説明

残留応力の評価方法

【課題】非破壊的で簡便であり、FEM解析に適用でき、実証性を有する残留応力の評価方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる残留応力の評価方法は、溶接ビードの余盛を一部除去しては、前記溶接ビート近傍の解放ひずみを測定することを複数回繰り返す工程と、前記解放ひずみを逆解析して固有ひずみを求める工程と、前記固有ひずみから溶接残留応力を算出する工程とを備えるものである。逆解析にカルマンフィルタの理論を用いることにより、評価精度を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残留応力の評価方法に関し、特に、溶接残留応力の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
稼働中の構造物における溶接配管の安全性・健全性を評価するためには、溶接残留応力を非破壊的に計測する技術が必要である。特に、配管内部には流体が流れており、これに起因して応力腐食割れや腐食疲労によるき裂が発生することがある。このき裂のき裂進展寿命を評価する場合には、配管内表面および配管内部における残留応力分布を予知する必要がある。
【0003】
構造健全性保証の考え方により設計された構造物では、供用期間中検査により構造物にき裂(欠陥)が検出されると、破壊力学などの手法により欠陥評価を行い、継続運転の可否や補修・取替えの是非を判定する。応力拡大係数に基づく欠陥評価では、欠陥が存在する箇所における、「欠陥が存在しない状態での」応力評価が必要となる。その際、稼動応力の算出には有限要素(FEM:Finite Element Method)解析を用いる場合が多い。有限要素法における剛性方程式は次式で表現される。
【数1】

ここで、{f}は等価節点力ベクトル、[K]は剛性マトリックス、{δ}は節点変位ベクトル、{fε0}は初期ひずみベクトル、{fσ}は初期応力ベクトルである。
【0004】
溶接部の欠陥評価に際しては、溶接残留応力の評価が必要となる。残留応力を稼動応力と重畳させてFEM解析を行うためには、溶接材の全ての領域に渡る微小要素(FEM用のエレメント)について、全方向(x、y、z方向)の応力を測定する必要がある。残留応力の測定方法として一般的な、モアレ法、X線回折法等では、測定した位置の応力しかわからない。そのため、FEM解析への適用は、現実的に困難である。
【0005】
ところで、溶接ビードには、余盛が存在することが多い。余盛止端部は応力集中部を形成し、き裂の発生源となるため、無いほうが望ましいが、経済的な理由により放置されることが多い。したがって、稼働中の溶接構造物において、この余盛を除去することは、構造健全性の観点からはむしろ有益となる。
【0006】
そこで、本発明者は、内部の残留応力を推定する手法として、2次元問題としての取り扱いではあるが、溶接平板を対象として溶接部の余盛を除去する手法(ビードフラッシュ法)を提案した(非特許文献1参照)。この方法は、数1を基礎式として用いており、解析結果は初期ひずみとして直接弾性FEM解析に用いることができ、稼動応力との重畳が可能である。その後、溶接平板を対象としてこれを3次元問題に拡張した。まず、溶接平板を対象として3次元問題としてその基礎定式化を示した。溶接平板の場合には、溶接時にビード方向に沿って収縮が生じるので、余盛を除去すればこの収縮ひずみが解放され、この解放ひずみから、溶接線方向の固有ひずみと成分のみを測定するのみで十分な精度が得られること(非特許文献2参照)およびひずみの測定誤差が20μ以下ならば評価精度が許容範囲以下となり、測定誤差が10μ以下では大きな誤差がほとんど生じないことを明らかにした(非特許文献3参照)。さらに、この手法を配管に拡張した(非特許文献4参照)。なお、下記の非特許文献5については、後述する実施の形態において説明する。
【非特許文献1】「日本機械学会平成6年度材料力学部門講演会講演論文集」、1994年、Vol.B、p.322−323
【非特許文献2】「日本機械学会論文集A編」、1999年、第65巻、第629号、p.133−140
【非特許文献3】「日本機械学会論文集A編」、1999年、第65巻、第634号、p.1397−1404
【非特許文献4】「日本機械学会2001年度年次大会講演論文集」、2001年、Vol.1、p.403−404
【非特許文献5】「日本機械学会第14回計算力学講演会講演論文集」、2001年、No.01−10、p.213−214
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1〜3に記載された数1に基づく定式化に従う限り、溶接配管は2次元の軸対称モデルとならざるを得ない。その定式化をそのまま用いて2次元軸対象問題として取り扱った場合、解析的には簡単なモデルであるが、余盛を配管の全周に亘り除去する必要があり、測定の工程が簡便でなかった。また、2次元軸対象問題の取り扱いでは、溶接線方向の固有ひずみに加えて板厚方向の固有ひずみも評価する必要があり、平板にない配管固有の問題点があった。さらに、溶接配管の場合、溶接時にビード方向の変形が拘束されているため、予盛除去によりビード方向に解放される弾性ひずみが、溶接平板の場合に比べ、小さくなる問題点もあった。そのため、溶接平板では、ひずみの測定誤差20μでも十分な評価精度が得られるのに対し、溶接配管では、測定誤差10μまで向上させる必要があった(非特許文献5参照)。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、非破壊的で簡便であり、FEM解析に適用でき、実証性を有する残留応力の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる残留応力の評価方法は、溶接ビードの余盛を一部除去しては、前記溶接ビート近傍の解放ひずみを測定することを複数回繰り返す工程と、前記解放ひずみを逆解析して固有ひずみを求める工程と、前記固有ひずみから溶接残留応力を算出する工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、非破壊的で簡便であり、FEM解析に適用でき、実証性を有する残留応力の評価方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
溶接平板に有効な従来のビードフラッシュ法を、溶接配管に適用する場合、従来の定式化に従う限り、精度向上のためには、ひずみゲージをより多く貼付し、測定点を増やす以外ない。発明者は、余盛を除去していく過程において、時系列的な測定データを取得し、それを時系列的な観測量に対するフィルタリング問題などの手法を用いて取り扱えば、測定点が少なくとも、実質的にひずみゲージをより多く貼付することに対応することを見出した。従来手法では、上記時系列という観点が全くなかった。
【0012】
実施の形態
以下に、本実施の形態にかかる溶接変形および残留応力の評価方法について説明する。図1に、本実施の形態にかかる溶接変形および残留応力の評価手順を示す。図1に示すように、本実施の形態にかかる評価方法はS101〜S104の工程を有す。
具体的には、図2に示すように、溶接配管1のビード2に沿って複数のひずみゲージ3を貼付する(S101)。ひずみゲージは特に限定されず、汎用品を用いることができる。
次に、図2に示すように、余盛を段階的・時系列的に除去していき、その都度ひずみゲージにより解放ひずみを測定する(S102)。余盛除去により、余盛除去部4が形成される。余盛除去方法としては、グラインダなどによる機械的除去、電界研磨などによる化学的除去のいずれを用いてもよいが、自動化できる、配管内面の余盛も除去できる、新たに加工層を形成しない等の観点から、電界研磨が好ましい。
複数回除去した後、時系列的に得られた全データを逆解析して、溶接固有ひずみを求める(S103)。精度向上のため、弾性応答マトリクスに特異値分解による適切化を実施するのが好ましい。
最終的に、FEM解析等を用い、固有ひずみから残留応力を評価する(S104)。
【0013】
具体的なアルゴリズムを以下に示す。解析対象として溶接配管を想定しているため、ここでは円筒座標系(r、θ、z)を用いて説明を行うが、平板の解析などで直交座標系を用いる場合、円周(溶接線)方向θをxに、軸(溶接線垂直)方向zをyに、半径(板厚)方向rをzに、適宜読み替えればよい。
【0014】
まず、非特許文献3に記載された従来手法を説明する。部材に存在する固有ひずみの3次元分布ベクトルを{ε}とする。部材の有限要素モデルがq個の要素から成るとすると、各要素において、固有ひずみは3方向の成分を持つので、部材全体の固有ひずみ分布は次式のような3q次のベクトルとして表される。
【数2】

ここで、添字Tは行列の転置を表す。この固有ひずみ分布を力学的境界条件として部材に負荷すると、部材に弾性ひずみが生じる。この場合での、測定位置における弾性ひずみベクトル{ε}を
【数3】

とする。ただし、n?qとする。固有ひずみから弾性ひずみを求める過程は弾性解析であるから、両者の間には次式のような線形関係が成り立つ。
【数4】

ここで、Hは弾性応答マトリックスと呼ばれるn×3qの行列であり、Hの第i列は、固有ひずみのi番目のパラメータのみを単位の値とし、他をすべて0としたときの分布(以下、単位固有ひずみという)
【数5】

を負荷したときの部材に生じる弾性ひずみを表す。したがって、弾性応答マトリックスHは単位固有ひずみunitε(i=1、2、...、3q)を負荷する弾性有限要素解析を3q回行うことで求めることができる。
【0015】
余盛除去前(before)と、除去後(after)の弾性応答マトリックスをそれぞれH、Hとすると、数4より
【数6】

【数7】

と与えられる。ただし、添字のb、aは余盛除去前(before)、除去後(after)を表す。
【0016】
余盛除去に伴う解放ひずみ{Δε}は、余盛除去前後における弾性ひずみの差として与えられ、固有ひずみは、余盛の除去による新たな加工ひずみ(塑性ひずみ)が生じない限り不変である。このことから、数6、数7より解放ひずみと固有ひずみの間に次の関係が成り立つ。
【数8】

ただし、Hba=H−Hである。以下、特にことわりがない限りHbaを単にHと表記する。
【0017】
部材表面で解放ひずみを測定する場合、その測定値{Δε}には測定誤差が含まれる。測定誤差を{Δεerr}とすると数8は次のようになる。
【数9】

このとき、固有ひずみ分布の推定値{ε^}は
【数10】

となる。ただし、Hは弾性応答マトリックスHのムーアペンローズ一般逆行列(Moore and Penrose generalized inverse matrix)である。
【0018】
次に、本実施の形態にかかる手法を説明する。本発明では、余盛除去の定式化に際し、除去過程を時系列的問題とみなし、時系列的な観測量に対して定式化を行う。時系列的問題の代表的な解法としては、カルマンフィルタの理論が挙げられる。カルマンフィルタとは観測量y、...、yを用いて、時刻tk'のときのシステムの状態xk'に関する最適な推定量x^k'|kを求めるアルゴリズムである。このときxk'の最適な推定量x^k'|kを求める問題はxk'とy、...、yの時間的関係から以下の3つに分類できる。
(i) 未来のxk+m(m?1)の推定量x^k+m|kを求める予測問題(prediction)
(ii) 現在のxの推定量x^k|kを求めるろ波問題(filtering)
(iii) 過去のxk−m(m?1)の推定量x^k−m|kを求める平滑問題(smoothing)
【0019】
一例として、以下では(ii)のろ波問題の適用例を示す。溶接余盛の除去における除去角度の段階を時系列的なモデルとしてとらえることで、それぞれの解放ひずみ測定値を時系列データとして考えることができる。これを用い、解放ひずみ測定値から固有ひずみ分布を推定する逆問題解析過程においてカルマンフィルタの利用を検討する。以下では、一例として、図2に示すように円周方向に沿う余盛を、7.5deg刻みで、8回、合計60deg除去するとして定式化を行う。すなわち、余盛除去部4は連続した領域である。
【0020】
ビードフラッシュ法のシステムを、状態方程式(差分方程式)と観測方程式によって記述すると以下のようになる。
【数11】

【数12】

ここで、下添え字のkは、除去角度φdeg
【数13】

に対応する余盛除去のステップ数である。数11および数12は、固有ひずみ分布をx(={ε})、解放ひずみの測定量をy(={Δε})、測定誤差をν(={Δεerr})として記述したものである。Hは余盛除去ステップk番目の弾性応答マトリックスである。
【0021】
また、
(i) 測定誤差νは白色雑音であり、平均値ベクトル0の既知の共分散行列を持つガウス性である。
(ii) 固有ひずみの初期値xは既知の平均値ベクトルと共分散行列をもつガウス確率変数ベクトルである。
(iii) 固有ひずみの初期値xと測定誤差νは独立である。
との仮定をおくと、固有ひずみの逆問題解析の過程においてカルマンフィルタ理論を適用することができる。
【0022】
数11および数12の基本システムにカルマンフィルタを適用すると
【数14】

【数15】

【数16】

が得られる。ただし、
【数17】

とする。Kはカルマンゲインと呼ばれ、x^k|kは固有ひずみ分布の推定量、yは解放ひずみの測定量、Σ^k|kは推定誤差(x−x^k|k)の共分散行列、Σνは測定誤差の共分散行列、ひずみ測定時の誤差の標準偏差をσνとすれば、
【数18】

となる。Iは単位行列である。
【0023】
よって、未知量である初期条件x^0|0、Σ^0|0を決定することで、カルマンフィルタによる固有ひずみ分布の推定が可能となる。上述した定式化から明らかなように、本手法は単に余盛を部分的に除去して数10を展開するという概念ではなく、部分的に除去を繰り返しながら、その都度データを取得し、それらのデータを時系列的に処理することにより、固有ひずみの評価精度を向上させるという技術である。したがって、溶接配管のみならず、溶接線方向に沿って固有ひずみが一定となるような溶接材ならば、すべて適用可能である。したがって、溶接線方向に沿って固有ひずみが一定となるような溶接平板に対して適用すれば、もちろん従来手法よりも精度向上が期待できる。
【0024】
なお、カルマンフィルタ以外にも、定式化は可能である。たとえば、余盛を60degまで段階的に除去すれば、固有ひずみ推定を余盛の除去角度ごとの8回行うことができる。そのため、従来手法における数10の代わりに、8回の全測定データを同時に活用して固有ひずみ推定を行うこともできる。この場合には、数10は次式となる。
【数19】

【数20】

【数21】

ただし、下添え数字は除去角度φdegであり、φdegにおけるHやΔεを表す。もちろんこの場合には、時系列という情報は考慮されていないが、少なくとも従来手法よりも精度の向上が期待できる。
【0025】
溶接配管に図3に示すような固有ひずみ分布(非特許文献5参照)が存在し、かつ、これが板厚方向および溶接ビード方向に一様に分布していると仮定する。図4に示すように、配管の寸法は、内径200mm、肉厚10mm、長さ400mm、余盛高さ2mm、余盛幅8mmとする。図4には長さ方向の対称性から半分のみを示しているが、これをFEM解析対象部5とする。ひずみゲージとしては5連・2軸(10素子)のひずみゲージ(ゲージピッチ2mm、ベース長7.5mm、ベース幅12mm)を4枚用いると仮定する。すなわち、合計40素子を用い、40個のひずみを測定すると仮定する。ひずみゲージの貼付位置はθ(deg)=7.5、22.5、37.5、52.5についてz(mm)=10、12、14、16、18の20点とし、各位置に2つずつのゲージが貼付されているため40測定点となる。非特許文献2と同様に溶接ビード方向に沿って固有ひずみは一定と仮定した。ただし、この場合でも残留応力は厚さ方向に分布するので、外表面と内表面では残留応力は異なる。固有ひずみは、非特許文献2と同様に次式に示すロジスティック関数の線形結合を用いてεの分布をモデル化し、各項の係数asiを未知推定量とした。
【数22】

ここで、s=xまたはyまたはz、k=4、p=−5.0、q=0.6、q=0.4、q=0.3、q=0.25である。ひずみの測定時の誤差が標準偏差σν=20μで、かつ、ひずみゲージの貼付位置が、図5に示すように、標準偏差1mm(変動角0.52deg)で変動すると仮定し、誤差乱数のシードを変化させて15回シミュレーションを実施した。数14、数15および数16による固有ひずみ推定結果を図6に示す。図6(a)は厚さ方向の固有ひずみの推定結果、図6(b)は円周方向の固有ひずみの推定結果である。
【0026】
一方、従来手法に従い図7に示す2次元軸対称モデルを用いて、余盛を全周にわたって除去するモデルの解析を行った。図7(a)は溶接配管1の斜視図、図7(b)はFEM解析対象部5の断面図、図7(c)は図7(b)における点線円内すなわちビード2近傍の拡大図であり、測定点を示す。全周にわたって余盛を除去する場合には、図5に示すような測定位置がビード方向にずれることによる測定誤差は生じない。しかしそれでも、ひずみの測定誤差を、標準偏差σν=20μとした場合には解が振動して全く有意味な解が得られなかった。すなわち、溶接平板についてその有効性が確認されている従来手法をそのまま配管に適用することが困難であることがわかり、この意味で本提案手法の有効性が確認される。そこで、従来手法に基づく解をとにかく得ることを目的として、非特許文献5に示した内容に従い、従来よりも高精度なひずみ測定を行うと仮定して、標準偏差σν=10μとした。ひずみの測定位置は非特許文献5に従い、図7(c)に示すように、z=10mmから16点である。すべて2軸ゲージと仮定しているため、合計32個の測定データとなる。ただし、上記の通り、従来よりも高精度な測定を行うと仮定したように、実際には標準偏差がσν=10μとなるまで、このひずみゲージの組を円周方向にわたって何列も貼付することを想定している。したがって、実際に測定するデータの数は32個×貼付列数となる。誤差乱数のシードを変化させて15回シミュレーションを実施した結果を図8に示す。図8(a)は厚さ方向の固有ひずみの推定結果、図8(b)は円周方向の固有ひずみの推定結果である。
【0027】
図8に示した従来手法による推定結果は、本発明にかかる手法で仮定しているひずみ測定誤差よりも小さな測定誤差を仮定していて、なおかつ余盛りを全周にわたって除去するという余分な操作を施しているにもかかわらず、図6に示した本発明にかかる手法による推定結果と比較して、推定精度は逆に低下している。
【0028】
図2〜図5に示したモデルについて、ひずみ測定誤差の標準偏差σνを20μとしてシミュレーションを行い、溶接残留応力を数14、数15および数16により推定した結果を図9に示す。図9(a)は周方向応力、図9(b)は軸方向応力の推定結果である。いずれも残留応力の概形の推定精度は良好である。比較のために、図7に示した従来手法により、ひずみ測定誤差の標準偏差σνを10μとした推定結果を図10に示す。図9に示した本発明にかかる手法による推定結果は、従来手法よりも大きな測定誤差を仮定しているにもかかわらず、図10に示した従来手法による推定結果に比べ、正解に近く、優れている。
【0029】
また、図3においてr方向の固有ひずみのみを変化させた図11に示す固有ひずみ分布の場合について、ひずみ測定誤差の標準偏差σνを20μとしてシミュレーションを行い、溶接残留応力を数14、数15および数16により推定した結果を図12に示す。図12(a)は周方向応力、図12(b)は軸方向応力の推定結果である。いずれも残留応力の推定精度は良好である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態にかかる溶接残留応力の評価手順を示す図である。
【図2】ひずみゲージ貼付およびビード除去を模式的に示す図である。
【図3】実施の形態にかかる初期固有ひずみ分布を示すグラフである。
【図4】実施の形態にかかるFEM解析モデルを示す図である。
【図5】測定位置の誤差を示す図である。
【図6】実施の形態にかかる推定固有ひずみを示すグラフである。
【図7】従来のFEM解析モデルを示す図である。
【図8】従来手法による推定固有ひずみを示すグラフである。
【図9】実施の形態にかかる推定残留応力を示すグラフである。
【図10】従来手法による推定残留応力を示すグラフである。
【図11】実施の形態にかかる初期固有ひずみ分布を示すグラフである。
【図12】実施の形態にかかる推定残留応力を示すグラフである。
【符号の説明】
【0031】
1 溶接配管
2 ビード
3 ひずみゲージ
4 余盛除去部
5 FEM解析対象部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ビードの余盛を一部除去しては、前記溶接ビート近傍の解放ひずみを測定することを複数回繰り返す工程と、
前記解放ひずみを逆解析して固有ひずみを求める工程と、
前記固有ひずみから溶接残留応力を算出する工程とを備える残留応力の評価方法。
【請求項2】
前記解放ひずみの測定にひずみゲージを用いることを特徴とする請求項1に記載の残留応力の評価方法。
【請求項3】
前記余盛が除去される領域は連続した領域であることを特徴とする請求項1または2に記載の残留応力の評価方法。
【請求項4】
前記逆解析においてカルマンフィルタの理論を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の残留応力の評価方法。
【請求項5】
前記溶接材が溶接配管であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の残留応力の評価方法。
【請求項6】
前記算出する工程にFEM解析を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の残留応力の評価方法。
【請求項7】
電界研磨により前記余盛を除去することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の残留応力の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−58179(P2008−58179A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236384(P2006−236384)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)