説明

段ボールシート及び段ボールシート印刷方法

【課題】
段ボールシートに印刷された2次元コードの位置を店頭でも容易に確認できるようにし、かつ、カメラ付携帯電話による撮影時を容易にして、2次元バーコードの読取り精度を向上させるものである。また、2次元コードを段ボールに精度良く印刷する方法に関するものである。
【解決手段】
2次元コードと、前記2次元コードの周囲に囲み印刷枠が印刷されている段ボールシート。2次元コードと囲み印刷枠の間隔が、前記2次元コードの4セル分以上の幅離れている前項記載の段ボールシート。囲み印刷枠の幅が、前記2次元コードの3セル分以上の幅である前項記載の段ボールシート。前項記載の段ボールシートの印刷方法において、2次元コード及び2次元コードの周囲の囲み印刷枠を、同一の版を用いてフレキソ印刷により印刷する段ボールシート印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元コードを印刷した段ボールシート、及び前記段ボールシートの印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大容量の情報をコード化する方式として2次元コードが知られている。2次元コードとは、一方向のみに情報を有するバーコードに対し、水平方向と垂直方向の両方に情報を有するコードであって、QRコード(JIS X 0510)をはじめとして様々な方式が存在するが、いずれも細かいマス目状に分割された数cm〜十数cm角の略正方形であって、各セル(1マスをセルと呼び、セルは多くの場合0.3〜2mm角程度)を塗りつぶすことによってコード化する方式である。
また、2次元コードは、専用のリーダーだけでなく、いわゆるカメラ付携帯電話に代表されるデータの通信・解析手段を有するCCDカメラ(デジタルカメラ)により、情報を読取ることが可能である。
近年、カメラ付携帯電話は広く一般に普及しているため、2次元コードを物品及び物品の包装体、もしくは新聞、雑誌等の媒体に印刷することで、一般消費者に対しても各種情報を提供することが可能となった。
例えば、段ボール箱等で包装されている製品であれば、段ボール箱に、その生産地、生産者、加工地、加工業者、加工方法、流通経路、その他多くの情報のソースマーキングを施すことが可能である。とりわけ食品分野においては、近年、安全性や信頼性の観点から、これらの情報が消費者に強く求められているためこれらの情報を提供は有益である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特願2004−124692号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、消費者が例えば店頭で段ボール箱に印刷された2次元コードをカメラ付携帯電話等で読取る際には、以下のような問題が発生した。
即ち、新聞や雑誌に印刷された2次元コードを読取る場合と異なり、消費者が段ボール箱等包装体に印刷された2次元コードの内容を読取る条件は、多くは商品の購買前であって、即ち、市場や店舗等での買い物中である。従って、店頭で段ボール箱等に印刷された2次元コードを見つけ出し、カメラ付携帯電話により撮影しなくてはならない。2次元コードを読取る際には、2次元コードを、周囲の余白部分を適当な範囲含めて撮影する必要があるため、携帯電話のディスプレイに、2次元コードをその周囲の空白部分も含めて写りこむように位置や距離を調節し、ピントを合わせて撮影する必要がある。
しかし、これらの作業を、短時間で、しかも多くの場合立ったまま行うのは実際には困難な場合も多く、2次元コードの空白部分が上手く撮れなかったり、2次元コード自体も欠けたりすることで、内容読取り失敗が起こりやすかった。
【0004】
さらに、2次元コードを段ボールに印刷する場合は、段ボールは通常の紙基材と異なり段構造を有するため、表面に凹凸が存在する。2次元コードは以前用いられていたバーコードと異なり、かなり精密なパターンを印刷しなければならないが、この凹凸によって、印刷に歪みが生じ、その結果、印刷された2次元コードを読取る際に正確に読み取れないという問題が発生した。
【0005】
本発明は、段ボールシートに印刷された2次元コードの位置を店頭でも容易に確認できるようにし、かつ、カメラ付携帯電話による撮影時を容易にして、2次元バーコードの読取り精度を向上させるものである。また、2次元コードを段ボールに精度良く印刷する方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の方法をとる。
即ち、本発明の第1は、2次元コードと、前記2次元コードの周囲に囲み印刷枠が印刷されている段ボールシートである。
【0007】
本発明の第2は2次元コードと囲み印刷枠の間隔が、前記2次元コードの4セル分以上の幅離れている本発明の第1に記載の段ボールシートである。
【0008】
本発明の第3は、囲み印刷枠の幅が、前記2次元コードの3セル分以上の幅である本発明の第1〜2のいずれかに記載の段ボールシートである。
【0009】
本発明の第4は、本発明の第1〜3に記載された段ボールシートの印刷方法において、2次元コード及び2次元コードの周囲の囲み印刷枠を、同一の版を用いてフレキソ印刷により印刷する段ボールシート印刷方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、段ボールシートに印刷された2次元コードの位置を店頭でも容易に確認できるようにし、かつ、カメラ付携帯電話による撮影時を容易にして、2次元バーコードの読取り精度を向上させることが可能となった。また、2次元コードを段ボールに精度良く印刷する方法を得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、2次元コード及び前記2次元コードの周囲に囲み印刷枠が印刷されている段ボールシートである。
この囲み印刷枠は、2次元コードの印刷位置の確認を容易にするだけでなく、撮影時に、2次元コードをカメラ付携帯電話のディスプレイに写すときに、ディスプレイ上での位置合わせと撮影を容易にし、読取り精度を向上させるものである。
なお、本発明の対象となる段ボールシートに印刷する印刷枠込みのQRコード(JIS X 0510)等の2次元コードの大きさは、20〜100mm角程度が好ましく、更に好ましくは、25〜80mm角程度である。
また、2次元コードがQRコードの場合、QRコードを形成するセルの大きさは、0.4〜1.5mm角が好ましく、更に好ましくは、0.5〜1.25mm角である。
セル寸法が、0.4mm以下であると、フレキソ印刷での細部印刷が難しくなり、1.5mm以上であると、QRコード印刷部の全体が大きくなりすぎるため、読み取り時にQRコード印刷部と携帯電話の距離を大きくしなければならず、携帯電話での読取りが難しくなる。
【0012】
上記、2次元コードの周囲に印刷される囲み印刷枠は、その形状は任意であってよいが、例えば図1〜図3のような形状が例示される。
また、囲い印刷枠の縦横比に関しては、カメラ付携帯電話のディスプレイの縦横比が、多くは縦:横=1:0.5〜2.0の範囲であることから、この範囲であることがさらに望ましい。この範囲にあれば、2次元コードをディスプレイの中により的確に写し込むことが可能である。
【0013】
2次元コードと囲み印刷枠の位置関係であるが、2次元コードがQRコードの場合には、2次元コードの読取りには、2次元コードの周辺に、適当な空白部分が必要である。従って、2次元コードと囲み印刷枠の間隔が、前記2次元コードの4セル分以上の幅で離れていることが望ましい。4セル〜10セル分の範囲の幅で離れていることが更に望ましい。4セル〜7セル分の範囲の幅で離れていることが最も望ましい。間隔が4セル未満であると場合、読取り時にエラーが発生する恐れがある。また10セル以上離れている場合、囲み印刷枠と2次元コードが離れすぎて見つけにくいという問題が発生する恐れがある。また、印刷部が全体として大きくなり、カメラ付携帯電話のディスプレイの中に写し込みにくいという問題が発生する恐れがある。
【0014】
囲み印刷枠の幅であるが、ある程度の太さを有することが視認性の面から望ましい。具体的には、2次元コードの2セル分以上の幅であることが望ましく、3セル分以上が更に望ましい。
長さの単位で言えば、1.5mm以上が望ましく、更に好ましい2〜5mmの範囲であることが望ましい。2セル未満であると視認性悪く、10セル分を越えると、囲み枠が太すぎて、段ボール印刷全体の美観を悪くする恐れがある。
【0015】
囲み印刷枠の色は、2次元コードと同色でも良く、位置確認を容易にするため、2次元コードと異なる色でも良い。印刷色は、背景となる印刷面や他の部分の印刷色と比較して、コントラストの強い色を使用すると、2次元コードが目立ちやすいため好ましい。さらに、囲み印刷枠の外側にさらに文字表示や記号で2次元コードの位置を示す印刷を行っても良い。
【0016】
また、本発明においては、囲み印刷枠が、手触りでも確認可能にすることがさらに望ましい。
具体的には、囲み印刷枠、もしくはその周囲に発泡インクを使用して印刷を行い、そのインクを発泡させることで、囲み印刷枠が手触りで確認できるようにすることが可能である。また、囲み印刷枠の周囲に、手触りで確認できるような孔やミシン目を設けたり、エンボス加工したりすることにより、囲み印刷枠が手触りで確認できるようにすることが可能である。
これらの構成によって、2次元コードの位置がより短時間で見つけることができる上、特に、高齢者等の視力に弱い人でも、確認が容易となる。
なお、視力に弱い人用として、今後カメラ付携帯電話等において、音声での指示や表示が可能となると、本方式はさらに有効である。
【0017】
本発明において、2次元コード、及び、囲み印刷枠部の印刷の方法には特段の限定はなく、段ボールシートに直接フレキソ印刷やインクジェット印刷することも可能であり、また、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等任意の方式で予め印刷したライナ原紙を貼合して段ボールシートを作成してもよい。さらに、2次元コードと囲み印刷枠部は同時に印刷してもよく、別々に印刷しても良い。例えば、囲み印刷枠部を予め印刷した段ボールシートに後からインクジェット記録方式による2次元コードを印刷するなど、各種印刷方式を任意に組み合わせることも可能である。
【0018】
2次元コードを段ボールに印刷する場合は、段ボールは通常の紙基材と異なり段構造を有するため、表面に微細な凹凸が存在する。特に段山数の少ないA段(30cm当たり34±2山)の場合には凹凸が大きい。また、段構造を有するため、フレキソ印刷等によって印圧がかかった時、段山がつぶれることで印刷に歪みが発生したり、印刷が不鮮明、不均一であったりという問題が発生する場合がある。2次元コードは以前より段ボールへの印刷に広く用いられていたバーコードと異なり、かなり精密なパターンを印刷しなければならないが、上記のような印刷の不具合が発生すると、2次元コードが正確に印刷できず、読み取れないという問題が発生する。
【0019】
そこで、本発明では、2次元コードを段ボールシートに印刷する際に、2次元コード及び2次元コードの周囲の囲み印刷枠を、同一の版を用いてフレキソ印刷により段ボールシートに印刷する方法を取ることが望ましい。
2次元コードの周囲に囲み印刷枠を設けた版を用いてフレキソ印刷を行うことにより、印版の囲み印刷枠部分が、段ボールシートの2次元コード印刷部分にテンションを発生させ、印圧によるその部分の段ボールシートの凹みを均一にし、2次元コードを均一かつ鮮明に印刷することが可能となる。
【0020】
なお、上記のように2次元コードおよび囲み印刷枠を同一の版を用いてフレキソ印刷する場合、段ボールシートが反っている場合や、印刷面の凹凸が非常に大きい場合など、フレキソ印刷時に印圧を強めにかける必要がある場合には、印版の2次元コード部の高さを、囲み印刷枠の高さよりも10〜100μm低くすることが望ましい。
また、印版の2次元コードのセルの寸法は、セルの印刷目標寸法よりも0〜100μm小さく、好ましくは30〜70μmの範囲で小さく作製することが望ましい。
このような印版を用いて段ボールシートにフレキソ印刷を行うと、シート反りや凹凸修正のために印圧を通常より高くしても、2次元コード部には、マージナルの印刷膨れが起こり難く、2次元コードが正確に印刷できる。
さらに、2次元コードは微細なパターンからなるため、同じ印版を長く使用しつづけていると、特に角部や縁部分が摩耗しやすいが、同一の版に囲み印刷枠が存在すると、その部分でガードされるためにフレキソ版の耐久性が向上するという利点がある。
なお、この場合、囲み印刷枠の幅は、2次元コードの2セル分以上好ましくは3セル分以上であることがより効果的である。囲み印刷枠の幅が2セル分未満である場合、印刷部分に十分にテンションを発生させることができず、印刷の安定性の面で十分効果を発揮しない場合がある。
また、フレキソ印刷機の種類によっては、最終印刷部の寸法が、印版より2〜5%伸びる場合があるので、この場合は、印版の作製時に、あらかじめ寸法を2〜5%縮めて作製しておくことが望ましい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例に従って説明する。
<実施例1>
セル寸法=1mm、囲み印刷枠の種類=図1、2次元コードと囲み印刷枠の距離=4セル、囲み印刷枠の幅=3セルのQRコード印版を作製する。
次に、この印版を使用し、王子ONRK220*王子中芯120*王子ONRK220(Aフルート)紙質の段ボールシートに、フレキソ印刷機により、黒色のフレキソインクで印刷して、2次元コード印刷段ボールを作製する。
【0022】
<実施例2>
囲み印刷枠の種類が図3であること以外は、実施例1と同様にして2次元コード印刷段ボールを作製する。
【0023】
<実施例3>
QRコードの2次元コード部の印版と囲み印刷枠部の印版を2つ作成し、2次元コード部は黒、囲み印刷枠部は赤のインクを使用し、囲み印刷枠部を先に印刷すること以外は実施例1と同様にして2次元コード印刷段ボールを作製する。
【0024】
<実施例4>
段ボール製函時に囲み印刷枠の外周上にミシン目の切り込みを入れること以外は、実施例1と同様にして2次元コード印刷段ボールを作製する。
【0025】
<実施例5>
フレキソ印刷用印版のセルの寸法を、印刷目標寸法より50μm短くすること以外は、実施例1と同様にして2次元コード印刷段ボールを作製する。
【0026】
<比較例1>
囲み印刷枠がないこと以外は、実施例1と同様にして2次元コード印刷段ボールを作製する。
【0027】
<比較例2>
囲み印刷枠がなく、セル寸法が2.5mmであること以外は、実施例1と同様にして2次元コード印刷段ボールを作製する。
【0028】
以下、表1に実施例および比較例の評価を示す。評価方法については以下の通りである。
1)位置確認性:ケース表面に2次元コードを1個印刷し、2次元コードの位置が非常に見つけ易いものを◎、比較的見つけ易いものを○、比較的見付難いものを△、非常に見つけ難いものを×とする。
2)手触りによる位置確認性:ケース表面の2次元コードの位置を手触りで確認できるものを◎、できないものを○とする。
3)読取性:携帯電話での読取りが容易なものを○、比較的読取り難いものを△、更に読取り難いものを×とする。
4)印刷適性1:フレキソ印刷機で通常の圧力でQRコードを印刷し、JIS X 0510でのマトリックスコード記号の印刷品質において、Aが半分以上であるものを◎、C以上が大部分であるものを○、F(不合格)があるものを×とする。
5)印刷適性2:印版の圧力を通常より強くした場合に、2次元コードのマージナル部分が太くならないものを○、太くなるものを×とする。
【0029】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】囲み印刷枠の形状を示す実施例
【図2】囲み印刷枠の形状を示す他の実施例
【図3】囲み印刷枠の形状を示す他の実施例
【図4】図3の囲み印刷枠内に2次元コードを印刷した状態を示す実施例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元コードと、前記2次元コードの周囲に囲み印刷枠が印刷されていることを特徴とする段ボールシート。
【請求項2】
2次元コードと囲み印刷枠の間隙が、前記2次元コードの4セル分以上の幅離れていることを特徴とする請求項1記載の段ボールシート。
【請求項3】
囲み印刷枠の幅が、前記2次元コードの3セル分以上の幅であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の段ボールシート。
【請求項4】
請求項1〜3に記載された段ボールシートの印刷方法において、2次元コード及び2次元コードの周囲の囲み印刷枠を、同一の版を用いてフレキソ印刷により印刷することを特徴とする段ボールシート印刷方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−12135(P2006−12135A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153307(P2005−153307)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(502356517)王子チヨダコンテナー株式会社 (66)
【Fターム(参考)】