説明

段ボール貼合用接着剤及びそれを用いた貼合方法

【課題】ノーキャリア方式の澱粉接着剤において、初期接着力が高い低倍水糊を得る。
【解決手段】未糊化の澱粉粒の膨潤体積Vaが気乾状態における澱粉粒の体積の2.3倍以上3.2倍以下であり、この澱粉接着剤を糊化した後の澱粉粒の膨潤体積Vgが気乾状態における澱粉粒の体積の3.75倍以上4.80倍以下となり、かつVg/Vaの比が1.5以上1.7以下となるように澱粉接着剤を調製し、かつ、その接着剤を85℃にて膨潤糊化させたゲルの二重円筒型外筒回転式粘度計により歪み速度0.192sec−1で測定される剪断弾性率が2.0kPa以上5.0kPa以下であるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中芯とライナを貼り合わせて段ボールを作製するために用いるノーキャリア方式の澱粉接着剤と、それを用いて段ボールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ライナと中芯を貼り合わせて段ボールを作製する際に使用される澱粉接着剤を製造するにあたっては、温水中の澱粉をアルカリで全量溶解糊化したキャリア部と、未糊化の澱粉を温水に分散懸濁させかつホウ砂を加えたメイン部とを混合した後、ホウ砂を加えて攪拌するスタインホール方式(ツータンクキャリア方式)が用いられていた。しかしこの接着剤は製法が煩雑なために品質を安定させることが難しかった。
【0003】
これに対して、いくつかの方式が提案され、実際に用いられている。上記のツータンクキャリア方式の変形でワンタンクキャリア方式として知られる方法は、澱粉の分散懸濁液を調製してアルカリを加えて澱粉をアルカリ糊化してキャリア部を調製し、その作業を行ったタンクに希釈のために水を加えて、さらにそのタンクに上記メイン部を加えて混合した後、ホウ砂を加えて攪拌するものである。また、ノーキャリア方式として知られる方法は、水に分散させた澱粉に水酸化ナトリウムを用いてある程度の粘度になるまで膨潤させ、ホウ酸又はホウ砂を加えて増粘を停止させるものである。このうち、ノーキャリア方式が、品質を安定させやすいために用いられることが多い。このようなノーキャリア方式についてさらに改良した方法が、特許文献1及び2に記載されている。
【0004】
特許文献3には、澱粉と水とアルカリとを混合反応させた、澱粉を10〜40重量%含有するノーキャリア方式の段ボール用接着剤組成物が記載されている。ただし、この特許文献3で製造する澱粉接着剤はいずれも澱粉濃度が20重量%未満のものが主であり、澱粉濃度が20重量%以上の実施例は2例のみ記載されている。具体的には、実施例5の1が9.8重量%で倍水率9.1、実施例5の2及び実施例6の6がいずれも濃度34.6重量%で倍水率1.9、それ以外の実施例は全て17.7〜18.4重量%で倍水率4.4〜4.7である。ただし、特許文献3のうち、低倍水率で実施している実施例5の2及び実施例6の6で使用している澱粉は、糊化時に粘度が低くなる酸変性澱粉である。
【0005】
また、特許文献4及び特許文献5などには、それぞれ、スタインホール方式、プレミックス方式による低倍水の接着剤が記載されている。これらは上記のノーキャリア方式と異なり、接着剤の製造時に澱粉を膨潤させる工程がなく、施着剤中の澱粉体積Vaは膨潤前の体積Vuとほぼ変わらないものである。
【0006】
これらの方式の中でも、ノーキャリア方式は、調整方法が簡単で全自動化が容易であること、バッチ間の再現性が高く安定した品質の接着剤が用いられること、機械的剪断力に対して粘度安定性が優れていることなどの長所があり、用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−331202号公報
【特許文献2】特開平9−328664号公報
【特許文献3】特公昭48−5253号公報
【特許文献4】特開平11−323282号公報
【特許文献5】特開2000−160119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、澱粉接着剤を用いて高速貼合を実現するためには、なるべく澱粉濃度を高くして接着剤中の水分を少なくし、蒸発潜熱を小さくすることが効果的と考えられてきた。しかしながら、実際にノーキャリア方式で高濃度の澱粉接着剤を製造しようとすると、澱粉を膨潤させる方式であるため接着剤の粘度が高くなりやすく、澱粉の体積比率が接着剤の40%を越えると急激にダイラタント現象が起こり、接着剤を送液及び塗布するのに必要な流動性を失って、接着剤としての利用が困難になってしまった。
【0009】
また、水が少なくなると澱粉の全量を糊化しきれなくなるために、無駄が生じるだけでなく、初期接着力が低下してしまうという問題点があった。また、スタインホール方式と比べて初期接着性や高速貼合適性も十分とは言い難かった。
【0010】
さらに、ノーキャリア方式の澱粉接着剤は、高粘性の分散媒であるキャリア部を用いないため、貯蔵時に澱粉の沈降が起こってしまう場合があり、接着剤として安定性を欠く場合もあった。
【0011】
一方で、澱粉接着剤の標準的な倍水率の値3.0よりも倍水率が低い低倍水糊を用いることができれば、乾きが速くなることで、より高速な製造装置、又はより短い加熱装置での段ボールシートの製造が可能になるため、低倍水糊の需要が存在している。
【0012】
また、ノーキャリア方式の別の長所として、糊化させたキャリア澱粉の粘度を低く抑えたり、糊化を容易にしたりする目的で、高価な化工澱粉を用いる必要がなく、使用する澱粉の全量を安価な未変性澱粉とすることができることが挙げられる。しかし、特許文献3に記載の濃度30重量%を超える上記二例の配合比で、未変性澱粉や軽度の酸変性澱粉を用いて検証してみると、接着剤の調整中に必ずゲル化してしまい、実施不可能になってしまう。すなわち、特許文献3に記載の手順で、澱粉濃度が30重量%を超えるノーキャリア方式の澱粉接着剤を実現するには、高度に酸変性した澱粉を用いねばならず、コスト面で不利な製造手段となっていた。さらに、酸変性により極度に低分子化した澱粉を用いるために、膨潤させても粘度が上昇しにくくなる一方で、初期接着力はむしろ低下するという問題があった。
【0013】
すなわち、段ボールシート貼合用として高濃度(低倍水)澱粉接着剤のニーズは確実に存在しているが、単に澱粉の濃度を上げるだけでは実際に利用可能な接着剤を製造できないか、出来ても接着力が不十分になってしまうという問題に突き当たっていた。この発明は、ノーキャリア方式の澱粉接着剤におけるこのような問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、適度に加温した澱粉の水分散液に水酸化ナトリウムなどの塩基性化合物を添加して膨潤させ、ホウ酸やホウ砂などのホウ素化合物の添加によりその膨潤を途中で停止させた澱粉接着剤中の未糊化の澱粉粒の膨潤体積Vaが気乾状態における澱粉粒の体積の2.3倍以上3.2倍以下であり、この澱粉接着剤を糊化した後の澱粉粒の膨潤体積Vgが気乾状態における澱粉粒の体積の3.75倍以上4.80倍以下となり、かつVg/Vaの比が1.5以上1.7以下となるように澱粉接着剤を調製し、
かつ、その接着剤を85℃にて膨潤糊化させたゲルの二重円筒型外筒回転式粘度計により歪み速度0.192sec−1で測定される剪断弾性率が2.0kPa以上5.0kPa以下であるようにすることで、上記の課題を解決したのである。
ここで、85℃とは澱粉が100%糊化する温度であり、上記剪断弾性率の値はすなわち、加熱により完全に膨潤糊化した澱粉ゲルの剪断弾性率を示している。
なお、本願において糊化とは、「加熱により澱粉分子の水和が進行した結果、接着剤の媒質中に隈なく拡散した状態」にすることをいう。
【0015】
すなわち、加熱前の膨潤状態における膨潤の程度を抑えるように塩基性化合物とホウ素化合物の添加量及び添加のタイミングを調整しておき、加熱による糊化時には、澱粉が適切な範囲での膨潤を起こして互いに癒着して十分な強度のゲルに変化することで、十分な初期接着力を発揮することができる。ここで、上記Vg/Vaは、糊化の前後において澱粉粒がどれほど拡大したかを示す比となる。
【0016】
具体的には、用いる澱粉の種類を塩基性化合物に対する感受性に応じて選択し、なおかつ、調整時の未糊化澱粉の膨潤倍率を適切な値とすることで上記のような澱粉接着剤の調製ができる。これにより、懸濁液である澱粉接着剤中で膨潤した未糊化澱粉はほとんど沈降せずに済み、また、塗布時に粘度が高くなりすぎることがなく、かつ加熱糊化時に適切な比率で膨潤してゲルの形状及び接着強度を十分に確保することができる。
【0017】
このような澱粉接着剤の調製には、澱粉100重量%に対してホウ酸又はホウ砂の使用量を、ホウ砂10水和物に換算して1〜5重量%とし、接着剤100重量%中の澱粉濃度を28〜36重量%とする。塩基性化合物の適当な添加量は、水酸化ナトリウムを用いた場合、0.50〜0.80重量%が好ましい水酸化ナトリウム濃度となる。
【0018】
上記の膨潤体積及び剪断弾性率を示すノーキャリア方式の澱粉接着剤を用いると、ライナと中芯とを貼り合わせた後、高い初期接着力を活かして、速やかな加熱によって高速に段ボールを製造することができる。条件次第では1.5秒以上の加熱時間で、必要な接着力を発揮できる。
【発明の効果】
【0019】
この発明により、従来知られていても実用上問題のあった、倍水率3.0以下の澱粉接着剤について、安定性を向上させ、高い初期接着力を発揮できるようになり、高速な段ボール製造装置にも使用可能な澱粉糊が得られた。特に好ましい倍水率2.5以下の澱粉接着剤も可能であり、下限としては1.8まで実用的な範囲に調製できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】澱粉の膨潤体積の変遷を示す
【図2】二重円筒型外筒回転式粘度計の概略図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、ライナと中芯とを貼り合わせて段ボールシートを製造するために用いられるノーキャリア方式の澱粉接着剤である。ノーキャリア方式の澱粉接着剤を製造する方法の骨子は次の通りである。まず、水に澱粉を分散させた分散液を作製する。この分散液に水酸化ナトリウムなどの塩基性化合物を加え、所定の粘度、すなわち所定の膨潤状態となるまで攪拌する。このとき、分散液は膨潤が進行しすぎない程度の適温に加温する。具体的には、35℃〜45℃であればよい。目的の粘度になったらそこでホウ砂又はホウ砂を加えて、増粘を停止させる。これで目的とする澱粉接着剤が懸濁液の状態で得られる。この澱粉接着剤を中芯に塗布してライナを貼り合わせ、加熱すると、接着剤が加熱によりさらに膨潤してゲル状に糊化し、接着力を発揮する。
【0022】
上記の「目的の粘度」になったかどうかの判定は、上記の膨潤の進行とともにリアルタイムに試料を接種して測定してもよい。ただし、塩基性化合物の滴下にかかると予想される時間に対して、一回の粘度の測定に要する時間が十分に短いことが望ましい。粘度の測定自体にかかる時間が長すぎると、結果が出たときには既に必要以上に膨潤が進行しているからである。具体的には、塩基性化合物の滴下に要する時間の5%以下の時間で測定できると好ましく、短いほど好ましい。
【0023】
上記の「目的の粘度」として好ましい値は、上記の膨潤を途中で停止させたときの上記懸濁液中の未糊化澱粉の膨潤体積Vaの好ましい値から導き出すことができる。すなわち、使用する澱粉、塩基性化合物の濃度、反応時の液温度、攪拌装置の剪断作用の強さなど、接着剤を実際に製造する条件下において、Vaが好ましい値となる粘度を予備実験により求めておき、接着剤の製造時には、その好ましい粘度となったときに膨潤を停止させる。
【0024】
ただし、膨潤を停止させた瞬間の澱粉の膨潤体積がそのまま接着剤が完成したときの膨潤体積Vaになるわけではなく、実際には、図1に示すように、若干の体積変化を起こして安定すると考えられる。この体積変化の挙動は接着剤の製造条件により異なるため、製造条件を決定するにあたっては、その前に同様の条件で予備実験を行う必要がある。すなわち、どの時点、或いはどのような粘度の段階で膨潤を停止させると、最終的に目的とする膨潤体積の接着剤となるかの検証を予め行っておき、実際の製造にあたっては、その検証で最適値が得られた時点、又は段階で膨潤を停止するようにする。なお、同一の製造条件下であれば、膨潤停止させたときの粘度と、完成時の膨潤体積Vaとの間には高い相関関係が存在する。そのVaの好ましい値の条件を以下に説明する。
【0025】
まず、上記懸濁液中の未糊化澱粉の膨潤体積Vaは、気乾状態の澱粉体積Vuに対する膨潤倍率Va/Vuが、2.3以上である必要がある。この膨潤倍率Va/Vuが2.3未満では、澱粉が沈降しやすいため、接着剤の安定性が不十分となる。また、保水性も低下するために、貼合糊化時の初期接着力が低下して実用性が不十分となってしまう。一方で、Va/Vuは3.2以下である必要がある。膨潤倍率Va/Vuが3.2を超えると、貼合後に加熱して糊化する貼合糊化時の膨潤力が低下し、この場合も初期接着力が低下してしまう。また、接着剤自体の粘度が高くなりすぎ、塗工が困難となる場合もある。
【0026】
上記の加熱による糊化後の澱粉粒の膨潤体積Vgは、気乾状態の澱粉体積Vuに対する糊化後の膨潤倍率Vg/Vuが3.75以上である必要がある。Vg/Vuが3.75未満であると、初期接着力の向上が不十分となる。これは、個々の澱粉粒間の癒着が不十分になるので、得られるゲルが脆性のものとなってしまうためと考えられる。一方で、Vg/Vuが4.80以下である必要がある。Vg/Vuが4.80を超えると、初期接着力がかえって低下してしまう。これは、膨潤しすぎるために、得られるゲルの剪断弾性率が低くなるためと考えられる。
【0027】
この発明にかかる澱粉接着剤は、上記の条件を満たした上で、さらに、上記澱粉接着剤を用いて貼合し加熱糊化した時の、その糊化時の前後における澱粉粒の膨潤率の比Vg/Vaが、1.5以上1.7以下である必要がある。現実に接着力を発揮しようとする糊化時の膨潤率は、初期接着力に大きく影響する。この膨潤率比が1.5未満と小さすぎると、十分に澱粉粒同士が密着せずに初期接着力が不足することとなるが、一方で、膨潤率比が1.7を超えて膨潤しすぎても剪断弾性率が低下し、やはり接着力が低下する。上記懸濁液の倍水率によって、上記の膨潤倍率Va/Vu、糊化後膨潤倍率Vg/Vuのそれぞれは適正範囲が異なってくるが、この膨潤率比の範囲条件を満たせば、適正な初期接着力を示すこととなる。
【0028】
上記の膨潤倍率及び膨潤率比は、以下に挙げる測定可能な値A,B,C,Dから算出することができる。気乾状態の澱粉1gの体積Vu(cm)、及びそれを用いて膨潤させた際の体積Va(cm),Vg(cm)を考える。まず、気乾状態の澱粉の比重は1.50(g/cm)であるので、Vuは下記式(1)の通りとなる。
【0029】
Vu=1/1.50=0.67 ……(1)
【0030】
次に、気乾状態で1gの澱粉が上記懸濁液中で膨潤した体積Va(cm)は、膨潤澱粉の比重A(g/cm)、膨潤澱粉の固形分濃度B、気乾澱粉の含水率Cとの間に下記式(2)が成立する。左辺が膨潤した澱粉の体積から固形分の重量を求める式であり、右辺は元の気乾澱粉1gあたりの不揮発分重量を示す。この式(2)を変形して下記式(3)が得られる。(1/A)は比体積(cm/g)であり、(1−C)は気乾澱粉の固形分比率である。
【0031】
Va×A×B=1×(1−C)……(2)
Va=(1/A)/{B/(1−C)}……(3)
【0032】
さらに、気乾状態で1gの澱粉が膨潤糊化した体積Vg(cm)は、懸濁液である澱粉接着剤に含まれる澱粉の重量濃度Dから下記のように算出できる。まず、澱粉濃度がDである懸濁液の比体積Sv(cm/g)は、澱粉が溶解せずに懸濁しているため、1gの懸濁液に含まれる水と澱粉のそれぞれの体積の和から、下記式(4)のように表現できる。膨潤糊化時には水を蒸発させずに澱粉が膨潤するのみであるため、糊化したゲルの比体積は懸濁液の比体積Svと同じとなる。比重(g/cm)は比体積(cm/g)の逆数なので、糊化したゲルの比重Sgは下記式(5)のようになる。
【0033】
Sv=(1−D)/1.00+D/1.50……(4)
Sg=1/{(1−D)+D/1.50}=3/(3−D)……(5)
【0034】
糊化したゲル1cmを形成する澱粉の気乾状態での重量M(g)は、下記式(6)の通りとなる。この式から、気乾澱粉1gがゲル化したときの体積Vg(cm)は、下記式(7)と導くことができる。
【0035】
M=Sg×D=3×D/(3−D)……(6)
Vg=1/M=(3−D)/(3×D)……(7)
【0036】
実際に上記澱粉接着剤の物性が上記の範囲を満たすか否かは、上記A,B,C,Dの値から上記式(1)、(3)、(7)によりVu,Va,Vgを算出して検証する。
【0037】
上記の率及び比のうち、未糊化澱粉の膨潤倍率Va/Vuは、水酸化ナトリウムなどの塩基性化合物を滴下して膨潤反応を開始した後、ホウ酸やホウ砂などのホウ素化合物を添加して膨潤を停止させるタイミングによって調整することができる。接着剤中の澱粉が目標とする膨潤倍率に到達したことを知るためには、膨潤倍率とともに増大する接着剤の粘度を指標とすることができる。粘度を測定する手段は特に限定されるものではなく、例えば、ピストン落体式粘時計、フォードカップ粘度計、超音波振動式粘度計などを用いることができる。
【0038】
具体的に段ボールシート製造工場の現場においてこの発明にかかるノーキャリア方式澱粉接着剤を製造するときには、製糊装置に設けた各種の粘度計と、全国段ボール工業組合連合会で規定するフォードカップやそれに準ずる小カップなどで同時に粘度を測定し、目標とする膨潤倍率が得られるカップ粘度に相当する各種粘度計の読み値を、膨潤停止のタイミングの指標とすることができる。ただし、澱粉の膨潤が進行する速さは多数の要因により変化するので、反応時間のみによって膨潤停止のタイミングを決定するのは不適切である。この速さに関与する要因としては、例えば、反応時の液温度、澱粉の種類の違いによる塩基性化合物に対する感受性、攪拌装置の剪断作用の強さなどが挙げられる。液温は、準備する温水の温度によって決まるだけでなく、製糊時の攪拌熱によって徐々に上昇するため、攪拌装置の形状や回転数によっても影響を受ける。上記塩基性化合物に対する感受性は、高いほど膨潤が速く進行する。攪拌装置の剪断作用が強いと、澱粉粒の膨潤と並行して粉砕が進行し、澱粉の一部が溶出することにより、膨潤倍率の上昇は速くなる。
【0039】
上記の懸濁液である澱粉接着剤中の未糊化澱粉の膨潤体積を測定される値から求める方法は特に限定されないが、例えば以下のような手順で求めることができる。
1.重量既知の遠沈管に、澱粉接着剤を入れる。
2.澱粉接着剤を遠心分離して上清を取り除き、沈殿層の重量Ws(g)を精秤する。
3.遠沈管に温度既知の純粋を添加して沈殿層をほぐし、重量既知のメスフラスコに全量掻き出す。使用するメスフラスコは入り容量Vm(cm)を予め検定しておく。
4.メスフラスコの標線まで純水を追加し、標線から上の水滴を拭き取る。このメスフラスコの沈殿層と加えた純水との合計重量Wa(g)を測定する。
5.沈殿層に追加した純水の重量Ww(g)を、Ww=Wa−Wsとして求める。
6.沈殿層に追加した純水の体積Vw(cm)を純水の重量Wwと温度Teから求める。なおこれは経験則として測定値から求められる値である。
7.沈殿層の体積Vs(cm)をVs=Vm−Vwとして求める。
8.沈殿層の密度Ds(g/cm)を、Ds=Ws/Vsとして求める。
9.メスフラスコの沈殿層と純水とを全量秤量瓶に移し、絶乾法により固形分濃度Dmを求める。
10.使用した澱粉の気乾状態での含水分Dgを絶乾法により求める。
11.接着剤中における澱粉1gあたりの膨潤体積Va(cm/g)を、Va=(1/Ds)×(1−Dg)/Dmにより求める。1/Dsは沈殿層の比体積(g/cm)であり、これに(1−Dg)/Dmを乗じることで気乾澱粉1gあたりの体積に換算している。この式は、上記式(3)に対応する。
なお、ここで絶乾法とは、測定する試料を重量既知のパイレックスガラス製秤量瓶に採取し、密栓して重量を測定する。その後、秤量瓶の蓋を開けて熱風乾燥機に入れる。試料が乾固状態になったら秤量瓶を取り出し、密栓してデシケータ内で室温まで冷却した後、密栓したまま重量を測定する。重量が変化しなくなるまで乾燥と重量測定を繰り返し、乾燥後の重量を求める。次式(8)により試料の含水分を求める。
【0040】
含水分=1−(乾燥後の試料重量/乾燥前の試料重量)……(8)
【0041】
一方、糊化後の膨潤倍率Vg/Vuは、主に倍水率に応じて調整することができる。倍水率が低いほど膨潤しうる澱粉粒間の間隙が小さくなって糊化後の膨潤体積が低くなり、倍水率が高いと糊化後の膨潤倍率が高くなる。
【0042】
この出願にかかる澱粉接着剤は、上記の膨潤倍率の値とは別の条件として、85℃にて膨潤糊化させたゲルの二重円筒型外筒回転式粘度計により歪み速度0.192sec−1で測定される剪断弾性率が2.0kPa以上5.0kPa以下である必要がある。85℃の環境とはすなわち、膨潤澱粉が100%糊化する温度である。すなわちこの条件は、十分に糊化させたゲルの剪断弾性率の値についての条件である。ゲルの剪断弾性率が2.0kPa未満では、初期接着力が十分に発現できない。一方で、ゲルの剪断弾性率が5.0kPaを超えるためには、澱粉濃度が40重量%以上の高濃度接着剤とするか、又は、水酸化ナトリウムなどの塩基性化合物濃度が極端に低い接着剤としなければならず、上記の膨潤体積Va,Vgの条件を満たすことができなくなり、結果として初期接着力が不足するものとなってしまう。なお、この剪断弾性率の値は、糊化時の膨潤倍率と、上記懸濁液の膨潤時に添加する塩基性化合物濃度により調整可能である。
【0043】
上記の二重円筒型外筒回転式粘度計の概略図を図2に示す。電動機によって回転する円筒カップ上の外筒11と、外筒11内部の同軸上に外筒11と接触しないようにトーションワイヤー13で吊り下げた内筒12によって構成され、外筒11と内筒12との隙間に測定試料を満たしたとき、外筒11が回転するにつれて内筒12が受けるトルクに比例したトーションワイヤー13のねじれ角度を差動トランス14で検出することにより、剪断弾性率を測定するものである。また、外筒の回転装置15はヒータ付きのオイルバス16に浸漬しており、試料をセットした後、任意の温度に加熱することができる。
【0044】
外筒の内半径をRc(m)、内筒の外半径をRb(m)、内筒に対する試料の浸液長をh(m)、外筒の回転速度をN(min−1)、外筒の回転変位角をφ(rad)、トーションワイヤーのワイヤー定数をK(N・m/rad)、内筒が受けるトルクをT(N・m)、トーションワイヤーのねじれ角度をθ(rad)、試料の剪断応力をτ(Pa)、剪断歪みをγとすると、下記式(9)〜(11)の関係が成り立つ。また、試料の剪断弾性率G(Pa)は初期歪み領域において下記式(12)のように近似できるので、これに下記式(9)〜(11)を代入して算出することができる。
【0045】
T=K×θ……(9)
τ=T/(2π・Rb・h)……(10)
γ=Rc・φ/(Rc−Rb)……(11)
G=τ/γ……(12)
【0046】
このとき、歪み速度dγ/dt(sec−1)は、下記式(13)により算出できる。なお、φ=N・(2π/60)・tである。実際に測定できる数値は、回転速度N(min−1)及び回転開始からの経過時間t(sec)であるため、Nを規定した上で、経過するtに対応する回転変位角φを計算し、φから歪みγを計算することで算出できる。その方法としては、τを縦軸、γを横軸とした応力−歪み曲線を描き、初期歪み領域の傾きから、剪断弾性率Gを求めることが可能である。
【0047】
dγ/dt=Rc・N・(2π/60)/(Rc−Rb)……(13)
【0048】
上記の懸濁液の状態である澱粉接着剤を製造する際には、その接着剤100重量%のうち、澱粉の濃度が28重量%以上36重量%以下であると好ましい。上記の糊化後膨潤倍率Vg/Vuを上記の規定範囲にしようとすると、この澱粉濃度の範囲であるのが現実的な値となることが多い。
【0049】
上記塩基性化合物としては、水酸化ナトリウムが手に入れやすく、かつ扱いやすいため望ましいので、以下は水酸化ナトリウムを用いた場合について記載する。接着剤100重量%中の水酸化ナトリウム濃度が0.50重量%以上0.80重量%以下であると好ましい。水酸化ナトリウム濃度が0.50%未満であると澱粉粒間の癒着が不十分になるため、初期接着力が不十分になると考えられる。一方、水酸化ナトリウム濃度が上限を上回ると、糊化したゲルの剪断弾性率が低下し、初期接着力が低下してしまう。
【0050】
上記懸濁液を得る際、上記塩基性化合物による膨潤を途中で停止させるために添加するホウ酸又はホウ砂の含有量は、接着剤100重量%に対して、ホウ砂10水和物に換算して1重量%以上5重量%以下であると好ましい。1重量%未満であると、糊化時のゲルの剪断弾性率が低くなりすぎてしまう。一方で、5重量%を超えて添加しても、ゲルの剪断弾性率の向上は見られず、ホウ砂が無駄になってしまうだけではなく、環境上排出量が制限されるものであるホウ素の量が必要以上に増えてしまい、好ましくない。なお、ホウ酸を添加したときは、水酸化ナトリウムの一部を中和してホウ砂となる。また、接着剤中の最終水酸化ナトリウム濃度を高くする場合は、中和を避けるためにホウ砂を添加して膨潤を停止させてもよい。
【0051】
この発明にかかるノーキャリア方式の澱粉接着剤は、段ボールシートの製造にあたり、ライナと中芯とを貼り合わせた後、短時間の加熱で高い初期接着力を発揮することができる。具体的には、1.5秒以上の加熱時間でダンボールシートを製造する。1.5秒未満では、本願の澱粉接着剤を調製しても初期接着力が十分に得ることは難しい。一方、加熱時間はある程度長くてもよいが、本願の澱粉接着剤の利点は、高速な段ボールシート製造方法の現場での速やかな初期接着力の発揮にあるため、段ボールシートの製造速度が高速であるか、加熱装置の設置距離が短いものである環境で特に好適に用いられる。高速であるとは、具体的には加熱時間が3.0秒以下のものを指し、2.5秒以下の特に高速な環境でも本願にかかる澱粉接着剤であれば対応できる。
【実施例】
【0052】
以下、本願にかかる澱粉接着剤を具体的に実施した実施例を記載する。まず、原材料と測定方法について記載する。
【0053】
<原材料>
・コーンスターチ(日本コーンスターチ(株)製:Y−3P)
・水酸化ナトリウム(キシダ化学(株)製、これを15重量%水溶液として使用)
・ホウ酸(キシダ化学(株)製)
・ホウ砂(キシダ化学(株)製)
【0054】
<フォードカップ粘度による粘度測定方法>
得られた接着剤の製造直後、1時間後、3時間後において、全国段ボール工業組合連合会の規定に準拠したフォードカップを用いて、40℃の接着剤の液面が底面の孔から滴下するにつれて、カップ内壁に上下して設けられた二つの突起物の間の通過する時間を測定して、フォードカップ粘度とした。なお、このフォードカップは、20℃の水を用いて測定すると、経過時間が10秒となるものである。
【0055】
<B型回転粘度計による粘度測定方法>
得られた接着剤の製造直後、1時間後、3時間後において、東京計器(株)製のBM型回転粘度計を用いて、60rpmでNo.3ローターを使用して液温40℃としたときの粘度を測定してB型粘度とした。
【0056】
<ホウ砂の添加による膨潤停止のタイミングを決定するためのフォードカップ粘度測定手段>
1リットルスケールの澱粉接着剤を調整する際、その調整中の粘度を測定する。測定器具として、全国段ボール工業組合連合会の規定上のフォードカップを小型化した小カップを用いた。材質はSUS304であり、肉厚2mm、内径30mm、高さ38mm、底面の孔の孔径が3.1mmで、円筒内部の上端から4mmと19mmの二箇所に長さ8mm、直径2mmの突起物が設けてあり、カップ内部に試料を満たして底面の孔から滴下させた時、上側突起物と下側突起物との間を液面が通過する時間を測定して、その秒数を小カップ粘度とした。上記規定上のフォードカップは20℃の水で通過時間が10秒となるが、このカップは20℃の水で通過時間が2秒となるものである。
【0057】
<接着剤中の未糊化澱粉の膨潤体積の測定方法>
上記の遠沈管とメスフラスコを使った手順1〜11により、膨潤体積Vaを測定した。
手順1で入れる澱粉接着剤は25gとした。手順2において用いる遠心分離機は日立工機(株)製 CR20B3を使用し、温度20℃、回転数15,000rpm、27720×g の条件で10分間遠心分離した。手順9の絶乾法で熱風乾燥機の温度は105℃とした。
【0058】
<糊化膨潤したゲルの剪断弾性率の測定方法>
岩本機器(株)製二重円筒型外筒回転式粘度計を用いて測定し、上記式(9)〜(12)により、初期歪み領域での剪断弾性率Gを求めた。粘度計の条件は以下の通りである。
・外筒の内半径:Rc=1.1×10−2(m)
・内筒の外半径:Rb=8.0×10−3(m)
・トーションワイヤーのワイヤー定数:K=0.09251N・m/rad
【0059】
試料は、内筒に対する試料の浸液長:h=71.0×10−3(m)となるように外筒内部に入れ、外筒の底から10mmの位置に内筒の底が来るように内筒を挿入して、蒸発防止の蓋をセットしている。
内筒内部に組み込まれた熱電対によって測定される試料温度が85℃となるようにオイルバスを昇温した後、外筒を回転速度:N=0.5(min−1)で回転させ、外筒の回転変位角:φとトーションワイヤーのねじれ角度:θとをデータロガー(グラフテック(株)製:midi Logger GL200)により記録した。
【0060】
G=τ/γ=(K×θ)/(2π・Rb・h)・(Rc×φ)/(Rc−Rb)
=(0.09251×θ)/{2×3.14×(8.0×10−3×71.0×10−3}×(1.1×10−2×φ)/(1.1×10−2−8.0×10−3
=1.2×10×(θ/φ) ……(14)
【0061】
なお、この条件における歪み速度dγ/dt(sec−1)は以下のようになる。
【0062】
dγ/dt=Rc・N・(2π/60)/(Rc−Rb)
=11×0.5×(2×3.14/60)/(11−8)=0.192 ……(15)
【0063】
<初期接着力測定方法>
JTトーシ(株)製段ボール初期接着力測定器を用い、下記の手順により測定した。
まず、糊塗布部片面セットホルダー部に片面段ボール(幅50mm、長さ85mm、中芯:レンゴー(株)製KS120(坪量120g/m)、ライナ:レンゴー(株)製:RKA220(坪量220g/m))をセットし、一方で、貼り付けする表ライナ(レンゴー(株)製:RKA280、坪量280g/m)をライナセットテーブルに置く。次に、対象となる接着剤をグルーパンに投入し、40℃のバス中で加熱して、接着剤の塗布は、ライン速度と同調させた糊ロールにて行い、片面段ボールの段頂に塗布する。接着剤の塗布量は、ドクターブレードで希望の糊膜厚さに調整することにより、固形分換算で4g/mとなるように調整した。
【0064】
用いる段ボール初期接着力測定器は、測定開始ボタンを押すと次の一連の作業が行われ、初期接着力を計測できる機能を有する。まず、片面段ボールの段頂部及びライナの接着面をそれぞれ50℃及び80℃まで予熱し、次いで段頂に接着剤を塗布し、さらに、片面段ボールの段頂部をライナに貼り合せて10Nの荷重で175℃の熱板にて圧着させ、所定の圧着時間経過後直ちに引き剥がして、その際の引張荷重をロードセルにて計測して初期接着力とした。ライン速度は500mm/min、オープンタイムは0.6秒、セットタイムは1.0秒から2.5秒まで0.5秒ごとに変えて測定した。ここで、オープンタイムとは接着剤を段頂に塗布してからライナと貼り合せて熱板に圧着させるまでの時間であり、セットタイムとは熱板に圧着させている時間を指す。
【0065】
<倍水率の調整による影響の検討>
(実施例1、1.8倍水、NaOH濃度:0.63重量%、接着剤中の未糊化澱粉の膨潤倍率Va/Vu:2.34)
40℃のウォーターバスに浸した容積1リットルのポリビーカ内で40℃に保温した586.26gの水に、直径65mmのプロペラ羽根1枚を有する攪拌棒を90Wのモーターに取り付けて600rpmで攪拌しながら、コーンスターチ350gを投入して5分間攪拌し、そこへ水酸化ナトリウム水溶液51.46gを定量ポンプにて10分間かけて滴下した。
そのまま攪拌を続けた後、小カップ粘度20秒のとき(水酸化ナトリウム水溶液の滴下終了から15分後。これは予備実験で最適値を示した粘度である。)に、ホウ酸4.54gを添加して、10分後に攪拌を終了して、倍水率1.8、水酸化ナトリウム濃度0.63重量%、対澱粉ホウ砂比率2.0重量%の懸濁液である澱粉接着剤を得た。この接着剤中の未糊化澱粉の膨潤体積Vaの気乾澱粉の体積Vuに対する比Va/Vuは2.34倍、糊化後の膨潤体積Vgの気乾澱粉の体積Vuに対する比Vg/Vuは3.75倍となり、接着剤が糊化するときの膨潤倍率Vg/Vaが、表1に記載の測定結果となる澱粉接着剤を得た。この澱粉接着剤について、フォードカップ粘度(表中「FC粘度」と記載する。)とB型粘度とを測定し、初期接着力を測定した。また、製造後一時間経過後の沈降性を調べ、一時間経過後も沈降が目視で確認できないものを良好とした。
【0066】
【表1】

【0067】
(実施例2〜4)
実施例1において、それぞれの添加量や条件を表1のように変更して、同様に澱粉接着剤を得て測定を行った。その結果を表1に示す。
【0068】
<水酸化ナトリウム量の調整による影響の検討>
(比較例1、実施例5〜7)
上記の実施例2の澱粉濃度、ホウ砂比率とほぼ同等の内容で、水酸化ナトリウムと反応温度を表2のように変更して、同様に澱粉接着剤を得て測定を行った。その結果を表2に示す。ここで比較例1は、流動性が悪化するほど膨潤反応を長時間行ったにも関わらず、接着剤中の未糊化澱粉の膨潤体積Vaが低く、Va/Vaの比が上限を超えるため、高い初期接着力が得られなかった。
【0069】
【表2】

【0070】
<低倍水率での検討>
(比較例2,3)
倍水率が1.5となる表3に記載の添加量及び条件以外は実施例1と同様にして、澱粉接着剤を得て測定を行った。その結果を表3に示す。いずれも膨潤倍率Va/Vu、Vg/Vuが低くなった。比較例2では接着力が100Nを超えるセットタイムが2.5秒と長くなりすぎてしまい、比較例3では粘度が高くなりすぎて流動性に欠ける接着剤となってしまった。
【0071】
【表3】

【0072】
<ホウ砂添加のタイミングの検討>
(比較例4,5)
実施例1及び2について、水酸化ナトリウム水溶液滴下終了後からホウ酸添加までの経過時間を短縮して比較例4及び5とした。いずれも未糊化澱粉の膨潤倍率Va/Vuが低くなり、製造後一時間で沈降を起こしてしまい、貯蔵安定性の点で利用できないものとなってしまった。また、糊化時膨潤倍率Vg/Vaも高くなり、初期接着力も不十分なものとなってしまった。
【0073】
<高倍水率での検討>
(比較例6,7,8)
上記実施例よりも高い倍水率である2.8、3.0、3.3での条件で、その他の条件は実施例1に近似させて澱粉接着剤を得て測定を行った。いずれも、膨潤倍率Va/VuとVg/Vuとの両方が高くなりすぎてしまい、初期接着力が100Nを超えるまでの時間が2秒を超えてしまい、初期接着力が不十分となった。
【符号の説明】
【0074】
11 外筒
12 内筒
13 トーションワイヤー
14 差動トランス
15 外筒の回転装置
16 オイルバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加温した澱粉の水分散液に塩基性化合物を添加して膨潤させ、ホウ酸又はホウ砂の添加によりその膨潤を途中で停止させた懸濁液からなるノーキャリア方式の澱粉接着剤であって、
その澱粉接着剤中の未糊化の澱粉粒の膨潤体積Vaが気乾状態における澱粉粒の体積の2.3倍以上3.2倍以下であり、この澱粉接着剤を糊化した後の澱粉粒の膨潤体積Vgが気乾状態における澱粉粒の体積の3.75倍以上4.80倍以下であり、かつVg/Vaの比が1.5以上1.7以下であり、
かつ、この澱粉接着剤を85℃にて膨潤糊化させたゲルの二重円筒型外筒回転式粘度計による歪み速度0.192sec−1で測定される剪断弾性率が2.0kPa以上5.0kPa以下であるノーキャリア方式の澱粉接着剤。
【請求項2】
上記澱粉100重量%に対する上記ホウ酸又はホウ砂の使用量が、ホウ砂10水和物に換算した重量で1重量%以上5重量%以下であり、上記澱粉接着剤100重量%中の澱粉濃度が28重量%以上36重量%以下であり、水酸化ナトリウムである上記塩基性化合物の接着剤全量に対する含有量が0.50重量%以上0.80重量%以下である請求項1に記載のノーキャリア方式の澱粉接着剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の澱粉接着剤を用いてライナと中芯とを貼り合わせた後、1.5秒以上加熱して上記澱粉接着剤を糊化することを特徴とする、段ボールシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−241292(P2011−241292A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114262(P2010−114262)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000115980)レンゴー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】