説明

段ボール製の包装箱

【課題】井桁状の荷重受け体の材料コストを抑えて大きい耐荷重強度を得るようにした、断面略L字形の物品を包装するための段ボール製の包装箱を提供する。
【解決手段】断面略L字形の物品10を包装する段ボール製の包装箱であって、底板部1aと四周側板部1b,1c,1d,1eと蓋板部1fとからなる外箱1と、縦桁材2aと横桁材2bを井桁状に組んだ荷重受け体2とを備え、荷重受け体2は、外箱1に収容された物品10の水平部10aと外箱1の蓋板部1f又は底板部1aとの間に配置されて、荷重受け体2と外箱1の長さ方向両端の側板部1c,1dとの間に空間4が存在しており、且つ、移動防止手段によって荷重受け体2の移動が防止された構成の包装箱とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は断面略L字形の物品を包装する段ボール製の包装箱に関し、更に詳しくは、耐荷重強度を高めた段ボール製の包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上方からの荷重によって段ボール製の包装箱が変形し、被包装物品が損壊するのを防止するために、包装箱内に発泡樹脂製の充填材を入れることによって包装箱を補強する等の対策が採られている。けれども、このような発泡樹脂製の充填材を入れる場合は、包装箱から被包装物品を取り出した後の充填材の廃棄が面倒という問題があった。
【0003】
一方、井桁状に構成した段ボール製の支持部材を包装箱に内装して耐荷重強度を高めることも行われている。例えば電子部品の包装箱の分野では、井桁状に構成した仕切板を包装箱の下部に設けてそれぞれの収納空間に電子部品を収容し、電子部品のリード線を挿通する孔が形成された中仕切板を上記井桁状の仕切板の上に重ねると共に、更にその上に井桁状に構成した支持部材を載置し、上方から荷重が作用したときに支持部材で上蓋を支えて、包装箱の変形と電子部品のリード線曲がりを防止できるようにした包装箱が知られている(特許文献1)。
【0004】
ところで、図7に示す階段用床材のような断面略L字形の物品10を、図8に示すように裏返しにして段ボール製の包装箱100に包装する場合は、物品10の水平部10aと包装箱100の蓋板部100aとの間に大きい内部空間101が生じるので、何も補強しない場合は、包装箱100を積み重ねたときの荷重で包装箱100が押し潰され、物品10の水平部10aの一端から折れ曲がる略垂直部10bが変形したり破損したりすることになる。このような階段用床材では、踏み面部に該当する水平部10aと段鼻被覆部に該当する略垂直部10bとの角度θを75°〜85°に維持する必要があり、上記のように包装箱100が押し潰されることによって、段鼻被覆部に該当する略垂直部10bが上記角度θよりも鋭角に折り曲げられたり鈍角に押し広げられたりすると、階段用床材を階段に接着剤で貼着する際に、段鼻被覆部(略垂直部10b)が階段の段鼻端面に沿わなくなって段鼻端面から跳ね上がったり隙間ができたりして貼着作業に支障が出るので、包装箱100が押し潰されないように耐荷重強度を高めることが重要である。また、階段用床材の材質が柔軟な合成樹脂製もしくはゴム製である場合は、包装箱100が押し潰されることによる角度θの変化が顕著であるため、包装箱100の耐荷重強度を高めることが極めて重要となる。
尚、物品10が階段用床材である場合は、後述するように、階段用床材を2〜10枚程度重ねて包装箱に包装するのが普通であるが、図8では便宜的に1枚だけ包装する場合を示している。
【0005】
包装箱100の耐荷重強度を高める手段としては、井桁状に構成した段ボール製の荷重受け体を、物品10の水平部10aと包装箱100の蓋板部100aとの間の内部空間101の全体に充填して設ければよいが、内部空間101の全体に荷重受け体を設ける場合は、大きい荷重受け体が必要となるので材料コストが高くなり、廃棄物の量も増えることになる。かといって、内部空間101の一部(例えば中央部)に小さい荷重受け体を設ける場合は、荷重受け体が包装箱100の内部空間101(特に長さ方向に)を移動しやすいので、輸送中などに荷重受け体が片寄りしてしまうと、移動方向と反対側の包装箱100が押し潰されてしまうことになる。
このため、荷重受け体は、包装箱100の内部空間101の中央部に配置され、荷重をバランスよく受けると共に、輸送中などでも内部空間101内で片寄りしないことが必要となる。
【0006】
また、井桁状に構成された段ボール製の荷重受け体は、上方からの荷重に対する強度は大きいが、対角線方向に外力が作用すると簡単に菱形に変形し、荷重を受ける平面領域が減少して十分な耐荷重強度を発揮し難くなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−215383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、井桁状の荷重受け体の材料コストを抑えて大きい耐荷重強度が得られるように改良した、断面略L字形の物品を包装するための段ボール製の包装箱を提供することにある。そして、望ましい実施形態では、井桁状の荷重受け体の変形を防止することも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る包装箱は、断面略L字形の物品を包装する段ボール製の包装箱であって、底板部と四周側板部と蓋板部とからなる外箱と、縦桁材と横桁材を井桁状に組んだ荷重受け体とを備え、荷重受け体は、外箱に収容された物品の水平部と外箱の蓋板部又は底板部との間に配置されて、荷重受け体と外箱の長さ方向両端の側板部との間に空間が存在しており、且つ、移動防止手段によって荷重受け体の移動が防止されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の包装箱においては、荷重受け体の移動防止手段として、物品の水平部から外箱の蓋板部又は底板部までの上下方向の寸法よりも、荷重受け体の縦桁材及び横桁材の高さ寸法を少し大きく設定し、物品の水平部と外箱の蓋板部又は底板部によって荷重受け体を上下から挟圧固定する手段を採用することが望ましい。
【0011】
また、本発明の包装箱においては、井桁状の荷重受け体の少なくとも一つの方形空間に、この方形空間の変形を防止する変形防止体が組み込まれていることが望ましい。そして、この変形防止体が荷重受け体の縦桁材又は横桁材の上端から延設されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る段ボール製の包装箱のように、縦桁材と横桁材を井桁状に組んだ荷重受け体が、外箱に収容された断面略L字形の物品の水平部と外箱の蓋板部又は底板部との間に配置され、荷重受け体と外箱の長さ方向両端の側板部との間に空間が存在していると、該空間が存在する分だけ外箱の長さ方向に小さい井桁状の荷重受け体を使用できるので、荷重受け体を構成する段ボールを節約して材料コストを抑えることができ、かつ、廃棄物の量を少なくすることができる。しかも、荷重受け体は移動防止手段によって移動が防止されているので、上記のように荷重受け体と外箱の長さ方向両端の側板部との間に空間が存在していても、荷重受け体が外箱の長さ方向に移動してその移動方向と反対側の外箱が押し潰される心配はなく、外箱全体に亘って耐荷重強度が向上し、荷重による外箱や被包装物品の変形、損壊を防止することができる。
【0013】
また、移動防止手段として、物品の水平部と外箱の蓋板部又は底板部によって荷重受け体を上下から挟圧固定する手段を採用すると、簡便に荷重受け体の移動を防止できるので、コストの増加や包装作業性の低下を防止することができ、しかも、荷重が大きくなるほど荷重受け体を上下から強く挟圧して確実に荷重受け体の移動を防止することができる。
【0014】
また、井桁状の荷重受け体の少なくとも一つの方形空間に、この方形空間の変形を防止する変形防止体が組み込まれていると、井桁状の荷重受け体に対角線方向の外力が作用しても、この変形防止体によって、荷重受け体の方形空間の菱形への変形、ひいては井桁状の荷重受け体全体の菱形への変形を防止し、荷重を受ける平面領域が縮小するのを防止して本来の耐荷重強度を発揮させることができる。そして、この変形防止体が荷重受け体の縦桁材又は横桁材の上端から延設されていると、変形防止体を別途準備する必要がなくなるので部品点数の増加を防止でき、しかも、延設された変形防止体を縦桁材又は横桁材の上端沿いに折り曲げて荷重受け体の方形空間に嵌め込むだけで、変形防止体を方形空間から離脱しないように簡単に組み込んで荷重受け体の変形を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る段ボール製の包装箱を示す分解斜視図である。
【図2】同包装箱の横断面図である。
【図3】同包装箱の縦断面図である。
【図4】同包装箱の井桁状の荷重受け体を示す分解斜視図である。
【図5】同荷重受け体の一部と変形防止体を示す斜視図である。
【図6】横桁材の上端から変形防止体が延設された荷重受け体の部分斜視図である。
【図7】断面略L字形の物品の代表例である階段用床材の斜視図である。
【図8】断面略L字形の物品を包装箱に包装する場合の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る段ボール製の包装箱の代表的な実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態の包装箱は、図1〜図3に示すように、段ボール製の外箱1と、段ボール製の井桁状の荷重受け体2とを備えたもので、断面略L字形の物品10として前述した柔軟な合成樹脂製もしくはゴム製の階段用床材を2〜10枚程度重ねて包装するように構成されている。
【0018】
外箱1は、底板部1aと、四周側板部1b,1c,1d,1eと、蓋板部1fとからなるものであって、図1に示すように、底板部1aと四周側板部1b,1c,1d,1eは外箱本体を構成するように一体に組み立てられており、蓋板部1fは外箱本体から分離して形成されている。そして、この外箱1は、包装される物品(階段用床材)10に対応した長方形の箱体とされており、幅方向両側の側板部1b,1dは物品(階段用床材)10の略垂直部(段鼻被覆部)10bの前述した傾斜角度θと同じ角度(75〜85°)で内側に傾斜している。外箱1(外箱本体)のサイズは、包装される物品(階段用床材)10の水平部(踏み面部)10aの縦横寸法が約90〜200cm×30〜60cm、略垂直部(段鼻被覆部)10bの高さ寸法が3〜5cmであるから、この物品(階段用被覆材)10を2〜10枚程度重ねて、四周側壁1b,1c,1d,1eとの間に隙間を殆ど生じることなく収容できるサイズとすればよい。
【0019】
蓋板部1fはその幅方向両側に側板部1g,1gが形成されており、図2に示すように蓋板部1fを被せると、その側板部1g,1gが外箱1(外箱本体)の側板部1b,1dに重ね合わされるようになっている。そして、図2に示すように、この蓋板部1fの側板部1g,1gの下端縁を粘着テープ3で外箱1(外箱本体)の底板部1aの両側縁に貼り付けると共に、図3に示すように、蓋板部1fの長さ方向の両端縁を粘着テープ3で外箱1(外箱本体)の長さ方向両端の側板部1c,1eに貼り付けることによって、蓋板部1fが外箱1(外箱本体)に貼着固定されるようになっている。
【0020】
尚、本実施形態では蓋板部1fを外箱本体から分離して形成しているが、蓋板部を外箱本体の四周側板部1b,1c,1d,1eのいずれかの上端に一体に形成してもよい。また、場合によっては、外箱本体の四周側板部1b,1c,1d,1eの上端に4枚のフラップを設け、これらのフラップを折り曲げて蓋板部を構成するようにしてもよい。
【0021】
外箱1の材料となる段ボールとしては、両面段ボール、複両面段ボール、複々面段ボールなどが使用可能であるが、本実施形態のように包装される物品10が前述した寸法を有する合成樹脂製もしくはゴム製の階段用床材であって、それを2〜10枚程度重ねて包装する場合は、強度的に両面段ボールを使用すれば十分であり、その中でも、中芯の種類がAフルート、ライナーの種類がK5(坪量180g)である両面段ボールなどが好ましく使用される。
【0022】
断面略L字形の物品(階段用床材)10は、図2に示すように裏返しにされ、略垂直部(段鼻被覆部)10bが交互に右側と左側に位置するように2〜10枚程度重ねられて、外箱1(外箱本体)に収容される。物品(階段用床材)10の包装枚数は2〜10枚に限定されないが、階段用床材の質量は1枚当たり1〜5kgであり、包装枚数があまり多くなると総質量が大きくなり過ぎて持ち運びがし辛くなるので、総質量が25kgを越えない包装枚数とすることが望ましい。
尚、本実施形態では、物品10の略垂直部10bが交互に右側と左側に位置するように物品10の向きを1枚ずつ反転させて収容しているが、物品10の向きを2〜5枚ずつ反転させて収容しても勿論よい。
【0023】
図1〜図3に示すように、一番上に重ねられた物品(階段用床材)10の水平部(踏み面部)10aと外箱1の蓋板部1fとの間には、段ボール製の縦桁材2aと横桁材2bを井桁状に組んだ荷重受け体2が配置されている。この荷重受け体2の横桁材2bは、図1,図2,図4に示すように、その長さ方向両端の端辺が物品(階段用床材)10の略垂直部(段鼻被覆部)10bの前記傾斜角度θと同じ角度(75〜85°)で内側に傾斜した横長の長方形の段ボール片に、該段ボール片の高さ寸法の半分の深さを有する複数の切込み2cを一定間隔をあけて上方から形成したものであって、この長方形の段ボール片からなる横桁材2bの長さは、包装される物品(階段用床材)10の水平部(踏み面部)10aの幅寸法とほぼ同一に設定されており、横桁材2bの高さ寸法(上下寸法)は、一番上に重ねられた物品10の水平部10aから外箱1の蓋板部1fまでの上下寸法よりも少し(数mm程度)大きく設定されている。また、荷重受け体2の縦桁材2aは横桁材2bと同じものであり、図4に示すように、横桁材2bを上下反転させて縦桁材2aとして使用している。
尚、縦桁材2a及び横桁材2bの材料となる段ボールは、前記外箱1に用いた段ボールと同じものである。
【0024】
本実施形態の荷重受け体2は、図4に示すように、4つの切込み2cを形成した上記の縦桁材2aと横桁材2bを4個ずつ使用し、縦桁材2aの切込み2cと横桁材2bの切込み2cを互いに嵌め込むことで、4個の縦桁材2aと4個の横桁材2bを井桁状に組み付けたものであり、外箱1の長さ方向中央部において、この井桁状の荷重受け体2を一番上に重ねられた物品10の水平部10aと外箱1の蓋板部1fとの間に配置すると、図2に示すように、荷重受け体2の横桁材2bの両端辺と物品10の略垂直部10bとの間には隙間が実質的に生じないけれども、図3に示すように、荷重受け体2の縦桁材2aの両端辺と外箱1の長さ方向両端の側板部1c,1eとの間には空間4,4が存在することになる。
【0025】
上記のように空間4,4が存在しても、荷重受け体2の縦桁材2a及び横桁材2bの上下寸法が、一番上の物品10の水平部10aから蓋板部1fまでの上下寸法よりも数mm程度大きく設定されているため、荷重受け体2は蓋板部1fと物品10の水平部10aとで上下から挟圧固定され、外箱1の長さ方向に移動することはない。
【0026】
荷重受け体2の移動防止手段としては、荷重受け体2を係止させる係止片を蓋板部1fの裏面に設けたり、荷重受け体2を粘着テープで蓋板部1f又は物品10の水平部10aに貼り付けるなどの手段を採用することもできるが、荷重受け体2の移動防止手段として、上記のように蓋板部1fと物品10の水平部10aで荷重受け体2を上下から挟圧固定する手段を採用すると、係止片や粘着テープなどの移動防止部材を用いる必要がなくなるので、コストの増加や包装作業性の低下を防止することができ、しかも、外箱1が積み重ねられて荷重が大きくなるほど荷重受け体2が上下から強く挟圧固定されるので、より確実に移動を防止することができる。
【0027】
荷重受け体2の縦桁材2a及び横桁材2bの上下寸法(高さ寸法)は、一番上の物品10の水平部10aから蓋板部1fまでの上下寸法よりも数mm程度、具体的には2〜10mm程度、好ましくは3〜8mm程度、更に好ましくは5mm程度大きく設定するのがよい。縦桁材2a及び横桁材2bの上下寸法をあまり大きく設定すると、外箱1の蓋板部1fが凸湾曲するため、外箱1を積み重ねたときの安定性が損なわれることになるが、縦桁材2a及び横桁材2bの上下寸法を上記のように2〜10mm程度大きく設定する場合は、蓋板部1fが殆ど凸湾曲することなく実質的に平坦な状態を維持するため、外箱1を積み重ねるときの安定性が損なわる心配はなく、しかも、縦桁材2a及び横桁材2bの上端が蓋板材1fの裏面に食い込んだ状態で強固に挟圧固定されるため、荷重受け体2の移動を確実に防止することができる。
【0028】
本実施形態の荷重受け体2は、同じ長さの縦桁材2aと横桁材2bを4個ずつ井桁状に組んでいるが、包装される物品10の水平部10aの大きさに応じて、縦桁材2aと横桁材2bの個数を4個より多くしても少なくしてもよい。また、縦桁材2aと横桁材2bの長さを異ならせたり、縦桁材2aと横桁材2bの個数を異ならせたりしてもよい。これらの桁材2a,2bの相互間隔(換言すれば、方形空間2dの一辺の長さ)は特に制限されないが、耐荷重強度を向上させる観点から、相互間隔を5〜20cm程度、好ましくは10〜15cm程度に設定するのがよい。
【0029】
荷重受け体2全体の平面領域の大きさは、耐荷重強度を向上させる観点から、包装される物品10の水平部10aの大きさ(面積)の少なくとも半分程度とするのが好ましい。その場合、荷重受け体2の横桁材2bの長さを、前述したように物品10の水平部10aの幅寸法とほぼ同一とし、縦桁材2aの長さを物品10の水平部10aの長さ寸法の少なくとも半分程度とすることによって、荷重受け体2の平面領域の大きさを物品10の水平部10aの大きさの少なくとも半分程度にすることが好ましく、このようにすると、荷重受け体2の横桁材2bの傾斜した両端辺で物品10の略垂直部2bを内側から支持して、略垂直部2bを前述した傾斜角度θに保持できる利点がある。
尚、荷重受け体2の平面領域が大きくなればなるほど、耐荷重強度が向上して外箱1が押し潰され難くなるが、荷重受け体2の平面領域があまり大きくなると、材料の段ボール使用量が増えてコストが高くなり、廃棄物量も増えるので、荷重受け体2の平面領域の大きさは物品10の水平部10aの大きさ(面積)の2/3以下とすることが好ましい。
【0030】
ところで、上記の井桁状の荷重受け体2は、上方からの荷重に対する強度は大きいが、対角線方向に外力が作用すると簡単に菱形に変形し、荷重を受ける平面領域が減少するので、図5に示すように、井桁状の荷重受け体2の少なくとも一つの方形空間2dに、該方形空間2dの変形を防止する変形防止体5を組み込むことが望ましい。この変形防止体5は、外箱1や荷重受け体2の段ボールと同じ段ボールで作製されたもので、荷重受け体2の方形空間2dと同一形状の方形板部5aの両端に、下方へ折れ曲がる脚部5b,5bが形成されたものである。
【0031】
上記の変形防止体5を井桁状の荷重受け体2の少なくとも一つの方形空間2dに嵌め込むと、荷重受け体2に対角線方向の外力が作用しても、該方形空間2dが変形防止体5によって菱形に変形しなくなり、このように少なくとも一つの方形空間2dの変形が防止されると、全ての方形空間が菱形に変形し難くなるので、荷重受け体2全体が菱形に変形することは防止される。従って、荷重受け体2の変形によって荷重を受ける平面領域が小さくなることがないので、荷重受け体2の本来の耐荷重強度を発揮させることが可能となる。
【0032】
変形防止体5は、方形空間2dを幾つか選択して適当個数嵌め込めばよいが、一つの方形空間2dを選択して変形防止体5を1個だけ嵌め込む場合は、荷重受け体2の中央の方形空間2dを選択して嵌め込むことが好ましく、このようにすると、変形防止体5の変形を効果的に防止することができる。
【0033】
変形防止体は、図5に示す方形板部5aを有する変形防止体5に限定されるものではなく、荷重受け体2の方形空間2dに組み込んで該方形空間2dの変形を防止できる変形防止体であれば、どのような形状のものでもよい。例えば、方形空間2dを対角線に沿って二等分した直角三角形の板部の三辺に脚部を形成した変形防止体や、4つの頂点を有する星形の板部に脚部を形成した変形防止体であってもよい。
【0034】
また、変形防止体5は、図6に示すように荷重受け体2と一体に形成してもよい。この図6に示す変形防止体5は、方形空間2dと同一形状の方形板部5aを荷重受け体2の横桁材2bの上端から延設し、方形板部5aの先端に折り代5cを設けたものである。このように変形防止体5を荷重受け体2と一体に形成すると、変形防止体を別途準備する必要がなくなるので部品点数の増加を防止でき、しかも、該変形防止体5の方形板部5aを横桁材2bの上端沿いに折り曲げて方形空間2dに嵌め込むだけで、変形防止体5を方形空間から離脱しないように簡単に組み込んで荷重受け体2の変形を確実に防止できる利点がある。
尚、変形防止体5の方形板部5aは縦桁材2aの上端から延設してもよいことは言うまでもない。また、折り代5cの寸法を縦横の桁材2a,2bの高さ寸法と同一にして、折り代5cに脚部の役目をさせてもよい。
【0035】
本実施形態の包装箱のように、段ボール製の外箱1に収容された断面略L字形の物品10の水平部10aと外箱1の蓋板部1fとの間に、段ボール製の縦桁材2aと横桁材2bを井桁状に組んだ荷重受け体2が配置されて、荷重受け体2と外箱1の長さ方向両端の側板部1c,1eとの間に空間4が存在し、且つ、荷重受け体2の移動防止手段として、物品10の水平部10aから外箱1の蓋板部1fまでの上下寸法よりも縦桁材2a及び横桁材2bの高さ寸法を少し大きく設定した荷重受け体2を、物品10の水平部10aと外箱1の蓋板部1fによって上下から挟圧固定する手段が採用されていると、荷重受け体2と外箱1の長さ方向両端の側板部1c,1eとの間に空間4が存在する分だけ外箱1の長さ方向に小さい荷重受け体2を使用できるので、荷重受け体2を構成する段ボールを節約して材料コストを抑えることができ、廃棄物の量を少なくすることができる。しかも、荷重受け体2は上記移動防止手段によって移動が防止されているので、荷重受け体2と外箱1の長さ方向両端の側板部1c,1eとの間に空間4が存在していても、荷重受け体2が外箱の長さ方向に移動してその移動方向と反対側の外箱1が押し潰される心配はなく、中央部を中心に外箱1全体に亘ってバランスよく耐荷重強度を保持・向上させて、外箱1や物品10の変形、損壊を防止することができる。また、移動防止手段として上記の挟圧固定手段が採用されていると、簡便に荷重受け体の移動を防止できるので、コストの増加や包装作業性の低下を防止することが可能となり、しかも、荷重が大きくなるほど荷重受け体2を上下から強く挟圧して確実に荷重受け体2の移動を防止できるようになる。そして、荷重受け体2の少なくとも一つの方形空間2dに変形防止体5が組み込まれていると、荷重受け体2に対角線方向の外力が作用しても、荷重受け体2が菱形に変形して荷重を受ける平面領域が減少する心配はなくなるので、井桁状の荷重受け体2本来の耐荷重強度を発揮して外箱1が押し潰されるのを防止することができる。
【0036】
参考までに、中芯がAフルート、ライナーがK5(秤量180g)、厚みが約5mmの両面段ボールを用いて製作した外箱に、同じ段ボールからなる縦及び横の桁材(長さ50cm、高さ5cm)を14cmの間隔をあけて4個ずつ井桁状に組んで作製した荷重受け体を内装し、載荷試験(圧縮試験)を行ったところ、外箱は13.2kNで座屈した。この試験結果から、井桁状の荷重受け体を外箱に内装すると耐荷重強度が大幅に向上し、積み重ねて運搬あるいは保管をする際に外箱が押し潰されるのを十分防止できることが判る。
【0037】
以上の実施形態では、断面略L字形の物品(階段用床材)10を裏返して略垂直部(段鼻被覆部)10bを上向きにして外箱1に収容しているが、断面略L字形の物品10を裏返さないで略垂直部10bを下向きにして外箱1に収容し、物品10の水平部10aと外箱1の底板部1aとの間に井桁状の荷重受け体2を配置すると共に、荷重受け体2の移動防止手段として、物品10の水平部10aから外箱1の底板部1aまでの上下寸法よりも縦板部2a及び横板部2bの上下寸法を少し大きく設定した井桁状の荷重受け体2を、物品10の水平部10aと外箱1の底板部1aで上下から挟圧固定する手段を設けるように構成しても勿論よい。
【符号の説明】
【0038】
1 外箱
1a 底板部
1b,1c,1d,1e 四周側板部
1f 蓋板部
2 荷重受け体
2a 縦桁材
2b 横桁材
2d 方形空間
4 荷重受け体と外箱の長さ方向両端の側板部との間の空間
5 変形防止体
10 断面略L字形の物品(階段用床材)
10a 水平部(踏み面部)
10b 略垂直部(段鼻被覆部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略L字形の物品を包装する段ボール製の包装箱であって、底板部と四周側板部と蓋板部とからなる外箱と、縦桁材と横桁材を井桁状に組んだ荷重受け体とを備え、荷重受け体は、外箱に収容された物品の水平部と外箱の蓋板部又は底板部との間に配置されて、荷重受け体と外箱の長さ方向両端の側板部との間に空間が存在しており、且つ、移動防止手段によって荷重受け体の移動が防止されていることを特徴とする段ボール製の包装箱。
【請求項2】
荷重受け体の移動防止手段として、物品の水平部から外箱の蓋板部又は底板部までの上下方向の寸法よりも、荷重受け体の縦桁材及び横桁材の高さ寸法を少し大きく設定し、物品の水平部と外箱の蓋板部又は底板部によって荷重受け体を上下から挟圧固定する手段が採用されていることを特徴とする請求項1に記載の段ボール製の包装箱。
【請求項3】
井桁状の荷重受け体の少なくとも一つの方形空間に、この方形空間の変形を防止する変形防止体が組み込まれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の段ボール製の包装箱。
【請求項4】
変形防止体が荷重受け体の縦桁材又は横桁材の上端から延設されている請求項3に記載の段ボール製の包装箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−91794(P2012−91794A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238162(P2010−238162)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】