説明

歯間清掃具

【課題】柔らかくて弾力性があり圧縮変形し易く、狭い歯間に挿入し易く、耐久性が高く心地良い使用感の持続性が高い歯間清掃具を提供すること。
【解決手段】本発明の歯間清掃具1は、棒状の芯材2を発泡体3で被覆した清掃部4を備えている。清掃部4の発泡体3は、芯材2の材質より低い温度で溶融する樹脂で形成されている。清掃部4の発泡体3は、気泡の平均セル面積が400〜70000μm2であり、スキン層の平均厚みが100μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間の汚れや食べかすを取り除く歯間清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
歯間の汚れや食べかすを取り除く歯間清掃用具として、例えば、歯間ブラシが知られている。歯間ブラシとしては、折り曲げるとともに捻った金属ワイヤー間にブラシ毛を固定した清掃部材をハンドルに固定したものが広く知られている。このような歯間ブラシは、使用時に、金属ワイヤーが歯や歯ぐきに接触し、使用時に痛みや不快感を与える虞があった。上記歯間ブラシの課題に対応するために、例えば、特許文献1〜3には、発泡体を清掃部材に用いた歯間ブラシが提案されている。
【0003】
特許文献1には、棒状をなす芯材の先端部分に、気泡を含む物質、あるいは3次元的網目構造を持つ物質から作られた歯間清掃体を被せて取着するとともに、この歯間清掃体によって覆われた芯材部分に、歯間清掃体の回転防止片を突設した歯間清掃用具が開示されている。特許文献1に記載の歯間清掃具は、歯間清掃体を構成する発泡体として、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、エチレン酢酸ビニルコポリマーまたはポリプロプレンからなる多孔質焼結体が記載されている。
【0004】
特許文献2には、電動歯間清掃器具の運動軸あるいは手用歯間清掃器具の保持部に歯間清掃スポンジを接続した歯間清掃器具が開示されている。特許文献2には、歯間清掃器具の有する歯間清掃スポンジが、適度な弾性と形状復元性および可撓性を併せ持つ樹脂や金属などの軸部の先端部周囲に、各種形状の被圧縮性の高い天然繊維素、天然ゴム、合成ゴム、あるいは合成樹脂などのスポンジ(連続多孔体)を接着あるいは溶着して形成されていることが記載されている。
【0005】
特許文献3には、長いステムとステムの周りに円周方向に接着された開放気泡フォームから形成されたブラシを有し、ステムはブラシのハンドルを形成するのに十分な長さだけ延長し、ステムは前記ブラシ部材によってカバーされた環状ボスを有する歯間ブラシが開示されている。特許文献3に記載のブラシを形成する開放気泡フォームの構成物質としては、ポリウレタンまたはポリエチレンが記載されている。また、特許文献3には、長いステムは、ポリカーボネート、ナイロン、コダールのようなポリエステルまたはデルリンのようなポリアセタールとすることができるプラスチックから成形できるという記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−192245号公報
【特許文献2】特開2004−41260号公報
【特許文献3】特表平06−500933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3には、歯間清掃具の有する清掃部として、スポンジやフォーム物質を用いることが記載されている。狭い歯間に挿入するためには、清掃部を薄肉に形成し、柔らかく圧縮変形しやすく弾力性があるものとし、しかも耐久性を備える必要があるが、特許文献1〜3に記載の一般的なスポンジやウレタン等のフォーム物質の場合、スポンジやフォーム物質の気泡サイズを小さくしても、気泡壁やスキン層が厚くなるため柔らかさに欠け、気泡サイズを大きくすると柔らかくなるが耐久性に欠ける。
【0008】
従って、本発明の課題は、柔らかく圧縮変形し易く、弾力性があり、しかも耐久性に優れる歯間清掃具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、棒状の芯材を発泡体で被覆した清掃部を備え、この発泡体は、前記芯材の材質より低い温度で溶融する樹脂で形成されており、気泡の平均セル面積が400〜70000μm2であり、スキン層の平均厚みが100μm以下である歯間清掃具を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の歯間清掃具によれば、柔らかく圧縮変形し易く、弾力性があることによって、狭い歯間に挿入し易く、使用時に痛みや不快感を与え難い。また、本発明の歯間清掃具によれば、清掃部の耐久性が高いので心地良い使用感が持続する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である歯間清掃具の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す歯間清掃具の備える清掃部を拡大した要部拡大斜視図である。
【図3】図3は、図2に示すX1−X1線断面図である。
【図4】図4は、スキン層と気泡(セル)とを説明するための図である。
【図5】図5は、図1に示す歯間清掃具の備える清掃部を拡大した要部拡大側面図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施形態である歯間清掃具の備える清掃部を拡大した要部拡大斜視図である(図2相当図)。
【図7】図7は、図6に示す清掃部を拡大した要部拡大側面図である(図5相当図)。
【図8】図8は、図6に示すX2−X2線の断面図である。
【図9】図9は、清掃部の柔らかさを測定する方法を説明するための図である。
【図10】図10は、清掃部の耐久性を測定する方法を説明するための図である。
【図11】図11は、本発明の歯間清掃具の備える清掃部を製造する好適な装置を示す概略図である。
【図12】図12(a)は、図7に示す清掃部を作製する一方の金属板の平面図であり、図12(b)は、図12(a)に示すA−A’線断面図であり、図12(c)は、図7に示す清掃部を作製する他方の金属板の平面図であり、図12(d)は、図12(c)に示すB−B’線断面図である。
【図13】図13は、清掃部の成形用樹脂体の作製を説明する図である。
【図14】図14(a)は、実施例1で得られた発泡体の走査型電子顕微鏡像であり、図14(b)は、実施例2で得られた発泡体の走査型電子顕微鏡像であり、図14(c)は、実施例3で得られた発泡体の走査型電子顕微鏡像であり、図14(d)は、比較例1で得られた発泡体の走査型電子顕微鏡像であり、図14(e)は比較例3で得られた発泡体の走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の歯間清掃具を、その好ましい実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。
【0013】
本実施形態の歯間清掃具1は、図1,図2に示すように、棒状の芯材2を発泡体3で被覆した清掃部4を備えている。ここで、各図中のY方向は、歯間清掃具1の芯材2の長手方向を示し、各図中のX方向は、Y方向に直交する方向であり、歯間清掃具1の幅方向を示し、各図中のZ方向は、Y方向及びX方向に直交する方向であり、歯間清掃具1の上下方向を示している。以下、具体的に、歯間清掃具1について説明する。
【0014】
清掃部4は、歯と歯の間に挿入され、歯間の汚れや食べかすを取り除く部位である。清掃部4は、歯間清掃具1においては、後述する把持部5の先端に取り付けられている。清掃部4は、Y方向の長さが、3〜15mmであることが好ましい。後述する把持部5のY方向の長さ(L1)に対する清掃部4のY方向の長さ(L2)の割合(L2/L1)は、スポンジやフォーム物質の場合、0.03〜0.3であることが好ましい。
【0015】
清掃部4を構成する芯材2は、図3に示すように、歯間清掃具1においては、Y方向に直交する断面が円状であり、Y方向に一直線状に延びる円柱状に形成されている。芯材2の形状は、前記形状に特に限定されず、Y方向に延びていれば、Y方向に直交する断面が楕円状、十字状、長方形等の多角形状等でもよく、例えば、Y方向に延びていれば、曲線状に延びる部分を含んでいてもよい。芯材2は、把持部5に固定するための長さを含めた場合、Y方向の長さが、7〜50mmであることが好ましい。Y方向に直交するX方向及びZ方向の厚みは強度及び歯間への挿入性の点から0.3mm〜1mmであることが好ましく、0.45〜0.8mmであることが特に好ましい。図3に示すように芯材2のY方向に直交する断面が円状である場合には、強度及び歯間への挿入性から横断面の直径(X方向及びZ方向の厚み)が、0.3〜1mmであることが好ましく、0.45〜0.8mmであることが特に好ましい。
【0016】
芯材2の材質としては、発泡体で使用する樹脂より硬質の樹脂又は金属を使用することができる。金属としては、特に制限なく種々のものを使用できるが、折れ難さの観点からニッケルとチタンの合金で代表される形状記憶合金が好ましい。硬質の樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等のナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレングリコールテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン等を使用することができる。これらの中で折れ難さ観点からナイロン610、ナイロン612、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。尚、芯材2と後述する発泡体3との接着性をより強固なものにするために、例えば、サンドブラスト処理や、やすりを用いて芯材2表面を粗面化処理したり、芯材2の表面をコロナ放電処理、フレーム処理してもよい。同様の観点から、芯材2を構成する樹脂に、後述する発泡体3を構成する樹脂を混合させてもよい。発泡体3を構成する樹脂を混合する際の発泡体3を構成する樹脂の芯材2における含有量は2〜30%の範囲が好ましい。
【0017】
清掃部4を構成する発泡体3の気泡タイプとしては、独立気泡タイプ及び連続気泡タイプのいずれも用いることができる。ここで、独立気泡タイプとは、各々の気泡が独立した気泡壁を有するタイプを意味し、連続気泡タイプとは、各々の気泡が連通しているタイプを意味する。より柔らかな感触にできるとともに薬剤を含浸することができる観点から、連続気泡タイプであることが好ましい。
【0018】
発泡体3を構成する樹脂としては、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、極性基を導入したポリエチレン等のオレフィン樹脂、アクリル酸エチル等のポリアクリル酸又はポリメタクリル酸系樹脂、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ナイロンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリスチレン系エラストマー等のエラストマー等を使用することができ、引張り破断強度が高いとともに耐摩耗性と口腔内での使用の観点から、ポリウレタンエラストマー、ナイロンエラストマーを好ましく使用することができる。特に、芯材2の材質として、ナイロン610、612を使用した場合には、芯材2と発泡体3との接着性の観点から、発泡体3を構成する樹脂として、ナイロンエラストマーを使用することが好ましい。また、発泡体3の気泡タイプが連続気泡タイプである場合には、連続気泡タイプ用の樹脂としては、引張り破断強度に優れるエラストマーが好ましく、引張り破断強度が5MPa以上のエラストマーが好ましく使用され、10〜40MPaのエラストマーが強度と柔かさを両立できる観点から特に好ましい。なお、引張り破断強度はJIS K-6251に基づき測定する。
【0019】
本発明においては、清掃部4の柔らかさ及び弾力性と耐久性を両立する観点から、芯材2を被覆する発泡体3は、芯材2の材質より低い温度で溶融する樹脂で形成されている。従って、発泡体3に使用する樹脂が、ポリエチレンのような結晶性樹脂、又はEVAやナイロンエラストマーのような結晶部を有する樹脂である場合には、発泡体3の樹脂の融点又は結晶部の樹脂融点を、芯材2の材質の融点より低くする。また、発泡体3に使用する樹脂が、アクリル酸エチルやポリスチレン系エラストマーのような非晶性樹脂である場合には、発泡体3の樹脂の軟化温度を、芯材2の材質の融点より低くする。芯材2と発泡体3の接着性の観点から、芯材2の材質をナイロンとした場合には、発泡体3の樹脂はナイロンエラストマーが好ましく、芯材2の材質をポリエステルとした場合には発泡体3の樹脂はポリウレタンエラストマーが好ましい。また、芯材2は、曲げ弾性率が0.5〜5GPaであるものが好ましい。ここで、曲げ弾性率はJIS K-7171に基づき測定する
【0020】
発泡体3を構成する樹脂は、柔らかくて弾力性がありながら、発泡体表面のべたつきを抑制し、金型内での成形時の離型性、歯間への挿入性、使用感を良好にする観点から、JIS−A硬度の測定値が40〜100であることが好ましく、JIS−A硬度の測定値が50〜80であることが特に好ましい。ここで、JIS−A硬度は、JIS K 6253に基づき測定する。
【0021】
本発明においては、芯材2を被覆する発泡体3は、柔らかで良好な感触を得る点、歯間挿入性と耐久性の観点から、気泡の平均セル面積が400〜70000μm2であり、1900〜40000μm2であることが好ましく、さらに5000〜30000μm2であることが好ましい。発泡体3は、未発泡部分が少ないことが好ましく、発泡体3の平均セル密度としては、1400〜140000個/cm2の範囲が好ましく、さらに3000〜10000個/cm2が好ましい。尚、平均セル面積、平均セル密度は、以下の方法により測定する。
【0022】
<平均セル面積の測定法>
セル面積の測定は、走査型電子顕微鏡(リアルサーフェイス顕微鏡 商品名VE7800;(株)キーエンス製)を用いて測定する。清掃部4を切断し、走査型電子顕微鏡を用いて、清掃部4の切断面の拡大写真を撮影する(図4)。そして、この拡大写真から、10個の気泡(セル)を選択し、画像処理ソフト(商品名ウィンルーフ バージョン5.6.2 三谷商事製)を用いて、それぞれの気泡におけるセル面積(気泡面積)を測定する。それらの結果を平均して平均セル面積を算出する。
【0023】
<平均セル密度の測定法>
平均セル面積の測定同様、走査型電子顕微鏡を用いて測定する。清掃部4の切断面10000μm2当たりに、気泡が何個含まれているのかを10箇所、目視にて測定し、平均値を求める。この平均値を1cm2当たりに換算した値を平均セル密度とする。
【0024】
本発明においては、芯材2を被覆する発泡体3は、図4に示すように、スキン層の平均厚みが100μm以下である。上述した平均セル面積だけでは、柔らかくて使い心地の良い清掃部4を得ることはできず、スキン層の厚みを小さくする必要がある。ここで、スキン層とは、発泡体表面に存在し実質的に気泡を含まない部分を意味し、気泡があったとしても、そのセル面積が400μm2よりも小さい気泡を含む領域のことを意味する。言い換えれば、表面から、セル面積が400μm2以上の気泡が現れるまでの厚みを意味する。スキン層の平均厚みは、上記観点から、0〜100μmであることが好ましく、0〜70μmであることが特に好ましい。スキン層の平均厚みは、発泡体3のカットされた端面を除く、金型と接触していた表面からの平均厚みは0〜100μmが好ましく、さらに15〜70μmであることが好ましい。尚、スキン層の平均厚みは、以下の方法により測定する。
【0025】
<スキン層の平均厚みの測定法>
スキン層の平均厚みも、上述した平均セル面積の測定同様、走査型電子顕微鏡を用いて測定する。清掃部4の切断面の拡大写真を撮影し、この拡大写真から、スキン層の厚みを10箇所測定し、測定値の平均をスキン層の平均厚みとする。
【0026】
清掃部4を構成する発泡体3は、図2,図3に示すように、歯間清掃具1においては、芯材2に沿って形成される芯材被覆部31と、芯材被覆部31の表面から外方に突出する複数の突部32とを有している。詳述すると、歯間清掃具1における発泡体3は、図2,図3に示すように、芯材2に沿って芯材2を被覆する芯材被覆部31を有し、芯材被覆部31の表面から外方に突出する円状の突部32をY方向に一定間隔を開けて複数個有している。このように、芯材被覆部31の表面から外方に突出する突部32を有することにより、歯間部の清掃効率が向上する。発泡体3の突部32は、6〜50個形成されることが好ましい。突部32は、芯材被覆部31の表面からの高さ(Z方向の高さ又はX方向の高さ)L3(図5参照)が、清掃性と歯間挿入性を両立させる観点から、0.1〜2mmであることが好ましく、0.2〜2mmであることが更に好ましい。突部32は、芯材被覆部31近傍である基部の厚み(Y方向の長さ)L4(図5参照)が、清掃性、歯間挿入性及び耐久性を満足させる観点から、0.2〜1mmであることが好ましく、0.3〜0.7mmであることが更に好ましい。歯間清掃具1においては、突部32の高さL3が0.1〜2mmであり、突部32の基部の厚みL4が0.2〜1mmであるような細かな突起32を有する発泡体3であるにも拘わらず、平均セル面積が400〜70000μm2の気泡を有しており、スキン層の平均厚みが100μm以下に形成されている。その為、柔らかで使い心地が良く、清掃性及び耐久性が優れる。また、突部32同士の基部における間隔L5(図5参照)は、0.3〜3mmであることが好ましく、歯間サイズに応じて適宜設定することができる。
【0027】
複数個の突部32は、図2,図4に示すように、歯間清掃具1においては、一定の高さであるが、種々の歯間サイズに1本の清掃具で適応させる観点、歯間への挿入のし易さの観点から、Y方向の把持部5の近傍側から先端に向かって漸次高さを低くなるようにしてもよく、図6,図7に示すように、段階的に高さを低くしてもよい。図7に示すように、突部32の高さを段階的に変化させて形成する場合、芯材被覆部31の表面からの高さが低い方の低突部321の高さは、0.2〜0.5mmであることが好ましく、芯材被覆部31の表面からの高さが高い方の高突部322の高さは、0.3〜2mmであることが好ましい。
【0028】
また、複数個の突部32は、図5に示すように、歯間清掃具1においては、突部32は基部から先端までの厚みが一定である。突部32の厚みは、基部から先端までの厚みをかえてもよいが、略一定の厚みであることが好ましい。
また、突部32の基部において突部32同士の間隔は、図5に示す歯間清掃具1においては、一定の間隔であるが、種々の歯間サイズに1本の清掃具で適応させる観点から、Y方向の把持部5の近傍側から先端に向かって間隔を漸次狭くなるようにしてもよく、逆に間隔を漸次広くなるようにしてもよい。
【0029】
歯間清掃具1は、図1に示すように、清掃部4のY方向端部の反対側の後端にY方向に延びる把持部5を備えており、清掃部4と把持部5とが一体的に形成されていることが好ましい。しかし、本発明の歯間清掃具は、把持部5を備えなくても、芯材2を発泡体3で被覆した清掃部4をそのまま用いてもよく、把持部5に対して清掃部4を交換可能に脱着可能に接続していてもよい。また、歯間清掃具1の把持部5は、歯間清掃具1の使用時に手で把持する部分であり、図1に示すように、歯間清掃具1においては、Y方向に延びる四角柱状の棒状に形成されており、Y方向に清掃部4側に向かって漸次細くなっている。しかしながら、把持部5の形状は、把持できれば前記形状に特に限定されず、例えば、屈曲させた形状でもよい。把持部5は、歯間清掃具1においては、使用時に歯間清掃具1を把持した指が滑らないように隆起部を設けることが好ましく、図1に示す歯間清掃具1は全周に亘って隆起する隆起部51をY方向に一定間隔を開けて複数個配してなるグリップ領域52を有している。把持部5は、Y方向の長さが、40〜100mmであることが好ましく、X方向(又はZ方向)の長さが、3〜10mmであることが好ましい。
【0030】
把持部5の構成材料としては、金属、樹脂等が挙げられ、軽量性、芯材2との一体成形(例えばインサート成形)の観点から、樹脂が好ましい。樹脂としては、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、アクリロニトリルスチレン共重合体樹脂、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエステルエラストマー、ナイロンエラストマー等が挙げられる。清掃部4は、歯間清掃具1においては、Y方向の先端に向かって漸次細くなっている把持部5の先端に結合されている。
【0031】
歯間清掃具1は、発泡体3が芯材2の材質より低い温度で溶融する樹脂で形成されており、気泡の平均セル面積が400〜70000μm2であり、スキン層の平均厚みが100μm以下であるとの要件を満たす。従って、柔らかさが0.4〜1.5Nと柔らかく、耐久性が高いものである。そして、歯間清掃具1は、圧縮変形し易いので、狭い歯間に挿入し易く、使用時に痛みや不快感を与え難い。また、歯間清掃具1は、柔らかさ、圧縮変形し易さと弾力性と耐久性の相反する特性を両立しているので、心地よい使用感を持続させることができる。尚、歯間清掃具の柔らかさと、耐久性及び折れ曲がり性は、以下の方法により測定する。
【0032】
<柔らかさの測定法>
柔らかさの測定は、IMADA社製のデジタルフォースゲージ(以下、測定器という)を用いて測定する。清掃部4を、図9に示すように、テーブルの上に水平に配し、Z方向の上方から清掃部4の発泡体3を測定器の端子で押し、突部の高さが70%になったとき荷重を柔らかさの値とする。歯間清掃具1のように、清掃部4の発泡体3が突部32を有する場合には、この突部32の高さが70%になったときの荷重を柔らかさの値とする。また、突部32の高さが、図7に示すように、一定でない場合には、最も高い突部(図7に示す高突部322)の高さが70%になったときの荷重を柔らかさの値とする。尚、測定は5回行い、その平均値を柔らかさの値として採用する。
【0033】
<耐久性の測定法>
図10に示すように、厚みが2mmの金属性のプレートに、直径0.4〜3.5mmの貫通孔を、0.1mmずつ直径を変更して形成する。図10に示すように、歯間清掃具1の清掃部4のY方向全域を貫通孔に通して、清掃部4の芯材2が撓むことなく通過させることが可能な最小の貫通孔を見出す。次に、最小の貫通孔に、清掃部4のY方向全域を通してから抜き出すことを1往復とし、清掃部4が引き裂かれたりして欠落するまでの往復回数を求め、これを耐久性の数値とする。従って、耐久性の数値が大きいほど耐久性が高いことを示す。
【0034】
本発明の歯間清掃具は、上述の実施形態の歯間清掃具1に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
【0035】
例えば、上述の実施形態の歯間清掃具1においては、図1に示すように、芯材2を被覆する発泡体3が突部32を有しているが、突部32を有していなくてもよい。その場合、芯材2を覆う発泡体3(芯材被覆部31)のY方向に直交する断面の外周形状が円状、多面角状、楕円状に設けたものが挙げられる。
【0036】
また、芯材2の周囲を発泡体3で被覆する際には、特に、芯材2の先端部を発泡体3で完全に被覆し、芯材2の先端が露出しない構造にすることが使い心地の良さの観点から好ましい。芯材2が露出する場合には、露出した芯材2の先端を丸くなるように加工することが好ましい。
【0037】
次に、本発明の歯間清掃具の清掃部4を製造する方法について説明する。清掃部4は、化学発泡法及び物理発泡法により製造することができる。
化学発泡法としては、樹脂中に加熱分解とともにガスを発生させる化合物を用いて発泡体を得る方法を用いることができる。使用する化合物としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アゾ化合物等を用いることができる。これ以外の化学発泡法としては、樹脂中に水や酸と反応することによりガスを発生させる化合物を用いて発泡体を得る方法も用いることができる。使用する化合物としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、イソシアネート等を用いることができる。
【0038】
物理発泡法としては、ペンタン、二酸化炭素や窒素の超臨界流体を発泡体の樹脂中に接触させて、含浸させた後に加熱ガス化又は減圧ガス化することにより発泡体を得る方法を用いることができる。化学発泡法及び物理発泡法の中でも、発泡体を構成する樹脂に超臨界流体を接触させる物理発泡法により得られる発泡成形体は、気泡の大きさやスキン層の厚み調整機能と製造性の観点、人体に対して安全である窒素や二酸化炭素を発泡剤として使用できる点で好ましい。超臨界流体を用いた物理発泡法には、バッチ法と連続法とがある。バッチ法とは、圧力容器内に樹脂を仕込んだ後、二酸化炭素や窒素を密閉状態の圧力容器に導入し、二酸化炭素や窒素を臨界点以上の超臨界流体とし、所定時間の間この超臨界流体を樹脂に接触させて含浸させた後、常圧まで減圧させて超臨界流体がガスになる際の体積膨張を利用して発泡成形体を得る方法である。連続法とは、射出成形機や押出機のシリンダー部において、溶融混錬されている樹脂中に二酸化炭素や窒素の超臨界流体を導入した後、金型内に射出成形又はダイを通して大気中に押出すことにより発泡成形体を得る方法である。
本発明の歯間清掃具の清掃部4は、以上に述べた何れの方法を用いても製造することができるが、以下に、臨界流体用原料として二酸化炭素を用いた物理発泡法であるバッチ法によって得られる発泡成形体を備える清掃部4を製造する方法を、図面を参照しながら説明する。
【0039】
図11は、清掃部4の製造に用いられている装置の一例の概略図を示す。装置は、減圧バルブを備えた圧力室10と、圧力室10に超臨界流体用原料である二酸化炭素を供給する、又はこの二酸化炭素の超臨界流体である超臨界二酸化炭素を供給する超臨界流体供給部20とを備えている。以下、図11に示す装置を用いた清掃部4の製造方法について具体的に説明する。
【0040】
成形用樹脂を収容する金属製容器は、図12に示すように、矩形状の2枚の金属板310,320からなり、金属板310には、成形用樹脂を収容する凹部330が形成されている。矩形状の2枚の金属板310,320には、図2,図6に示すような清掃部4の突起形状に応じた溝が形成されている。例えば、図12には、図6,図7に示す清掃部4の突起形状に応じて形成された溝を有する金属板320及び金属板310を示している。凹部330に成形用樹脂を収容した後、金属板310及び金属板320の四隅をボルトとナットによりボルト締めすることにより一体化し、一体化した金属製容器を、圧力室10の内部にセットする。
本発明の清掃部4の成形方法は、成形用樹脂を収容した圧力室10内において、成形用樹脂を超臨界流体に接触させる工程と、その後に圧力室10内を減圧させる工程とを備えることが好ましく、圧力室10内を減圧させる工程が、第1減圧工程及び第1減圧工程より後の第2減圧工程を有し、第2減圧工程の減圧スピードが、第1減圧工程の減圧スピードよりも遅いことが好ましい。
【0041】
成形用樹脂を超臨界流体に接触させる工程は、成形用樹脂を直接セット、又は成形用樹脂を収容した金属製容器をセットした圧力室10を、図10に示すように、圧力室10の外周に設けられたヒーター110によって加熱しながら、圧力室10の内部に、二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を流体供給部20から供給する工程を備える。
【0042】
超臨界流体用原料である二酸化炭素は、図10に示すように、ボンベ210に収容されており、ボンベ210の供給バルブを開いて、冷却器22に供給される。冷却器220により冷却され液化した二酸化炭素を、図10に示すように、プランジャーポンプ230を用いて圧力室10内に供給する。液化された二酸化炭素は、圧力室10内に供給される前に、図10に示す加熱器240により加熱されながら圧力室10内に供給される。
【0043】
超臨界流体用原料として二酸化炭素を用いた場合の冷却器220の冷却温度としては、−10℃〜30℃であることが好ましく、−5℃〜5℃であることが更に好ましい。
【0044】
二酸化炭素を冷却器220によって冷却する場合は、プランジャーポンプ230と圧力室10との間に加熱器240を設けることが好ましい。超臨界流体用原料として二酸化炭素を用いた場合の加熱器240の加熱温度としては、臨界温度Tc以上であることが好ましく、成形用樹脂が結晶性の場合には、融点近傍がさらに好ましく(例えば融点±20℃、好ましくは±10℃)、非晶性の場合には、ガラス転移温度以上であることがさらに好ましい。
【0045】
成形用樹脂及び二酸化炭素、又は成形用樹脂及び超臨界二酸化炭素が供給された圧力室10の内部を、ヒーター110によって加熱しながら、プランジャーポンプ230によって、二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を圧力室10内に供給し続け、圧力室10内の圧力を上げ、圧力室10の内部を超臨界二酸化炭素の臨界温度Tc以上とし、さらに超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc以上とする。
【0046】
圧力室10の内部温度としては、超臨界二酸化炭素の臨界温度Tc以上であって、さらに、上記成形用樹脂の中で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ナイロンエラストマー等の結晶性樹脂を使用する場合には、その樹脂の融点近傍の温度が好ましく、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ポリメタクリル酸、ポリウレタンエラストマー等の非結晶性樹脂を使用する場合には、その樹脂のガラス転移温度以上の温度が好ましい。また、EVAのように結晶性樹脂の部分(ポリエチレンの部分)と非結晶性樹脂の部分(ポリ酢酸ビニルの部分)とを持つ共重合体を使用する場合には、非結晶性樹脂のガラス転移温度から結晶性樹脂の融点付近までの温度範囲が好ましい。このように圧力室10の内部温度を設定することにより、未発泡の樹脂部分が発生し難く、成形された発泡体を構成する樹脂に超臨界流体を接触させる物理発泡法は、成形された発泡体が硬くなり難い。
【0047】
圧力室10の内部圧力としては、超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc以上であって、さらに、気泡サイズの適正化の観点から、12MPaより高圧が好ましく、19MPaより高圧がさらに好ましく、20MPa以上が特に好ましい。内部圧力の上限は、設備製造の容易さの観点から、50MPa以下であることが好ましい。
【0048】
圧力室10内の圧力が臨界圧力Pcを超えて十分に上昇したら、流体供給部20の供給バルブを閉めて、プランジャーポンプ230からの二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素の供給を停止し、圧力室10内を一定の圧力と温度に保つことにより、成形用樹脂を超臨界二酸化炭素に接触させて、超臨界流体を成形用樹脂に拡散浸透(含浸)させる。
【0049】
超臨界二酸化炭素を含浸させる時間としては、発泡に必要な量の超臨界二酸化炭素が成形用樹脂に溶解する時間であれば良く、0.5時間(hr)〜3時間(hr)であることが好ましい。超臨界二酸化炭素は、気体のような高い拡散浸透性と低い粘度を有し、特に、液体に近い密度を持つ。このような性質によって、圧力室10内においては、超臨界二酸化炭素が成形用樹脂に拡散浸透し、成形用樹脂内部に均一に分散する。
【0050】
超臨界二酸化炭素を十分に成形用樹脂に接触させた後に、圧力室10内を減圧させる工程を備える。圧力室10内の減圧は、圧力室10に設けられた減圧バルブ120を開くことにより可能となる。清掃部4を得る製造方法における圧力室10内を減圧させる工程は、第1減圧工程と、第1減圧工程の後に減圧する第2減圧工程とを有していることが好ましく、第2減圧工程の減圧スピードが、第1減圧工程の減圧スピードよりも遅いことが好ましい。
【0051】
先ず、第1減圧工程について詳述する。
第1減圧工程の減圧スピードは、50〜1000MPa/分であることが好ましく、100〜800MPa/分であることがさらに好ましい。減圧スピードが50MPa/分より速ければ、成形される発泡体の気泡サイズが小さく、セル密度が大きくなるので好ましく、減圧スピードが1000MPa/分より遅ければ、他の吸引装置が必要とならず、圧力室10の減圧バルブ120を開放するだけで対応できるので、設備費が低く抑えられるので好ましい。
【0052】
第1減圧工程は、超臨界二酸化炭素の臨界点以上の圧力及び温度の領域にあることが好ましい。即ち、第1減圧工程は、セル密度を大きくするという観点から、第1減圧工程終了時も、圧力室10内の圧力が超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc以上であって、圧力室10内の温度が超臨界二酸化炭素の臨界温度Tc以上であることが好ましい。
【0053】
第1減圧工程終了時の圧力室10の内部の圧力は、超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc以上であることが好ましく、さらに、成形される発泡体内部に大きな気泡のかたまりの発生を抑制し、セル密度を高くする観点から、19MPa〜11MPaであることが好ましく、18MPa〜12MPaであることがさらに好ましい。また、第1減圧工程では、減圧前後の圧力差が5〜15MPaであることが好ましい。
【0054】
第1減圧工程による圧力室10の減圧後、第2減圧工程により圧力室10の内部の圧力をさらに減圧する。第1減圧工程終了時から、減圧開始までの時間は、0秒(sec)〜2秒(sec)であることが好ましい。中断を2秒以内とすることにより大きな気泡たまりがなくなるので好ましい。
【0055】
次に、第2減圧工程について詳述する。
第2減圧工程の減圧スピードは、0.1〜10MPa/分であることが好ましく、3〜7MPa/分であることがさらに好ましい。減圧スピードが0.1MPa/分より速ければ、生産性が低下することがなく、10MPa/分より遅ければ、圧力室10の内部表面にドライアイスが発生し難いので好ましい。
【0056】
第2減圧工程は、超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pcより低い圧力まで減圧することが好ましい。即ち、気泡成長は臨界圧力より低い圧力において行われる。この時の減圧速度を遅くすることにより気泡サイズが小さくなりすぎることなく柔らかな成形発泡体を得る観点から、第2減圧工程終了時に、圧力室10内の圧力が、臨界圧力Pcより低いであることが好ましい。
【0057】
第2減圧工程終了時の圧力室10の内部の圧力は、超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc(7.13MPa)より低いことが好ましく、超臨界二酸化炭素では7MPa以下であることが好ましく、さらに、製造工程の簡素化の観点から、常圧であることが好ましい。圧力室10内の圧力が3MPa以下であれば第2減圧工程の後に10MPa/分より早い速度で減圧を行っても良い。
【0058】
第2減圧工程終了時の圧力室10の内部の温度は、超臨界二酸化炭素の臨界温度Tc(32℃)以上であることが好ましく、さらに、気泡成長を促進するという観点から、超臨界二酸化炭素を成形用樹脂に含浸させる温度より30℃以内の範囲で低いことであることが好ましい。
【0059】
第2減圧工程による減圧後に、圧力室10内の圧力を常圧とした後、圧力室10から取り出すことにより、清掃部4を製造することができる。また、金属製容器30を用いた場合には、圧力室10から金属製容器30を取り出し、ボルトとナットをゆるめて、凹部330から取り出すことにより、清掃部4を製造することができる。
尚、歯間清掃具が、把持部5を備える場合には、製造された清掃部4を把持部5の成形金型にインサートした後、射出成形することにより、清掃部4と把持部5とを一体成形することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
【0061】
〔清掃部の成形用樹脂体の作製〕
芯材2の構成材料としては、直径0.5mmのデュポン社製の商品名タイネックスフィラメント(ナイロン612)を用い、発泡体3の構成材料としては、厚み0.5mmのアルケマ社製の商品名ぺバックス2533SA(ナイロンエラストマー樹脂)のシートを用いた。図13に示すように、2枚のアルケマ社製の商品名ぺバックス2533SA(ナイロンエラストマー樹脂)シート間に、デュポン社製の商品名タイネックスフィラメント(ナイロン612)を2mm等間隔に挟み込んだ状態で加熱プレスし、厚み0.6mmのシートとしたシート状の成形用樹脂体を作製した。なお、この作製したシート状の成形用樹脂体を、タイネックスフィラメント(ナイロン612)からなる芯材どうしの間毎にカットし、芯材2の周囲を発泡体3の構成材料で被覆した成形用樹脂体を作製することもできる。発泡体3の構成材料であるアルケマ社製の商品名ぺバックス2533SAは、引張り破断強度が30MPa、JIS−A硬度の測定値が70、融点は133℃のエラストマーである。芯材の構成材料であるデュポン社製の商品名タイネックスフィラメントは、融点225℃、曲げ弾性率2.0GPaの結晶性樹脂である。
【0062】
〔実施例1〕
図12に示す、図6、図7に示す清掃部4の形状に応じて形成された凹部330の形状4’を備えた一対の金属板310,320を用い、テフロン(登録商標)コートした上下一対の金属板310,320に長さ16mmの上記成形用樹脂体をセットし、一対の金属板310,320間にネジ締め固定した。続いて、ネジ締め固定した金属性容器を、図11に示す発泡処理装置の圧力室10(内容積1L)内にセットした。次に、ボンベ210から超臨界二酸化炭素を冷却器220、プランジャーポンプ230、加熱器240を通して密閉状態の圧力室10に注入した。冷却器220の設定温度は、−5℃とし、ガス状の二酸化炭素を一旦液化させたものをプランジャーポンプ230で送り、設定温度133℃で加熱された加熱器240を通して二酸化炭素を圧力室10に供給し続け、圧力室10内の圧力25MPaになるまでプランジャーポンプ230で二酸化炭素を供給し圧力室10の圧力を上げた。この時圧力室10内の温度が133℃となるようにした。圧力室10内の温度133℃、圧力室10内の圧力25MPaになった後、超臨界流体供給部20の供給バルブを閉めて、その温度及び圧力の状態を1時間保持し、超臨界状態の二酸化炭素を成形用樹脂に含浸溶解させた。続いて、圧力室10の減圧バルブ120を開いて減圧スピード600MPa/分にて減圧し、圧力室10内の圧力を25MPaから15MPaに減圧した(第1減圧工程)。次に、すばやく(2秒以内)再度、圧力室10の減圧バルブ120を開いて減圧スピード4MPa/分にて減圧し、圧力室10内の圧力を15MPaから常圧まで減圧し(第2減圧工程)、成形用樹脂を発泡させた。続いて圧力室10から金属性容器を取り出し、冷却後に発泡させた清掃部4を取り出し、X方向の幅が0.8mmとなるようにカットし、図6,図7に示すカットして形成された側面(カット面)のスキン層の平均厚みが0μmである清掃部4を作製した。尚、低突部321の高さは0.5mmであり、高突部322の高さは0.8mmであった。突部の厚みは0.8mm、隣り合う突部の平均間隔は0.5mm、上下突部322の先端から先端までの距離は10mm、芯材の径は0.5mmである。
作製した図6,図7に示す清掃部4を、把持部5の成形用金型にインサートした後、東ソー社製の商品名ウルトラセン537(エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂)を射出成形し、清掃部4及び把持部5を一体成形し、歯間清掃具を得た。
【0063】
〔実施例2〕
実施例1において、加熱器240の設定温度及び圧力室10の温度を135℃に変更する以外は実施例1と同様にして歯間清掃具を作製した。
【0064】
〔実施例3〕
実施例1において、加熱器240の設定温度及び圧力室10の温度を138℃に変更する以外は実施例1と同様にして歯間清掃具を作製した。
【0065】
〔比較例1〕
清掃部の成形用樹脂体としては、実施例1と同様のシートを用いた。
図12に示す、図6,図7に示す清掃部の形状に応じて形成された凹部330の形状を備えた一対の金属板310,320を用い、テフロン(登録商標)コートした上下一対の金属板310,320に長さ16mmの上記成形用樹脂体をセットし、一対の金属板310,320間にネジ締め固定した。続いて、ネジ締め固定した金属性容器を、図11に示す発泡処理装置の圧力室10(内容積1L)内にセットした。次に、ボンベ210から超臨界二酸化炭素を冷却器220、プランジャーポンプ230、加熱器240を通して密閉状態の圧力室10に注入した。冷却器220の設定温度は、−5℃とし、ガス状の二酸化炭素を一旦液化させたものをプランジャーポンプ230で送り、設定温度130℃で加熱された加熱器240を通して二酸化炭素を圧力室10に供給し続け、圧力室10内の圧力21MPaになるまでプランジャーポンプ230で二酸化炭素を供給し圧力室10の圧力を上げた。この時圧力室10内の温度が133℃となるようにした。圧力室10内の温度133℃、圧力室10内の圧力21MPaになった後、超臨界流体供給部20の供給バルブを閉めて、その温度及び圧力の状態を1時間保持し、超臨界状態の二酸化炭素を成形用樹脂に含浸溶解させた。続いて、圧力室10の減圧バルブ120を開いて減圧スピード4MPa/分にて、常圧まで減圧し、成形用樹脂を発泡させた。続いて圧力室10から金属性容器30を取り出し、冷却後に発泡させた清掃部を取り出し、X方向の幅が0.8mmとなるようにカットし、実施例と同形状の比較例1の清掃部を作製した。
作製した比較例1の清掃部を、把持部5の成形用金型にインサートした後、東ソー社製の商品名ウルトラセン537(エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂)を射出成形し、清掃部及び把持部5を一体成形し、比較例1の歯間清掃具を得た。
【0066】
〔比較例2〕
実施例1と同様に、芯材の構成材料としては、直径0.5mmのデュポン社製の商品名タイネックスフィラメント(ナイロン612)を用い、発泡体3の構成材料としては、厚み0.5mmのアルケマ社製の商品名ぺバックス2533SA(ナイロンエラストマー樹脂)のシートを用いた。
2枚のアルケマ社製の商品名ぺバックス2533SA(ナイロンエラストマー樹脂)シート間に、デュポン社製タイネックスフィラメント(ナイロン612)を2mm等間隔に挟み込んだ状態で加熱プレスし、厚み0.8mmのシートとしたものを、芯材の構成材料である、隣り合うナイロン612どうしの間毎にカットし、清掃部の成形用樹脂体を作製した。次に、図12に示す金属性容器30に成形用樹脂体をセットし、加熱プレスした。加熱プレス後、金属性容器30から取り出し、幅が0.8mmとなるようにカットし、実施例と同形状の比較例2の清掃部を作製した。
作製した比較例2の清掃部を、把持部5の成形用金型にインサートした後、東ソー社製の商品名ウルトラセン537(エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂)を射出成形し、清掃部及び把持部5を一体成形し、比較例2の歯間清掃具を得た。
【0067】
〔比較例3〕
実施例1において、加熱器240の設定温度及び圧力室10の温度を149℃に変更し、圧力室の圧力を600MPa/分にて常圧まで減圧したこと以外は実施例1と同様にして歯間清掃具を作製した。
【0068】
〔清掃部の気泡状態の評価〕
実施例1、2及び3並びに比較例1〜3で得られた清掃部を、二等分にカットし、そのカット断面について、前述した走査型電子顕微鏡(リアルサーフェイス顕微鏡 商品名VE7800;(株)キーエンス製)による拡大観察を行った。その結果を図14(a),(b),(c)(実施例1,2及び3)及び図14(d),(e)(比較例1及び3)に示す。また、比較例2の清掃部には、気泡が形成されていないため拡大観察を行わなかった。また、実施例1、2及び3並びに比較例1、3で得られた各清掃部について、スキン層の平均厚み、平均セル面積及び平均セル密度を、上述した方法により測定した。その結果を、表1に示す。
【0069】
〔清掃部の性能の評価〕
実施例1、2及び3並びに比較例1〜3で得られた各清掃部について、柔らかさを、上述した方法により測定した。その結果を、表1に示す。また、実施例1、2及び3並びに比較例1〜3で得られた各清掃部について、最小貫通孔及び耐久性を、上述した方法により測定した。その結果を、表1に示す。尚、実施例1、2及び3並びに比較例1〜3で得られた各清掃部は、図6,図7に示すように、突部32の高さが段階的である為、低突部321の領域の最小貫通孔と、高突部322の領域の最小貫通孔とに分けて評価した。尚、耐久性の測定は、高突部322の領域の最小貫通孔に往復して挿入することにより評価した。
【0070】
【表1】

【0071】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1、2及び3で得られた各清掃部は、気泡サイズが細かく、スキン層の平均厚みが100μm以下で、セル密度の高い発泡体を備えていた。一方、比較例1で得られた清掃部は、未発泡の部分が多く存在した。
表1に示す結果から明らかなように、実施例1、2及び3で得られた各清掃部は、比較例1及び2で得られた清掃部に比べて、著しく柔らかく(圧縮変形し易く)、最小貫通孔も小さいため、狭い歯間への挿入性も優れていることが分かった。従って、実施例1、2及び3で得られた各清掃部は、比較例1及び2で得られた清掃部に比べて、使用時に痛みや不快感を与え難いと考えられる。
また、表1に示す結果から明らかなように、実施例1、2及び3で得られた各清掃部は、比較例1、2及び3で得られた清掃部に比べて、耐久性が高く、柔らかさと耐久性とを両立するため、心地良い使用感が持続すると考えられる。
【符号の説明】
【0072】
1 歯間清掃具
2 芯材
3 発泡体
31 芯材被覆部
32 突部
321 低突部
322 高突部
4 清掃部
5 把持部
51 隆起部
52 グリップ部
10 圧力室
110 ヒーター
120 減圧バルブ
20 超臨界流体供給部
210 ボンベ
220 冷却器
230 プランジャーポンプ
240 加熱器
30 金属製容器
310 金属板
320 金属板
330 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の芯材を発泡体で被覆した清掃部を備え、
前記発泡体は、前記芯材の材質より低い温度で溶融する樹脂で形成されており、気泡の平均セル面積が400〜70000μm2であり、スキン層の平均厚みが100μm以下である歯間清掃具。
【請求項2】
前記発泡体を構成する樹脂は、JIS K 6253に準ずるJIS−A硬度の測定値が40〜100である請求項1に記載の歯間清掃具。
【請求項3】
前記発泡体は、前記芯材に沿って形成される芯材被覆部と、前記芯材被覆部から外方に突出する複数の突部とを有し、複数の前記突部それぞれは、前記芯材被覆部の表面からの高さが0.1〜2mmであり、基部の厚みが0.2〜1mmである請求項1又は2に記載の歯間清掃具。
【請求項4】
前記発泡体は、発泡体を構成する樹脂に超臨界流体を接触させて成形された発泡体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯間清掃具。
【請求項5】
前記芯材の材質がナイロンであって前記発泡体を構成する樹脂がナイロンエラストマー、又は前記芯材の材質がポリエステルであって前記発泡体を構成する樹脂がポリウレタンエラストマーである請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯間清掃具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−95868(P2012−95868A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246872(P2010−246872)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)