説明

段差解消装置

【課題】複雑なリンク機構を要することなく、乗込台からの移動体の離脱を防止することができる段差解消装置の提供。
【解決手段】車椅子等の車輪を有する移動体を搭載可能であって、昇降可能な乗込台1と、この乗込台1に設けられ、乗込台1からの移動体の離脱を防止する離脱防止手段とを備え、乗込台1を上昇させることにより、所定の段差上段11と乗込台1との間で移動体を搬送可能な段差解消装置において、乗込台1に収納され、所定の段差上段11まで引き出し可能で、かつ移動体の通過を可能にさせる渡し板8を備えるとともに、離脱防止装置が、乗込台1に設けられ、起伏可能な可動板2と、乗込台1の上昇に伴って可動板2を乗込台1から起立させる方向に回動させ、渡し板8の引き出し操作に伴って可動板2を伏せる方向に回動させるピニオン7等のギヤ機構とを含む構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段差を有する箇所に活用され、車輪を有する移動体を搭載可能であって、昇降可能な乗込台を備えた段差解消装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、特許文献1に示されるものがある。この従来技術は、車椅子等の車輪を有する移動体を搭載可能であって昇降可能な乗込台と、この乗込台に設けられ、移動体の乗込台からの離脱を防止する離脱防止手段とを備えた構成になっている。離脱防止手段は、例えばレバー操作を伴う脱輪防止手段から成り、あるいは乗込台の昇降に伴ってリンク機構を介して乗込台に搭載された移動体の後退を防止する後退防止手段から成っている。
【特許文献1】実用新案登録第3104201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来技術に備えられる離脱防止手段が、脱輪防止手段から成るものは、手によるレバー操作を要するものであることから、レバー操作を忘れた場合には乗込台に搭載された移動体が脱輪してしまう虞がある。また、離脱防止手段が後退防止手段から成るものは、リンク機構を要することから構造が複雑になり、製作費が高くなってしまう懸念がある。
【0004】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、複雑なリンク機構を要することなく、乗込台からの移動体の離脱を防止することができる段差解消装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明は、車輪を有する移動体を搭載可能であって、昇降可能な乗込台と、この乗込台に設けられ、前記乗込台からの前記移動体の離脱を防止する離脱防止手段とを備え、前記乗込台を上昇させることにより、所定の段差上段と前記乗込台との間で前記移動体を搬送可能な段差解消装置において、前記乗込台に収納され、前記所定の段差上段まで引き出し可能で、かつ前記移動体の通過を可能にさせる渡し板を備えるとともに、前記離脱防止装置が、前記乗込台に設けられ、起伏可能な可動板と、前記乗込台の上昇に伴って前記可動板を前記乗込台から起立させる方向に回動させ、前記渡し板の引き出し操作に伴って前記可動板を伏せる方向に回動させるギヤ機構とを含むことを特徴としている。
【0006】
このように構成した本発明は、乗込台を上昇させるとギヤ機構を介して可動板が乗込台から起立するので、この可動板によって乗込台に搭載された移動体の脱輪、すなわち乗込台からの離脱を防止できる。また、例えば乗込台から所定の段差上段へ乗込台に搭載された移動体を搬送するために、渡し板が乗込台から引き出されると、この渡し板の引き出し操作に伴ってギヤ機構を介して、それまで起立していた可動板が伏せる方向に回動する。これにより、乗込台から渡し板上を通って移動体を所定の段差上段へ搬送することができる。
【0007】
このように本発明は、可動板とギヤ機構を設けるだけであり、複雑なリンク機構を要することなく、乗込台からの移動体の離脱を可動板によって防止することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、乗込台からの移動体の離脱を防止する離脱防止手段が、乗込台に設けられ、起伏可能な可動板と、この可動板を乗込台の上昇動作、及び渡し板の引き出し操作に応じて起伏させるギヤ機構とを含む構成にしてあることから、従来におけるような複雑なリンク機構を要することなく、移動体の乗込台からの離脱を防止することができる。これにより、従来に比べて構造が簡単になり、製作費を安くすることができ、優れた安全性を確保することができる。また、構造が簡単になることから、この段差解消装置の保守管理も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下,本発明に係る段差解消装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明に係る段差解消装置の一実施形態を示す斜視図、図2は本実施形態において、乗込台を上昇させた状態を示す斜視図、図3は本実施形態において、乗込台から渡し板を引き出して所定の段差上段に懸架させた状態を示す斜視図である。図4は図1のA方向から見た可動板とアームとを示す図、図5は図4のD方向から見た図である。図6は図2のB方向から見た可動板とアームとを示す図、図7は図6のE方向から見た図である。図8は図2のB方向から見た可動板とアームと渡し板とを示す図、図9は図8のF方向から見た図である。図10は図3のC方向から見た可動板とアームと渡し板を示す図、図11は図10のG方向から見た図である。
【0011】
図1,2に示すように、本実施形態に係る段差解消装置は、車輪を有する移動体、例えば車椅子が搭載可能であって、昇降可能な乗込台1と、この乗込台1を昇降させる昇降装置10とを備えている。
【0012】
また、図3に示すように、乗込台1に収納され、所定の段差上段11上まで引き出し可能で、かつ上述の車椅子の通過を可能にさせる渡し板8を備えている。
【0013】
図11に示すように、渡し板8の端部にはラック9を一体に設けてある。このラック9は、乗込台1に設けられて起伏可能な可動板2に一体に取り付けたピニオン7に、選択的に噛合可能となっている。
【0014】
可動体2は、図1,4,5に示すように、乗込台1が最下位置に保持されているときには、乗込台1の搭載面3と面一となるように配置され、図2,6,7に示すように、乗込台1が上昇すると乗込台1から起立する方向に回動し、図3,10,11に示すように、乗込台1から渡し板8が引き出される操作に伴って伏せる方向に回動し、渡し板8が限界まで引き出されて所定の段差上段11に懸架された状態では、乗込台1の搭載面3と面一となるように配置されている。
【0015】
また、本実施形態は、図4,5に示すように下端に、乗込台1内に設けたブラケットの上面を転動可能な転車5を取り付けたアーム4を備えている。このアーム4の上端にはピニオン6と常時噛み合うスプロケット6を一体的に取り付けてある。このアーム4の上端は乗込台1の側板に揺動可能に支持させてある。
【0016】
上述したスプロケット6、ピニオン7、及びラック9は、乗込台1の上昇に伴って可動板2を乗込台1から起立する方向に回動させ、渡し板8の引き出し操作に伴って可動板2を伏せる方向に回動させるギヤ機構を構成している。
【0017】
本実施形態は、乗込台1の搭載面3からの車椅子の離脱を防止する離脱防止手段が、上述した可動板2と、上述したギヤ機構を含む構成にしてある。
【0018】
このように構成した本実施形態は、車椅子の搬送に際しては、図1に示すように、所定の段差上段11を形成する階段の前に、最下位置に保持させた状態において、例えば図示しない車椅子を乗込台1の搭載面3に搭載し、図2に示すように、昇降装置10によって乗込台1を上昇させる。この乗込台1の上昇にともなって、図6,7に示すように、アーム4の自重による回動と一体にスプロケット6が回動し、このスプロケット6と噛み合うピニオン7が回動する。
【0019】
このピニオン7の回動により、可動板2が起立する方向に回動し、この可動板2が乗込台1の搭載面3に対して立設された状態に保持される。したがって、この立設された可動板2によって、乗込台1上の図示しない車椅子の脱輪が防止される。このとき、仮に車椅子の車輪が可動板2に当たることがあっても、アーム4の末端に設けた転車5が乗込台1内に形成したブラケットの上面に接触していることから、可動板2に加えられる力によってはスプロケット6が回動せず、したがって、可動板2は立設されたままの状態に保たれる。
【0020】
図3に示すように、乗込台1を所定の高さ位置まで上昇させた後、この乗込台1に収納されていた渡し板8を引き出し、この渡し板8を所定の段差上段11上に懸架させることが行なわれる。この間、渡し板8が引き出されたとき、図11に示すように、渡し板8に取り付けたラック9がピニオン7に噛み合い、ラック9の移動に伴ってピニオン7が上述とは逆方向に回動する。これによって、可動板2が伏せる方向に回動する。渡し板8が限界まで引き出された状態では、可動板2と乗込台1の搭載面3とは面一となる。
【0021】
したがって、乗込台1に搭載した図示しない車椅子を、渡し板8を介して所定の段差上段11まで搬送させることができる。
【0022】
また、所定の段差上段11に載置された図示しない車椅子を、乗込台1に乗せ、階段下の床面まで降ろす場合は、上述と逆の動作が行なわれる。
【0023】
すなわち、乗込台1上に車椅子を乗せた後、渡し板8を乗込台1に収納させると、渡し板8に取り付けたラック9の移動に伴って可動板2が起立し、これによって車椅子の脱輪が防止される。乗込台1を降下させると、アーム4の回動と一体に回動するスプロケット6と、ピニオン7の噛み合いを介して、可動板2は伏せる方向に回動する。図1に示す最下位置では、乗込台1の搭載面3と可動板2とが面一となる。したがって、乗込台1上の図示しない車椅子を、階段下の床面まで搬送させることができる。
【0024】
このように構成した本実施形態は、上述のように、車椅子の乗込台1からの離脱、すなわち脱輪を防止する離脱防止手段が、乗込台1に設けられ、起伏可能な可動板2と、この可動板2を乗込台1の昇降操作、及び渡し板8の引き出し、収納操作に応じて起伏させるスプロケット6、ピニオン7、ラック9を有するギヤ機構とを含む構成にしてあることから、複雑なリンク機構を要することなく、乗込台1からの車椅子の離脱を防ぐことができる。これにより、構造が簡単になり、製作費を安くすることができるとともに、優れた安全性を確保することができる。また、構造が簡単になることから、この本実施形態に係る段差解消装置の保守管理作業も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る段差解消装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態において、乗込台を上昇させた状態を示す斜視図である。
【図3】本実施形態において、乗込台から渡し板を引き出して所定の段差上段に懸架させた状態を示す斜視図である。
【図4】図1のA方向から見た可動板とアームとを示す図である。
【図5】図4のD方向から見た図である。
【図6】図2のB方向から見た可動板とアームとを示す図である。
【図7】図6のE方向から見た図である。
【図8】図2のB方向から見た可動板とアームと渡し板とを示す図である。
【図9】図8のF方向から見た図である。
【図10】図3のC方向から見た可動板とアームと渡し板を示す図である。
【図11】図10のG方向から見た図である。
【符号の説明】
【0026】
1 乗込台
2 可動板(離脱防止手段)
3 搭載面
4 アーム
5 転車
6 スプロケット(ギヤ機構)[離脱防止手段]
7 ピニオン(ギヤ機構)[離脱防止手段]
8 渡し板
9 ラック(ギヤ機構)[離脱防止手段]
10 昇降装置
11 所定の段差上段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有する移動体を搭載可能であって、昇降可能な乗込台と、この乗込台に設けられ、前記乗込台からの前記移動体の離脱を防止する離脱防止手段とを備え、前記乗込台を上昇させることにより、所定の段差上段と前記乗込台との間で前記移動体を搬送可能な段差解消装置において、
前記乗込台に収納され、前記所定の段差上段まで引き出し可能で、かつ前記移動体の通過を可能にさせる渡し板を備えるとともに、
前記離脱防止装置が、
前記乗込台に設けられ、起伏可能な可動板と、
前記乗込台の上昇に伴って前記可動板を前記乗込台から起立させる方向に回動させ、前記渡し板の引き出し操作に伴って前記可動板を伏せる方向に回動させるギヤ機構とを含むことを特徴とする段差解消装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−301233(P2007−301233A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134146(P2006−134146)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【出願人】(591106118)サイタ工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】