説明

残留応力測定方法

【課題】結晶粒の粗い材料で製造された物品であっても、その表面層の浅い部分の残留応力を、その分布も含めて精度よく測定する。
【解決手段】タービン翼のダブテールの表面から切り出した試験片5の、ダブテールの表面の一部分である被測定面5aを、層状に順次研磨しつつ、被測定面5aと対向する試験片5の裏面5bに貼付した歪ゲージ7の出力により、裏面5bの歪を測定する。この歪と同じ値の歪を解析モデルで再現する。詳しくは、試験片5と同一寸法同一材料の解析モデルにおいて、試験片5で測定した歪変化と一致するように、解析モデルの被測定面側で層状に除去する各層の温度又は線膨張係数を層毎に特定する。そして、特定された温度又は線膨張係数に各層を設定した解析モデルから応力分布を求め、これを、試験片5の被測定面5a側で生じる残留応力の深さ方向分布とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の残留応力を測定する方法に係り、特に、被測定物の表面の残留応力を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ジェットエンジンのタービン翼は、結晶粒の粗い多結晶の鋳造材料や、一方向凝固材、単結晶材で製造される。このタービン翼では、特にディスクに嵌合されるダブテールの表面に引っ張りの残留応力が生じていると強度上の問題を生じる可能性がある。そこで、タービン翼の製造に当たっては、機械加工の工程を適切に管理するとともに、場合によっては、ダブテールの表面にショットピーニングを施工し確実に圧縮応力を与えるようにする必要がある。このように、製品の表面付近について、加工による残留応力が適正に与えられているかどうかを確認することは、製品強度を管理する上で非常に重要である。
【0003】
そして、材料表面の残留応力を測定する方法として、応力開放法を利用した測定方法が提案されている。この測定方法では、被測定物の残留応力測定対象面に歪ゲージを貼付した状態で、被測定物のゲージ貼付面の表層を薄く剥離させ、このときの歪ゲージの出力変化から、被測定物の表面の残留応力を測定するというものである(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−48069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した応力開放法を利用した測定方法によって、タービン翼のダブテールの表面付近に加工によって生じている残留応力を測定するのは、極めて困難である。その理由は、機械加工やショットピーニング等によりダブテール表面に与えられる残留応力のピークを含む主要な分布領域が、表面からわずか200〜300μm程度の深さの範囲内に限られる点にある。つまり、このような極めて薄い表層部分を被測定物から剥離させることが、既存の汎用加工技術では極めて困難なためである。
【0006】
仮に剥離させることができたとしても、剥離厚が200〜300μmよりも薄いとその取り扱いが極めて困難である。しかも、このような薄さの剥離厚であると、貼付した歪ゲージ自身の剛性が歪ゲージの出力に影響する可能性があるので、被測定物の残留応力を正しく反映した出力を歪ゲージに求めるには無理がある。
【0007】
このような応力開放法の問題点を解消し得る材料表面の応力測定方法として、非接触の測定法であるX線回折法(sinψ法)を挙げることができる。X線回折法は、被測定物に特定波長のX線を照射したときの回折角が、被測定物の応力に応じて、sinψ(ψ(プサイ);被測定物表面の法線と格子面法線とのなす角度)に対し直線的に変わることを利用した測定方法である。
【0008】
X線回折法で被測定物の残留応力を測定する場合は、入射角を変えながら特定波長のX線を被測定物に照射し、ψ(プサイ)が異なる各結晶粒における回折角(2θ)を測定する。そして、測定した回折角(2θ)とsinψとの複数の組み合わせを最小二乗法により直線近似させる。この直線近似式の傾きを求めることで、被測定物の残留応力を求めることができる。
【0009】
しかしながら、X線回折法は結晶粒の細かい多結晶材料の残留応力測定には向いているが、結晶粒の粗い(結晶粒径の大きい)材料で製造されるタービン翼の残留応力測定には向いていない。結晶粒の粗い材料では、X線が同時に多数の結晶粒には照射されないので、X線の入射角を変えても回折角(2θ)とsinψとの組み合わせを複数組得ることができないからである。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、ジェットエンジンのタービン翼のような結晶粒の粗い材料で製造された物品であっても、その表面層の浅い部分の残留応力を、その分布も含めて精度よく測定することができる残留応力測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の残留応力測定方法は、
被測定物の表面に与えられた残留応力を測定する方法であって、
前記被測定物の残留応力が与えられた部分を含めて該被測定物の表面側から切り出した試験片を、前記被測定物の表面に相当する被測定面側から段階的に層状に研磨しつつ、該被測定面と対向する前記試験片の裏面において歪を測定する測定ステップと、
前記試験片の層状の研磨と前記裏面において測定した歪との関係から、前記被測定物の表面に与えられた残留応力を解析する(例えば、有限要素法による)解析ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載した本発明の残留応力測定方法によれば、被測定物の表面側から切り出した試験片の被測定面側を段階的に層状に研磨すると、被測定面に対向する裏面には、層状に研磨した後の試験片の被測定面側部分に与えられた残留応力に対応する歪が生じる。
【0013】
したがって、試験片の被測定面側を層状に研磨しながら測定した試験片の裏面に生じる歪に基づいて、試験片の被測定面側、ひいては、被測定物の表面側に与えられた残留応力の深さ方向における分布を、FEM(有限要素法)等による解析モデルを用いて逆解析することで求めることができる。
【0014】
このように本発明の残留応力測定方法は、残留応力が与えられた試験片の被測定面側を研磨することでその深さ方向における残留応力の分布を求める測定方法であることから、X線回折法や従来の応力開放法では残留応力を測定できない、結晶粒の粗い材料で製造された物品のごく浅い表面層の残留応力であっても、精度よく測定することができ、かつ、深さ方向の残留応力分布も知ることができる。
【0015】
また、請求項2に記載した本発明の残留応力測定方法は、請求項1に記載した本発明の残留応力測定方法において、
前記解析ステップが、
前記試験片の解析モデルにおける前記被測定面側の温度又は線膨張係数(線膨張率)を調整することで、該被測定面側から前記解析モデルを段階的に層状に除去する前後の歪出力の変化を、前記試験片の被測定面を層状に研磨した時の前記測定ステップで測定した前記試験片の前記裏面における歪出力の変化の値に合わせ込み、前記解析モデルの前記被測定面側から段階的に除去する各層の温度又は線膨張係数を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにより特定した前記温度又は線膨張係数を対応する各層に与えた全体解析モデルにより、前記試験片の深さ方向の残留応力分布を推定する推定ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載した本発明の残留応力測定方法によれば、請求項1に記載した本発明の残留応力測定方法において、被測定面側から解析モデルを層状に除去することで、被測定面側に残留応力が与えられた状態の試験片を被測定面側から層状に研磨する状態を模擬することになる。
【0017】
そして、解析モデルの被測定面側を層状に除去したときに解析モデルの裏面に生じる歪の値が、試験片の被測定面側の同じ位置の層を研磨したときに試験片の裏面に生じる歪の値と一致するように、解析モデルの被測定面側の温度又は線膨張係数を設定すると、その温度又は線膨張係数に応じて解析モデルの被測定面側に生じる膨張収縮が、試験片の被測定面側に与えられた残留応力、言い換えると、被測定物の表面側に与えられた残留応力に相当するものとなる。
【0018】
よって、試験片の被測定面側を層状に研磨したときに試験片の裏面側に生じた歪の値と一致する歪の値が、解析モデルの被測定面側を層状に除去したときに解析モデルの裏面側に生じるときの、解析モデルの被測定面側における温度又は線膨張係数を特定することで、試験片の被測定面側の研磨される層、ひいては、被測定物の表面側の研磨された層に与えられた残留応力を、解析により推定することができる。このため、結晶粒の粗い材料で製造された物品であっても、その表面層の残留応力を、その分布も含めて精度よく測定することができる。
【0019】
なお、請求項2に記載した本発明の残留応力測定方法における特定ステップで特定するパラメータを線膨張係数とする場合、試験片や解析モデルの材料異方性を考慮することで、試験片や解析モデルの伸び量を方向により変えることができる。そのため、試験片裏面の2軸方向の歪変化を2軸歪ゲージにより取得すれば、解析により深さ方向だけでなく面内のゲージ2軸方向の残留応力分布を推定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、結晶粒の粗い材料で製造された物品であっても、その表面層の浅い部分の残留応力を、その分布も含めて精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る残留応力測定方法における試験片の切り出し手順を示す説明図である。
【図2】図1の試験片を用いた残留応力の測定準備の手順を示す説明図である。
【図3】図1の試験片を用いた歪の測定ステップを示す説明図である。
【図4】図1の試験片に与えられた残留応力を試験片の厚さ方向における裏面からの位置との関係で示すグラフである。
【図5】図3の測定ステップにおいて測定された試験片の歪と試験片の研磨厚さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態においては、ジェットエンジンのタービン翼のダブテール表面に与えられた残留応力を測定する場合を例に取って説明する。
【0023】
図1に示すタービン翼1のダブテール3(請求項中の被測定物に相当)は、結晶粒の粗い多結晶の鋳造材料や、一方向凝固材、単結晶材のような材料で製造される。このタービン翼1では、特にディスク(図示せず)に嵌合されるダブテール3の表面3aに引っ張りの残留応力が生じていると強度上の問題を生じる可能性がある。そこで、タービン翼1の製造に当たっては、機械加工の工程を適切に管理するとともに、場合によっては、ダブテール3の表面3aにショットピーニングを施工し確実に圧縮応力を与えている。
【0024】
このようなダブテール3の表面3aに与えられた残留応力を測定する際には、まず、タービン翼1のダブテール3の表面3aから試験片5を切り出す。このとき、試験片5は、残留応力が与えられたダブテール3の表層部分を含むように、ワイヤカット(放電加工の一種)等の新たな残留応力が極力加わらない方法で、薄板状に切り出す。
【0025】
次に、切り出した試験片5のうち、ダブテール3の表面3aの一部である被測定面5aと対向する裏面5bに、歪ゲージ7を貼付する。そして、測定ステップに移行する。
【0026】
測定ステップでは、図3に示すように、試験片5を被測定面5a側から、電解研磨等の新たな残留応力が極力加わらない方法で段階的に研磨する。そして、この研磨と並行して、歪ゲージ7の出力を用いて裏面5bの歪を測定する。
【0027】
図4のグラフに例示するように、試験片5(乃至ダブテール3)には、その被測定面5a(ダブテール3の表面3a)付近の表層部分(図中のY座標=2.5付近の部分)に、機械加工やショットピーニング等により与えられた残留応力が存在する。そのため、図3に示すように試験片5を被測定面5a側から層状に順次研磨すると、図5のグラフに示すように、試験片5の裏面5bの歪を表す歪ゲージ7の出力が、ε,ε,ε,…,εn−2 ,εn−1 ,εと順次変化する。
【0028】
このような歪ゲージ7の出力変化Δε(ε−ε),Δε(ε−ε),…,Δεn−1 (εn−2 −εn−1 ),Δε(εn−1 −ε)は、研磨した試験片5の被測定面5a側の層の部分に与えられていた残留応力が研磨により開放されることに伴って、試験片5の裏面5bに生じる歪の量が変化することで生じる。したがって、試験片5を被測定面5a側から層状に順次研磨することで得られる歪ゲージ7の出力ε,ε,ε,…,εn−2 ,εn−1 ,εは、試験片5の研磨後の被測定面5a側の部分に与えられている残留応力に対応するものとなる。
【0029】
そこで、図3に示す手順で試験片5の被測定面5aを層状に研磨しつつ歪ゲージ7により測定した試験片5の裏面5bの歪の値から、試験片5の被測定面5a側に与えられている残留応力の分布を逆解析により求めることができる。
【0030】
以下、残留応力の解析ステップについて説明する。本実施形態では、この解析には、試験片5を有限要素法(FEM)でモデリングして得た解析モデルを用いる。
【0031】
上述した解析モデルは、試験片5と同一寸法同一材料で構成する。なお、ここでは説明を容易にするため、試験片5の被測定面5aを層状に、1層目(厚さt)、2層目(厚さt)、3層目(厚さt)の3段階で研磨して、歪ゲージ7の出力を測定したものとする。以下、解析の手順(ステップ)を説明する。
【0032】
解析ステップの前半部分として、特定ステップを行う。なお、ここでは説明の簡単化のため、パラメータとして温度を用いるものとするが、温度の代わりに線膨張係数をパラメータとして用いることもできる。
【0033】
この特定ステップでは、まず、被測定面側と裏面との間の厚さがt+tである解析モデルの被測定面側の厚さtの部分を一律に温度T3に調整することで、解析モデルの被測定面側と対向する裏面の、試験片5の裏面5bの歪ゲージ7を貼着した箇所に対応する箇所(解析モデルのゲージ対応箇所)に、試験片5の3層目を除去した前後の歪変化Δεが現れる温度T3を、FEM解析を繰り返すことにより特定する(手順1)。具体的には、t+tである解析モデルにより計算されるゲージ対応箇所の歪が、Δεと一致するようにする。このとき、温度T3に調整する厚さtの部分を除く解析モデルの他の厚さtの部分は、例えば常温であるものとする。これにより、試験片5の被測定面5aの3層目を研磨した前後の、裏面5bに貼付した歪ゲージ7の出力変化を解析モデルにより再現する。
【0034】
次に、被測定面と裏面との間の厚さがt+t+tである解析モデルの厚さtの部分を一律に温度T2に調整することで、解析モデルのゲージ対応箇所に、試験片5の2層目を除去した前後の歪変化Δεが現れる温度T2を、FEM解析を繰り返すことにより特定する(手順2)。具体的には、t+t+tである解析モデルにより計算されるゲージ対応箇所の歪と、前記手順1で特定した、解析モデル(被測定面側と裏面との間の厚さがt+tである解析モデル)の同箇所の歪との差が、Δεと一致するようにする。このとき、いずれのモデルでもtの部分の温度は手順1で特定した温度T3、tの部分の温度は手順2で特定した温度T2とする。これにより、試験片5の被測定面5aの2層目を研磨した前後の、裏面5bに貼付した歪ゲージ7の出力変化を解析モデルにより再現する。
【0035】
続いて、被測定面と裏面と厚さtの部分を一律に温度T1に調整することで、解析モデルのゲージ対応箇所に、試験片5の1層目を除去した前後の歪変化Δεが現れる温度T1を、FEM解析を繰り返すことにより特定する(手順3)。具体的には、t+t+t+tである解析モデルにより計算されるゲージ対応箇所の歪と、前記手順2で特定した、解析モデル(被測定面側と裏面との間の厚さがt+t+tである解析モデル)の同箇所の歪との差が、Δεと一致するようにする。これにより、試験片5の被測定面5aの3層目を研磨した前後の、裏面5bに貼付した歪ゲージ7の出力変化を解析モデルにより再現する。
【0036】
以上により、各層毎の温度設定が完了した後、解析モデルの被測定面側の厚さt,t,tの各部分について、前記手順1〜3で特定した各温度T3,T2,T1をそれぞれ与えた全体FEMモデルにより、解析を実施する(手順4)。この解析のアウトプットとして得られる応力分布(図4がその一例である)が、試験片5の被測定面5a側に生じている残留応力分布である。
【0037】
前記手順4の解析で得られるのは試験片状態の応力状態であるが、さらに実機状態(タービン翼1のダブテール3)の応力分布を知るためには、試験片モデルを実機製品モデルに組み込んで解析モデルを再構築して(タービン翼1のダブテール3に対応する解析モデルを構築し)解析し、応力分布を求めればよい。
【0038】
温度に代えて線膨張係数をパラメータとして用いる場合は、前記手順1〜3において温度T3,T2,T1をそれぞれ求める代わりに、手順1〜3でそれぞれ説明した条件を満たす3つの線膨張係数を求めればよい。そして、前記手順4において、前記手順1〜3で求めた3つの線膨張係数を与えた全体FEMモデルにより、解析を実施すればよい。パラメータを線膨張係数とする場合は、試験片5や解析モデルの材料異方性を考慮することで、解析モデルの伸び量を方向により変えることができる。そのため、試験片5の裏面の2軸方向の歪変化を2軸歪ゲージにより取得すれば、深さ方向だけでなく面内のゲージ2軸方向の残留応力分布を推定することができる。
【0039】
以上に説明したFEM解析により、試験片5の被測定面5aを層状に研磨したときの歪ゲージ7の出力から、試験片5を切り出したダブテール3の表面3a側に与えられた残留応力を推定することができる。
【0040】
以上に説明したように、本実施形態の残留応力測定方法は、残留応力が与えられたダブテール3の表面3aから切り出した試験片5の被測定面5a側を研磨することで、その深さ方向(試験片5の被測定面5aから裏面5bに向かう方向)における残留応力の分布を求める測定方法である。したがって、X線法や応力開放法では残留応力を測定できない、結晶粒の粗い材料で製造された物品の表面層の残留応力であっても、精度よく測定することができ、かつ、深さ方向の残留応力分布も知ることができる。また、歪計測の精度にもよるが、研磨量を細かくすることで、求める残留応力の分布の推定精度を任意に上げることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、試験片5の残留応力のモデリングにFEM解析によるモデルを用いる場合について説明したが、解析はFEM以外の他の方法によって行ってもよい。
【0042】
即ち、本発明は、表面に応力が与えられた被測定物の表面側から切り出した試験片を、被測定物の表面に相当する被測定面側から段階的に層状に研磨しつつ、被測定面と対向する試験片の裏面において測定した歪と、研磨した層の試験片における位置や研磨厚さとの関係から、被測定物の表面に与えられた残留応力を解析することを、要旨とするものである。
【0043】
そして、本実施形態では、結晶粒の粗い多結晶材や、一方向凝固材、単結晶材のような鋳造材料で製造されたタービン翼1のダブテール3の表面3aにおいて、機械加工やショットピーニング等により与えられた残留応力を測定する場合を例に取って説明した。しかし、本発明は、材料や結晶構造を問わず、被測定物の表面に与えられた残留応力を測定する場合に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 タービン翼
3 ダブテール
3a 表面
5 試験片
5a 被測定面
5b 裏面
7 歪ゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の表面に与えられた残留応力を測定する方法であって、
前記被測定物の残留応力が与えられた部分を含めて該被測定物の表面側から切り出した試験片を、前記被測定物の表面に相当する被測定面側から段階的に層状に研磨しつつ、該被測定面と対向する前記試験片の裏面において歪を測定する測定ステップと、
前記試験片の層状の研磨と前記裏面において測定した歪との関係から、前記被測定物の表面に与えられた残留応力を解析する解析ステップと、
を含むことを特徴とする残留応力測定方法。
【請求項2】
前記解析ステップは、
前記試験片の解析モデルにおける前記被測定面側の温度又は線膨張係数を調整することで、該被測定面側から前記解析モデルを段階的に層状に除去する前後の歪出力の変化を、前記試験片の被測定面を層状に研磨した時の前記測定ステップで測定した前記試験片の前記裏面における歪出力の変化の値に合わせ込み、前記解析モデルの前記被測定面側から段階的に除去する各層の温度又は線膨張係数を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにより特定した前記温度又は線膨張係数を対応する各層に与えた全体解析モデルにより、前記試験片の深さ方向の残留応力分布を推定する推定ステップと、
を含むことを特徴とする請求項1記載の残留応力測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−252811(P2011−252811A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127315(P2010−127315)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)