説明

段ボール製包装容器及び包装体

【課題】 コンテナ輸送に好適な、総重量が40kg以上となるような重量物梱包用の段ボール製包装容器を提供する。
【解決手段】 表ライナ、裏ライナ、各々が4.5mm以上の段高を有する複数のフルート層、及び前記フルート層間に存在する中間ライナを貼合してなり、ショートコラムが15kN/m以上の段ボールシートから形成された段ボール製包装容器であって、前記表ライナが透湿度300g/m・24h以下、コッブ吸水度が5g/m以下である遮水ライナであり、前記段ボールシートの遮水ライナ側が外側面となるように形成された段ボール製包装容器、及び金属製物品と気化防錆剤及び/又は乾燥剤とを、前記段ボール製包装容器を用いて包装したことを特徴とする包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送時にコンテナに積載する重量物用の包装容器として特に好適に用いられる段ボール製包装容器、及び該容器を用いた包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、段ボール製包装箱は、機械製品、家電製品、食料品、日用品等あらゆる物品の輸送用に広く用いられている。包装された物品は、特に長距離もしくは大量の輸送においては、さらにコンテナに収容されて輸送されるのが一般的である。
輸送用のコンテナとは、一般的には、鉄やアルミニウム製の規格化された形状の箱であって、用途により国際海上貨物用、鉄道用、国内の内航船用、航空貨物用コンテナ、など様々の規格があり、規格に対応した船や鉄道、トレーラーなど異なった種類の輸送手段の間で相互の積み替えが簡便に行なえる。また、コンテナ荷役は機械化されているため、輸送時の手間、コスト、時間を大幅に削減でき、また盗難や汚損の危険も小さくなる。
【0003】
大量・長距離に適するコンテナによる輸送は、コスト的には極めて優れているが、一般的にコンテナ内は調温・調湿されない為、輸送時の内部環境が極めて大きく変動する。コンテナによる海外との海上輸送する場合は赤道を通過することもあるため、コンテナ内の温度は最大60℃にも達する。また湿度は100%以上となる可能性もあり、コンテナ内部に大量の結露水が発生する場合がある。
このような湿度や結露水によって、包装された内容物が損傷を受ける可能性があり、特に機械製品等の鉄などの金属が含まれる場合には、錆の発生が大きな問題となっていた。
【0004】
更に、内容物を梱包する容器が段ボール製の場合には、極端な高湿度条件下や結露水によって箱圧縮強度が大きく低下し、最悪の場合、箱潰れが起きる恐れがある。
【0005】
段ボール製包装容器を用いて重量物を梱包する場合には、重量物専用の構成と強度特性を有する段ボールシートを用いた包装容器が必要である。
例えば内容物の総重量が40kg以上物品を梱包する場合には、段ボールシートのフルート数は2層以上、厚さは10mm以上、ショートコラム(ASTM D 2808)は15kN/m以上、段ボールを構成する表層ライナの坪量は360g/m以上の構成の段ボールシートが主として使用されている。
【0006】
また、段ボール製包装容器内の内容物の錆の発生を防止するためには、内容物を気化性防錆剤及び/又は乾燥剤と共にプラスチックフィルムで包装し、更に段ボール包装容器で梱包する方法や、特許公報第2829314号(特許文献1)記載の気化性防錆フィルム等で包装した内容物を、更に段ボール製包装容器で梱包する方法等が存在した。
【0007】
しかしながら、これらの従来技術では、梱包時にプラスチックフィルム又は防錆フィルムで包装する作業負担が増加する。また、目的地に到着し開封後には、使用したプラスチックフィルム又は防錆フィルムが廃棄物となるというコスト面及び環境面での問題が発生した。
【0008】
また、プラスチックフィルムや防錆フィルムを使用しない防錆技術としては、特開2000−167952号公報(特許文献2)がある。この従来技術には、防湿剤を塗工した防湿ライナの存在により、コンテナ内で湿度の急激な上昇があっても、段ボール箱内の湿度上昇は緩和され、内容物表面に起きる結露水の発生も緩和され、錆の発生も大幅に減少する。しかし、コンテナ積載用の重量物梱包用段ボール製包装容器として用いるためには、さらに強度及び遮水性能を向上させ、防錆性も発揮可能な段ボール性包装容器が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許公報第2829314号
【特許文献2】特開2000−167952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記述べた課題について更に改善して、コンテナ輸送に好適な、総重量が40kg以上となるような重量物梱包用の段ボール製包装容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の(1)〜(4)に記載の構成を採る。
(1) 表ライナ、裏ライナ、各々が4.5mm以上の段高を有する複数のフルート層、及び前記フルート層間に存在する中間ライナを貼合してなり、ショートコラムが15kN/m以上の段ボールシートから形成された段ボール製包装容器であって、前記表ライナが透湿度300g/m・24h以下、コッブ吸水度(JIS P 8140:接触時間=30分が5g/m以下である遮水ライナであり、前記段ボールシートの遮水ライナ側が外側面となるように形成されたる段ボール製包装容器。
【0012】
(2) 前記遮水ライナが、坪量350g/m以上のライナ原紙表面に、合成樹脂エマルジョンと顔料を主成分とする塗料を塗工し、固形分3〜30g/mの遮水層を設けてなる前項(1)に記載の段ボール製包装容器。
【0013】
(3) 前記遮水層の顔料比率は30〜60質量%であって、前記顔料は平均粒子径3μm以下でアスペクト比6以上の平板状顔料と、平均粒子径が5〜15μmでアスペクト比が3以下の粒子状顔料からなり、平板状顔料と粒子状顔料の比率は95:5質量%〜60:40質量%である前項(2)に記載の段ボール製包装容器。
【0014】
(4) 金属製物品と気化防錆剤及び/又は乾燥剤とを、前記(1)〜(3)のいずれかに記載された段ボール製包装容器を用いて包装したことを特徴とする包装体。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、従来品よりもさらにコンテナ輸送に好適な、総重量が40kg以上の重量物梱包用の段ボール製包装容器を提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に使用される段ボールシートの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、更に具体的に説明する。
本発明における段ボール製包装容器に用いられる段ボールシートは、表ライナ、裏ライナ、各々が4.5mm以上の段高を有する複数のフルート層、及び前記フルート層間に存在する中間ライナから構成されている。一般的にはこのような段ボールシートのうち、フルート層が2層存在するものを複両面段ボールシート、3層存在するものを複々両面段ボールシート等と呼ばれている。
上記表ライナは、透湿度(J.TAPPI 7−76)が300g/m・24h以下で、コッブ吸水度が5g/m以下である遮水ライナで構成されている。尚、本発明においてコッブ吸水度(JIS P 8140)の接触時間は30分とする。
上記遮水ライナは、プラスチックフィルムを使用せず、ライナ原紙を基材紙として合成樹脂エマルジョンと顔料からなる遮水層を設けて遮水性を付与することが、本発明の段ボール製包装容器を使用後古紙としてリサイクル可能となるため望ましい。
また、上記基材紙となるライナ原紙の坪量は、通常のライナ原紙を使用することが可能である。強度面から、坪量350g/m以上で、クラフトパルプの配合率が70%以上の
クラフトライナ原紙を使用することが望ましい。また、ライナ原紙自体のコッブ吸水度が100g/m以下のものを使用することがさらに望ましい。
また、合成樹脂エマルジョンによる遮水層を設けるにあたって、ライナ原紙の撥水度(J.TAPPI 68)がR2以下のものを用いることが、塗工液に対する濡れ性が良好で塗工時のピンホールの発生数が減少するため望ましい。
【0018】
また、上記合成樹脂エマルジョンと顔料からなる遮水層は、固形分質量3〜30g/mの範囲とすることが望ましい。3g/m未満の場合は、塗工時にピンホールが発生し易く、十分な遮水性を付与することが困難である。また、30g/mを超える場合には、塗工量に対して遮水効果が頭打ちになり、不経済である。
また、上記遮水層中における顔料の比率は30〜60質量%であることが望ましい。
【0019】
本発明で遮水層に用いられる合成樹脂エマルジョンは、スチレン・ブタジエン系共重合体、及び/又はスチレン・アクリル系共重合体を使用することが望ましい。
また、顔料は、平均粒子径3μm以下でアスペクト比6以上の平板状顔料と、平均粒子径が5〜15μmでアスペクト比が3以下の粒子状顔料を混合して配合することが望ましい。尚、ここでいうアスペクト比とは、レーザー回折法による平均粒子系を平板状顔料の平均厚さで割った値である。レーザー回折法による粒子径測定は、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD2000J」により測定できる。
【0020】
上記の平板状顔料は、遮水層の防湿性向上、つまり透湿度の低下に役立つものであるが、平均粒径を3μm以上にすると、ピンホールの発生が多くなるため、3μm以下にすることが好ましい。
本発明で平板状顔料として使用されるのは、具体的には、カオリン、タルク、マイカ、セリサイト、水酸化アルミニウム等である。特にデラミタイプのカオリンが好適に用いられる。
上記の粒子状顔料を遮水層に配合すると、遮水層の表面に粒子状顔料が露出して粗面化し、コルゲーターの熱ロールや熱板との接触面積が減少するため、遮水層の合成樹脂と熱ロールや熱板との融着トラブルが抑えられてコルゲーターでの操業を容易となる。
このような粒子状顔料は、平均粒径が5μm未満では、融着トラブルを抑える効果が発揮されないおそれがあり、15μm以上にすると、遮水層の表面性が悪化し、遮水性が低下するおそれがあるため、粒子状顔料の平均粒径を5〜15μmにすることが好ましい。
本発明で粒子状顔料として使用されるのは、具体的には、炭酸カルシウム、シリカ、クレー等である。
なお、上記平板状顔料と粒子状顔料との望ましい配合比率は、95:5質量%〜60:40質量%である。
【0021】
本発明の裏ライナとしては、通常用いられる段ボール用のライナ原紙が用いることができるが、コッブ吸水度が100g/m以下で、坪量は360g/m以上のライナ原紙を使用することが望ましい。また表ライナと同様にして得た遮水ライナを裏ライナとして使用することも可能である。
また、複数のフルート層間に存在する中間ライナとしては、通常用いられる段ボール用のライナ原紙を任意に選択して用いることができる。坪量160g/m以上のものを使用することが、段ボールシートの強度面から特に望ましい。
【0022】
さらに、本発明における段ボール製包装容器は、上記で得た段ボールシートの表ライナ側を容器の外側となるようにして形成するものとする。これにより、本発明の段ボール製包装容器をコンテナに収容して輸送したときに、コンテナ内等で発生した結露水などによる水濡れが発生して容器表面に付着しても、ライナ内への水分浸透が防止できるので、段ボール包装容器の強度低下を防止することができる。
【0023】
本発明のフルート層を構成する中芯原紙としては、一般的に段ボール用に用いられている一般中芯原紙、もしくは耐水中芯原紙が利用できる。坪量は160g/m以上のものを使用することが、段ボールシートの強度面から望ましい。
【0024】
上記述べた表ライナ、裏ライナ、中間ライナ、中芯原紙によるフルート層を、定法により貼合して本発明で用いる段ボールシートを得る。尚、表ライナとフルート層を貼合する際には、表ライナの遮水性を有さない側の面とフルート層を貼合するものとする。尚、各ライナと中芯の接着は、一般澱粉糊、又は耐水澱粉糊等を任意に選択して使用することが可能である。
【0025】
また、貼合によって段ボールシートを作成する際、各フルート層の段高は、4.5mm以上とする。また、シート全体の厚さは10mm以上とすることが望ましい。
また、本発明に使用される段ボールシートの強度特性であるショートコラムは、15kN/m以上とする。ショートコラムが15kN/m以上になると、マッキー式等の箱圧縮強度の計算値は300kg以上となり、内容物の重量が40kg以上の重量物用の包装用として十分使用できる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例及び比較例を元に詳述する。
<実施例1>
米国インターナショナルペーパー社(以下IP社)製ライナ原紙(469g/m,撥水度=R0,透湿度=2000g/m・24h,コッブ吸水度=90g/m)を基材紙とし、その表面に、下記組成の合成樹脂エマルジョンと顔料とからなる塗料をメイヤーバーで塗工、乾燥後の塗工量が固形分で20g/mとなるように塗工して、遮水ライナを得た。
得られた遮水ライナは、透湿度=200g/m・24h、コッブ吸水度=3g/mである。これを表面ライナ(製函時に箱の外側面とするライナ)とする。
[塗料構成]
スチレン・ブタジエン共重合体 46質量%
(日本ゼオン(株),HOJ4072)
スチレン・アクリル共重合体 9質量%
(BASF社、ジョンクリル734)
ブラジルカオリン 36質量%
(イメリス社,Capim−DG,平板状顔料,平均粒径=1.15μm,アスペクト比10〜40)
炭酸カルシウム 9質量%
(備北粉化工業(株),BF300,粒子状顔料,平均粒径=8μm,アスペクト比 3以下)
次に、裏面ライナ(製函時に箱の内側面とするライナ)として表面ライナで基材紙としたIP社製ライナ原紙(469g/m,撥水度=R0,透湿度=2000g/m・24h,コッブ吸水度=90g/m)、中間ライナとしては王子板紙(株)製ONRK170(170g/m)、中芯としては王子板紙(株)製HS160(160g/m)を使用し、接着剤として通常使用される耐水澱粉糊を用い、定法により2層のフルート層(各々の段高=4.6mm)を有する複両面段ボールシート(厚さ10.3mm,ショートコラム=24kN/m)を得た。
上記複両面段ボールシートを用いて、表ライナを外側として箱内寸法が400*300*250の0201形式(JIS−Z1507)の段ボール箱を作製した。
上記段ボール箱内に、寸法約100*100mmの鋳鉄を入れて梱包した包装体を得た。
【0027】
<実施例2>
段ボール箱内に、寸法約100*100mmの鋳鉄を、生石灰乾燥剤(5g入)を2個と、気化性防錆剤キレスビーム(キレスト社製,2g)3個と共に梱包した事を除けば、実施例1と同様にして包装体を得た。
【0028】
<比較例1>
表面ライナ及び裏面ライナとして、遮水層を設けない王子板紙(株)製ライナ原紙ONRK280(280g/m、撥水度=R0、透湿度=2500g/m・24h、コッブ吸水度=250g/m)を使用した以外は、実施例1と同様にして段ボールシートを得た。
さらに実施例1と同様にして段ボール箱を作製し、同様に寸法約100*100mmの鋳鉄を入れて梱包して包装体を得た。
【0029】
<比較例2>
表面ライナとして、遮水層を設けないIP社製ライナ原紙(469g/m)をそのまま使用した以外は、実施例1と同様にして段ボールシートを得た。
さらに実施例1と同様にして段ボール箱を作製し、同様に寸法約100*100mmの鋳鉄を入れて梱包して包装体を得た。
【0030】
<比較例3>
比較例2と同様にして得た段ボール箱内に、寸法約100*100mmの鋳鉄を、気化性防錆剤キレスビーム(キレスト社,2g)3個と共に40μm厚のポリエチレン製袋で包装したものを梱包して包装体を得た。
【0031】
<比較例4>
比較例2と同様にして得た段ボール箱内に、寸法約100*100mmの鋳鉄を、気化性防錆フィルム(アイセロ化学社製,ボーセロン103)により包装したものを梱包して包装体を得た。
【0032】
<比較例5>
王子板紙製ライナ原紙ONRK280(280g/m,撥水度=R0、透湿度=2500g/m・24h、コッブ吸水度=250g/m)を基材紙とし、その表面に、下記組成の合成樹脂エマルジョンと顔料とからなる塗料をメイヤーバーで塗工、乾燥後の塗工量が固形分で20g/mになるように塗工して、遮水ライナを得た。
得られた遮水ライナは、透湿度=100g/m・24h、コッブ吸水度=30g/mである。これを表面ライナ(製函時に箱の外側面とするライナ)とする。
[塗液組成]
スチレン・ブタジェン共重合体 50質量%
(日本ゼオン(株)、HOJ4072)
カップリング剤 0.5質量%
(信越化学工業(株)、KBM603)
白雲母 50質量%
(山口雲母工業所(株)、平板填量、平均粒径=22μm、アスペクト比=20〜30)
次に、裏面ライナ(製函時に箱の内側面とするライナ)として王子板紙社製ライナ原紙ONRK280(280g/m、撥水度=R0,透湿度=2500g/m・24h,コッブ吸水度=250g/m)、中間ライナとしては王子板紙(株)製ONRK170(170g/m)、中芯としては王子板紙(株)製HS160(160g/m)を使用し、接着剤として通常使用される耐水澱粉糊を用い、定法により2層のフルート層(各々の段高=4.6mm)を有する複両面段ボールシート(厚さ=10.0mm,ショートコラム=14.5kN/m)を得た。
上記複両面段ボールシートを用いて、表ライナを外側として箱内寸法が400*300*250の0201形式(JIS−Z1507)段ボール箱を作製した。
上記段ボール箱内に、寸法約100*100mmの鋳鉄を入れて梱包した包装体を得た。
【0033】
<表ライナのピンホール発生評価>
実施例1で製造した表面ライナ(遮水ライナ)と、比較例5で製造した表面ライナ(遮水ライナ)について、表面ライナを46*31cmに裁断し、遮水層が内側になるように原紙端部を折り曲げて、内寸法が40*25cmの舟形状にした状態で水を5mmの深さとし、24時間放置した後、遮水層のピンホールを観察した。
その結果、実施例1の表面ライナの遮水層のピンホール数は1個以下であり、比較例5では4個以上のピンホールが発生した。
【0034】
<段ボール箱及び梱包体の評価>
実施例、比較例で得た各包装体を可変空調室に入れ、25℃・70%RH条件から開始して12時間毎に50℃・95%RHの条件を繰り返し、段ボール包装体内の環境と、結露水の発生の有無を評価した。その結果を表1に示す。
また、開始時に50℃・95%RHの条件から25℃・70%RH条件に変動させたものについて同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表1及び表2より、実施例1においては、段ボール箱内の温湿度変化が緩やかであり、鋳鉄表面への結露水の発生がない。これに対して比較例は温湿度変化が急であり、可変空調室条件変化24時間後と36時間後に鋳鉄表面への結露水が発生している。尚、結露水が発生すると、さらに長時間経過した場合には、鋳鉄の錆発生の可能性が高まる。
【0038】
次に、実施例、及び比較例の包装体において、梱包作業性の評価、及び、包装体を可変空調室に入れ、25℃・70%RHと、50℃・95%RHの条件を12時間ごと7日間連続して繰り返した後の、内容物及び段ボール箱の状態を評価し、結果を表3に示した。
【0039】
【表3】

【0040】
<表3の評価説明>
*1)梱包作業において、段ボール箱による梱包以外の作業がないものを◎、段ボール梱包以外の作業増加が殆どないものを○、段ボール梱包以外の作業が大幅に増加するものを×とする。
*2)段ボールに、軟弱箇所の発生が殆どないものを◎、軟弱箇所の発生が1〜2箇所あるものを△、軟弱箇所の発生が3箇所以上あるものを×とする。
*3)鋳鉄の錆が殆どないものを◎、錆の発生が数箇所以上あるものを△、表面全体に錆が発生しているものを×とする。
【0041】
表3に示されるように、本発明は、段ボール内に乾燥剤や気化性防錆剤を入れなくとも防錆効果があるため、包装現場における作業負担度は大幅に軽減可能であり、資材も節約可能である。さらに防錆効果を高めたり、防錆効果を延長したら必要がある場合は、袋詰めされた乾燥剤及び/又は気化性防錆剤を段ボール内に挿入して梱包することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表ライナ、裏ライナ、各々が4.5mm以上の段高を有する複数のフルート層、及び前記フルート層間に存在する中間ライナを貼合してなり、ショートコラムが15kN/m以上の段ボールシートから形成された段ボール製包装容器であって、前記表ライナが透湿度300g/m・24h以下、コッブ吸水度が5g/m以下である遮水ライナであり、前記段ボールシートの遮水ライナ側が外側面となるように形成されたことを特徴とする段ボール製包装容器。
【請求項2】
前記遮水ライナが、坪量350g/m以上のライナ原紙表面に、合成樹脂エマルジョンと顔料を主成分とする塗料を塗工し、固形分3〜30g/mの遮水層を設けてなることを特徴とする請求項1に記載の段ボール製包装容器。
【請求項3】
前記遮水層の顔料比率は30〜60質量%であって、前記顔料は平均粒子径3μm以下でアスペクト比6以上の平板状顔料と、平均粒子径が5〜15μmでアスペクト比が3以下の粒子状顔料からなり、平板状顔料と粒子状顔料の比率は95:5質量%〜60:40質量%であることを特徴とする請求項2に記載の段ボール製包装容器。
【請求項4】
金属製物品と気化防錆剤及び/又は乾燥剤とを、請求項1〜3のいずれかに記載された段ボール製包装容器を用いて包装したことを特徴とする包装体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−111124(P2012−111124A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261906(P2010−261906)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(000110332)王子インターパック株式会社 (17)
【Fターム(参考)】