残糸除去装置
【課題】ボビンから抜き取った残糸を確実に回収する。
【解決手段】残糸回収装置4の筒状部材91は、残糸抜き取り装置2により、ボビンから残糸Rを抜き取っている間は、直立した姿勢となっており、残糸除去装置1の機台1aの内部に収まっている。残糸Rの抜き取りが完了し、ボビンがレール101からボビン排出経路に搬送された後、エアシリンダ92を駆動して、筒状部材91を回動軸93を中心に回動させることによって、筒状部材91を傾けて、その上端に形成された回収口91bを把持爪ユニット24の把持爪のほぼ真下に位置させる。この状態で、把持爪による残糸Rの把持を解除するとともに、押さえ部材81を降下させて残糸Rを下方に押し出すことにより、残糸Rを回収口91bに落下させる。
【解決手段】残糸回収装置4の筒状部材91は、残糸抜き取り装置2により、ボビンから残糸Rを抜き取っている間は、直立した姿勢となっており、残糸除去装置1の機台1aの内部に収まっている。残糸Rの抜き取りが完了し、ボビンがレール101からボビン排出経路に搬送された後、エアシリンダ92を駆動して、筒状部材91を回動軸93を中心に回動させることによって、筒状部材91を傾けて、その上端に形成された回収口91bを把持爪ユニット24の把持爪のほぼ真下に位置させる。この状態で、把持爪による残糸Rの把持を解除するとともに、押さえ部材81を降下させて残糸Rを下方に押し出すことにより、残糸Rを回収口91bに落下させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンの残糸を除去する残糸除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の残糸除去装置においては、ボビンから残糸を除去するために、まず、残糸のあるボビンの下端部をクランプで保持するとともに、当該ボビンの上端をプッシャで押さえた状態で、クランプとプッシャとを上昇させることによってボビンを持ち上げている。続いて、持ち上げられたボビンの下方にボビンを元の位置に案内するためのシュートを配置した上で、クランプの位置を維持したまま、プッシャを降下させることによって、ボビンを元の位置まで降下させている。これにより、ボビンがクランプから抜け落ちる際に、ボビンから残糸が抜き取られ、抜き取られた残糸がクランプに保持される。そして、クランプに保持された残糸を、クランプの側方に設けられたサクションで吸引することによって回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−133080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、ボビンから抜き取られた残糸を側方から吸引することによって回収すると、例えば、残糸の量が多い場合などに、残糸が吸引される途中で落下してしまい、残糸を回収することができない虞がある。
【0005】
本発明の目的は、ボビンから抜き取った残糸を確実に回収することが可能な残糸除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る残糸除去装置は、ボビンから残糸を抜き取る残糸抜き取り装置と、前記残糸抜き取り機構が抜き取った残糸を回収する残糸回収装置と、を備え、前記ボビンは、その軸方向が上下方向となるように配置されたものであり、前記残糸抜き取り装置は、前記ボビンの残糸を上方に抜き取るとともに、前記ボビン上方の残糸保持位置で保持するものであって、前記残糸回収装置の残糸の回収口が、前記残糸保持位置の下方に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、残糸保持位置の下方に残糸回収装置の回収口が配置されているため、残糸抜き取り装置から落下した残糸が残糸回収装置により回収される。したがって、残糸回収装置により、確実に残糸を回収することができる。
【0008】
第2の発明に係る残糸除去装置は、第1の発明に係る残糸除去装置において、前記残糸回収装置は、前記回収口を形成する部材であって、前記回収口が前記残糸保持位置の下方に位置する残糸回収位置と、前記残糸保持位置の下方に前記ボビンが配置可能となるように前記残糸回収位置から退避した退避位置との間で移動可能となった回収口形成部材を備えていることを特徴とする。
【0009】
ボビンの軸方向が上下方向であり、残糸抜き取り装置が残糸を上方に抜き取るとともに残糸保持位置で保持するものである場合、残糸の抜き取りの邪魔となるため、残糸回収装置の回収口を残糸保持位置の下方に配置したままとすることはできない。しかしながら、本発明によると、回収口形成部材が回収位置と退避位置との間で移動可能となっているため、回収口形成部材を回収位置に移動させれば、残糸保持位置から落下した残糸を回収することができ、回収口形成部材を退避位置に移動させれば、残糸保持位置の下方にボビンを配置させ、残糸抜き取り装置によりボビンの残糸を抜き取ることが可能となる。
【0010】
第3の発明に係る残糸除去装置は、第2の発明に係る残糸除去装置において、前記回収口形成部材は、一方向に延びており、その先端が前記回収口になっているとともに、その基端部が水平な回動軸に回動自在に支持された筒状部材であり、前記筒状部材は、前記退避位置にある状態では直立した姿勢となり、前記回収位置にある状態では、直立した姿勢に対して傾いた姿勢となることを特徴とする。
【0011】
本発明によると、水平な回動軸を中心に回動可能な筒状部材により、退避位置と回収位置との間で移動可能な回収口形成部材を形成することができる。
【0012】
第4の発明に係る残糸除去装置は、第2又は第3の発明に係る残糸除去装置において、前記残糸抜き取り装置は、前記回収口形成部材が前記回収位置にきたときに、残糸の保持を解除することを特徴とする。
【0013】
本発明によると、回収口形成部材が回収位置にきたときに、残糸抜き取り装置による残糸の保持が解除されるため、残糸保持位置から落下した残糸は、確実に回収口に入る。したがって、残糸回収装置によって確実に残糸が回収される。
【0014】
第5の発明に係る残糸除去装置は、第1〜第4のいずれかの発明に係る残糸除去装置において、前記残糸保持位置に保持された残糸を落下させる残糸落下機構をさらに備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明によると、残糸落下機構により、確実に、残糸保持位置から回収口に残糸を落下させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、残糸保持位置の下方に残糸回収装置の回収口が配置されているため、残糸抜き取り装置から落下した残糸が残糸回収装置により回収される。したがって、残糸回収装置により、確実に残糸を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る残糸除去装置の概略構成図である。
【図2】図1の残糸把持機構の平面図である。
【図3】図2において上側の基材を除いた図である。
【図4】図3においてさらに下側の基材を除いた図である。
【図5】図2〜図4における回動部材と3つの把持爪との位置関係を示す図である。
【図6】図1を矢印VIの方向から見た図である。
【図7】残糸抜き取り装置及びボビン押さえ装置を降下させた状態を示す図である。
【図8】図7の状態での残糸把持機構の図4相当の図である。
【図9】図7の状態での残糸把持機構の図5相当の図である。
【図10】ボビンから残糸を抜き取った直後の状態を示す図である。
【図11】筒状部材を回動させて、回収口を把持爪の下方に位置させた状態を示す図である。
【図12】把持爪が把持していた残糸を回収口に落下させているときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好適な実施の形態について説明する。図1に示すように、残糸除去装置1は、残糸抜き取り装置2、ボビン押さえ装置3、残糸回収装置4、糸有無センサ5、糸量センサ6などを備えている。
【0019】
残糸抜き取り装置2は、残糸把持機構11とエアシリンダ12とを備えている。残糸把持機構11は、図1〜図5に示すように、2枚の基材21、22、回動部材23、3つの把持爪ユニット24、回動アーム25、エアシリンダ26などを備えている。
【0020】
2枚の基材21、22は、金属材料からなる略円形の板状体であり、残糸抜き取り装置2により残糸Rが抜き取られる、上下方向を軸方向とするボビンBの上方に、上下に重なって配置されている。2枚の基材21、22のうち、上側(図2の紙面手前側)に配置された基材21には、その略中央部に略円形の貫通孔21aが形成されている。また、基材21には、その外周端と貫通孔21aとの間の部分に、それぞれが周方向に延びているとともに、周方向に間隔をあけて配置された3つのガイド孔21bが形成されている。また、基材21の図2における下側の端部は、径方向外側に突出した突出部21cとなっている。
【0021】
2枚の基材21、22のうち、下側(図2の紙面奥側)に配置された基材22には、貫通孔21a及び3つのガイド孔21bと重なる位置に、それぞれ、貫通孔21aとほぼ同じ形状の貫通孔22a、及び、ガイド孔21bとほぼ同じ形状のガイド孔22bが形成されている。
【0022】
回動部材23は、基材21と基材22との間の配置されており、基材21、22の周方向に延びて、3つのガイド孔21b及び3つのガイド孔22bと重なっている。また、回動部材23には、3つのガイド孔21b、及び、3つのガイド孔22bと重なる部分に、回動部材23を上下に貫通する3つの貫通部材31が取り付けられている。
いる。
【0023】
3つの貫通部材31は、ガイド孔21bを通って基材21を貫通しており、これらの貫通部材31のうち真ん中の貫通部材31には、基材21よりも上方に位置するその上端部に、略円柱形状の嵌合ピン32が取り付けられている。また、3つの貫通部材31は、ガイド孔22bを通って基材22を貫通しており、基材22よりも下方に位置するその下端部に略円柱形状の案内部材33が設けられている。
【0024】
また、ガイド孔21b、22bを貫通するように延びた貫通部材31は、ガイド孔21b、22bに沿って、基材21、22の周方向に移動可能となっており、これにより、貫通部材31が設けられた回動部材23が、基材21、22の周方向に回動可能となっている。
【0025】
3つの把持爪ユニット24は、基材22の下方に、ボビンBの周方向に沿って配置されている。また、各把持爪ユニット24は、それぞれ、基材22の周方向の両側から、基材22の下面に配置された2本のガイドレール46に挟まれており、ガイドレール46に沿ってボビンBの径方向に移動可能となっている。また、3つの把持爪ユニット24には、それぞれ、ボビンBの径方向に関する内側の端部に残糸Rを把持するための把持爪43が設けられている。
【0026】
また、各把持爪ユニット24の上面には、案内溝47が形成されている。案内溝47は、上述の案内部材33の直径とほぼ同じ幅の溝であり、両側壁面が案内面47a、47bとなっている。また、案内溝47は、ボビンBの周方向に関して図3の反時計回り方向側の部分ほど、ボビンBの径方向に関して内側に位置するように延びている。案内溝47内には、上述の案内部材33が配置されており、案内部材33の外周面が、案内溝47の案内面47a、47bに当接している。
【0027】
回動アーム25は、金属材料などからなる水平方向に延びた板状の部材であり、基材21の上面に配置されているとともに、その略中央部が、基材21の突出部21cに設けられた、鉛直方向に延びた回動軸61に回動自在に支持されている。また、回動アーム25の一方の端部には、回動アーム25を貫通する長孔62が形成されており、長孔62には上述の嵌合ピン32が嵌合している。
【0028】
また、回動アーム25の長孔62と反対側の端部は、基材21と重ならない位置まで延びており、エアシリンダ26のピストン26aに取り付けられている。これにより、エアシリンダ26を駆動して、ピストン26aに取り付けられた回動アーム25の端部を図2の左右方向に移動させることによって、回動アーム25を、回動軸61を中心に回動させることができる。
【0029】
また、残糸把持機構11は、上述の基材21及びエアシリンダ26が、それぞれ、取り付け部材67を介してエアシリンダ12のピストン12aに固定されることによって、エアシリンダ12に取り付けられている。エアシリンダ12は、残糸除去装置1の機台1aに固定されており、ピストン12aを昇降させることによって、残糸把持機構11を昇降させる。また、ピストン12aには、その上端部に発光素子72が設けられており、発光素子72は、エアシリンダ12の外部に向けて図1の左方に光を照射する。
【0030】
エアシリンダ12の図1における左側には、上下に並んだ状態で残糸除去装置1の機台1aに取り付けられた4つの受光素子73a〜73dが配置されている。受光素子73a〜73dは、発光素子72から照射された光を受光するものであり、ピストン12aが昇降して、発光素子72が受光素子73a〜73dと同じ高さにきたときに、それぞれ、発光素子72から照射された光を受光する。これにより、ピストン12aが受光素子73a〜73dに対応する高さにきたことを検出することができる。なお、受光素子73a〜73dが、それぞれ、どのような高さに配置されているかについては、後程説明する。
【0031】
ボビン押さえ装置3は、押さえ部材81とエアシリンダ82とを備えている。押さえ部材81は、残糸Rが除去されるボビンBのほぼ真上に配置された、基材21、22の貫通孔21a、22aよりも径の小さい略円柱形状の部材である。また、押さえ部材81の下面には、ボビンBの上端部が係合可能な略円形の凹部81aが形成されている。凹部81aは、テーパ状になっており、上側の部分ほど径が小さくなっている。押さえ部材81は、エアシリンダ82のピストン82aに取り付けられており、エアシリンダ82は、ピストン82aを昇降させることによって押さえ部材81を昇降させる。
【0032】
残糸回収装置4は、筒状部材91(回収口形成部材)、エアシリンダ92などを備えている。筒状部材91は、残糸の除去を行う前の状態(図1の状態)でほぼ鉛直方向に延びた筒状の部材であり、軸方向断面が略矩形となっている。また、筒状部材91の内部空間は、残糸Rを回収するための残糸回収経路91aとなっており、残糸回収経路91aの上端(先端)が、残糸Rを残糸回収経路91aに導入するための回収口91bとなっている。一方、残糸回収経路91aの下端は、図示しない負圧源に接続されている。これにより、残糸回収装置4においては、回収口91bから残糸回収経路91aに導入された残糸Rを吸引することができるようになっている。
【0033】
また、筒状部材91は、その下端部(基端部)が、図1の紙面垂直方向に延びた(水平な)回動軸93に回動自在に支持されているとともに、回動軸93よりも少し上の部分にエアシリンダ92のピストン92aが取り付けられている。エアシリンダ92は、機台1aに取り付けられており、ピストン92aを移動させることによって、筒状部材91を、回動軸93を中心に回動させる。
【0034】
糸有無センサ5は、ボビンBにおける残糸Rの有無検出するためのセンサである。糸量センサ6は、糸有無センサ5により残糸Rが検出されたボビンBにおける残糸Rの量が所定量以下であるか否かを検出するためのセンサである。
【0035】
より詳細に説明すると、図1、図6に示すように、残糸把持機構11の2枚の基材21、22、回動部材23及び3つの把持爪ユニット24や、ボビン押さえ装置3の下方には、図6の上下方向に延びたレール101が設けられている。レール101は、一方の端部(図6における上端部)において処理ボビン供給経路102に接続されているとともに、他方の端部(図6における下端部)において処理ボビン排出経路103に接続されている。レール101、処理ボビン供給経路102及び処理ボビン排出経路103は、トレイ100を走行させるためのものであり、ボビンBは、トレイ100の上端に、上下方向を軸方向とする直立した姿勢で支持されている。
【0036】
そして、レール101には、処理ボビン供給経路102から、図示しない自動ワインダーなどにおいて、糸の供給が完了して排出されたボビンBが供給される。また、後述するように、レール101から処理ボビン排出経路103にボビンBが排出される。
【0037】
糸有無センサ5は、上下方向に延びた回動軸5aを備えており、回動軸5aが、機台1aに取り付けられた取り付け部材104に回動可能に支持されている。また、糸有無センサ5は、平面視で回動軸5aとずれた位置において上下方向に延びた接触部5bを備えており、接触部5bが、レール101のうち、残糸把持機構11の基材21、22、回動部材23及び3つの把持爪ユニット24や、ボビン押さえ装備3のほぼ真下の残糸抜き取り位置(図7の一点鎖線で囲まれたボビンBの位置)よりも処理ボビン供給経路102側(図7の上側)の部分の近傍に配置されている。
【0038】
そして、レール101の当該部分を通過するボビンBに残糸Rがある場合には、残糸Rが接触部5bに接触し、これにより、糸有無センサ5が回動軸5aを中心に回動する。一方、残糸Rがない場合には、ボビンBは、接触部5bに接触しない。これにより、糸有無センサ5が回動軸5aを中心に回動するか否かによって、ボビンBにおける残糸Rの有無を検出することができる。
【0039】
そして、糸有無センサ5により、ボビンBにおいて残糸Rが検出された場合には、次に説明する、糸量センサ6による残糸Rの量の検出が行われる。一方、糸有無センサ5により、ボビンBにおいて残糸Rが検出されなかった場合には、次に説明する残糸Rの量の検出や、後述する残糸Rの抜き取りは行われず、当該ボビンBは、そのまま、処理ボビン排出経路103に排出され、ボビン搬送経路103からボビンBに糸を巻き取るための糸巻取装置に搬送される。
【0040】
糸量センサ6は、発光素子と受光素子とが隣接して配置された、いわゆる反射型の光学式センサであり、レール101の、上記残糸抜き取り位置よりもボビン供給流路102側(図6の上側)であり、且つ、糸有無センサ5が設けられた部分の処理ボビン排出経路103側(図6の下側)の部分に搬送されてきたボビンBのうち、糸有無センサ5により残糸Rが検出されたボビンBに向けて光を照射する。より詳細に説明すると、糸量センサ6は、ボビンBの下端部よりも少し上方に位置する部分に向けて、ボビンBとほぼ同じ色の光を照射する。なお、ボビンBの色は、糸の色とは異なっている(例えば、ボビンBの色が赤で、糸の色が白となっている)。
【0041】
このとき、ボビンBの残糸Rの量が多く、ボビンBの、糸量センサ6の発光素子から照射された部分に残糸Rがある場合には、糸量センサ6の発光素子から照射された光は、残糸Rに反射し、その反射光が糸量センサ6の受光素子に受光される。一方、ボビンBの残糸Rの量が少なく、ボビンBの、糸量センサ6の発光素子から照射された光よりも低い部分にしか残糸Rがない場合には、糸量センサ6の発光素子から照射された光は、ボビンBの外周面に当たるが、ボビンBの外周面では反射されないので、糸量センサ6の受光素子において光が受光されることはない。
【0042】
これにより、糸量センサ6においては、受光素子において上記反射光が受光されるか否かによって、ボビンBにおける残糸Rの量が所定量(発光素子から照射される光の高さに対応する量)以上であるか否かを検出することができる。
【0043】
そして、残糸Rの量が所定量よりも少ない場合には、ボビンBは、次に説明する残糸Rの抜き取りが行われた後に、処理ボビン排出経路103に送られ、処理ボビン排出経路103から、ボビンBに糸を巻き取るための糸巻取装置に搬送される。一方、残糸Rの量が所定量以上の場合には、残糸Rの抜き取りは行われず、そのまま処理ボビン排出経路103に送られ、処理ボビン排出経路103から自動ワインダーに戻され、自動ワインダーにおいて、当該ボビンから糸が供給される。
【0044】
次に、残糸除去装置1を用いて、ボビンBの残糸Rを除去する方法について説明する。ここで、以下に説明する残糸Rの除去は、上述したように、処理ボビン供給経路102からレール101に搬送されてきたボビンBのうち、糸有無センサ5により残糸Rが検出され、且つ、糸量センサ6により残糸Rの量が所定量以上であることが検出されなかったボビンBに対してのみ行われる。残糸Rの除去が行われるボビンBは、レール101に沿って、残糸把持機構11の基材21、22や、ボビン押さえ装置3のほぼ真下の残糸抜き取り位置まで搬送され、残糸Rが抜き取られるまでの間、その位置で静止する。
【0045】
一方、残糸抜き取り装置2においては、残糸Rの抜き取りを行う前の状態では、図2〜図5に示すように、回動部材23に設けられた3つの案内部材33が、それぞれ、対応する把持爪ユニット24の案内溝47のうち、基材21、22の径方向に関して最も内側に位置する一方の端部の近傍に位置しており、把持爪43は、基材21、22の径方向に関して、ボビンBの外周面よりも外側に位置している。なお、以下では、このように3つの把持爪43がボビンBの径方向に関してボビンBの外周面から離隔している状態を、離隔状態と定義して説明を行う。
【0046】
また、エアシリンダ12においては、ピストン12aが、発光素子72が受光素子73aとほぼ同じ高さに位置している。このとき、残糸把持機構11は、ボビンBの上端よりも上方に位置している。すなわち、受光素子73aは、残糸把持機構11がボビンBの上端よりも上方のある高さに位置しているときの、発光素子72と同じ高さに設けられている。
【0047】
また、ボビン押さえ装置3においては、押さえ部材81が、ボビンBの上端よりも上方に位置している。また、残糸回収装置4においては、図1に示すように、筒状部材91がほぼ直立した姿勢となっており、機台1aの内部に収まっている。なお、このときの、筒状部材91の位置が、本発明に係る退避位置に相当する。そして、これにより、筒状部材91が、ボビンBの搬送の邪魔になったり、ボビンBを上記残糸抜き取り位置に配置することができなくなったりすることがない。
【0048】
そして、残糸Rを除去すべきボビンBが、上記残糸抜き取り位置に搬送されてくると、エアシリンダ12において、図8に矢印A1で示したように、ピストン12aを、発光素子72が受光素子73dとほぼ同じ高さになるまで降下させる。このとき、残糸把持機構11は、把持爪43がボビンBの下端部とほぼ同じ高さにくるまで降下する。すなわち、受光素子73dは、把持爪43がボビンBの下端部とほぼ同じ高さに位置しているときの発光素子72とほぼ同じ高さに設けられている。
【0049】
また、このとき、基材21、22には、上述したように、その略中央部に貫通孔21a、22aが形成されているため、残糸把持機構11を降下させたときに、ボビンBは貫通孔21a、22aを通過する。したがって、ボビンBが、残糸把持機構11と接触してしまうことがない。
【0050】
さらに、残糸把持機構11の降下とほぼ同時に、図7に矢印A2で示したように、ボビン押さえ装置3において、エアシリンダ82により、押さえ部材81を、凹部81aがボビンBの上端部に嵌合する位置まで降下させる。
【0051】
次に、残糸把持機構11において、エアシリンダ26を駆動して、図8に矢印A3で示したように、ピストン26aを伸ばすことにより、矢印A4に示したように、回動アーム25を、図の反時計回り方向に回動させる。すると、回動軸61を挟んでピストン26aと反対側に位置する、回動アーム25の長孔62が形成された部分が、矢印A5で示したように図中左方に移動する。これにより、長孔62に嵌合された嵌合ピン32と嵌合ピン32が取り付けられた貫通部材31がガイド孔21b、22bに沿って、図8の時計回り方向に移動する。これに伴って、残り2つの貫通部材31も、ガイド孔21b、22bに沿って図9の時計回り方向に移動し、3つの貫通部材31の移動によって、回動部材23が、矢印A6で示したように図8の時計回り方向に回動する。
【0052】
回動部材23がこのように回動すると、回動部材23に設けられた3つの案内部材33が、それぞれ、図9に矢印A7a〜A7cで示したように、対応する把持爪ユニット24の案内溝47(案内面47a、47b)に沿って、案内溝47の基材21、22の径方向に関して外側に位置する他方の端部の近傍まで移動する。
【0053】
このとき、3つの貫通部材31がガイド孔21b、22bに挿通されているため、案内部材33は、基材21、22の径方向には移動できない。そのため、3つの把持爪ユニット24が、図8に矢印A8a〜A8cで示したように、ガイドレール46に沿ってボビンBの径方向内側に移動し、把持爪43が、ボビンBの外周面に押し付けられる。そして、これにより、3つの把持爪43によってボビンBの残糸Rが把持される。なお、以下では、このように3つの把持爪43がボビンBの外周面に押し付けられている状態を、把持状態と定義して説明を行う。
【0054】
次に、この状態で、エアシリンダ12を駆動して、ピストン12aを、発光素子72が受光素子73cと同じ高さがにくるまで上昇させる。このとき、残糸把持機構11は、把持爪43がボビンBの途中のある部分と同じ高さまで上昇する。すなわち、受光素子73cは、把持爪43がボビンBの途中のある部分と同じ高さとなったときの、発光素子72とほぼ同じ高さに配置されている。
【0055】
そして、この残糸把持機構11の上昇により、把持爪43に把持されたボビンBの残糸Rは、ボビンBの軸方向に沿って上方に持ち上げられる。このとき、ボビンBの上端が押さえ部材81によって押さえられているため、ボビンBが残糸Rと一緒に持ち上げられてしまうことはない。
【0056】
次に、エアシリンダ26を駆動して3つの把持爪43をボビンBの径方向外側に移動させることによって、上記離隔状態(図2〜図4の状態)に戻してから、上述したのと同様、エアシリンダ12により、残糸把持機構11を図8に示す位置まで降下させる。続いて、上述したのと同様に、エアシリンダ26を駆動して3つの把持爪43をボビンBの径方向内側に移動させることにより、再度、上記把持状態(図8の状態)とし、この状態で、エアシリンダ12を駆動して、残糸把持機構11を上昇させて、ボビンBの残糸Rを持ち上げる。
【0057】
ただし、このときには、ピストン12aを、発光素子72が受光素子73cの上方に配置された受光素子73bと同じ高さにくるまで上昇させる。このとき、残糸把持機構11は、把持爪43がボビンBの途中の前回の上昇時よりも高い位置にくるまで上昇する。すなわち、受光素子73bは、受光素子73cよりも少し上方に配置されている。
【0058】
次に、再度、上記離隔状態に戻してから、上述したのと同様、エアシリンダ12により、残糸把持機構11を図7に示す位置まで降下させる。続いて、再度、上記把持状態にしてから、エアシリンダ12を駆動して、図11に矢印A9に示したように、ピストン12aを、発光素子72が受光素子73aと同じ高さにくるまで上昇させる。これにより、残糸把持機構11は、把持爪43がボビンBよりも上方の位置まで上昇する。
【0059】
さらに、このとき、把持爪43がボビンBの上端部と同じ高さにきたタイミングで、図11に矢印A10で示したように、エアシリンダ82を駆動して、押さえ部材81を、抜き取った残糸Rとともに、ボビンBの上端よりも上方まで上昇させ、その位置で停止させる。なお、このときの、把持爪43によって保持されている残糸Rの位置が、本発明に係る残糸保持位置に相当する。
【0060】
これにより、ボビンBの残糸Rは、残糸把持機構11に持ち上げられることによってボビンBから抜き取られ、ボビンBの上方において、3つの把持爪43によって把持される。また、このとき、上述したように、把持爪43の上昇と降下を繰り返すことにより、ボビンBの残糸Rは、少しずつ上方に持ち上げられた上でボビンBから抜き取られる。したがって、ボビンBから確実に残糸Rを抜き取ることができる。
【0061】
次に、残糸Rが抜き取られたボビンBが、レール101から処理ボビン排出経路103に向けて搬送されてから、エアシリンダ92を駆動して、図11に矢印A11で示したように、筒状部材91を図の時計回り方向に回動させることによって、筒状部材91を、回収口91bが残糸保持位置にある残糸Rのほぼ真下にくるまで傾ける。なお、このときの筒状部材91の位置が、本発明に係る回収位置に相当する。続いて、上記離隔状態に戻すことにより、把持爪43による残糸Rの把持を解除してから、図12に矢印A12で示したように、押さえ部材81を自重で降下させる。
【0062】
すると、押さえ部材81が、貫通孔21a、22a及び3つの把持爪43に囲まれた領域を通過して、3つの把持爪43よりも下方まで降下し、このとき、3つの把持爪43による把持が解舒された残糸Rが、押さえ部材81によって下方に押されて落下する。そして、落下した残糸Rが、回収口91bから筒状部材91内に導入されて吸引される。なお、本実施の形態では、ボビンBを押さえるためのボビン押さえ装置3が、把持爪43に把持された残糸Rを落下させるための残糸落下機構を兼ねている。
【0063】
この後、エアシリンダ82により押さえ部材81を上昇させるとともに、エアシリンダ92により筒状部材91を、図1の反時計回り方向に回動させることにより、図1の状態に戻す。そして、以下、同様にして、残糸抜き取り位置に搬送されてきたボビンBの残糸Rの除去が順次行われる。
【0064】
以上に説明した実施の形態によると、ボビンBから抜き取った残糸Rを、把持爪43から落下させるとともに、落下させた残糸Rを、把持爪43の下方に設けられた回収口91bから残糸回収経路91aに導入することによって回収するため、残糸Rを確実に回収することができる。
【0065】
また、本実施の形態では、ボビンBから残糸Rを抜き取る際には、把持爪43の下方にボビンBが配置され、抜き取った残糸Rを回収する際には、把持爪43の下方に回収口91bを含む筒状部材91の上端部が配置される。しかしながら、本実施の形態では、筒状部材91は、水平な回動軸93を中心に回動可能となっており、エアシリンダ92により筒状部材91を回動させることによって、筒状部材91を、直立した姿勢となって機台1a内に収まった把持爪43の下方に位置していない退避位置と、回収口91bが把持爪43の下方に位置するように傾いた姿勢となる回収位置との間で移動可能となっている。
【0066】
したがって、ボビンBから残糸Rを抜き取る際に、筒状部材91を上記退避位置に位置させておけば、筒状部材91が邪魔になることはない。そして、残糸Rが抜き取られたボビンBがレール101から処理ボビン排出経路103に送られた後に、筒状部材91を上記回収位置に位置させて、把持爪43から回収口91bに残糸Rを落下させれば、残糸Rを回収することができる。
【0067】
また、残糸Rを回収する際に、3つの把持爪43を、ボビンBの径方向に関して、ボビンBの外周面から離隔した位置に移動させて、把持爪43による残糸Rの把持を解除した上で、押さえ部材81を降下させることによって、残糸Rを下方に押し出して落下させるため、残糸Rが把持爪43に引っ掛かって残ってしまうことがなく、残糸Rを確実に回収することができる。
【0068】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については、適宜その説明を省略する。
【0069】
上述の実施の形態では、残糸Rを回収する際に、把持爪43による残糸Rの把持を解除した上で、押さえ部材81を降下させることによって残糸Rを落下させたが、これには限られない。押さえ部材81を降下させず、把持爪43による残糸Rの把持を解除することのみによって、把持爪43から残糸Rを落下させてもよい。
【0070】
あるいは、把持爪43により残糸Rが把持された状態のまま、押さえ部材81を降下させることによって、残糸Rを落下させてもよい。ただし、この場合には、押さえ部材81を、3つの把持爪43に囲まれた領域を通過することができるようなものとする必要がある。具体的には、例えば、押さえ部材81を、凹部81aが形成されていない、ボビンBよりも径が小さく、ボビンBの上端に当接することによってボビンBを押さえるものとする必要がある。
【0071】
また、上述の実施の形態では、ボビンBを押さえるボビン押さえ装置3により把持爪43に把持された残糸Rを落下させたが、これには限られず、ボビン押さえ装置81とは別に設けられた残糸落下機構によって、把持爪43に把持された残糸Rを落下させるようにしてもよい。
【0072】
また、上述の実施の形態では、回収口91bを形成する回収口形成部材が、回動軸93を中心に回動することによって、直立した姿勢で機台1aの内部に収まった退避位置と、回収口93aが把持爪43の下方に位置するように傾いた姿勢となる回収位置との間で移動可能となった筒状部材91によって構成されていたが、これには限られない。
【0073】
例えば、残糸Rの回収口が形成された回収口形成部材が、水平に移動することによって、機台1a内部に収まった退避位置と、把持爪43と対向する回収位置との間で移動可能となっているなど、他の構成によって、回収口形成部材が、残糸を回収するための残糸回収位置と、残糸回収位置から離隔した退避位置との間で移動可能となっていてもよい。また、このとき、回収口形成部材は筒状であることには限られない。
【0074】
また、残糸の回収口を形成する回収口形成部材は、退避位置にある状態で機台1a内部に完全に収まっていたが、これには限られない。回収口形成部材は、退避位置にある状態で、ボビンBや残糸Rの抜き取りの邪魔にならない位置にあればよく、少なくとも一部分が機台1aの外部にはみ出していてもよい。
【0075】
また、上述の実施の形態では、残糸抜き取り装置2の残糸把持機構11が、3つの把持爪43により残糸Rを把持するものであったが、これには限られない。例えば、残糸把持機構が2つ又は4つ以上の把持爪により残糸Rを把持するものであってもよい。さらには、残糸抜き取り装置は、把持爪によって残糸Rを把持することによってボビンBから残糸Rを抜き取るものであることには限られず、ボビンBから残糸Rを抜き取ることが可能な他の構成を備えたものであってもよい。
【0076】
また、上述の実施の形態では、残糸除去装置1が、トレイ100により、軸方向が上下方向となるような姿勢で支持されたボビンBの残糸Rを、残糸抜き取り装置2によって上方に抜き取るものであったが、これには限られない。例えば、ボビンBが、その軸方向が水平方向となるような姿勢で支持されており、ボビンBの残糸Rを水平方向に抜き取るものであってもよい。
【0077】
この場合でも、残糸Rの回収口を、残糸抜き取り装置の下方に配置することにより、残糸抜き取り装置から落下する残糸Rを確実に回収することができる。また、この場合には、回収口形成部材を、残糸抜き取り装置の下方に、ボビンBや残糸抜き取り装置から少し離れた位置に配置すれば、回収口形成部材が、ボビンに干渉したり、残糸抜き取り装置による残糸Rの抜き取りの邪魔になったりすることがない。したがって、この場合には、回収口形成部材は、回収位置と退避位置との間で移動可能なものでなくてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 残糸除去装置
2 残糸抜き取り装置
3 ボビン押さえ装置
4 残糸回収装置
91 筒状部材
91a 回収口
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンの残糸を除去する残糸除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の残糸除去装置においては、ボビンから残糸を除去するために、まず、残糸のあるボビンの下端部をクランプで保持するとともに、当該ボビンの上端をプッシャで押さえた状態で、クランプとプッシャとを上昇させることによってボビンを持ち上げている。続いて、持ち上げられたボビンの下方にボビンを元の位置に案内するためのシュートを配置した上で、クランプの位置を維持したまま、プッシャを降下させることによって、ボビンを元の位置まで降下させている。これにより、ボビンがクランプから抜け落ちる際に、ボビンから残糸が抜き取られ、抜き取られた残糸がクランプに保持される。そして、クランプに保持された残糸を、クランプの側方に設けられたサクションで吸引することによって回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−133080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、ボビンから抜き取られた残糸を側方から吸引することによって回収すると、例えば、残糸の量が多い場合などに、残糸が吸引される途中で落下してしまい、残糸を回収することができない虞がある。
【0005】
本発明の目的は、ボビンから抜き取った残糸を確実に回収することが可能な残糸除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る残糸除去装置は、ボビンから残糸を抜き取る残糸抜き取り装置と、前記残糸抜き取り機構が抜き取った残糸を回収する残糸回収装置と、を備え、前記ボビンは、その軸方向が上下方向となるように配置されたものであり、前記残糸抜き取り装置は、前記ボビンの残糸を上方に抜き取るとともに、前記ボビン上方の残糸保持位置で保持するものであって、前記残糸回収装置の残糸の回収口が、前記残糸保持位置の下方に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、残糸保持位置の下方に残糸回収装置の回収口が配置されているため、残糸抜き取り装置から落下した残糸が残糸回収装置により回収される。したがって、残糸回収装置により、確実に残糸を回収することができる。
【0008】
第2の発明に係る残糸除去装置は、第1の発明に係る残糸除去装置において、前記残糸回収装置は、前記回収口を形成する部材であって、前記回収口が前記残糸保持位置の下方に位置する残糸回収位置と、前記残糸保持位置の下方に前記ボビンが配置可能となるように前記残糸回収位置から退避した退避位置との間で移動可能となった回収口形成部材を備えていることを特徴とする。
【0009】
ボビンの軸方向が上下方向であり、残糸抜き取り装置が残糸を上方に抜き取るとともに残糸保持位置で保持するものである場合、残糸の抜き取りの邪魔となるため、残糸回収装置の回収口を残糸保持位置の下方に配置したままとすることはできない。しかしながら、本発明によると、回収口形成部材が回収位置と退避位置との間で移動可能となっているため、回収口形成部材を回収位置に移動させれば、残糸保持位置から落下した残糸を回収することができ、回収口形成部材を退避位置に移動させれば、残糸保持位置の下方にボビンを配置させ、残糸抜き取り装置によりボビンの残糸を抜き取ることが可能となる。
【0010】
第3の発明に係る残糸除去装置は、第2の発明に係る残糸除去装置において、前記回収口形成部材は、一方向に延びており、その先端が前記回収口になっているとともに、その基端部が水平な回動軸に回動自在に支持された筒状部材であり、前記筒状部材は、前記退避位置にある状態では直立した姿勢となり、前記回収位置にある状態では、直立した姿勢に対して傾いた姿勢となることを特徴とする。
【0011】
本発明によると、水平な回動軸を中心に回動可能な筒状部材により、退避位置と回収位置との間で移動可能な回収口形成部材を形成することができる。
【0012】
第4の発明に係る残糸除去装置は、第2又は第3の発明に係る残糸除去装置において、前記残糸抜き取り装置は、前記回収口形成部材が前記回収位置にきたときに、残糸の保持を解除することを特徴とする。
【0013】
本発明によると、回収口形成部材が回収位置にきたときに、残糸抜き取り装置による残糸の保持が解除されるため、残糸保持位置から落下した残糸は、確実に回収口に入る。したがって、残糸回収装置によって確実に残糸が回収される。
【0014】
第5の発明に係る残糸除去装置は、第1〜第4のいずれかの発明に係る残糸除去装置において、前記残糸保持位置に保持された残糸を落下させる残糸落下機構をさらに備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明によると、残糸落下機構により、確実に、残糸保持位置から回収口に残糸を落下させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、残糸保持位置の下方に残糸回収装置の回収口が配置されているため、残糸抜き取り装置から落下した残糸が残糸回収装置により回収される。したがって、残糸回収装置により、確実に残糸を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る残糸除去装置の概略構成図である。
【図2】図1の残糸把持機構の平面図である。
【図3】図2において上側の基材を除いた図である。
【図4】図3においてさらに下側の基材を除いた図である。
【図5】図2〜図4における回動部材と3つの把持爪との位置関係を示す図である。
【図6】図1を矢印VIの方向から見た図である。
【図7】残糸抜き取り装置及びボビン押さえ装置を降下させた状態を示す図である。
【図8】図7の状態での残糸把持機構の図4相当の図である。
【図9】図7の状態での残糸把持機構の図5相当の図である。
【図10】ボビンから残糸を抜き取った直後の状態を示す図である。
【図11】筒状部材を回動させて、回収口を把持爪の下方に位置させた状態を示す図である。
【図12】把持爪が把持していた残糸を回収口に落下させているときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好適な実施の形態について説明する。図1に示すように、残糸除去装置1は、残糸抜き取り装置2、ボビン押さえ装置3、残糸回収装置4、糸有無センサ5、糸量センサ6などを備えている。
【0019】
残糸抜き取り装置2は、残糸把持機構11とエアシリンダ12とを備えている。残糸把持機構11は、図1〜図5に示すように、2枚の基材21、22、回動部材23、3つの把持爪ユニット24、回動アーム25、エアシリンダ26などを備えている。
【0020】
2枚の基材21、22は、金属材料からなる略円形の板状体であり、残糸抜き取り装置2により残糸Rが抜き取られる、上下方向を軸方向とするボビンBの上方に、上下に重なって配置されている。2枚の基材21、22のうち、上側(図2の紙面手前側)に配置された基材21には、その略中央部に略円形の貫通孔21aが形成されている。また、基材21には、その外周端と貫通孔21aとの間の部分に、それぞれが周方向に延びているとともに、周方向に間隔をあけて配置された3つのガイド孔21bが形成されている。また、基材21の図2における下側の端部は、径方向外側に突出した突出部21cとなっている。
【0021】
2枚の基材21、22のうち、下側(図2の紙面奥側)に配置された基材22には、貫通孔21a及び3つのガイド孔21bと重なる位置に、それぞれ、貫通孔21aとほぼ同じ形状の貫通孔22a、及び、ガイド孔21bとほぼ同じ形状のガイド孔22bが形成されている。
【0022】
回動部材23は、基材21と基材22との間の配置されており、基材21、22の周方向に延びて、3つのガイド孔21b及び3つのガイド孔22bと重なっている。また、回動部材23には、3つのガイド孔21b、及び、3つのガイド孔22bと重なる部分に、回動部材23を上下に貫通する3つの貫通部材31が取り付けられている。
いる。
【0023】
3つの貫通部材31は、ガイド孔21bを通って基材21を貫通しており、これらの貫通部材31のうち真ん中の貫通部材31には、基材21よりも上方に位置するその上端部に、略円柱形状の嵌合ピン32が取り付けられている。また、3つの貫通部材31は、ガイド孔22bを通って基材22を貫通しており、基材22よりも下方に位置するその下端部に略円柱形状の案内部材33が設けられている。
【0024】
また、ガイド孔21b、22bを貫通するように延びた貫通部材31は、ガイド孔21b、22bに沿って、基材21、22の周方向に移動可能となっており、これにより、貫通部材31が設けられた回動部材23が、基材21、22の周方向に回動可能となっている。
【0025】
3つの把持爪ユニット24は、基材22の下方に、ボビンBの周方向に沿って配置されている。また、各把持爪ユニット24は、それぞれ、基材22の周方向の両側から、基材22の下面に配置された2本のガイドレール46に挟まれており、ガイドレール46に沿ってボビンBの径方向に移動可能となっている。また、3つの把持爪ユニット24には、それぞれ、ボビンBの径方向に関する内側の端部に残糸Rを把持するための把持爪43が設けられている。
【0026】
また、各把持爪ユニット24の上面には、案内溝47が形成されている。案内溝47は、上述の案内部材33の直径とほぼ同じ幅の溝であり、両側壁面が案内面47a、47bとなっている。また、案内溝47は、ボビンBの周方向に関して図3の反時計回り方向側の部分ほど、ボビンBの径方向に関して内側に位置するように延びている。案内溝47内には、上述の案内部材33が配置されており、案内部材33の外周面が、案内溝47の案内面47a、47bに当接している。
【0027】
回動アーム25は、金属材料などからなる水平方向に延びた板状の部材であり、基材21の上面に配置されているとともに、その略中央部が、基材21の突出部21cに設けられた、鉛直方向に延びた回動軸61に回動自在に支持されている。また、回動アーム25の一方の端部には、回動アーム25を貫通する長孔62が形成されており、長孔62には上述の嵌合ピン32が嵌合している。
【0028】
また、回動アーム25の長孔62と反対側の端部は、基材21と重ならない位置まで延びており、エアシリンダ26のピストン26aに取り付けられている。これにより、エアシリンダ26を駆動して、ピストン26aに取り付けられた回動アーム25の端部を図2の左右方向に移動させることによって、回動アーム25を、回動軸61を中心に回動させることができる。
【0029】
また、残糸把持機構11は、上述の基材21及びエアシリンダ26が、それぞれ、取り付け部材67を介してエアシリンダ12のピストン12aに固定されることによって、エアシリンダ12に取り付けられている。エアシリンダ12は、残糸除去装置1の機台1aに固定されており、ピストン12aを昇降させることによって、残糸把持機構11を昇降させる。また、ピストン12aには、その上端部に発光素子72が設けられており、発光素子72は、エアシリンダ12の外部に向けて図1の左方に光を照射する。
【0030】
エアシリンダ12の図1における左側には、上下に並んだ状態で残糸除去装置1の機台1aに取り付けられた4つの受光素子73a〜73dが配置されている。受光素子73a〜73dは、発光素子72から照射された光を受光するものであり、ピストン12aが昇降して、発光素子72が受光素子73a〜73dと同じ高さにきたときに、それぞれ、発光素子72から照射された光を受光する。これにより、ピストン12aが受光素子73a〜73dに対応する高さにきたことを検出することができる。なお、受光素子73a〜73dが、それぞれ、どのような高さに配置されているかについては、後程説明する。
【0031】
ボビン押さえ装置3は、押さえ部材81とエアシリンダ82とを備えている。押さえ部材81は、残糸Rが除去されるボビンBのほぼ真上に配置された、基材21、22の貫通孔21a、22aよりも径の小さい略円柱形状の部材である。また、押さえ部材81の下面には、ボビンBの上端部が係合可能な略円形の凹部81aが形成されている。凹部81aは、テーパ状になっており、上側の部分ほど径が小さくなっている。押さえ部材81は、エアシリンダ82のピストン82aに取り付けられており、エアシリンダ82は、ピストン82aを昇降させることによって押さえ部材81を昇降させる。
【0032】
残糸回収装置4は、筒状部材91(回収口形成部材)、エアシリンダ92などを備えている。筒状部材91は、残糸の除去を行う前の状態(図1の状態)でほぼ鉛直方向に延びた筒状の部材であり、軸方向断面が略矩形となっている。また、筒状部材91の内部空間は、残糸Rを回収するための残糸回収経路91aとなっており、残糸回収経路91aの上端(先端)が、残糸Rを残糸回収経路91aに導入するための回収口91bとなっている。一方、残糸回収経路91aの下端は、図示しない負圧源に接続されている。これにより、残糸回収装置4においては、回収口91bから残糸回収経路91aに導入された残糸Rを吸引することができるようになっている。
【0033】
また、筒状部材91は、その下端部(基端部)が、図1の紙面垂直方向に延びた(水平な)回動軸93に回動自在に支持されているとともに、回動軸93よりも少し上の部分にエアシリンダ92のピストン92aが取り付けられている。エアシリンダ92は、機台1aに取り付けられており、ピストン92aを移動させることによって、筒状部材91を、回動軸93を中心に回動させる。
【0034】
糸有無センサ5は、ボビンBにおける残糸Rの有無検出するためのセンサである。糸量センサ6は、糸有無センサ5により残糸Rが検出されたボビンBにおける残糸Rの量が所定量以下であるか否かを検出するためのセンサである。
【0035】
より詳細に説明すると、図1、図6に示すように、残糸把持機構11の2枚の基材21、22、回動部材23及び3つの把持爪ユニット24や、ボビン押さえ装置3の下方には、図6の上下方向に延びたレール101が設けられている。レール101は、一方の端部(図6における上端部)において処理ボビン供給経路102に接続されているとともに、他方の端部(図6における下端部)において処理ボビン排出経路103に接続されている。レール101、処理ボビン供給経路102及び処理ボビン排出経路103は、トレイ100を走行させるためのものであり、ボビンBは、トレイ100の上端に、上下方向を軸方向とする直立した姿勢で支持されている。
【0036】
そして、レール101には、処理ボビン供給経路102から、図示しない自動ワインダーなどにおいて、糸の供給が完了して排出されたボビンBが供給される。また、後述するように、レール101から処理ボビン排出経路103にボビンBが排出される。
【0037】
糸有無センサ5は、上下方向に延びた回動軸5aを備えており、回動軸5aが、機台1aに取り付けられた取り付け部材104に回動可能に支持されている。また、糸有無センサ5は、平面視で回動軸5aとずれた位置において上下方向に延びた接触部5bを備えており、接触部5bが、レール101のうち、残糸把持機構11の基材21、22、回動部材23及び3つの把持爪ユニット24や、ボビン押さえ装備3のほぼ真下の残糸抜き取り位置(図7の一点鎖線で囲まれたボビンBの位置)よりも処理ボビン供給経路102側(図7の上側)の部分の近傍に配置されている。
【0038】
そして、レール101の当該部分を通過するボビンBに残糸Rがある場合には、残糸Rが接触部5bに接触し、これにより、糸有無センサ5が回動軸5aを中心に回動する。一方、残糸Rがない場合には、ボビンBは、接触部5bに接触しない。これにより、糸有無センサ5が回動軸5aを中心に回動するか否かによって、ボビンBにおける残糸Rの有無を検出することができる。
【0039】
そして、糸有無センサ5により、ボビンBにおいて残糸Rが検出された場合には、次に説明する、糸量センサ6による残糸Rの量の検出が行われる。一方、糸有無センサ5により、ボビンBにおいて残糸Rが検出されなかった場合には、次に説明する残糸Rの量の検出や、後述する残糸Rの抜き取りは行われず、当該ボビンBは、そのまま、処理ボビン排出経路103に排出され、ボビン搬送経路103からボビンBに糸を巻き取るための糸巻取装置に搬送される。
【0040】
糸量センサ6は、発光素子と受光素子とが隣接して配置された、いわゆる反射型の光学式センサであり、レール101の、上記残糸抜き取り位置よりもボビン供給流路102側(図6の上側)であり、且つ、糸有無センサ5が設けられた部分の処理ボビン排出経路103側(図6の下側)の部分に搬送されてきたボビンBのうち、糸有無センサ5により残糸Rが検出されたボビンBに向けて光を照射する。より詳細に説明すると、糸量センサ6は、ボビンBの下端部よりも少し上方に位置する部分に向けて、ボビンBとほぼ同じ色の光を照射する。なお、ボビンBの色は、糸の色とは異なっている(例えば、ボビンBの色が赤で、糸の色が白となっている)。
【0041】
このとき、ボビンBの残糸Rの量が多く、ボビンBの、糸量センサ6の発光素子から照射された部分に残糸Rがある場合には、糸量センサ6の発光素子から照射された光は、残糸Rに反射し、その反射光が糸量センサ6の受光素子に受光される。一方、ボビンBの残糸Rの量が少なく、ボビンBの、糸量センサ6の発光素子から照射された光よりも低い部分にしか残糸Rがない場合には、糸量センサ6の発光素子から照射された光は、ボビンBの外周面に当たるが、ボビンBの外周面では反射されないので、糸量センサ6の受光素子において光が受光されることはない。
【0042】
これにより、糸量センサ6においては、受光素子において上記反射光が受光されるか否かによって、ボビンBにおける残糸Rの量が所定量(発光素子から照射される光の高さに対応する量)以上であるか否かを検出することができる。
【0043】
そして、残糸Rの量が所定量よりも少ない場合には、ボビンBは、次に説明する残糸Rの抜き取りが行われた後に、処理ボビン排出経路103に送られ、処理ボビン排出経路103から、ボビンBに糸を巻き取るための糸巻取装置に搬送される。一方、残糸Rの量が所定量以上の場合には、残糸Rの抜き取りは行われず、そのまま処理ボビン排出経路103に送られ、処理ボビン排出経路103から自動ワインダーに戻され、自動ワインダーにおいて、当該ボビンから糸が供給される。
【0044】
次に、残糸除去装置1を用いて、ボビンBの残糸Rを除去する方法について説明する。ここで、以下に説明する残糸Rの除去は、上述したように、処理ボビン供給経路102からレール101に搬送されてきたボビンBのうち、糸有無センサ5により残糸Rが検出され、且つ、糸量センサ6により残糸Rの量が所定量以上であることが検出されなかったボビンBに対してのみ行われる。残糸Rの除去が行われるボビンBは、レール101に沿って、残糸把持機構11の基材21、22や、ボビン押さえ装置3のほぼ真下の残糸抜き取り位置まで搬送され、残糸Rが抜き取られるまでの間、その位置で静止する。
【0045】
一方、残糸抜き取り装置2においては、残糸Rの抜き取りを行う前の状態では、図2〜図5に示すように、回動部材23に設けられた3つの案内部材33が、それぞれ、対応する把持爪ユニット24の案内溝47のうち、基材21、22の径方向に関して最も内側に位置する一方の端部の近傍に位置しており、把持爪43は、基材21、22の径方向に関して、ボビンBの外周面よりも外側に位置している。なお、以下では、このように3つの把持爪43がボビンBの径方向に関してボビンBの外周面から離隔している状態を、離隔状態と定義して説明を行う。
【0046】
また、エアシリンダ12においては、ピストン12aが、発光素子72が受光素子73aとほぼ同じ高さに位置している。このとき、残糸把持機構11は、ボビンBの上端よりも上方に位置している。すなわち、受光素子73aは、残糸把持機構11がボビンBの上端よりも上方のある高さに位置しているときの、発光素子72と同じ高さに設けられている。
【0047】
また、ボビン押さえ装置3においては、押さえ部材81が、ボビンBの上端よりも上方に位置している。また、残糸回収装置4においては、図1に示すように、筒状部材91がほぼ直立した姿勢となっており、機台1aの内部に収まっている。なお、このときの、筒状部材91の位置が、本発明に係る退避位置に相当する。そして、これにより、筒状部材91が、ボビンBの搬送の邪魔になったり、ボビンBを上記残糸抜き取り位置に配置することができなくなったりすることがない。
【0048】
そして、残糸Rを除去すべきボビンBが、上記残糸抜き取り位置に搬送されてくると、エアシリンダ12において、図8に矢印A1で示したように、ピストン12aを、発光素子72が受光素子73dとほぼ同じ高さになるまで降下させる。このとき、残糸把持機構11は、把持爪43がボビンBの下端部とほぼ同じ高さにくるまで降下する。すなわち、受光素子73dは、把持爪43がボビンBの下端部とほぼ同じ高さに位置しているときの発光素子72とほぼ同じ高さに設けられている。
【0049】
また、このとき、基材21、22には、上述したように、その略中央部に貫通孔21a、22aが形成されているため、残糸把持機構11を降下させたときに、ボビンBは貫通孔21a、22aを通過する。したがって、ボビンBが、残糸把持機構11と接触してしまうことがない。
【0050】
さらに、残糸把持機構11の降下とほぼ同時に、図7に矢印A2で示したように、ボビン押さえ装置3において、エアシリンダ82により、押さえ部材81を、凹部81aがボビンBの上端部に嵌合する位置まで降下させる。
【0051】
次に、残糸把持機構11において、エアシリンダ26を駆動して、図8に矢印A3で示したように、ピストン26aを伸ばすことにより、矢印A4に示したように、回動アーム25を、図の反時計回り方向に回動させる。すると、回動軸61を挟んでピストン26aと反対側に位置する、回動アーム25の長孔62が形成された部分が、矢印A5で示したように図中左方に移動する。これにより、長孔62に嵌合された嵌合ピン32と嵌合ピン32が取り付けられた貫通部材31がガイド孔21b、22bに沿って、図8の時計回り方向に移動する。これに伴って、残り2つの貫通部材31も、ガイド孔21b、22bに沿って図9の時計回り方向に移動し、3つの貫通部材31の移動によって、回動部材23が、矢印A6で示したように図8の時計回り方向に回動する。
【0052】
回動部材23がこのように回動すると、回動部材23に設けられた3つの案内部材33が、それぞれ、図9に矢印A7a〜A7cで示したように、対応する把持爪ユニット24の案内溝47(案内面47a、47b)に沿って、案内溝47の基材21、22の径方向に関して外側に位置する他方の端部の近傍まで移動する。
【0053】
このとき、3つの貫通部材31がガイド孔21b、22bに挿通されているため、案内部材33は、基材21、22の径方向には移動できない。そのため、3つの把持爪ユニット24が、図8に矢印A8a〜A8cで示したように、ガイドレール46に沿ってボビンBの径方向内側に移動し、把持爪43が、ボビンBの外周面に押し付けられる。そして、これにより、3つの把持爪43によってボビンBの残糸Rが把持される。なお、以下では、このように3つの把持爪43がボビンBの外周面に押し付けられている状態を、把持状態と定義して説明を行う。
【0054】
次に、この状態で、エアシリンダ12を駆動して、ピストン12aを、発光素子72が受光素子73cと同じ高さがにくるまで上昇させる。このとき、残糸把持機構11は、把持爪43がボビンBの途中のある部分と同じ高さまで上昇する。すなわち、受光素子73cは、把持爪43がボビンBの途中のある部分と同じ高さとなったときの、発光素子72とほぼ同じ高さに配置されている。
【0055】
そして、この残糸把持機構11の上昇により、把持爪43に把持されたボビンBの残糸Rは、ボビンBの軸方向に沿って上方に持ち上げられる。このとき、ボビンBの上端が押さえ部材81によって押さえられているため、ボビンBが残糸Rと一緒に持ち上げられてしまうことはない。
【0056】
次に、エアシリンダ26を駆動して3つの把持爪43をボビンBの径方向外側に移動させることによって、上記離隔状態(図2〜図4の状態)に戻してから、上述したのと同様、エアシリンダ12により、残糸把持機構11を図8に示す位置まで降下させる。続いて、上述したのと同様に、エアシリンダ26を駆動して3つの把持爪43をボビンBの径方向内側に移動させることにより、再度、上記把持状態(図8の状態)とし、この状態で、エアシリンダ12を駆動して、残糸把持機構11を上昇させて、ボビンBの残糸Rを持ち上げる。
【0057】
ただし、このときには、ピストン12aを、発光素子72が受光素子73cの上方に配置された受光素子73bと同じ高さにくるまで上昇させる。このとき、残糸把持機構11は、把持爪43がボビンBの途中の前回の上昇時よりも高い位置にくるまで上昇する。すなわち、受光素子73bは、受光素子73cよりも少し上方に配置されている。
【0058】
次に、再度、上記離隔状態に戻してから、上述したのと同様、エアシリンダ12により、残糸把持機構11を図7に示す位置まで降下させる。続いて、再度、上記把持状態にしてから、エアシリンダ12を駆動して、図11に矢印A9に示したように、ピストン12aを、発光素子72が受光素子73aと同じ高さにくるまで上昇させる。これにより、残糸把持機構11は、把持爪43がボビンBよりも上方の位置まで上昇する。
【0059】
さらに、このとき、把持爪43がボビンBの上端部と同じ高さにきたタイミングで、図11に矢印A10で示したように、エアシリンダ82を駆動して、押さえ部材81を、抜き取った残糸Rとともに、ボビンBの上端よりも上方まで上昇させ、その位置で停止させる。なお、このときの、把持爪43によって保持されている残糸Rの位置が、本発明に係る残糸保持位置に相当する。
【0060】
これにより、ボビンBの残糸Rは、残糸把持機構11に持ち上げられることによってボビンBから抜き取られ、ボビンBの上方において、3つの把持爪43によって把持される。また、このとき、上述したように、把持爪43の上昇と降下を繰り返すことにより、ボビンBの残糸Rは、少しずつ上方に持ち上げられた上でボビンBから抜き取られる。したがって、ボビンBから確実に残糸Rを抜き取ることができる。
【0061】
次に、残糸Rが抜き取られたボビンBが、レール101から処理ボビン排出経路103に向けて搬送されてから、エアシリンダ92を駆動して、図11に矢印A11で示したように、筒状部材91を図の時計回り方向に回動させることによって、筒状部材91を、回収口91bが残糸保持位置にある残糸Rのほぼ真下にくるまで傾ける。なお、このときの筒状部材91の位置が、本発明に係る回収位置に相当する。続いて、上記離隔状態に戻すことにより、把持爪43による残糸Rの把持を解除してから、図12に矢印A12で示したように、押さえ部材81を自重で降下させる。
【0062】
すると、押さえ部材81が、貫通孔21a、22a及び3つの把持爪43に囲まれた領域を通過して、3つの把持爪43よりも下方まで降下し、このとき、3つの把持爪43による把持が解舒された残糸Rが、押さえ部材81によって下方に押されて落下する。そして、落下した残糸Rが、回収口91bから筒状部材91内に導入されて吸引される。なお、本実施の形態では、ボビンBを押さえるためのボビン押さえ装置3が、把持爪43に把持された残糸Rを落下させるための残糸落下機構を兼ねている。
【0063】
この後、エアシリンダ82により押さえ部材81を上昇させるとともに、エアシリンダ92により筒状部材91を、図1の反時計回り方向に回動させることにより、図1の状態に戻す。そして、以下、同様にして、残糸抜き取り位置に搬送されてきたボビンBの残糸Rの除去が順次行われる。
【0064】
以上に説明した実施の形態によると、ボビンBから抜き取った残糸Rを、把持爪43から落下させるとともに、落下させた残糸Rを、把持爪43の下方に設けられた回収口91bから残糸回収経路91aに導入することによって回収するため、残糸Rを確実に回収することができる。
【0065】
また、本実施の形態では、ボビンBから残糸Rを抜き取る際には、把持爪43の下方にボビンBが配置され、抜き取った残糸Rを回収する際には、把持爪43の下方に回収口91bを含む筒状部材91の上端部が配置される。しかしながら、本実施の形態では、筒状部材91は、水平な回動軸93を中心に回動可能となっており、エアシリンダ92により筒状部材91を回動させることによって、筒状部材91を、直立した姿勢となって機台1a内に収まった把持爪43の下方に位置していない退避位置と、回収口91bが把持爪43の下方に位置するように傾いた姿勢となる回収位置との間で移動可能となっている。
【0066】
したがって、ボビンBから残糸Rを抜き取る際に、筒状部材91を上記退避位置に位置させておけば、筒状部材91が邪魔になることはない。そして、残糸Rが抜き取られたボビンBがレール101から処理ボビン排出経路103に送られた後に、筒状部材91を上記回収位置に位置させて、把持爪43から回収口91bに残糸Rを落下させれば、残糸Rを回収することができる。
【0067】
また、残糸Rを回収する際に、3つの把持爪43を、ボビンBの径方向に関して、ボビンBの外周面から離隔した位置に移動させて、把持爪43による残糸Rの把持を解除した上で、押さえ部材81を降下させることによって、残糸Rを下方に押し出して落下させるため、残糸Rが把持爪43に引っ掛かって残ってしまうことがなく、残糸Rを確実に回収することができる。
【0068】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については、適宜その説明を省略する。
【0069】
上述の実施の形態では、残糸Rを回収する際に、把持爪43による残糸Rの把持を解除した上で、押さえ部材81を降下させることによって残糸Rを落下させたが、これには限られない。押さえ部材81を降下させず、把持爪43による残糸Rの把持を解除することのみによって、把持爪43から残糸Rを落下させてもよい。
【0070】
あるいは、把持爪43により残糸Rが把持された状態のまま、押さえ部材81を降下させることによって、残糸Rを落下させてもよい。ただし、この場合には、押さえ部材81を、3つの把持爪43に囲まれた領域を通過することができるようなものとする必要がある。具体的には、例えば、押さえ部材81を、凹部81aが形成されていない、ボビンBよりも径が小さく、ボビンBの上端に当接することによってボビンBを押さえるものとする必要がある。
【0071】
また、上述の実施の形態では、ボビンBを押さえるボビン押さえ装置3により把持爪43に把持された残糸Rを落下させたが、これには限られず、ボビン押さえ装置81とは別に設けられた残糸落下機構によって、把持爪43に把持された残糸Rを落下させるようにしてもよい。
【0072】
また、上述の実施の形態では、回収口91bを形成する回収口形成部材が、回動軸93を中心に回動することによって、直立した姿勢で機台1aの内部に収まった退避位置と、回収口93aが把持爪43の下方に位置するように傾いた姿勢となる回収位置との間で移動可能となった筒状部材91によって構成されていたが、これには限られない。
【0073】
例えば、残糸Rの回収口が形成された回収口形成部材が、水平に移動することによって、機台1a内部に収まった退避位置と、把持爪43と対向する回収位置との間で移動可能となっているなど、他の構成によって、回収口形成部材が、残糸を回収するための残糸回収位置と、残糸回収位置から離隔した退避位置との間で移動可能となっていてもよい。また、このとき、回収口形成部材は筒状であることには限られない。
【0074】
また、残糸の回収口を形成する回収口形成部材は、退避位置にある状態で機台1a内部に完全に収まっていたが、これには限られない。回収口形成部材は、退避位置にある状態で、ボビンBや残糸Rの抜き取りの邪魔にならない位置にあればよく、少なくとも一部分が機台1aの外部にはみ出していてもよい。
【0075】
また、上述の実施の形態では、残糸抜き取り装置2の残糸把持機構11が、3つの把持爪43により残糸Rを把持するものであったが、これには限られない。例えば、残糸把持機構が2つ又は4つ以上の把持爪により残糸Rを把持するものであってもよい。さらには、残糸抜き取り装置は、把持爪によって残糸Rを把持することによってボビンBから残糸Rを抜き取るものであることには限られず、ボビンBから残糸Rを抜き取ることが可能な他の構成を備えたものであってもよい。
【0076】
また、上述の実施の形態では、残糸除去装置1が、トレイ100により、軸方向が上下方向となるような姿勢で支持されたボビンBの残糸Rを、残糸抜き取り装置2によって上方に抜き取るものであったが、これには限られない。例えば、ボビンBが、その軸方向が水平方向となるような姿勢で支持されており、ボビンBの残糸Rを水平方向に抜き取るものであってもよい。
【0077】
この場合でも、残糸Rの回収口を、残糸抜き取り装置の下方に配置することにより、残糸抜き取り装置から落下する残糸Rを確実に回収することができる。また、この場合には、回収口形成部材を、残糸抜き取り装置の下方に、ボビンBや残糸抜き取り装置から少し離れた位置に配置すれば、回収口形成部材が、ボビンに干渉したり、残糸抜き取り装置による残糸Rの抜き取りの邪魔になったりすることがない。したがって、この場合には、回収口形成部材は、回収位置と退避位置との間で移動可能なものでなくてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 残糸除去装置
2 残糸抜き取り装置
3 ボビン押さえ装置
4 残糸回収装置
91 筒状部材
91a 回収口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンから残糸を抜き取る残糸抜き取り装置と、
前記残糸抜き取り機構が抜き取った残糸を回収する残糸回収装置と、を備え、
前記ボビンは、その軸方向が上下方向となるように配置されたものであり、
前記残糸抜き取り装置は、前記ボビンの残糸を上方に抜き取るとともに、前記ボビン上方の残糸保持位置で保持するものであって、
前記残糸回収装置の残糸の回収口が、前記残糸保持位置の下方に配置されていることを特徴とする残糸除去装置。
【請求項2】
前記残糸回収装置は、
前記回収口を形成する部材であって、前記回収口が前記残糸保持位置の下方に位置する残糸回収位置と、前記残糸保持位置の下方に前記ボビンが配置可能となるように前記残糸回収位置から退避した退避位置との間で移動可能となった回収口形成部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の残糸除去装置。
【請求項3】
前記回収口形成部材は、一方向に延びており、その先端が前記回収口になっているとともに、その基端部が水平な回動軸に回動自在に支持された筒状部材であり、
前記筒状部材は、前記退避位置にある状態では直立した姿勢となり、前記回収位置にある状態では、直立した姿勢に対して傾いた姿勢となることを特徴とする請求項2に記載の残糸回収装置。
【請求項4】
前記残糸抜き取り装置は、前記回収口形成部材が前記回収位置にきたときに、残糸の保持を解除することを特徴とする請求項2又は3に記載の残糸除去装置。
【請求項5】
前記残糸保持位置に保持された残糸を落下させる残糸落下機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の残糸除去装置。
【請求項1】
ボビンから残糸を抜き取る残糸抜き取り装置と、
前記残糸抜き取り機構が抜き取った残糸を回収する残糸回収装置と、を備え、
前記ボビンは、その軸方向が上下方向となるように配置されたものであり、
前記残糸抜き取り装置は、前記ボビンの残糸を上方に抜き取るとともに、前記ボビン上方の残糸保持位置で保持するものであって、
前記残糸回収装置の残糸の回収口が、前記残糸保持位置の下方に配置されていることを特徴とする残糸除去装置。
【請求項2】
前記残糸回収装置は、
前記回収口を形成する部材であって、前記回収口が前記残糸保持位置の下方に位置する残糸回収位置と、前記残糸保持位置の下方に前記ボビンが配置可能となるように前記残糸回収位置から退避した退避位置との間で移動可能となった回収口形成部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の残糸除去装置。
【請求項3】
前記回収口形成部材は、一方向に延びており、その先端が前記回収口になっているとともに、その基端部が水平な回動軸に回動自在に支持された筒状部材であり、
前記筒状部材は、前記退避位置にある状態では直立した姿勢となり、前記回収位置にある状態では、直立した姿勢に対して傾いた姿勢となることを特徴とする請求項2に記載の残糸回収装置。
【請求項4】
前記残糸抜き取り装置は、前記回収口形成部材が前記回収位置にきたときに、残糸の保持を解除することを特徴とする請求項2又は3に記載の残糸除去装置。
【請求項5】
前記残糸保持位置に保持された残糸を落下させる残糸落下機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の残糸除去装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−67454(P2013−67454A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205731(P2011−205731)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
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