説明

段差解消装置

【課題】傾倒モーメントがかかることがなく、ブリッジ先端の階段の最上段への懸架を容易に行なうことができる段差解消措置の提供。
【解決手段】階段の前に設置されるものであって、交差支柱2により上下動する台座3と、この台座3内に収納され、ベルト16、モータ17、プーリ18により台座3に対して進退するブリッジ15とを備え、台座3上に車椅子等を載せた状態で上昇させた後、ブリッジ15を階段に向かって進出させてブリッジ15の先端を階段の最上段6とオーバーラップさせ、その後ブリッジ15上を階段に向かって走行させるとともに、ブリッジ15が進出している際、その先端が階段の最上段6とオーバーラップを開始する直前の位置からブリッジ15の先端を持上げる跳ね上げ用カム12、固定ローラ11、及びブリッジ後端ローラ14を含むカム機構12を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段の段差の解消に活用される段差解消装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、リンク方式により昇降移動時に台座を水平にも移動させて階段の最上段に台座を懸架し、更に前記水平移動距離が最上階段に及ばない時は、ギヤ機構により水平延伸させたブリッジの先端を階段の最上段に懸架して、段差解消装置本体に偏荷重モーメントが掛からぬようにする両持ち梁構成としたものが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−40698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の技術では、昇降時台座に物を載せた状態で水平移行を行なわせた場合、上昇時台座が段差解消装置上部を越えて階段の最上段に懸架されるまで、または下降時台座が階段の最上段を離れて段差解消装置上部に戻るまでは、台座上の荷重により段差解消装置に傾倒モーメントがかかる。これにより、この段差解消装置の設置姿勢が不安定になる懸念があった。
【0004】
また、ブリッジの先端を階段の最上段に懸架する際、ブリッジ先端下面が階段の最上段に比べ低い場合には階段の最上段端部にブリッジ先端が衝突するためブリッジを懸架することができず、段差解消装置床面と階段の最上段とを一致させるために、台座上に物を載せた状態で段差解消装置の高さを調節する必要があった。このため特に、台座上に車椅子を利用する利用者が乗っているような場合には、身体不自由である利用者にとって不安感を与えやすい。
【0005】
なお、ブリッジを進出させた状態で階段の最上段から乗り込む際に、進出したブリッジが容易に後退しないように、特別な後退防止機構が必要になる。これにより製作費が高くなりやすい。
【0006】
本発明の第1の目的は、傾倒モーメントがかかることがなく、ブリッジ先端の階段の最上段への懸架を容易に行なうことができる段差解消措置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の第2の目的は、ブリッジを進出させた際のブリッジ後退防止機構を別途設ける必要がない段差解消装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した第1の目的を達成するために、本発明は、階段の前に設置されるものであって、昇降手段により上下動する台座と、この台座内に収納され、進退手段により前記台座に対して進退するブリッジとを備え、前記台座を上昇させた後、前記進退手段により前記ブリッジを階段に向かって進出させて前記ブリッジを前記階段の前記最上段とオーバーラップさせる段差解消装置において、前記ブリッジが進出する際に、その先端が前記階段の最上段とオーバーラップを開始する手前の位置から前記ブリッジの先端を持上げるカム機構を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、上述した第2の目的を達成するために、本発明は上記発明において、前記カム機構は、前記ブリッジの先端が前記階段の前記最上段とオーバーラップを開始した後、前記ブリッジの先端を下げ、前記ブリッジの水平方向への後退を阻止するカム機構であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、台座を上下動させた後にブリッジを進退させるので、台座上に車椅子等の積載物が載せられていたとしても、その荷重は台座の受ける垂直荷重であり、ブリッジを進退させる間、傾斜モーメントがかかることがない。これによって、この段差解消装置の設置姿勢の安定化を実現できる。
【0011】
また、ブリッジを最上段に懸架する場合、ブリッジの下面が階段の最上段とほぼ一致するように台座を上昇させた後、ブリッジを進出させるだけで、ブリッジ先端が階段の最上段と接近したときに持上がり、階段の最上段端部にブリッジが衝突することはない。そのため、従来行なわれていたように台座を再度上昇させたり、一旦過上昇させ、ブリッジを階段の最上段に懸架した後台座を下降させてブリッジがほぼ水平となるようにする等の操作は必要なくなり、このブリッジの階段の最上段への懸架を容易に行なうことができる。
【0012】
これらのことから、台座上に車椅子を利用する利用者が乗っている場合には、その利用者に対して安心感を与えることができる。
【0013】
また、カム機構を、ブリッジの先端が前記階段の最上段とオーバーラップを開始した後、ブリッジの先端を下げ、ブリッジの水平方向への後退を阻止するカム機構とした場合には、ブリッジの進出完了端では再びブリッジ先端が持上げられる以前の状態となるようにブリッジが保持されるので、ブリッジが進出完了端から後退するには一旦ブリッジ先端が持上がる必要があり、車椅子等が階段からブリッジ上に移動しようとしている状況にあっては車椅子等の一部がブリッジ上に載った状態となるため、ブリッジ先端が持上がるのは阻止され、仮にブリッジが水平方向に後退しようとしても、ブリッジの後退が阻止される。このように、ブリッジ先端を持上げるカム機構が後退阻止機能も果たすため、ブリッジの後退防止機構を別途設置する必要はない。これによって製作費を安くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る段差解消装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る段差解消装置の一実施形態を示す要部側断面図、図2は本実施形態に備えられる台座の内部構成を示す平面図、図3は本実施形態に備えられる台座の正面断面図、図4は本実施形態の動作を示す説明図、図5は本実施形態に備えられる跳ね上げ用カムを示す要部側断面図である。
【0016】
図1〜3に示すように、床面5上に設置された本実施形態に係る段差解消装置Aは、交差支柱2と交差支柱2に設けた油圧シリンダ1と、台座3と、下座4とにより構成されている。交差支柱2は油圧シリンダ1によりリンク方式に構成されており、台座3を上下動自在に支えている。上下動時には台座3上の荷重は垂直方向のみに加わるため、段差解消装置Aに傾倒モーメントがかかることがない。
【0017】
台座3は水平方向に進退するブリッジ15と、ブリッジ15の後端に取付けられたブリッジ後端ローラ14と、ブリッジ後端ローラ14の上面を支える上側レール13と、台座3のブリッジ15出口近くでブリッジ15下面を支える固定ローラ11を有する構成となっている。
【0018】
また台座3には、ブリッジ15に一点を固定したブリッジ駆動ベルト16と、台座3に固定されブリッジ駆動ベルト16を駆動するベルト駆動モータ17と、台座3に固定されベルト駆動モータ17と対になるベルト従動プーリ18を配置し、これによりブリッジ15は台座3のブリッジ15出口部から水平方向に進退する。
【0019】
また、図5に示すように、台座3のブリッジ15出口部付近のブリッジ進出端直前にブリッジ後端ローラ14が通過する上側レール13下面には、跳ね上げ用カム12を配置してある。
【0020】
ブリッジ15が台座3出口部から水平方向に進出する際、ブリッジ進出端直前でブリッジ後端ローラ14が、跳ね上げ用カム12により下向きに押されることにより、固定ローラ11を支点としてブリッジ15の先端が一時跳ね上がる構造となっている。
【0021】
すなわち、上述した跳ね上げ用カム12、ブリッジ後端ローラ14、及び固定ローラ11は、ブリッジ15が進出する際、その先端が階段の最上段6面とオーバーラップを開始する手前の位置からブリッジ15の先端を持ち上げるカム機構を構成している。また、このカム機構は、ブリッジ15が階段の最上段6面とオーバーラップを開始した後、ブリッジ15の先端を下げ、ブリッジ15の水平方向への後退を阻止するカム機構から成っている。
【0022】
本実施形態は、図4に示すように、ブリッジ15の下面を階段の最上段6面とほぼ合わせた状態でブリッジ15を最上段6面に懸架する際、ブリッジ15の先端が階段の最上段6の直前に到達したとき、ブリッジ後端ローラ14と跳ね上げ用カム12との係合によってブリッジ後端ローラ14が下向きに押される。これにより固定ローラ11を支点としてブリッジ15の先端が持上がり、この状態で進出する。ブリッジ15の先端が最上段6面とオーバーラップした後、ブリッジ後端ローラ14と跳ね上げ用カム12との係合が解かれ、進出完了端位置でブリッジ15が最上段6に当接する。
【0023】
本実施形態によれば、台座3を上下動させた後にブリッジ15を進退させるので、台座3上に車椅子等の積載物が載せられていたとしても、その荷重は台座3の受ける垂直荷重であり、ブリッジ15を進退させる間、傾斜モーメントがかかることがない。なお、ブリッジ15が最上階段6面に懸架された状態で、ブリッジ15に荷重(車椅子や台車など)が作用することがあるが、このときブリッジ15は両持ち梁構成となっており、段差解消装置Aに傾倒モーメントがかかることがない。これによって、この段差解消装置の設置姿勢の安定化を実現できる。
【0024】
また、ブリッジ15の先端が階段の最上段6の直前に到達したときにブリッジ15の先端を持上げているので、ブリッジ15が最上段6の蹴上げ部に衝突することがない。また、ブリッジ15の下面が最上階段6面よりも多少低い位置にあったとしても、ブリッジ15を最上段6面に懸架することができる。このため段差解消装置Aにおいて台座3の高さの調節が容易となるとともに再昇降させることも殆んどない。したがって、ブリッジ15の階段の最上段6面への懸架を容易に行なうことができる。
【0025】
このようなことから本実施形態は、台座3上に車椅子を利用する利用者が乗っている場合には、その利用者に対して安心感を与えることができる。
【0026】
さらに、本実施形態の場合、ブリッジ15の進退時にブリッジ15が後退するためには、ブリッジ15先端を一旦持ち上げ、ブリッジ後端ローラ14が跳ね上げ用カム12を乗り越える必要がある。このため、最上階段6面上からブリッジ15に乗り込む際に水平方向及び下方向の荷重が加えられたとしても容易にブリッジ15が後退してしまうことがなく、ブリッジ15の後退防止構造を特に設ける必要がない。これによって製作費を安くすることができる。
【0027】
図6は本実施形態に備えられる跳ね上げ用カムの別の設置形態を示す要部側断面図である。上述した実施形態では、跳ね上げ用カム12をブリッジ後端ローラ14が通過する上面レール13上に設けてあるが、図6に示すように、固定ローラ11が接するブリッジ15下面に跳ね上げ用カム12を設けても同様の効果を得ることができる。
【0028】
図7は本実施形態に備えられる跳ね上げ用カムの別の例を示す図である。この図7に示すように、跳ね上げ用カム12の長さを延長し、階段の最上段6より手前の任意の位置から固定ローラ11に跳ね上げ用カム12が乗り上げるように構成してもよい、このように構成すると、ブリッジ15の下面を階段の最上段6面とほぼ合わせた状態でブリッジ15を最上段6面に懸架する際、跳ね上げ用カム12と固定ローラ11により、階段の最上段6の直前に限らず任意の位置から、ブリッジ15の先端は持ち上がりながら階段の最上段6に到達し、ブリッジ15の先端が最上段6端部とオーバーラップした後、跳ね上げ用カム12が固定ローラ11を通過し、進出完了端位置でブリッジ15が最上段6に当接する。この構成によれば、段差解消機Aから階段の最上段蹴上げ部までの距離の長短に拘わらず、跳ね上げ用カム12の位置を調整する必要はない。
【0029】
なお、上述した実施形態では、段差解消装置の昇降装置を油圧シリンダ1と交差支柱2によるリンク方式としたが、他の昇降装置を用いても同様の効果を得ることができる。
【0030】
また、ブリッジ15の進退手段にモータ17によるベルト駆動方式を用いたが、他の駆動方式及び手動による駆動手段を備えても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る段差解消装置の一実施形態を示す要部側断面図である。
【図2】本実施形態に備えられる台座の内部構成を示す平面図である。
【図3】本実施形態に備えられる台座の正面断面図である。
【図4】本実施形態の動作を示す説明図である。
【図5】本実施形態に備えられる跳ね上げ用カムを示す要部側断面図である。
【図6】本実施形態に備えられる跳ね上げ用カムの別の設置形態を示す要部側断面図である。
【図7】本実施形態に備えられる跳ね上げ用カムの別の例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
A 段差解消装置
1 油圧シリンダ
2 交差支柱
3 台座
4 下座
5 床
6 最上段
11 固定ローラ(カム機構)
12 跳ね上げ用カム(カム機構)
13 上側レール
14 ブリッジ後端ローラ(カム機構)
15 ブリッジ
16 ブリッジ駆動ベルト
17 ベルト駆動モータ
18 ベルト従動プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段の前に設置されるものであって、昇降手段により上下動する台座と、この台座内に収納され、進退手段により前記台座に対して進退するブリッジとを備え、前記台座を上昇させた後、前記進退手段により前記ブリッジを階段に向かって進出させて前記ブリッジを前記階段の最上段とオーバーラップさせる段差解消装置において、
前記ブリッジが進出する際に、その先端が前記階段の前記最上段とオーバーラップを開始する手前の位置から前記ブリッジの先端を持上げるカム機構を備えたことを特徴とする段差解消装置。
【請求項2】
前記カム機構は、前記ブリッジの先端が前記階段の前記最上段とオーバーラップを開始した後、前記ブリッジの先端を下げ、前記ブリッジの水平方向への後退を阻止するカム機構であることを特徴とする請求項1記載の段差解消装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−302441(P2007−302441A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134186(P2006−134186)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【出願人】(591106118)サイタ工業株式会社 (10)