説明

殺微生物組成物

【課題】様々な種類の微生物に対して向上された活性を有する、殺微生物剤のさらなる組み合わせを提供する。
【解決手段】N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよび2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドを含有する殺微生物組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個々の殺微生物剤について観察される活性よりも高い活性を有する、選択された殺微生物剤の相乗的組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの場合において、商業上の殺微生物剤は、ある種の微生物、例えば、ある殺微生物剤に対して耐性であるものに対する活性が弱いために、あるいは強烈な環境条件のために、高い使用濃度でさえも微生物の有効な制御を提供することができない。特定の最終使用環境における微生物を全体的に抑制するために、異なる殺微生物剤の組み合わせを使用する場合がある。例えば、米国特許出願公開第2007/0078118号は、N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(MBIOT)の他の殺生物剤との相乗的組み合わせを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0078118号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、微生物の有効な制御を提供するために、様々な種類の微生物に対して向上された活性を有する、殺微生物剤のさらなる組み合わせが必要とされている。さらに、環境的および経済的利益のために、含有する個々の殺微生物剤のレベルがより少ない組み合わせが必要とされている。本発明により取り扱われる課題は、このような殺微生物剤のさらなる組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン;並びに(b)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド;ホルムアルデヒド;2−N−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン;プロピコナゾール;テブコナゾール;ならびに、クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの混合物;の中から選択される少なくとも1つの殺微生物剤;を含む殺微生物組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書において用いられる場合、次の用語は、文脈が明らかに他を示していない限り、指定された定義を有する。「MBIT」はN−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンである。「殺微生物剤」なる用語は、ある現場において微生物を殺すことができるか、微生物の成長を抑制することができるかまたは成長を制御することができる化合物を指し、殺微生物剤は、殺細菌剤、殺真菌剤および殺藻剤を包含する。「微生物」なる用語は、たとえば、真菌(たとえば、酵母およびカビ)、細菌および藻類を包含する。「現場」なる用語は、微生物による汚染に曝される工業システムまたは生産物を指す。次の略語を本明細書全体にわたって使用する:ppm=100万分の1重量部(重量/重量)、mL=ミリリットル、ATCC=アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、MBC=最小殺生物濃度、およびMIC=最小阻止濃度。他に特定しない限り、温度は摂氏度(℃)であり、百分率(%)への言及は重量百分率である。有機殺微生物剤の量は、活性成分基準でppm(w/w)において示される。
【0007】
本発明の組成物は予想外にも、個々の殺微生物剤のレベルよりも少ない、組み合わせられた活性成分のレベルで、向上された殺微生物効果を提供することが見出された。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、抗微生物組成物は、N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよび2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドを含む。好ましくは、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドのN−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンに対する重量比は、1:0.01〜1:114、さらに好ましくは1:0.01〜1:29、さらに好ましくは0.02〜1:5.8である。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、抗微生物組成物は、N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよびホルムアルデヒドを含む。好ましくは、ホルムアルデヒドのN−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンに対する重量比は、1:0.0022〜1:19、さらに好ましくは1:0.022〜1:19、さらに好ましくは1:0.17〜1:19である。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、抗微生物組成物は、N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよび2−N−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含む。好ましくは、2−N−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンのN−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンに対する重量比は、1:0.02〜1:882、さらに好ましくは、1:0.13〜1:882、さらに好ましくは1:0.13〜1:150である。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、抗微生物組成物は、N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよびプロピコナゾールを含む。好ましくは、プロピコナゾールのN−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンに対する重量比は1:0.0022〜1:6.8、さらに好ましくは1:0.075〜1:6.8である。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、抗微生物組成物は、N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよびテブコナゾールを含む。好ましくは、テブコナゾールのN−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンに対する重量比は、1:0.0033〜1:46、さらに好ましくは1:0.15〜1:46である。
【0013】
本発明の一つの実施態様において、抗微生物組成物は、N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンと、クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの3:1混合物とを含む。好ましくは、混合物は、それぞれの約3:1混合物である。好ましくは、混合物のN−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンに対する重量比は1:91〜1:114である。
【0014】
本発明の組成物における殺微生物剤は、「そのまま」使用することができ、またはまず溶媒または固体担体と配合することができる。好適な溶媒としては、たとえば、水;グリコール、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなど;グリコールエーテル;アルコール、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、フェネチルアルコールおよびフェノキシプロパノールなど;ケトン、たとえばアセトンおよびメチルエチルケトンなど;エステル、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル、クエン酸トリアセチル、およびグリセロールトリアセテートなど;カーボネート、たとえばプロピレンカーボネートおよびジメチルカーボネートなど;およびそれらの混合物が挙げられる。溶媒は、水、グリコール、グリコールエーテル、エステルおよびそれらの混合物から選択されるのが好ましい。好適な固体担体としては、たとえば、シクロデキストリン、シリカ、珪藻土、ワックス、セルロース系物質、アルカリおよびアルカリ土類(たとえば、ナトリウム、マグネシウム、カリウム)金属塩(たとえば、塩化物、硝酸塩、臭化物、硫酸塩)および木炭が挙げられる。
【0015】
殺微生物剤成分を溶媒中に配合する場合、配合方物は界面活性剤を任意に含有することができる。このような配合物が界面活性剤を含む場合、これらは一般に乳化性濃縮物、エマルジョン、ミクロ乳化性濃縮物、またはミクロエマルジョンの形態である。乳化性濃縮物は十分な量の水を添加するとエマルジョンを形成する。ミクロ乳化性濃縮物は十分な量の水を添加するとミクロエマルジョンを形成する。このような乳化性およびミクロ乳化性濃縮物は、一般に当該技術分野においてよく知られており;このような配合物は界面活性剤を含まないのが好ましい。様々なミクロエマルジョンおよびミクロ乳化性濃縮物の調製に関するさらなる一般的および具体的詳細については、米国特許第5,444,078号を参照することができる。
【0016】
殺微生物成分は、分散液の形態においても配合することができる。分散液の溶媒成分は、有機溶媒または水でよく、好ましくは水である。このような分散液は、アジュバント、たとえば共溶剤、増粘剤、凍結防止剤、分散剤、フィラー、顔料、界面活性剤、バイオ分散剤、スルホコハク酸塩、テルペン、フラノン、ポリカチオン、安定剤、スケール抑制剤および腐食防止添加剤を含むことができる。
【0017】
両殺微生物剤をそれぞれまず溶媒と配合する場合、第一殺微生物剤について使用される溶媒は、もう一方の商業上の殺微生物剤を配合するために使用される溶媒と同じであっても、異なっていてもよいが、水がほとんどの工業的殺生物用途に対して好ましい。2つの溶媒が混和性であるのが好ましい。
【0018】
当業者には、本発明の殺微生物成分を現場に、逐次的に、同時に添加することができ、あるいは現場に添加する前に組み合わせることができることが分かる。第一殺微生物成分と第二殺微生物成分を現場に同時または逐次的に添加するのが好ましい。殺微生物剤が同時または逐次的に添加される場合、それぞれ個々の成分は、アジュバント、たとえば溶媒、増粘剤、凍結防止剤、着色剤、金属イオン封鎖剤(たとえば、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンジコハク酸、イミノジコハク酸およびそれらの塩)、分散剤、界面活性剤、バイオ分散剤、スルホコハク酸塩、テルペン、フラノン、ポリカチオン、安定剤、スケール抑制剤、および腐食防止添加剤を含有することができる。
【0019】
本発明の殺微生物組成物は、殺微生物的に有効な量の組成物を、微生物の攻撃を受ける現場上に、現場中に、または現場に導入することにより、微生物またはさらに高次の形態の水生生物(たとえば、原生動物、無脊椎動物、コケムシ、渦鞭毛藻、甲殻類、軟体動物など)の成長を抑制するために用いることができる。好適な現場としては、たとえば:工業プロセス水;電着堆積システム;冷却塔;空気洗浄機;ガス洗浄機;鉱物スラリー;廃水処理;装飾用噴水;逆浸透圧濾過;限外濾過;バラスト水;エバポレーター用凝縮器;熱交換器;パルプおよび紙加工用液および添加剤;デンプン;プラスチック;エマルジョン;分散液;ペイント;ラテックス;コーティング、たとえばワニスなど;建築用品、たとえばマスチック剤、コーキング剤、およびシーラント剤など;建築用接着剤、たとえばセラミック接着剤、カーペット裏地接着剤、およびラミネート用接着剤など;工業用または一般消費者用接着剤;写真用薬品;印刷液;家庭用品、たとえば浴室用および台所用クリーナー;化粧品;洗面用品;シャンプー;石鹸;洗剤;工業用クリーナー;フロアポリッシュ;洗濯用すすぎ水;金属加工用液;コンベヤー用潤滑剤;油圧油;皮革および皮革製品;織物;織物製品;木材および木材製品、たとえば合板、チップボード、ウォールボード、フレークボード(flakeboard)、積層梁、配向性ストランドボード、ハードボード、およびパーティクルボード;石油精製液;燃料;油田用液、たとえば噴射水(injection water)、破裂液体(fracture fluids)及び掘穿泥水(drilling muds);農業用アジュバント保存剤;界面活性剤保存剤;医療機器;診断試薬保存剤;食品保存剤、たとえばプラスチックまたは紙製食品用ラップ;食品、飲料、および工業プロセス低温殺菌器;便器;レクリエーション用水;プール;および温泉が挙げられる。
【0020】
好ましくは、本発明の殺微生物組成物は、鉱物スラリー、パルプおよび紙加工用液および添加剤、デンプン、エマルジョン、分散液、ペイント、ラテックス、コーティング、建築用接着剤、たとえばセラミック接着剤、カーペット裏地接着剤、写真用薬品、印刷液、家庭用品、たとえば浴室用および台所用クリーナー、化粧品、洗面用品、シャンプー、石鹸、洗剤、工業用クリーナー、フロアポリッシュ、洗濯用すすぎ水、金属加工用液、織物製品、木材および木材製品、農業用アジュバント保存剤、界面活性剤保存剤、診断試薬保存剤、食品保存剤、および食品、飲料、および工業プロセス低温殺菌器から選択される1以上の現場での微生物の成長を抑制するために用いられる。
【0021】
現場における微生物およびさらに高次の水生生物形態の成長を抑制または制御するために必要な本発明の組成物の具体的な量は、防御される個々の現場に依存する。現場における微生物の成長を制御するための本発明の組成物の量は、典型的には、現場において0.1〜1,000ppmの、組成物のイソチアゾリン成分を提供すれば十分である。組成物のイソチアゾリン成分が少なくとも0.5ppm、さらに好ましくは少なくとも4ppm、最も好ましくは少なくとも10ppmの量で現場において存在するのが好ましい。組成物のイソチアゾリン成分が現場において1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下、最も好ましくは200ppm以下の量で存在するのが好ましい。
【実施例】
【0022】
〔材料および方法〕
本発明の組み合わせの相乗作用は、広範囲の濃度および比率の化合物を試験することにより実証された。
【0023】
相乗作用の測定の一方法は、Kull,F.C.;Eisman,P.C.;Sylwestrowicz,H.D.およびMayer,R.L.によるApplied Microbiology 9:538−541(1961)に記載された、下式により決定される比率を用いる、産業上受け入れられている方法である。
/Q+Q/Q=相乗指数(「SI」)
(式中:
=単独で作用させた場合にエンドポイントを提供する化合物A(第一成分)の濃度(ppm)(化合物AのMIC)
=混合物中でエンドポイントを提供する化合物Aの濃度(ppm)
=単独で作用させた場合にエンドポイントを提供する化合物B(第二成分)の濃度(ppm)(化合物BのMIC)
=混合物中でエンドポイントを提供する化合物Bの濃度(ppm))
【0024】
/QとQ/Qの合計が1より大きい場合、拮抗作用が示される。合計が1に等しい場合、相加作用が示され、1より小さい場合、相乗作用が示される。SIがより小さいほど、特定の混合物により示される相乗作用は、より大きくなる。殺微生物剤の最小阻止濃度(MIC)は、特定の条件の組み合わせのもとで試験された、添加された微生物の成長を防止する、最低の濃度である。
【0025】
相乗試験は、試験微生物の最適成長のために設計された培地を用いた標準的マイクロタイタープレート分析を用いて行われた。細菌を試験するために、0.2%グルコースおよび0.1%酵母エキスで補足された最小塩培地(M9GY培地)を使用し;酵母およびカビを試験するためにジャガイモデキストロースブロス(PDB培地)を使用した。この方法において、高分解能MIC分析を様々な濃度のMBITの存在下で行うことにより、広範囲におよぶ殺微生物剤の組み合わせを試験した。様々な量の殺微生物剤をマイクロタイタープレートの一列に添加し、その後に10倍希釈を行って、自動化液体ハンドリングシステムを用いて2ppmから10,000ppmまでの範囲の活性成分の一連のエンドポイントを得ることにより、高分解能MICを決定した。
【0026】
本発明の組み合わせの相乗作用を、細菌、大腸菌(E.coli−ATCC#8739)、酵母、カンジダ・アルビカンス(C.albicans−ATCC10231)、およびカビ、アスペルギルス・ニガー(A.niger−ATCC16404)に対して決定した。細菌を約5×10細菌/mLの濃度で使用し、酵母およびカビを約5×10真菌/mLの濃度で使用した。これらの微生物は多くの消費者および工業用途における天然汚染物質の代表例である。プレートを視覚的に微生物成長(濁度)について評価して、25℃(酵母およびカビ)または30℃(細菌)で様々なインキュベーション時間後のMICを決定した。
【0027】
本発明のMBIT組み合わせの相乗作用の実証のための試験結果を下記表1〜6に示す。各試験において、第二成分(B)はMBITであり、第一成分(A)は他の商業用の殺微生物剤であった。各表は、MBITおよび他の成分の特定の組み合わせ;インキュベーション時間に関して試験された微生物に対する結果;MBIT単独(Q)、他の成分単独(Q)、混合物中のMBIT(Q)および混合物中の他の成分(Q)についてのMICにより測定されるエンドポイント活性(ppm);SI計算値;および試験された各組み合わせについての相乗比の範囲(他の成分/MBITまたはA/B)を示す。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

【0034】
【表7】

【0035】
【表8】

【0036】
【表9】

【0037】
【表10】

【0038】
【表11】

【0039】
【表12】

【0040】
【表13】

【0041】
【表14】

【0042】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン;および
(b)2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド;
を含む殺微生物組成物。
【請求項2】
2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドのN−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンに対する比が1:0.01〜1:114である請求項1記載の殺微生物組成物。

【公開番号】特開2012−87140(P2012−87140A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−274562(P2011−274562)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【分割の表示】特願2008−144076(P2008−144076)の分割
【原出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】