説明

残留性有機汚染物質の採取用フイルターおよび採取器

【目的】流体中に含まれる粒子状態およびガス状態の両方の形態の残留性有機汚染物質を簡単に採取し、しかも、採取した残留性有機汚染物質を容易に抽出できるようにする。
【構成】採取器3は、排出路12aを有するホルダー6内に配置された採取用フイルター7を有している。採取用フイルター7は、繊維材料と、当該繊維材料同士を結合するための無機系結合材とを含む、一端に開口部71を有しかつ他端が閉鎖された円筒状の成形体70と、開口側が成形体70の開口部71側に位置するよう、成形体70の外側に重ねて配置された円筒ろ紙75とを備えている。焼却施設の煙道から導入管8を経由してホルダー6内へ流入する、ダイオキシン類等の残留性有機汚染物質を含む試料ガスは、そこに含まれる粒子状態およびガス状態の両方の形態の各種の残留性有機汚染物質および煤塵等の粒子状物が採取用フイルター7を通過する際に捕捉されて採取され、排出路12aから外部へ排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残留性有機汚染物質の採取用フイルターおよび採取器、特に、流体中に含まれる残留性有機汚染物質を採取するためのフイルターおよび採取器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)およびコプラナーポリ塩化ビフェニル(Co−PCBs)の総称であるダイオキシン類、Co−PCBs以外のポリ塩化ビフェニル類(PCBs)、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、アルドリン、エンドリン、クロルデン、ヘプタクロル、マイレックス、トキサフェン並びにヘキサクロロベンゼン等の有機塩素化合物のような環境中で自然分解されにくく、所謂環境ホルモンとしての作用を示す可能性がある各種の有機物質、すなわち、残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)は、人の健康の保護及び環境の保全を図ることを目的としたストックホルム条約(POPs条約)において、国際的協調による廃絶、削減の対象になっている。このため、残留性有機汚染物質は、廃棄物焼却施設からの排気ガス、大気、工場排水や河川水などの水などの流体における含有量等を定期的に分析する必要がある。
【0003】
ところで、流体中に含まれる残留性有機汚染物質を分析する際には、先ず、分析対象となる流体から残留性有機汚染物質を採取する必要がある。例えば、排気ガス中に含まれる残留性有機汚染物質を分析する場合は、排気ガスを含む空間、例えば排気ガスが流れる煙道から試料ガスを一定量採取し、この試料ガス中に含まれる各種の残留性有機汚染物質を採取する必要がある。ここで、残留性有機汚染物質は、試料ガス中に含まれる量が極めて微量であり、また、粒子状態やガス状態などの各種の形態であって種類も多岐に渡るため、信頼性の高い分析結果を得るためには、その漏れのない採取が必要になる。また、残留性有機汚染物質の一部、例えばCo−PCBsは、大気中に多く含まれているため、試料ガスがそのようなCo−PCBsにより汚染されると、分析結果の信頼性が損なわれるおそれがある。このため、分析結果の正確性を担保するために、流体に含まれる残留性有機汚染物質を採取するための方法や装置が公的に規定されつつある。
【0004】
例えば、非特許文献1は、排気ガス中に含まれるダイオキシン類を採取するための方法および装置を具体的に例示している。この採取装置は、焼却装置の排気ガスが流れる煙道から試料ガスを採取するための採取管、採取管により採取された試料ガス中に含まれる主に粒子状態のダイオキシン類を捕捉するためのフイルター材を備えた第一捕捉器、および第一捕捉器で捕捉されにくいガス状態のダイオキシン類を捕捉するための第二捕捉器を主に備えている。第二捕捉器は、主に、吸収液を入れた複数のガラス製インピンジャーからなる液体捕集部と樹脂系吸着材を配置した吸着捕集部とを備え、第一捕捉器で捕捉されないガス状態のダイオキシン類をインピンジャー内の吸収液と樹脂系吸着材とにより捕捉し得るように構成されている。
【0005】
このような採取装置は、第一捕捉器と第二捕捉器とを備えた複雑な構成を有し、しかもガラス製器具を多用していることから高価であるため、繰り返して利用する場合が多い。この場合、測定データの信頼性を確保するためにインピンジャーをはじめとする各部材を清浄に保つ必要があるので、試料ガスを採取する前の洗浄操作等の準備操作が非常に煩雑になる。また、試料ガス中に含まれるガス状態のダイオキシン類を第二捕捉器で捕捉する際には、第二捕捉器をドライアイス等の冷却材を用いて冷却する必要があり、試料の採取操作そのものも非常に煩雑になる。さらに、試料ガスの採取後においては、第一捕捉器および第二捕捉器により捕捉されたダイオキシン類を抽出する必要があるが、ここでは第一捕捉器および構成が複雑な第二捕捉器によりそれぞれ捕捉されたダイオキシン類を個別に抽出する必要があるため、抽出操作そのものが煩雑であって完了までに長時間を要し、また、抽出操作の巧拙により分析結果の信頼性が左右される場合も多い。さらに、この採取装置は、第一捕捉器および第二捕捉器の二種類の捕捉器からなるため必然的に大型化し、しかもガラス器具を多用していることから破損し易いので、試料ガス採取時の取扱いや運搬も困難である。
【0006】
本発明の目的は、流体中に含まれる粒子状態およびガス状態の両方の形態の残留性有機汚染物質を簡単に採取し、しかも、採取した残留性有機汚染物質を容易に抽出できるようにすることにある。
【0007】
本願において、ダイオキシン類の用語は、ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)第2条の規定に倣い、ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDDs)およびポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)に加え、コプラナーポリ塩化ビフェニル(Co−PCBs)を含む意味として用いる。
【0008】
【非特許文献1】1999年9月20日制定の日本工業規格JIS K 0311:1999「排ガス中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法」
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る残留性有機汚染物質の採取用フイルターは、流体中に含まれる残留性有機汚染物質を採取するためのものであり、繊維材料と、当該繊維材料同士を結合するための無機系結合材とを含みかつ流体通過性を有する、一端に開口部を有しかつ他端が閉鎖された円筒状の成形体と、開口側が成形体の開口部側に位置するよう、成形体の外側に重ねて配置された円筒ろ紙とを備えている。
【0010】
この採取用フイルターにおいて、成形体は、通常、嵩密度が0.1〜1g/cm3であり、また、円筒ろ紙は、通常、0.3μm径のフタル酸ジオクチル粒子の捕集率が99%以上である。
【0011】
この採取用フイルターにおいて、成形体の開口部内に残留性有機汚染物質を含む流体を供給すると、この流体は、成形体および円筒ろ紙をこの順に通過する。ここで、流体中に含まれる粒子状態およびガス状態の両方の形態の残留性有機汚染物質並びに煤塵や飛灰等の粒子状物の一部は、成形体に含まれる繊維材料および無機系結合材により捕捉される。また、成形体を通過した粒子状物は、円筒ろ紙により捕捉される。この結果、流体に含まれる残留性有機汚染物質は、実質的に流体から取り除かれ、フイルターにより採取されることになる。採取された残留性有機汚染物質は、採取用フイルターに対して各種の抽出操作を適用すると抽出される。
【0012】
本発明に係る残留性有機汚染物質の採取器は、輸送管内を流れる流体中に含まれる残留性有機汚染物質を採取するためのものであり、輸送管からの流体を通過させるためのフイルターと、フイルターを収容しかつフイルターを通過した流体を外部へ排出するための排出口を有する容器とを備えている。フイルターは、繊維材料と、当該繊維材料同士を結合するための無機系結合材とを含みかつ流体通過性を有する、一端に輸送管が着脱可能に挿入された開口部を有しかつ他端が閉鎖された円筒状の成形体と、開口側が成形体の開口部側に位置するよう、成形体の外側に重ねて配置された円筒ろ紙とを備えている。
【0013】
この採取器において、輸送管からの流体は、成形体の開口部からフイルター内へ流入する。フイルター内へ流入した流体は、成形体および円筒ろ紙をこの順に通過し、排出口から外部へ排出される。ここで、流体中に含まれる粒子状態およびガス状態の両方の形態の残留性有機汚染物質並びに煤塵や飛灰等の粒子状物の一部は、成形体に含まれる繊維材料および無機系結合材により捕捉される。また、成形体を通過した粒子状物は、円筒ろ紙により捕捉される。この結果、流体に含まれる残留性有機汚染物質は、実質的に流体から取り除かれ、フイルターにより採取されることになる。ここで、フイルターは、容器内に収容されているため、環境中の残留性有機汚染物質による汚染が防止される。採取された残留性有機汚染物質は、フイルターに対して各種の抽出操作を適用すると抽出される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る残留性有機汚染物質の採取用フイルターは、上述のような成形体と円筒ろ紙とを重ねて一体化したものであるため、流体中に含まれる粒子状態およびガス状態の両方の形態の残留性有機汚染物質を簡単に採取することができ、しかも、採取した残留性有機汚染物質を容易に抽出することができる。
【0015】
本発明に係る残留性有機汚染物質の採取器は、容器内に本発明に係るフイルターを収容したものであるため、輸送管内を流れる流体中に含まれる粒子状態およびガス状態の両方の形態の残留性有機汚染物質を簡単にかつ環境中の残留性有機汚染物質による汚染を受けずに採取することができ、しかも、採取した残留性有機汚染物質を容易に抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に、本発明に係る残留性有機汚染物質の採取器の一形態が採用された残留性有機汚染物質採取装置の概略構成を示す。この採取装置1は、流体のうち、排気ガスなどの試料流体(試料ガス)に含まれる残留性有機汚染物質を採取するためのものである。図において、採取装置1は、採取管2、採取器3(本発明に係る採取器の実施の一形態)および吸引器4を主に備えている。
【0017】
採取管2は、例えば、ほうけい酸ガラス製または透明石英ガラス製のものであり、その内部を通過する試料ガスを冷却するための第一冷却器5を有している。
【0018】
図2、図3(図2の縦断面図)および図4(図2のIV−IV断面図)を参照して、採取器3の詳細を説明する。図において、採取器3は、ホルダー(容器の一例)6、ホルダー6内に配置された、試料ガス中に含まれる残留性有機汚染物質を捕捉して採取するための採取用フイルター7(本発明に係る残留性有機汚染物質の採取用フイルターの実施の一形態)、採取管2を経由して輸送される試料ガスを採取用フイルター7内へ導入するための導入管8(輸送管の一例)および導入管8をホルダー6に対して装着するための装着体9を主に備えている。
【0019】
ホルダー6は、透明なガラスからなる概ね円筒状の容器であり、採取用フイルター7を収容可能な本体部10と、装着体9を装着するための装着部11と、試料ガスを排出するための排出部12とを主に有している。
装着部11は、本体部10の端部に一体に設けられており、直径が本体部10に比べて縮小されている。この装着部11は、外周面に螺旋溝11aが形成されており、また、端部に開口部11bを有している。
【0020】
排出部12は、本体部10の他方の端部に一体に設けられており、試料ガスを外部へ排出するための排出路12a(排出口の一例)と分岐路12bとを有している。分岐路12bは、排出部12内を通過する試料ガスの温度を測定するための温度計や熱電対などの測温器27(図1)を排出部12内へ挿入するためのものである。
【0021】
採取用フイルター7は、一端が閉鎖されかつ他端に試料ガスを導入するための開口部71を有する円筒状の成形体70と、開口側が開口部71側に位置するよう、成形体70の外側に重ねて配置された円筒ろ紙75とを備えた円筒状に形成されており、開口部71側が装着体9により支持されつつ、閉鎖端側が開口部11bからホルダー6の本体部10内に挿入されている。採取用フイルター7の詳細についてはさらに後述する。
【0022】
導入管8は、ホルダー6と同じくガラスからなる管状の部材であり、採取用フイルター7の開口部71に対して着脱可能である。すなわち、この導入管8は、一端に採取管2の端部を連結するための連結部13を有しており、また、他端が装着体9を貫通して採取用フイルター7の開口部71内に着脱可能に挿入されている。
【0023】
装着体9は、採取用フイルター7をホルダー6内で支持するための第一支持体14と、導入管8を第一支持体14に対して装着するための第二支持体15とを有している。第一支持体14は、樹脂製または金属製の部材であり、採取用フイルター7の開口部71側端部を支持するための穴部14aを有している。穴部14aの内周面には、螺旋溝14bが形成されている。第一支持体14は、その螺旋溝14bにより、ホルダー6の装着部11側の螺旋溝11aに螺旋止めされている。また、第一支持体14は、図3の左方向へ突出する突出部16を有している。突出部16は、導入管8の先端部を挿入可能な貫通孔16aを有しており、また、外周面に螺旋溝16bが形成されている。
【0024】
一方、第二支持体15は、第一支持体14と同じく樹脂製または金属製の部材であって、内周面に螺旋溝15aが形成された蓋状に形成されており、導入管8を挿入するための貫通孔15bを有している。この第二支持体15は、貫通孔15bに導入管8が挿入された状態で、螺旋溝15aにより第一支持体14の突出部16の螺旋溝16bに螺旋止めされている。
【0025】
このような採取器3に装着された採取用フイルター7は、ホルダー6から取り外すことができる。この場合は、装着体9の第二支持体15を第一支持体14から取り外し、導入管8を採取用フイルター7から抜き取る。そして、第一支持体14をホルダー6から取り外すと、採取用フイルター7は第一支持体14により支持されつつホルダー6から取り出される。
【0026】
吸引器4は、排気流路20と吸引装置21とを備えている。排気流路20は、一端が管状ジョイント22を用いて採取器3の排出路12aに連結されており、また、採取器3側から順に第二冷却器23とトラップ24とをこの順に有している。吸引装置21は、排気流路20の他端に取付けられており、吸引ポンプ21aとガスメーター21bとをこの順に有している。吸引ポンプ21aは、流量調節機能を有し、24時間以上連続的に使用できるものである。また、ガスメーター21bは、試料ガスの流量を測定するためのものであり、10〜40リットル/分の範囲を0.1リットル/分まで測定できるものである。
【0027】
次に、上述の採取器3において用いられる採取用フイルター7の詳細について説明する。採取用フイルター7は、既述のような成形体70と、円筒ろ紙75とを備えている。
【0028】
成形体70は、流体通過性(この実施の形態では通気性)を有する、三次元網目構造のものであり、繊維材料(繊維材料の群)と無機系結合材とを含んでいる。ここで用いられる繊維材料は、ダイオキシン類およびその前駆体のような各種の残留性有機汚染物質と実質的に化学反応しないものであり、例えば、ガラス繊維、アルミナ繊維(特に、活性アルミナ繊維)およびシリカ繊維などである。これらの繊維材料は、それぞれ単独で用いられてもよいし、二種以上のものが併用されてもよい。なお、繊維材料の繊維径および比表面積は、特に限定されるものではない。
【0029】
但し、この繊維材料の平均アスペクト比(長さ/直径)は、10,000以下、特に、1,000〜10,000が好ましい。繊維材料の平均アスペクト比が10,000を超える場合は、試料流体(試料ガス)の採取中に圧損が増大し、上述のJIS規格(JIS K 0311:1999)で規定されている等速吸引ができなくなる等のおそれがある。
【0030】
一方、この成形体70に含まれる無機系結合材は、繊維材料同士を結合して繊維材料からなる群を一体化し、繊維材料からなる群に一定の成形形状を付与する性質を有するもの、すなわち、繊維材料からなる群を一定の成形形状に保持するバインダーとして機能するものである。この実施の形態においてより具体的には、繊維材料からなる群を、所定の成形体形状、すなわち一端が閉鎖された円筒状に設定するためのものである。
【0031】
ここで利用可能な無機系結合材は、上述の性能を有し、しかも繊維材料と同様に残留性有機汚染物質と実質的に化学反応しないものであれば特に限定されるものではないが、吸着性能、特に残留性有機汚染物質に対する吸着性能を有するものが好ましい。このような吸着性能を有する無機系結合材としては、例えば、アルミナ(特に、活性アルミナ)、ゼオライト、二酸化ケイ素(シリカ)、酸性白土およびアパタイトなどを挙げることができる。これらの無機系結合材は、それぞれ単独で用いられてもよいし、二種以上のものが併用されてもよい。また、無機系結合材は、形態が特に限定されるものではないが、通常は粒子状のものが用いられる。
【0032】
ここで、ゼオライトは、一般式XmYnO2n・sH2Oで示される含水アルミノケイ酸塩であり、一般式中、XはNa、CaまたはK等を、YはSi+Alをそれぞれ示しており、また、sは不定である。このようなゼオライトとしては、合成ゼオライトを用いるのが好ましい。
【0033】
上述のような無機系結合材のうち、この実施の形態では、タールの吸着性を有するものを用いるのが特に好ましい。このような特徴を有する無機系結合材を用いた場合、採取用フイルター7は、例えば試料ガス中に含まれる一酸化炭素に由来して生成するタール(詳細は後述)を効果的に吸着することができ、そのようなタール中に溶け込んだダイオキシン類等の各種の残留性有機汚染物質をもより確実に捕捉して採取することができる。タールを吸着可能な無機系結合材としては、アルミナ、ゼオライトおよび二酸化ケイ素を例示することができる。アルミナとしては、活性アルミナを用いるのが特に好ましい。これらのタールを吸着可能な無機系結合材は、それぞれ単独で用いられてもよいし、二種以上のものが併用されてもよい。
【0034】
成形体70は、嵩密度が0.1〜1g/cm3に設定されているのが好ましく、0.3〜0.7g/cm3に設定されているのがより好ましい。成形体70の嵩密度が0.1g/cm3未満の場合は、試料ガス中に含まれる残留性有機汚染物質の一部が採取用フイルター7を通過してしまう場合があり、試料ガス中に含まれる残留性有機汚染物質を実質的に漏れなく採取するのが困難になる場合がある。逆に、嵩密度が1g/cm3を超える場合は、採取用フイルター7において、試料ガス中に含まれる粒子状物を捕捉した際に圧損が高まるおそれがあり、その結果、試料ガスが通過しにくくなって上述のJIS規格(JIS K 0311:1999)で規定されている等速吸引ができなくなる可能性がある。また、採取用フイルター7により採取された残留性有機汚染物質を抽出するための後述の抽出操作において、抽出率の低下を招くおそれがある。
【0035】
成形体70は、その大きさが特に限定されるものではないが、通常は長さ50〜150mm、開口部71側の端部の外径12〜35mm、閉鎖端側の外径10〜30mm、厚さ1〜10mmに設定されているのが好ましく、また、閉鎖端側の外径が開口部71側の端部の外径よりも小さく設定されたテーパー形状に形成されているのが好ましい。
【0036】
上述の成形体70は、疎水性材料を保持しているものが好ましい。ここで用いられる疎水性材料は、残留性有機汚染物質と実質的に化学反応しないものであり、しかも、上述の繊維材料および無機系結合材よりも疎水性の高いものであれば特に限定されるものではないが、吸着性能、特に残留性有機汚染物質に対する吸着性能を有するものが好ましい。このような吸着性能を有する疎水性材料としては、例えば、活性炭、グラファイトおよびスチレン−ジビニルベンゼン共重合体(例えば、米国のシグマ−アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Corporation)の商品名“XAD−2”)からなる群から選択された少なくとも一種のものが好ましい。また、疎水性材料として、アルキルシリル基を有する材料、例えば、炭素数が8〜18個のアルキルシリル基を有する材料を用いることもできる。さらに、疎水性材料は、形態が特に限定されるものではないが、通常は粉末状や粒子状のものが好ましい。
【0037】
上述の疎水性材料は、通常、上述の成形体70(以下、「成形体本体」という場合がある)の0.01〜10.0重量%、好ましくは0.05〜5.0重量%保持されているのが好ましい。疎水性材料の量が0.01重量%未満の場合は、試料ガス中の水分量が高い場合において、採取用フイルター7を用いて当該試料ガス中に含まれる残留性有機汚染物質を実質的に漏れなく採取するのが困難になる可能性がある。逆に、疎水性材料の量が10.0重量%を超える場合は、採取用フイルター7において、試料ガス中に含まれる粒子状物を捕捉した際に圧損が高まるおそれがあり、その結果、試料ガスが通過しにくくなって上述のJIS規格(JIS K 0311:1999)で規定されている等速吸引ができなくなる可能性がある。また、採取用フイルター7により採取された残留性有機汚染物質を抽出するための後述する抽出操作において、抽出が困難になり、抽出率の低下を招くおそれがある。
【0038】
因みに、成形体70として好ましいものは、繊維材料として活性アルミナ繊維を用い、また、無機系結合材として粒子状の活性アルミナを用いた成形体本体に対し、疎水性材料として粉末状活性炭を保持させたものである。特に、成形物本体として、嵩密度が0.3〜0.7g/cm3の範囲のものを用いたものが最も好ましい。
【0039】
成形体70は、通常、次のような工程により製造することができる。先ず、上述の繊維材料と無機系結合材とを含む成形材料を調製する。ここでは、無機系結合材を水中に分散した分散液を調製し、この分散液中に繊維材料を加えて無機系結合材と繊維材料とを均一に混合する。この際、繊維材料と無機系結合材との混合割合は、目的とする成形体の嵩密度が上述の範囲になるよう適宜調整するのが好ましい。
【0040】
次に、得られた成形材料を所定の形状、すなわち、一端が閉鎖された円筒状に成形し、成形物を得る。ここでの成形方法としては、周知の各種の成形方法、例えば湿式金型成形法などを採用することができる。そして、得られた成形物を熱処理して焼結すると、目的とする成形体70が得られる。焼結時の温度は、特に限定されるものではないが、繊維材料および無機系結合材の一方または両方としてアルミナを用いる場合は、当該アルミナを活性化して活性アルミナ化することができる温度範囲、具体的には150〜700℃に設定するのが好ましい。
【0041】
上述のようにして製造される成形体70は、さらに、無機系結合材を水中に分散した水系分散液中に浸漬し、その後乾燥処理されてもよい。成形体70に対してこのような処理を施すと、成形体70中に無機系結合材が含浸され、無機系結合材をより多く含む成形体70を製造することができる。また、このような処理により、成形体70の嵩密度を上述の好ましい範囲に調整することもできる。このような成形体70は、結果的に無機系結合材を多く含むことになるため、無機系結合材として上述のタール吸着能を有するものを用いた場合、試料ガス中に後述する未燃分の炭化水素類や一酸化炭素が多く含まれる場合であっても、試料ガス中に含まれる残留性有機汚染物質をより効果的に漏れなく捕捉することができる。成形体70の乾燥方法は、特に限定されるものではないが、通常は、成形体70を150〜700℃程度で加熱処理して水分を除去する方法を採用するのが好ましい。
【0042】
疎水性材料を保持した成形体70は、上述の工程により得られる成形体本体に対して疎水性材料を保持させると製造することができる。疎水性材料を保持させるための方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上述のホルダー6を用いて疎水性材料を保持させる方法がある。この方法では、上述の工程で得られた成形体本体を採取用フイルター7の代わりにホルダー6内に装填すると共に分岐路12bを閉鎖し、排出路12a側に吸引ポンプなどの吸引装置(図示せず)を接続する。そして、吸引装置を作動させてホルダー6内を吸引し、同時に導入管8内へ疎水性材料を供給する。これにより、導入管8内に供給された疎水性材料は、成形体本体方向へ吸引され、成形体本体の主として内周面側から厚さ方向に保持される。この際、導入管8から供給する疎水性材料の量は、成形体本体に対する割合が上述の範囲になるよう設定するのが好ましい。
【0043】
因みに、上述のような成形体70およびそれによる流体中のダイオキシン類の採取効果は、WO01/91883およびWO2004/010110に記載されている。
【0044】
円筒ろ紙75は、JIS K 0901に規定されたものが好ましく、特に、シリカ繊維製のものが好ましい。また、円筒ろ紙75は、試料ガス中に含まれる、成形体70による捕捉が困難な粒子状物を実質的に漏れなく捕捉可能なもの、特に、0.3μm径のフタル酸ジオクチル粒子の捕集率が99%以上のものが好ましい。ここで、「0.3μm径のフタル酸ジオクチル粒子の捕集率が99%以上」の意義は、JIS K 0901に規定されている。
【0045】
円筒ろ紙75の大きさは、成形体70を内部に挿入可能なものであれば特に限定されるものではないが、通常、成形体70との間に大きな隙間の生じないものが好ましい。
【0046】
成形体70と円筒ろ紙75とを備えた採取用フイルター7は、通常、円筒ろ紙75内に成形体70を挿入すると得られる。また、成形体70を中心とし、成形体70の外側で円筒ろ紙75を成形するような手法によっても採取用フイルター7を製造することができる。
【0047】
なお、採取用フイルター7としては、成形体70の内側に円筒ろ紙75を重ねて配置した形態のものも考えられるが、そのような形態のものは、後述する抽出操作、特に塩酸処理時において、外側に位置する成形体70から繊維材料や疎水性材料の一部が脱落する可能性があり、採取した残留性有機汚染物質の全量を精密に抽出するのが困難になる可能性がある。
【0048】
次に、上述の採取装置1の使用方法、すなわち、上述の採取装置1を用いた残留性有機汚染物質の採取方法について説明する。ここでは、廃棄物を焼却処理するための焼却施設の空間内、例えば煙道内を流れる排気ガスから試料ガスを採取し、その試料ガス中に含まれるダイオキシン類などの各種の残留性有機汚染物質を採取する場合について説明する。この場合、図1に示すように、採取装置1の採取管2の先端部を煙道25に設けられた試料採取口25aから煙道25内へ挿入する。この際、採取管2にパッキン26を装着し、採取管2と試料採取口25aとの隙間を気密に封止する。また、採取器3の分岐路12b内に温度計や熱電対などの測温器27を装着する。
【0049】
この状態で吸引ポンプ21aを作動させ、煙道25内を流れる排気ガスの一部を試料ガスとして採取管2内へ等速吸引する。この際、JIS Z 8808に準じて煙道25内を流れる排気ガスの温度、流速、圧力、水分量などを測定して等速吸引量を計算し、その計算結果に基づいて吸引ポンプ21aによる吸引流量を調整する。ここで設定した流量は、その結果をガスメーター21bにより適宜監視し、等速吸引状態が継続されるように適宜調節するのが好ましい。
【0050】
採取管2内へ流れ込んだ試料ガスは、第一冷却器5により冷却され、通常、ダイオキシン類の生成温度以下、例えば120℃以下の温度に冷却される。これにより、採取管2内では、ダイオキシン類の新たな発生が防止される。
【0051】
冷却された試料ガスは、採取管2から採取器3の導入管8を経由し、開口部71から採取用フイルター7内へ流入する。採取用フイルター7内へ流入した試料ガスは、図3に矢印で示すように、成形体70および円筒ろ紙75をこの順に通過してホルダー6の本体部10内へ流出し、さらに排出路12aを経由して吸引器4へ向けて流れる。この際、試料ガス中に含まれる、各種の煤塵や飛灰等の粒子状物、並びに粒子状態およびガス状態の両形態の、ダイオキシン類等の各種の残留性有機汚染物質は、成形体70および円筒ろ紙75により捕捉され、試料ガス中から取り除かれる。より詳細には、試料ガス中に含まれる粒子状態およびガス状態の両形態の残留性有機汚染物質は、主に成形体70により捕捉され、また、成形体70を通過した試料ガス中に残留している煤塵や飛灰等の粒子状物は、円筒ろ紙75により捕捉される。すなわち、試料ガス中の残留性有機汚染物質は、煤塵や飛灰等の粒子状物と共に、採取用フイルター7により試料ガス中から採取される。
【0052】
因みに、採取用フイルター7は、通常、成形体70の嵩密度が上述の範囲に設定されているため、円筒ろ紙75よりも目が粗い。このため、試料ガス中に含まれる比較的小さな粒子状物は、通常、成形体70を通過し、円筒ろ紙75により捕捉される。このため、採取用フイルター7は、成形体70において粒子状物による目詰まりが生じ難く、試料ガスを円滑に通過させることができる。
【0053】
ところで、試料ガス中に未燃分の炭化水素類や一酸化炭素(CO)等の炭素化合物が多く含まれる場合、試料ガス中には当該炭素化合物に由来するタールが生成し易い。このタールは、ダイオキシン類等の各種の残留性有機汚染物質を溶解して内部に取り込む場合が多い。このため、採取用フイルター7の成形体70として、タール吸着性能を有する無機系結合材を用いていないもの、例えば、上述の繊維材料をセルロース系バインダーなどの有機系バインダーを用いて成形したものを用いた場合、成形体70は試料ガス中で生成したタールを効果的に捕捉することができず、結果的に試料ガス中に含まれるタールの一部が採取用フイルター7を通過して外部に漏出する可能性がある。すなわち、漏出した当該一部のタールと共に、そこに溶解した残留性有機汚染物質が採取用フイルター7により採取されずに外部へ漏出する可能性がある。例えば、未燃分の炭素化合物の多少を判断する指標として、一酸化炭素を用いて判定した場合、特に、試料ガス中に含まれる一酸化炭素濃度が150ppmを超える場合にこのようなタールの通過が顕著に起こり得ることが判明している。
【0054】
これに対し、この実施の形態に係る採取用フイルター7は、成形体70が上述のような繊維材料とタール吸着能を有する無機系結合材とを含む場合、たとえ試料ガス中の未燃分の炭素化合物濃度が高濃度であっても(例えば、試料ガス中の一酸化炭素濃度が150ppmを超えるような場合であっても)、試料ガス中に含まれるタールをも実質的に漏れなく捕捉することができる。つまり、そのような採取用フイルター7は、試料ガス中の未燃分の炭素化合物濃度の高低に拘わらず、試料ガス中に含まれる、粒子状態およびガス状態の両形態のダイオキシン類等の各種の残留性有機汚染物質を実質的に漏れなく捕捉して採取することができる。
【0055】
また、試料ガスは、煙道25内において水の噴霧により急速に冷却された場合、水分量が高まる場合がある。しかし、このような場合であっても、採取用フイルター7は、成形体70が上述のような疎水性材料を含んでいる場合、試料ガス中に含まれる、粒子状態およびガス状態の両形態のダイオキシン類等の各種の残留性有機汚染物質を実質的に漏れなく捕捉して採取することができる。
【0056】
上述のようにして、煤塵や飛灰等の粒子状物並びに粒子状態およびガス状態の各種の残留性有機汚染物質が採取用フイルター7により実質的に漏れなく取り除かれた試料ガスは、続けて排出路12aから吸引器4へ向けて流れる。この際、排出路12aを流れる試料ガス温度は、分岐路12bに装着された測温器27により測定され、管理される。
【0057】
排出路12aから排出された試料ガスは、排気流路20内へ流れ込み、その第二冷却器23によりさらに冷却される。これにより、試料ガス中に含まれる水分が凝縮し、トラップ24内に貯留される。このようにして水分が取り除かれた試料ガスは、吸引ポンプ21aを経由してガスメーター21bから外部へ排出される。このような採取装置1による試料ガス、すなわち排気ガスの採取は、通常、残留性有機汚染物質の検出限界値から想定される排気ガス量に相当する時間(通常、排気ガス1〜3Nm3/3〜4時間)実施される。
【0058】
このようにして採取された試料ガス(排気ガス)中に含まれる残留性有機汚染物質濃度を分析する場合は、煙道25から採取装置1を取り外し、また、採取装置1から採取器3を分離する。さらに、分離された採取器3から、採取用フイルター7を取り出す。
【0059】
次に、採取管2、導入管8およびホルダー6内を溶媒を用いて洗浄し、その際の洗浄液を確保する。また、採取器3の採取用フイルター7により捕捉された残留性有機汚染物質をトルエン等の炭化水素溶媒で抽出する。ここで、採取用フイルター7に捕捉された残留性有機汚染物質の抽出操作は、JIS K 0311:1999に規定された抽出方法に従って実施することができる。
【0060】
具体的には、先ず、同JISに規定された円筒ろ紙に対する塩酸処理を採取用フイルター7に対して実施する。そして、その際の塩酸処理液をガラス繊維ろ紙を用いてろ過処理し、ろ過後のガラス繊維ろ紙とろ過液とを確保する。
【0061】
次に、塩酸処理後の採取用フイルター7とガラス繊維ろ紙とに対し、トルエンのような炭化水素溶媒を用いてソックスレー抽出を実施する。採取用フイルター7に対するソックスレー抽出は、通常のソックスレー抽出器を用いて実施することができるが、この採取用フイルター7は、成形体70が上述のような小型サイズに設定されている場合は高速抽出器のセル内に収容することができるため、当該高速抽出器を用いて速やかに抽出操作を実施することができる。また、当該採取用フイルター7は、それを構成する成形体70の嵩密度が上述の範囲に設定されており、また、疎水性材料の含有量が上述の範囲に設定されている場合、抽出時間を短縮するための特殊な抽出条件を設定する必要がなく、捕捉した残留性有機汚染物質を短時間で速やかに溶媒中に溶出させることができる。さらに、このような抽出操作は、円筒ろ紙に対するソックスレー抽出やインピンジャーの洗浄が必要なJIS K 0311:1999に記載の採取装置を用いた場合に比べ、抽出用の溶媒量を大幅に削減することができる。
【0062】
一方、塩酸処理液のろ過液に対し、ジクロロメタンなどの溶媒を用いた液−液抽出を実施し、その溶媒層を上述の洗浄液およびソックスレー抽出液と合わせる。これにより、残留性有機汚染物質の分析用試料が得られる。
【0063】
得られた分析用試料を適宜濃縮し、これを各種の方法により分析すると、採取された残留性有機汚染物質の定性的および定量的な分析結果が得られる。ここで、残留性有機汚染物質が主にダイオキシン類である場合は、JIS K 0311:1999に規定された方法に従い、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS法)により分析用試料を分析するのが好ましい。
【0064】
採取装置1を用いて別の試料ガスを採取する場合は、例えば、採取器3を新たなものに交換する。この場合、採取装置1は、採取管2のみを十分に洗浄するだけで次の試料ガス採取用に供することができるので、試料ガス採取前の準備作業が従来のインピンジャーを用いたものに比べて格段に軽減され、試料ガス採取に要する時間を大幅に短縮することができ、また、試料ガス採取に要するコストを大幅に低減することができる。また、この採取装置1、特に採取器3は、従来の複雑な採取装置に比べて構成が簡素であるため、取扱いや持ち運びが容易である。このため、この採取装置1を用いれば、従来のインピンジャーを用いた大型の採取装置が設置しにくい煙道等に対しても、容易に試料ガスの採取作業を実施することができる。
【0065】
一度使用された採取器3は、ホルダー6と導入管8とを十分に洗浄し、採取用フイルター7を新たなものに取り替えると、繰り返して再利用することができる。
【0066】
このように、本実施の形態に係る採取器3は、JIS K 0311:1999に規定された複雑な採取装置に比べて格段にコンパクトであり、試料ガスからの残留性有機汚染物質の採取を容易に実施することができる。また、この採取器3により採取された残留性有機汚染物質は、基本的に、採取用フイルター7に対して塩酸処理およびソックスレー抽出を実施することができるため、JIS K 0311:1999に規定された採取装置により採取された残留性有機汚染物質を抽出する場合に比べ、抽出操作を大幅に簡素化することもできる。
【0067】
上述の実施の形態では、廃棄物の焼却炉から排出される排気ガス(試料ガス)中に含まれるダイオキシン類などの残留性有機汚染物質を採取する場合について説明したが、本発明の採取用フイルターおよび採取器は、排気ガス以外の流体中に含まれる残留性有機汚染物質を採取する場合にも同様に利用することができる。例えば、環境大気中に含まれる残留性有機汚染物質、並びに工場廃水、海水、淡水および水道水等の水中に含まれる残留性有機汚染物質を採取する場合についても本発明の採取用フイルター等を同様に利用することができる。
【0068】
工場廃水等の水中に含まれる残留性有機汚染物質を採取する場合、採取試料は液体試料となる。この場合、当該液体試料は、粒子状態、気泡状態(すなわち気液混合状態)および溶解状態(すなわち液中に溶解した状態)の様々な状態の各種の残留性有機汚染物質を含む可能性があるが、本発明の採取用フイルターは、このような様々な状態の各種の残留性有機汚染物質を同時に捕捉して液体試料中から採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の一形態に係る採取器が採用された残留性有機汚染物質の採取装置の概略構成図。
【図2】前記採取器の正面図。
【図3】前記採取器の縦断面図。
【図4】図2のIV−IV断面図。
【符号の説明】
【0070】
3 採取器
6 ホルダー
7 採取用フイルター
8 導入管
12a 排出路
70 成形体
71 開口部
75 円筒ろ紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に含まれる残留性有機汚染物質を採取するためのフイルターであって、
繊維材料と、前記繊維材料同士を結合するための無機系結合材とを含みかつ流体通過性を有する、一端に開口部を有しかつ他端が閉鎖された円筒状の成形体と、
開口側が前記開口部側に位置するよう、前記成形体の外側に重ねて配置された円筒ろ紙と、
を備えた残留性有機汚染物質の採取用フイルター。
【請求項2】
前記成形体は、嵩密度が0.1〜1g/cm3であり、前記円筒ろ紙は、0.3μm径のフタル酸ジオクチル粒子の捕集率が99%以上である、請求項1に記載の残留性有機汚染物質の採取用フイルター。
【請求項3】
輸送管内を流れる流体中に含まれる残留性有機汚染物質を採取するための採取器であって、
前記輸送管からの前記流体を通過させるためのフイルターと、
前記フイルターを収容しかつ前記フイルターを通過した前記流体を外部へ排出するための排出口を有する容器とを備え、
前記フイルターは、繊維材料と、前記繊維材料同士を結合するための無機系結合材とを含みかつ流体通過性を有する、一端に前記輸送管が着脱可能に挿入された開口部を有しかつ他端が閉鎖された円筒状の成形体と、開口側が前記開口部側に位置するよう、前記成形体の外側に重ねて配置された円筒ろ紙とを備えている、
残留性有機汚染物質の採取器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−275824(P2006−275824A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96497(P2005−96497)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】