯面の凹凸は変位加振として作用するので、加振されたかみあい非整数次成分の振幅はトルクの影響を受けない。このため、基準歯車20および検査歯車30等からなる系の周波数応答関数の形状は、かみあい非整数次成分の応答により求めることができる。図6(a)は回転次数解析により、複数の顕著な回転次数の応答を求めた図である。これらを平均すると、図6(b)に示されるように基準歯車20および検査歯車30からなる歯車対の周波数応答関数の形状とみなすことができる。
【0049】
(2)周波数応答関数の定量化
図6(b)においては、周波数応答関数の形状のみが求められている。本発明においては、基準歯車20の歯面の歯面形状、すなわち凹凸の振幅が既知であるので、このことを用いて周波数応答関数を定量化することができる。校正を正確に行うためには、参照する次数の振動の振幅と凹凸の大きさの両方が大きいことが好ましい。例えば、図4(b)における26次の成分を用いるのが好ましい。
【0050】
(3)歯面形状の逆推定
検査歯車30の特性が基準歯車20の特性に対して独立しているので、単一の周波数応答関数から検査歯車30の歯面情報を逆算できる。この周波数応答関数と同期平均された振動加速度を式(1)に適用すると、検査歯車30の歯面形状の情報が分かる。なお、かみあい成分fz、2fz、3fzと回転一次の側帯波は歯面の凹凸以外の振動源から発生することが分かっているので、取り扱っていない。
【0051】
上記手法によって、本発明の歯車検査装置10から得られた検査歯車30の歯面形状の特徴を図7(a)に示す。一方、図7(b)は従来技術の手法、すなわち測定子を用いた歯面測定から得られた検査歯車の歯面形状の特徴を示す図である。これら図面から分かるように、本発明の歯車検査装置10から得られた検査歯車30の歯面形状は、従来技術の手法で得られた歯面形状とほぼ等しく、また、本発明の歯車検査装置10によって0.1マイクロメートル程度の凹凸まで正確に検出可能であることが分かる。また、周知であるように加速度は周波数の二乗に比例するので、本発明のように周波数応答関数算出手段42を用いることにより、振動数が高い場合にはわずかな振幅の振動でも容易に検出することが可能となっている。
【0052】
なお、図7(a)に示される特徴は検査歯車30の各歯部において歯形を接触線方向に平均し、一回転分連結したものと考えられる。また、歯すじ方向に同期している歯面の凹凸は振動に影響を与えないと考えられ、上記手法においては平均化により無視される。従来技術においてはこのような凹凸の量の検出は極めて手間を要するものであったが、本発明の歯車検査装置10においては従来技術の手間を要することなしに、上記手法により極めて簡易に歯面形状を得ることができる。
【0053】
本発明の歯車検査装置10においては、実験等により求められた検査歯車30のための複数の歯面形状が、図8に示されるように比較用の歯面形状パターンとしてデータベース50に予め組み入れられている。そして、歯面形状算出手段43により算出された歯面形状は比較手段45によってデータベース50の歯面形状パターンと比較され、その比較結果に基づいて検査歯車30の歯面形状が評価される。次いで、評価結果が検査歯車30の検査結果として出力手段60から出力される(図2を参照されたい)。なお、周波数応答関数算出手段42で得られた検査歯車30の歯面形状も出力手段60に出力される。
【0054】
このように、本発明においては、基準歯車20および検査歯車30の計測された振動に基づいて、検査歯車30の歯面形状を検査するようにしているので従来技術の検査装置よりも簡易かつ短時間で検査歯車30の検査を行うことができる。例えば、基準歯車20の歯数が53であり、検査歯車30の歯数が30であると共に検査歯車30が1800rpmで回転する場合には、約1秒程度で検査歯車30についてのデータ取得が完了し、従来技術の場合と比較して極めて短時間で検査歯車30の検査が可能となる。このように本発明いおいては、検査歯車30の全ての歯部を検査することも可能となる。
【0055】
同一条件で製造される複数の検査歯車30を歯車検査装置10により検査する場合には、歯面形状および/または振動波形の比較結果を検討することにより、検査歯車30の製造上の問題点、つまり歯車製造装置固有の問題点を明確にすることが可能となる。また、本発明においては、複数の検査歯車30のそれぞれについての歯面形状および/または振動波形の比較結果に基づいて、低振動で駆動することのできる検査歯車30の組み合わせを適切に選択することもできる。これにより、高精度化された歯車対の場合には低振動での駆動をさらに改善できると共に、歯車の精度が比較的限定されている場合には制限された条件下での低振動での駆動を可能な限り実現することが可能となる。
【0056】
さらに、本発明の歯車検査装置10においては、波形算出手段44によって検査歯車30の振動波形、具体的にはかみあい振動成分の波形を求めるようにしてもよい。分離手段41において求められたラインスペクトル(図3(b)を参照されたい)のかみあい成分fz、2fz、3fzを抽出し、これらかみあい成分を逆変換することにより検査歯車30に関するかみあい振動成分の波形を算出することができる。図9においては、検査歯車30に関するかみあい振動成分の波形が示されている。
【0057】
さらに、検査手段40のデータベース50には、実験等により求められた検査歯車30のための複数の波形が、図10に示されるように比較用の振動波形パターンとしてまたはその特徴情報としてデータベース50に予め組み入れられている。そして、波形算出手段44により算出された振動波形は比較手段45によってデータベース50の振動波形パターンまたは特徴情報と比較し、その比較結果に基づいて検査歯車30の振動波形が評価される。次いで、前述した場合と同様に、この評価結果が検査歯車30の検査結果として出力手段60から出力される(図2を参照されたい)。このような場合にも、前述したのと同様な効果が得られるのは明らかである。なお、検査歯車30の歯面形状の場合と同様に、この波形を出力手段60から出力するようにしてもよい。
【0058】
図面を参照して説明した実施形態においては基準歯車20の歯数と検査歯車30の歯数とが互いに素である場合について説明したが、基準歯車20の歯数と検査歯車30の歯数との間の最大公約数がこれら歯数よりも大幅に小さくなっている場合、例えば最大公約数が2または3である場合であっても、本発明の歯車検査装置10を適用することができる。
【0059】
最大公約数が2である場合には、検査歯車30の回転時に検査歯車30のうちの一つの歯部は基準歯車20の歯部に一つおきに係合することになる。つまり、検査歯車30の一つの歯部は基準歯車20の全ての歯部と係合するわけではない。しかしながら、検査歯車30の特性は検査歯車30全体にわたって概ね均等であると考えられるので、全ての歯部が係合しない場合であっても検査歯車30の特性を概ね正確に導き出すことが可能である。なお、基準歯車20の歯数と検査歯車30の歯数との間の最大公約数が3または5である場合も概ね同様の効果が得られるのは明らかである。
【0060】
図11は本発明の他の実施形態に基づく歯車検査装置の検査手段を示す機能ブロック図である。図11においては、検査手段40はさらに、分離手段41により分離された検査歯車30の振動特性からかみ合い振動成分を抽出するかみ合い振動成分抽出手段62を含んでいる。そして、検査手段40の励振力算出手段63は、かみ合い振動成分抽出手段62により抽出された検査歯車のかみ合い振動成分と周波数応答関数算出手段42により算出された検査歯車30に関する周波数応答関数とを用いて、検査歯車30の歯面形状に対応した励振力を算出する。
【0061】
ここで、かみ合い振動成分抽出手段62は、検査歯車30の振動特性から抽出されたかみ合い周波数およびその高調波成分のそれぞれの振幅および位相のスペクトルを複素平面上で表すことによりかみ合い振動成分を取得する。
【0062】
また、周波数応答関数算出手段42は、検査歯車30の振動特性から抽出されたかみ合い周波数およびその高調波成分のそれぞれの振幅のスペクトルを連結すると共に、前記かみ合い周波数およびその高調波成分のそれぞれの位相のスペクトルを連結することにより前記周波数応答関数を取得する。
【0063】
さらに、図示されるように、検査手段40は、励振力算出手段63により算出された検査歯車30の励振力とデータベース50に記憶された歯面情報とを複素平面上で比較する比較手段64を含んでいる。本実施形態においては、データベース50に記憶される歯面情報は、検査歯車30以外の他の複数の歯車に対して予め求められた複数の励振力を含んでいる。
【0064】
以下、データベース50に記憶される複数の励振力の算出手法について説明する。
はじめに、図12に示されるように、歯面形状が互いに異なる複数の歯車を準備する。図12には、例として九種類の歯車が示されているが、さらに種々の形状をもつ多数種類の歯車を準備するようにしてもよい。
【0065】
図12における縦欄の「crn」はリード・クラウニング(lead crowning)、つまり歯すじの丸みを意味しており、適宜「クラウニング」と称する。横欄の「cvx」はコンベックス・プロフィル(convex profile)、つまり歯形の丸みを意味しており、適宜「コンベックス」と称する。
【0066】
また、横欄における「pp」はプレッシャ・アングル・エラー・プラス(pressure angle error plus)、つまりプラス方向の圧力角誤差を意味している。さらに、横欄における「pm」はプレッシャ・アングル・エラー・マイナス(pressure angle error minus)、つまりマイナス方向の圧力角誤差を意味している。なお、図12に示される数値の単位はマイクロメートルであり、例えば「crn5」はクラウニングが5マイクロメートルであることを意味するものとする。
【0067】
図12に示されるこれら歯車を検査歯車30の代わりに歯車検査装置10に取付ける。次いで、回転数1800rpmにおいてトルクを変化させつつ、それぞれの歯車について振動加速度およびトリガ信号を計測して、前述したのと同様な同期平均処理を行う。
【0068】
図13から図16は同期平均処理の結果を示す図であり、図13から図16のそれぞれにおける(a)〜(c)は振幅とトルクとの関係を示しており、(d)〜(f)は位相とトルクとの関係を示している。さらに、図13から図16のそれぞれにおける(a)および(d)はかみ合い周波数(かみ合い一次成分)fzの場合を示しており、(b)および(e)はかみ合い周波数fzの2倍の高調波成分(かみ合い二次成分)2fzの場合を示すと共に、(c)および(f)はかみ合い周波数fzの3倍の高調波成分(かみ合い三次成分)3fzの場合を示している。
【0069】
さらに、図13および図14はそれぞれ、クラウニングを5マイクロメートルおよび13マイクロメートルにおいて一定に維持した状態で、コンベックスを変化させた場合を示している。図15は、コンベックスを6マイクロメートルにおいて維持した状態で、クラウニングを変化させた場合を示している。図16は、コンベックスおよびクラウニングを維持した状態で圧力角誤差を変化させた場合を示している。
【0070】
図13における(a)および(d)において「crn5cvx3」に着目すると、トルクが73.5Nm付近において振動が最も小さくなっている。図13の(b)および(d)においてはこの最適トルクの値は異なっており、(b)および(e)における最適トルクは147Nmである。図13の(e)から分かるように最適トルクにおいては位相が180°変化する。また、図13から分かるように、この最適トルクはコンベックス量によっても変化する。
【0071】
詳細には説明しないが、図15においても同様な最適トルクが存在すると共に、この最適トルクがクラウニングの量に応じて変化するのが分かるであろう。また、図16においても同様な最適トルクが存在する。ただし、図16においては、圧力角誤差が変化しても最適トルクはほとんど変化しない。
【0072】
図13から図16においては振幅((a)〜(c))と位相((d)〜(f))とを別個に示している。しかしながら、かみ合い成分毎の振幅および位相の両方は振動波形を構成する主要な要素であるので、振幅((a)〜(c))と位相((d)〜(f))とを見比べて歯面形状を判断するのは不便である。このため、振幅および位相を包括的に表現することにより歯面形状を判断することが望ましい。
【0073】
図17(a)〜図17(c)は振幅および位相を包括的に表現する手法を説明するための図である。はじめに、図17(a)に示されるように、かみ合い振動成分の振幅(A1、A2、A3)および位相(θ1、θ2、θ3)を収集する。なお、図17(a)において横軸は周波数、縦軸は時間を示している。図17(a)においては、これらかみ合い振動成分は以下の式(2)〜式(4)により表される。
【数1】

【0074】
次いで、これらかみ合い振動成分を複素平面上において連結する。図17(b)から分かるように、一次成分の終点が二次成分の始点に相当し、二次成分の終点が三次成分の始点に相当している。以下、本願明細書においては、このように振幅および位相を複素平面上で示したものを「ポーラプロット(Polar Plot)」と呼ぶ。ポーラプロット上においては、図17(b)に示されるように振幅(A1、A2、A3)は線分の長さ、位相(θ1、θ2、θ3)はx軸と線分との間の角度で表される。
【0075】
図17(b)に示されるポーラプロットにおいては、特定の時間におけるかみ合い振動成分の関係が示される。このため、図17(b)において時間t1および時間t2で示されるように基準の時刻が異なる場合には、同じ波形であってもポーラプロットのパターンが変化(回転)する。
【0076】
このような問題を解消するために、本発明においては、かみ合い一次成分の位相が零になるようにかみ合い一次成分をシフトする(式(5)を参照されたい)。これにより、かみ合い一次成分が基準時間軸を決定するために機能し、二次成分および三次成分は一次成分の位相の二倍および三倍だけそれぞれシフトされる(式(6)および式(7)を参照されたい)。このようにシフトされた場合には、同じ波形を同一のパターンとして複素平面上に描くことができる。
【数2】

【0077】
さらに、異なる条件における比較を可能とするために、全ての成分の振幅を一次成分の振幅によって正規化する(式(8)〜式(10)を参照されたい)。正規化後のポーラプロットを図17(c)に示す。これにより、種々の運転条件での比較を同一のポーラプロット上で行うことができる。
【数3】

【0078】
このようなポーラプロットの作成は検査手段40のかみ合い振動成分抽出手段62によって行われる。図18から図20は、図12に示される歯車を回転数1800rpmにて使用した場合のポーラプロットを示す図である。これらポーラプロットは複素平面に表されるので、図18から図20の横軸は実数(real number、real)を示しており、縦軸は虚数(imaginary number、Img.)を示している。なお、ポーラプロットにおける原点と、(実数、虚数)=(1、0)である点との間の線分はかみ合い周波数の一次成分に相当する(図17(c)を参照されたい)。後述する他のポーラプロットも同様である。
【0079】
図18(a)から図18(c)および図19(a)から図19(c)は、それぞれクラウニングを5マイクロメートルおよび13マイクロメートルにおいて一定に維持した状態で、コンベックスを変化させた場合を示している。図18および図19から分かるように、「crn5cvx3」と「crn13cvx6」とを除けば、かみ合い二次成分の位相は概ね等しい傾向を示す。特に、これら図面においてトルクが(最適トルク)147Nm以下である場合には、かみ合い二次成分の位相は概ね等しくなっている。そして、最適トルクを越えると、位相が大幅に変化するのが分かる。
【0080】
さらに、図20(a)から図20(c)はコンベックスおよびクラウニングを維持した状態で圧力角誤差を変化させた場合を示している。図示されるように、圧力角誤差が存在する場合(図20(a)のプラス側および図20(c)のマイナス側)には、トルクが増えると、かみ合い二次成分の位相が回転するのが分かる。
【0081】
なお、コンベックスを維持、例えばコンベックスを6マイクロメートルにおいて維持した状態でクラウニングを変化させた場合については、図18(b)、図19(b)および図20(b)を参照すれば足りる。この場合には、図18(a)〜図18(c)に示されるようなクラウニングを維持した場合に類似した傾向を示している。
【0082】
ところで、図18から図20に示されるポーラプロットは歯車の回転速度の影響および歯車検査装置10の振動系としての動特性の影響を含んでいる。このため、歯車検査装置10の振動系としての動特性の影響を排除して、歯車の歯面形状の特徴を抽出することが望まれる。
【0083】
以下、歯車検査装置10の振動系としての動特性のみを取得する手法について説明する。以下に述べる手法は検査手段40の周波数応答関数算出手段42によって行われるものとする。図21は出現する周波数成分の振幅と回転数との関係を示すカスケード線図である。図21のカスケード線図は、トルク245Nmにおいて回転数をわずかに変化させながら前述した同期平均処理を行うことにより得られる。図示される回転数の間隔は、後述する周波数応答特性を表現するのに必要かつ十分であるものとする。このようにして得られた図21には、三つのかみ合い周波数成分、つまり一次成分fz、二次成分2fzおよび三次成分3fzの線が表されている。
【0084】
図21から分かるように、一次成分fzの線は周波数が約0.5kHzから約2kHzまでの範囲のみをカバーしており、二次成分2fzの線は周波数が約1kHzから約4kHzまでの範囲のみをカバーしており、三次成分3fzの線は周波数が約1.5kHzから約5kHzまでの範囲のみをカバーしている。すなわち、これら三つの線単独では、横軸の全ての周波数範囲をカバーできない。
【0085】
それゆえ、図22に示されるような模式図を用いて、注目したい全ての周波数範囲をカバーするようにする。なお、このとき、本発明に基づく歯車検査装置のモデル図である図23を参照して説明される式(11)および式(12)の関係が満たされるものとする。
【数4】

【0086】
すなわち、図23に示されるように、基準歯車20と検査歯車30とがかみ合うときに、これら歯車の間には、減衰係数Cのダンパおよびバネ定数Kのバネが作用するものとする。なお、図23から分かるように、Mは等価慣性質量、xは相対変位、Δxは歯車対のたわみにより生ずる遅れ量を示している。これら等価慣性質量M、相対変位xを表すのに用いられる符号J1、J2はそれぞれ検査歯車30、基準歯車20の慣性モーメント、符号rb1、rb2はそれぞれ検査歯車30、基準歯車20の基準半径、および符号θ1、θ2はそれぞれ検査歯車30、基準歯車20の回転角を示している。また、符号e1は歯車対のかみ合い誤差であり、ΔKはバネ定数Kの変化量である。
【0087】
再び図22を参照すると、図22の上方には、図21に対応する模式図が示されており、各回転数における一次成分fz〜三次成分3fzのそれぞれに対する振幅(Amplitude)および位相(Phase)を図22の上方の図から抽出する。その結果は、図22の下方に示されており、振幅および位相のそれぞれについて、一次成分fz〜三次成分3fzに関する線が表されている。これら線は部分的にほぼ完全に重なり合いうるのが分かるであろう。
【0088】
次いで、互いに重なり合うようにこれら線を平行移動して連結し、図22の最下方に示されるように振幅および位相のそれぞれに対する線が得られる。これらをまとめて周波数応答関数G(ω)と呼ぶ。なお、振幅についてはデシベルスケールで示されている。また、図22において線の連結時に線が重ならない箇所が存在する場合には、両方の線の平均値を適宜採用する。
【0089】
図24は、このようにして得られた周波数応答関数G(ω)(振幅・位相)を示す図であり、図24に示される周波数応答関数G(ω)は歯車検査装置10の振動系としての動特性を表している。このような操作によって得られる周波数応答関数は全ての周波数範囲をカバーできており、またその精度も高まっている。通常は歯車に対して衝撃試験を行うことなどにより周波数応答関数G(ω)を求めているが、本発明においては、衝撃試験を行うことなしに、歯車検査装置10を用いて検査歯車30の周波数応答関数G(ω)の形状を求めることができる。
【0090】
ここで、V(ω)をかみ合い振動成分のそれぞれとすると、対応するかみ合い成分の励振力X(ω)、すなわち式(11)の右辺のフーリエ変換は以下の式(13)で表される。
X(ω)=V(ω)/G(ω) (13)
【0091】
ここで、かみ合い振動成分V(ω)は、図18〜図20に示されるポーラプロット上に既に表されている。一方、図24において得られた周波数応答関数G(ω)は歯車検査装置10の振動系としての動特性を表している。従って、このかみ合い振動成分V(ω)を周波数応答関数G(ω)で除算することによって、かみ合い周波数成分で基準化した各成分の振幅および位相がかみ合い成分の励振力X(ω)の形で算出される。それゆえ、このようにして算出される励振力X(ω)は、歯車検査装置10の振動系としての動特性を含んでいない。言い換えれば、励振力X(ω)は、検査歯車30の歯面形状に代表される幾何学的形状のみを普遍的に表しており、前述の1800rpmの回転数で計測を行っても良いことを意味する。
【0092】
図25から図27は、このようにして算出された励振力X(ω)を描いたポーラプロットを示す図である。さらに、図25の(a)〜(c)は、クラウニングを5マイクロメートルにおいて一定に維持した状態で、コンベックスを変化させた場合を示している。図26の(a)〜(c)は、コンベックスとクラウニングを適宜変化させた場合を示している。図27の(a)〜(b)は、コンベックスおよびクラウニングを維持した状態で圧力角誤差を変化させた場合を示している。
【0093】
図25(a)に示される「crn5cvx3」の場合には、二次成分の位相角は100°から120°の範囲に集中している。そして、トルクが増加すると、二次成分の振幅も増加する。
【0094】
また、図25(b)、図25(c)および図26(a)〜(c)から分かるように「crn5cvx3」以外の全ての場合には、二次成分の位相角は−25°から−35°の範囲に集中しており、トルクによってほとんど変化しない。ただし、図26(b)における振幅は、トルクが増える際には、減少する。
【0095】
図28は、図25から図27に示される全ての励振力X(ω)の二次成分のみを改めてプロットしたものである。このため、図28においては、歯車の種類に応じた複数のプロットが存在している。図28における正方形プロットは「crn5cvx3」の歯車を示しており、丸形プロットは「crn5cvx6」の歯車を示しており、菱形プロットは「crn5cvx9」の歯車を示しており、上向三角形プロットは「crn9cvx6」の歯車を示しており、下向三角形プロットは「crn13cvx3」の歯車を示しており、十字型プロットは「crn13cvx9」の歯車を示しており、上向五角形プロットは「crn9cvx6pp6」の歯車を示しており、さらに、下向五角形プロットは「crn9cvx6pm6」の歯車を示している。
【0096】
また、これらプロットに付された数字はトルク量を示している。具体的には、数値1はトルク147Nmを示しており、数値2はトルク196Nmを示しており、数値3はトルク220.5Nmを示しており、さらに数値4はトルク245Nmを示している。
【0097】
図28においては、プロット位置と原点との間の距離が振幅を示しており、プロット位置と原点とを結ぶ線分とX軸とがなす角は位相を示している。なお、歯車の種類を示すために図28で用いられるプロットの形状は図25から図27において使用したプロットの形状と必ずしも一致しないことに注意されたい。
【0098】
図示されるように、図28に示される複数のプロットは四つの領域Z1〜Z4に主に分類することができる。領域Z1においてはクラウニングおよび/またはコンベックスの異なる多数のプロットが含まれている。図示されるように、領域Z1のプロットにより形成される直線Lの傾きは約マイナス45°である。また、この直線Lがx軸となす交点を交点L0と呼ぶ。例えばクラウニングおよび/またはコンベックスの量が増大する場合には、プロット位置は、直線L上において交点L0から離れるようにシフトするのが分かる。
【0099】
また、領域Z2はクラウニングおよびコンベックスの両方が最も小さい場合のプロットを含んでいる。そして、領域Z2においては励振の向きが約180°回転しているために、領域Z2は概ね第二象限に含まれている。
【0100】
さらに、領域Z3は圧力角誤差がプラスになるプロットを含んでおり、領域Z4は圧力角誤差がマイナスになるプロットを含んでいる。これら領域Z3、Z4は、領域Z1とはかなり異なる場所に位置している。
【0101】
一方、トルクについては、領域Z1においては負荷トルクが増えると、プロット位置は交点L0に向かって直線L上にシフトするのが分かる。また、領域Z3および領域Z4から分かるように、トルクが増えると、プロット位置は直線Lに接近するようにシフトする。
【0102】
このように、図28の励振力は歯車の歯面情報に概ね対応している。従って、図28に示される複数の励振力のプロット情報を本発明のデータベース50として使用することができる。
【0103】
すなわち、歯面形状を求めたい検査歯車30を準備し、本発明の歯車検査装置10を用いて検査歯車30のかみ合い成分の励振力X(ω)を前述したように算出する。次いで、算出された励振力X(ω)を図28に示されるようなデータベース50と比較する。具体的には、検査歯車30の励振力X(ω)を図28上にプロットして、他のプロットと比較すれば足りる。このとき、検査歯車30の励振力X(ω)がプロットされている図28を出力手段60より出力してもよい。本発明においては、このような比較から得られる検査歯車30の歯面情報を通じて、検査歯車30を検査することが可能である。
【0104】
例えば、算出された検査歯車30の励振力X(ω)が領域Z3に含まれる場合には、検査歯車30の圧力角誤差がプラス側に在る、ということが分かる。そして、その結果を検査歯車30の製造にフィードバックすれば、検査歯車30をより適正に製造できるようになる。検査精度を高めるためには、さらに多数種類の歯車の励振力を求めてデータベース50に蓄積すればよいのは明らかであろう。
【0105】
典型的な実施形態を用いて本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の範囲および精神から逸脱することなしに、前述した変更および種々の他の変更、省略、追加を行うことができるのを理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に基づく歯車検査装置の概略図である。
【図2】図1に示される歯車検査装置の検査手段を示す機能ブロック図である。
【図3】(a)回転軸部の回転トリガ信号に基づいて算出された検査歯車の波形を示す図である。(b)検査歯車のラインスペクトルを示す図である。(c)データ長さが異なる場合における図3(b)と同様の図である。
【図4】(a)回転軸部の回転トリガ信号に基づいて算出された基準歯車の波形を示す図3(a)と同様の図である。(b)基準歯車のラインスペクトルを示す図である。(c)データ長さが異なる場合における図4(b)と同様の図である。
【図5】歯車対のカスケード線図である。
【図6】(a)回転次数解析により、複数の顕著な回転次数の応答を求めた図である(b)図6(a)を平均した図である。
【図7】(a)本発明の歯車検査装置から得られた検査歯車の歯面形状の特徴を示す図である。(b)従来技術の歯形検査から得られた検査歯車の歯面形状の特徴を示す図である。
【図8】データベース中の複数の歯面形状パターンを示す図である。
【図9】かみあい振動成分の波形を示す図である。
【図10】データベース中の複数の振動波形パターンを示す図である。
【図11】本発明の他の実施形態に基づく歯車検査装置の検査手段を示す機能ブロック図である。
【図12】歯面形状が互いに異なる複数の歯車を示す図である。
【図13】(a)〜(c)コンベックスの影響を確認するための振幅とトルクとの関係を示す図である。 (d)〜(f)コンベックスの影響を確認するための位相とトルクとの関係を示す図である。
【図14】(a)〜(c)コンベックスの影響を確認するための振幅とトルクとの関係を示す他の図である。 (d)〜(f)コンベックスの影響を確認するための位相とトルクとの関係を示す他の図である。
【図15】(a)〜(c)クラウニングの影響を確認するための振幅とトルクとの関係を示す図である。 (d)〜(f)クラウニングの影響を確認するための位相とトルクとの関係を示す図である。
【図16】(a)〜(c)圧力角誤差の影響を確認するための振幅とトルクとの関係を示す図である。 (d)〜(f)圧力角誤差の影響を確認するための位相とトルクとの関係を示す図である。
【図17】(a)〜(c)振幅および位相を包括的に表現する手法を説明するための図である。
【図18】(a)〜(c)コンベックスを変化させた場合のポーラプロットを示す図である。
【図19】(a)〜(c)コンベックスを変化させた場合のポーラプロットを示す他の図である。
【図20】(a)〜(c)圧力角誤差を変化させた場合のポーラプロットを示す図である。
【図21】出現する周波数成分の振幅と回転数との関係を示すカスケード線図である。
【図22】振幅および位相についての周波数応答特性を取得することを説明する模式図である。
【図23】本発明に基づく歯車検査装置のモデル図である。
【図24】周波数応答関数を示す図である。
【図25】(a)〜(c)コンベックスを変化させた場合の励振力のポーラプロットを示す図である。
【図26】(a)〜(c)クラウニングを変化させた場合の励振力のポーラプロットを示す図である。
【図27】(a)〜(c)圧力角誤差を変化させた場合の励振力のポーラプロットを示す図である。
【図28】図25から図28のポーラプロットにおけるかみ合い周波数の二次成分をプロットした図である。
【符号の説明】
【0107】
10 歯車検査装置
11 歯車箱
20 基準歯車
21、31 回転軸部
25a、25b 軸受
29、29' 加速度ピックアップ
30 検査歯車
35a、35b 軸受
40 検査手段
41 分離手段
42 周波数応答関数算出手段
43 歯面形状算出手段
44 波形算出手段
45 比較手段
50 データベース
51 スリップリングまたはテレメータ
52 動力計
53 モータ
54、54' 回転検出器
60 出力手段
62 かみ合い振動成分抽出手段
63 励振力算出手段
64 比較手段
fa、fb 非整数次成分
fz、2fz、3fz かみあい成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査歯車を検査する歯車検査装置において、
前記検査歯車に回転可能に係合する基準歯車を具備し、
該基準歯車の歯数と前記検査歯車の歯数とは互いに素になっており、
さらに、
前記基準歯車および前記検査歯車のうちの一方を駆動しつつ前記基準歯車および前記検査歯車のうちの他方に負荷を与える駆動手段と、
前記基準歯車および前記検査歯車の回転時に、前記基準歯車および前記検査歯車により形成される振動加速度を検出する振動加速度検出手段と、
前記基準歯車および前記検査歯車のそれぞれの回転軸の回転トリガ信号を検出する回転トリガ信号検出手段と、
前記振動加速度検出手段により検出された前記振動加速度と前記回転トリガ信号検出手段により検出された前記回転トリガ信号とに基づいて、前記検査歯車を検査する検査手段とを具備する歯車検査装置。
【請求項2】
検査歯車を検査する歯車検査装置において、
前記検査歯車に回転可能に係合する基準歯車を具備し、
該基準歯車の歯数と前記検査歯車の歯数との間の最大公約数がこれら歯数よりも大幅に小さくなっており、
さらに、
前記基準歯車および前記検査歯車のうちの一方を駆動しつつ前記基準歯車および前記検査歯車のうちの他方に負荷を与える駆動手段と、
前記基準歯車および前記検査歯車の回転時に、前記基準歯車および前記検査歯車により形成される振動加速度を検出する振動加速度検出手段と、
前記基準歯車および前記検査歯車のそれぞれの回転軸の回転トリガ信号を検出する回転トリガ信号検出手段と、
前記振動加速度検出手段により検出された前記振動加速度と前記回転トリガ信号検出手段により検出された前記回転トリガ信号とに基づいて、前記検査歯車を検査する検査手段とを具備する歯車検査装置。
【請求項3】
前記検査手段は、
前記振動加速度を前記回転トリガ信号によって同期平均することにより、前記検査歯車の振動特性と前記基準歯車の振動特性とを分離する分離手段と、
前記基準歯車および前記検査歯車に関する周波数応答関数を算出して定量化する周波数応答関数算出手段と、
前記分離手段によって分離された前記検査歯車の振動特性と、前記周波数応答関数算出手段により算出された定量化された周波数応答関数とから前記検査歯車の歯面形状を求める歯面形状算出手段とを含む請求項1または2に記載の歯車検査装置。
【請求項4】
前記検査手段は、さらに、
前記検査歯車のための複数の歯面形状パターンを記憶する記憶手段と、
前記歯面形状算出手段により算出された前記検査歯車の歯面形状と前記記憶手段に記憶された歯面形状パターンとを比較する比較手段とを具備する請求項3に記載の歯車検査装置。
【請求項5】
前記検査手段は、さらに、
前記分離手段によって分離された前記検査歯車の振動特性に基づいて前記検査歯車の振動波形を算出する波形算出手段と、
前記検査歯車のための複数の振動波形パターンを記憶する記憶手段と、
前記波形算出手段により算出された前記検査歯車の振動波形と前記記憶手段に記憶された振動波形パターンとを比較する比較手段とを具備する請求項4に記載の歯車検査装置。
【請求項6】
前記最大公約数が2、3または5であるようにした請求項2から5のいずれか一項に記載の歯車検査装置。
【請求項7】
前記検査手段は、
前記振動加速度を前記回転トリガ信号によって同期平均することにより、前記検査歯車の振動特性と前記基準歯車の振動特性とを分離する分離手段と、
該分離手段により分離された前記検査歯車の振動特性からかみ合い振動成分を抽出するかみ合い振動成分抽出手段と、
前記検査歯車に関する周波数応答関数を算出して定量化する周波数応答関数算出手段と、
前記かみ合い振動成分抽出手段により抽出された前記検査歯車のかみ合い振動成分と前記周波数応答関数算出手段により算出された前記検査歯車に関する周波数応答関数とを用いて、前記検査歯車の歯面形状に対応した励振力を算出する励振力算出手段と、を含む請求項1または2に記載の歯車検査装置。
【請求項8】
前記かみ合い振動成分抽出手段は、
前記検査歯車の振動特性から抽出されたかみ合い周波数およびその高調波成分のそれぞれの振幅および位相のスペクトルを複素平面上で表すことによりかみ合い振動成分を取得するようになっている請求項7に記載の歯車検査装置。
【請求項9】
前記複素平面においては、かみ合い一次成分の位相を零にするようにした請求項8に記載の歯車検査装置。
【請求項10】
前記周波数応答関数算出手段は、
前記検査歯車の振動特性から抽出されたかみ合い周波数およびその高調波成分のそれぞれの振幅のスペクトルを連結すると共に、前記かみ合い周波数およびその高調波成分のそれぞれの位相のスペクトルを連結することにより前記周波数応答関数を取得するようになっている請求項7から9のいずれか一項に記載の歯車検査装置。
【請求項11】
前記検査手段は、さらに、
前記検査歯車のための複数の歯面情報を記憶する記憶手段と、
前記励振力算出手段により算出された前記検査歯車の前記励振力と前記記憶手段に記憶された前記歯面情報とを複素平面上で比較する比較手段とを含む請求項7から10のいずれか一項に記載の歯車検査装置。
【請求項12】
前記歯面情報が他の複数の歯車に対して予め求められた複数の励振力である請求項11に記載の歯車検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2007−3507(P2007−3507A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359254(P2005−359254)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年9月6日 国立大学法人東京工業大学主催の「大学院総合理工学研究科メカノマイクロ工学専攻 平成17年度博士論文発表会」において文書をもって発表
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】