説明

段ボール用中芯原紙

【課題】柔軟性及び耐衝撃性に優れる段ボール用中芯原紙の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、原料パルプを抄紙して得られる段ボール用中芯原紙であって、坪量が70g/m以上100g/m以下であり、原料パルプの数平均繊維長分布が0.50mm以上1.05mm以下の範囲に極大値を有し、JIS−Z1516「外装用段ボール」に規定されるC段の段ボールシートの中芯に使用した場合、その段ボールシートの平面圧縮強さが124kPa以上168kPa以下であることを特徴とする段ボール用中芯原紙である。この中芯原紙の比圧縮強さが40N・g/m以上80N・g/m以下であるとよい。また、この中芯原紙が、最小幅が0.25mm以上の夾雑物を含有しており、かかる夾雑物の含有率が0.1質量%以上0.5質量%以下であるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性及び耐衝撃性に優れる段ボール用中芯原紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、段ボールシートは、保護収納ケース用途以外に、その柔軟性、衝撃吸収性、クッション性等の特性を生かし、例えば蛍光灯等の易損品包装用途や菓子等のクッション材用途など、広範に使用されている。
【0003】
保護収納ケースとして使用されている段ボールは、JIS規格によりその品質が定められており、段ボール用の中芯原紙については、JIS−P3904「段ボール用中芯原紙」で規格が定められている。このJIS−P3904には、中芯原紙の表示坪量ごとに比圧縮強さが定められている。この中芯原紙は、坪量が115〜200g/mと高く、比圧縮強さも高いものである。このように硬くて高強度の中芯原紙から形成される段ボールシートは、JIS−Z0403−1に規定する平面圧縮強さが高く、いわゆる凹みにくい段ボールシートとなるが、その分硬くクッション性に劣るため、充分な衝撃吸収性が得られず、易損品の包装用途に使用できないという不都合がある。
【0004】
例えば、蛍光灯の保護シートとして用いられる段ボールシートとして、上述のJIS規格に基づく強度の高い中芯原紙を用いると、中芯原紙の比圧縮強さが高いため、蛍光灯の表面に傷がつくおそれがある。また、段シートの平面圧縮強さが高く柔軟性が低いため、衝撃吸収性に劣り、蛍光灯が破損しやすいだけでなく、中芯が表層ライナーに貼合し難くなり、段割れにより保護性能が低下するおそれがある。そのため、従来の蛍光灯用保護シートとしては、強度が弱く潰れやすい、坪量が80g/m程度のクラフト紙からなる片段の段ボールシートが用いられている。
【0005】
そこで、かかる中芯原紙の坪量を小さく設定することで、中芯原紙に柔軟性及び衝撃吸収性を付与する技術が提供されている。例えば、特許文献1には、坪量を80g/m以上185g/m以下、密度が0.5g/cm以上0.7g/cm以下に設定して抄紙され、軽量かつ強度を有する中芯原紙が開示されている。また、特許文献2には、坪量を70g/mに設定して抄紙され、フィンガーレス方式による薄型段ボール製造時の接着強度の低下の問題を防止することができ、特にマイクロフルート段ボールシートに好適に使用される中芯用原紙が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、単に坪量をJIS−P−3904で定める値より低く設定するのみでは、十分な柔軟性(比圧縮強さ)及び衝撃吸収性(平面圧縮強さ)をバランス良く得ることはできない。また、特許文献2に開示されている中芯原紙から段ボールシートを作成し、易損品の保護シートとして用いたとしても、十分な柔軟性及び衝撃吸収性をバランス良く得ることができるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−190064号公報
【特許文献2】特開2001−162704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これらの不都合に鑑みてなされたものであり、坪量をJIS−P3904で定める値より低く設定し、十分な柔軟性及び衝撃耐久性をバランス良く備える中芯原紙の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
原料パルプを抄紙して得られる段ボール用中芯原紙であって、
坪量が70g/m以上100g/m以下であり、
離解した原料パルプの数平均繊維長分布が0.50mm以上1.05mm未満の範囲に極大値を有し、
JIS−Z1516「外装用段ボール」に規定されるC段の段ボールシートの中芯に使用した場合、その段ボールシートの平面圧縮強さが124kPa以上168kPa以下であることを特徴とする段ボール用中芯原紙である。
【0010】
本発明の段ボール用中芯原紙は、坪量が70g/m以上100g/m以下であり、原料パルプの数平均繊維長分布が0.50mm以上1.05mm未満の範囲に極大値を有することで、十分な柔軟性及び衝撃吸収性をバランス良く発揮することができる。さらに、本発明の段ボール用中芯原紙を使用した段ボールシートの平面圧縮強さが124kPa以上168kPa以下であることで、十分な衝撃吸収性を効果的に発揮させることができる。
【0011】
前記段ボール用中芯原紙の比圧縮強さとしては、40N・g/m以上80N・g/m以下が好ましい。この比圧縮強さの範囲を前記範囲とすることで、十分な柔軟性を効果的に発揮させることができる。
【0012】
前記段ボール用中芯原紙は、最小幅が0.25mm以上の夾雑物を含有するとよく、この夾雑物の含有率としては0.1質量%以上0.5質量%以下が好ましい。このように、最小幅が0.25mm以上である夾雑物を含有し、この夾雑物の含有率を前記範囲とすることで、中芯原紙に含まれる繊維間結合を効果的に阻害し、中芯原紙及び中芯原紙を使用する段ボールシートの柔軟性を向上させることができ、十分な柔軟性及び衝撃吸収性をバランス良く発揮することができる。
【0013】
前記原料パルプが凝集剤としてコロイダルシリカ及び凝結剤としてポリアクリルアミドを含有し、前記原料パルプに対するコロイダルシリカの含有量が0.1質量%以上0.8質量%以下であり、前記原料パルプに対するポリアクリルアミドの含有量が0.01質量%以上0.10質量%以下であることが好ましい。これにより、前記段ボール用中芯原紙の柔軟性及び衝撃吸収性を効果的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の段ボール用中芯原紙は、原料パルプを使用し、坪量、平面圧縮強さ、夾雑物成分の調整等により、十分な柔軟性及び衝撃吸収性をバランス良く発揮することができる。このような段ボール用中芯原紙は、低コストでリサイクルに適していることから、特に易損品の保護に好適に使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る段ボール用中芯原紙について、詳細に説明する。
【0016】
当該段ボール用中芯原紙は、原料パルプと、夾雑物とを主に含有するものである。
【0017】
(パルプ)
当該段ボール用中芯原紙に使用するパルプとしては、古紙パルプ、化学パルプ、機械パルプ等を使用することができる。この中でも古紙パルプを使用すると、繊維長が短く、高い柔軟性を発揮する中芯原紙を得ることができると共に、パルプ同士の繊維間結合を阻害する夾雑物成分を多く含有させることができる。また、繊維長が短い古紙パルプを使用することで、後述の通り、原料パルプの数平均繊維長分布が0.50mm以上1.05mm以下の範囲に極大値を有するよう調整しやすい利点もある。
【0018】
古紙パルプとしては、例えば段ボール古紙、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、上白古紙、ケント古紙、構造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。
【0019】
化学パルプとしては、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等が挙げられる。
【0020】
機械パルプとしては、例えばストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等が挙げられる。
【0021】
当該段ボール用中芯原紙の離解パルプの数平均繊維長分布が、0.50mm以上1.05mm未満の範囲に極大値を有することが好ましく、0.60mm以上0.95mm未満の範囲に極大値を有することがより好ましく、0.70mm以上0.85mm未満の範囲に極大値を有することが特に好ましい。離解パルプの数平均繊維長分布における極大値を前記範囲内とすることで、坪量を70g/m以上100g/m以下に低く設定する場合であっても、十分な柔軟性及び衝撃吸収性をバランス良く得ることができる。なお、離解パルプの数平均繊維長分布は、中芯原紙をJIS−P8220:1998「パルプ−離解方法」に準じて離解することで得られたパルプ繊維について、繊維長を0.05mmごとに分類して得られる繊維長分布に基づくものである。
【0022】
前記離解パルプの繊維長が0.50mm未満である繊維を多く含有し、数平均繊維長分布が0.50mm以上1.05mm未満の範囲に極大値を有していない場合は、微細な繊維が多いことから基紙が密に詰まり、十分な平面圧縮強さを有さず、その結果、十分な衝撃吸収性を発揮することができないため好ましくない。一方、離解パルプの繊維長が1.05mmを超過する繊維を多く含有し、数平均繊維長分布が0.50mm以上1.05mm未満の範囲に極大値を有していない場合は、長い繊維が過度に多くなり、十分な衝撃吸収性発揮することができないのみならず、表面性が粗いため、例えば保護すべき易損品の表面に傷を付けやすくなるため好ましくない。
【0023】
このような繊維長分布において、離解パルプの数平均繊維長分布が0.50mm以上1.05mm未満の範囲に極大値を有するパルプ繊維を好適に得るためには、従来一般に使用されている叩解方法を用いてフリーネスを調整すれば良く、ビーター、コニカルリファイナー、円筒型リファイナー、ディスクリファイナー(SDR、DDR)を用いることができる。具体的には、DDRを用いてフリーネスを約300ml以上600ml以下の条件で叩解すれば良く、古紙段ボールを再生した古紙パルプを使用する場合には、350ml以上580ml以下に調整することが好ましく、400ml以上540ml以下に調整することがより好ましい。このように叩解して得られるパルプ繊維は、異なる繊維長を有する他のパルプと混合して用いることもでき、その場合には、混合後のパルプ繊維が離解後の繊維長分布が0.50mm以上1.05mm未満の範囲に極大値を有するよう、繊維長の異なる他のパルプとの配合割合を調整すれば良い。なお、フリーネスは、JIS−P8220に準拠して標準離解機にて試料を離解処理した後、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて濾水度を測定した値である。
【0024】
当該段ボール用中芯原紙の離解パルプのルンケル比としては、1.3以上2.0以下であることが好ましく、1.4以上1.9以下であることが特に好ましい。紙の柔軟性及び衝撃吸収性に寄与する要素としては、紙自体の坪量の他に、パルプ繊維自体の物理的構造がある。パルプ繊維にはルーメン(内腔)が存在し、内腔が潰れることによって、紙全体としてのクッション機能を発揮する。かかる内腔と外環(細胞壁)の厚みとの比率が、クッション機能にとって重要となる。前記ルンケル比Rとは、繊維の内腔の幅(径)Lと細胞壁の厚さtとによって求められる値であり、R=2・t/Lによって表される。このルンケル比が大きい(壁厚が大きい)と剛直な繊維であり、衝撃吸収性に劣るため好ましくなく、ルンケル比が小さい(壁厚が小さい)と、十分な衝撃吸収性を発揮することができないため好ましくない。当該段ボール用中芯原紙においては、ルンケル比を1.3以上2.0以下、より好ましくは1.4以上1.9以下とすることにより、坪量を70g/m以上100g/m以下に低く設定する場合であっても、衝撃吸収性が高く、貼合性や表面強度が良好となるため好ましい。なお、ルンケル比が1.3未満であると十分な柔軟性を発揮することができず、ルンケル比が2.0を超過すると繊維の剛直性が過度に高くなり、十分な衝撃吸収性を発揮することができないため好ましくない。
【0025】
また、かかるルンケル比は、原料パルプの選択、分級、叩解処理を最低限施すことにより調整することができる。選択とは、例えば自然林から得られた原木や植林木を原料としたパルプから、ルンケル比が比較的大きいパルプ繊維が得られる等の条件を基に、原料パルプの選択を行うことを意味する。分級とは、シックナー、スクリーン、クリーナー等を使用して分級すること、その他一般的に紙・パルプ工場で使用されている公知のSPフィルター、ウォッシャー、エキストラクター、フィルタープレス等により大量の水を用いて希釈しながら分級することを意味する。叩解とは、コニカルリファイナー、円筒型リファイナー、ディスクリファイナー等による叩解を行うことを意味する。
【0026】
前記原料パルプの選択を採用した場合、例えば針葉樹では、クロマツやツガは繊維幅が小さく壁厚が大きいためルンケル比が大きい(約4以上)。一方、モミ、トドマツ、アカマツ、ヒメコマツは繊維幅が大きく壁厚が小さいためルンケル比が小さく(約1〜2)、カラマツ、エゾマツ、スギ、ヒノキ、ヒバは更に小さい(約1以下)。また、広葉樹では、ブナ、アカガシはルンケル比が大きく(約4以上)、マカンバ、ミズナラ、カツラ、ハリギリ、ヤチダモはルンケル比が小さく(約1〜2)、ドロノキ、シナノキ、キリ、アスペン、バーチ、メープルは更に小さい(約1以下)。
【0027】
当該段ボール用中芯原紙に含有される夾雑物は、パルプ同士の繊維間結合を阻害し、中芯原紙の柔軟性を向上させるものである。この夾雑物としては、例えば古紙中に含まれるビニール紐などの混合物、シール、テープ、ラミネート層、雑誌の背糊や印刷インキなどの紙付着物等が挙げられる。これらの夾雑物は通常、再生パルプ製造工程や、抄紙機前の調成工程で除去されるが、当該中芯原紙においては、これらの夾雑物の含有量や大きさ(最小幅)を調整することで、十分な柔軟性及び衝撃耐久性をバランス良く発揮することができる。
【0028】
前記夾雑物の最小幅としては、0.25mm以上が好ましく、0.25mm以上5.00mm以下が特に好ましい。これにより、十分な柔軟性及び衝撃吸収性をバランス良く発揮することができる。この夾雑物の最小幅が0.25mm未満であると、夾雑物が混入されることによるパルプ繊維の繊維間結合阻害効果を十分得ることができず、その結果、平面圧縮強さが過度に高くなるため好ましくない。また、夾雑物の最小幅が5.00mmを超過すると、夾雑物による繊維間の結合阻害効果が過度に大きくなるため、十分な平面圧縮強さを得ることができないのみならず、特に易損品の包装用途においては、夾雑物と易損品との接触面積が大きくなり、その結果、易損品に傷が付きやすくなるため好ましくない。
【0029】
夾雑物の含有率としては、0.1質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.15質量%以上0.30質量%以下が特に好ましい。この夾雑物の含有率を前記範囲とすることで、当該中芯原紙に含まれる繊維間結合が阻害されやすくなり、中芯原紙及び中芯原紙を使用する段ボールシートの柔軟性を向上させることができる。この夾雑物の含有率が0.1質量%未満であると、パルプの繊維間結合が強くなることから、段シート時に潰れにくくなり、その結果、衝撃吸収性に劣ることとなるため好ましくない。また、0.5質量%を超過すると、パルプの繊維間結合が過度に弱くなり、十分な衝撃吸収性を発揮することができない可能性があるため好ましくない。
【0030】
特に当該段ボール用中芯原紙のごとく、繊維長0.50mm以上1.05mm未満のパルプ繊維が多い場合は、0.25mm以上5.00mm以下の夾雑物を、0.1質量%以上0.5質量%以下、好ましくは0.15質量%以上0.30質量%以下含有させることで、更に中芯原紙の柔軟性を向上させることができるため好ましい。
【0031】
なお、当該段ボール用中芯原紙における夾雑物の含有率は、次の方法を用いて測定した値である。中芯原紙をJIS−P8220:1998「パルプ−離解方法」に準じて離解し、TAPPI T275sp98に準拠して、0.15mmのスリット幅のスクリーンプレートを用い、サンプル量絶乾100gのパルプをフラットスクリーンで処理し、スクリーンの残渣を夾雑物とした。乾燥重量で中芯原紙に対する夾雑物の質量割合を、夾雑物含有率とした。
【0032】
前記夾雑物の含有率を調整するためには、古紙処理工程中の粗選工程や精選工程における夾雑物除去率を調整するとよい。この夾雑物の量が少ない場合は、製紙工場の他のパルプ製造工程や抄紙工程、塗工工程などから排出される製紙スラッジや、製紙工場の排水スカム等を用いることもできる。また、除塵装置から得られたリジェクトを混合することでも調製することができる。かかる除塵装置としては、一定のスリット幅を有するスクリーンを用いると夾雑物の調整が容易となるため好ましい。具体的には、上述の通り、夾雑物の大きさを0.25mm以上5.00mm以下に調整することが好ましいことから、5.00mm大のホールスクリーンを通過しつつ0.25mm幅のスリットを通過できない夾雑物を、0.25mm幅のスリットを通過したパルプ原料に対して一定量添加する方法を用いることで、夾雑物の含有量の調整を容易に行うことができる。
【0033】
(坪量)
当該段ボール用中芯原紙の坪量としては、70g/m以上100g/m以下が好ましく、75g/m以上85g/m以下がより好ましく、80g/m以上81g/m以下が特に好ましい。この坪量の範囲を前記範囲とすることで、十分な柔軟性及び衝撃吸収性をバランス良く発揮することができる。この坪量が70g/m未満であると、柔軟性は向上するものの十分な衝撃吸収性が得られないため好ましくない。また坪量、100g/mを超過すると、柔軟性及び衝撃吸収性が共に低下するため好ましくない。
【0034】
当該段ボール用中芯原紙においては上述の通り、離解パルプの数平均繊維長分布が0.50mm以上1.05mm未満の範囲に極大値を有するパルプを用い、当該段ボール用中芯原紙の坪量を70g/m以上100g/m以下とすることで、平面圧縮強さを124kPa以上168kPaとすることができるため、十分な柔軟性及び衝撃耐久性をバランス良く備える中芯原紙を得ることができる。
【0035】
(平面圧縮強さ)
当該段ボール用中芯原紙において、JIS−Z1516「外装用段ボール」に規定されるC段の段ボールシートの中芯に使用した場合、その段ボールシートの平面圧縮強さが124kPa以上168kPa以下であることが好ましく、134kPa以上161kPaであることがより好ましい。この平面圧縮強さの範囲を前記範囲とすることで、当該段ボール用中芯原紙に対し、十分な衝撃吸収性を効果的に付与することができる。なお、この段ボールシートの平面圧縮強さは、JIS−Z0403−1「段ボール−平面圧縮強さ試験方法」の規定に準じたものである。
【0036】
(比圧縮強さ)
また、当該段ボール用中芯原紙において、JIS−P8126:2005「紙及び板紙−圧縮強さ試験方法−リングクラッシュ法」に準じて、中芯原紙の横方向の圧縮強度を測定する場合の比圧縮強さが、40N・g/m以上80N・g/m以下であることが好ましく、44N・g/m以上76N・g/m以下であることがより好ましい。この比圧縮強さの範囲を前記範囲とすることで、当該段ボール用中芯原紙に対し、十分な柔軟性を効果的に付与することができる。
【0037】
特に上述のごとく、離解パルプの数平均繊維長分布が0.50mm以上1.05mm未満の範囲に極大値を有するパルプを用い、当該段ボール用中芯原紙の坪量を70g/m以上100g/m以下とし、平面圧縮強さを124kPa以上168kPaとすることに加え、中芯原紙の横方向の圧縮強度を測定する場合の比圧縮強さが、40N・g/m以上80N・g/mとすることで、更に柔軟性及び衝撃耐久性をバランス良く備える中芯原紙を得ることができる。
【0038】
(製造方法)
当該段ボール用中芯原紙に使用するパルプを製造する方法としては、特に限定されるものではなく、従来一般に製紙用途で使用される方法を用いることができる。例えば、パルプ、夾雑物等を含む原料スラリーを、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、リールパートを経て抄紙し、製造することができる。このスラリーには、後述する凝結剤、凝集剤、滑剤等の薬品を配合することができる。
【0039】
(凝結剤)
当該段ボール用中芯原紙においては、繊維長0.50mm以上1.05mm未満のパルプの歩留りを向上させるために、凝結剤を使用するとよい。この凝結剤としては、従来一般に製紙用途として使用されているものを使用することができる。例えば、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリダドマック、PDADMAC)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリル酸塩、メタクリル酸塩等が挙げられる。これらの中でも、カチオン性を有するポリマーを使用することが好ましく、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリダドマック、ポリアクリルアミドを使用すると、微細な繊維の歩留りをより一層向上させることができ、衝撃吸収性に優れた中芯原紙を得ることができるため好ましい。なお、特にポリアクリルアミドを使用すると、最も衝撃吸収性が高く、かつ、柔軟性が良好であり変形しやすい中芯原紙が得られるため好ましい。
【0040】
前記凝結剤の添加量は、パルプ総量に対して固形分割合で0.01質量%以上0.10質量%以下が好ましく、0.02質量%以上0.08質量%以下が特に好ましい。この添加量が0.01質量%未満であると、微細な繊維の歩留りが低下して衝撃吸収性が低下するため好ましくない。また、0.10質量%を超過すると、硬い中芯原紙となり、衝撃吸収性が低下するため好ましくない。
【0041】
(凝集剤)
当該段ボール用中芯原紙において、前記凝結剤を添加した後、さらにパルプの調製段階に続く抄紙工程前段で、特定の凝集剤を添加することにより、繊維長0.50mm以上1.05mm未満のパルプの歩留りを向上させることができるため、衝撃吸収性をさらに向上させることができる。
【0042】
この凝集剤としては、従来一般に製紙用途で使用されている凝集剤を使用することができる。例えば、ベントナイトやコロイダルシリカなどの無機凝集剤;ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンイミン(PEI)等の有機高分子系凝集剤を単独又は組合せで用いることができる。中でも、ベントナイトやコロイダルシリカ等の無機凝集剤を使用することが好ましく、コロイダルシリカを用いることが特に好ましい。このような凝集剤を使用することで、繊維の凝集能力が高くなるため、微細な繊維が多いパルプを用いる場合であっても、衝撃吸収性を効果的に向上させることができる。
【0043】
なお、コロイダルシリカを添加した後に抄紙する場合、凝集塊が発生しやすくなる可能性もあるため、凝集剤はスクリーンの前に添加し、発生した凝集塊をスクリーンで一旦破壊し、適度に凝集性を弱めることが好ましい。かかるスクリーンにおいては、目開きが0.33mm以上0.37mm以下のスリットタイプを使用することで、凝集塊の発生抑制効果をより効果的に行うことができる。
【0044】
前記凝集剤の添加量は、パルプ総量に対して固形分割合で0.1質量%以上0.8質量%以下が好ましく、0.2質量%以上0.6質量%以下が特に好ましい。この添加量が0.1質量%未満であると、微細な繊維の歩留りが低下すると共に得られる紙の密度が低下し、その結果、衝撃吸収性が低下するため好ましくない。また、0.8質量%を超過すると、中芯原紙が硬くなり、衝撃吸収性が低下するため好ましくない。
【0045】
また、前記凝集剤の添加は、微細な繊維を含むパルプ繊維と凝結剤とを混合してから20分以上40分以下の間に添加することが好ましい。この添加のタイミングが20分未満であると微細な繊維の歩留りが低下し、40分を超過すると凝集塊が発生しやすくなるため好ましくない。
【0046】
このように、凝結剤としてカチオン性ポリマー、特にポリアクリルアミドを用い、凝集剤としてアニオン性無機粒子、特にコロイダルシリカを用いることで、繊維長0.50mm以上1.05mm未満、好ましくは0.60mm以上0.95mm未満、より好ましくは0.70mm以上0.85mm未満の範囲に極大値を有するパルプの歩留りを向上させることができ、衝撃吸収性に優れた中芯原紙を得ることができる。更に、この中芯原紙の坪量を70g/m以上100g/m以下とすることで、衝撃吸収性に優れた中芯原紙及び段ボールを得ることができるため好ましい。
【0047】
(滑剤)
当該段ボール用中芯原紙には、例えば易損物との接触を滑らかにし、輸送中に易損品が揺れて中芯原紙と摩擦し、易損品に傷がつくことを防止するために、中芯原紙表面に滑剤を塗布することができる。
【0048】
この滑剤としては、従来一般に使用しているものを使用することができる。例えば、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩;低分子量ポリエチレンの水性分散液、液状炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸硫酸化油、脂肪族リン酸エステル、ポリアルキレングリコール又はその誘導体、あるいはこれらの水性分散液;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス等を使用することができる。
【0049】
これらの滑剤を中芯原紙表面に塗布し、中芯原紙表面の滑り角度を20°以上24°以下に調整することで、上述の通り、易損品の傷入りを防止できるため好ましい。特に蛍光灯や電球を保護する片段シートの場合は、蛍光灯や電球が中芯原紙と直接接触するため、輸送中に傷が入る可能性が考えられるが、当該段ボール用中芯原紙の滑り角度を前記範囲に調整することで、蛍光灯や電球の傷入りを効果的に防止することができる。
【0050】
(添加剤)
当該段ボール用中芯原紙においては、前記の凝結剤、凝集剤、滑剤以外にも、必要に応じて填料、内添サイズ剤、定着剤、紙力増強剤、紙厚向上剤、歩留り向上剤、嵩高剤、カチオン化剤、紙力増強剤、消泡剤、着色剤、染料等の各種製紙助剤等を、その種類及び配合量を適宜調整して添加することができる。
【0051】
また、中芯原紙とライナーとを貼合する際には、段割れや貼合不良が発生する場合があるが、滑り角度を前記範囲内とすることで、段割れや貼合不良をも効果的に防止することができる。
【0052】
なお、本発明の段ボール用中芯原紙は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の段ボール用中芯原紙の紙層が、単層ではなく、抄紙工程のワイヤーパートにおいて多層抄きとする2層以上の複数層とすることもできる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0054】
本発明に係る段ボール用中芯原紙の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を行った。
【0055】
[実施例1〜27及び比較例1〜4]
段ボール古紙をパルプ化し、表1に記載のフリーネスに調整した古紙パルプ100質量部に対し、抄紙機前工程のリジェクト(5.00mm孔のホールスクリーンを通過し、0.25mm幅のスリットスクリーンを通過しない原料)を、固形分換算で表に記載の割合で混合した後、表1に記載の凝結剤および凝集剤を、絶乾質量で表1に記載の割合で混合し、抄紙した。
【0056】
(評価方法)
上述の方法で得られた段ボール用中芯原紙を、以下の方法で評価した。
【0057】
1)繊維長極大値
中芯原紙をJIS−P8220:1998「パルプ−離解方法」で離解して得られたパルプ繊維について、FiberLab.(Kajaani社)を用いて中心線繊維長を測定し、繊維長とした。繊維長0.05mmごとに繊維の数を集計して繊維長分布を求め、極大値がどの領域に含まれるかを判断した。
【0058】
2)夾雑物含有率
中芯原紙をJIS−P8220:1998「パルプ−離解方法」に準じて離解し、TAPPI−T275sp98に準拠して、0.15mmのスリット幅のスクリーンプレートを用い、サンプル量絶乾100gの離解パルプをフラットスクリーンで処理し、スクリーンの残渣を夾雑物とした。乾燥重量で中芯原紙に対する夾雑物の質量割合を、夾雑物含有率とした。
【0059】
3)坪量
中芯原紙について、JIS−P8124:1998「紙及び板紙−坪量測定方法」に準じて坪量を測定した。
【0060】
4)貼合適性
実施例及び比較例の中芯原紙を中芯として、市販のライナー(ジャストエコノミー、120g/m、大王製紙社製)を表層ライナー及び裏層ライナーとして用い、C段の段ボールに加工した。ここでC段の段ボールとは、JIS−Z1516「外装用段ボール」に記載のものを指す。
【0061】
表層及び裏層のライナーに対する、中芯原紙の貼合性を以下の通り評価した。
◎:段割れや貼合不良がなく、貼合適性に優れる。
○:段割れや貼合不良が僅かに発生したが、貼合適性が良好である。
△:段割れや貼合不良が多少発生したが、貼合適性が良い。
×:段割れや貼合不良が多く発生し、貼合適性に劣る。
なお、◎、○、△は実使用可能であった。
【0062】
5)比圧縮強さ
中芯原紙について、JIS−P8126:2005「紙及び板紙−圧縮強さ試験方法−リングクラッシュ法」に準じて、中芯原紙の横方向の圧縮強さを測定し、比圧縮強さを算出した。
【0063】
6)平面圧縮強さ
前記貼合適性試験において調整した段シートについて、JIS−Z0403−1「段ボール−平面圧縮強さ試験方法」の規定に準じ、試験片32.2cm(直径64.0mm)における平面圧縮強さを測定した。
(評価の検討)
【0064】
本実施例及び比較例の測定結果を下記表1に示す。
【表1】

【0065】
表1に示された結果から、実施例1〜27の段ボール用中芯原紙は、比較例1〜4と比較して、良好な柔軟性及び衝撃吸収性をバランス良く発揮することが実証されている。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の段ボール用中芯原紙は、低コストでリサイクルに適しており、特に易損品の保護、例えば蛍光灯の保護や菓子の保護等に好適に使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料パルプを抄紙して得られる段ボール用中芯原紙であって、
坪量が70g/m以上100g/m以下であり、
離解したパルプの数平均繊維長分布が0.50mm以上1.05mm未満の範囲に極大値を有し、
JIS−Z1516「外装用段ボール」に規定されるC段の段ボールシートの中芯に使用した場合、その段ボールシートの平面圧縮強さが124kPa以上168kPa以下であることを特徴とする段ボール用中芯原紙。
【請求項2】
比圧縮強さが40N・g/m以上80N・g/m以下である請求項1に記載の段ボール用中芯原紙。
【請求項3】
最小幅が0.25mm以上の夾雑物を含有しており、
この夾雑物の含有率が0.1質量%以上0.5質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の段ボール用中芯原紙。
【請求項4】
前記原料パルプが凝集剤としてコロイダルシリカ及び凝結剤としてポリアクリルアミドを含有し、
前記原料パルプに対するコロイダルシリカの含有量が0.1質量%以上0.8質量%以下であり、
前記原料パルプに対するポリアクリルアミドの含有量が0.01質量%以上0.10質量%以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の段ボール用中芯原紙。


【公開番号】特開2011−38198(P2011−38198A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185260(P2009−185260)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】