説明

歯間清掃具

【課題】支持された線材に塗布された薬剤が剥がれるのを防止することができる、歯間清掃具を提供する。
【解決手段】所定間隔をおいて配置される一対の支持片21,22と、前記一対の支持片を連結し、手で把持可能なハンドル部1と、前記一対の支持片の間で延びる線材3と、前記線材に塗布され、乾燥により固着する薬剤と、を備えた歯間清掃具であって、前記線材は、長手方向に沿って、前記薬剤が塗布される塗布領域と、当該塗布領域の両側の前記薬剤が塗布されない非塗布領域とを有し、前記非塗布領域の線材が前記支持片に連結されている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の間に詰まった歯垢を除去する歯間清掃具としては、従来、種々のものが提案されているが、単に歯間を清掃するのみならず、香味や清涼感も付与する歯間清掃具も提案されている。例えば、特許文献1の歯間清掃具では、歯間に挿入される部分に、香味や清涼感を付与する薬剤が塗布されている。
【0003】
ところで、歯間清掃具としては、上記特許文献1のような棒状の形態のほかに、特許文献2のように、所定間隔をおいて配置された支持片の間にフロスと呼ばれる線材を配置したタイプの歯間清掃具もあり、このような歯間清掃具に対しても薬剤や香料を付与することが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−11944号公報
【特許文献2】特開平7−136193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、線材は多少の張力が作用した状態で支持片に支持されていることから、線材において固着した薬剤等は振動に弱く、はがれやすいという問題があり、棒状の清掃具のように薬剤等を簡単に塗布できるものではない。本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、支持された線材に塗布された薬剤が剥がれるのを防止することができる、歯間清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定間隔をおいて配置される一対の支持片と、前記一対の支持片を連結し、手で把持可能なハンドル部と、前記一対の支持片の間で延びる線材と、前記線材に塗布され、乾燥により固着する薬剤と、を備えた歯間清掃具であって、前記線材は、長手方向に沿って、前記薬剤が塗布される塗布領域と、当該塗布領域の両側の前記薬剤が塗布されない非塗布領域とを有し、前記非塗布領域の線材が前記支持片に連結されている歯間清掃具である。
【0007】
この構成によれば、線材において、薬剤が塗布された塗布領域の端部と、支持片との間には薬剤が塗布されない非塗布領域が形成されている。そのため、次のような利点がある。支持片は梱包中に包装材に接触したり、歯間清掃中に歯に接触したりすることがあり、このような場合に、支持片に加わる力が振動となって線材に伝達するおそれがある。ここで、非塗布領域にも薬剤が塗布されている場合に、このような振動が支持片に加わると、支持片から振動が薬剤に直接伝わるため、薬剤が線材から剥がれ落ちる可能性がある。特に、線材と支持片との連結部分は振動が加わりやすく、振動が薬剤に伝播し、一部の薬剤が剥がれると、それがきっかけとなり、連結部分から線材の中央部分に向かって順に薬剤が剥がれていく可能性がある。そこで、本発明においては、この連結部分近傍に薬剤を塗布しないことで、支持片からの振動が薬剤に直接伝播しないようにしている。また、上記2本の支持片に対し、線材が張力を失うような長手方向の力が加わると、線材の張力が弱くなり、線材が湾曲する。薬剤が塗布されていると薬剤の固着により線材が硬くなり、湾曲しにくくなるため、線材全体に薬剤が塗布されていると、線材に掛かる力を逃がすことができず、薬剤が剥がれる可能性がある。これに対して、上記のように連結部近傍に薬剤を塗布しない非塗布領域を設けることで、線材に掛かる力を逃がしている。これらの結果、線材からの薬剤の剥がれを防止することができる。
【0008】
上記歯間清掃具では、塗布領域において、長手方向で、薬剤の塗布量を不均一にすることができる。ここで、薬剤の塗布量とは、単位長さあたりの薬剤の塗布量をいう。例えば、支持片に長手方向の力が加わると、線材の張力が弱くなり、線材を湾曲させる力が作用し、塗布領域全体で薬剤が剥がれる可能性がある。これに対して、上記のように薬剤の塗布量を不均一にしておくと、薬剤の塗布量が少ない箇所で線材に掛かる力を逃がすことができ、塗布領域全体に亘って、薬剤の剥落をさらに効果的に防止することができる。
【0009】
塗布領域において薬剤の塗布量を不均一にする方法は、種々の方法があるが、例えば、塗布領域において、線材がより湾曲しやすい、長手方向の中央部の塗布量を、この中央部の両側の塗布量よりも少なくすることはさらに薬剤の剥落
を防止することができるため好ましい。
【0010】
線材の数は、特には限定されず、単数でもよいが、複数の線材が近接した状態で、支持片の間に設けることもできる。このように線材の数を増やし近接させると、歯垢の除去効果を増大することができる。また、近接した線材の間に薬剤が取り込まれるため、線材を湾曲させる力が加わると、線材同士が離れて、近接した線材の間に取り込まれた薬剤が剥落するおそれがある。そのため、線材が単数の場合や、近接していない場合に比べて薬剤が剥落しやすくなる。そこで、本発明のように非塗布領域を設けると、当該領域で線材に掛かる力を逃がし、薬剤の剥落を防止できるため、線材の数が多い場合には、本発明は特に有利である。
【0011】
また、本発明に係る歯間清掃具の製造方法は、所定間隔をおいて配置される一対の支持片と、当該一対の支持片の間で延びる線材と、を備えた歯間清掃具本体を準備するステップと、前記線材の長さよりも小さい軸方向長さを有する円筒状の塗布ロールを準備するステップと、前記塗布ロールを回転させつつ、当該塗布ロールの表面に、乾燥により固着する薬剤を供給するステップと、前記線材が前記塗布ロールの軸方向と平行に延びるように、前記歯間清掃具本体を位置決めし、前記線材を前記塗布ロールの表面に近接させて、当該塗布ロール上の薬剤を前記線材に塗布するステップと、を備えている。
【0012】
この構成によれば、塗布ロールの軸方向の長さが、線材の長さよりも短いため、塗布ロール上の薬剤を線材に塗布すると、線材には薬剤が塗布されない領域、つまり非塗布領域を形成することができる。また、塗布ロールに供給された薬剤は、全てが線材に塗布されるわけではないため、余剰な薬剤が生じる。前記余剰な薬剤は、線材との接触による抵抗により、塗布ロールの回転方向に流れることができないため、軸方向の両端に流れやすくなる。これにより、塗布ロール上では、軸方向の両端の薬剤の塗布量が多くなり、中央付近は薬剤の塗布量が少なくなる。この状態で塗布ロールに線材を近接させると、線材上の薬剤の塗布量は、中央付近で少なくなり、両端部で多くなる。したがって、上記塗布ロールを用いることで、線材上の塗布量を不均一にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る歯間清掃具によれば、支持された線材に塗布された薬剤が剥がれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る歯間清掃具の平面図である。
【図2】図1の拡大図である。
【図3】薬剤の塗布装置の正面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】歯間清掃具に力が加わった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る歯間清掃具の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る歯間清掃具の平面図、図2は歯間清掃具の線材付近の拡大図である。
【0016】
図1に示すように、この歯間清掃具は、棒状に延びるハンドル部1を備えており、このハンドル部1から一対の支持片21、22が所定間隔をおいて突出している。ハンドル部1と支持片21,22は樹脂、木材、金属などで、一体的に形成される。ここでは、ハンドル部1の端部から突出する支持片を第1支持片21と称し、これと平行に延びる支持片を第2支持片22と称する。両支持片21,22の間には、歯間に挿入され歯垢を除去するための複数の線材3が近接し、ハンドル部1と平行に配置されている。そして、線材3の両端部は、各支持片21,22にそれぞれ連結されている。ここで、線材と支持片との連結方法については、特に限定されないが、例えば、樹脂により埋没固定する方法や括り付ける方法などがあげられる。また、図2に示すように、線材3には、長手方向に沿って薬剤Pが塗布されている。より詳細には、線材3には薬剤が塗布される塗布領域Aと、塗布されていない非塗布領域Bが設けられ、線材3の長手方向Xに沿って、塗布領域Aの両端それぞれに、非塗布領域Bが設けられている。すなわち、線材3と支持片21,22との連結部分近傍は非塗布領域Bとなっている。非塗布領域Bの長さは、特に限定されないが、例えば、1〜5mmとすることができる。
【0017】
上述した線材とは、繊維を拠り合わせた糸やその他糸状のものである。線材は、例えば、ポリスチレン、ナイロン、ビニロン、ポリエチレンテレフタラート、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性合成樹脂で形成することができ、その他、綿、麻、ジュートなどの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、ガラスなども線材を構成する材料として採用することができる。線材3は、単数(一本又は一本状)でもよく、また、複数でもその数は特には限定されないが、例えば、2〜10本が好ましく、3〜7本がさらに好ましい。線材を複数とする場合、線材間の距離は近接していれば特に限定されないが、例えば、少なくとも一部の線材同士が塗布した薬剤により付着する程度の距離であることが好ましい。当該距離は塗布する薬剤との関係で変動し、例えば、塗布時の粘度が高い薬剤であれば、その距離が長くなってもよい。また、複数の線材に対して薬剤を塗布した場合、毛細管現象により塗布していない領域にも薬剤Pが移動(例えば、図2における塗布領域Aから支持片21,22方向への移動)することがあるが、その薬剤量は塗布領域に比べて極めて少ないことから、線材3に掛かる力を逃がすのに十分な柔軟性を有し、塗布領域に塗布した薬剤の剥落は防止することができるため、当該毛細管現象により薬剤Pが移動した領域は非塗布領域とする。
【0018】
線材3に塗布される薬剤は、常温(25℃)で乾燥して線材に固着する成分であれば採用することができ、例えば、アルコール溶解性樹脂や水溶性樹脂など、揮発性溶剤に溶解又は分散させた樹脂である。例えば、アルコール溶解性樹脂としては、アミノアルキルメタクリレート共重合体、酢酸ビニル樹脂、セラックおよびポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートがあげられる。中でも好ましくはアミノアルキルメタクリレート共重合体があげられる。付着性、柔軟性がより好ましい前記アミノアルキルメタクリレート共重合体は、メタクリル酸アルキルとメタクリル酸ジアルキルアミノエチルとの共重合体である。メタクリル酸アルキルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピルなどがあげられ、メタクリル酸ジアルキルアミノエチルとしては、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジブチルアミノエチル、メタクリル酸ジプロピルアミノエチルなどがあげられる。なかでも、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルとメタクリル酸ジメチルアミノエチルとの共重合体が最も好ましい。
【0019】
このような樹脂を配合する薬剤の製造方法としては、例えば、特開2008−11944号公報に記載のものがあげられるが、例えば、アルコール溶解性樹脂を使用する場合、低級アルコールに溶解させることで製造することができる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールなどがあげられ、樹脂の溶解特性が常温で高く製造しやすいという点から好ましくはエタノールがあげられる。これらの薬剤は、線材3に塗布後、乾燥させる(溶媒を揮発させる)ことによって線材3上に固着した状態となる。
【0020】
また、本発明においては、清涼剤、粉末香味成分、虫歯の予防又は治療剤など常温(例えば25℃)で固体の成分を単独で(樹脂などその他の成分と併用することなく)溶媒に溶解又は分散させて「薬剤」として使用することもできる。
【0021】
清涼剤としては、例えば、メントール、乳酸メンチル、薄荷、ミント、カンファーなどがあげられる。前記粉末香味成分は、粉末であればとくに限定されないが、使用前には香料成分が揮発せずに、使用時に長期間香味を感じる点、水難溶性樹脂とクエン酸アルキルエステルおよび/またはポリエチレングリコールとの組合せにより付着性に優れた皮膜とすることができる点などからカルボン、アネトール、リモネン、スペアミント油、ペパーミント油、ラベンダー油などからなる群から選ばれる少なくとも1種をシクロデキストリンで包接したものがあげられる。前記虫歯予防又は治療剤としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩酸クロルヘキシジン、トリクロサン、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウムなどがあげられる。
【0022】
本発明においては、薬剤に可塑性を与えるため、クエン酸アルキルエステルまたはポリエチレングリコールなどの可塑剤を配合することもできる。また、樹脂、清涼剤、粉末香味成分、虫歯の予防もしくは治療剤または可塑剤を複数配合することもできる。例えば、樹脂、粉末香味成分および可塑剤を配合する場合、とくに限定されないが、樹脂低級アルコール溶液100重量部に対して、好ましくは
(1)アルコール溶解性樹脂が0.5〜15重量部(特に1〜10重量部)、
(2)粉末香味成分が1〜50重量部(特に5〜40重量部)、
(3)クエン酸アルキルエステルおよび/またはポリエチレングリコールが合計で0.05〜2.0重量部(特に0.1〜1.5重量部)
(4)低級アルコールが40〜95重量部(特に48〜93.5重量部)
含まれる。
【0023】
線材3上の塗布領域Aにおける薬剤Pの塗布量(線材3の単位長さ当たりに塗布される薬剤の量)は、一定でもよいが、長手方向Xに沿って不均一にすることもできる。例えば、図2に示すように、塗布領域Aの中央付近の塗布量を少なくし、両端付近の塗布量を多くすることができる。また、塗布領域Aの中央付近に塗布せずに、両端付近にのみ塗布することもできる。
【0024】
次に、上記のように構成される歯間清掃具の製造方法について説明する。製造方法については、例えば、特開平7−136193号公報に記載の方法があげられる。
まず、複数の線材3を近接させた状態で、これを成形型に配置する。次に、射出成形により、ハンドル部1及び支持片21,22を構成する樹脂を成形型に射出し、歯間清掃具本体を成形する。ここでは、薬剤が塗布される前の歯間清掃具を、「歯間清掃具本体」と称する。なお、「歯間清掃具本体」としては、図1に示す形状に限定されるものではなく、例えば、いわゆる「Y字型」のものであってもよい。
【0025】
続いて、この歯間清掃具本体に薬剤を塗布する方法について、図3及び図4を参照しつつ説明する。図3は薬剤の塗布装置の正面図、図4は図3の側面図である。この塗布装置は、薬剤を塗布し、回転自在に支持された円筒状の塗布ロール5と、歯間清掃具本体を保持する保持部材6と、を備えている。この塗布ロール5は、回転軸51が水平を向くように支持されており、その下端部は、液状の薬剤で満たされたトレイ7に浸されている。図4に示すように、塗布ロール5は、金属などで形成され、軸方向の長さDが、線材3の長さよりも小さくなっている。すなわち、この長さDが薬剤Pの塗布領域Aの長さと対応している。
【0026】
保持部材6は、複数の歯間清掃具本体10を保持し、これらを塗布ロール5に近接するようになっている。より詳細に説明すると、保持部材6は、複数個の歯間清掃具本体10を所定間隔をおいて保持した状態で、図示を省略するレールに沿って水平方向に移動するようになっている。各歯間清掃具本体10は、線材3が水平方向に延びるように配置され、且つ隣接する歯間清掃具本体10の支持片21,22が下向きに平行になるように配置されている。そして、線材3が塗布ロール5の頂部付近を通過するように、保持部材6が移動可能となっている。
【0027】
次に、薬剤の塗布方法について説明する。まず、塗布ロール5を回転させると、トレイ7の中で塗布ロール5の表面に接触している薬剤Pは、図3に示すように、塗布ロール5の表面に付着した状態で塗布ロール5とともに回転し上方に移動していく。このように薬剤Pの付着している塗布ロール5の頂部に対して、保持部材6を移動し、歯間清掃具本体10を近接させる。このときに、線材3が塗布ロール5に接触せず、薬剤Pにのみ接触するように、歯間清掃具本体10を近接させる。これにより、塗布ロール5上を通過する過程で、接触した薬剤Pは歯間清掃具本体10の線材3に塗布される。接触した薬剤Pの全てが線材3に塗布されるわけではないため、余剰な薬剤が生じる。前記余剰な薬剤は、線材3との接触による抵抗により、塗布ロール5の回転方向に流れることができないため、軸方向の両端に移動し、薬剤が溜まる(図4における「Q」)。これにより、塗布ロール5の表面では、軸方向の中央付近で付着している薬剤の厚みが小さく、軸方向の両端で薬剤の厚みが大きくなる。
【0028】
上記のように、塗布ロール5の軸方向の長さDは、線材3の長さよりも小さいため、線材3の両端には薬剤が塗布されず、両端から所定間隔をおいた内側に薬剤Pの塗布領域Aが形成される。また、塗布ロール5の表面では、軸方向で薬剤Pの厚みが相違するため、この相違が線材3における薬剤Pの塗布量の相違を形成する。すなわち、図2に示すように、塗布領域Aの中心付近は薬剤Pの塗布量が少なく、塗布領域Aの両端部では薬剤の塗布量が多くなる。
【0029】
こうして製造された歯間清掃具は、次のように使用される。まず、ハンドル部1を指で把持し、線材3を歯間に挿入する。そして、線材3を歯間で往復動させると、歯垢が除去される。また、清涼剤や虫歯予防剤を含有した薬剤Pを線材3に塗布した場合、清涼感を得ることができたり、虫歯防止効果を得ることができたりする。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、線材3において、薬剤が塗布された塗布領域Aの端部と、支持片21,22との間には薬剤Pが塗布されない非塗布領域Bが形成されている。そのため、次のような利点がある。支持片21,22は梱包中に包装材に接触したり、歯間清掃中に歯に接触したりすることがあり、このような場合、支持片21,22に加わる力が振動となって線材3に伝達するおそれがある。ここで非塗布領域にも薬剤が塗布されている場合に、このような振動が線材3に加わると、使用前に薬剤Pが線材3から剥がれ落ちる可能性がある。特に、線材3と支持片21,22との連結部分は振動が加わりやすく、振動が薬剤Pに伝播し、一部の薬剤が剥がれると、それがきっかけとなり、連結部分から線材3の中央部分に向かって順に薬剤が剥がれていく可能性がある。そこで、上記のように、線材3の両端に非塗布領域Bを設けることで、支持片21,22からの振動が薬剤Pに直接伝播しないようにしている。その結果、線材3からの薬剤Pの剥がれを防止することができる。また、図5に示すように、上記2本の支持片21,22に対し、線材3が張力を失うような長手方向の力Fが加わると、線材3の張力が弱くなり、線材3が湾曲する。薬剤が塗布された領域の線材3は、薬剤Pの固着により、塗布されていない領域の線材3と比較して硬くなり、湾曲しにくくなるため、非塗布領域Bにも薬剤Pが塗布されていると、線材3に掛かる力を逃がすことができず、薬剤Pが剥がれる可能性がある。これに対して、上記のように連結部近傍に薬剤を塗布しない非塗布領域Bを設けることで、線材に掛かる力を逃がすことができる。従って、本発明によれば、非塗布領域Bを設けていない歯間清掃具と比較して薬剤Pの剥落を効果的に防止することができる。
【0031】
また、図5に示すように、支持片21,22に長手方向の力Fが加わると、線材3の張力が弱くなり、線材3を湾曲させる力が作用し、塗布領域A全体で薬剤Pが剥がれる可能性がある。これに対して、塗布領域Aにおいて、長手方向で薬剤の塗布量を不均一にすることで、薬剤の塗布量が少ない箇所で線材に掛かる力を逃がすことができ、塗布領域A全体に亘って、薬剤Pの剥落をさらに効果的に防止することができる。塗布領域Aにおいて薬剤の塗布量を不均一にする方法としては、塗布領域において、線材3がより湾曲しやすい、長手方向の中央部の塗布量を、この中央部の両側の塗布量よりも小さくする方法により、さらに効果的に薬剤Pの剥落を防止することができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、塗布ロール5を用いて薬剤の塗布を行っているが、薬剤の塗布方法は、これに限定されるものではなく、種々の方法が適用可能である。例えば、スプレー、刷毛、パッド印刷、インクジェット印刷などで薬剤を塗布することができる。このとき、薬剤の非塗布領域を形成したり、塗布領域内での塗布量を不均一にしたりすることができる。
【0033】
また、塗布量も上記以外にすることができ、塗布領域内で塗布量が不均一であれば特には限定されない。例えば、塗布領域内の一部に薬剤を塗布しない箇所を形成することもできる。また、塗布濃度を塗布領域内で一定にすることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 ハンドル部
21,22 支持片
3 線材
P 薬剤
X 長手方向



【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔をおいて配置される一対の支持片と、
前記一対の支持片を連結し、手で把持可能なハンドル部と、
前記一対の支持片の間で延びる線材と、
前記線材に塗布され、乾燥により固着する薬剤と、
を備えた歯間清掃具であって、
前記線材は、長手方向に沿って、前記薬剤が塗布される塗布領域と、当該塗布領域の両側の前記薬剤が塗布されない非塗布領域とを有し、前記非塗布領域の線材が前記支持片に連結されている、歯間清掃具。
【請求項2】
前記塗布領域では、前記長手方向において、薬剤の塗布量が不均一である、請求項1に記載の歯間清掃具。
【請求項3】
前記塗布領域では、前記長手方向の中央部において、当該中央部の両側よりも薬剤の塗布量が少ない、請求項2に記載の歯間清掃具。
【請求項4】
複数の前記線材が近接した状態で、前記支持片の間に設けられている、請求項1から3のいずれかに記載の歯間清掃具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−13578(P2013−13578A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148643(P2011−148643)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)