説明

段ボールおよびキャリアテープ用リール

【課題】紙粉の影響を抑制し、安価で軽量な段ボールおよびキャリアテープ用リールを提供する。
【解決手段】側板1,2の表面および裏面には紙粉発生を抑制する表面処理を施し、また段ボールを使用したために側板1,2の切断面に形成される空間部11を塞いで内部からの紙粉が空間部11を通して外部へ飛散するのを防止する紙粉飛散防止手段を施し、望ましくは空間部11が露出する外周部端面7における紙粉飛散防止手段は、同部への接着剤の塗布工程と、同部を形状に合わせた押し型によるプレス工程とによって実現し、安価な段ボールを使用して側板1,2を形成しても、キャリアテープに収納した電子部品などに紙粉が付着するのを防止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品などを収納したキャリアテープを巻き取るために使用されるキャリアテープ用リールのように紙粉発生を抑える必要がある用途で使用される段ボールおよびキャリアテープ用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ICやLSI等の電子部品などはキャリアテープに封止して包装され、このキャリアテープをキャリアテープ用リールに巻き取った状態で保管されたり運搬に使用されたりする。このようなキャリアテープを巻き取るキャリアテープ用リールは、所要の幅を有する巻芯を備え、この巻芯の両側に径大な側板をそれぞれ設けて構成されている。従来のキャリアテープ用リールとしては、段ボールを使用して構成したものやプラスチック製のものもある(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−91068号公報
【特許文献2】実開平6−61874号公報
【特許文献3】登録実用新案第3059762号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のキャリアテープ用リールで側板などにプラスチックなどの化成品を使用したものは、クリーン度が要求される環境下での使用は増える傾向にあるが、使用済みのものを回収するコストは高く、また廃棄時の環境汚染も懸念される上、実際の回収は思うように進んでいない状況である。これに対して、環境面の配慮から段ボールなどの紙系包装材の利用が増加しており、国内における段ボールのリサイクル率は90%を超え、段ボール原紙の古紙配合率が年々高まっていることから、段ボール原紙の繊維長はさらに短くなる傾向にあるため、表面強度や耐摩耗性が以前より低下していると考えられ、輸送中の紙粉発生問題が生じる。紙系包装材の増加、包装コストの低減が進むにつれ、輸送振動における包装材の紙粉対策、擦れ対策に重点が置かれるようになってきたが、現状では輸送中の製品と包装材の接触による紙粉対策は不十分であり、紙粉のついた製品にエアーを吹きかけて落とす作業等で対応している。同様に、キャリアテープ用リールでも簡単な紙粉対策が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、紙粉の影響を抑制し、安価で軽量な段ボールおよびキャリアテープ用リールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、外層部間に波状の内層部を配置して構成した段ボールにおいて、前記波状の内層部によって形成される空間部が外部に露出する切断部分に、前記空間部を封じる紙粉飛散封止手段を施し、この紙粉飛散封止手段によって前記空間部内から外部への紙粉飛散を防止したことを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、空間部が露出する切断面にこの空間部を封じる紙粉飛散封止手段を施しているため、これまで紙粉の発生を防止できなかった部分からの紙粉飛散を簡単に防止することができる。従って、複雑な内部の表面処理を行うことなく、内部からの紙粉飛散を簡単かつ安価に軽量のまま防止することができ、紙粉発生を抑制したい用途での使用範囲を拡大することができる。
【0008】
また本発明は、段ボール製の一対の側板と、これら両側板の中心部に配置した巻芯とを有し、前記巻芯にキャリアテープを巻き取り可能に構成したキャリアテープ用リールにおいて、前記段ボールに形成されている空間部が外部に露出する切断部分に、前記空間部を封じる紙粉飛散封止手段を施し、この紙粉飛散封止手段によって前記空間部内から外部への紙粉飛散を防止したことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、一対の側板を段ボール製としながらも、空間部が露出する切断面にこの空間部を封じる紙粉飛散封止手段を施しているため、キャリアテープに収納した電子部品などに紙粉が付着するのを簡単に防ぐことができ、しかもプラスチック製リールなど使用することなく紙粉対策ができるので安価で軽量なリールを提供することができる。
【0010】
さらに本発明は、上述の構成に加えて、前記両側板の表面および裏面に、同部からの紙粉発生を抑制する表面処理を施したことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、安価な段ボールを使用して側板を形成しても、側板の表面だけでなく切断面における空間部を通しての紙粉飛散までも抑制することができ、キャリアテープに収納した電子部品などに紙粉が付着するのを防止することができる。しかも、段ボールの素材の機能、つまり導電性や緩衝性を損なうことがなく、軽量で、リサイクルが可能で、コスト面でも安価なものとすることができる。
【0012】
さらに本発明は、上述の構成に加えて、前記紙粉飛散封止手段は、前記切断面に接着剤を塗布した後に、同部をプレスして構成したことを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、さらに紙粉飛散封止手段として接着剤を使用することによって、接着剤塗布後のプレス時に、切断作業時の段高を是正しながら型を整えることができ、処理後の見栄えもきれいにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による段ボール製リールは、空間部が露出する切断面にこの空間部を封じる紙粉飛散封止手段を施しているため、これまで紙粉の発生を防止できなかった部分からの紙粉飛散を簡単に防止することができる。従って、複雑な内部の表面処理を行うことなく、内部からの紙粉飛散を簡単かつ安価に軽量のまま防止することができ、紙粉発生を抑制したい用途での使用範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態によるキャリアテープ用リールを示す斜視図である。
【図2】図1に示した側板の加工前における外周面を示す正面図である。
【図3】図1に示した側板の加工後における外周面を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態によるキャリアテープ用リールを示す斜視図であり、中央部に巻芯3を介在させて円板状にした段ボール製の側板1,2を対向して固定している。巻芯3は詳細を後述するキャリアテープを側板1,2間を利用して巻き取るもので、巻芯3の近傍に位置する側板1にはキャリアテープの巻始め側端部を係止する係止溝4などを有している。両側板1,2および巻芯3の中心部には、貫通して形成した中心軸孔5を有しており、また両側板1,2における巻芯3よりも外側には、放射方向に伸びて形成した複数の窓部6を有している。
【0018】
図示しない巻き取り装置などの回転軸を両側板1,2の中心部に形成した中心軸孔5に挿入してキャリアテープ用リールをセットすると、回転軸を回転させてキャリアテープ用リールを回転させながらキャリアテープを巻き取ったり、既に巻き取られているキャリアテープを引き出すことができる。両側板1,2にはそれぞれ放射状に伸びた複数の窓部6が形成されているため、巻芯3に巻き取っているキャリアテープの巻量をこの窓部6から目視で確認できる。この目的にかなう範囲で窓部6の数や形状を種々変更することができる。
【0019】
通常、キャリアテープは、その長手方向に複数の収納ポケットを連続的に形成し、各収納ポケット内に回路基板に装着する電子部品等をそれぞれ配置した後、各収納ポケットの上部をカバーフィルムで覆うように封止して構成されている。このようなキャリアテープを図1に示したキャリアテープ用リールに巻き取った状態で保管したり搬送用として使用される。
【0020】
上述したように側板1,2は段ボール製であり同一構成であるから、以下では側板1を代表して説明する。側板1は段ボール製であるため紙粉が発生するが、これが何等かの理由で電子部品などに付着することがないようにしなければならない。そこで、側板1の上下面と、端面とにそれぞれ紙粉対策を施している。
【0021】
先ず、前者の側板1の上下面における紙粉対策では、耐摩擦性に優れた水性ワニスなどを段ボール表面にオーバーコートして表面処理を施して飛散発生を防止している。この水性ワニスは、導電性段ボールに導電性インキを塗布しやすくするためのアンダーコート用などの用途で使用する材料である。
【0022】
振動試験機上に試作した摩耗試験装置を設置し、プレス切断した金属面を表面処理した段ボールと摩擦させ、試験前後における実験試料の段ボールの質量を測定した。実験試料の段ボールには、Aフルートの普通芯段ボールを使用し、その表面に最も一般的なライナ用段ボール原紙であるクラフトライナ、水性ワニスおよび油性ワニスをオーバーコートした段ボール原紙を貼り合わせた数種類の実験試料を作製し、摩擦させたブレス切断片は、切断面の片側にバリが生じており、また切断面の粗い部分の平均表面粗さは12.3μmのものを使用した。振動条件は、荷重を15〜113Nの範囲で変化させ、振動数5Hz、振動加速度O.75G、振動時間10minとした。測定は、段ボールの段流れ方向に摩擦させた場合と、段流れと直交する方向に摩擦させた場合とについて行った。
【0023】
その結果、水性ワニス処理を施した場合の摩耗量は、クラフトライナの場合の10分の1程度に低減されており、顕著な紙粉発生防止効果が確認された。段流れと直交する方向の場合でもほぼ同じ傾向が確認された。しかも、水性ワニス処理を1度だけ施した場合よりも、2度刷りした方がより効果が高く、摩擦する部分の塗装剥離などにも効果を発揮することが確認された。
【0024】
次に、後者の側板1の端面における紙粉対策について説明する。図2に示すように側板1は、外層部9A,9B間に波状の内層部10を配置して構成した段ボールを使用し、それを円板状に切断加工している。従って、側板1の外周部端面7には所定の間隔で空間部11が形成されており、この空間部11が開放されている。上述したように側板1の上下面における紙粉発生防止対策は、側板1における上下面にのみ表面処理を施すものであるから簡単で効果的に紙粉の発生を抑制することができるが、この内部から空間部11を通して発生してくる紙粉に対しては抑制効果を期待できない。
【0025】
そこで、空間部11が露出する外周部端面7に紙粉飛散防止対策を施している。つまり、図3に示したように全ての空間部11内に接着剤を塗布し、その後、矢印で示すように上下方向から形状に合わせた押し型を使用して外層部9A,9Bを熱プレスする。すると、外層部9A,9B間が接着剤によって直接接着され、空間部11が閉じられた外周面7となる。このため、外層部9A,9Bの内面側や内層部10から紙粉が発生したとしても、外周部端面7で空間部11が封じられているため外部に飛散してくることはない。
【0026】
側板1には、窓部6を形成している切断面なども外周部端面7と同様であるから、同様に紙粉飛散防止手段を施して内部で発生した紙粉が空間部11を通して外部に飛散するのを防止する。この窓部6を形成している切断面などの紙粉飛散防止手段は、外周部端面7の紙粉飛散防止処理と同時に行うことができる。
【0027】
このような空間部11が露出する外周部端面7における紙粉飛散防止手段は、接着剤の塗布工程と、形状に合わせた押し型によるプレス工程とによって実現することができるので、内部側では複雑になる表面処理を行うことなく紙粉の飛散を防止することができ、また段ボールの所定形状を得るための切断加工時に、切断面に段高が生じるが、上述したプレス工程によってこれを是正することができる。
【0028】
このように段ボール製の側板1,2を使用したキャリアテープ用リールにおいて、側板1,2の表面および裏面には紙粉発生を抑制する表面処理、望ましくは水性ワニスなどを段ボール表面にオーバーコートした表面処理を施し、また段ボールを使用したために側板1,2の切断面に形成される空間部11を塞いで内部からの紙粉が空間部11を通して外部へ飛散するのを防止する紙粉飛散防止手段を施しているため、安価な段ボールを使用して側板1,2を形成しても、キャリアテープに収納した電子部品などに紙粉が付着するのを防止することができる。しかも、側板1,2を製作するために抜き型を使用して全体形状や窓部6の形状を決めることを従来と同様に行うことができるので、側板1,2の形状の自由度を保持することができる。さらに、段ボールの素材の機能、つまり導電性や緩衝性を損なうことがなく、軽量で、リサイクルが可能で、コスト面でも安価なものとすることができる。
【0029】
上述した実施の形態では、側板1の上下面における紙粉対策として、耐摩擦性に優れた水性ワニスなどを段ボール表面にオーバーコートして表面処理を施して飛散発生を防止しているが、その他の紙粉発生防止の表面処理を施したものを、空間部11が露出する外周部端面7における紙粉飛散防止手段に組み合わせて採用してもよい。
【0030】
また上述した実施の形態では、空間部11が露出する外周部端面7や窓部6における紙粉飛散防止対策として空間部11を塞ぐように接着剤を使用したが、これに限らず他の紙粉飛散封止手段を採用することもできる。例えば、外周部端面7にテープ状のものを貼り付けて空間部11が外部に露出するのを防止しても良い。しかしながら、紙粉飛散封止手段として接着剤を使用すると、接着剤塗布後のプレス時に、切断作業時の段高を是正しながら型を整えることができ、見栄えもきれいにすることができる。
【0031】
以上説明したように本発明によるキャリアテープ用リールでは、一対の側板を段ボール製としながらも、空間部11が露出する切断面にこの空間部11を封じる紙粉飛散封止手段を施したため、キャリアテープに収納した電子部品などに紙粉が付着するのを簡単に防ぐことができ、しかもプラスチック製リールなど使用することなく紙粉対策ができるので安価なリールを提供することができる。
【0032】
また上述した実施の形態では、段ボール製のキャリアテープ用リールについて説明したが、紙紛防止効果を期待する端子用リール、テープ状で巻き取る事が必要となる製品全般に使用される段ボールに適用することができる。つまり、空間部11が露出する切断面に接着剤やテープやその他の紙粉飛散封止手段を施して、紙粉が空間部11を通して飛散するのを防止した段ボールとして使用することができる。
【0033】
このように本発明における段ボールは、空間部11が露出する切断面にこの空間部11を封じる紙粉飛散封止手段を施したため、これまで紙粉の発生を防止できなかった部分からの紙粉飛散を簡単に防止することができる。従って、複雑な内部の表面処理を行うことなく、内部からの紙粉飛散を簡単かつ安価にして防止することができ、紙粉発生を抑制したい用途での使用範囲を拡大することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 側板
2 側板
3 巻芯
4 係止溝
5 中心軸孔
6 窓部
7 外周部端面
8 外周部端面
9A 外層部
9B 外層部
10 内層部
11 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層部間に波状の内層部を配置して構成した段ボールにおいて、
前記波状の内層部によって形成される空間部が外部に露出する切断部分に、前記空間部を封じる紙粉飛散封止手段を施し、この紙粉飛散封止手段によって前記空間部内から外部への紙粉飛散を防止したことを特徴とする段ボール。
【請求項2】
段ボール製の一対の側板と、これら両側板の中心部に配置した巻芯とを有し、前記巻芯にキャリアテープを巻き取り可能に構成したキャリアテープ用リールにおいて、
前記段ボールに形成されている空間部が外部に露出する切断部分に、前記空間部を封じる紙粉飛散封止手段を施し、この紙粉飛散封止手段によって前記空間部内から外部への紙粉飛散を防止したことを特徴とするキャリアテープ用リール。
【請求項3】
前記両側板の表面および裏面に、同部からの紙粉発生を抑制する表面処理を施したことを特徴とする請求項2に記載のキャリアテープ用リール。
【請求項4】
前記紙粉飛散封止手段は、前記切断面に接着剤を塗布した後に、同部をプレスして構成したことを特徴とする請求項2に記載のキャリアテープ用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−179847(P2012−179847A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45382(P2011−45382)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(595170579)株式会社大一 (3)
【Fターム(参考)】