説明

段階的なトランス活性化能を有する転写活性化因子

【課題】その転写能が3桁を超える大きさで変化する転写活性化因子の提供。
【解決手段】当該トランス活性化因子は、DNA結合タンパク質(例えば、Tetリプレッサー)と、単純ヘルペスウイルスのタンパク質16(VP16)に由来する最小の転写活性化ドメインとの融合物である。この最小のVP16ドメイン内のアミノ酸位442における置換変異により、トランス活性化能が変化したトランス活性化因子。さらに、野生型および変異型の両方の最小のVP16ドメインを含むキメラ状の活性化ドメインにより、トランス活性化能が変化したさらなる変化体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写活性化因子融合タンパク質をコードする核酸分子に関する。更に、本発明は、本発明の核酸分子を有するベクター、そのようなベクターが導入された宿主細胞、本発明の核酸分子によってコードされるトランス活性化因子融合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子発現を調節できることは、組換えタンパク質の製造、遺伝子治療、ならびに細胞の発達および分化の分析を含む様々な状況において望ましい。広範囲の遺伝子調節システムが明らかにされているが、そのいくつかは遺伝子発現を構成的な様式で刺激し、またそのいくつかは遺伝子発現を誘導的な様式で刺激する。遺伝子発現を調節することに対する一般的な方法は、特定の標的DNA結合部位に特異性を有するDNA結合ドメインと、転写活性化ドメインとからなる転写活性化因子融合タンパク質(これはまた、本明細書中においては「トランス活性化因子」として示される)を作製することである。目的とする遺伝子の発現を調節するために、遺伝子が標的DNA結合部位に機能的に連結され、次いで、遺伝子と、トランス活性化因子融合タンパク質をコードする発現ベクターとの両方の発現が宿主細胞で同時に行われる。トランス活性化因子融合タンパク質が標的DNA結合部位に結合したときに、目的とする遺伝子の発現が刺激される。
【0003】
構成的な転写活性化因子は、DNA結合ドメインがその標的部位に構成的に(すなわち、DNA結合を調節するための誘導剤を必要とすることなく)結合する場合に作製される。そのような構成的なトランス活性化因子の1つの例は、単純ヘルペスウイルスのビリオンタンパク質16(Triezenberg,S.J.他、(1988)Genes Dev.2:718〜729)のC端領域に連結された酵母GAL4のDNA結合ドメインからなるGAL4−VP16(Sadowski,I.他、(1988)Nature 335:563〜564)である。これに対して、DNA結合ドメインのみが誘導剤の存在下または非存在下でその標的部位に結合する場合に、誘導的な転写活性化因子が作製される。そのような誘導的な転写活性化因子の例は、VP16に連結された細菌のTetリプレッサーからなるTetR−VP16(これは、テトラサイクリンの非存在下でtetO配列に結合するが、テトラサイクリンの存在下ではtetO配列に結合しない)(Gossen,M.およびBujard,H.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89、5547〜5551)、およびVP16に連結された変異型TetリプレッサーからなるrTetR−VP16(これは、テトラサイクリンの存在下でtetO配列に結合するが、テトラサイクリンの非存在下ではtetO配列に結合しない)(Gossen,M.他(1995)Science 268、1766〜1769)である。
【0004】
HSV VP16のC端の転写活性化ドメインは、真核生物細胞におけるその強い転写刺激能のために、トランス活性化因子融合タンパク質の活性化因子成分として頻繁に使用されている。しかし、転写因子の過剰発現により「鎮圧」が生じ得ることが明らかにされている(Gill,G.およびPtashne.M.(1988)Nature 334、721〜724)。これは、転写装置の成分がそのそれぞれの細胞内プールから輸送される結果として理解されている。VP16に関して、これは最も強力なトランス活性化因子の1つとして知られているが、例えば、GAL4との融合タンパク質としてのその過剰発現は、細胞には耐えられないことが明らかにされている(Berger,S.L.他、(1992)Cell 70、251〜265;Kelleher,R.J.他、(1990)Cell 61、1209〜1215)。VP16が、S.cerevisiaeにおけるアダプター/同時活性化因子タンパク質ADA2(Silverman,N.他(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91、11665〜11668)およびそのヒトホモログ(Candau,R.他、(1996)Mol.Cell Biol.16、593〜602)を含む転写装置の様々な必須成分と、TFIIB(Lin,Y.S.他(1991)Nature 353、569〜571)、TFIID(Stringer,K.F.他(1990)Nature 345、783〜786)、TFIIH(Xiao,H.他(1994)Mol.Cell Biol.14、7013〜7024)およびdTAFII40(Goodrich,J.A.他(1993)Cell 75、519〜530)と相互作用することを考慮すれば、これは驚くべきことではない。Gilbertおよび共同研究者(Gilbert,D.M.他(1993)Mol.Cell.Biol.13、462〜472)は、活性化ドメインの細胞内濃度および強度が重要なパラメーターである場合、鎮圧による毒性は量的な問題であることを示す鎮圧と増殖停止との相関を見出した。
【0005】
従って、VP16の強力な転写活性化能は、VP16を、トランス活性化因子融合タンパク質における使用に関して魅力的な成分にするが、いくつかの場合、野生型VP16によって得られる転写活性化能よりも低い転写活性化能を有する融合タンパク質を得ることは望ましいことであり得る。あるいは、他の状況においては、野生型VP16によって得られる転写活性化能よりもさらに大きな転写活性化能を有する融合タンパク質を得ることは望ましいことであり得る。従って、段階的なトランス活性化能を有するさらなるトランス活性化因子融合タンパク質が必要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明により、VP16に由来する最小の活性化ドメインを含有し、そして大きさが少なくとも3桁の範囲に及ぶ段階的なトランス活性化能を有する一群の融合タンパク質のトランス活性化因子が提供される。このようなトランス活性化因子は、細胞において高濃度で許容され、そして遺伝子の発現レベルを非常に精密な様式で調節できるという利点を有する。
【0007】
本発明の1つの局面は、本発明の転写活性化因子融合タンパク質をコードする核酸分子に関する。1つの実施形態において、この核酸分子は、転写を活性化する融合タンパク質、すなわち、転写活性化ドメインを含む第2のポリペプチドに機能的に連結されたDNA結合ドメインを含む第1のポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする。この場合、転写活性化ドメインは、単純ヘルペスウイルスのビリオンタンパク質VP16(HSV VP16)の変異した酸性領域を少なくとも1コピー含み、その変異した酸性領域は、HSV VP16のアミノ酸位436〜447からなり、かつ野生型HSV VP16と比較して、442位におけるアミノ酸置換を有する。HSV VP16の変異した酸性領域は、例えば、配列番号2のアミノ酸配列を有し得る(その配列において、野生型VP16の442位におけるフェニルアラニンはグリシンに変異され、本明細書中ではVP16[G]として示される)。あるいは、HSV VP16の変異した酸性領域は、例えば、配列番号3のアミノ酸配列を有し得る(その配列において、野生型VP16の442位におけるフェニルアラニンはチロシンに変異され、本明細書中ではVP16[Y]として示される)。
【0008】
本発明の他の実施形態において、融合タンパク質の転写活性化ドメインは、VP16の最小活性化ドメインの2コピー以上からなり、その少なくとも1つは、442位に変異を有する。例えば、1つの実施形態において、転写活性化ドメインは、2コピーのVP16[G](配列番号4のアミノ酸配列を有する)を含む。別の実施形態において、転写活性化ドメインは、N端からC端の方向で、1コピーの野生型VP16の最小活性化ドメイン(VP16[F]として示す)と、1コピーのVP16[G](配列番号5のアミノ酸配列を有する)とを含む。さらに別の実施形態において、転写活性化ドメインは、N端からC端の方向で、1コピーのVP16[G]と、1コピーのVP16[F](配列番号6のアミノ酸配列を有する)とを含む。さらに別の実施形態において、転写活性化ドメインは、N端からC端の方向で、1コピーのVP16[F]と、1コピーのVP16[G]と、1コピーのVP16[Y](配列番号7のアミノ酸配列を有する)とを含む。さらに別の実施形態において、転写活性化ドメインは、N端からC端の方向で、1コピーのVP16[G]と、1コピーのVP16[F]と、1コピーのVP16[Y](配列番号8のアミノ酸配列を有する)とを含む。
【0009】
別の実施形態において、本発明の核酸分子は、転写を活性化する融合タンパク質、すなわち、転写活性化ドメインを含む第2のポリペプチドに機能的に連結されたDNA結合ドメインを含む第1のポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする。この場合、転写活性化ドメインは、単純ヘルペスウイルスのビリオンタンパク質16(HSV VP16)の酸性領域の3コピーからなり、その酸性領域は、HSV VP16のアミノ酸位436〜447(配列番号1)からなる。すなわち、この融合タンパク質は、3コピーの野生型VP16[F]の最小活性化ドメインを含有する。
【0010】
さらに別の実施形態において、本発明の核酸分子は、転写を活性化する融合タンパク質、すなわち、転写活性化ドメインを含む第2のポリペプチドに機能的に連結されたDNA結合ドメインを含む第1のポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする。この場合、転写活性化ドメインは、単純ヘルペスウイルスのビリオンタンパク質16(HSV VP16)の酸性領域の4コピーからなり、その酸性領域は、HSV VP16のアミノ酸位436〜447(配列番号1)からなる。すなわち、この融合タンパク質は、4コピーの野生型VP16[F]の最小活性化ドメインを含有する。
【0011】
本発明の核酸分子によってコードされる融合タンパク質の第1のポリペプチドは、本質的には、特定の標的DNA結合部位に対する特異性を有する任意のDNA結合ドメインであり得る。好ましい実施形態において、第1のポリペプチドはTetリプレッサーである。別の好ましい実施形態において、第1のポリペプチドは、テトラサイクリンまたはテトラサイクリンアナログ(類似体)の存在下でtetOオペレーターに結合するが、その非存在下ではtetOオペレーターに結合しない変異したTetリプレッサーである。さらに他の実施形態において、第1のポリペプチドは、GAL4、LexA、LacRまたはステロイドホルモンレセプターである。
【0012】
本発明の核酸分子は、宿主細胞における融合タンパク質の発現を可能にする組換えベクターに組み込むことができる。従って、本発明の他の局面は、本発明の核酸分子を有するベクターおよびそのようなベクターが導入された宿主細胞に関する。本発明のさらに別の実施形態は、本発明の核酸分子によってコードされるトランス活性化因子融合タンパク質に関する。
【0013】
本発明のトランス活性化因子融合タンパク質を使用して遺伝子発現を調節するために、融合タンパク質をコードし、そして融合タンパク質の標的DNA結合部位に機能的に連結された目的とする遺伝子を含有する(または含有するように改変されている)発現ベクターが宿主細胞に導入される。この融合タンパク質を発現させたとき、あるいは適切な誘導剤の存在下または非存在下でこの融合タンパク質を発現させたときに、目的とする遺伝子の発現が刺激される。従って、本発明の融合タンパク質を使用して遺伝子発現を調節する方法もまた本発明の範囲に含まれる。本発明の調節システムを使用して目的とするタンパク質の製造および単離を行うためのプロセスもまた本発明により包含される。
【0014】
本発明の融合タンパク質をコードする核酸もまた、トランスジェニック生物に組み込むことができる(例えば、相同組換えによってゲノム内に無作為に、または所定の位置に組み込むことができる)。従って、そのような生物もまた本発明により包含される。
【0015】
図面の説明
図1は、TetRと、VP16に由来する最小の酸性活性化ドメインとの融合物の概略図である。ドメインのアミノ酸配列を右側に示す:[F](これはまた配列番号1として示される)は、442位にフェニルアラニンを含有するVP16の436位〜447位の間の野生型配列を表す。変異した最小のドメイン[G](これはまた配列番号2として示される)またはドメイン[Y](これはまた配列番号3として示される)において、Phe442は、それぞれ、グリシンまたはチロシンによって置換されている。最小のドメインの様々な組合せをTetRに融合させて、左側に示される一群の融合タンパク質が得られた。
【0016】
図2および図3は、様々なTetR融合物を特徴づける電気泳動移動度シフトアッセイの写真である。10cm培養ディッシュで40%コンフルエンスに増殖させたHeLa細胞を、TetRまたは図1に示す融合タンパク質の1つのいずれかをコードするプラスミドDNAを用いて一過性でトランスフェクションした。36時間後に調製した細胞抽出物を、放射能標識したtetO DNAとともにテトラサイクリンの存在下または非存在下で一緒にした。タンパク質−DNA複合体を電気泳動的に分離し、リン光画像化装置を使用して検出した。図2は、TetR−[F]融合物の移動度シフトである。図3は、TetRドメインと、[F]ドメイン、[G]ドメインおよび[Y]ドメインとの間の融合物の移動度シフトである。モックトランスフェクション細胞は、tTAをコードする挿入物を有さないベクターDNAを含有した。
【0017】
図4Aおよび図4Bは、トランス活性化因子の細胞内濃度を比較する電気泳動移動度シフトアッセイの写真である。様々なトランス活性化因子を安定的に発現する細胞から調節したタンパク質抽出物を、放射能標識したtetオペレーターDNAとともに電気泳動移動度シフトアッセイに供した。タンパク質およびDNAをテトラサイクリンの存在下(+Tc)または非存在下で混合し、その後、比較できるほどの量をポリアクリルアミドゲルに負荷した。図4Aは、PhCMvの制御下で、それぞれ、tTA、tTA2、tTA3またはtTA4をコードするDNAを用いて安定的にトランスフェクションしたHeLa細胞集団から得られた抽出物を示す。図4Bは、tTAまたはtTA3を産生するそれぞれのクローンの分析を示す。図4BにおけるtTAのレーンに関して、レーン1はX1/5細胞から得られた抽出物を示し;レーン2は、表2のX1/6−tTA細胞株の抽出物を示し;レーン3は、tTAでトランスフェクションされた図4Aに示すHeLa細胞の集団から選択されたクローンの抽出物を示す。図4BにおけるtTA3のレーンに関して、レーン1およびレーン2は、表2のtTA3産生細胞株の抽出物を示し;レーン3は、tTA3を産生する図4Aに示すHeLa細胞集団から選択されたクローンの抽出物を示す。(*)は、シグナルの定量のために使用したマーカーを示す。
【0018】
発明の詳細な説明
下記の節において、段階的な転写活性化能を有する本発明のトランス活性化因子融合タンパク質は、VP16に由来する活性化ドメインを使用するシステムの代表的な例として、テトラサイクリンによって制御される転写活性化システムに関連して主に記載される。しかし、当業者により理解されているように、VP16に由来する本発明の新規な活性化ドメインは、本発明のtetシステムに関して本明細書中に記載されている同じ手順を適用することによって、他のDNA結合ドメインと組み合わせて使用することができる。十分に特徴づけられたDNA結合特異性を有し、そしてキメラ状のトランス活性化因子融合タンパク質において以前に使用された他のDNA結合ドメイン/タンパク質の非限定的な例には、GAL4(例えば、Sadowski,I.他(1988)Nature 335:563〜564を参照のこと)、LexA(例えば、Brent,R.およびPtashne,M.(1985)Cell 43、729〜36を参照のこと)、LacR(例えば、Labow他、(1990)Mol.Cell.Biol.10:3343〜3356;Baim他、(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5072〜5076を参照のこと)、およびステロイドホルモンレセプター(Ellliston,J.F.他(1990)J.Biol.Chem.265、11517〜11521)が含まれる。さらに、本発明の成分および方法は、Wang Y.他(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 9:8180〜8184に記載されている調節システムに適用することができる。このシステムは、GAL4、ホルモンレセプターおよびVP16の融合物を利用する。
【0019】
テトラサイクリンによって制御される転写活性化システムは、以前に記載されている(Gossen,M.およびBujard,H.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:5547〜5551)。このシステムは、哺乳動物細胞(Resnitzky,D.他(1994)Mol.Cell.Biol.14、1669〜1679)および植物細胞(Weinmann,P.他(1994)Plant J.5、559〜569)および酵母細胞を含む様々な真核生物細胞の効率的な遺伝子スイッチとして機能する。このシステムはまた、植物(Weinmann,P.他(1994)Plant J.5、559〜569)、マウス(Kistner,A.他(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93、10933〜10938)およびショウジョウバエにおいて示されているような生物のレベルにおける遺伝子活性の効果的な調節を可能にする。
【0020】
このtetシステムの重要な成分の1つは、テトラサイクリンにより制御されるトランス活性化因子(tTA)、すなわち、E.coliの(tn10)テトラサイクリン耐性オペロンリプレッサーと、転写を活性化し得るドメイン(Triezenberg,S.J.他(1988)Genes Dev 2、718〜729)を含有するVP16のC端部分との融合タンパク質である。エフェクターであるテトラサイクリン(Tc)の非存在下において、tTAは、適切に操作された最小のプロモーターからの転写を、上流に配置された一連のtetオペレーター(tetO)配列に結合することにより活性化する。Tcの存在下では、tTAは、その標的に結合することが妨げられ、従って、転写が停止させられる。
【0021】
TetRの変異体を使用すると、復帰表現型を有するトランス活性化因子(rtTA)が作製される。これは、tTAと比較した場合、逆の様式で機能する:このトランス活性化因子は、そのオペレーターに結合するためにドキシサイクリン(Dox)またはアンヒドロテトラサイクリン(ATc)のようなTc誘導体を必要とし、従って、そのようなエフェクターの存在下でのみ転写を活性化するが、その非存在下では転写を活性化しない。このようなシステムは、本明細書中では「逆tetシステム」として示され、この逆トランス活性化因子は「rtTA」と略記される。rtTAによる転写調節は、哺乳動物細胞(Gossen,M.他(1995)Science 268、1766〜1769)およびマウス(Kistner,A.他(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93、10933〜10938)において明らかにされている。
【0022】
tetシステムおよび逆tetシステムに関しては、米国特許第5,464,758号、米国特許第5,589,362号、国際特許公開PCT WO94/29442、国際特許公開PCT WO96/01313および国際特許公開PCT WO96/40892においてさらに詳しく記載されている。
【0023】
その広範な適用にもかかわらず、tet調節システムおよび逆tet調節システムは、特定の実験的な必要条件を満たすためになおさらに発展させることができる。VP16の活性化ドメインの使用は、いくつかの状況においては「鎮圧」(背景を参照のこと)を伴うが、本発明者らは、tTAおよびrtTAが、それにもかかわらず、非常に多くのシステムにおいて十分に機能することが明らかにされたという事実は、Tetリプレッサー/オペレーターの相互作用の異常な特異性に起因すると考える(Kleinschmidt,C.他(1988)Biochemistry 27、1094〜1104)。このような特異性によって、トランス活性化因子によるtetO配列の高い占有がtTA/rtTAの低い細胞内濃度において可能になる。次いで、tTA/rtTAの発現ユニットが染色体に無作為に組み込まれることによって、tTA/rtTAの合成が十分な活性化には十分に高く、鎮圧による有害作用の防止には十分に低いときに、組み込み部位のスクリーニングが可能になる。例えば、本発明者らは、本発明者らのHeLaX1細胞株におけるtTAの濃度を約4000分子/細胞であると推定する(Gossen,M.(1993)Ph.D.論文、ハイデルベルグ大学)。これは、基礎的な転写因子のプールに重大な影響を及ぼすには全く不十分であり、しかし、それにもかかわらず、染色体に組み込まれたtTA応答性プロモーターを105倍以上活性化することができる。多数の他の細胞株と同様に、この細胞株ならびにtTAおよびrtTAを産生するいくつかのマウス株は、本発明者らの実験室において数年間にわたり申し分がないほど安定している。このことは、トランス活性化因子のそれぞれの細胞内濃度が「生理学的な枠」内におさまっていることを示している。
【0024】
しかし、トランス活性化因子の適切な細胞内濃度に関してスクリーニングまたは選抜が不可能な実験的取り組みがある。例えば、トランスジェニック生物において遺伝子を細胞タイプ特異的に調節するために、相同組換えによって、tTA/rtTA遺伝子を、目的とする遺伝子の発現を導くプロモーターの制御下に置くことは興味深いと考えられる。組換えのために使用されるベクターが適切に設計されている場合、組換え事象は、同時に、標的遺伝子を不活性化する;tTA/rtTA応答性プロモーターにより制御されるそのコード配列は独立して提供され得る。そのような実験的な「ノックイン/ノックオウト」法は、tTA/rtTAの細胞タイプ特異的な発現を可能にし、従って、目的とする遺伝子の特異的なTc制御による同等な調節が可能になる。トランス活性化因子の効果的な細胞内濃度は、主として、特定の遺伝子座の転写活性の関数であり、これは予想することも、制御することもできないようなパラメーターである。このような限界を解決する1つの方法は、トランス活性化因子の活性化能を特定の遺伝子座の発現レベルに適合させることである。
【0025】
次に、本発明者らは、一連の新規なTc制御のトランス活性化因子を説明する。このトランス活性化因子は、VP16に由来する最小の活性化ドメインを含有し、3桁を超える範囲の大きさを有する段階的なトランス活性化能を有する。このようなトランス活性化因子は、より高い濃度で細胞において寛容であり、従って、上記の実験方法に適すると考えられる。
【0026】
実施例に記載されている転写トランス活性化因子は、Tetリプレッサーと、VP16の「酸性活性化ドメイン」を含む12アミノ酸のセグメントに由来する最小の活性化ドメインとの融合物である。この12アミノ酸のセグメントは、VP16のアミノ酸位436〜447に広がっている。本発明のいくつかの実施形態において、転写活性化因子融合タンパク質は、この領域を3コピーまたは4コピー含有する。この領域を3コピー含有する融合タンパク質は、TetR−VP16(すなわち、VP16の約127個のC端アミノ酸に融合したTetR)の約100%の転写活性化能を有する。この領域を4コピー含有する融合タンパク質は、TetR−VP16の約230%の転写活性化能を有する。
【0027】
VP16の酸性活性化ドメインの変異分析により、442位のフェニルアラニンが機能に重要であることが明らかにされた(Regier,J.L.他(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90、883〜887)。TypまたはTrpのような芳香族アミノ酸による置換、あるいはLeu、IleまたはAlaなどの疎水性アミノ酸による置換が行われた場合、短縮型VP16の活性化能は、それぞれ、約3分の1あるいは10分の1に低下した。他のすべての置換は、さらに大きな活性の低下が生じた。実施例に記載されているように、VP16の変異した酸性ドメインを含むトランス活性化因子融合タンパク質により、段階的なトランス活性化能を有する一連の融合タンパク質が得られる。本発明の1つの実施形態において、トランス活性化因子融合タンパク質は、442位におけるフェニルアラニンが変異したアミノ酸位436〜447を少なくとも1コピー含有する。1つの実施形態において、442位のフェニルアラニンはグリシンに変更されている。別の実施形態において、442位のフェニルアラニンはチロシンに変更されている。さらに他の実施形態において、442位のフェニルアラニンは、トリプトファン、ロイシン、イソロイシンまたはアラニンに変更されている。野生型および変異型の酸性領域の様々な組合せもまた本発明により包含される。そのような例には、VP16[G][G](配列番号4)、VP16[F][G](配列番号5)、VP16[G][F](配列番号6)、VP16[F][G][Y](配列番号7)およびVP16[G][F][Y](配列番号8)(これらにおいて、括弧内の文字は442位のアミノ酸を標準的な1文字表記で示す)が含まれる。
【0028】
野生型ならびに変異型の配列を使用するこれらの最小のドメインをいくつか組み合わせることによって、一連のトランス活性化因子(tTA1〜tTA7、表1)が得られた。これらは、その活性化能が、3桁を超える大きさで変化し、それによって、tTA1は、前記のtTAの活性化強度を2.3倍にする。この新規なトランス活性化因子は、細胞の転写因子と相互作用することが知られている部位が多数除去されているという事実にもかかわらず、前記のtTA応答性プロモーターPhCMV★-1を活性化する(Gossen,M.およびBujard,H.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89、5547〜5551)。従って、VP16と比較した場合、tTA1〜tTA7は、Oct−1(Hayes,S.およびO′Hare,P.(1993)J.Virol.67、852〜862)および宿主細胞の因子であるHCF(Wu,T.J.他(1994)Mol.Cell.Biol.14、3484〜3493)と接触する部位を欠失している:この両者は、Oct−1、HCF、VP16およびDNAを含むC1複合体を形成するために必要である(Hayes,S.およびO′Hare,P.(1993)J.Virol.67、852〜862)。同様に、TAFII40(Goodrich,J.A.他(1993)Cell 75、519〜530)およびADA2(Silverman,N.他(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91、11665〜11668)と接触することが知られているVP16の第2のC端の酸性活性化ドメインの欠失は、新規のトランス活性化因子とそのような因子との相互作用をさらに低下させることが予想される。従って、本発明者らは、これらのtTAタンパク質は、その鎮圧能を低下させる一方で、特異性を獲得していると考える。このような考えは、tTA2が、HeLa細胞において、元のTetR−VP16融合物(tTA)よりも3倍大きな濃度で寛容であるが、この2つのトランス活性化因子は同じ活性化能(表1)を有するという発見によって支持される。従って、発現をより低いレベルに限定するVP16のエレメントが除かれていることが考えられる。tTA2、tTA3およびtTA4の細胞内濃度を比較した場合、それぞれの活性化能と逆の相関が明らかにされる。従って、異なる強度の発現シグナルに対してトランス活性化能を調節するために、本明細書中に記載されている一連のトランス活性化因子を使用することができると考えられる。
【0029】
酸性ドメインを本明細書中に記載されているDNA結合タンパク質に融合させることによって、分子の負電荷が大きくなり、従って、DNAに対するその親和性を変化させることができる。しかし、本明細書中に示されているDNA遅延実験により、様々な結合定数の小さな違いはこのアッセイにより明らかにされていないが、すべてのTet融合物が、比較できる効率でtetO配列に結合することが明らかにされている。
【0030】
1個の[F]ドメインをTetRに融合することによって、転写を活性化しないタンパク質が得られた。もう1つの最小の活性化ドメインをTetR−Fに融合して、TetR−FF(tTA3)を得ることによって、tTAの約40%の活性に達するトランス活性化因子が得られる。[F]ドメインをtTA3にさらに付加すると、活性化能は、tTA2およびtTA1に関して明らかなように、ドメインあたり、約2.5倍増大した。
【0031】
TetR−FをTetR−GF(tTA6)と比較することにより、TetR−[G][G]が効果的でないために、それ自身は転写不活性である[G]ドメインを付加することは、機能的なトランス活性化因子であるtTA6を作製するためには十分であることが示される。2つの最小ドメインの並びが逆になっているトランス活性化因子のTetR−FG(TA7)は、tTA6よりも活性が小さい。これは、立体的な要因が活性化ドメインの機能的な配置に寄与していることを示す。それにもかかわらず、tTA7は測定可能な活性を有するので、本発明者らは、[G]ドメインの負電荷もまた転写活性に寄与していると結論しなければならない。tTA6およびtTA7は、事実、非常に弱いトランス活性化因子である。グリシンをフェニルアラニンに単に交換することによって、得られるトランス活性化因子(tTA3)の活性化能は、(tTA6の)約60倍に増大するか、あるいは(tTA7の)1000倍以上にさえ増大する。このことから、本発明者らは、本発明者らのシステムにおいては、相乗的に作用する少なくとも2つの最小の活性化モジュールが、転写の効率的な刺激には必要であると結論する。tTA5およびtTA4の活性化特性は、さらにまた、それぞれの最小ドメインの組合せによって生じる立体的で相乗的な作用により説明することができる。従って、[Y]ドメインをtTA6およびtTA7の両者に付加することによって、活性化能は20倍増大する。
【0032】
本明細書中に記載されている一連のTc制御のトランス活性化因子により、多数の利点が得られる。第1に、トランス活性化因子の能力を、与えられたプロモーターの強度に適合させることができる。これにより、相同組換えを介してtTAのコード配列を細胞プロモーターの制御下に置くことによって、トランスジェニック生物において細胞タイプに限定されたTc制御の調節を達成するための新しい可能性が開かれる。標的化されたプロモーターの強度、またはそのような遺伝子座から生じる細胞内のtTA濃度はいずれも、容易に予測することができないので、強度が異なるトランス活性化因子を選択することによって、適切なプロモーター/トランス活性化因子の組合せを見出すためのさらなる自由度が得られる。第2は、その増大した特異性およびその低下した鎮圧能のために、新しいtTA類は、tTAを適正な量で構成的に産生する細胞株およびトランスジェニック動物の作製を容易にし得る。第3は、元のtTAの活性化ドメインの大きさを小さくすることによって、細胞性免疫応答を誘発し得る可能性を有する数多くの配列モチーフが除去された。従って、本明細書中の特徴を有するトランス活性化因子は、細胞性免疫応答との競合が予想される場合には常に好ましい因子であり得る。しかし、そのような応答は、マウスモデルにおいてtTA/rtTAに関してこれまで認められていない。最後に、大きさが小さい新しいトランス活性化因子は、外部配列の収容能が限定されたベクターシステムへの組み込みが考えられる場合には有利であり得る。
【0033】
本発明のさらなる局面を下記においてさらに詳しく記載する。
【0034】
I.転写活性化因子融合タンパク質
本発明の1つの局面は、融合タンパク質および融合タンパク質をコードする核酸(例えば、DNA)に関する。用語「融合タンパク質」は、典型的には異なる供給源に由来し、機能的に連結された少なくとも2つのポリペプチドを表すことを目的とする。ポリペプチドに関して、用語「機能的に連結された」は、2つのポリペプチドが、それぞれのポリペプチドがその意図された機能を示すことができるような様式で連結されていることを意味するものとする。典型的には、2つのポリペプチドは、ペプチド結合を介して共有結合している。融合タンパク質は、好ましくは、標準的な組換えDNA技術により製造される。例えば、第1のポリペプチドをコードするDNA分子は、第2のポリペプチドをコードする別のDNA分子に連結され、そして得られたハイブリッドDNA分子を宿主細胞で発現させて、融合タンパク質が製造される。DNA分子は、連結後において、コードされているポリペプチドの翻訳フレームが変化しないように5′から3′の方向で互いに連結される(すなわち、DNA分子は読み枠を合わせて互いに連結される)。
【0035】
本発明のトランス活性化因子融合タンパク質は、部分的には、DNAに結合する第1のポリペプチド(すなわち、DNA結合ドメインを含む第1のポリペプチド)からなる。好ましいDNA結合ドメインには、Tetリプレッサー、およびテトラサイクリン(Tc)またはそのアナログの存在下でtetオペレーター配列に結合するが、その非存在下ではtetオペレーター配列に結合しない変異したTetリプレッサーが含まれる。(tTAを作製するための)VP16に対するTetRの融合物、および(rtTAを作製するための)VP16に対する変異TetRの融合物を作製するための組成物および方法は、米国特許第5,464,758号、米国特許第5,589,362号、国際特許公開PCT WO94/29442、国際特許公開PCT WO96/01313、および国際特許公開PCT WO96/40892に記載されている。これらの組成物および方法は、例示において提供されているような標準的な分子生物学の技術および指針を使用して本発明の融合物を作製するために適用することができる。他の適切なDNA結合ドメインには、GAL4、LexA、LacRおよびホルモンレセプターが含まれ、これらもまた、標準的な組換えDNA技術を使用して、VP16に由来する本発明の最小の活性化ドメインに融合させることができる。
【0036】
トランス活性化因子融合タンパク質の第1のポリペプチドは、VP16の最小の活性化ドメインに由来する第2のポリペプチドに機能的に連結される。第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを機能的に連結するために、典型的には、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が、読み枠を合わせて互いに連結され、融合タンパク質をコードするキメラ遺伝子が作製される。しかし、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、それぞれのポリペプチドの機能が保持される他の手段(例えば、化学的な架橋)により機能的に連結することができる。VP16に由来する本発明の最小の活性化ドメインを、実施例においてさらに詳しく示す。
【0037】
II.トランス活性化因子融合タンパク質の発現
A.発現ベクター
トランス活性化因子融合タンパク質をコードする本発明の核酸は、上記のように、宿主細胞における融合タンパク質の発現に適切な形態で組換え発現ベクターに組み込むことができる。用語「宿主細胞における融合タンパク質の発現に適切な形態で」は、組換え発現ベクターが、核酸のmRNAへの転写およびmRNAの融合タンパク質への翻訳を可能にする方法で融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結された1つまたは複数の調節配列を含むことを意味するものとする。用語「調節配列」はこの分野で認識されており、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むものとする。そのような調節配列は、当業者に知られており、GoeddelのGene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA(1990)に記載されている。発現ベクターの設計は、トランスフェクションされ得る宿主細胞の選択および/または発現され得る融合タンパク質の量のような要因に依存し得ることを理解しなければならない。
【0038】
哺乳動物細胞において使用される場合、組換え発現ベクターの制御機能は、ウイルスの遺伝物質によって提供されることが多い。例えば、一般的に使用されているプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40から得られている。融合タンパク質を発現させるためにウイルスの調節エレメントを使用することにより、様々な宿主細胞において融合タンパク質を高レベルで構成的に発現させることができる。好ましい組換え発現ベクターにおいて、融合タンパク質をコードする配列は、ヒトサイトメガロウイルスのIEプロモーターが上流(すなわち、5′)に隣接し、そして下流(すなわち、3′)にはSV40ポリ(A)シグナルが隣接している。例えば、実施例1に記載されている発現ベクターに類似する発現ベクターを使用することができる。ヒトサイトメガロウイルスのIEプロモーターは、Boshart他(1995)Cell 41:521〜530に記載されている。使用することができる他の遍在的に発現するプロモーターには、HSV−Tkプロモーター(これは、McKnight他(1984)Cell 37:253〜262に開示されている)およびβ−アクチンプロモーター(例えば、Ng他(1985)Mol.Cell.Biol.5:2720〜2732によって記載されているヒトβ−アクチンプロモーター)が含まれる。
【0039】
あるいは、組換え発現ベクターの調節配列は、特定の細胞タイプにおいて、優先的に融合タンパク質の発現を誘導することができる:すなわち、組織特異的な調節エレメントを使用することができる。使用することができる組織特異的なプロモーターの非限定的な例には、下記のプロモーターが含まれる:アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkert他(1987)Genes Dev.1:268〜277)、リンパ系に特異的なプロモーター(CalameおよびEaton(1988)Adv.Immunol.43:235〜275)、特にT細胞レセプターのプロモーター(WinotoおよびBaltimore(1989)EMBO J.8:729〜733)および免疫グロブリンのプロモーター(Banerji他(1983)Cell 33:729〜740;QueenおよびBaltimore(1983)Cell 33:741〜748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、神経フィラメントプロモーター;ByrneおよびRuddle(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473〜5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund他(1985)Science 230:912〜916)、ならびに乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州特許出願公開第264,166号)。発達段階で調節されるプロモーターもまた含まれる:例えば、ネズミ類のhoxプロモーター(KesselおよびGruss(1990)Science 249:374〜379)およびα−フェトプロテインプロモーター(CampesおよびTilghman(1989)Genes Dev.3:537〜546)。
【0040】
あるいは、トランス活性化因子融合タンパク質をコードする自己調節性構築物を作製することができる。このような構築物を作製するために、融合タンパク質をコードする核酸は、融合タンパク質のDNA結合ドメインが結合するDNA結合部位を含む調節配列に機能的に連結される。例えば、tetシステムに関して、tTAまたはrtTAをコードする配列は、最小のプロモーター配列および少なくとも1つのtetオペレーター配列に機能的に連結され得る。
【0041】
1つの実施形態において、本発明の組換え発現ベクターはプラスミドである。あるいは、本発明の組換え発現ベクターは、ウイルスの核酸内に導入された核酸の発現を可能にするウイルスまたはその一部であり得る。例えば、複製が不完全なレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルスを使用することができる。組換えレトロウイルスの作製およびそのようなウイルスによるインビトロまたはインビボでの細胞への感染に関するプロトコルは、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel,F.M.他(編)、Greene Publishing Associates(1989)、9.10節〜9.14節)および他の標準的な実験室マニュアルに見出すことができる。適切なレトロウイルスの例には、当業者によく知られているpLJ、pZIP、pWEおよびpEWが含まれる。適切なパッキングウイルス株の例には、ψCrip、ψCre、ψ2およびψAmが含まれる。アデノウイルスのゲノムは、トランス活性化因子融合タンパク質をコードして発現するが、正常な溶解性ウイルスの生活環におけるその複製能に関して不活性化されているように操作することができる。例えば、Berkner他(1988)BioTechniques 6:616;Rosenfeld他(1991)Science 252:431〜434;およびRosenfeld他(1992)Cell 68:143〜155を参照のこと。アデノウイルスAd株5型dl324およびアデノウイルスの他の株(例えば、Ad2、Ad3、Ad7など)に由来する適切なアデノウイルスベクターが当業者に知られている。あるいは、Tratschin他(1985)Mol.Cell.Biol.5:3251〜3260に記載されているウイルスベクターなどのアデノ関連ウイルスベクターを使用して、トランス活性化因子融合タンパク質を発現させることができる。
【0042】
B.宿主細胞
本発明の融合タンパク質は、融合タンパク質をコードする核酸で、宿主細胞における融合タンパク質の発現に適切な形態にある核酸を宿主細胞に導入することにより真核生物細胞において発現する。例えば、融合タンパク質をコードする本発明の組換え発現ベクターが、宿主細胞に導入される。あるいは、調節配列(例えば、プロモーター配列)に機能的に連結された融合タンパク質をコードするが、さらなるベクター配列を有さない核酸を宿主細胞に導入することができる。本明細書中で使用されている用語「宿主細胞」には、細胞または細胞株が、発現され得るタンパク質、選択される選抜システムまたは用いられる発酵システムと不適合性でない限り、任意の真核生物の細胞または細胞株が含まれるものとする。使用することができる哺乳動物細胞株の非限定的な例には、CHOdhfr-細胞(UrlaubおよびChasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216〜4220)、293細胞(Graham他(1977)J.Gen.Virol.36:59頁)、あるいはSP2またはNS0のようなミエローマ細胞(GalfreおよびMilstein(1981)Meth.Enzymol.73(B):3〜46)が含まれる。
【0043】
細胞株に加えて、本発明は、遺伝子治療目的のために改変され得る細胞などの正常な細胞、あるいはトランスジェニック動物または相同組換え動物を作製するために改変される胚細胞に適用することができる。遺伝子治療目的のために特に注目されている細胞タイプの例には、造血幹細胞、筋芽細胞、肝細胞、リンパ球、神経細胞ならびに皮膚上皮細胞および気道上皮細胞が含まれる。さらに、トランスジェニック動物または相同組換え動物に関して、胚幹細胞および受精卵母細胞を、トランス活性化因子融合タンパク質をコードする核酸を含有するように改変することができる。さらに、植物細胞を、トランスジェニック植物を作製するために改変することができる。
【0044】
本発明は広範囲に適用することができ、そして哺乳動物以外の真核生物細胞も同様に包含する。このような細胞には、昆虫細胞(例えば、Sp.frugiperda)、酵母(例えば、S.cerevisiae、S.pombe、P.pastoris、K.lactis、H.polymorpha;これらはFleer,R.(1992)Current Opinion in Biotechnology 3(5):486〜496により概説されている)、カビおよび植物細胞が含まれる。酵母S.cerivisaeにおける発現用ベクターの例には、pYepSec1(Baldari他(1987)Embo J.6:229〜234)、pMFa(KurjanおよびHerskowitz(1982)Cell 30:933〜943)、pJRY88(Schultz他(1987)Gene 54:113〜123)、およびpYES2(Invitrogen Corporation、San Diego、CA)が含まれる。融合タンパク質は、バキュロウイルス発現ベクター(例えば、O′Reilly他(1982)Baculovirus Expression Vectors:A Laboratory Manual、Stockton Pressに記載されているようなベクター)を使用して昆虫細胞で発現させることができる。培養された昆虫細胞(例えば、SF9細胞)におおてタンパク質を発現させるために入手可能なバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(Smith他(1983)Mol.Cell.Biol.3:2156〜2165)およびpVLシリーズ(Lucklow,V.A.およびSummers,M.D.(1989)Virology 170:31〜39)が含まれる。
【0045】
C.宿主細胞への核酸の導入
融合タンパク質をコードする核酸は、真核生物細胞のトランスフェクションに関する標準的な技術により宿主細胞に導入することができる。用語「トランスフェクションする」または「トランスフェクション」は、宿主細胞に核酸を導入することに関するすべての従来技術を包含するものとする。これには、リン酸カルシウム共沈澱、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクチン、エレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションが含まれる。宿主細胞のトランスフェクションに関する適切な方法は、Sambrook他(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))および他の実験室書籍において見出すことができる。
【0046】
本発明の核酸で形質転換される宿主細胞の数は、少なくとも一部は、使用される組換え発現ベクターのタイプおよび使用されるトランスフェクション技術のタイプに依存する。核酸は、一時的に宿主細胞に導入することができる。あるいはより典型的には、遺伝子発現を長期間調節するために、核酸は、宿主細胞のゲノムに安定的に組み込まれるか、または安定なエピソームとして宿主細胞内に残留する。哺乳動物細胞に導入されるプラスミドベクターは、典型的には、低い頻度でしか宿主細胞のDNAに組み込まれない。このような組込み体を同定するためには、選択マーカー(例えば、薬物耐性)を含有する遺伝子が、一般には、目的とする遺伝子とともに宿主細胞に導入される。好ましい選択マーカーには、G418およびハイグロマイシンなどのいくつかの薬物に対する耐性を付与する遺伝子が含まれる。選択マーカーは、目的とする核酸とは別個のプラスミドで導入することができ、あるいは同じプラスミドで導入される。本発明の核酸(例えば、組換え発現ベクター)および選択マーカー遺伝子でトランスフェクションされた宿主細胞は、選択マーカーを使用する細胞選抜によって同定することができる。例えば、選択マーカーがネオマイシン耐性を付与する遺伝子をコードする場合、核酸を取り込んだ宿主細胞を、G418を用いて選抜することができる。選択マーカー遺伝子が組み込まれた細胞は生存するが、それ以外の細胞は死滅する。
【0047】
本発明の融合タンパク質をコードする核酸でトランスフェクションされた宿主細胞は、融合タンパク質の標的として役に立つ1つまたは複数の核酸でさらにトランスフェクションすることができる。例えば、tetシステムに関して、標的核酸は、少なくとも1つのtetオペレーター配列に機能的に連結された転写され得るヌクレオチド配列を含む。
【0048】
本発明の融合タンパク質をコードする核酸は、従来のトランスフェクション技術(例えば、リン酸カルシウム沈澱、DEAE−デキストラントランスフェクション、エレクトロポレーションなど)によって、インビトロの培養で増殖中の真核生物細胞に導入することができる。核酸はまた、例えば、核酸をインビボで細胞に導入するために適する送達機構を適用することによってインビボで細胞に移すことができる。例えば、レトロウイルスベクター(例えば、Ferry,N.他(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8377〜8381;およびKay,M.A.他(1992)Human Gene Therapy 3:641〜647を参照のこと)、アデノウイルスベクター(例えば、Rosenfeld,M.A.(1992)Cell 68:143〜155;およびHerz,J.およびGerard,R.D.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2812〜2816を参照のこと)、レセプター媒介DNA取り込み(例えば、Wu,G.およびWu,C.H.(1988)J.Biol.Chem.263:14621;Wilson他(1992)J.Biol.Chem.267:963〜967;および米国特許第5,166,320号を参照のこと)、直接的なDNA注入(例えば、Acsadi他(1991)Nature 332:815〜818;およびWolff他(1990)Science 247:1465〜1468を参照のこと)、またはパーティクルボンバードメント(例えば、Cheng,L.他(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:4455〜4459;およびZelenin,A.V.他(1993)FEBS Letters 315:29〜32を参照のこと)などによる。従って、遺伝子治療目的のために、細胞をインビトロで改変して被験者に投与することができ、あるいは細胞をインビボで直接改変することができる。
【0049】
D.トランスジェニック生物
トランス活性化因子融合タンパク質をコードする核酸は、本発明の融合タンパク質が1つまたは複数の細胞タイプで発現するトランスジェニック動物を作製するために、ヒト以外の動物の受精した卵母細胞に入れることができる。トランスジェニック動物は、出生前の段階(例えば、胚の段階)で動物または動物の祖先に導入されているトランスジーンを含有する細胞を有する動物である。トランスジーンは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれ、そして成熟した動物のゲノムに残留し、それによって、コードされた遺伝子産物の発現をトランスジェニック動物の1つまたは複数の細胞タイプまたは組織でもたらすDNAである。1つの実施形態において、ヒト以外の動物はマウスであるが、本発明はマウスに限定されない。他の実施形態において、トランスジェニック動物は、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシまたは他の家畜である。そのようなトランスジェニック動物は、タンパク質の大規模な生産(いわゆる、「遺伝子農場」)に有用である。
【0050】
トランスジェニック動物は、例えば、融合タンパク質をコードする核酸(典型的には、構成的または組織特異的なエンハンサーなどの適切な調節エレメントに連結された核酸)を、受精した卵母細胞の雄性前核に、例えば、マイクロインジェクションによって導入し、そしてその卵母細胞を偽妊娠の雌性里親動物で発育させることにより作製することができる。イントロン配列およびポリアデニル化シグナルもまた、トランスジーンの発現効率を増大させるためにトランスジーンに含めることができる。トランスジェニック動物、特に、マウスなどの動物を作製するための方法は、この分野で一般的になってきており、例えば、米国特許第4,736,866号および同第4,870,009号ならびにHogan,B.他(1986)A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、New York、Cold Spring Harbor Laboratoryに記載されている。トランスジェニック始祖動物は、トランスジーンを有するさらなる動物を繁殖させるために使用することができる。本発明の融合タンパク質をコードするトランスジーンを有するトランスジェニック動物は、トランス活性化因子融合タンパク質が結合する標的DNA部位に機能的に連結された目的の遺伝子を含むトランスジーンを有する他のトランスジェニック動物とさらに交配させることができる。例えば、tetシステムに関して、tTAトランスジェニック動物またはrtTAトランスジェニック動物は、tetオペレーター配列に機能的に連結された遺伝子を含有するトランスジェニック動物と交配させることができる。
【0051】
トランスジェニック動物に加えて、本明細書中に記載されている調節システムは、トランスジェニック植物などの他の生物に適用され得ることが理解される。トランスジェニック植物は、この分野で知られている従来の技術により作製することができる。従って、本発明は、動物および植物を含み、本発明のトランス活性化因子融合タンパク質を発現する細胞を含有するヒト以外のトランスジェニック生物を包含する(すなわち、トランス活性化因子をコードする核酸は、トランスジェニック生物の細胞において1つまたは複数の染色体に取り込まれている)。
【0052】
E.相同組換え生物
本発明はまた、本発明の融合タンパク質を発現するヒト以外の相同組換え生物を提供する。本明細書中で使用されている用語「相同組換え生物」は、遺伝子と、動物の細胞(例えば、動物の胚細胞)に導入されるDNA分子との間での相同組換えによって改変された遺伝子を含有する生物(例えば、動物または植物)を表すことを目的とする。1つの実施形態において、ヒト以外の動物はマウスであるが、本発明はマウスに限定されない。融合タンパク質をコードする核酸がゲノムの特定部位に導入された動物を作製することができる:すなわち、核酸は内在遺伝子と相同的に組換えられる。
【0053】
そのような相同組換え動物を作製するために、相同組換えが起こり得る真核生物遺伝子のさらなる核酸がその5′および3′において隣接する融合タンパク質をコードするDNAを含有するベクターが調製される。融合タンパク質をコードする核酸に隣接するさらなる核酸は、真核生物遺伝子との相同組換えがうまく生じるのに十分な長さである。典型的には、数キロベースの隣接するDNAが(5′端および3′端の両方において)ベクターに含まれる(相同組換えベクターの説明に関しては、例えば、Thomas,K.S.およびCapecchi,M.R.(1987)Cell 51:503を参照のこと)。ベクターは胚幹細胞株に(例えば、エレクトロポレーションによって)導入され、そして導入されたDNAが内在のDNAと相同的に組み換えられた細胞が選抜される(例えば、Li,E.他(1992)Cell 69:915を参照のこと)。次いで、選抜された細胞を動物(例えば、マウス)の胚盤胞に注入して、凝集キメラを得る(例えば、Bradley,A.、Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach,E.J.Robertson編(IRL、Oxford、1987)113頁〜152頁を参照のこと)。次いで、キメラ状の胚を適切な偽妊娠の雌性里親動物に移植して、胚を成熟させる。相同的に組換えられたDNAを生殖細胞に有する子孫は、動物のすべての細胞が相同的に組換えられたDNAを含有する動物を繁殖させるために使用することができる。このような「生殖系列伝搬」動物は、トランス活性化因子融合タンパク質が結合する標的DNA部位に機能的に連結された遺伝子を有する動物とさらに交配することができる。例えば、tetシステムに関して、「生殖系列伝搬」動物は、少なくとも1つのtetオペレーター配列に機能的に連結された遺伝子を有する動物とさらに交配することができる。
【0054】
上記の相同組換え方法に加えて、酵素支援による部位特異的組み込みシステムがこの分野で知られている。これは、第2の標的DNA分子内の所定位置にDNA分子を組み込むために、本発明の調節システムの成分に適用することができる。そのような酵素支援組み込みシステムの例には、Creリコンビナーゼ−lox標的システム(例えば、Baubonis,W.およびSauer,B.(1993)Nucl.Acids Res.21:2025〜2029;およびFukushige,S.およびSauer,B.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7905〜7909に記載されているシステム)、およびFLPリコンビナーゼ−FRT標的システム(例えば、Dang,D.T.およびPerrimon,N.(1992)Dev.Genet.13:367〜375;およびFiering,S.他(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8469〜8473に記載されているシステム)が含まれる。
【0055】
III.本発明のキット
本発明の別の局面は、本発明の調節システムの成分を含むキットに関する。そのようなキットは、目的とする遺伝子(すなわち、転写され得る目的のヌクレオチド配列)の発現を調節するために使用することができる。このキットは、転写活性化因子融合タンパク質をコードする核酸を含み得る。あるいは、トランス活性化因子融合タンパク質が真核生物細胞で発現するようにトランス活性化因子融合タンパク質をコードする核酸がその中に安定に取り込まれている真核生物細胞が、キットにおいて提供され得る。
【0056】
1つの実施形態において、キットは、その内部できつく閉じ込められた状態で少なくとも2つの容器手段を有する運搬手段を含む:本発明のトランス活性化因子融合タンパク質をコードする第1の核酸(例えば、DNA)を含有する第1の容器手段、および目的とするヌクレオチド配列がクローニングされ得るトランス活性化因子に関する第2の標的核酸(例えば、DNA)を含有する第2の容器手段。第2の核酸は、典型的には、転写され得るヌクレオチド配列(機能的に連結された最小のプロモーター配列を必要に応じて含む)および融合タンパク質が結合する少なくとも1つの機能的に連結されたDNA結合部位を導入するためのクローニング部位を含む。用語「クローニング部位」は、少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼ部位を包含するものとする。典型的には、多数の異なる制限エンドヌクレアーゼ部位(例えば、ポリリンカー)が、核酸の内部に含有される。
【0057】
キットの成分を使用して目的のヌクレオチド配列の発現を調節するために、目的のヌクレオチド配列が、従来の組換えDNA技術によってキットの標的ベクターのクローニング部位にクローニングされ、次いで、第1の核酸および第2の核酸が宿主細胞または動物に導入される。次いで、宿主細胞または動物で発現したトランス活性化因子融合タンパク質によって、目的とするヌクレオチド配列の転写が(融合タンパク質においてどのようなDNA結合ドメインが使用されているかに依存して、構成的に、あるいは適切な誘導剤の存在下または非存在下で)調節される。
【0058】
あるいは、別の実施形態において、キットは、トランス活性化因子が細胞で発現されるように本発明のトランス活性化因子融合タンパク質をコードする核酸で安定的にトランスフェクションされる真核生物細胞を含む。従って、上記の第1の容器手段は、核酸のみを含有するよりも、トランス活性化因子をコードする第1の核酸が(例えば、リン酸カルシウム沈澱またはエレクトロポレーションなどの従来の方法による安定的なトランスフェクションによって)安定的に導入された真核生物細胞株を含有する。この実施形態においては、目的のヌクレオチドがキットの標的ベクターのクローニング部位にクローニングされ、次いで、標的ベクターが、トランス活性化因子融合タンパク質を発現する真核生物細胞に導入される。
【0059】
IV.テトラサイクリンまたはそのアナログによる遺伝子発現の調節
tetシステムまたは逆tetシステムに基づく本発明のトランス活性化因子融合タンパク質をコードする核酸、ならびにtetオペレーター配列に機能的に連結されたヌクレオチド配列(すなわち、転写され得る目的の遺伝子)を有する宿主細胞において、tetオペレーター配列に機能的に連結されたヌクレオチド配列の高レベルの転写は、(tetシステムまたは逆tetシステムが使用されているかどうかに依存して)テトラサイクリンの有無に依存する。宿主細胞での転写を誘導するために、宿主細胞は、(tetシステムに関しては)Tcの非存在下で培養されるか、あるいは(逆tetシステムに関しては)テトラサイクリンまたはテトラサイクリンアナログと接触させられる。従って、本発明の別の局面は、本発明のトランス活性化因子融合タンパク質を発現する宿主細胞または動物において、tetオペレーター配列に機能的に連結されたヌクレオチド配列の転写を調節するための方法に関する。この方法は、細胞をテトラサイクリンまたはテトラサイクリンアナログと接触させること、あるいはテトラサイクリンまたはテトラサイクリンアナログを、そのような細胞を含有する被験体に投与することを含む。
【0060】
用語「テトラサイクリンアナログ」は、テトラサイクリンに構造的に関連する化合物で、少なくとも約106-1のKaでTetリプレッサーに結合する化合物を含むものとする。好ましくは、テトラサイクリンアナログは、約109-1以上の親和性で結合する。そのようなテトラサイクリンアナログの例には、アンヒドロテトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、および下記によって開示されるアナログが含まれるが、これらに限定されない:HlavkaおよびBoothe、「テトラサイクリン」、Handbook of Experimental Pharmacology 78、R.K.Blackwood他(編)、Springer−Verlag、Berlin−New York、1985;L.A.Mitscher、「テトラサイクリン抗生物質の化学」、Medicinal Research 9、Dekker、New York、1978;Noyee Development Corporation、「テトラサイクリン製造プロセス」、Chemical Process Reviews、Park Ridge、NJ、2巻、1969;R.C.Evans、「テトラサイクリンの科学」、Biochemical Reference Series 1、Quadrangle Press、New York、1968;およびH.F.Dowling、「テトラサイクリン」、Antibiotic Monographs、第3号、Medical Encyclopedia、New York、1955。高レベルの転写刺激に好ましいTcアナログは、アンヒドロテトラサイクリンおよびドキシサイクリンである。Tcと比較して低い抗生物質活性を有するTcアナログを選択することができる。そのようなTcアナログの例は、アンヒドロテトラサイクリン、エピオキシテトラサイクリンおよびシアノテトラサイクリンである。
【0061】
インビトロで細胞における遺伝子発現を調節するために、細胞は、TcまたはTcアナログと、そのような化合物を含有する培地で細胞を培養することによって接触させられる。TcまたはTcアナログの存在下で細胞をインビトロで培養する場合、好ましい濃度範囲は、約10ng/ml〜約1000ng/mlの間である。TcまたはTcアナログは、細胞が既に培養されている培地に直接加えることができ、あるいは、より好ましくは、高レベルの遺伝子誘導を行うために、Tcを含まない培地から細胞を集め、そして細胞を、Tcまたはそのアナログを含有する新しい培地で培養する。
【0062】
インビボでの遺伝子発現を誘導するために、被験体内の細胞は、TcまたはTcアナログと、そのような化合物を被験体に投与することによって接触させられる。用語「被験体」は、ヒトおよびヒト以外の哺乳動物を含むものとする:ヒト以外の哺乳動物には、サル、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、ならびにそれらのトランスジェニック種および相同組換え種が含まれる。さらに、用語「被験体」は、トランスジェニック植物などの植物を含むものとする。誘導剤がヒトまたは動物の被験体に投与される場合、投与量は、好ましくは約0.05μg/ml〜1.0μg/mlの間の血清濃度が達成されるように調節される。TcまたはTcアナログは、遺伝子の誘導に十分なインビボ濃度を達成するために効果的な任意の手段によって被験体に投与することができる。適切な投与形式の例には、経口投与(例えば、誘導剤を飲料水に溶解すること)、徐放性ペレットおよび拡散ポンプの埋め込みが含まれる。TcまたはTcアナログをトランスジェニック植物に投与するために、誘導剤を、植物に投与される水に溶解することができる。
【0063】
VI.本発明の適用
本発明は、多面発現作用または細胞傷害性を引き起こすことなく迅速かつ効率的に制御された方法で、遺伝子発現の開始および停止を行うことができ、あるいは遺伝子発現のレベルを調節できることが望ましい様々な状況に広く適用することができる。従って、本発明のシステムは、真核生物細胞、植物および動物における細胞発達および細胞分化の研究に幅広く適用することができる。例えば、ガン遺伝子の発現は、その機能を研究するために、細胞において制御された方法で調節することができる。さらに、このシステムを使用して、CREまたはFLPなどの部位特異的なリコンビナーゼの発現を調節することができ、それによってトランスジェニック生物の遺伝子型の不可逆的な改変が、特定の発達段階において制御された条件下で可能になる。例えば、トランスジェニック植物のゲノムに挿入され、特定のトランスジェニック植物の選択を可能にする薬物耐性マーカーは、Tcにより調節される部位特異的なリコンビナーゼによって不可逆的に取り除くことができる。本発明の調節システムの他の適用を下記に示す:
【0064】
A.遺伝子治療
本発明は、遺伝子的疾患または後天的疾患のいずれかの処置における遺伝子治療目的に特に有用であり得る。遺伝子治療の一般的な方法には、機能的な活性の回復または増強のために、導入される遺伝物質によってコードされる1つまたは複数の遺伝子産物が細胞内で産生されるように核酸を細胞に導入することが含まれる。遺伝子治療法の総説に関しては、Anderson,W.F.(1992)Science 256:808〜813;Miller,A.D.(1992)Nature 357:455〜460;Friedmann,T.(1989) Science 244:1275〜1281;およびCournoyer,D.他(1990)Curr.Opin.Biotech.1:196〜208を参照のこと。しかし、現在の遺伝子治療ベクターは、典型的には、内在性の転写因子に応答し得る構成的な調節エレメントを利用している。このようなベクターシステムでは、被験体における遺伝子の発現レベルを調節し得ることは考慮されていない。これに対して、本発明の誘導性の調節エレメントはこのような調節能を提供する。
【0065】
遺伝子治療目的に本発明の逆tetシステムを使用するために、1つの実施形態において、遺伝子治療を必要とする被験体の細胞は、1)宿主細胞におけるトランス活性化因子の発現に適切な形態で本発明のトランス活性化因子融合タンパク質をコードする核酸、および2)tetオペレーター配列に機能的に連結された目的の遺伝子(例えば、治療目的の遺伝子)を含有するように改変される。被験体の細胞はエクスビボで改変され、次いで、被験体に導入することができ、あるいは、細胞はインビボで直接改変することができる。次いで、被験体の細胞における目的遺伝子の発現が、TcまたはTcアナログを患者に投与することによって刺激される。遺伝子の発現レベルは、誘導剤としてどのような特定のTcアナログが使用されているかに依存して変化し得る。遺伝子の発現レベルはまた、患者に投与されるテトラサイクリンまたはそのアナログの用量を調節し、それによって循環および目的とする組織において達成される濃度を調節することによって調整することができる。
【0066】
酵素結合免疫吸着アッセイなどのこの分野で知られている従来の検出方法は、宿主細胞において調節された目的タンパク質の発現をモニターするために使用することができる。そして、TcまたはTcアナログの濃度は、目的とするタンパク質の所望する発現レベルが得られるまで変化させることができる。従って、目的とするタンパク質の発現は、個々の生涯にわたって変化し得る個々の医学的な必要に従って調節することができる。被験体の細胞において目的とする遺伝子の発現を停止させるために、誘導剤の投与が停止される。従って、本発明の調節システムは、治療的状況の必要性に依存して遺伝子の発現レベルの調整を可能にするという、構成的な調節システムよりも大きな利点を提供する。
【0067】
遺伝子的疾患または後天的疾患の処置のために被験体の細胞において発現され得る特に注目される遺伝子には、アデノシンデアミナーゼ、第VIII因子、第IX因子、ジストロフィン、β−グロビン、LDLレセプター、CFTR、インスリン、エリスロポイエチン、抗血管形成因子、成長ホルモン、グルコセレブロシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、α1−アンチトリプシン、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノコハク酸シンセターゼ、UDP−グルクロニシルトランスフェラーゼ、アポA1、TNF、可溶性TNFレセプター、インターロイキン(例えば、IL−2)、インターフェロン(例えば、α−IFNまたはβ−IFN)、ならびに他のサイトカインおよび成長因子をコードする遺伝子が含まれる。遺伝子治療目的のために改変され得る細胞タイプには、造血幹細胞、筋原細胞、肝細胞、リンパ球、皮膚上皮細胞および気道上皮細胞が含まれる。遺伝子治療に関する細胞タイプ、遺伝子および方法のさらなる説明に関しては下記を参照のこと:例えば、Wilson,J.M.他(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3014〜3018;Armentano,D.他(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6141〜6145;Wolff,J.A.他(1990)Science 247:1465〜1468;Chowdhury,J.R.他(1991)Science 254:1802〜1805;Ferty,N.他(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8377〜8381;Wilson,J.M.他(1992)J.Biol.Chem.267:963〜967;Quantin,B.他(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:2581〜2584;Dai,Y.他(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10892〜10895;van Beusechem,V.W.他(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7640〜7644;Rosenfeld,M.A.他(1992)Cell 68:143〜155;Kay,M.A.他(1992)Human Gene Therapy 3:641〜647;Cristiano,R.J.他(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2122〜2126;Hwu,P.他(1993)J.Immunol.150:4104〜4115;およびHerz,J.およびGerard,R.D.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2812〜2816。
【0068】
ガンの処置において特に注目される遺伝子治療の適用には、サイトカイン遺伝子(例えば、TNF−α)の腫瘍浸潤性リンパ球での過剰発現、または腫瘍部位での抗腫瘍免疫応答を誘導するサイトカインの腫瘍細胞における異所性発現、非毒性剤を毒性剤に変換し得る酵素の腫瘍細胞での発現、抗腫瘍免疫応答を誘導する腫瘍特異的抗原の発現、腫瘍サプレッサー遺伝子(例えば、p53またはRb)の腫瘍細胞での発現、骨髄細胞を化学療法の毒性から保護するための多薬剤耐性遺伝子(例えば、MDR1および/またはMRP)の骨髄細胞での発現が含まれる。
【0069】
ウイルス疾患の処置において特に注目される遺伝子治療の適用には、HIVトランス優性ネガティブのtat変異体またはrev変異体あるいはHSVトランス優性ICp4変異体(例えば、Balboni,P.G.他(1993)J.Med.Virol.41:289〜295;Liem,S.E.他(1993)Hum.Gene Ther.4:625〜634;Malim,M.H.他(1992)J.Exp.Med.176:1197〜1201;Daly,T.J.他(1993)Biochemistry 32:8945〜8954;およびSmith,C.A.(1992)Virology 191:581〜588を参照のこと)などのトランス優性ネガティブのウイルス性トランス活性化因子タンパク質の発現、HIVのenv変異体などのトランス優性ネガティブエンベロープタンパク質の発現(例えば、Steffy,K.R.他(1993)J.Virol.67:1854〜1859を参照のこと)、ウイルス産物に対する抗体またはそのフラグメントの細胞内発現(「内部免疫化」、例えば、Marasco,W.A.他(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:7889〜7893)、および可溶性CD4などの可溶性ウイルスレセプターの発現が含まれる。さらに、本発明のシステムを使用して、細胞において自殺遺伝子を条件に応じて発現させることができ、それによって、細胞の除去が、意図された機能を細胞が果たした後で可能になる。例えば、ワクチン化のために使用される細胞は、TcまたはTcアナログの被験体への投与により細胞内で自殺遺伝子の発現が誘導されることによって免疫応答が被験体に得られた後で被験体内で除去することができる。
【0070】
本発明のTc制御による調節システムは、それが遺伝子治療への適用に特に適するという数多くの有利な特性を有する。例えば、本発明のシステムにより、被験体における遺伝子産物の調節された投薬を可能にする遺伝子発現に関する「オン」/「オフ」のスイッチが提供される。いくつかの状況においては、設定されたレベルで遺伝子産物が単に構成的に発現されるというよりは、調節された方法で、遺伝子産物を特定のレベルおよび/または時期に提供できることは望ましいことであり得る。例えば、目的の遺伝子は、目的遺伝子産物の最も効果的なレベルが最も効果的な時期に得られるように一定の間隔(例えば、毎日、1日おき、毎週など)で発現のスイッチを「オン」にすることができる。被験体内で産生される遺伝子産物のレベルは標準的な方法でモニターすることができる(例えば、ELISAまたはRIAなどの免疫学的アッセイを使用する直接的なモニター、あるいは目的とする遺伝子産物の機能に依存する実験室パラメーター(例えば、血中グルコースレベルなど)の間接的なモニターによって行うことができる)。被験体において異なる時間間隔で遺伝子の発現を「オン」にし、そして遺伝子を他の時期において「オフ」状態に保つことを可能にするこのような能力により、断続的な間隔で目的とする遺伝子産物を継続的に投与しなければならないことが避けられる。この方法は、苦痛的であり、かつ/または副作用をもたらすことがあり、そして医師のところに継続的に行かなければならないような遺伝子産物の反復的な注射を必要としない。これに対して、本発明のシステムはそのような不利益を回避する。さらに、被験体において異なる時間間隔で遺伝子発現を「オン」にできることは、痛みおよび症状が現れる急性期の間の処置が必要とされるときにだけ、活性の「急上昇」を含む疾患(例えば、多くの自己免疫疾患)の集中した処置を可能する。そのような疾患が鎮静しているときには、発現システムを「オフ」状態に保つことができる。
【0071】
異なる時間間隔で遺伝子発現を調節するこのような能力から特に有用であり得る遺伝子治療適用には、下記の非限定的な例が含まれる。
【0072】
慢性関節リウマチ−炎症性サイトカイン(例えば、TNF、IL−1およびIL−12)の産生を阻害する遺伝子産物をコードする遺伝子を、被験体において発現させることができる。そのような阻害剤の例には、サイトカインの可溶性形態のレセプターが含まれる。さらにまたはその代わりに、サイトカインIL−10および/またはIL−4(これらは保護的なTh2型の応答を刺激する)を発現させることができる。さらに、グルココルチコミメティックレセプター(GCMR)を発現させることができる。
【0073】
下垂体機能不全症−ヒト成長ホルモンの遺伝子を、遺伝子発現がダウンレギュレーションされ得るときに、正常な身長が得られるまで、遺伝子発現が必要とされる年少期に限ってそのような被験体において発現させることができる。
【0074】
外傷治癒/組織再生−治癒過程に必要な因子(例えば、成長因子、血管形成因子など)が必要であり、次いでダウンレギュレーションされるときに限って、それらを発現させることができる。
【0075】
抗ガン処置−抗ガン処置において有用な遺伝子産物の発現は、腫瘍増殖の遅延が達成されるまでの治療期に限定され得る。そのようなときに、遺伝子産物の発現がダウンレギュレーションされ得る。可能な全身的な抗ガン処置には、免疫刺激性分子(例えば、IL−2、IL−12など)、血管形成阻害剤(PF4、IL−12など)、Herレグリン、ロイコレグリン(国際特許公開PCT WO85/04662を参照のこと)、ならびにG−CSF、GM−CSFおよびM−CSFなどの骨髄支援治療に必要な成長因子を発現する腫瘍浸潤性リンパ球の使用が含まれる。骨髄支援治療に関して、本発明の調節システムを使用して、骨髄支援治療に必要な因子を発現させることによって、定期的な間隔で、化学療法から骨髄支援治療への簡略化された治療の変更が可能になる(同様に、そのような方法はまた、AIDSの処置に適用することができる:例えば、抗ウイルス処置から骨髄支援処置への単純化された切換)。さらに、抗ガン処置の制御された局所的な標的化もまた可能である。例えば、本発明の調節因子による自殺遺伝子の発現がある。この場合、調節因子自身が、例えば、腫瘍特異的プロモーターまたは放射線誘導プロモーターによって制御される。
【0076】
別の実施形態において、本発明の調節システムを使用して、血管形成阻害剤が、本発明のシステムにより調節されるトランスジーンによって腫瘍内部から発現させられる。血管形成阻害剤のこのような発現は、阻害剤の全身的な投与よりも効率的であり得るし、そして全身的な投与に付随し得る何らかの有害な副作用を回避する。特に、腫瘍内に限定された血管形成阻害剤の発現は、正常な細胞の成長を伴って血管形成が依然行われている小児でのガン処置において特に有用であり得る。
【0077】
別の実施形態において、サイトカインの高レベルの調節された発現を行うことにより、患者自身の免疫応答を腫瘍細胞に集中させるための方法が示され得る。腫瘍細胞は、個々の自然の免疫応答を増大させるときに重要な化学誘引性で増殖促進性のサイトカインが発現するように形質導入され得る。サイトカインは腫瘍の近くにおいて最も高い濃度で存在するので、腫瘍抗原に対する免疫学的応答が誘導される可能性が高まる。このタイプの治療に伴う考えられる問題は、そのようなサイトカインを産生する腫瘍細胞もまた免疫応答の標的であり、従って、すべての腫瘍細胞の根絶が確実になり得る前に、サイトカインの供給源が排除されることである。この問題を解決するために、免疫系から感染細胞を遮蔽することが知られているウイルスタンパク質の発現を、同じ細胞内で、サイトカイン遺伝子とともに調節下に置くことができる。そのような1つのタンパク質は、アデノウイルス由来のE19タンパク質である(例えば、Cox、Science 247:715を参照のこと)。このタンパク質は、I型HLA抗原の細胞表面への輸送を妨げ、これにより、宿主の細胞傷害性T細胞による細胞認識および細胞溶解を妨げる。従って、腫瘍細胞内でE19の調節された発現を行うことにより、サイトカイン産生細胞は、免疫応答の攻撃がサイトカインの発現によって惹起されている間、細胞傷害性T細胞から遮蔽され得る。E19を発現する細胞を除くすべての腫瘍細胞を根絶させるために十分な時間が経過した後に、E19の発現を停止させることができ、これによって、E19発現細胞が、次に、惹起された抗腫瘍免疫応答の犠牲となる。
【0078】
良性の前立腺肥大−上記と同様に、自殺遺伝子を、本発明の調節因子によって調節することができる。この場合、調節因子自身が、例えば、前立腺特異的プロモーターによって制御される。
【0079】
自殺遺伝子(例えば、アポトーシス遺伝子、TK遺伝子など)の発現を、本発明の調節システムを使用する制御された方法で行い得ることは、本発明のシステムの全般的な安全性および有用性を高める。例えば、所望の治療の最後において、自殺遺伝子の発現を、生体不活性インプラント内の細胞、意図された最初の部位を超えて散らばった細胞などの遺伝子治療ベクターを有する細胞を除くために開始させることができる。さらに、移植組織が腫瘍状になるか、または副作用を有する場合、そのような細胞は、自殺遺伝子を導入することにより迅速に除くことができる。Tc制御された2つ以上の「オン」/「オフ」スイッチを1つの細胞内で使用することによって、(本明細書中に詳しく記載されている)治療目的の遺伝子の調節と比較される自殺遺伝子の完全に独立した調節が可能になる。
【0080】
本発明の調節システムは、達成され得る遺伝子産物の発現レベルにおける自由度が全くない調節されない構成的な発現とは対照的に、被験体における目的とする遺伝子産物の治療的に関連した発現レベルをさらに確立することができる。遺伝子産物の生理学的に関連する発現レベルは、被験体の特定の医学的必要性に基づいて、例えば、関連する遺伝子産物のレベルを(上記の方法を使用して)モニターする実験室試験に基づいて確立することができる。臨床例、および遺伝子産物の投薬に対する遺伝子に関して上記で既に議論した遺伝子産物に加えて、所望するレベルおよび所望する時期で発現させることができる他の治療的に関連する遺伝子産物には下記が含まれる:血友病者における第XIII因子および第IX因子(例えば、運動中などの傷害の危険性があるときに発現を高めることができる);糖尿病者におけるインスリンまたはアミリン(被験体における疾患状態、食事などに依存して必要とされる時);赤血球減少症を処置するためのエリスロポイエチン(例えば、末期の腎不全において必要とされる時);アテローム性動脈硬化症または肝臓の遺伝子治療に関する低密度リポタンパク質レセプター(LDLr)または超低密度リポタンパク質レセプター(VLDLr)(例えば、エクスビボ移植組織の使用)。中枢神経系疾患の処置に対する適用もまた包含される。例えば、アルツハイマー病においては、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)の発現を「微調節」して、アセチルコリンのレベル、神経栄養因子(例えば、NGF、BDNFなど)および/または補体阻害剤(例えば、sCR1、sMCP、sDAF、sCD59など)を回復させることができる。そのような遺伝子産物は、例えば、本発明のシステムを使用して調節される方法で遺伝子産物を発現する移植された細胞によりもたらされ得る。さらに、パーキンソン病は、レボドーパおよびドーパミンのレベルを増大させるためにチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の発現を「微調節」することにより処置することができる。
【0081】
上記のタンパク質性の遺伝子産物に加えて、機能的なRNA分子(アンチセンスRNAおよびリボザイムなど)である遺伝子産物を、治療目的のために被験体において制御された方法で発現させることができる。例えば、変異型遺伝子と野生型遺伝子とを区別するリボザイムを設計することができる。従って、「正しい」遺伝子(例えば、野生型のp53遺伝子)を、変異型遺伝子(例えば、変異した内在性p53遺伝子)に特異的な調節されたリボザイムの導入と同時に細胞に導入して、内在性遺伝子から発現した不完全なmRNAを除くことができる。この方法は、不完全な遺伝子に由来する遺伝子産物が、外因性の野生型遺伝子の作用と競合するする状況において特に有利である。
【0082】
本発明の調節システムを使用する被験体における遺伝子産物の発現は、テトラサイクリンまたはそのアナログを使用して調節される。そのような薬物は、所望の作用部位への薬物送達(例えば、その発現が調節され得る遺伝子を含有する細胞への送達)に適切な任意の経路によって投与することができる。関与する特定の細胞タイプに依存して、好ましい投与経路には、経口投与、静脈内投与および局所投与(例えば、全身的な処置に由来する考えられる何らかの副作用を避けながら、ケラチノサイトなどの皮膚内に位置する移植片の細胞に到達させるための経皮パッチの使用)が含まれる。
【0083】
いくつかの遺伝子治療状況において、処置を受けている被験体において望ましくない免疫反応の回避または阻害を行うための手段を取ることは必要または望ましいことであり得る。治療的な遺伝子産物を発現する細胞に対する反応を避けるために、一般には、被験体自身の細胞を使用して、可能である場合には、被験体の細胞をインビボで改変するか、または被験体から細胞を採取し、細胞をエクスビボで改変して、被験体に戻すことのいずれかによって、治療的な遺伝子産物の発現が行われる。異種同系または外因性の細胞を使用して、目的とする遺伝子の発現が行われる状況において、本発明の調節システムもまた、治療遺伝子を調節することに加えて、細胞の免疫認識に関与する1つまたは複数の遺伝子を調節して、外来細胞に対する免疫応答を阻害するために使用することができる。例えば、Tリンパ球による外来細胞の認識に関与している細胞表面分子は、治療的な遺伝子産物を送達するために使用された外来細胞の表面で、細胞表面分子をコードするmRNAを切断するリボザイムの外来細胞での発現を調節するなどによってダウンレギュレーションすることができる。望ましくない免疫応答を阻害するためにこのようにダウンレギュレーションされ得る特に好ましい細胞表面分子には、I型および/またはII型の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、補助的刺激分子(例えば、B7−1および/またはB7−2)、CD40、およびICAM−1またはICAM−2などの様々な「接着」分子が含まれる。同じ細胞において多数の遺伝子の独立しているが、調和した調節を行うために本明細書中に記載されている方法を使用して、宿主細胞における細胞表面分子の発現のダウンレギュレーションを調和させることができる。従って、治療が完了して、治療遺伝子の発現を停止させた後で、内在性の細胞表面分子の発現を正常状態に戻すことができる。さらに、抗ガン処置に関して上記に記載されているように、MHC抗原の発現をダウンレギュレーションするウイルスタンパク質(例えば、アデノウイルスE19タンパク質)を、望ましくない免疫学的反応を避ける手段として、本発明のシステムを使用して宿主細胞において調節することができる。
【0084】
前記に加えて、被験体における免疫応答を全体的または特異的にダウンレギュレーションすることに関するすべての従来の方法は、免疫応答の阻害が所望される状況において、本発明の調節システムの使用と組み合わせることができる。シクロスポリンAおよび/またはFK506などの一般的な免疫抑制剤を被験体に投与することができる。あるいは、より特異的な免疫抑制を可能にし得る免疫調節剤を使用することができる。そのような薬剤には、補助的刺激分子の阻害剤(例えば、CTLA4Ig融合タンパク質、可溶性CD4、抗CD4抗体、抗B7−1抗体および/または抗B7−2抗体または抗gp39抗体)が含まれ得る。
【0085】
最後に、いくつかの状況において、治療的な遺伝子を発現する細胞の送達ビヒクルで、移植された細胞が免疫系に曝されることを最小限にする送達ビヒクルを選択することができる。例えば、細胞は、(小島細胞移植に適用されているように)タンパク質(例えば、目的とする治療的な遺伝子産物)のインプラントからの拡散と、栄養物および酸素のインプラント内への拡散とを可能にするが、免疫細胞の進入を妨げ、それによって移植された細胞が免疫系に曝されることを回避する空孔を有する生体不活性なカプセル/生体適合性メンブランに埋め込むことができる。
【0086】
B.タンパク質のインビトロでの生産
目的とするタンパク質の大規模な生産は、1)細胞におけるトランス活性化因子の発現に適する形態で本発明のトランス活性化因子融合タンパク質をコードする核酸、および2)tetオペレーター配列に機能的に連結された目的タンパク質をコードする遺伝子を含有するように改変された細胞のインビトロ培養物を使用して行うことができる。例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞または真菌細胞を改変して、本明細書中に記載されているこのような核酸成分を含有させることができる。次いで、改変された哺乳動物細胞、酵母細胞または真菌細胞は、遺伝子発現を誘導させて目的タンパク質を産生させるために、Tcまたはそのアナログの存在下で標準的な発酵技術によって培養することができる。従って、本発明により、目的のタンパク質を単離するための製造プロセスが提供される。このプロセスにおいて、本発明のトランス活性化因子融合タンパク質をコードする核酸と、少なくとも1つのtetオペレーター配列に機能的に連結された目的タンパク質をコードする核酸との両方が導入された宿主細胞(例えば、酵母または真菌)を、テトラサイクリンまたはテトラサイクリンアナログが存在する培養培地において生産規模で増殖させて、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列(すなわち、tetオペレーター配列に機能的に連結されたヌクレオチド配列)の転写を刺激し、そして目的とするタンパク質を、集めた宿主細胞または培養培地から単離する。標準的なタンパク質精製技術を使用して、目的とするタンパク質を培地または集めた細胞から単離することができる。
【0087】
C.タンパク質のインビボでの生産
本発明により、トランスジェニック農場動物などの動物において目的とするタンパク質の大規模な生産もまた行われる。トランスジェニック技術での進歩により、ウシ、ヤギ、ブタおよびヒツジなどのトランスジェニック家畜の作製が可能になっている(Wall,R.J.他(1992)J.Cell.Biochem.49:113〜120;およびClark,A.J.他(1987)Trends in Biotechnology 5:20〜24における総説を参照のこと)。従って、本発明の誘導性調節システムの成分をそのゲノムに有するトランスジェニック家畜を作製することができる。この場合、目的とするタンパク質をコードする遺伝子は、少なくとも1つのtetオペレーター配列に機能的に連結されている。遺伝子の発現、従ってタンパク質の生産は、Tc(またはそのアナログ)をトランスジェニック動物に投与することによって誘導される。タンパク質の生産は、トランス活性化因子の発現をある種の細胞に限定する適切な組織特異的調節エレメントに連結することによって、トランス活性化因子融合タンパク質をコードする核酸を特定の組織に標的化することができる。例えば、乳清プロモーター(米国特許第4,873,316号および欧州特許出願公開第264,166号)などの乳腺に特異的な調節エレメントをトランス活性化因子トランスジーンに連結して、トランス活性化因子の発現を乳腺組織に限定することができる。従って、Tc(またはアナログ)の存在下において、目的のタンパク質は、トランスジェニック動物の乳腺組織で産生される。タンパク質は、トランスジェニック動物の乳汁に分泌させるように設計することができ、そして所望する場合には、次いで、タンパク質を乳汁から単離することができる。
【0088】
D.ヒトの疾患の動物モデル
本発明の転写活性化因子タンパク質を使用して、ヒトの疾患の病理学を模倣するために動物の特定遺伝子の発現を刺激し、それによってヒト疾患の動物モデルを作製することができる。例えば、宿主動物において疾患に関与していると考えられる目的の遺伝子を、(例えば、本明細書中に記載されている相同組換えによって)1つまたは複数のtetオペレーター配列の転写制御下に置くことができる。そのような動物は、トランス活性化因子融合タンパク質のトランスジーンを有する第2の動物と交配して、テトラサイクリンにより調節される融合タンパク質遺伝子およびtetにより調節される標的配列の両方を有する子孫を作製することができる。このような子孫における目的とする遺伝子の発現は、テトラサイクリン(またはアナログ)を使用して調節することができる。
【実施例】
【0089】
例示
本発明は、いかなる点においても限定として解釈すべきではない下記の実施例によりさらに例示される。本出願を通して引用されている参考文献、発行された特許、公開された特許出願を含むすべての引用物の内容は、それにより特に参考として援用される。本発明の実施には、別途示されていない限り、当業者の範囲に含まれる細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来の技術が用いられる。そのような技術は文献に十分に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual、第2版、Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989);DNA Cloning、第1巻および第2巻(D.N.Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Mullis他、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins編、1984);Transcription And Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins編、1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney、Alan R.Liss,Inc.、1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、1986);B.Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);項目的な専門書のMethods In Enzymology(Academic Press,Inc.、N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammallian Cells(J.H.MilerおよびM.P.Calos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology 第154巻および第155巻(Wu他編);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(MayerおよびWalker編、Academic Press、London、1987);Handbook Of Experimental Immunology、第I巻〜第IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1986);Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)を参照のこと。
【0090】
下記の実施例において使用されている特定の材料および方法を下記に示す:
【0091】
最小の活性化因子ドメインをコードするオリゴヌクレオチド
本研究の最小の活性化ドメインはVP16から得られた。これは、Seipel,K.、Georgiev,O.およびSchaffner,W.(1992)EMBO J 11、4961〜4968による436位〜447位を含む。このドメインおよびその変化体をコードする合成オリゴヌクレオチドを、それぞれ、[F]、[GF]、[FG]、[GG]および[Y]と名付けた:この場合、文字は、442位のアミノ酸を示す(下線を付したトリプレット)。コード鎖の配列を(442位のコドンに対応するトリプレットに下線を付けて)下記に示す。オリゴヌクレオチドは、括弧内の文字によって示されるように1つまたは複数の最小ドメインをコードする。
【0092】

オリゴ[F]:5′−CCGGCCGACGCCCTGGACGACTTCGACCTGGACATGCTG−3′(配列番号9)

オリゴ[GF]:5′−CCGGCCGACGCCCTGGACGACGGCGACCTGGACATGCTGCCTGCTGATGCTCTCGATGATTTCGATCTCGATATGCTCC−3′(配列番号10)

オリゴ[FG]:5′−CCGGCCGACGCCCTGGACGACTTCGACCTGGACATGCTGCCTGCTGATGCTCTCGATGATGGCGATCTCGATATGCTCC−3′(配列番号11)

オリゴ[GG]:5′−CCGGCCGACGCCCTGGACGACGGCGACCTGGACATGCTGCCTGCTGATGCTCTCGATGATGGCGATCTCGATATGCTCC−3′(配列番号12)

オリゴ[Y]:5′−CCGGCCGACGCCCTGGACGACTACGACCTGGACATCCTC−3′(配列番号13)
【0093】
二本鎖オリゴヌクレオチドの突出5′末端は、制限エンドヌクレアーゼXmaIの切断部位と適合する。
【0094】
プラスミド
ColE1型プラスミドのpUHD141−1(Kistner,A.(1992)学位論文、ハイデルベルグ大学)は、翻訳の効率的な開始のために5′末端で最適化されているTetRのコード配列を含有する(Kozak,M.(1983)Microbiol Rev 47、1〜45)。tetR遺伝子の転写は、ヒトサイトメガロウイルスのIEプロモーター(Boshart,M.他(1985)Cell 41、521〜530)によって制御されている。XmaI切断によってtetRのオープンリーディングフレームの3′末端との読み枠を合わせてDNAを挿入するために、pUHD141−1を、tetRの停止コドンと重なっているAflIIで線状化した。突出した5′DNA末端をマングビーンヌクレアーゼによって除き、そして合成オリゴヌクレオチド5′−CCCGGGTAACTAAGTAA−3′(配列番号14)を、標準的なクローニング手順を使用してベクターに連結した。XmaI切断部位をtetR遺伝子のすぐ3′末端に含有する得られたプラスミドpUHD141−1/Xを配列分析によって確認した。
【0095】
細胞培養および一過性トランスフェクション
ルシフェラーゼのレポーター構築物pUHC13−3が染色体に組み込まれたHeLaX1/6細胞(Gossen,M.(1993)Ph.D.論文、ハイデルベルグ大学)およびHeLa(wt)細胞を、37℃および5%CO2で、10%ウシ胎児血清を補充したアール改変イーグル培地(GIBCOから得られるE−MEM)において維持した。リン酸カルシウム共沈澱によるトランスフェクションを、下記の改変を加えた標準的なプロトコルに従って行った:HeLaX1/6細胞を35mm培養ディッシュで50%〜60%のコンフルエンスに増殖させた。トランスフェクションする1時間前に、培養培地を新しい培地に変えて、細胞を37℃および6%CO2でインキュベーションした。リン酸カルシウム/DNAの沈澱物は1.5μgのプラスミドDNAを含有する(これは、0.5μgのトランス活性化因子構築物、トランスフェクション効率を正規化するために含められた0.4μgのlacZ発現ベクター(pUHD16−1)、および非特異的なキャリアDNAとして0.6μgのpUC18からなる)。沈澱物(培養ディッシュあたり100μl)をX1/6細胞に加え、次いで細胞を37℃および6%CO2で30時間さらにインキュベーションした。同時に行われている培養物のインシチウβ−ガラクトシダーゼ染色によって測定されたトランスフェクション効率は、60%〜80%の間であった。
【0096】
ルシフェラーゼアッセイ
トランスフェクションされたX1/6細胞を含有する35mm培養ディッシュを3mlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄し、25mMTris−リン酸塩(pH7.8)、2mMジチオスレイトール、2mMジアミノシクロヘキサン四酢酸、10%グリセロールおよび1%TritonX−100を含有する125μlの溶解緩衝液において室温で10分間溶解した。溶解物を培養ディッシュから掻き取り、Eppendorf遠心分離器で10秒間遠心分離した。これらの抽出物におけるルシフェラーゼ活性を、Gossen,M.およびBujard,H.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89、5547〜5551の記載に従って測定した。ルシフェラーゼの値は、標準的な液体のO−ニトロフェニルβ−ガラクトピラノシドアッセイを行うことによってβ−ガラクトシダーゼ活性に正規化した(Miller,J.H.(1972)Experiments in Molecular Genetics、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor)。
【0097】
DNA遅延アッセイ
HeLa細胞を、10cm培養ディッシュで50%〜60%のコンフルエンスに増殖させ、そして、様々なtTAをコードするプラスミドDNAの20μgを用いるリン酸カルシウム手順によりトランスフェクションした。トランスフェクションの30時間後に全細胞抽出物を下記のように調製した:細胞(約2×106)をPBSで洗浄し、遠心分離して、10mMHEPES、1.5mMMgCl2、10mMKCl、0.5mMジチオスレイトールおよび1mMフェニルメチルスルホニルフルオリドを含有する緩衝液の250μlに再懸濁し、そして0℃で20分間インキュベーションし、その後、素早く凍結および融解を行った。NaClを250mMの最終濃度に加え、そして0℃で20分間のインキュベーションを行った後に、サンプルをBeckmanTL−100超遠心分離器において435000gおよび0℃で10分間遠心分離した。抽出部の一部(10μl)を、10μlの結合緩衝液(20mMMgCl2、20mMTris(pH7.5)、10%グリセロール、2mg/mlニシン精子DNA、および1mg/mlウシ血清アルブミン)、およびpUHC13−3(Gossen,M.およびBujard,H.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89、5547〜5551)から42塩基対のTaqIフラグメントとして単離して[α−32P]dCTPの存在下でT4−DNAポリメラーゼによって突出末端を埋めた後の2fmolの32P標識したtetO DNAと混合した。25分後、反応混合物を、5%グリセロールを含有する5%ポリアクリルアミド/0.13%ビスアクリルアミドのゲルに負荷した。電気泳動を、45mMTris塩基、45mMホウ酸および1mMEDTAにおいて7V/cmで行った。
【0098】
安定的にトランスフェクションされた細胞株の作製
HeLaX1/6細胞を35mm培養ディッシュで増殖させ、そして上記のように、2μgの線状化プラスミドDNAを用いてトランスフェクションした。トランスフェクション混合物は、ハイグロマイシン遺伝子を有するプラスミドpHMR272(Bernard,H.U.他(1985)Exp.Cell.Res.158、237〜243)、およびpUHD15−1、pUHD19−1またはpUHD26−1(これらはtTA遺伝子の上流にKozak配列を含有する)をそれぞれ含有する。検討したプラスミドと選択マーカーとのモル比は40:1であった。24時間後、細胞を10cm培養ディッシュに移し、300μg/mlのハイグロマイシンを含有する培地で維持した。耐性クローンを単離し、個々に拡大培養して、ルシフェラーゼ活性について分析した(Gossen,M.およびBujard,H.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89、5547〜5551)。耐性クローンのルシフェラーゼ遺伝子のtTAに依存した活性化をさらに調べるために、細胞を、10000細胞/35mm培養ディッシュの密度で播種し、Tc(1μg/ml)の存在下または非存在下で増殖させた。5日後、細胞抽出物を上記のように調製して、ルシフェラーゼ活性を測定した。溶解物のタンパク質含有量を、Bradford(Bradford,M.M.(1976)Anal Biochem 72、248〜254)に従って測定した。
【0099】
様々なトランス活性化因子を安定に発現する細胞集団の作製および相対的な細胞内tTA濃度の定量
プラスミドpUHD15−1、pUHD19−1、pUHD20−1およびpUHD26−1を、選択マーカー遺伝子を挿入することによって改変した。それぞれの場合において、neo遺伝子を含有する発現カセットを、PhCMv(1)の上流に位置するXhoI部位に挿入した。得られたプラスミドを、それぞれ、pUHD15−1neo、pUHD19−1neo、pUHD20−1neoおよびpUHD26−1neoとした。
【0100】
HeLa細胞を10cm培養ディッシュで50%コンフルエンスに増殖させ、そして上記のように、20μgの線状化プラスミドDNAを用いてトランスフェクションした。24時間後、細胞を14.5cm培養ディッシュに移し、500μg/mlのG418を含有する培地で維持した。次いで、耐性クローンをまとめ、14.5cm培養ディッシュに播種して、コンフルエンスに達するまで選択圧の存在下で増殖させた。細胞集団から得られた抽出物を調製し、DNA遅延アッセイを上記のように行った。抽出物の総タンパク質含有量を、Bradford(Bradford,M.M.(1976)Anal Biochem 72、248〜254)に従って測定した。タンパク質−DNA複合体を、リン光画像化装置によって検出して定量した。すべてのHeLa細胞抽出物において、tetオペレーターDNAに対していくらかの親和性を有するタンパク質が認められる。星印で印を付けたこのタンパク質(図4A)を、様々なトランス活性化因子を定量するための内部マーカーとして使用した。
【0101】
実施例1:TetRとVP16に由来する最小の活性化ドメインとの融合物の構築
VP16は、大きな負電荷の周囲に位置する嵩張った疎水性アミノ酸を特徴とする2つの異なる転写活性化ドメインを含有する(Regier,J.L.、Shen,F.およびTriezenberg,S.J.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 90、883〜887)。それぞれのドメインは、GAL4のDNA結合ドメインなどの異種のDNA結合ドメインに融合させた場合、転写を活性化することが示された(Seipel,K.、Georgiev,O.およびSchaffner,W.(1992)EMBO−J 11、4961〜4968)。436位〜447位(このアミノ酸配列を配列番号1に示す)によって明らかにされる酸性ドメインをコードするオリゴヌクレオチド[F]を合成して、tetR遺伝子の3′末端との読み枠を合わせてプラスミドpUHD141−1/Xに挿入した。多数の組み込みのために、1個、2個、3個または4個の活性化モジュールを含有するトランス活性化因子をコードする配列が得られた。それらの配列を、それぞれ、TetR−F、TetR−FF、TetR−FFF、TetR−FFFFとした。これらの構築物の構造を図1に図示する。反復ユニットによって誘導される構造的な制約の可能性を低下させるために、それぞれのドメインをプロリンによって連結した:最初のドメインもまたプロリンによりTetRに結合する。それぞれのトランス活性化因子構築物を配列分析によって確認した。
【0102】
TetRとVP16由来の最小ドメインとの融合物の活性化能の範囲を広げるために、PheをそれぞれGlyまたはTyrで置換することによってVP16由来の最小ドメインの配列を変更した。変異型(G、Y)ドメインおよび野生型ドメインの様々な組合せを含有するTetR融合物をいくつか作製した。これらを図1に図示する。単純化するために、転写を活性化し得るこれらのTetR融合物を、表1(実施例3を参照のこと)に示すように、tTA1〜tTA7とする。
【0103】
実施例2:tetO配列に対する新規のTetR融合タンパク質のTcに依存する結合
本発明の新しいTetRキメラのtetOに対する結合をDNA遅延実験により調べた。様々なタンパク質を、HeLa細胞でのプラスミドpUHD141−1/XおよびpUHD18−1〜pUHD21〜1の一過性発現により産生させた。トランスフェクションの30時間後に、抽出物を調製し、放射能標識したtetO DNAとインキュベーションした。タンパク質−DNA複合体の電気泳動分離により、本発明の新しい融合タンパク質は、TetRの効率と比較できる効率でtetO DNAと結合し(図2を参照のこと)、そしてそれぞれの融合タンパク質の分子量に従って移動する複合体を形成することが明らかにされる。結合アッセイにおけるTcの存在は、複合体の形成を妨げる。さらに、この分析により、本発明の新しい融合タンパク質は、分解産物が検出できないほど安定であることが示唆される。
【0104】
VP16の変異した最小の活性化ドメインを含有するTetR融合物を、そのtetO結合について同様に調べた。HeLa細胞において産生される場合、すべての融合タンパク質は、DNA遅延実験によって明らかにされたように効率的にtetOと結合するようである(図3を参照のこと)。
【0105】
実施例3:TetR−[F]および変異型融合物の活性化能
本発明の新規なTetR融合物の活性化能を評価するために、HeLaX1/6細胞を、それぞれのタンパク質をコードするプラスミドで一過性にトランスフェクションして、ルシフェラーゼ活性を測定した。HeLa細胞株X1/6を35mm培養ディッシュで50%コンフルエンスまで増殖させた:この細胞は、染色体に組み込まれ、tTAに依存するプロモーターPhCMV★-1の転写制御下にあるルシフェラーゼ遺伝子(Gossen,M.およびBujard,H.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89、5547〜5551)を含有する。細胞を、TetRまたは新しい融合タンパク質の1つのいずれかをコードするDNAで一過性にトランスフェクションした。培養物をテトラサイクリン(1μgのTc/ml)の存在下または非存在下で30時間インキュベーションし、その後、ルシフェラーゼ活性を測定して、(pUHD16−1との同時トランスフェクションによって導入される)β−ガラクトシダーゼ活性に対して標準化した。2つの独立したトランスフェクション実験の測定値を下記の表1に示す。これは、tTA活性(100%)に対する相対値である。
【0106】
【表1】

【0107】
HeLaX1/6細胞株におけるルシフェラーゼ活性はほとんど検出することができないが、tTAをコードする遺伝子の一過性発現により大きく増大させることができる;ルシフェラーゼ活性はTcにより抑制されている(表1)。ルシフェラーゼ遺伝子の誘導は、TetR単独では効果がないために、TetRに融合した活性化ドメインに完全に依存している(表1)。
【0108】
様々なTetR−[F]融合物をこのアッセイで調べた場合、ルシフェラーゼ活性の緩やかな増大が認められる:TetR−FFでは、tTAによりもたらされる活性の約40%に達し、TetR−FFFではほぼ100%に達し、TetR−FFFFでは約230%に達する。驚くべきことに、最小ドメインを1個含有するTetR−Fは、このような条件下では活性化しない。
【0109】
変異型のVP16融合物の活性化能を分析した場合、TetR−GGの活性は本質的には見出されなかった。しかし、[G]ドメインを[F]ドメインと組み合わせることによって、それぞれ、tTAの活性化能の約0.03%(TetR−FG)および0.6%(TetR−GF)に達する低いが、明確な活性化が認められる。tTA活性の4.6%および14%に対応するより大きな活性化レベルが、FGYおよびGFYの組合せにより得られる。上記のTetR融合物を含有する[F]ドメインと一緒に、これらの組合せにより、活性化強度が3桁を超える大きさの範囲にまたがる一連のTc制御のトランス活性化因子が得られる。
【0110】
実施例4:tTA3およびtTA4を構成的に産生するHeLaX1/6細胞におけるルシフェラーゼ活性の制御
安定的にトランスフェクションされた細胞における新規なトランス活性化因子のいくつかの特性を特徴づけるために、PhCMVにより制御されるtTA、tTA3またはtTA4をコードする遺伝子をHeLaX1/6細胞に入れた。pUHD19−1またはpUHD26−1(表1)、およびハイグロマイシン耐性を有するpHMR272(Bernard,H.U.他(1985)Exp.Cell.Res.158、237〜243)との同時トランスフェクションによって耐性クローンを単離して、耐性クローンをTcの存在下および非存在下でルシフェラーゼ活性について調べた。効率的な調節に関して選択された4クローンの細胞を、10,000細胞/35mm培養ディッシュの密度で播種して、テトラサイクリン(1μg/ml)の存在下または非存在下で5日間増殖させた。結果を下記の表2にまとめる。示す結果は、5つの独立した培養物の算術平均である。
【0111】
【表2】

【0112】
これらの耐性クローンにおいて、Tc存在下のルシフェラーゼ活性は、トランスフェクションされていないX1/6細胞の活性と区別することができない(表2)。しかし、エフェクターの非存在下では、ルシフェラーゼ活性を104倍以上に刺激することができる。これらの結果により、安定的な細胞条件下で、tTA3およびtTA4の2つの新しいトランス活性化因子の機能性が確認される。これらはともに、tTA/rtTA応答性プロモーターによる転写を厳密に調節することができる。調べたクローンにおいて、TetR−FFおよびTetR−GFYによりもたらされる活性化レベルは、一過性トランスフェクションで得られた結果(表1)と比較することができないことを強調しておかなければならない。その後の実験において、トランス活性化因子をコードする同じ量のDNAを細胞に導入すると、同じ位の細胞内濃度のtTAタンパク質が得られた。従って、異なる活性化レベルは、それぞれのTetR融合物の特性を反映している。これに対して、安定的にトランスフェクションされた細胞では、トランス活性化因子をコードする遺伝子はゲノムに無作為に組み込まれている。その発現は、コピー数および遺伝子座の両方に依存し、その結果、その細胞内濃度はクローン毎に異なる。従って、このような濃度の違いは、それぞれのトランス活性化因子の特性というよりもむしろ、異なるレベルの活性化により引き起こされる。
【0113】
実施例5:トランス活性化因子の細胞内濃度
最小のドメインを有するトランス活性化因子が、tTAよりも大きな細胞内濃度で寛容であるかどうかを調べるために、HeLa細胞を、それぞれ、tTA、tTA2、tTA3およびtTA4をコードするプラスミドと同時にトランスフェクションした。対応するプラスミド(表1)は、G418耐性クローンもまたトランス活性化因子遺伝子を確実に発現するようにneo耐性マーカーを備えた(上記の「方法」節を参照のこと)。G418耐性に関する選抜によって、300〜500コロニーの集団が得られた。そのような集団を増殖させ、そしてタンパク質抽出物を、放射能標識したtetオペレーターDNAを用いた電気泳動移動度シフト実験によりトランス活性化因子タンパク質について分析した。図4Aに示すように、TetRおよび最小の活性化ドメインからなるトランス活性化因子はすべて、TetR−VP16融合タンパク質であるtTAよりも高い濃度で細胞内に存在する。興味深いことに、tTAと同じ活性化能を有するtTA2(表1)は、それにもかかわらず、3倍高い濃度で寛容である。しかし、新しいトランス活性化因子において、細胞内濃度は、それぞれの活性化能と反対に増大する。従って、tTA3およびtTA4の濃度は、tTAの濃度よりも、それぞれ、5倍および9倍高い。tTAまたはtTA3のいずれかを産生するそれぞれのクローンをDNA遅延アッセイによりトランス活性化因子の相対量について分析した場合、同じ結果が得られた:tTA3の細胞内濃度は、再度ではあるが、tTAの細胞内濃度の約5倍高かった(図4B)。tTAを発現するHeLa細胞から得られた抽出物により、DNA遅延アッセイにおいて、tTAの分解産物であると考えられる第2のタンパク質−DNA複合体が明らかにされる(図3)。この生成物は、他の細胞株においてもまた一定しない程度で見出されている。この複合体の移動度から、約42アミノ酸が、最もありそうなこととしてC端から切断されていることが推定され得る:なぜなら、N端からのこのような大きさの欠失はトランス活性化因子のオペレーター結合能を損なうからである。従って、この分解産物は、VP16分子の第2の(C端側の)活性化ドメインを失っていることが十分に考えられる。そのような短縮型タンパク質が依然としてトランス活性化因子として作用するかどうかは不明である。
【0114】
均等物
当業者は、日常的な範囲を超えることのない実験を行うことによって、本明細書中に記載されている本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、あるいはそのような均等物を見出すことができる。そのような均等物は、下記の請求項により包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】TetRと、VP16に由来する最小の酸性活性化ドメインとの融合物の概略図である。
【図2】様々なTetR融合物を特徴づける電気泳動移動度シフトアッセイの図面代用写真である。
【図3】様々なTetR融合物を特徴づける電気泳動移動度シフトアッセイの図面代用写真である。
【図4】図4Aおよび図4Bは、トランス活性化因子の細胞内濃度を比較する電気泳動移動度シフトアッセイの図面代用写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写を調節する融合タンパク質をコードする核酸分子であって、
前記融合タンパク質が、
Tetリプレッサー又は変異したTetリプレッサーであってDNA結合ドメインを含む第1のポリペプチドと、
これと機能的に連結された、転写活性化ドメインを含む第2のポリペプチドと、
を含み、
前記転写活性化ドメインが、
a)配列番号5、6、7又は8のアミノ酸配列を含む転写活性化ドメイン、
b)2コピー以上の配列番号1のアミノ酸配列の最小活性化ドメインからなる転写活性化ドメイン、及び
c)3コピーの配列番号1のアミノ酸配列の最小活性化ドメインからなる転写活性化ドメイン、
から選択されることを特徴とする、転写を調節する融合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項2】
請求項1に記載の核酸分子を含む宿主細胞における融合タンパク質の発現に適する形態の組換え発現ベクター。
【請求項3】
請求項1に記載の核酸分子を宿主細胞における融合タンパク質の発現に適する形態で含む宿主細胞。
【請求項4】
造血幹細胞、筋芽細胞、肝細胞、リンパ球、神経細胞、皮膚上皮細胞又は気道上皮細胞であることを特徴とする請求項3に記載の宿主細胞。
【請求項5】
哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、菌類細胞又は植物細胞であることを特徴とする請求項3に記載の宿主細胞。
【請求項6】
請求項1に記載の核酸分子によりコードされたポリペプチド。
【請求項7】
請求項1に記載の核酸分子又は請求項2に記載の組換え発現ベクターを含むことを特徴とするヒト以外のトランスジェニック動物。
【請求項8】
核酸分子が内在遺伝子と相同的に組み換えられていることを特徴とする請求項7に記載のヒト以外のトランスジェニック動物。
【請求項9】
マウス、ヤギ、ヒツジ、ブタ及びウシから選択されることを特徴とする請求項7又は8に記載のヒト以外のトランスジェニック動物。
【請求項10】
請求項1に記載の核酸分子又は請求項2に記載の組換え発現ベクターを含むことを特徴とする薬物組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の核酸分子又は請求項2に記載の組換え発現ベクターを遺伝子治療で投与される薬物組成物を製造するために使用する方法。
【請求項12】
請求項1の核酸分子又は請求項3〜5のいずれか1項に記載の宿主細胞を含むキット。
【請求項13】
培養細胞中、目的タンパク質をインビトロで生産する方法であって、
a)目的タンパク質をコードするヌクレオチド配列の転写を刺激する濃度のテトラサイクリン又はテトラサイクリンアナログの存在下の培養基において、請求項1に記載の核酸と、少なくとも1種類のtetオペレーター配列に機能的に連結された目的タンパク質をコードする核酸の両方が導入された宿主細胞を生産規模で増殖させる工程、及び
b)得られた宿主細胞又は培養基から目的タンパク質を単離する工程、
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−106288(P2009−106288A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289475(P2008−289475)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【分割の表示】特願平11−507457の分割
【原出願日】平成10年7月1日(1998.7.1)
【出願人】(508336414)テト、システムズ、ホールディング、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング、ウント、コンパニー、コマンデイトゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】