残留農薬測定方法および装置
【課題】簡易な構成で農薬の大半に対して高感度に検出できるようにする。
【解決手段】農薬に助剤として使用されている界面活性剤が異なる濃度で溶けている複数のサンプル液に、脂質と可塑剤と高分子剤とを所定割合で混合して形成した脂質膜センサを浸漬して、その膜電位を測定し(S1〜S7)、その測定結果に基づいて、脂質膜センサの応答に対して界面活性剤を助剤とする農薬の濃度を推定するための推定式を求める(S8、S9)。そして、被検査体の表面の付着物を溶け込ました検査対象液に対して、脂質膜センサを浸漬して、その膜電位を測定し、その検査対象液に対して得られた脂質膜センサの応答と前記推定式から被検査体の残留農薬の濃度を推定する。
【解決手段】農薬に助剤として使用されている界面活性剤が異なる濃度で溶けている複数のサンプル液に、脂質と可塑剤と高分子剤とを所定割合で混合して形成した脂質膜センサを浸漬して、その膜電位を測定し(S1〜S7)、その測定結果に基づいて、脂質膜センサの応答に対して界面活性剤を助剤とする農薬の濃度を推定するための推定式を求める(S8、S9)。そして、被検査体の表面の付着物を溶け込ました検査対象液に対して、脂質膜センサを浸漬して、その膜電位を測定し、その検査対象液に対して得られた脂質膜センサの応答と前記推定式から被検査体の残留農薬の濃度を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物に付着している残留農薬を高感度に検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農産物の残留農薬への関心が高まってきている。特に、平成18年5月29日から改正食品衛生法が施行され、全ての食品に残留農薬基準値が設定され、残留農薬基準値がない農薬については一律0.01ppmの基準値が設定されることになった。
【0003】
従来、農薬の一般的な分析方法としては、高速クラマトグラフィー質量分析計(HPLC−MS)や、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS)などの分析装置を用いていたが、この装置による分析には熟練と時間が必要であり、多種多量の農産物をまんべんなく検査するには不向きであった。
【0004】
そこで、より簡易的な方法で効率良く残留農薬の有無を検出し、その検査で残留農薬有りと判定されたものに対して上記の分析装置による詳細な分析を行うことが望ましい。
【0005】
簡易的に残留農薬を検出する方法として、従来からコリンエステラーゼ阻害物質の有無を検出する方法、酵素免疫反応を用いた方法等が知られている。
【0006】
しかし、コリンエステラーゼ阻害物質の有無を検出する方法では、コリンエステラーゼ阻害を有する有機リン、塩素系、カーバメイト系の農薬に対して効果はあるが、これらの農薬は現在農薬として登録されている数の約20パーセントであり、しかも検出感度は、0.1〜数ppm程度と低い。
【0007】
また、酵素免疫反応を用いた方法では、検出感度は数ppb〜数10ppbと高いが、検出できる農薬は検査用抗体が開発されているものに限られ、現状では30種類程度の農薬にしか使用できない。
【0008】
また、農薬を対象としたものではないが、農薬と同様に人体に悪影響を与えるシアン化合物等の毒性物質を検出するために、脂質膜センサを用いることも本出願人らにより提案されており(特許文献1)、発明者らは、この技術を用いて農薬検出が可能か否かの実験も試みた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−267878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、後述するように農薬の各種原体に対し、脂質膜センサはほとんど応答しないことが判明し、この事実から脂質膜センサによる農薬検出は困難であると思われていた。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、登録されている農薬の大半に対して高感度に検出できる残留農薬測定方法および装置を提供することを目的としている。
【0012】
なお、本願発明は、上記したように農薬の各種原体に対して脂質膜センサはほとんど応答しないことを逆に利用し、農薬に原体とともに一定の割合で含まれる界面活性剤の脂質膜センサに対する応答から原体の濃度を推定するという発想に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の残留農薬測定方法は、
農薬に助剤として使用されている界面活性剤が異なる濃度で溶けている複数のサンプル液に、脂質と可塑剤と高分子剤とを所定割合で混合して形成した脂質膜センサを浸漬して、その膜電位を測定する段階(S1〜S7)と、
前記測定結果に基づいて、前記脂質膜センサの応答に対して前記界面活性剤を助剤とする農薬の濃度を推定するための推定式を求める段階(S8、S9)と、
被検査体の表面の付着物を溶け込ました検査対象液に対して、前記脂質膜センサを浸漬して、その膜電位を測定する段階(S11〜S15)と、
前記検査対象液に対して得られた前記脂質膜センサの応答と前記推定式から前記被検査体の残留農薬の濃度を推定する段階(S16)とを含んでいる。
【0014】
また、本発明の残留農薬測定装置は、
脂質と可塑剤と高分子剤とを所定割合で混合して形成した脂質膜センサ(25)と、
農薬に助剤として使用されている界面活性剤が異なる濃度で溶けている複数のサンプル液に前記脂質膜センサを浸漬したときの前記脂質膜センサの膜電位に基づいて、前記脂質膜センサの応答に対して前記界面活性剤を助剤とする農薬の濃度を推定するための推定式を求めるとともに、被検査体の表面の付着物を溶け込ました検査対象液に対して前記脂質膜センサが浸漬されたときの応答と前記推定式とから前記被検査体の残留農薬の推定濃度を算出する演算手段(37)とを備えている。
【0015】
また、本発明の請求項3の残留農薬測定装置は、請求項2記載の残留農薬測定装置において、
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤として2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質としてテトラドデシルアンモニウムブロミド(TDAB)が0.1〜0.8mgの範囲で含まれていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項4の残留農薬測定装置は、請求項2記載の残留農薬測定装置において、
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、脂質としてテトラドデシルアンモニウムブロミド(TDAB)0.1mg、可塑剤としてジオクチルフェニルフォスフォネイト(DOPP)が0.75〜1mlgの範囲で含まれていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項5の残留農薬測定装置は、請求項2記載の残留農薬測定装置において、
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤として2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質としてトリドデシルメチルアンモニウムクロリド(TDAC)が0.1〜0.3mgの範囲で含まれていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項6の残留農薬測定装置は、請求項2記載の残留農薬測定装置において、
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤として2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質としてジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)が0.1〜0.4mgの範囲で含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記したように本発明では、農薬に助剤として含まれている界面活性剤の濃度と脂質膜センサの膜電位に基づいて、脂質膜センサの膜電位から残留農薬の濃度を推定するための式を求め、被検査体のサンプル液に対する脂質膜センサの膜電位と推定式から、被検査体の残留農薬の濃度を推定している。
【0020】
これは、本出願人らが、残留農薬の濃度と助剤として含まれている界面活性剤の濃度とがほぼ比例しており、また被検査体に使用されている農薬の種類から、農薬と界面活性剤との割合もほぼ特定でき、さらに、農薬に対する脂質膜センサが、農薬の原体には応答せず、主に界面活性剤に応答している点を見出したことによるものである。
【0021】
したがって、上記のように界面活性剤の濃度に対する脂質膜センサの応答を求め、その関係から得られた推定式を用いることで、残留農薬の濃度を的確に推定することができ、簡易でかつ高感度な検出が可能となった。
【0022】
なお、界面活性剤がアニオン性の場合で、脂質膜センサは、高分子剤ポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質テトラドデシルアンモニウムブロミド(TDAB)が0.1〜0.8mgの範囲で含まれたものが、特に高感度で安定に検出が可能である。
【0023】
また、脂質膜センサとして、脂質TDAB0.1mgのとき、可塑剤DOPPが0.75〜1mlgの範囲で含まれるものも、界面活性剤に対して有効な感度を有していることが確認された。
【0024】
また、脂質膜センサとして、可塑剤NPOE1mlに対して、脂質トリドデシルメチルアンモニウムクロリド(TDAC)が0.1〜0.3mgの範囲で含まれるものも、界面活性剤に対して有効な感度を有していることが確認された。
【0025】
また、脂質膜センサとして、可塑剤NPOE1mlに対して、脂質ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)が0.1〜0.4mgの範囲で含まれるものも、界面活性剤に対して有効な感度を有していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態の構成図
【図2】市販の農薬の組成を示す図
【図3】実施形態の処理手順を示すフローチャート
【図4】原体グリホサートのみのサンブル液に対する応答を示す図
【図5】原体グリホサートとSDSとを含むサンブル液に対する応答を示す図
【図6】原体クロルフェナピルのみのサンブル液に対する応答を示す図
【図7】原体クロルフェナピルとSDSとを含むサンブル液に対する応答を示す図
【図8】原体イマザリルのみのサンブル液に対する応答を示す図
【図9】原体イマザリルとSDSとを含むサンブル液に対する応答を示す図
【図10】界面活性剤SDSに対する脂質膜センサの相対応答値を示す図
【図11】界面活性剤SDSに対する脂質膜センサのCPA応答値を示す図
【図12】界面活性剤SDSの濃度と脂質膜センサの応答特性の一例を示す図
【図13】実施形態の検査処理の手順を示すフローチャート
【図14】可塑剤の含有量を変化させた脂質膜センサの相対応答値を示す図
【図15】別の脂質を用いたときの原体グリホサートのみのサンブル液に対する応答を示す図
【図16】別の脂質を用いたときの原体グリホサートとSDSとを含むサンブル液に対する応答を示す図
【図17】別の脂質を用いたときの原体クロルフェナピルのみのサンブル液に対する応答を示す図
【図18】別の脂質を用いたときの原体クロルフェナピルとSDSとを含むサンブル液に対する応答を示す図
【図19】別の脂質を用いたときの原体イマザリルのみのサンブル液に対する応答を示す図
【図20】別の脂質を用いたときの原体イマザリルとSDSとを含むサンブル液に対する応答を示す図
【図21】別の脂質を用いた脂質膜センサの相対応答値を示す図
【図22】別の脂質を用いた脂質膜センサの相対応答値を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、実施形態の残留農薬測定装置20の構成を示している。
【0028】
図1において、残留農薬測定装置20は、基準液、サンプル液および検査対象液を入れるための容器21と、プローブ22と、プローブ22の電位差を検出する電圧検出器35と、電圧検出器35の出力をディジタル値に変換するA/D変換器36と、A/D変換器36の出力に対する記憶、演算および比較判定などの処理を行う演算装置37と、演算装置37の処理結果を出力する出力装置38によって構成されている。
【0029】
プローブ22は、容器21に入れた液体に漬けて使用するものであり、測定の基準電位を出力するための基準電極23と脂質膜センサ25とを有している。
【0030】
基準電極23の表面は、液体内の脂質に反応しないように、塩化カリウム100m mole/1を寒天で固定した緩衝層24で覆われており、リード線22aが接続されている。
【0031】
また、脂質膜センサ25は、アクリル等の基材26の表面に一面側を露呈させた状態で固定されており、脂質膜センサ25の反対面には、基準電極23の緩衝層24と同等の緩衝層27を介して電極28が設けられ、この電極28にはリード線22bが接続されている。
【0032】
脂質膜センサ25は、無極性で疎水性を有する部分と有極性で親水性を要する部分とを有する脂質が、その親水性部分を表面側に向けた状態で膜をなすように一体化されたものであり、液に漬けたときに膜の電位が液中の成分に応じて変化する。
【0033】
この脂質膜センサ25は、ベースとなる高分子、可塑剤および脂質を所定の割合で混合して作製されたものである。
【0034】
ここでは、高分子としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤としてプラスの電荷を持つ2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1ml、脂質としてテトラドデシルアンモニウムブロミド(TDAB)を所定量混合したものを、THF10ccに溶解し、平底の容器(例えば85mmφのシャーレ)に移し、それを均一な加熱された板上で約30度Cに2時間保って、THFを揮散させることで厚さ約200μmの脂質膜を得ている。なお、脂質TDABの割合については後述するが、農薬の助剤としての界面活性剤に対して応答性を持つような割合に設定している。
【0035】
なお、このプローブ22を液体に漬ける際には、測定条件が変わらないように、基準電極23と脂質膜センサ25の間隔を一定にするが、支持材29によって基準電極23と基材26とを一定の間隔で支持してもよい。
【0036】
このプローブ22のリード線22a、22bは、電圧検出器35に接続されている。
電圧検出器35は、例えば差動増幅器によって構成され、基準電極23の電位と脂質膜センサ25の電位の差(電圧)を検出してA/D変換器36に出力する。
【0037】
A/D変換器36は電圧検出器35の出力電圧をディジタル値に変換して演算装置37に出力する。
【0038】
演算装置37は、マイクロコンピュータによって構成され、図示しない操作部等からの記憶指令を受けるとA/D変換器36の出力値をメモリ37aに記憶し、演算指令を受けるとメモリ37aの記憶値およびA/D変換器36の出力値に基づいて、残留農薬の濃度測定に必要な演算処理を行い、その結果を出力装置(例えば表示器)38に出力する。
【0039】
次に、この残留農薬測定装置20を用いた残留農薬測定方法の原理について説明する。 始めに、現在市販されている農薬の組成を図2に示す。この図から明らかなように、一般的な農薬は、農薬活性を示す有効成分としての原体と、その原体を保持し、施用上のハンドリングに簡便さをもたらす添加剤としての担体と、界面活性剤とで構成されている。
【0040】
この中で、多くの農薬にはアニオン性の界面活性剤が用いられている。そして、種々の実験から、農薬原体の成分は上記したプローブ22を用いた測定では実質的な感度が得られないことが確認された。
【0041】
そこで本願発明者らは、さらに実験を重ね、これらほとんどの農薬に助剤として用いられている界面活性剤に対して前記プローブ22を用いた測定で有効な感度が得られることを見出した。
【0042】
つまり、本測定方法は、農作物の残留農薬の原体の濃度を直接測定するものではなく、農薬に原体とともに含有されている界面活性剤の濃度を測定し、その測定結果から農薬濃度を推定するというものである。
【0043】
以下のその方法について具体的に説明する。
始めに、基準液、洗浄液の他に、アニアン性の界面活性剤として広く用いられているSDS(ソジウム ドデシル スルフェイト Sodium Dodecyl Sulfate)の濃度が、それぞれ10ppb、30ppb、50ppb、100ppbのサンプル液を用意した。
【0044】
また、脂質膜センサが農薬の原体に応答せず、界面活性剤に顕著な応答性を示すことを確認するための測定に用いるサンプルとして、代表的な3種の原体グリホサート、クロルフェナピル、イマザリルを用い、その3種の原体のみのサンプル液およびこれらの各原体とSDSとを含むサンプル液を用意した。
【0045】
ここで基準液は、30mM塩化カリウム+0.3mM酒石酸で、酒石酸0.045gと塩化カリウム2.24gを純水に溶解して全量を1リットルにしたものである。また、プラス膜用の洗浄液は、10mM水酸化カリウム+100mM塩化カリウム+30vol%エタノールの溶液であり、塩化カリウム7.46gを約500mlの純水に溶解し、純度95%以上のエタノール300mlを添加、攪拌し、さらに。1M水酸化カリウム溶液を10ml加え、純水で全量を1リットルにしたものである。その他の洗浄液は基準液と同等である。
【0046】
また、プロープ22に用いる脂質膜センサ25として、脂質TDABの含有量が異なるものを用意して、その応答の違いを確認した。
【0047】
実際の測定は、図3のフローチャートにしたがって行う。
即ち、始めに基準液にプローブ22を浸けて、基準電極23に対する脂質膜センサ25の膜電位V1を測定し、これを記憶する(S1)。
【0048】
次に、プローブ22をサンプル液に浸けて、基準電極23に対する脂質膜センサ25の膜電位V2を測定し、サンプル液についての相対応答値Vaとして(V2−V1)を算出してこれを記憶する(S2)。
【0049】
次に、プローブ22を洗浄液に浸けてセンサ表面を軽く洗浄し(センサ表面への吸着成分は残す)、続いて基準液(最初の基準液と同一組成)に浸けて、基準電極23に対する脂質膜センサ25の膜電位V3を測定し、サンプル液についてのCPA応答値(吸着成分による応答値)Vcpaとして(V3−V1)を算出してこれを記憶する(S3、S4)。
【0050】
最後に、プローブ22を洗浄液に浸けてセンサ表面を洗浄し、その表面に吸着した成分も洗い流す(S5)。
上記処理S1〜S5を、濃度の異なるサンプル液について繰り返す(S6、S7)。
【0051】
このようにして得られた結果のうち、前記農薬の原体のみのサンプル液の応答と、原体とSDSを含むサンプル液の応答を図4〜図9に示す。
【0052】
図4、図6、図8は、3種の原体のみの応答(相対応答値)を示したものであり、原体の濃度およびセンサの脂質の含有量の変化に対してほぼ一定で感度が無いことが判る。
【0053】
一方、図5、図7、図9は、上記3種の原体に同量のSDSを加えたサンプル液の応答(相対応答値)を示したものであり、原体のみの応答と明らかに異なり、SDSの濃度に応じて応答が大きくなっており、その変化の度合いが、センサの脂質の含有量によって異なっていることが判る。
【0054】
上記のことから、上記プローブ22は、農薬の中の原体には応答せず、界面活性剤のSDSに対して顕著な応答性を有し、その応答特性は脂質の含有量によって変化することがわかる。
【0055】
したがって、プローブ22の脂質含有量を適度な値に設定した上で、界面活性剤に対する濃度と応答の関係を予め求めておけば、濃度未知の農薬のについての測定結果からその濃度を推定することができる。
【0056】
次に、SDSのみでその濃度が異なるサンプル液に対する測定結果を、図10、図11に示す。
【0057】
図10は、脂質膜センサ25の脂質TDABの含有量を変えたときの相対応答値Vaの変化を示し、図11はCPA応答値Vcpaの変化を示している。
【0058】
これらの結果から、脂質TDABの含有量が0.01mg〜0.8mgの範囲の脂質膜センサは、界面活性剤SDSのサンプル液に対して、その濃度に対応した出力が得られていることがわかる。
【0059】
ただし、実験を繰り返した結果、脂質TDABの含有量が0.1mgより少ない範囲では再現性が乏しくなる傾向がみられ、アニアン性の界面活性剤SDSに対しては、脂質TDABの含有量が0.1mg〜1mgの範囲で10ppb以上の感度が安定に得られる。特に、脂質TDABの含有量が0.1mgのときは相対応答値もCPA応答値も高感度が得られている。
【0060】
このようにアニアン性の界面活性剤SDSに対して高感度を示す脂質膜センサ25を用いて得られた結果(特性的には相対応答値Vaの方が望ましいので以下の説明では、相対応答値Vaを用いる)から、例えば図12のような、界面活性剤の濃度qと脂質膜センサ25の応答値Vaとの関係が得られる。したがって、例えば脂質TDABの含有量が0.1mgの脂質膜センサ25を用いた測定結果が得られた段階で、演算装置37に対して演算指令を行うことで、上記関係を近似する式(直線式または曲線式)の係数が求められ、記憶される(S8)。
【0061】
そして、実際の被検査体に使用されていると予想される農薬の原体の含有率α(既知とする)と、その農薬の界面活性剤の含有率β(既知とする)と、上記係数とから、農薬(原体)の濃度を推定する式が決定される(S9)。
【0062】
例えば、界面活性剤の濃度qと脂質膜センサ25の応答値Vaとの関係が、直線式
Va=A・q
で表されるとき、被検査体の残留農薬の原体の推定濃度をγとすると、
β/α=q/γ
となるから、その推定濃度γと応答値Vaとの関係は、
Va=A・(β/α)γ
となる。
【0063】
したがって、残留農薬の推定濃度γは、
γ=Va/[A・(β/α)] ……(1)
の演算によって求めることができる。
【0064】
ここで、係数AはSDSサンプル液に対する実験で得られた値で既知、また、(β/α)は、実際の被検査体に使用されていると予想される農薬の原体の含有率αと界面活性剤の含有率βとの比で既知であり、これを演算装置37に手動入力させるか、予め演算装置37の内部のデータベースに農薬毎に登録しておいて、予想される農薬を指定操作させることで、上記推定式の算出が可能となる。
【0065】
このようにして、残留農薬の濃度推定式が得られた後に、図13の検査処理に移行する。この検査処理では、農作物などの被検査体の表面の付着物を溶け込ました検査対象液(被検査体の重量と同一重量の液となるように設定する)を予め用意する。
【0066】
そして、前記同様に、プローブ22を基準液に浸けて、基準電極23に対する脂質膜センサ25の膜電位1を求めて記憶した後、検査対象液にプローブ22を浸けて、相対応答値Vaを求め、軽く洗浄してから基準液に浸けてCPA応答値Vcpaを求め、最後に洗浄液に浸けて洗浄する(S11〜S15)。
【0067】
そして、得られた応答値(この場合相対応答値とする)Vaを、前記推定式(1)に代入して残留農薬の推定濃度γを求める(S16)。
【0068】
そして、求めた濃度γを予め設定されたしきい値Rと比較し、推定濃度γがしきい値Rより大きい場合には、その濃度γとともに不合格(NG)表示を行い、推定濃度γがしきい値R以下の場合には、その濃度γとともに合格(OK)表示を行う(S17〜19)。
【0069】
なお、上記処理では相対応答値とCPA応答値を求めていたが、これまでの実験の結果では、相対応答値Vaのほうが安定した特性を示しているので、上記応答値を相対応答値のみに限定してもよい。
【0070】
また、前記図4〜図11の特性は、高分子PCV800mg、可塑剤NPOE1mlに対して脂質TDABの含有量を可変した脂質膜センサの感度特性であったが、脂質TDABの含有量を0.1mgとし、可塑剤ジオクチルフェニルフォスフォネイト(DOPP)の含有量を可変した脂質膜センサの界面活性剤SDSに対する感度特性を前記同様の手順で測定して、図14の結果が得られている。
【0071】
図14において、可塑剤DOPPの含有量が0.75〜1mlまでの範囲で界面活性剤SDSの濃度に対応した相対応答値Vaが得られていることがわかる。
【0072】
したがって、高分子PCV800mg、脂質TDAB0.1mgに対して、可塑剤DOPPが0.75〜1mlまでの範囲で形成した脂質膜センサも残留農薬の測定に有効である。
【0073】
上記実施例は、プローブ22の脂質としてTDABを用いた例であったが、脂質としてトリドデシルメチルアンモニウムクロリド(TDAC)を用いた場合でも同様の結果を得ることができた。
【0074】
図15〜図20は、脂質TDACを用いた場合の3種の原体のみの各サンプル液および原体とSDSのサンプル液に対する応答(相対応答値)を示すものであり、図15、図17、図19に示しているように、原体のみのサンプル液に対しては感度を持たないことがわかる。
【0075】
これに対し、図16、図18、図20に示しているように、SDSを原体と同量含むサンプル液に対しては前記同様に顕著な応答性が確認でき、脂質TDACを用いたプローブ22においても、前記同様の農薬の濃度推定が可能である。
【0076】
なお、図15〜図20において、実験の都合上、横軸として脂質TDACの含有量をミリモル(mM)の単位で示しているが、他のグラフで示したmg単位とするには、0.01mMを0.057mgに対応させればよい。
【0077】
図21は、高分子PCV800mg、可塑剤NPOE1mlに対して脂質TDACの含有量を可変した脂質膜センサの界面活性剤SDSに対する感度特性を示している。
【0078】
この図21の実験結果から、脂質TDACの含有量が、0.1〜0.3mgの範囲で、界面活性剤SDSの濃度に対応した相対応答値Vaが得られていることがわかる。
【0079】
したがって、高分子PCV800mg、可塑剤NPOE1mlに対して脂質TDACの含有量を0.1〜0.3mgの範囲で形成した脂質膜センサも残留農薬の測定に有効であることがわかる。
【0080】
また、図22は、高分子PCV800mg、可塑剤NPOE1mlに対して脂質ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)の含有量を可変した脂質膜センサの界面活性剤SDSに対する感度特性を示している。
【0081】
この図22の実験結果から、脂質DDABの含有量が、0.1〜0.4mgの範囲で、界面活性剤SDSの濃度に対応した相対応答値Vaが得られていることがわかる。
【0082】
したがって、高分子PCV800mg、可塑剤NPOE1mlに対して脂質DDABの含有量を0.1〜0.4mgの範囲で形成した脂質膜センサも残留農薬の測定に有効であることがわかる。
【0083】
なお、図示しないが、上記脂質DDABを用いた場合でも原体に対する感度が得られないことが確認されている。これらのことから、脂質を用いたセンサが農薬の代表的な原体に対して応答性がなく、界面活性剤に対して顕著な応答性を示すことが十分推定できる。
【符号の説明】
【0084】
20……残留農薬測定装置、21……容器、22……プローブ、23……基準電極、25……脂質膜センサ、35……電圧検出器、36……A/D変換器、37……演算装置、38……出力装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物に付着している残留農薬を高感度に検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農産物の残留農薬への関心が高まってきている。特に、平成18年5月29日から改正食品衛生法が施行され、全ての食品に残留農薬基準値が設定され、残留農薬基準値がない農薬については一律0.01ppmの基準値が設定されることになった。
【0003】
従来、農薬の一般的な分析方法としては、高速クラマトグラフィー質量分析計(HPLC−MS)や、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS)などの分析装置を用いていたが、この装置による分析には熟練と時間が必要であり、多種多量の農産物をまんべんなく検査するには不向きであった。
【0004】
そこで、より簡易的な方法で効率良く残留農薬の有無を検出し、その検査で残留農薬有りと判定されたものに対して上記の分析装置による詳細な分析を行うことが望ましい。
【0005】
簡易的に残留農薬を検出する方法として、従来からコリンエステラーゼ阻害物質の有無を検出する方法、酵素免疫反応を用いた方法等が知られている。
【0006】
しかし、コリンエステラーゼ阻害物質の有無を検出する方法では、コリンエステラーゼ阻害を有する有機リン、塩素系、カーバメイト系の農薬に対して効果はあるが、これらの農薬は現在農薬として登録されている数の約20パーセントであり、しかも検出感度は、0.1〜数ppm程度と低い。
【0007】
また、酵素免疫反応を用いた方法では、検出感度は数ppb〜数10ppbと高いが、検出できる農薬は検査用抗体が開発されているものに限られ、現状では30種類程度の農薬にしか使用できない。
【0008】
また、農薬を対象としたものではないが、農薬と同様に人体に悪影響を与えるシアン化合物等の毒性物質を検出するために、脂質膜センサを用いることも本出願人らにより提案されており(特許文献1)、発明者らは、この技術を用いて農薬検出が可能か否かの実験も試みた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−267878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、後述するように農薬の各種原体に対し、脂質膜センサはほとんど応答しないことが判明し、この事実から脂質膜センサによる農薬検出は困難であると思われていた。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、登録されている農薬の大半に対して高感度に検出できる残留農薬測定方法および装置を提供することを目的としている。
【0012】
なお、本願発明は、上記したように農薬の各種原体に対して脂質膜センサはほとんど応答しないことを逆に利用し、農薬に原体とともに一定の割合で含まれる界面活性剤の脂質膜センサに対する応答から原体の濃度を推定するという発想に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の残留農薬測定方法は、
農薬に助剤として使用されている界面活性剤が異なる濃度で溶けている複数のサンプル液に、脂質と可塑剤と高分子剤とを所定割合で混合して形成した脂質膜センサを浸漬して、その膜電位を測定する段階(S1〜S7)と、
前記測定結果に基づいて、前記脂質膜センサの応答に対して前記界面活性剤を助剤とする農薬の濃度を推定するための推定式を求める段階(S8、S9)と、
被検査体の表面の付着物を溶け込ました検査対象液に対して、前記脂質膜センサを浸漬して、その膜電位を測定する段階(S11〜S15)と、
前記検査対象液に対して得られた前記脂質膜センサの応答と前記推定式から前記被検査体の残留農薬の濃度を推定する段階(S16)とを含んでいる。
【0014】
また、本発明の残留農薬測定装置は、
脂質と可塑剤と高分子剤とを所定割合で混合して形成した脂質膜センサ(25)と、
農薬に助剤として使用されている界面活性剤が異なる濃度で溶けている複数のサンプル液に前記脂質膜センサを浸漬したときの前記脂質膜センサの膜電位に基づいて、前記脂質膜センサの応答に対して前記界面活性剤を助剤とする農薬の濃度を推定するための推定式を求めるとともに、被検査体の表面の付着物を溶け込ました検査対象液に対して前記脂質膜センサが浸漬されたときの応答と前記推定式とから前記被検査体の残留農薬の推定濃度を算出する演算手段(37)とを備えている。
【0015】
また、本発明の請求項3の残留農薬測定装置は、請求項2記載の残留農薬測定装置において、
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤として2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質としてテトラドデシルアンモニウムブロミド(TDAB)が0.1〜0.8mgの範囲で含まれていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項4の残留農薬測定装置は、請求項2記載の残留農薬測定装置において、
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、脂質としてテトラドデシルアンモニウムブロミド(TDAB)0.1mg、可塑剤としてジオクチルフェニルフォスフォネイト(DOPP)が0.75〜1mlgの範囲で含まれていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項5の残留農薬測定装置は、請求項2記載の残留農薬測定装置において、
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤として2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質としてトリドデシルメチルアンモニウムクロリド(TDAC)が0.1〜0.3mgの範囲で含まれていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項6の残留農薬測定装置は、請求項2記載の残留農薬測定装置において、
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤として2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質としてジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)が0.1〜0.4mgの範囲で含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記したように本発明では、農薬に助剤として含まれている界面活性剤の濃度と脂質膜センサの膜電位に基づいて、脂質膜センサの膜電位から残留農薬の濃度を推定するための式を求め、被検査体のサンプル液に対する脂質膜センサの膜電位と推定式から、被検査体の残留農薬の濃度を推定している。
【0020】
これは、本出願人らが、残留農薬の濃度と助剤として含まれている界面活性剤の濃度とがほぼ比例しており、また被検査体に使用されている農薬の種類から、農薬と界面活性剤との割合もほぼ特定でき、さらに、農薬に対する脂質膜センサが、農薬の原体には応答せず、主に界面活性剤に応答している点を見出したことによるものである。
【0021】
したがって、上記のように界面活性剤の濃度に対する脂質膜センサの応答を求め、その関係から得られた推定式を用いることで、残留農薬の濃度を的確に推定することができ、簡易でかつ高感度な検出が可能となった。
【0022】
なお、界面活性剤がアニオン性の場合で、脂質膜センサは、高分子剤ポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質テトラドデシルアンモニウムブロミド(TDAB)が0.1〜0.8mgの範囲で含まれたものが、特に高感度で安定に検出が可能である。
【0023】
また、脂質膜センサとして、脂質TDAB0.1mgのとき、可塑剤DOPPが0.75〜1mlgの範囲で含まれるものも、界面活性剤に対して有効な感度を有していることが確認された。
【0024】
また、脂質膜センサとして、可塑剤NPOE1mlに対して、脂質トリドデシルメチルアンモニウムクロリド(TDAC)が0.1〜0.3mgの範囲で含まれるものも、界面活性剤に対して有効な感度を有していることが確認された。
【0025】
また、脂質膜センサとして、可塑剤NPOE1mlに対して、脂質ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)が0.1〜0.4mgの範囲で含まれるものも、界面活性剤に対して有効な感度を有していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態の構成図
【図2】市販の農薬の組成を示す図
【図3】実施形態の処理手順を示すフローチャート
【図4】原体グリホサートのみのサンブル液に対する応答を示す図
【図5】原体グリホサートとSDSとを含むサンブル液に対する応答を示す図
【図6】原体クロルフェナピルのみのサンブル液に対する応答を示す図
【図7】原体クロルフェナピルとSDSとを含むサンブル液に対する応答を示す図
【図8】原体イマザリルのみのサンブル液に対する応答を示す図
【図9】原体イマザリルとSDSとを含むサンブル液に対する応答を示す図
【図10】界面活性剤SDSに対する脂質膜センサの相対応答値を示す図
【図11】界面活性剤SDSに対する脂質膜センサのCPA応答値を示す図
【図12】界面活性剤SDSの濃度と脂質膜センサの応答特性の一例を示す図
【図13】実施形態の検査処理の手順を示すフローチャート
【図14】可塑剤の含有量を変化させた脂質膜センサの相対応答値を示す図
【図15】別の脂質を用いたときの原体グリホサートのみのサンブル液に対する応答を示す図
【図16】別の脂質を用いたときの原体グリホサートとSDSとを含むサンブル液に対する応答を示す図
【図17】別の脂質を用いたときの原体クロルフェナピルのみのサンブル液に対する応答を示す図
【図18】別の脂質を用いたときの原体クロルフェナピルとSDSとを含むサンブル液に対する応答を示す図
【図19】別の脂質を用いたときの原体イマザリルのみのサンブル液に対する応答を示す図
【図20】別の脂質を用いたときの原体イマザリルとSDSとを含むサンブル液に対する応答を示す図
【図21】別の脂質を用いた脂質膜センサの相対応答値を示す図
【図22】別の脂質を用いた脂質膜センサの相対応答値を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、実施形態の残留農薬測定装置20の構成を示している。
【0028】
図1において、残留農薬測定装置20は、基準液、サンプル液および検査対象液を入れるための容器21と、プローブ22と、プローブ22の電位差を検出する電圧検出器35と、電圧検出器35の出力をディジタル値に変換するA/D変換器36と、A/D変換器36の出力に対する記憶、演算および比較判定などの処理を行う演算装置37と、演算装置37の処理結果を出力する出力装置38によって構成されている。
【0029】
プローブ22は、容器21に入れた液体に漬けて使用するものであり、測定の基準電位を出力するための基準電極23と脂質膜センサ25とを有している。
【0030】
基準電極23の表面は、液体内の脂質に反応しないように、塩化カリウム100m mole/1を寒天で固定した緩衝層24で覆われており、リード線22aが接続されている。
【0031】
また、脂質膜センサ25は、アクリル等の基材26の表面に一面側を露呈させた状態で固定されており、脂質膜センサ25の反対面には、基準電極23の緩衝層24と同等の緩衝層27を介して電極28が設けられ、この電極28にはリード線22bが接続されている。
【0032】
脂質膜センサ25は、無極性で疎水性を有する部分と有極性で親水性を要する部分とを有する脂質が、その親水性部分を表面側に向けた状態で膜をなすように一体化されたものであり、液に漬けたときに膜の電位が液中の成分に応じて変化する。
【0033】
この脂質膜センサ25は、ベースとなる高分子、可塑剤および脂質を所定の割合で混合して作製されたものである。
【0034】
ここでは、高分子としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤としてプラスの電荷を持つ2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1ml、脂質としてテトラドデシルアンモニウムブロミド(TDAB)を所定量混合したものを、THF10ccに溶解し、平底の容器(例えば85mmφのシャーレ)に移し、それを均一な加熱された板上で約30度Cに2時間保って、THFを揮散させることで厚さ約200μmの脂質膜を得ている。なお、脂質TDABの割合については後述するが、農薬の助剤としての界面活性剤に対して応答性を持つような割合に設定している。
【0035】
なお、このプローブ22を液体に漬ける際には、測定条件が変わらないように、基準電極23と脂質膜センサ25の間隔を一定にするが、支持材29によって基準電極23と基材26とを一定の間隔で支持してもよい。
【0036】
このプローブ22のリード線22a、22bは、電圧検出器35に接続されている。
電圧検出器35は、例えば差動増幅器によって構成され、基準電極23の電位と脂質膜センサ25の電位の差(電圧)を検出してA/D変換器36に出力する。
【0037】
A/D変換器36は電圧検出器35の出力電圧をディジタル値に変換して演算装置37に出力する。
【0038】
演算装置37は、マイクロコンピュータによって構成され、図示しない操作部等からの記憶指令を受けるとA/D変換器36の出力値をメモリ37aに記憶し、演算指令を受けるとメモリ37aの記憶値およびA/D変換器36の出力値に基づいて、残留農薬の濃度測定に必要な演算処理を行い、その結果を出力装置(例えば表示器)38に出力する。
【0039】
次に、この残留農薬測定装置20を用いた残留農薬測定方法の原理について説明する。 始めに、現在市販されている農薬の組成を図2に示す。この図から明らかなように、一般的な農薬は、農薬活性を示す有効成分としての原体と、その原体を保持し、施用上のハンドリングに簡便さをもたらす添加剤としての担体と、界面活性剤とで構成されている。
【0040】
この中で、多くの農薬にはアニオン性の界面活性剤が用いられている。そして、種々の実験から、農薬原体の成分は上記したプローブ22を用いた測定では実質的な感度が得られないことが確認された。
【0041】
そこで本願発明者らは、さらに実験を重ね、これらほとんどの農薬に助剤として用いられている界面活性剤に対して前記プローブ22を用いた測定で有効な感度が得られることを見出した。
【0042】
つまり、本測定方法は、農作物の残留農薬の原体の濃度を直接測定するものではなく、農薬に原体とともに含有されている界面活性剤の濃度を測定し、その測定結果から農薬濃度を推定するというものである。
【0043】
以下のその方法について具体的に説明する。
始めに、基準液、洗浄液の他に、アニアン性の界面活性剤として広く用いられているSDS(ソジウム ドデシル スルフェイト Sodium Dodecyl Sulfate)の濃度が、それぞれ10ppb、30ppb、50ppb、100ppbのサンプル液を用意した。
【0044】
また、脂質膜センサが農薬の原体に応答せず、界面活性剤に顕著な応答性を示すことを確認するための測定に用いるサンプルとして、代表的な3種の原体グリホサート、クロルフェナピル、イマザリルを用い、その3種の原体のみのサンプル液およびこれらの各原体とSDSとを含むサンプル液を用意した。
【0045】
ここで基準液は、30mM塩化カリウム+0.3mM酒石酸で、酒石酸0.045gと塩化カリウム2.24gを純水に溶解して全量を1リットルにしたものである。また、プラス膜用の洗浄液は、10mM水酸化カリウム+100mM塩化カリウム+30vol%エタノールの溶液であり、塩化カリウム7.46gを約500mlの純水に溶解し、純度95%以上のエタノール300mlを添加、攪拌し、さらに。1M水酸化カリウム溶液を10ml加え、純水で全量を1リットルにしたものである。その他の洗浄液は基準液と同等である。
【0046】
また、プロープ22に用いる脂質膜センサ25として、脂質TDABの含有量が異なるものを用意して、その応答の違いを確認した。
【0047】
実際の測定は、図3のフローチャートにしたがって行う。
即ち、始めに基準液にプローブ22を浸けて、基準電極23に対する脂質膜センサ25の膜電位V1を測定し、これを記憶する(S1)。
【0048】
次に、プローブ22をサンプル液に浸けて、基準電極23に対する脂質膜センサ25の膜電位V2を測定し、サンプル液についての相対応答値Vaとして(V2−V1)を算出してこれを記憶する(S2)。
【0049】
次に、プローブ22を洗浄液に浸けてセンサ表面を軽く洗浄し(センサ表面への吸着成分は残す)、続いて基準液(最初の基準液と同一組成)に浸けて、基準電極23に対する脂質膜センサ25の膜電位V3を測定し、サンプル液についてのCPA応答値(吸着成分による応答値)Vcpaとして(V3−V1)を算出してこれを記憶する(S3、S4)。
【0050】
最後に、プローブ22を洗浄液に浸けてセンサ表面を洗浄し、その表面に吸着した成分も洗い流す(S5)。
上記処理S1〜S5を、濃度の異なるサンプル液について繰り返す(S6、S7)。
【0051】
このようにして得られた結果のうち、前記農薬の原体のみのサンプル液の応答と、原体とSDSを含むサンプル液の応答を図4〜図9に示す。
【0052】
図4、図6、図8は、3種の原体のみの応答(相対応答値)を示したものであり、原体の濃度およびセンサの脂質の含有量の変化に対してほぼ一定で感度が無いことが判る。
【0053】
一方、図5、図7、図9は、上記3種の原体に同量のSDSを加えたサンプル液の応答(相対応答値)を示したものであり、原体のみの応答と明らかに異なり、SDSの濃度に応じて応答が大きくなっており、その変化の度合いが、センサの脂質の含有量によって異なっていることが判る。
【0054】
上記のことから、上記プローブ22は、農薬の中の原体には応答せず、界面活性剤のSDSに対して顕著な応答性を有し、その応答特性は脂質の含有量によって変化することがわかる。
【0055】
したがって、プローブ22の脂質含有量を適度な値に設定した上で、界面活性剤に対する濃度と応答の関係を予め求めておけば、濃度未知の農薬のについての測定結果からその濃度を推定することができる。
【0056】
次に、SDSのみでその濃度が異なるサンプル液に対する測定結果を、図10、図11に示す。
【0057】
図10は、脂質膜センサ25の脂質TDABの含有量を変えたときの相対応答値Vaの変化を示し、図11はCPA応答値Vcpaの変化を示している。
【0058】
これらの結果から、脂質TDABの含有量が0.01mg〜0.8mgの範囲の脂質膜センサは、界面活性剤SDSのサンプル液に対して、その濃度に対応した出力が得られていることがわかる。
【0059】
ただし、実験を繰り返した結果、脂質TDABの含有量が0.1mgより少ない範囲では再現性が乏しくなる傾向がみられ、アニアン性の界面活性剤SDSに対しては、脂質TDABの含有量が0.1mg〜1mgの範囲で10ppb以上の感度が安定に得られる。特に、脂質TDABの含有量が0.1mgのときは相対応答値もCPA応答値も高感度が得られている。
【0060】
このようにアニアン性の界面活性剤SDSに対して高感度を示す脂質膜センサ25を用いて得られた結果(特性的には相対応答値Vaの方が望ましいので以下の説明では、相対応答値Vaを用いる)から、例えば図12のような、界面活性剤の濃度qと脂質膜センサ25の応答値Vaとの関係が得られる。したがって、例えば脂質TDABの含有量が0.1mgの脂質膜センサ25を用いた測定結果が得られた段階で、演算装置37に対して演算指令を行うことで、上記関係を近似する式(直線式または曲線式)の係数が求められ、記憶される(S8)。
【0061】
そして、実際の被検査体に使用されていると予想される農薬の原体の含有率α(既知とする)と、その農薬の界面活性剤の含有率β(既知とする)と、上記係数とから、農薬(原体)の濃度を推定する式が決定される(S9)。
【0062】
例えば、界面活性剤の濃度qと脂質膜センサ25の応答値Vaとの関係が、直線式
Va=A・q
で表されるとき、被検査体の残留農薬の原体の推定濃度をγとすると、
β/α=q/γ
となるから、その推定濃度γと応答値Vaとの関係は、
Va=A・(β/α)γ
となる。
【0063】
したがって、残留農薬の推定濃度γは、
γ=Va/[A・(β/α)] ……(1)
の演算によって求めることができる。
【0064】
ここで、係数AはSDSサンプル液に対する実験で得られた値で既知、また、(β/α)は、実際の被検査体に使用されていると予想される農薬の原体の含有率αと界面活性剤の含有率βとの比で既知であり、これを演算装置37に手動入力させるか、予め演算装置37の内部のデータベースに農薬毎に登録しておいて、予想される農薬を指定操作させることで、上記推定式の算出が可能となる。
【0065】
このようにして、残留農薬の濃度推定式が得られた後に、図13の検査処理に移行する。この検査処理では、農作物などの被検査体の表面の付着物を溶け込ました検査対象液(被検査体の重量と同一重量の液となるように設定する)を予め用意する。
【0066】
そして、前記同様に、プローブ22を基準液に浸けて、基準電極23に対する脂質膜センサ25の膜電位1を求めて記憶した後、検査対象液にプローブ22を浸けて、相対応答値Vaを求め、軽く洗浄してから基準液に浸けてCPA応答値Vcpaを求め、最後に洗浄液に浸けて洗浄する(S11〜S15)。
【0067】
そして、得られた応答値(この場合相対応答値とする)Vaを、前記推定式(1)に代入して残留農薬の推定濃度γを求める(S16)。
【0068】
そして、求めた濃度γを予め設定されたしきい値Rと比較し、推定濃度γがしきい値Rより大きい場合には、その濃度γとともに不合格(NG)表示を行い、推定濃度γがしきい値R以下の場合には、その濃度γとともに合格(OK)表示を行う(S17〜19)。
【0069】
なお、上記処理では相対応答値とCPA応答値を求めていたが、これまでの実験の結果では、相対応答値Vaのほうが安定した特性を示しているので、上記応答値を相対応答値のみに限定してもよい。
【0070】
また、前記図4〜図11の特性は、高分子PCV800mg、可塑剤NPOE1mlに対して脂質TDABの含有量を可変した脂質膜センサの感度特性であったが、脂質TDABの含有量を0.1mgとし、可塑剤ジオクチルフェニルフォスフォネイト(DOPP)の含有量を可変した脂質膜センサの界面活性剤SDSに対する感度特性を前記同様の手順で測定して、図14の結果が得られている。
【0071】
図14において、可塑剤DOPPの含有量が0.75〜1mlまでの範囲で界面活性剤SDSの濃度に対応した相対応答値Vaが得られていることがわかる。
【0072】
したがって、高分子PCV800mg、脂質TDAB0.1mgに対して、可塑剤DOPPが0.75〜1mlまでの範囲で形成した脂質膜センサも残留農薬の測定に有効である。
【0073】
上記実施例は、プローブ22の脂質としてTDABを用いた例であったが、脂質としてトリドデシルメチルアンモニウムクロリド(TDAC)を用いた場合でも同様の結果を得ることができた。
【0074】
図15〜図20は、脂質TDACを用いた場合の3種の原体のみの各サンプル液および原体とSDSのサンプル液に対する応答(相対応答値)を示すものであり、図15、図17、図19に示しているように、原体のみのサンプル液に対しては感度を持たないことがわかる。
【0075】
これに対し、図16、図18、図20に示しているように、SDSを原体と同量含むサンプル液に対しては前記同様に顕著な応答性が確認でき、脂質TDACを用いたプローブ22においても、前記同様の農薬の濃度推定が可能である。
【0076】
なお、図15〜図20において、実験の都合上、横軸として脂質TDACの含有量をミリモル(mM)の単位で示しているが、他のグラフで示したmg単位とするには、0.01mMを0.057mgに対応させればよい。
【0077】
図21は、高分子PCV800mg、可塑剤NPOE1mlに対して脂質TDACの含有量を可変した脂質膜センサの界面活性剤SDSに対する感度特性を示している。
【0078】
この図21の実験結果から、脂質TDACの含有量が、0.1〜0.3mgの範囲で、界面活性剤SDSの濃度に対応した相対応答値Vaが得られていることがわかる。
【0079】
したがって、高分子PCV800mg、可塑剤NPOE1mlに対して脂質TDACの含有量を0.1〜0.3mgの範囲で形成した脂質膜センサも残留農薬の測定に有効であることがわかる。
【0080】
また、図22は、高分子PCV800mg、可塑剤NPOE1mlに対して脂質ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)の含有量を可変した脂質膜センサの界面活性剤SDSに対する感度特性を示している。
【0081】
この図22の実験結果から、脂質DDABの含有量が、0.1〜0.4mgの範囲で、界面活性剤SDSの濃度に対応した相対応答値Vaが得られていることがわかる。
【0082】
したがって、高分子PCV800mg、可塑剤NPOE1mlに対して脂質DDABの含有量を0.1〜0.4mgの範囲で形成した脂質膜センサも残留農薬の測定に有効であることがわかる。
【0083】
なお、図示しないが、上記脂質DDABを用いた場合でも原体に対する感度が得られないことが確認されている。これらのことから、脂質を用いたセンサが農薬の代表的な原体に対して応答性がなく、界面活性剤に対して顕著な応答性を示すことが十分推定できる。
【符号の説明】
【0084】
20……残留農薬測定装置、21……容器、22……プローブ、23……基準電極、25……脂質膜センサ、35……電圧検出器、36……A/D変換器、37……演算装置、38……出力装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬に助剤として使用されている界面活性剤が異なる濃度で溶けている複数のサンプル液に、脂質と可塑剤と高分子剤とを所定割合で混合して形成した脂質膜センサを浸漬して、その膜電位を測定する段階(S1〜S7)と、
前記測定結果に基づいて、前記脂質膜センサの応答に対して前記界面活性剤を助剤とする農薬の濃度を推定するための推定式を求める段階(S8、S9)と、
被検査体の表面の付着物を溶け込ました検査対象液に対して、前記脂質膜センサを浸漬して、その膜電位を測定する段階(S11〜S15)と、
前記検査対象液に対して得られた前記脂質膜センサの応答と前記推定式から前記被検査体の残留農薬の濃度を推定する段階(S16)とを含む残留農薬測定方法。
【請求項2】
脂質と可塑剤と高分子剤とを所定割合で混合して形成した脂質膜センサ(25)と、
農薬に助剤として使用されている界面活性剤が異なる濃度で溶けている複数のサンプル液に前記脂質膜センサを浸漬したときの前記脂質膜センサの膜電位に基づいて、前記脂質膜センサの応答に対して前記界面活性剤を助剤とする農薬の濃度を推定するための推定式を求めるとともに、被検査体の表面の付着物を溶け込ました検査対象液に対して前記脂質膜センサが浸漬されたときの応答と前記推定式とから前記被検査体の残留農薬の推定濃度を算出する演算手段(37)とを備えた残留農薬測定装置。
【請求項3】
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤として2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質としてテトラドデシルアンモニウムブロミド(TDAB)が0.1〜0.8mgの範囲で含まれていることを特徴とする請求項2記載の残留農薬測定装置。
【請求項4】
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、脂質としてテトラドデシルアンモニウムブロミド(TDAB)0.1mg、可塑剤としてジオクチルフェニルフォスフォネイト(DOPP)が0.75〜1mlgの範囲で含まれていることを特徴とする請求項2記載の残留農薬測定装置。
【請求項5】
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤として2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質としてトリドデシルメチルアンモニウムクロリド(TDAC)が0.1〜0.3mgの範囲で含まれていることを特徴とする請求項2記載の残留農薬測定装置。
【請求項6】
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤として2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質としてジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)が0.1〜0.4mgの範囲で含まれていることを特徴とする請求項2記載の残留農薬測定装置。
【請求項1】
農薬に助剤として使用されている界面活性剤が異なる濃度で溶けている複数のサンプル液に、脂質と可塑剤と高分子剤とを所定割合で混合して形成した脂質膜センサを浸漬して、その膜電位を測定する段階(S1〜S7)と、
前記測定結果に基づいて、前記脂質膜センサの応答に対して前記界面活性剤を助剤とする農薬の濃度を推定するための推定式を求める段階(S8、S9)と、
被検査体の表面の付着物を溶け込ました検査対象液に対して、前記脂質膜センサを浸漬して、その膜電位を測定する段階(S11〜S15)と、
前記検査対象液に対して得られた前記脂質膜センサの応答と前記推定式から前記被検査体の残留農薬の濃度を推定する段階(S16)とを含む残留農薬測定方法。
【請求項2】
脂質と可塑剤と高分子剤とを所定割合で混合して形成した脂質膜センサ(25)と、
農薬に助剤として使用されている界面活性剤が異なる濃度で溶けている複数のサンプル液に前記脂質膜センサを浸漬したときの前記脂質膜センサの膜電位に基づいて、前記脂質膜センサの応答に対して前記界面活性剤を助剤とする農薬の濃度を推定するための推定式を求めるとともに、被検査体の表面の付着物を溶け込ました検査対象液に対して前記脂質膜センサが浸漬されたときの応答と前記推定式とから前記被検査体の残留農薬の推定濃度を算出する演算手段(37)とを備えた残留農薬測定装置。
【請求項3】
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤として2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質としてテトラドデシルアンモニウムブロミド(TDAB)が0.1〜0.8mgの範囲で含まれていることを特徴とする請求項2記載の残留農薬測定装置。
【請求項4】
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、脂質としてテトラドデシルアンモニウムブロミド(TDAB)0.1mg、可塑剤としてジオクチルフェニルフォスフォネイト(DOPP)が0.75〜1mlgの範囲で含まれていることを特徴とする請求項2記載の残留農薬測定装置。
【請求項5】
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤として2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質としてトリドデシルメチルアンモニウムクロリド(TDAC)が0.1〜0.3mgの範囲で含まれていることを特徴とする請求項2記載の残留農薬測定装置。
【請求項6】
前記界面活性剤はアニオン性であって、
前記脂質膜センサは、高分子剤としてポリ塩化ビニル(PVC)800mg、可塑剤として2−ニトロオクチルエーテル(NPOE)1mlに対して、脂質としてジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)が0.1〜0.4mgの範囲で含まれていることを特徴とする請求項2記載の残留農薬測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−7725(P2011−7725A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153550(P2009−153550)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託事業(知的クラスター創成事業(第二期))に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(502240607)株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー (10)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託事業(知的クラスター創成事業(第二期))に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(502240607)株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー (10)
[ Back to top ]