説明

段差乗り越え機能付き転倒防止部材

【課題】移動用キャスタを備えた画像形成装置等に取り付けられる転倒防止部材であって、画像形成装置等を移動する際に移動経路中に段差があっても乗り越えることが容易であるように構成する。
【解決手段】転倒防止部材の側方断面で見て基礎辺とその基礎辺に対して片端に向かって近づく対向辺とによって先端に向かって狭くなる断面形状を有する輪郭部位と、当該輪郭部位の根元側基礎部から移行するガイド部位とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の画像形成装置、給紙装置、OA機器等、特に縦型の機器の転倒を防止する転倒防止部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置等は、利用者が立った姿勢で利用する一方で、設置場所における占有面積の抑制の観点から、その横幅よりも高さ寸法が大きく(高く)なっているのが一般的である。とりわけこのように横幅よりも高さ寸法が勝るように構成された縦型機器に対して転倒を防止するための転倒防止構成が知られている。従来の転倒防止構成では、機器底面の四隅に配置された移動用キャスタの取り付け部分に転倒防止用の部材を配置し、機器の底面よりも外側へ部材端部を突き出すことで転倒防止機能を奏するようになっている。
【0003】
一般には、機器よりも突出する転倒防止部位の量が固定されており、そのため、下部で給紙カセットを任意に増やすことができる構成をとる画像形成装置のように機器の重量、全高、重心等が変化したときに機器の転倒を防止し切れない場合が生じる。そこで特許文献1では、湾曲扇形形状の部材をキャスタの支軸に回動自在に備え、この部材の突出量を調整することで転倒耐力を可変とすることが提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1を含め従来技術の構成では、転倒防止部材を取り付けた縦型機器を移動する際に床面に段差があると、その段差の程度によっては床面と十分な隙間が確保されずに、段差を乗り越え難いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の課題は、移動用キャスタを備えた画像形成装置等に取り付けられる転倒防止部材であって、画像形成装置等を移動する際に移動経路中に段差があっても乗り越えることが容易であるように構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記課題は、転倒防止部材の側方断面で見て基礎辺とその基礎辺に対して片端に向かって近づく対向辺とによって先端に向かって狭くなる断面形状を有する輪郭部位と、当該輪郭部位の根元側基礎部から移行するガイド部位とを有していて、転倒防止機能と段差乗り越え機能を奏する転倒防止部材によって、解決される。
【0007】
前記ガイド部位の内面には、移動用キャスタに設けられた水平溝に嵌合されるべき直線状突起が形成されていて、転倒防止部材は移動用キャスタから取り外し可能に装着されるもので、上下反転させて装着することで転倒防止機能と段差乗り越え機能の各々を奏するようになっていれば、好適である。その際、輪郭部位として片面側に膨らんだ湾曲部を有することが想定される。あるいは輪郭部位が、部材の側方断面で見て基礎辺に対して対向辺が先端に向かって近づくテーパ形状を有していてもよい。
【発明の効果】
【0008】
移動用キャスタを備えた画像形成装置等の機器に取り付けられる転倒防止部材が、転倒防止部材の側方断面で見て基礎辺とその基礎辺に対して片端に向かって近づく対向辺とによって先端に向かって狭くなる断面形状を有する輪郭部位と、当該輪郭部位の根元側基礎部から移行するガイド部位とを有し、転倒防止機能と段差乗り越え機能を奏することで、機器を移動する際に移動経路中に段差があっても乗り越えることが容易である。
【0009】
前記ガイド部位の内面には、移動用キャスタに設けられた水平溝に嵌合されるべき直線状突起が形成されていて、転倒防止部材は移動用キャスタから取り外し可能に装着されるもので、上下反転させて装着することで転倒防止機能と段差乗り越え機能の各々を奏するようになっていれば、移動経路中の段差の乗り越えが容易なだけでなく、機器の梱包搬送の際には転倒防止部材を取り外して梱包部材中に収めることが可能となり、従来の機器の梱包部材に特に変更を施す必要もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】転倒防止部材が段差乗り越え機能を奏する状態となる場合の取り付け形態を示し、図1aは取り付け直前の様子を、図1bは取り付け後の様子を示す。
【図2】段差乗り越え機能を奏する状態で取り付けられた転倒防止部材によって機器が段差を乗り越える様子をa〜dで経時的に示す。
【図3】転倒防止部材が転倒防止機能を奏する状態となる場合の取り付け形態を示し、図3aは取り付け直前の様子を、図3bは取り付け後の様子を示す。
【図4】転倒防止のために転倒防止部材を機器に装着した場合の機器から転倒防止部材が突き出す様子を説明する図である。
【図5】転倒防止部材の別の形態を示す図である。
【図6】機器からの突き出し量が大きな更に別の転倒防止部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、転倒防止対象たる機器(図示せず)の底面に取り付けられるキャスタに、本発明に係る転倒防止部材を取り付けて、転倒防止部材が段差乗り越え機能を奏する状態となる場合の取り付け形態を示すもので、図1aは取り付け直前の様子を、図1bは取り付け後の様子を示している。転倒防止部材10は、輪郭部位に当たる片面側に膨らんだ湾曲部11の凸面を下向きに、即ち床面に向けて、ガイド部位12の内側に設けられたレール13を、キャスタ16の支軸下に形成された水平溝17に嵌め合わせるようになっている。レール12の嵌め込み奥部にはストッパ部14が形成され、この位置まで転倒防止部材10をキャスタ16の水平溝17に嵌め込む(図1b)ことで、装着が完了する。
【0012】
このように装着された転倒防止部材10によって、機器が段差のある部分を乗り越えて移動する場合の様子を図2に示す。機器移動経路の進行方向に段差が存在する場合に、その段差に転倒防止部材10が先ず接触する(図2a)。なお、キャスタ16が機器底面に回動自在に取り付けられている場合にはキャスタの回動を制約すべく事前にロックすることが必要である。段差に接触した転倒防止部材10は、湾曲部11の凸面形状により段差に乗り上げる(図2b)。その状態でさらに進行方向に機器が押されることで、段差にキャスタ16の主車輪が接触する状態になる(図2c)。この図2cの状態では、主車輪の段差高さが転倒防止部材なしの場合と比較して小さくなっており、容易に段差を主車輪が通過することができる(図2d)。
【0013】
一方、転倒防止部材が本来の転倒防止機能を奏する状態となる場合の取り付け形態を図3に示す。図3aは取り付け直前の様子を、図3bは取り付け後の様子を示している。転倒防止部材10は、湾曲部11の凸面を上向きに向けて、ガイド部位12の内側に設けられたレール13を、機器の底面に取り付けられたキャスタ16の支軸下に形成された水平溝17に嵌め合わせる。レール12の嵌め込み奥部に形成されたストッパ部の位置まで転倒防止部材10をキャスタ16の水平溝17に嵌め込む(図3b)ことで、装着が完了する。
【0014】
このように装着された転倒防止部材10は、図4に示すように、転倒防止対象たる機器20の底部側面から或る幅aだけ突出することになる。この突き出し量aと床面に向いた平坦な基礎面15とによって、転倒防止部材10は転倒防止機能を奏する。
【0015】
図5は別例の転倒防止部材10’を示す。この転倒防止部材10’は、図1〜図4の転倒防止部材10の片面側に膨らんだ湾曲部11の代わりに、輪郭部位に相当する部分11’が、側方断面で見て小船の舳先のように上部が前に出ている形状、言い換えると、部材の側方断面で見て基礎辺に当たる水平上辺に対して下辺が先端に向かって近づくテーパ形状を有している。ガイド部位12の内側に設けられたレールを、ストッパ部14の位置まで、キャスタ16の支軸下に形成された水平溝に嵌め合わせて装着する点は図1の例と同じである。
【0016】
図6は、機器からの突き出し量aが大きな転倒防止部材10”を示し、このような転倒防止部材10”の形態であれば、図示する装着状態のまま段差乗り越え機能と転倒防止機能の双方を奏することが可能である。取り付けの上下方向を入れ替える必要がなくなることから、キャスタからの取り外しを前提とした、キャスタに形成された水平溝へのガイド部位の内側レールの嵌め合わせが必要なくなり、転倒防止部材をキャスタに固着することが可能となる。転倒防止部材をキャスタに固着する場合には、機器の梱包に際しては、キャスタの回動性を利用して、転倒防止部材が機器底面に隠れる退避位置へ転倒防止部材を収めることで梱包箱の無駄なサイズアップを避けることができる。
【符号の説明】
【0017】
10 転倒防止部材
11 湾曲部
12 ガイド部位
13 レール(直線状突起)
14 ストッパ部
15 基礎面
16 キャスタ
17 水平溝
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2002−252475号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に移動用キャスタを備えた機器に装着される転倒防止部材であって、前記転倒防止部材は、該部材の側方断面で見て基礎辺とその基礎辺に対して片端に向かって近づく対向辺とによって先端に向かって狭くなる断面形状を有する輪郭部位と、当該輪郭部位の根元側基礎部から移行するガイド部位とを有していて、転倒防止機能と段差乗り越え機能を奏することを特徴とする転倒防止部材。
【請求項2】
前記ガイド部位の内面には、移動用キャスタに設けられた水平溝に嵌合されるべき直線状突起が形成されていて、転倒防止部材は移動用キャスタから取り外し可能に装着されるもので、上下反転させて装着することで転倒防止機能と段差乗り越え機能の各々を奏することを特徴とする請求項1に記載の転倒防止部材。
【請求項3】
輪郭部位として片面側に膨らんだ湾曲部を有することを特徴とする請求項2に記載の転倒防止部材。
【請求項4】
輪郭部位が、部材の側方断面で見て基礎辺に対して対向辺が先端に向かって近づくテーパ形状を有することを特徴とする請求項2に記載の転倒防止部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−174893(P2012−174893A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35680(P2011−35680)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】