説明

残留応力部分低減方法および残留応力部分低減装置

【課題】金属部品の一部分に対してさらに一層の緻密な作業を行うことができ、圧縮残留応力と引張り残留応力とが混在するような処理に対しても極めて良好な処理を行うことができるようにする。
【解決手段】金属部品1の引張り残留応力を検出する残留応力検出工程、金属部品の応力値、場所および範囲を特定する残留応力特定工程、引張り残留応力に関するデータを基に引張り残留応力部の引張り残留応力を圧縮残留応力に変換するための圧縮応力付与エネルギの値、場所、範囲および作用時間を設定する圧縮応力付与エネルギ設定工程、金属部品にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与工程を備え、圧縮残留応力付与工程では、高周波振動をするホーン4を、このホーンと金属部品1の引張り残留応力部の表面との間隙に液体を介在させて相対的にトラバース動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鋳造、ダイキャスト等によって成形される金属部品の引張り残留応力部に、高周波振動用ホーンによりキャビテーションの衝撃波を作用させて圧縮残留応力を付与する残留応力部分低減方法および残留応力部分低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鋳造、ダイキャスト等によって成形される金属部品には、各部分の肉厚差、あるいは形状変化等による冷却速度の差に起因して、引張り残留応力や圧縮残留応力が存在することが知られている。このような金属部品において、引張り残留応力部の表面には、繰返し荷重等によってき裂が発生し易い。
【0003】
従来一般的には、金属部品を変態点前後まで再加熱し、その後除冷することによって引張り残留応力を除去する等の手段が採用されている。しかし、このような熱処理を施した場合には、再加熱により結晶粒が粗大化し、材料の機械的強度が低下する問題がある。
【0004】
また、鋼球等を用いたショットピーニングなどにより、引張り残留応力部に対して部分的に圧縮残留応力を付与することも試みられているが、硬化深さが十分でないため大きな圧縮残留応力を付与することができず、必ずしも十分な効果が得られないという問題がある。
【0005】
一方、近年では、水中環境でノズルからの噴出流体を金属材料表面に噴射するウォータジェット等の技術を利用して金属材料表面を打撃し、引張り残留応力をキャビテーション気泡が崩壊するときの衝撃圧力によって圧縮残留応力に改善し、機械的強度を高める技術も提案されている(例えば、特許文献1,2等参照)。
【0006】
さらに、本願出願人においては、被改質材の表面に振動板を対向配置するとともに、その対向間隙に液体を介在させ、振動板を高周波振動させることにより液体中にてキャビテーション気泡の連続的な生成と崩壊とを繰返させ、そのキャビテーション気泡の崩壊時に発生する衝撃波を被改質材の表面に連続的に与えることによりショットピーニングを行ない、被改質材の表面に圧縮残留応力を形成する技術を提案している(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平7−270591号公報
【特許文献2】特開平8−336755号公報
【特許文献3】特開2003−220523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の技術のうち、キャビテーションを利用するものは、金属部品に対して大きな圧縮残留応力を付与することが可能である。
【0008】
しかしながら、ノズルからの噴出流体を金属材料表面に噴射してウォータジェットにより引張り残留応力を圧縮残留応力に改善する技術の場合には、ウォータジェットの発生設備、噴射設備等に極めて大掛かりな装置が必要となる一方で、金属部品の一部分に対して緻密な作業を行うことが困難であり、特に圧縮残留応力と引張り残留応力とが混在するような場合の処理には採用が困難である。
【0009】
これに対し、本願出願人の提案による従来技術、すなわち振動板を高周波振動させることにより液体中にてキャビテーション気泡の連続的な生成と崩壊とを繰返させ、そのキャビテーション気泡の崩壊時に発生する衝撃波を被改質材の表面に連続的に与えることによりショットピーニングを行なう技術では、金属部品の一部分に対して緻密な作業を行うことが可能となり、圧縮残留応力と引張り残留応力とが混在するような場合の処理にも良好に採用することができる。
【0010】
本発明は、このような事情のもとになされたものであり、金属部品の一部分に対してさらに一層の緻密な作業を行うことができ、圧縮残留応力と引張り残留応力とが混在するような処理に対しても極めて良好な処理を行うことができる残留応力部分低減方法および残留応力部分低減装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、キャビテーションの衝撃波により大きな圧縮残留応力を付与することができ、マスキングなどの前処理が不要であり、キャビテーションの衝撃波を作用させる条件を変えることにより、付与する圧縮残留応力の大きさを変えることができる残留応力部分低減方法および残留応力部分低減装置を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、金属部品の表面応力のばらつきを小さくすることができ、同一形状、同一製法の量産部品に対し、予め応力分布や処理条件を確認しておくことにより、数値データを基にして、連続的に処理を可能とし、熱応力を発生させることなく、仕上げ加工を施した後の部品でも処理を可能とする残留応力部分低減方法および残留応力部分低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、請求項1に係る発明では、金属部品の引張り残留応力が検出された残留応力部にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与工程を備え、この圧縮残留応力付与工程では、高周波振動をするホーンを、このホーンと前記金属部品の引張り残留応力部の表面との間隙に液体を介在させて相対的にトラバース動作させることを特徴とする残留応力部分低減方法を提供する。
【0014】
請求項2に係る発明では、金属部品の引張り残留応力および圧縮残留応力が検出された残留応力検出部に、キャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与工程を備え、この圧縮残留応力付与工程では、高周波振動をするホーンを、このホーンと前記金属部品の引張り残留応力部の表面との間隙に液体を介在させて相対的にトラバース動作させることを特徴とする残留応力部分低減方法を提供する。
【0015】
請求項3に係る発明では、前記金属部品の表面に発生している引張り残留応力の大きさに従って、キャビテーションの衝撃波の強さおよび作用時間の少なくともいずれかを調整することにより、表面の応力のばらつきを少なく抑える請求項1または2記載の残留応力部分低減方法を提供する。
【0016】
請求項4では、前記ホーンを、前記金属部品の施工面に倣わせながら、前記間隙を制御して、キャビテーションの衝撃波を前記施工面に作用させる請求項1または2記載の残留応力部分低減方法を提供する。
【0017】
請求項5に係る発明では、前記間隙値を、10mm以下に設定する請求項4記載の残留応力部分低減方法を提供する。
【0018】
請求項6に係る発明では、金属部品の引張り残留応力を検出する残留応力検出工程と、この残留応力検出工程で検出された引張り残留応力に関するデータを基に前記引張り残留応力部の引張り残留応力を圧縮残留応力に変換するための圧縮応力付与エネルギの値、場所、範囲および作用時間を設定する圧縮応力付与エネルギ設定工程と、この圧縮応力付与エネルギ設定工程で設定されたデータを基に、前記金属部品にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与工程とを備え、前記圧縮残留応力付与工程では、高周波振動をするホーンを、このホーンと前記金属部品の引張り残留応力部の表面との間隙に液体を介在させて相対的にトラバース動作させることを特徴とする残留応力部分低減方法を提供する。
【0019】
請求項7に係る発明では、金属部品の引張り残留応力および圧縮残留応力を検出する残留応力検出工程と、この残留応力検出工程で検出された引張り残留応力に関するデータを基に前記引張り残留応力部の引張り残留応力を圧縮残留応力に変換するための圧縮応力付与エネルギの値、場所、範囲および作用時間を設定する圧縮応力付与エネルギ設定工程と、この圧縮応力付与エネルギ設定工程で設定されたデータを基に、前記金属部品にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与工程とを備え、前記圧縮残留応力付与工程では、高周波振動をするホーンを、このホーンと前記金属部品の引張り残留応力部の表面との間隙に液体を介在させて相対的にトラバース動作させることを特徴とする残留応力部分低減方法を提供する。
【0020】
請求項8に係る発明では、前記金属部品の表面に発生している引張り残留応力の大きさに従って、キャビテーションの衝撃波の強さおよび作用時間の少なくともいずれかを調整することにより、表面の応力のばらつきを少なく抑える請求項6または7記載の残留応力部分低減方法を提供する。
【0021】
請求項9に係る発明では、前記ホーンを、前記金属部品の施工面に倣わせながら、前記間隙を制御して、キャビテーションの衝撃波を前記施工面に作用させる請求項6または7記載の残留応力部分低減方法を提供する。
【0022】
請求項10に係る発明では、前記ギャップ値を、10mm以下に設定する請求項9記載の残留応力部分低減方法を提供する。
【0023】
請求項11に係る発明では、金属部品の引張り残留応力を検出する残留応力検出手段と、この残留応力検出手段によって検出された前記金属部品の応力値、場所および範囲を特定する残留応力特定手段と、この残留応力特定手段によって特定された前記金属部品の応力値、場所および範囲に関するデータを保存する残留応力データ保存手段と、この残留応力データ保存手段に保存された引張り残留応力に関するデータを基に前記引張り残留応力部の引張り残留応力を圧縮残留応力に変換するための圧縮応力付与エネルギの値、場所、範囲および作用時間を設定する圧縮応力付与エネルギ設定手段と、この圧縮応力付与エネルギ設定手段により設定された前記圧縮応力付与エネルギに関するデータを保存する圧縮応力付与エネルギデータ保存手段と、この圧縮応力付与エネルギデータ保存手段に保存されたデータを基に、前記金属部品にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与機構とを備え、前記圧縮残留応力付与機構は、高周波振動を発生させる高周波振動発生装置と、この高周波振動発生装置に連結されて高周波振動をするホーンと、このホーンと前記金属部品の引張り残留応力部の表面との少なくともいずれか一方を他方に対して相対的にトラバース動作させる動作機構と、少なくとも前記ホーンと前記金属部材の表面との間隙に液体を介在させる液体保持装置とを備えたことを特徴とする残留応力部分低減装置を提供する。
【0024】
請求項12に係る発明では、金属部品の引張り残留応力および圧縮残留応力を検出する残留応力検出手段と、この残留応力検出手段によって検出された前記金属部品の応力値、場所および範囲を特定する残留応力特定手段と、この残留応力特定手段によって特定された前記金属部品の応力値、場所および範囲に関するデータを保存する残留応力データ保存手段と、この残留応力データ保存手段に保存されたデータ中から引張り残留応力に関するデータを抽出し、そのデータを基に前記引張り残留応力部の引張り残留応力を圧縮残留応力に変換するための圧縮応力付与エネルギの値、場所、範囲および作用時間を設定する圧縮応力付与エネルギ設定手段と、この圧縮応力付与エネルギ設定手段により設定された前記圧縮応力付与エネルギに関するデータを保存する圧縮応力付与エネルギデータ保存手段と、この圧縮応力付与エネルギデータ保存手段に保存されたデータを基に、前記金属部品にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与機構とを備え、前記圧縮残留応力付与機構は、高周波振動を発生させる高周波振動発生装置と、この高周波振動発生装置に連結されて高周波振動をするホーンと、このホーンと前記金属部品の引張り残留応力部の表面との少なくともいずれか一方を他方に対して相対的にトラバース動作させる動作機構と、少なくとも前記ホーンと前記金属部材の表面との間隙に液体を介在させる液体保持装置とを備えたことを特徴とする残留応力部分低減装置を提供する。
【0025】
請求項13に係る発明では、前記圧縮残留応力付与機構は、前記金属部品の表面に発生している引張り残留応力の大きさに従って、キャビテーションの衝撃波の強さおよび作用時間の少なくともいずれかを調整することにより、表面の応力のばらつきを少なく抑える機能を有する請求項11または12記載の残留応力部分低減装置を提供する。
【0026】
請求項14に係る発明では、前記圧縮残留応力付与機構は、前記ホーンを、前記金属部品の施工面に倣わせながら、前記間隙を制御して、キャビテーションの衝撃波を前記施工面に作用させる機能を有する請求項11または12記載の残留応力部分低減装置を提供する。
【0027】
請求項15に係る発明では、前記間隙値は、10mm以下に設定されている請求項14記載の残留応力部分低減装置を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、金属部品の一部分に対してさらに一層の緻密な作業を行うことができ、圧縮残留応力と引張り残留応力とが混在するような処理に対しても極めて良好な処理を行うことができる。
【0029】
また、本発明によれば、キャビテーションの衝撃波により大きな圧縮残留応力を付与することができ、マスキングなどの前処理が不要であり、キャビテーションの衝撃波を作用させる条件を変えることにより、付与する圧縮残留応力の大きさを変えることができ、表面応力のばらつきを小さくすることができる。
【0030】
そして、同一形状、同一製法の量産部品に対しては、予め応力分布や処理条件を確認しておくことにより、数値データを基にして、連続的に処理も可能となり、熱応力が発生しないため、仕上げ加工を施した後の部品でも処理が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る残留応力部分低減方法および残留応力部分低減装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
[第1実施形態](図1〜図4)
本実施形態では、金属部品に引張り残留応力と圧縮残留応力とが混在する場合に、その金属部品の引張り残留応力部に高周波振動によるキャビテーションの衝撃波を作用させて圧縮残留応力を付与する残留応力部分低減装置、および同装置を使用する残留応力部分低減方法について説明する。
【0033】
図1は、本実施形態による残留応力部分低減装置の構成を示す全体構成図である。図2は、図1に示した残留応力部分低減装置の圧縮残留応力付与機構の構成を一部断面として示す拡大側面図であり、図3は作用説明図である。図4は本実施形態による残留応力部分低減方法の手順を示す工程図である。
【0034】
まず、図1〜図3によって処理対象となる金属部品1および圧縮残留応力付与機構2について説明する。
【0035】
図1に示すように、本実施形態では処理対象となる金属部品1として、管部1aの両端にフランジ1bを設けたフランジ付き配管部品が適用されている。なお、図1の下部には、金属部品1としてのフランジ付き配管部品を、中心線を水平にした状態で上半部のみ拡大断面として示している。
【0036】
この金属部品1は、鋳造またはダイキャストにより成形されており、肉厚が略一定である管部1aの中央部外表面aと、フランジ外端面b1と、フランジ対向面b2とが圧縮残留応力部となっている。そして、管部1aとフランジ1bとの連結部である肉厚の大きい外表面cが、引張り残留応力部となっている。さらに、圧縮残留応力部a、b2と引張り残留応力部cとの境界部分dは、低引張り応力部となっている。
【0037】
圧縮残留応力付与機構2は、図1〜図3に示すように、高周波振動発生装置2aに振動発生部として圧電素子からなる超音波振動子3を組込み、この超音波振動子3に例えば先端側が次第に細くなるホーン4を連結した構成となっている。高周波振動発生装置2aには、商用電源等の電源21を介して駆動ユニット23が接続され、この駆動ユニット23から高周波振動発生装置2aに高周波電流が供給され、ホーン4が長手方向に高周波振動する。
【0038】
高周波振動発生装置2aおよびホーン4は、ホーン4と金属部材1の表面との間隙に液体を介在させる液体保持装置、例えば清浄水5を収容する水槽6内に配置可能とされている。そして、例えば水槽6を支持する基台7上に設けられた駆動源としてのモータ8と、このモータ8の出力軸8aに連結した上向きの回動アーム9とが備えられ、この回動アーム9の先端側に高周波振動発生装置2aを移動可能に支持することにより、図1に示した一点Oを中心とする回動、図2に示した横方向(x,y方向)の移動、あるいは図3に示した上下方向(z方向)の移動が可能となっている。
【0039】
このホーン4の移動は、後述するシーケンサ22からの制御指令によって行われ、例えば、水槽6の清浄水5内に浸漬状態で収容された金属部品1に対し、引張り残留応力部cおよび低引張り応力部dの表面に沿って三次元方向でのトラバース動作として行われる。すなわち、ホーン4は引張り残留応力部cの表面に沿って位置変化および姿勢変化可能とされ、これによりホーン4の先端を金属部品1の引張り残留応力部cに対して所定角度で回動および移動することができる。
【0040】
次に、残留応力部分低減装置の制御構成について説明する。図1に示すように、本実施形態では、金属部品1を処理対象として、引張り残留応力および圧縮残留応力を検出する非破壊式の残留応力検出手段、例えばX線応力測定ユニット11を備えている。このX線応力測定ユニット11は、金属部品1の表面から数μmの深さにおける応力を検出することができる。
【0041】
また、本実施形態では、X線応力測定ユニット11によって検出された金属部品1の応力値、場所および範囲を特定する残留応力特定手段として、ホスト計算機12および演算ユニット13を備えている。
【0042】
ホスト計算機12は、残留応力部分低減処理に係る手順、信号処理等を総合的に行うものであり、送信器14および受信器15を介してX線応力測定ユニット11に接続されるとともに、操作用の入力器16および表示器17に接続されている。
【0043】
演算ユニット13は残留応力の場所、残留応力値の大きさの数値化、範囲特定、高周波振動発生装置2aおよびホーン4等の動作値および振動値設定等に関する演算等を行うものであり、ホスト計算機12、表示器17、記憶ユニット18およびシーケンサ22に接続されている。記憶ユニット18には、ホスト計算機12および演算ユニット13による演算結果、例えばX線応力測定ユニット11により特定された金属部品1の応力値、場所および範囲等に関するデータの保存、すなわち残留応力データ保存手段としての機能、高周波振動発生装置2aおよびホーン4等の動作値、および後の確認データの保存等が行われる。
【0044】
また、演算ユニット13には、圧縮応力付与エネルギ設定手段としての演算部が含まれており、この演算部では、記憶ユニット18に保存されたデータ中から引張り残留応力に関するデータを抽出し、そのデータを基に引張り残留応力部cの引張り残留応力を圧縮残留応力に変換するための圧縮応力付与エネルギの値、場所、範囲および作用時間の設定等も行われる。
【0045】
また、記憶ユニット18には、演算部19により設定された圧縮応力付与エネルギに関するデータを保存する圧縮応力付与エネルギデータ保存手段としての記憶部が含まれている。この記憶部に保存されたデータを基に、金属部品1にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与機構として、電源21、シーケンサ22、駆動ユニット23およびこれにより駆動されて高周波振動を発生させる高周波振動発生装置2とが接続されている。
【0046】
次に、図4も参照して、残留応力部分低減方法について説明する。
【0047】
まず、図1左上部に示したX線応力測定ユニット11に被処理物である金属部品1をセットし、金属部品1の表面をX線測定することにより、引張り残留応力および圧縮残留応力を検出する(残留応力検出工程;S101)。
【0048】
ここで得られるX線測定データは具体的に、金属部品1の管部1aの圧縮残留応力部(中央部外表面a1、フランジ外端面b1、フランジ対向面b2)、引張り残留応力部(管部1aとフランジ1bとの連結部である肉厚の大きい外表面c)、および低引張り応力部(圧縮残留応力部a1、b2と引張り残留応力部cとの境界部分d)等の場所、残留応力値の大きさ等であり、これらのデータは演算ユニット13で数値化される(S102)。
【0049】
数値化されたデータは、ホスト計算機12の処理および演算ユニット13の演算によって、引張り残留応力部cおよび低引張り残留応力部dのデータとして抽出され(S103)、また圧縮残留応力部のデータとして抽出される(S104)。これにより、残留応力検出工程S101)で検出された金属部品1の残留応力の種類、応力値、場所、応力分布および範囲が特定される(残留応力特定工程;S105)。
【0050】
残留応力が特定されると、金属部品1の応力値、場所および範囲に関するデータが記憶ユニット18に、初期の残留応力測定データとして保存される(残留応力データ保存工程;S106)。これらのデータは、表示器17によって確認することができる。
【0051】
また、残留応力データ保存工程(S106)で保存されたデータ中から、引張り残留応力に関するデータが抽出され、そのデータを基に、ホスト計算機12および演算ユニット13により、引張り残留応力部の引張り残留応力を圧縮残留応力に変換するための圧縮応力付与エネルギの値、場所、処理範囲、装置振動部のストローク、振動数、動作距離、動作時間および作用時間等が設定される(圧縮応力付与エネルギ設定工程;S108)。そして、設定された圧縮応力付与エネルギに関するデータは、記憶ユニット18に保存される(圧縮応力付与エネルギデータ保存工程)。
【0052】
なお、処理対象となる金属部品1に直接、残留応力低減処理を行う場合には、上記工程の前に、金属部品1をX線応力測定ユニット11から水槽6に移動し、清浄水5内に浸漬状態で収容設置し、引張り残留応力除去装置の高周波振動発生装置2aおよびホーン4をセットし、処理を行うことができる(S107)。
【0053】
この場合、準備終了後、初めに、入力器16からの指令により、高周波振動発生装置2aを駆動させ、圧縮応力付与エネルギデータ保存工程(S106)で保存されたデータを基に、金属部品1の低引張り残留応力部dの表面にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する(圧縮残留応力付与工程(1);S109)。すなわち、超音波振動子3にてホーン4の先端部にキャビテーションを発生させ、低引張り応力部dの表面を硬化させ、表面に圧縮残留応力を付与し、表面に発生している引張り応力を低減させる。
【0054】
次いで、入力器16からの指令により、高周波振動発生装置2aを駆動させ、圧縮応力付与エネルギデータ保存工程(S106)で保存されたデータを基に、金属部品1にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する(圧縮残留応力付与工程(2);S110)。すなわち、超音波振動子3にてホーン4の先端部にキャビテーションを発生させ、引張り応力部表面を硬化させ、表面に圧縮残留応力を付与し、表面に発生している引張り応力を低減させる。
【0055】
この場合、ホーン4を、金属部品1の施工面に倣わせながら、ギャップ値δを一定の制御範囲内に維持して、キャビテーションの衝撃波を施工面に作用させる。また、ギャップ値δを、10mm以下、例えば6mm以下に設定する。
【0056】
そして、金属部品1の表面に発生している引張り残留応力の大きさに従って、キャビテーションの衝撃波の強さおよび作用時間の少なくともいずれかを調整することにより、表面の応力のばらつきを少なく抑える。
【0057】
さらに、ギャップ値δを変化させることにより、表面の応力のばらつきを低く抑えることが可能である。
【0058】
引張り応力が大きい個所では、キャビテーションの作用時間を長くするか、またはホーン4とのギャップを小さくし、衝撃波の作用密度を大きくし、大きな圧縮残留応力が付与できるように作用条件を付与する。また、低引張り残留応力部の場合には、引張り応力部への作用条件に比べ、小さめの衝撃波を作用させる。
【0059】
そして、処理後、部品表面の応力分布を測定し、部品表面の引張り応力が予め決められた値以下になっていることを確認する。
【0060】
同一条件で製作される多数の部品については、上記の処理を行なった後、一定数ごとにX線測定を実施し、品質を確保し、処置済みデータを保存する(S111)。
【0061】
処理用データ、処理済データに基づき同態様の被処理物についての処理を行うことが可能である(S112)。
【0062】
なお、本実施形態では、高周波振動発生装置2に連結されて高周波振動をするホーン4の位置を金属部品1の引張り残留応力部の表面に対して移動させる動作機構を有する構成としたが、処理対象となる金属部品1の形状によっては、金属部品1を移動させる構成としてもよい。要するに、ホーン4と金属部品1との少なくともいずれか一方を他方に対して相対的にトラバース動作させる動作機構を採用してもよい。
【0063】
また、本実施形態では被処理物全体を清浄水5中に浸漬したが、処理部のみを何らかのカバーによって被覆するようにして、ホーン4と金属部材1の表面との間隙に液体を介在させる構成としてもよく、また清浄水以外の水、または他液体、例えばエマルジョン等の液体を適用することも可能である。少なくとも、ホーン4と金属部材1の表面との間隙に液体を介在させる液体保持装置を備えた構成とすればよい。
【0064】
また、本実施形態では、引張り残留応力および圧縮残留応力を検出する非破壊式の残留応力検出手段として、X線応力測定ユニット11を適用したが、X線応力測定ユニット11以外の非破壊測定ユニットを適用することも可能である。また、配管部品以外の各種部品にも適用可能であることは勿論である。
【0065】
[第2実施形態](図1〜図3、図5)
本実施形態では、金属部品に引張り残留応力のみが存在する場合について適用したものである。この場合には、第1実施形態における圧縮残留応力部のデータを抽出する工程(S104)が不要であり、また残留応力特定工程(S105)における圧縮残留応力部のデータとして抽出される金属部品1の残留応力の種類、応力値、場所、応力分布および範囲の特定が不要である。また、低引張り残留応力部dの表面にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する工程(圧縮残留応力付与工程(1);S109)も不要である。
【0066】
したがって、本実施形態の場合には、図5に示すように、X線応力測定ユニット11に被処理物である金属部品1をセットし、金属部品1の表面をX線測定することにより、引張り残留応力を検出する残留応力検出工程(S201)、数値化工程(S202)が行われる。
【0067】
数値化されたデータは、ホスト計算機12の処理および演算ユニット13の演算によって、引張り残留応力部cおよび低引張り残留応力部dのデータとして抽出される(S203)。そして、残留応力検出工程(S201)で検出された金属部品1の残留応力値、場所、応力分布および範囲が特定される(残留応力特定工程;S205)。
【0068】
残留応が特定されると、金属部品1の応力値、場所および範囲に関するデータが記憶ユニット18に、初期の残留応力測定データとして保存される(残留応力データ保存工程;S205)。これらのデータは、表示器17によって確認することができる。
【0069】
また、残留応力データ保存工程(S205)で保存されたデータ中から、引張り残留応力に関するデータが抽出され、そのデータを基に、ホスト計算機12および演算ユニット13により、引張り残留応力部の引張り残留応力を圧縮残留応力に変換するための圧縮応力付与エネルギの値、場所、処理範囲、装置振動部のストローク、振動数、動作距離、動作時間および作用時間等が設定される(圧縮応力付与エネルギ設定工程)。そして、設定された圧縮応力付与エネルギに関するデータは、記憶ユニット18に保存される(圧縮応力付与エネルギデータ保存工程)。
【0070】
なお、処理対象となる金属部品1に直接、残留応力低減処理を行う場合には、上記工程の前に、金属部品1をX線応力測定ユニット11から水槽6に移動し、清浄水5内に浸漬状態で収容設置し、引張り残留応力除去装置の高周波振動発生装置2aおよびホーン4をセットし、処理を行うことができる(S206)。
【0071】
この場合、準備終了後、入力器16からの指令により、高周波振動発生装置2aを駆動させ、圧縮応力付与エネルギデータ保存工程(S205)で保存されたデータを基に、金属部品1にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する(圧縮残留応力付与工程(2);S208)。すなわち、超音波振動子3にてホーン4の先端部にキャビテーションを発生させ、引張り応力部表面を硬化させ、表面に圧縮残留応力を付与し、表面に発生している引張り応力を低減させる。
【0072】
この場合、ホーン4を、金属部品1の施工面に倣わせながら、ギャップ値δを一定の制御範囲内に維持して、キャビテーションの衝撃波を施工面に作用させる。また、ギャップ値δを、10mm以下に設定する。
【0073】
そして、金属部品1の表面に発生している引張り残留応力の大きさに従って、キャビテーションの衝撃波の強さおよび作用時間の少なくともいずれかを調整することにより、表面の応力のばらつきを少なく抑える。
【0074】
さらに、ギャップ値δを変化させることにより、表面の応力のばらつきを低く抑えることが可能である。
【0075】
引張り応力が大きい個所では、キャビテーションの作用時間を長くするか、またはホーン4とのギャップを小さくし、衝撃波の作用密度を大きくし、大きな圧縮残留応力が付与できるように作用条件を付与する。この場合には、引張り応力部への作用条件に比べ、小さめの衝撃波を作用させる。
【0076】
そして、処理後、部品表面の応力分布を測定し、部品表面の引張り応力が予め決められた値以下になっていることを確認する。
【0077】
同一条件で製作される多数の部品については、上記の処理を行なった後、一定数ごとにX線測定を実施し、品質を確保し、処置済みデータを保存する(S209)。
【0078】
処理用データ、処理済データに基づき同態様の被処理物についての処理を行うことが可能である(S210)。
【0079】
なお、本実施形態でも、高周波振動発生装置2に連結されて高周波振動をするホーン4の位置を金属部品1の引張り残留応力部の表面に対して移動させる動作機構を有する構成としたが、処理対象となる金属部品1の形状によっては、金属部品1を移動させる構成としてもよい。要するに、ホーン4と金属部品1との少なくともいずれか一方を他方に対して相対的にトラバース動作させる動作機構を採用してもよい。
【0080】
また、本実施形態では被処理物全体を清浄水5中に浸漬したが、処理部のみを何らかのカバーによって被覆するようにして、ホーン4と金属部材1の表面との間隙に液体を介在させる構成としてもよく、また清浄水以外の水、または他液体、例えばエマルジョン等の液体を適用することも可能である。少なくとも、ホーン4と金属部材1の表面との間隙に液体を介在させる液体保持装置を備えた構成とすればよい。
【0081】
また、本実施形態では、引張り残留応力および圧縮残留応力を検出する非破壊式の残留応力検出手段として、X線応力測定ユニット11を適用したが、X線応力測定ユニット11以外の非破壊測定ユニットを適用することも可能である。また、配管部品以外の各種部品にも適用可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施形態による残留応力部分低減装置の構成を示す全体構成図。
【図2】図1に示した残留応力部分低減装置の圧縮残留応力付与機構の構成を一部断面として示す拡大側面図。
【図3】本発明の第1実施形態の作用説明図。
【図4】本発明の第1実施形態による残留応力部分低減方法の手順を示す工程図。
【図5】本発明の第2実施形態による残留応力部分低減方法の手順を示す工程図。
【符号の説明】
【0083】
1 金属部品
1a 管部
1b フランジ
2 圧縮残留応力付与機構
2a 高周波振動発生装置
3 超音波振動子
4 ホーン
5 清浄水
6 水槽
7 基台
8 モータ
8a 出力軸
9 回動アーム
11 X線応力測定ユニット
12 ホスト計算機
13 演算ユニット
14 送信器
15 受信器
16 入力器
17 表示器
18 記憶ユニット
21 電源
22 シーケンサ
23 駆動ユニット
a 管部1aの中央部外表面(圧縮残留応力部)
b1 フランジ外端面
b2 フランジ対向面(圧縮残留応力部)
c 外表面(引張り残留応力部)
d 境界部分(低引張り応力部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品の引張り残留応力が検出された残留応力部にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与工程を備え、この圧縮残留応力付与工程では、高周波振動をするホーンを、このホーンと前記金属部品の引張り残留応力部の表面との間隙に液体を介在させて相対的にトラバース動作させることを特徴とする残留応力部分低減方法。
【請求項2】
金属部品の引張り残留応力および圧縮残留応力が検出された残留応力検出部に、キャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与工程を備え、この圧縮残留応力付与工程では、高周波振動をするホーンを、このホーンと前記金属部品の引張り残留応力部の表面との間隙に液体を介在させて相対的にトラバース動作させることを特徴とする残留応力部分低減方法。
【請求項3】
前記金属部品の表面に発生している引張り残留応力の大きさに従って、キャビテーションの衝撃波の強さおよび作用時間の少なくともいずれかを調整することにより、表面の応力のばらつきを少なく抑える請求項1または2記載の残留応力部分低減方法。
【請求項4】
前記ホーンを、前記金属部品の施工面に倣わせながら、前記間隙を制御して、キャビテーションの衝撃波を前記施工面に作用させる請求項1または2記載の残留応力部分低減方法。
【請求項5】
前記間隙値を、10mm以下に設定する請求項4記載の残留応力部分低減方法。
【請求項6】
金属部品の引張り残留応力を検出する残留応力検出工程と、この残留応力検出工程で検出された引張り残留応力に関するデータを基に前記引張り残留応力部の引張り残留応力を圧縮残留応力に変換するための圧縮応力付与エネルギの値、場所、範囲および作用時間を設定する圧縮応力付与エネルギ設定工程と、この圧縮応力付与エネルギ設定工程で設定されたデータを基に、前記金属部品にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与工程とを備え、前記圧縮残留応力付与工程では、高周波振動をするホーンを、このホーンと前記金属部品の引張り残留応力部の表面との間隙に液体を介在させて相対的にトラバース動作させることを特徴とする残留応力部分低減方法。
【請求項7】
金属部品の引張り残留応力および圧縮残留応力を検出する残留応力検出工程と、この残留応力検出工程で検出された引張り残留応力に関するデータを基に前記引張り残留応力部の引張り残留応力を圧縮残留応力に変換するための圧縮応力付与エネルギの値、場所、範囲および作用時間を設定する圧縮応力付与エネルギ設定工程と、この圧縮応力付与エネルギ設定工程で設定されたデータを基に、前記金属部品にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与工程とを備え、前記圧縮残留応力付与工程では、高周波振動をするホーンを、このホーンと前記金属部品の引張り残留応力部の表面との間隙に液体を介在させて相対的にトラバース動作させることを特徴とする残留応力部分低減方法。
【請求項8】
前記金属部品の表面に発生している引張り残留応力の大きさに従って、キャビテーションの衝撃波の強さおよび作用時間の少なくともいずれかを調整することにより、表面の応力のばらつきを少なく抑える請求項6または7記載の残留応力部分低減方法。
【請求項9】
前記ホーンを、前記金属部品の施工面に倣わせながら、前記間隙を制御して、キャビテーションの衝撃波を前記施工面に作用させる請求項6または7記載の残留応力部分低減方法。
【請求項10】
前記ギャップ値を、10mm以下に設定する請求項9記載の残留応力部分低減方法。
【請求項11】
金属部品の引張り残留応力を検出する残留応力検出手段と、この残留応力検出手段によって検出された前記金属部品の応力値、場所および範囲を特定する残留応力特定手段と、この残留応力特定手段によって特定された前記金属部品の応力値、場所および範囲に関するデータを保存する残留応力データ保存手段と、この残留応力データ保存手段に保存された引張り残留応力に関するデータを基に前記引張り残留応力部の引張り残留応力を圧縮残留応力に変換するための圧縮応力付与エネルギの値、場所、範囲および作用時間を設定する圧縮応力付与エネルギ設定手段と、この圧縮応力付与エネルギ設定手段により設定された前記圧縮応力付与エネルギに関するデータを保存する圧縮応力付与エネルギデータ保存手段と、この圧縮応力付与エネルギデータ保存手段に保存されたデータを基に、前記金属部品にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与機構とを備え、前記圧縮残留応力付与機構は、高周波振動を発生させる高周波振動発生装置と、この高周波振動発生装置に連結されて高周波振動をするホーンと、このホーンと前記金属部品の引張り残留応力部の表面との少なくともいずれか一方を他方に対して相対的にトラバース動作させる動作機構と、少なくとも前記ホーンと前記金属部材の表面との間隙に液体を介在させる液体保持装置とを備えたことを特徴とする残留応力部分低減装置。
【請求項12】
金属部品の引張り残留応力および圧縮残留応力を検出する残留応力検出手段と、この残留応力検出手段によって検出された前記金属部品の応力値、場所および範囲を特定する残留応力特定手段と、この残留応力特定手段によって特定された前記金属部品の応力値、場所および範囲に関するデータを保存する残留応力データ保存手段と、この残留応力データ保存手段に保存されたデータ中から引張り残留応力に関するデータを抽出し、そのデータを基に前記引張り残留応力部の引張り残留応力を圧縮残留応力に変換するための圧縮応力付与エネルギの値、場所、範囲および作用時間を設定する圧縮応力付与エネルギ設定手段と、この圧縮応力付与エネルギ設定手段により設定された前記圧縮応力付与エネルギに関するデータを保存する圧縮応力付与エネルギデータ保存手段と、この圧縮応力付与エネルギデータ保存手段に保存されたデータを基に、前記金属部品にキャビテーション作用による圧縮残留応力を付与する圧縮残留応力付与機構とを備え、前記圧縮残留応力付与機構は、高周波振動を発生させる高周波振動発生装置と、この高周波振動発生装置に連結されて高周波振動をするホーンと、このホーンと前記金属部品の引張り残留応力部の表面との少なくともいずれか一方を他方に対して相対的にトラバース動作させる動作機構と、少なくとも前記ホーンと前記金属部材の表面との間隙に液体を介在させる液体保持装置とを備えたことを特徴とする残留応力部分低減装置。
【請求項13】
前記圧縮残留応力付与機構は、前記金属部品の表面に発生している引張り残留応力の大きさに従って、キャビテーションの衝撃波の強さおよび作用時間の少なくともいずれかを調整することにより、表面の応力のばらつきを少なく抑える機能を有する請求項11または12記載の残留応力部分低減装置。
【請求項14】
前記圧縮残留応力付与機構は、前記ホーンを、前記金属部品の施工面に倣わせながら、前記間隙を制御して、キャビテーションの衝撃波を前記施工面に作用させる機能を有する請求項11または12記載の残留応力部分低減装置。
【請求項15】
前記間隙値は、10mm以下に設定されている請求項14記載の残留応力部分低減装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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