説明

段差情報取得システム及び段差情報取得方法

【課題】本発明は、段差情報取得システム及び段差情報取得方法に係り、道路路面上における各段差の情報の収集を安価かつ簡易に実現することにある。
【解決手段】道路上の位置を検出する位置検出手段と、道路路面上に存在する段差を検出する段差検出手段と、位置検出手段による位置の情報及び段差検出手段による段差の情報を送信する送信手段と、を搭載する携帯端末を設けると共に、携帯端末の送信手段から送信される情報を受信する受信手段と、受信手段に受信される情報に基づいて、道路路面上において段差が生じている段差位置を特定する段差位置特定手段と、段差位置特定手段により特定された段差位置のデータを格納するデータベースと、を有するセンタを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段差情報取得システム及び段差情報取得方法に係り、道路路面上にランダムに存在する段差の情報を効果的に取得するうえで好適な段差情報取得システム及び段差情報取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センタに設けられる障害物や施設に関する情報が格納された地図データベースを基に、視力に障害がある人に対して進行方向にある障害物の情報を提供することで、その人を目的地まで誘導するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかるシステムにおいては、地図データベースに予め道路路面上の段差などの障害物と位置との情報がリンクされて格納されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4190843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した特許文献1には、地図データベースに格納される段差情報を逐次最新の情報に更新すべきことは記載されているが、どのように最新の段差情報を取得するのかについては一切記載がなされていない。一般に、地図データベースに最新の段差情報を格納するためには、実際に道路を歩いた人に最新の段差情報を眼で見せてその最新の段差情報を手入力させることが考えられる。しかし、かかる手法では、人の作業に手間がかかり、また、多くの作業時間が必要となるため、段差情報を取得するうえで高コスト化し、実用化を図ることができない。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、道路路面上における各段差の情報の収集を安価かつ簡易に実現できる段差情報取得システム及び段差情報取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、道路上の位置を検出する位置検出手段と、道路路面上に存在する段差を検出する段差検出手段と、前記位置検出手段による前記位置の情報及び前記段差検出手段による前記段差の情報を送信する送信手段と、を搭載する携帯端末と、前記携帯端末の前記送信手段から送信される情報を受信する受信手段と、前記受信手段に受信される情報に基づいて、道路路面上において段差が生じている段差位置を特定する段差位置特定手段と、前記段差位置特定手段により特定された前記段差位置のデータを格納するデータベースと、を有するセンタと、を備える段差情報取得システムにより達成される。
【0007】
また、上記の目的は、携帯端末が道路上の位置を検出する位置検出ステップと、前記携帯端末が道路路面上に存在する段差を検出する段差検出ステップと、前記携帯端末が前記位置検出ステップにおいて検出される前記位置の情報及び前記段差検出ステップにおいて検出される前記段差の情報を送信する送信ステップと、センタが前記送信ステップにおいて送信される情報を受信する受信ステップと、前記センタが前記受信ステップにおいて受信される情報に基づいて道路路面上において段差が生じている段差位置を特定する段差位置特定ステップと、前記センタが前記段差位置特定ステップにおいて特定された前記段差位置のデータをデータベースに格納する段差位置格納ステップと、を備える段差情報取得方法により達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、道路路面上における各段差の情報の収集を安価かつ簡易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例である段差情報取得システムの全体構成図である。
【図2】本実施例の段差情報取得システムにおいて実行される道路路面上の段差の情報を取得するためのルーチンの一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明に係る段差情報取得システム及び段差情報取得方法の具体的な実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例である段差情報取得システム10の全体構成図を示す。本実施例の段差情報取得システム10は、道路路面上に存在する段差の情報を取得するためのシステムである。尚、「段差」とは、道路路面上において車椅子に乗る人などが自身で上がり或いは下がることが困難となる箇所であって、一の歩行面と次の歩行面とが所定高さ以上離れている箇所、又は、一の歩行面と次の歩行面とが所定角度以上の斜面で繋がれている箇所のことである。
【0012】
段差情報取得システム10は、各利用者に携帯される携帯端末12と、情報を管理するセンタ14と、からなる。携帯端末12を携帯する利用者は、道路路面上の段差を自身で上がり或いは下がることが困難な車椅子を必要とする人や老人などに限らず、その段差を自身で上がり或いは下がることが可能な健常者を含む。携帯端末12は、無線局を介して双方向で通話し或いは通信することが可能な携帯電話などである。
【0013】
携帯端末12は、コンピュータ20と、GPS(Global Positioning System)受信機22と、を有している。GPS受信機22は、GPS衛星から送信される信号を常時受信しており、その受信信号をコンピュータ20に送信する。コンピュータ20は、GPS受信機22からの受信信号に基づいて、携帯端末12が位置する地球上の位置(経度緯度座標)を検出する。
【0014】
携帯端末12は、また、角速度センサ24と、不揮発性メモリであるデータ格納部26と、を有している。角速度センサ24は、例えば3軸のジャイロセンサであり、携帯端末12に生じる軸周りの角速度に応じた信号を出力する。角速度センサ24の出力信号は、コンピュータ20に供給される。コンピュータ20は、角速度センサ24の出力信号に基づいて、携帯端末12に生じる角速度を検出する。尚、コンピュータ20は、この検出した携帯端末12に生じる角速度を、GPS受信機22を用いた位置検出が困難であるエリア(例えば、屋内やトンネル,地下街等)での位置検出に利用することとしてもよい。
【0015】
データ格納部26には、少なくとも、携帯端末12を携帯する利用者が平坦な道路を歩行し或いは走った場合に携帯端末12に生じる角速度、又は、携帯端末12を携帯する利用者が階段を上り或いは下った場合に携帯端末12に生じる角速度の特徴的なデータが格納されている。尚、これらのデータ格納部26に格納される角速度などの特徴的なデータは、利用者ごとに相違し得るものであり、携帯端末12を携帯する利用者に対応したものとなる。また、データ格納部26に格納される角速度などの特徴的なデータは、利用者が携帯端末12を携帯する際に学習されたものに更新されるものとしてもよい。
【0016】
コンピュータ20は、角速度センサ24を用いて携帯端末12に生じる角速度を検出すると、後に詳述する如く、その検出した角速度を、データ格納部26に格納された角速度のデータと比較し、そして、その比較結果に基づいて、利用者が位置する道路路面上に段差が有るか否かを判別する。
【0017】
携帯端末12は、また、通信ネットワークを介してセンタ14と無線通信するうえで必要な送受信部28を有している。コンピュータ20は、GPS受信機22を用いて検出した携帯端末12の位置の情報、及び、角速度センサ24を用いて検出した道路路面上の段差ついての情報をセンタ14へ向けて無線送信するように送受信部28に対して指令を行う。送受信部28は、コンピュータ20からの指令に従って上記の情報を無線送信する。
【0018】
携帯端末12は、更に、利用者に視認可能なディスプレイ30を有している。ディスプレイ30は、道路地図を表示することが可能である。上記の送受信部28は、センタ14から送信される利用者に提供すべき少なくとも道路路面上の段差の位置の情報を含むナビゲーション情報を受信することが可能である。ディスプレイ30は、送受信部28に受信されるナビゲーション情報を道路地図上に重ねて表示することが可能である。
【0019】
また、センタ14は、コンピュータ40と、送受信部42と、データベース44と、を有している。送受信部42は、通信ネットワークを介して各携帯端末12と無線通信するうえで必要な機器である。送受信部42は、各携帯端末12から送信される上記の位置情報及び段差情報を受信することが可能である。コンピュータ40は、送受信部42に受信される情報に基づいて、後に詳述する如く、道路路面上で段差が生じている位置を特定する。
【0020】
コンピュータ40は、道路路面上で段差が生じている位置を特定すると、その位置のデータをデータベース44に格納する。コンピュータ40は、道路路面上で段差が生じている位置のデータをデータベース44に格納すると、以後、ナビゲーション情報を対象の携帯端末12に向けて無線送信するように送受信部42に対して指令を行う際に、そのナビゲーション情報に道路路面上で段差が生じている位置の情報を含めることが可能である。送受信部42は、コンピュータ40からの指令に従って上記のナビゲーション情報を無線送信する。
【0021】
次に、図2を参照して、本実施例の段差情報取得システム10の動作について説明する。図2は、本実施例の段差情報取得システム10において実行される道路路面上の段差の情報を取得するためのルーチンの一例のフローチャートを示す。
【0022】
本実施例において、段差情報取得システム10を構成する各携帯端末12はそれぞれ、以下の処理を実行する。すなわち、携帯端末12のコンピュータ20は、電源オン時において、角速度センサ24を用いて携帯端末12に生じる角速度を検出する(ステップ100)。
【0023】
コンピュータ20は、上記の如く携帯端末12に生じる角速度を検出すると、次に、データ格納部26に格納される平坦道路や階段などでの角速度の特徴的なデータを読み出して、その検出角速度をその読み出した角速度データと比較する(ステップ102)。そして、コンピュータ20は、検出角速度が平坦な道路での角速度データに一致するか否かを判別する(ステップ104)。この判別は、検出角速度が平坦な道路での角速度データに対して所定規則に従って類似性を有するか否かに基づいて行われればよい。
【0024】
コンピュータ20は、上記の比較の結果、検出角速度が平坦な道路での角速度データに一致すると判別した場合は、携帯利用者が位置する道路が平坦路であると判断し、以後、何ら処理を進めることなくルーチンを終了する。一方、検出角速度が平坦な道路での角速度データに一致しないと判別した場合は、携帯利用者が位置する道路が段差のある階段であると判断し、次に、検出角速度と平坦な道路での角速度データとの類似性の度合い、及び、携帯端末12のディスプレイ表示が消えているか否かや明るさセンサなどを用いて携帯端末12が暗い状態に置かれていることが検知されるか否かに基づいて、道路路面上に段差が有ると判定する信頼度(自信度)Jを算出する(ステップ106)。例えば、角速度の類似性が低いほど、その判定の信頼度Jを高い値に設定し、また、携帯端末12のディスプレイ表示が消えている時や明るさセンサなどを用いて携帯端末12が暗い状態に置かれていることが検知される時は、その判定の信頼度Jを高い値に設定する。
【0025】
コンピュータ20は、また、検出角速度が平坦な道路での角速度データに一致しないと判別して、携帯利用者が位置する道路が段差のある階段であると判断した場合は、更に、過去所定時間内での検出角速度の時間変化などに基づいて、今回の段差を含む階段の段数Mを算出・計数する。
【0026】
コンピュータ20は、更に、常時、GPS受信機22を用いて携帯端末12が位置する地球上の位置を検出する(ステップ108)。コンピュータ20は、上記の如く携帯利用者が位置する道路が段差のある階段であると判断して、道路路面上に存在する段差を検出し、道路路面上に段差が有ると判定する信頼度・自信度Jを算出すると、次に、道路路面上に段差が有る可能性があることを示す情報、その段差を含む階段の段数M及びその段差有り判定の信頼度Jを示す情報、並びに、その段差有り判定時に携帯端末12が位置する地球上の位置の情報を、纏めてセンタ14へ向けて無線送信するように送受信部28に対して指令を行う(ステップ110)。送信部28は、コンピュータ20からの指令に従って、上記の各種情報をセンタ14へ向けて無線送信する。
【0027】
また、センタ14は、送受信部42で携帯端末12から無線送信される上記の情報を受信する。センタ14のコンピュータ40は、送受信部42で受信した情報をデータベース44に格納する。この情報の格納は、情報が受信されるごとに行われる。コンピュータ40は、携帯端末12の位置ごとに段差情報の統計処理を行う(ステップ120)。具体的には、道路路面上で段差が有る可能性があると判定されたときに検出された携帯端末12の位置が、同一の又は異なる携帯端末12で段差が有る可能性があると判定されたときに携帯端末12の位置として検出されてデータベース44に格納された位置(具体的には、その位置から所定距離内にある領域内の位置)に一致し、かつ、その一致数が所定複数個N以上であるか否かを判別する。すなわち、道路路面上で段差が有る可能性があると判定されたときに検出された携帯端末12の位置が、同一の又は異なる携帯端末12で所定複数回N以上にわたって段差が有る可能性があることが検出された位置(具体的には、その位置から所定距離内にある領域内の位置)に一致するか否かを判別する。
【0028】
コンピュータ40は、上記の段差情報の統計処理の結果、道路路面上で段差が有る可能性があると判定されたときに検出された携帯端末12の位置がデータベース44に格納された上記の位置に一致せず、又は、一致してもその一致数が所定複数個N未満であるときは、以後、何ら処理を進めることなくルーチンを終了する。一方、道路路面上で段差が有る可能性があると判定されたときに検出された携帯端末12の位置がデータベース44に格納された上記の位置に一致し、かつ、その一致数が所定複数個N以上であるときは、その位置を、段差が存在する段差位置として確定し、その位置情報をデータベース44に格納する(ステップ122)。
【0029】
このように、本実施例の段差情報取得システム10においては、各携帯端末12にそれぞれ、角速度に基づいて道路路面上に存在する段差を検出させると共に、その段差検出時における位置を検出させ、その位置情報をセンタ14へ向けて送信させる。また、センタ14に、各携帯端末12からそれぞれ送信される上記の位置情報を取得させ、同じ位置で所定複数回Nにわたって道路路面上で段差が検出されたか否かを判別させると共に、所定複数回Nにわたって道路路面上で段差が検出された位置を段差が存在する段差位置として確定させ、その位置情報をデータベース44に格納させる。
【0030】
かかる構成によれば、利用者が角速度センサ24を有する携帯端末12を携帯して道路を通行することにより、道路路面上で段差が有る可能性がある位置の情報をセンタ14に収集することができる。そして、その収集した段差情報の統計結果に基づいて確定される道路路面上で段差が存在する段差位置の情報を、センタ14のデータベース44に格納することができる。
【0031】
上記の如く、携帯端末12の利用者は、道路路面上の段差を自身で上がり或いは下がることが困難な車椅子を必要とする人や老人などに限らず、その段差を自身で上がり或いは下がることが可能な健常者を含む。このため、車椅子利用者などが通行することのできない場所でも、その場所を通行することのできる人が携帯端末12を携帯して通行することで、段差が有る可能性のある位置の情報をセンタ14に収集することができる。また、上記の構成においては、段差が有る可能性のある位置の情報をセンタ14に収集するうえで、人が道路路面上に存在する段差ごとに携帯端末12などに対して手入力を行うことは不要である。従って、本実施例のシステムによれば、段差が有る可能性のある位置の情報の収集を多大な作業を強いることなく安価にかつ簡易に行うことが可能であると共に、道路路面上で段差が存在する段差位置を広範囲にわたって精度良く検出することが可能である。
【0032】
また、本実施例のシステムにおいては、道路路面上で段差が存在する段差位置を確定するうえで、同じ位置で所定複数回Nにわたって携帯端末12で道路路面上の段差が検出されることが必要である。このため、道路路面上で段差が存在する段差位置の誤検出を防止することが可能である。尚、段差位置の誤検出を防止するうえでは、更に、同一の携帯端末12で所定複数回Nにわたって道路路面上の段差が検出されたときだけでなく、複数の異なる携帯端末12で所定複数回Nにわたって道路路面上の段差が検出されたときに、段差位置の確定処理を行うこととしてもよい。
【0033】
本実施例のシステムにおいて、道路路面上で段差が存在する段差位置の情報がセンタ14のデータベース44に格納された後は、センタ14は、利用者に対して道路のナビゲーション情報を提供する際、その提供情報として、段差が存在することを示す道路情報を含め或いはその段差を含むルートを回避したルート情報を含めることができる。従って、本実施例によれば、携帯端末12を携帯する自転車乗員や車椅子利用者などの階段を昇降することが困難な人に対して、段差が存在することを示す道路情報を提供することで、道路路面上の段差がどこにあるかを把握させることが可能であり、また、段差を含むルートを回避したルート情報を提供することで、段差で行き詰ることなる目的地まで誘導することが可能である。
【0034】
ところで、上記の実施例においては、携帯端末12のコンピュータ20が図2に示すルーチン中ステップ108の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「位置検出手段」に、コンピュータ20がステップ104の処理を実行して道路路面上の段差有無を判定することが特許請求の範囲に記載した「段差検出手段」に、送受信部28が特許請求の範囲に記載した「送信手段」に、コンピュータ20がステップ100の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「角速度検出手段」に、データ格納部26が特許請求の範囲に記載した「データ格納部」に、それぞれ相当している。
【0035】
また、センタ14の送受信部42が特許請求の範囲に記載した「受信手段」に、コンピュータ40がステップ122の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「段差位置特定手段」に、データベース44が特許請求の範囲に記載した「データベース」に、それぞれ相当している。
【0036】
尚、上記の実施例においては、携帯端末12のコンピュータ20による角速度の検出は、電源オン時に常に行われるものに限ることなく、平坦な道路で生じる角速度と段差が有る道路で生じる角速度とを区別し易い状況下においてのみ行われることとしてもよい。平坦な道路で生じる角速度と段差が有る道路で生じる角速度とは、携帯端末12が衣服のポケットやカバンの中に有るときに区別し易くなるため、上記した角速度の検出は、例えば、文字入力時などの利用者が手に持っている時以外の、携帯端末12のディスプレイ表示が消えている時や明るさセンサなどを用いて携帯端末12が暗い状態に置かれていることが検知される時などに行われることが好ましい。かかる変形例によれば、携帯端末12での角速度に基づく道路路面上の段差有無の判定を精度良く行うことができ、道路路面上の段差位置を精度よく検出することが可能である。
【0037】
また、上記の実施例においては、携帯端末12で道路路面上の段差が検出された際に段差が有ると判定する信頼度Jが算出され、その信頼度Jの情報がセンタ14へ送信されるが、センタ14のコンピュータ40はその信頼度Jに応じて、道路路面上で段差が存在する段差位置を確定するうえで必要な同じ位置で携帯端末12で角速度センサ24を用いて道路路面上の段差が有る位置として検出されるべき回数Nを変更することとしてもよい。具体的には、段差が有ると判定する信頼度Jが高いほど回数Nを少なくし、その信頼度Jが低いほど回数Nを多くする。尚、設定される回数Nは、信頼度Jの情報が受信されるごとにその信頼度Jに応じて変更されればよく、自然数に限らず、“1”以上の有理数であってもよい。段差が有ると判定する信頼度Jが高いときは、回数Nが少なくても、段差位置の正確性を確保することができる一方、段差が有ると判定する信頼度Jが低いときは、回数Nが多くなければ、段差位置の正確性を確保することができない。従って、かかる変形例によれば、道路路面上で段差が存在する段差位置を誤判定することなく、その段差位置を常に精度よく確定することが可能である。
【0038】
この場合、携帯端末12のコンピュータ20が、検出角速度と平坦な道路での角速度データとの類似性の度合い、及び、携帯端末12のディスプレイ表示が消えているか否かや明るさセンサなどを用いて携帯端末12が暗い状態に置かれていることが検知されるか否かに基づいて、道路路面上に段差が有ると判定する信頼度Jを算出することが特許請求の範囲に記載した「信頼度算出手段」に、センタ14のコンピュータ40が信頼度Jに基づいて上記の如く回数Nを変更することが特許請求の範囲に記載した「回数変更手段」に、それぞれ相当する。
【0039】
また、上記の実施例においては、携帯端末12で道路路面上の段差が検出されると、更に、その段差を含む階段の段数Mが計数され、その段数Mの情報がセンタ14へ送信されるが、センタ14のコンピュータ40はその段数Mに応じて、道路路面上で段差が存在する段差位置を確定するうえで必要な同じ位置で携帯端末12で角速度センサ24を用いて道路路面上の段差が有る位置として検出されるべき回数Nを変更することとしてもよい。具体的には、階段の段数Mが多いほど回数Nを少なくし、階段の段数Mが少ないほど回数Nを多くする。尚、設定される回数Nは、段数Mの情報が受信されるごとにその段数Mに応じて変更されればよく、自然数に限らず、“1”以上の有理数であってもよい。階段の段数Mが多いときは、その段数M分にわたって同じ携帯端末12で道路路面上の段差が有る位置として検出されているので、センタ14で計数される位置一致の回数Nが少なくても、段差位置の正確性を確保することができる一方、階段の段数Mが少ないときは、センタ14で計数される位置一致の回数Nが多くなければ、段差位置の正確性を確保することができない。従って、かかる変形例によれば、道路路面上で段差が存在する段差位置を誤判定することなく、その段差位置を常に精度よく確定することが可能である。
【0040】
この場合、携帯端末12のコンピュータ20が、過去所定時間内での検出角速度の時間変化などに基づいて階段の段数Mを算出することが特許請求の範囲に記載した「段数算出手段」に、センタ14のコンピュータ40が段数Mに基づいて上記の如く回数Nを変更することが特許請求の範囲に記載した「回数変更手段」に、それぞれ相当する。
【0041】
また、上記の実施例においては、携帯端末12で角速度に基づいて道路路面上の段差有無を判定するうえで、検出した角速度を、データ格納部26に格納された平坦な道路通行時に生じる角速度データに一致するか否かを判別することとしているが、その検出した角速度を、階段通行時に生じる角速度データに一致するか否かを判別することとしてもよい。
【0042】
更に、上記の実施例においては、携帯端末12で角速度に基づいて道路路面上の段差が検出されると、その際の携帯端末12の位置が検出され、その後、道路路面上に段差が有る可能性があることを示す情報及びその携帯端末12の位置情報がセンタ14へ向けて送信されるが、携帯端末12からセンタ14への情報送信は、段差検出後かつ位置検出後に直ちに行われることに限らず、段差検出後かつ位置検出後、それらの検出された段差の情報及び位置の情報が互いにリンクされてデータ格納部26などに一時記憶された後に所定タイミング(例えば、次の電源投入直後や、データ格納部26などに一時記憶された情報の総数が所定数に達した場合など)で行われることとしてもよい。尚、複数の情報が纏めて携帯端末12からセンタ14へ送信されれば、その情報送信を効率的に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
10 段差情報取得システム
12 携帯端末
14 センタ
20 コンピュータ
22 GPS受信機
24 角速度センサ
26 データ格納部
28 送受信部
40 コンピュータ
42 送受信部
44 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上の位置を検出する位置検出手段と、道路路面上に存在する段差を検出する段差検出手段と、前記位置検出手段による前記位置の情報及び前記段差検出手段による前記段差の情報を送信する送信手段と、を搭載する携帯端末と、
前記携帯端末の前記送信手段から送信される情報を受信する受信手段と、前記受信手段に受信される情報に基づいて、道路路面上において段差が生じている段差位置を特定する段差位置特定手段と、前記段差位置特定手段により特定された前記段差位置のデータを格納するデータベースと、を有するセンタと、
を備えることを特徴とする段差情報取得システム。
【請求項2】
前記携帯端末の前記送信手段は、前記段差検出手段により前記段差が検出された場合に、前記段差を示す情報と、該段差の検出時に前記位置検出手段により検出される前記位置の情報と、を前記センタへ向けて送信することを特徴とする請求項1記載の段差情報取得システム。
【請求項3】
前記センタの前記段差位置特定手段は、前記受信手段に受信される情報に基づいて、前記段差検出手段による前記段差の検出時に前記位置検出手段により検出される前記位置が、同一の又は異なる前記携帯端末で所定回数以上にわたって該位置として検出されていた位置に一致する場合に、該位置を前記段差位置として設定することを特徴とする請求項1又は2記載の段差情報取得システム。
【請求項4】
前記携帯端末は、更に、前記携帯端末に生じる角速度を検出する角速度検出手段と、端末利用者における道路路面上での段差の有無に応じた角速度のデータを格納するデータ格納部と、を有し、
前記段差検出手段は、前記角速度検出手段により検出される前記携帯端末に生じる角速度を、前記データ格納部に格納される前記角速度のデータと比較した結果に基づいて、前記段差の有無を判定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の段差情報取得システム。
【請求項5】
前記携帯端末は、更に、前記段差検出手段により前記段差が有ることが判定された場合に、該段差有り判定の信頼度を算出する信頼度算出手段を有し、
前記送信手段は、前記信頼度算出手段により算出される前記信頼度の情報をも送信することを特徴とする請求項4記載の段差情報取得システム。
【請求項6】
前記センタの前記段差位置特定手段は、前記受信手段に受信される情報に基づいて、前記段差検出手段による前記段差の検出時に前記位置検出手段により検出される前記位置が、同一の又は異なる前記携帯端末で所定回数以上にわたって該位置として検出されていた位置に一致する場合に、該位置を前記段差位置として設定すると共に、
前記センタは、更に、前記携帯端末の前記送信手段から送信される前記信頼度の情報に基づいて、該信頼度が高いほど前記所定回数を少なくする回数変更手段を有することを特徴とする請求項5記載の段差情報取得システム。
【請求項7】
前記携帯端末は、更に、前記段差検出手段により前記段差が有ることが判定された場合に、該段差を含む階段の段数を算出する段数算出手段を有し、
前記送信手段は、前記段数算出手段により算出される前記段数の情報をも送信することを特徴とする請求項4記載の段差情報取得システム。
【請求項8】
前記センタの前記段差位置特定手段は、前記受信手段に受信される情報に基づいて、前記段差検出手段による前記段差の検出時に前記位置検出手段により検出される前記位置が、同一の又は異なる前記携帯端末で所定回数以上にわたって該位置として検出されていた位置に一致する場合に、該位置を前記段差位置として設定すると共に、
前記センタは、更に、前記携帯端末の前記送信手段から送信される前記段数の情報に基づいて、該段数が多いほど前記所定回数を少なくする回数変更手段を有することを特徴とする請求項7載の段差情報取得システム。
【請求項9】
前記段差検出手段は、前記段差検出手段による検出が適切に行われ得る状況下において、前記段差を検出することを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項記載の段差情報取得システム。
【請求項10】
携帯端末が道路上の位置を検出する位置検出ステップと、
前記携帯端末が道路路面上に存在する段差を検出する段差検出ステップと、
前記携帯端末が前記位置検出ステップにおいて検出される前記位置の情報及び前記段差検出ステップにおいて検出される前記段差の情報を送信する送信ステップと、
センタが前記送信ステップにおいて送信される情報を受信する受信ステップと、
前記センタが前記受信ステップにおいて受信される情報に基づいて道路路面上において段差が生じている段差位置を特定する段差位置特定ステップと、
前記センタが前記段差位置特定ステップにおいて特定された前記段差位置のデータをデータベースに格納する段差位置格納ステップと、
を備えることを特徴とする段差情報取得方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−98939(P2012−98939A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246476(P2010−246476)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】