説明

段差解消部材

【課題】強固に敷鉄板に定着して人等が安全に通行可能で、かつ、複数個を連結することにより様々な幅の敷鉄板に合わせて定着可能な段差解消部材を提供する。
【解決手段】段差解消部材Aは、敷鉄板2の側面2aに密着し、水平断面形状が略L型の磁石4と、敷鉄板2側の端部3bからその反対側の通路側端部3aに向けて厚さが次第に減少する傾斜体3とを備えている。傾斜体3は、敷鉄板側端部3bから通路側端部3aに向けて人や車椅子が通行可能となるように、なだらかな下り勾配のスロープ部を有する。磁石4は、傾斜体3の敷鉄板2側の側面3cを覆うように取り付けられる基部4aと、この敷鉄板2側の側面3cに隣接する面のうち右側の側面3dの一部を覆うように取り付けられる縁部4bとから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通路と敷鉄板との段差を解消するための段差解消部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、敷鉄板の下側に設置され、磁石が部分的に数個埋め込まれた敷幅面を備えた段差を解消するための塩化ビニル製の段差解消部材が開示されている。この構造においては、磁石の磁力で敷鉄板の下面に敷幅面を定着させるとともに、敷鉄板の自重を敷幅面に作用させることにより、段差解消部材が敷鉄板から外れることを防止するものである。
【特許文献1】実用新案登録第3128102号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されている段差解消部材では、敷鉄板の幅の長さは、各設置場所によってまちまちで、すべての敷鉄板の幅に合わせて多量の段差解消部材を製作すると、コストがかかるという問題点があった。
【0004】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、複数個を連結することにより様々な幅の敷鉄板に合わせて設置可能な段差解消部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明の段差解消部材は、通路と敷鉄板との段差を解消するために前記敷鉄板の側面に沿って取り付けられる段差解消部材であって、当該段差解消部材の前記敷鉄板に取り付けられる側の厚さが前記敷鉄板の高さと略同一であり、その反対側に向けて厚さが次第に減少するスロープ部を有する帯状の傾斜体と、水平断面形状が略L型又は略凹型で、前記傾斜体の前記敷鉄板に取り付けられる側の側面と、その側面の水平方向に隣接する面の少なくともいずれかの面とに取り付けられた磁石とを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0006】
本発明による段差解消部材によれば、通路と敷鉄板との段差が解消されるので人や車椅子等の通行が容易になる。
また、磁石は水平断面形状が略L型又は略凹型で、磁石を介して敷鉄板に定着される傾斜体の敷鉄板に取り付けられる側の側面に隣接する面にも磁石の一部が取り付けられる。その磁石の一部と、他の段差解消部材に取り付けられた他の磁石の一部とを磁力にて密着させることにより、複数の段差解消部材を連結することができる。
【0007】
本発明において、前記磁石は、前記傾斜体の前記敷鉄板に取り付けられる側の側面と、その側面の水平方向に隣接する面の少なくともいずれかの面とを跨るように一体に形成してもよい。この構成によれば、磁石は、傾斜体の敷鉄板に取り付けられる側の側面と、その側面とを跨るように一体に形成されているので、傾斜体への脱着が容易となる。
【0008】
本発明において、前記磁石は、前記磁石の下部に、前記敷鉄板側に突出した突出部を備えてもよい。この構成によれば、磁石の下部に突出部を備えているので、突出部を敷鉄板の下面全体に磁力にて突出部を密着させるとともに、磁石の上部を敷鉄板の側面全体に磁力にて密着させることができるので、突出部無しで敷鉄板に定着する場合よりも強固に段差解消部材を敷鉄板に定着することができる。
【0009】
また、本発明において、前記傾斜体は、弾性体としてもよい。この構成によれば、傾斜体はゴム等の弾性体でクッション性を有するので、人や車椅子等は傾斜体上を通行し易い。また、弾性体は紫外線の影響を受けにくいので、ひび割れ等の損傷が生じにくい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の段差解消部材を用いることにより、複数個を連結することにより様々な幅の敷鉄板に合わせて段差解消部材を設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る段差解消部材の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る段差解消部材Aの使用状況を示す図である。
図1に示すように、段差解消部材Aは、通路1と敷鉄板2との段差を解消するために敷鉄板2の側面2aに沿うように取り付けられる。
【0012】
段差解消部材Aは、敷鉄板2の側面2aに密着し、水平断面形状が略L型の磁石4と、敷鉄板2側の端部3bからその反対側の通路側端部3aに向けて厚さが次第に減少する傾斜体3とを備えている。
【0013】
傾斜体3は、敷鉄板側端部3bから通路側端部3aに向けて人や車椅子が通行可能となるように、なだらかな下り勾配のスロープ部を有する。傾斜体3の敷鉄板側端部3bの厚さは、敷鉄板2の側面2aの厚さと同じになるように形成される。
【0014】
図2は、本実施形態に係る段差解消部材Aを示す図である。
図2に示すように、磁石4は、傾斜体3の敷鉄板2側の側面3cを覆うように取り付けられる基部4aと、この敷鉄板2側の側面3cに隣接する面のうち(図2においては)右側の側面3dの一部を覆うように取り付けられる縁部4bとから構成される。磁石4は、傾斜体3にボルト8で取り付けられており、磁石4は傾斜体3に対して着脱可能である。また、基部4aの敷鉄板2側の側面4cは、敷鉄板2の側面2aに密着するように、平らに形成されている。
【0015】
磁石4が磁力にて敷鉄板2の側面2a全体に密着することにより、段差解消部材Aは敷鉄板2に強固に定着される。
【0016】
傾斜体3は、本実施形態においては、人や車椅子で通行する際にクッション性があって通行し易く、かつ、ボルト8を螺合可能な程度の硬さを有する硬質ゴム等の弾性体を用いた。
【0017】
なお、本実施形態においては、傾斜体3の右側の側面3dに磁石4の縁部4bを取り付けたが、これに限定されるものではなく、図3に示すように、傾斜体3の左側の側面3eの一部を覆うように取り付けたり、図4に示すように、傾斜体3の敷鉄板2側の左右両側の側面3d、3eの一部を覆うように取り付けてもよい。以下の説明では、傾斜体3の右側に縁部4bを設けたものを段差解消部材A、傾斜体3の左側に縁部4bを設けたものを段差解消部材A’、傾斜体3の左右両側に縁部4bを設けたものを段差解消部材Bとして示す。
【0018】
また、本実施形態においては、磁石4は、その右側(すなわち、基部4aの右半分及び側面3dに取り付けられる縁部4b)がN極、その左側(すなわち、基部4aの左半分及び側面3eに取り付けられる縁部4b)がS極となるように分極されている。
【0019】
図5は、本実施形態に係る段差解消部材A、A’、Bを複数連結して用いる場合を示す図である。
図5に示すように、敷鉄板2の幅に合わせて複数の段差解消部材A、A’、Bを連結し、この端部には段差解消部材A、A’をそれぞれ設置し、段差解消部材A、A’間には段差解消部材Bを設置する。
【0020】
まず、敷鉄板2の側面2aの左側端部に段差解消部材Aを定着させて、これに隣接するように段差解消部材Bを設置し、磁石4の縁部4b同士を密着して段差解消部材Aと段差解消部材Bとを連結する。段差解消部材Aの縁部4b側はN極で、段差解消部材Bの左側の(すなわち、傾斜体3の左側の側面3eに取り付けられている)縁部4b側はS極なので縁部4b同士は強固に密着する。
【0021】
次に、この段差解消部材Bに隣接するように他の段差解消部材Bを複数連結し、敷鉄板2の側面2aの右側端部付近まで段差解消部材Bを定着する。段差解消部材Bの右側の(すなわち、傾斜体3の右側の側面3dに取り付けられている)縁部4b側はN極で、段差解消部材Bの左側の縁部4b側はS極なので縁部4b同士は強固に密着する。
【0022】
最後に、敷鉄板2の側面2aの右側端部に段差解消部材A’を定着させて、隣接する段差解消部材Bと連結する。段差解消部材Bの右側の縁部4b側はN極で、段差解消部材A’の縁部4b側はS極なので縁部4b同士は強固に密着する。
【0023】
上述したように、段差解消部材A、A’、B同士が互いに強固に密着することによって、敷鉄板2の幅に合った段差解消部材A、A’、Bを構築する。
【0024】
以上説明した本実施形態における段差解消部材A、A’、Bによれば、通路1と敷鉄板2との段差が解消されるので人や車椅子等の通行が容易になる。
【0025】
また、傾斜体3の敷鉄板2側の側面3cを覆うように磁石4の基部4aが取り付けられており、この基部4a全体が敷鉄板2の側面2aに密着するので、強固に段差解消部材A、A’、Bを敷鉄板2に定着することができる。
【0026】
また、磁石4の縁部4bは、傾斜体3の右側の側面3d若しくは左側の側面3e又は左右両側の側面3d、3eに取り付けられているので、磁石4の縁部4b同士を水平方向に密着することにより、複数の段差解消部材A、A’、Bを連結することができる。
【0027】
さらに、段差解消部材A、A’、B同士を水平方向に複数連結することにより、敷鉄板2の幅に最適な長さの段差解消部材A、A’、Bを構築することができる。
【0028】
そして、磁石4は、傾斜体3にボルト8で取り付けられているので、磁石4が劣化した場合には容易に交換することができる。また、傾斜体3が劣化した場合も同様である。
【0029】
次に、本発明における段差解消部材A、A’、Bの異なる実施形態を示す。以下の説明において、第一実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0030】
図6は、本発明の第二実施形態に係る段差解消部材Cを示す概略図である。
図6に示すように、段差解消部材Cは、傾斜体3と、水平断面形状が略L型の磁石6とを備えている。
【0031】
磁石6は、基部4aと、傾斜体3の(図6においては)右側の側面3dに取り付けられる縁部4bと、敷鉄板2側に突出するように基部4aの敷鉄板2側の側面4cの下部に設けられる突出部4dとから構成される。
突出部4dの上面は、敷鉄板2の下面2bに密着するように、平らに形成されている。
【0032】
磁石6の突出部4dの上面全体が磁力にて敷鉄板2の下面2bに密着され、かつ、基部4aの敷鉄板2側の側面4cの上部(つまり、突出部4dが無い部分の側面4c)が磁力にて敷鉄板2の側面2aに密着されることにより、段差解消部材Cは敷鉄板2に強固に定着される。
【0033】
なお、本実施形態においては、傾斜体3の右側の側面3dに磁石6の縁部4bを取り付けたが、これに限定されるものではなく、図7に示すように、傾斜体3の左側の側面3eの一部を覆うように取り付けたり、図8に示すように、傾斜体3の左右両側の側面3d、3eの一部を覆うように取り付けてもよい。以下の説明では、傾斜体3の右側に縁部4bを設けたものを段差解消部材C、傾斜体3の左側に縁部4bを設けたものを段差解消部材C’、傾斜体3の左右両側に縁部4bを設けたものを段差解消部材Dとして示す。
【0034】
また、本実施形態においては、磁石6は、その右側(すなわち、基部4aの右半分、突起部4dの右半分及び側面3dに取り付けられる縁部4b)がN極、その左側(すなわち、基部4aの左半分、突起部4dの左半分及び側面3eに取り付けられる縁部4b)がS極となるように分極されている。
【0035】
図9は、本実施形態に係る段差解消部材C、C’、Dを複数連結して用いる場合を示す図である。
図9に示すように、敷鉄板2の幅に合わせて複数の段差解消部材C、C’、Dを連結し、この端部には段差解消部材C、C’をそれぞれ設置し、段差解消部材C、C’間には段差解消部材Dを設置する。
【0036】
まず、敷鉄板2の側面2aの左側端部に段差解消部材Cを定着させて、これに隣接するように段差解消部材Dを設置し、磁石6の縁部4b同士を密着して段差解消部材Cと段差解消部材Dとを連結する。
【0037】
次に、この段差解消部材Dに隣接するように他の段差解消部材Dを複数連結し、敷鉄板2の側面2aの右側端部付近まで段差解消部材Dを定着する。
【0038】
最後に、敷鉄板2の側面2aの右側端部に段差解消部材C’を定着させて、隣接する段差解消部材Dと連結することによって、敷鉄板2の幅に合った段差解消部材C、C’、Dを構築する。
【0039】
以上説明した本実施形態における段差解消部材C、C’、Dによれば、通路1と敷鉄板2との段差が解消されるので人や車椅子等の通行が容易になる。
【0040】
また、磁石6の下部の突出部4dの上面全体を敷鉄板2の下面2bに密着させるとともに、磁石6の上部を敷鉄板2の側面2aに密着させるので、より強固に段差解消部材C、C’、Dを敷鉄板2に定着することができる。
【0041】
なお、上述した各実施形態において、磁石4、6は、その右側をN極、左側をS極とする場合について説明したが、これに限定されるものではなく、段差解消部材A、A’、B同士や段差解消部材C、C’、D同士が互いに密着可能となるようにN極とS極とが分極されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第一実施形態に係る段差解消部材Aの使用状況を示す図である。
【図2】本実施形態に係る段差解消部材Aを示す図である。
【図3】本実施形態に係る段差解消部材A’を示す図である。
【図4】本実施形態に係る段差解消部材Bを示す図である。
【図5】本実施形態に係る段差解消部材を複数連結して用いる場合を示す図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る段差解消部材Cを示す概略図である。
【図7】本実施形態に係る段差解消部材C’を示す図である。
【図8】本実施形態に係る段差解消部材Dを示す図である。
【図9】本実施形態に係る段差解消部材を複数連結して用いる場合を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
A、A’、B、C、C’、D 段差解消部材
1 通路
2 敷鉄板
2a 敷鉄板の側面
2b 敷鉄板の下面
3 傾斜体
3a 通路側端部
3b 敷鉄板側端部
3c 敷鉄板側の側面
3d 右側の側面
3e 左側の側面
4、6 磁石
4a 基部
4b 縁部
4c 敷鉄板側の側面
4d 突出部
8 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路と敷鉄板との段差を解消するために前記敷鉄板の側面に沿って取り付けられる段差解消部材であって、
当該段差解消部材の前記敷鉄板に取り付けられる側の厚さが前記敷鉄板の高さと略同一であり、その反対側に向けて厚さが次第に減少するスロープ部を有する帯状の傾斜体と、
水平断面形状が略L型又は略凹型で、前記傾斜体の前記敷鉄板に取り付けられる側の側面と、その側面の水平方向に隣接する面の少なくともいずれかの面とに取り付けられた磁石とを備えることを特徴とする段差解消部材。
【請求項2】
前記磁石は、前記傾斜体の前記敷鉄板に取り付けられる側の側面と、その側面の水平方向に隣接する面の少なくともいずれかの面とを跨るように一体に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の段差解消部材。
【請求項3】
前記磁石は、その下部に、前記敷鉄板側に突出した突出部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の段差解消部材。
【請求項4】
前記傾斜体は、弾性体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の段差解消部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−293287(P2009−293287A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148352(P2008−148352)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】