説明

殺生物組成物および使用方法

2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、ならびに1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、およびヘキサヒドロトリアジン化合物からなる群から選択される化合物を含む殺生物組成物を提供する。該組成物は水性系または水含有系における微生物を制御するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、殺生物組成物、ならびに水性系および水含有系における微生物の制御のためのその使用方法に関する。該組成物は、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドを第2の殺生剤とともに含む。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
微生物汚染からの水含有システムの保護は、多くの工業製造プロセス,例えば油または天然ガスの製造操作の成功のために重大である。油およびガスの製造において、好気性および嫌気性の両者のバクテリアによる微生物汚染は、深刻な問題,例えば貯留タンクの悪化(主に嫌気性硫酸塩還元バクテリア(SRB)によるもの)、設備およびパイプラインの金属表面上の微生物学的腐食(MIC)、ならびにポリマー添加剤の分解の原因となる可能性がある。
【0003】
微生物汚染は、油およびガスの操作(注入水、生成水、ダウンホール、ボア近傍領域、脱気塔において、輸送パイプライン、水攻法および水圧破砕のための源水、例えば池水および保持タンク水、油およびガスの貯蔵タンク、ならびに機能性水系流体(例えば掘削泥水)、仕上流体または改修流体、ハイドロテスト流体、刺激流体、パッカー流体、ならびに破砕流体、が挙げられる)の全体に亘りいずれの場所でも生じる可能性がある。
【0004】
殺生剤は、水性系における微生物の生育の消毒および制御に一般的に使用される。しかし、全ての殺生剤が広範囲の微生物および/または温度に亘って有効であるわけではなく、幾つかは他の化学処理添加剤と相容れない。加えて、幾つかの殺生剤は長い十分な期間に亘る微生物制御を与えない。油およびガスの用途において、H2Sおよび高温(最大120℃以上)の存在は、殺生剤処理についての大きくかつ特異な課題になる。
【0005】
2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)は、多くの工業プロセス,例えば油およびガスの操作で一般に使用される、有効な速く作用する殺生剤である。しかし、DBNPAが容易に加水分解すること(これは高いpHまたは温度で加速される)も知られている。従って、DBNPAは、一般に、長期持続性の微生物制御を与えることができない。結果として、広範囲の微生物を制御でき、速く作用するとともに長期持続性である殺生剤の提供が当業界における顕著な進歩である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の簡単な要約
一側面において、本発明は、殺生物組成物を提供する。該組成物は、水性系または水含有系における微生物生育の制御に有用である。本発明の組成物は2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドを、1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、およびヘキサヒドロトリアジン化合物からなる群から選択される殺生物化合物とともに含む。
【0007】
第2の側面において、本発明は、水性系または水含有系における微生物を制御する方法を提供する。該方法は、系を本開示で記載する有効量の殺生物組成物で処理することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
上記のように、本発明は、殺生物組成物、および微生物の制御におけるその使用方法を提供する。該組成物は2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を、1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、およびヘキサヒドロトリアジン化合物からなる群から選択される殺生物化合物とともに含む。驚くべきことに、本開示の、DBNPAおよび他の殺生物化合物の組合せは、水性媒体または水含有媒体において微生物制御のために用いる場合、相乗性であることを見出した。すなわち、組合せ物質は、これらの特定使用濃度での個別の性能に基づいて他に予測されるよりも改善された殺生物特性をもたらす。観察される相乗性は、許容可能な殺生物特性を実現するために用いる低減された量の物質を可能にし、よって潜在的に環境への影響および物質コストを低減する。
【0009】
相乗性を示すことに加え、本発明の組成物はまた、広範囲の微生物種(好気性および嫌気性の両者の微生物が挙げられる)を制御するのに有効である。更に、組成物は、長期間、そして油およびガスの用途において典型的に見出される条件下で、機能的である。これらの寄与の結果として、組成物は油および天然ガスの産業において特に有用である。これらの産業において、好気性および嫌気性の両者のバクテリアを制御でき、そして迅速な除染および長期の保護の両者を与える殺生物剤が必要である。
【0010】
本明細書の目的のために、「微生物」の意味は、これらに限定するものではないが、バクテリア、菌類、藻類、およびウイルスを包含する。単語「制御」および「制御する」は、これらの意味の範囲内で包含するように広範に解釈すべきでありこれらに限定するものではないが、微生物の生育または増殖を阻害すること、微生物を殺すこと、消毒、および/または防腐が挙げられる。
【0011】
第1の態様において、本発明の組成物は、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(「DBNPA」)および1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン(「CTAC」)を含む。CTAC化合物はシス異性体、トランス異性体、またはシス異性体とトランス異性体との混合物であることができる。好ましくは、これは、シス異性体、またはシス異性体とトランス異性体との混合物である。
【0012】
好ましくは、本発明の第1の態様において、DBNPAのCTACに対する質量比は、約100:1〜1:100、より好ましくは50:1〜1:50、および更により好ましくは35:1〜1:35である。特に好ましい態様において、DBNPAのCTACに対する質量比は、約10:1〜1:34である。
【0013】
更なる態様において、DBNPA/CTAC組成物は、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(「ブロノポール」または「BNPD」)を第3の殺生物化合物として更に含む。好ましくは、この態様におけるDBNPAのブロノポールに対する質量比は約1:1〜1:5であり、ブロノポールのCTACに対する質量比は約1:2〜約1:8である。
【0014】
更なる態様において、微生物は好気性である。この態様において、好ましいDBNPAのCTACに対する質量比は約10:1〜1:34である。
【0015】
更なる態様において、微生物は嫌気性である。この態様において、好ましいDBNPAのCTACに対する質量比は約9:1〜1:3である。
【0016】
更なる態様において、微生物は嫌気性であり、硫化物イオンが処理すべき水性系中に存在する。この態様において、DBNPAのCTACに対する質量比は好ましくは約2:1〜1:8である。
【0017】
DBNPAおよびCTACは、The Dow Chemical Companyから市販で入手可能であり、および/または周知技術を用いて当業者により容易に製造できる。
【0018】
第2の態様において、本発明の組成物はDBNPAおよびトリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン(「トリスニトロ」)を含む。好ましくは、この第2の態様において、DBNPAのトリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタンに対する質量比は、約100:1〜1:100、より好ましくは50:1〜1:50、および更により好ましくは20:1〜1:20である。特に好ましい態様において、DBNPAのトリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタンに対する質量比は約9:1〜1:8である。
【0019】
更なる態様において、微生物は好気性である。この態様において、好ましいDBNPAのトリスニトロに対する質量比は約1:3〜1:8である。
【0020】
更なる態様において、微生物は嫌気性である。この態様において、DBNPAのトリスニトロに対する質量比は、好ましくは約9:1である。
【0021】
トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタンは、The Dow Chemical Companyから市販で入手可能であり、および/または周知技術を用いて当業者により容易に製造できる。
【0022】
第3の態様において、本発明の組成物は、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドおよびヘキサヒドロトリアジン化合物を含む。好ましくは、ヘキサヒドロトリアジン化合物は、式I:
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、R1、R2およびR3は独立に、水素、C1−C5アルキル基、C1−C5ヒドロキシアルキル基、または構造−R4−O−R5を有するアルコキシアルキレン基からなる群から選択され、R4は独立に炭素原子1〜5個のアルキレン基であり、そしてR5は独立に炭素原子1〜5個のアルキル基である)
のものである。
【0025】
式Iに係る好ましいヘキサヒドロトリアジンとしては、R1、R2およびR3が同じであってアルキルまたはヒドロキシアルキルのいずれかである化合物が挙げられる。より好ましくは、これらはエチルまたはヒドロキシエチルである。特に好ましい化合物は、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンおよびヘキサヒドロ−1,3,5−トリエチル−s−トリアジンである。
【0026】
好ましくは、本発明の第3の態様において、DBNPAのヘキサヒドロトリアジンに対する質量比は、約100:1〜1:100、より好ましくは50:1〜1:50、および更により好ましくは20:1〜1:20である。特に好ましい態様において、DBNPAのヘキサヒドロトリアジンに対する質量比は、約8:1〜1:9である。
【0027】
更なる態様において、微生物は好気性である。この態様において、好ましいDBNPAのヘキサヒドロトリアジンに対する質量比は約8:1である。
【0028】
更なる態様において、微生物は嫌気性である。この態様において、DBNPAのヘキサヒドロトリアジンに対する質量比は、好ましくは約1:1〜1:9である。
【0029】
式Iに係るヘキサヒドロトリアジンは、市販で入手可能であり、および/または周知技術(例えば、第US3,981,998号,第US4,978,512号,および/または第US5,347,007号に記載されるような)を用いて当業者によって容易に製造できる。
【0030】
本発明の組成物は、種々の水性系および水含有系における微生物の制御に対して有用である。このような系の例としては、これらに限定するものではないが、油およびガスの操作において存在するプロセス水および水性系、冷却水、ボイラー水、パルプおよび紙のミル水、他の工業プロセス水、バラスト水、廃水、金属作動流体、ラテックス、塗料、コーティング、接着剤、インク、テープジョイントコンパウンド、パーソナルケア製品および家庭用製品、水性エマルション、インク、顔料分散体、およびテキスタイル流体が挙げられる。加えて、ブレンド物は、DBNPAが殺生剤として使用され、そして長期持続性の微生物保護が所望される他の領域で採用できる。
【0031】
好ましい水性系または水含有系は、油およびガスの操作において存在するものである。油およびガスの操作における水性系または水含有系の例としては、例えば、注入水および生成水、水攻法および水圧破砕のための源水,例えば池水および保持タンク水、機能性流体,例えば掘削泥水、仕上流体もしくは改修流体、ハイドロテスト流体、刺激流体、パッカー流体、および破砕流体、油井およびガス井、分離系、貯蔵系および輸送系、油およびガスのパイプライン、油およびガスの容器、または燃料が挙げられる。
【0032】
当業者は、過度の実験なしで、任意の特定の用途において使用すべき組成物の濃度を容易に決定できる。例示のために、好適な活性物質濃度(DBNPAおよび第2の殺生剤の合計)は、殺生剤を含む水性系または水含有系の総質量基準で、典型的には1〜5000ppm、好ましくは5〜1000ppmである。油およびガスの用途についての幾つかの態様において、組成物の活性物質濃度は、上側処理について約5〜約300ppm、ダウンホール処理について約30〜約500ppmであることが好ましい。
【0033】
本発明の組成物の成分は、水性系または水含有系に、別個に添加でき、または添加前に前混合できる。当業者は、適切な添加方法を容易に決定できる。組成物は、他の添加剤,例えば、これらに限定するものではないが、界面活性剤、イオン性/非イオン性のポリマーおよびスケール、および腐食防止剤、酸素捕捉剤、ならびに/または追加の殺生剤とともに系中で使用できる。
【0034】
本明細書で用いる「アルキル」は、直鎖および分岐鎖の脂肪族基を包含する。好ましいアルキル基としては、これらに限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、およびペンチルが挙げられる。
【0035】
「ヒドロキシアルキル」は、ヒドロキシル基で置換された上記の本開示で定義するアルキル基を意味する。好ましいヒドロキシアルキル基としては、これらに限定するものではないが、ヒドロキシメチルおよびヒドロキシエチルが挙げられる。
【0036】
「アルキレン」は、2つの他の化学基の間に位置してこれらを接続する働きをする、本開示において上記で定義するアルキル基を意味する。好ましいアルキレン基としては、限定なく、メチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンが挙げられる。
【0037】
以下の例は、本発明の例示であるがその範囲の限定を意図しない。特記がない限り、本開示で用いる比、パーセント、部等は質量基準である。
【0038】

以下の例において報告する相乗指数は、以下の等式を用いて算出する:
相乗指数=Ca/CA+Cb/CB
式中、Ca:組合せで用いた場合に所定レベルまたは完全な殺バクテリアを実現するのに必要な殺生剤Aの濃度;
CA:単独で用いた場合に所定レベルまたは完全な殺バクテリアを実現するのに必要な殺生剤Aの濃度;
Cb:組合せで用いた場合に所定レベルまたは完全な殺バクテリアを実現するのに必要な殺生剤Bの濃度;
CB:単独で用いた場合に所定レベルまたは完全な殺バクテリアを実現するのに必要な殺生剤Bの濃度;
【0039】
相乗指数(SI)1は相加性を示し、相乗指数1未満は相乗性を示し、そして相乗指数1超は拮抗性を示す。
【0040】
殺生物効果を評価するために当業者に公知の種々の方法を用いることができる。以下の例において、処理されたサンプルのアリコートを既定時点で取り出し、所定レベルまたは完全な殺バクテリアを実現するのに必要な濃度を、連続希釈を含む培地系法によって評価する。幾つかの例では、方法は、(例えば高温試験について、または硫化物の存在について)本発明者の係属中の国際出願第PCT/US08/075755号(2008年9月10日出願)(これは参照により本明細書に組入れる)に記載される方法論に基づきまたはこれに適合する。
【0041】
例1
DBNPA/CTAC、DBNPA/トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン(トリスニトロ)、およびDBNPA/ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン(HHT)の組合せの嫌気性バクテリアに対する評価
嫌気性チャンバー内に、脱気滅菌塩溶液(3.1183gのNaCl,1.3082mgのNaHCO3,47.70mgのKCl,72.00mgのCaC12,54.49mgのMgSO4,172.28mgのNa2SO4,43.92mgのNa2CO3,1L水中)を油田から単離した嫌気性SRBコンソーシアムで、最終バクテリア濃度106〜107CFU/mLで汚染させる。次いで、この汚染させた水のアリコートを殺生剤溶液(単独または組合せ)で種々の濃度にて処理する。混合物を40℃で24時間インキュベートした後、完全な殺バクテリアを実現するための最小殺生剤濃度(MBC)を評価する。表1は、DBNPA/CTAC組合せについての結果を纏め、表2は、DBNPA/トリスニトロについての結果を纏め、そして表3はDBNPA/HHT組合せについての結果を纏める。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
表1〜3に示すように、DBNPAは、CTAC、トリスニトロ、またはHHTとの組合せで、特定の質量比にて嫌気性SRBに対する相乗効果を示す。従って、殺生剤を別個にではなく組合せで用いる場合、より低い用量を良好なバクテリア制御のために使用できる。
【0046】
例2
DBNPA/CTAC、DBNPA/トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン(トリスニトロ)、およびDBNPA/ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン(HHT)組合せの好気性バクテリアに対する評価
滅菌NaCl溶液(0.85%)を、Psedomonas aeruginosa ATCC 10145およびStaphylococcus aureus ATCC 6538で、最終バクテリア濃度約106CFU/mlで汚染させる。次いで、この汚染させた水のアリコートを殺生剤溶液(単独または組合せ)で種々の濃度にて処理する。混合物を37℃で24時間インキュベートした後、完全な殺バクテリアを実現するための最小殺生剤濃度(MBC)を評価する。表4は、DBNPA/CTAC組合せについての結果を纏め、表5は、DBNPA/トリスニトロ組合せについての結果を纏め、そして表6はDBNPA/HHT組合せについての結果を纏める。
【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
表4〜6に示すように、DBNPAは、CTAC、トリスニトロ、またはHHTとの組合せで、特定の質量比にて好気性バクテリアに対する相乗効果を示す。従って、殺生剤を別個にではなく組合せで用いる場合、より低い用量を良好なバクテリア制御のために使用できる。
【0051】
例3
再接種試験におけるDBNPA、CTAC、およびDBNPA/CTAC組合せの好気性バクテリアに対する評価
DBNPAおよびCTACを、合成表面水の滅菌溶液(CaC12 0.2203g,MgSO4 0.1847g,NaHCO3 0.1848g,DI水 1L)に単独および種々の組合せの両者で添加する。混合バクテリアコンソーシアムの初期接種材料(Pseudomonas aeruginosa ATCC 10145,Pseudomonas aeruginosa ATCC 15422,Enterobacter aerogenes ATCC 13048,Escherichia coli ATCC 11229,Klebsiella pneumoniae ATCC 8308,Staphylococcus aureus ATCC 6538,Salmonella choleraesuis ATCC 10708)を各殺生物溶液に最終濃度5×106CFU/mLにて添加する。2、6および13日後、殺生物溶液に同じバクテリアコンソーシアムを最終濃度5×104CFU/mLの追加バクテリアまで再接種する。全処理を室温でインキュベートする。結果を表7に示す。これは微生物における≧4log10の殺低減を実現するのに必要な殺生剤濃度を報告する。
【0052】
【表7】

【0053】
表7から分かるように、DBNPAのCTACとの組合せは好気性バクテリアの複数の接種に対して、そして長期に亘って相乗性である。
【0054】
例4
硫化物リッチおよび複数接種条件でのDBNPA、CTAC、およびDBNPA/CTAC組合せの、嫌気性バクテリアに対する評価
嫌気性チャンバー内に、DBNPA、CTACおよび種々の濃度でのDBNPA/CTAC組合せの殺生剤溶液を塩溶液中で調製する(3.1183gのNaCl,1.3082mgのNaHCO3,47.70mgのKCl,72.00mgのCaC12,54.49mgのMgSO4,172.28mgのNa2SO4,43.92mgのNa2CO3,1L水中)。次いで殺生剤溶液のアリコートに油田から単離した嫌気性SRBコンソーシアムを最終バクテリア濃度約107CFU/mLで接種する。混合物を室温でインキュベートし、SRBコンソーシアム(104〜105CFU/mL)および10ppm硫化物イオンを毎日接種する。混合物中に残っている生菌バクテリアを種々のインキュベーション時間で最大7日まで、連続希釈法を用いて評価する。次いでバクテリアlog低減を算出する。以下の時点:2時間、1日、および7日の全3つにて少なくとも99.9%バクテリア低減を実現するのに必要な最低殺生剤濃度の選択によって殺生物効果を評価する。次いで相乗指数を算出する。結果を表8に示す。
【0055】
【表8】

【0056】
表8から分かるように、DBNPAのCTACとの組合せは嫌気性バクテリアおよび硫化物イオンの複数の接種に対して、長期に亘って相乗性である。
【0057】
例5
高温、硫化物リッチおよび再接種条件でのDBNPA、CTAC、およびDBNPA/CTAC組合せの、嫌気性バクテリアに対する評価
嫌気性チャンバー内に、DBNPA、CTACおよび種々の濃度でのDBNPA/CTAC組合せの殺生剤溶液を塩溶液中で調製する(3.1183gのNaCl,1.3082mgのNaHCO3,47.70mgのKCl,72.00mgのCaC12,54.49mgのMgSO4,172.28mgのNa2SO4,43.92mgのNa2CO3,1L水中)。次いで殺生剤溶液のアリコートに104〜105CFU/mLの油田から単離した嫌気性SRBコンソーシアム 10ppm硫化物イオンを接種し、次いで80℃で嫌気性条件下にて7日間インキュベートする。インキュベート中、混合物に毎日104〜105CFU/mLの油田SRBコンソーシアムおよび10ppm硫化物イオンを接種する。80℃にて2時間加熱した後、殺生物効果をフィールドSRBコンソーシアムに対して40℃にて2時間評価する。同じサンプルを、1日から7日の80℃での加熱後、フィールドSRBコンソーシアムに対して40℃にて24時間評価する。以下の時点:2時間、1日、および7日の全3つにて少なくとも99.9%バクテリア低減を実現するのに必要な最低殺生剤濃度の選択によって殺生物効果を評価する。結果を表9に示す。
【0058】
【表9】

【0059】
表9から分かるように、特定質量比でのDBNPAのCTACとの組合せは、高温条件下で硫化物イオンの存在下での嫌気性バクテリアの複数の接種に対して、そして長期に亘って相乗性である。
【0060】
例6
三元のDBNPA、CTAC、およびブロノポールの組合せの評価
DBNPA、ブロノポール、およびCTACを、合成表面水(CaCl2 0.2203g,MgSO4 0.1847g,NaHCO3 0.1848g,脱イオン水 1L)の滅菌溶液に、単独および種々の組合せの両者で添加する。混合バクテリアコンソーシアムの初期接種材料(Pseudomonas aeruginosa ATCC 10145,Pseudomonas aeruginosa ATCC 15422,Enterobacter aerogenes ATCC 13048,Escherichia coli ATCC 11229,Klebsiella pneumoniae ATCC 8308,Staphylococcus aureus ATCC 6538,Salmonella choleraesuis ATCC 10708)を、各殺生物溶液に最終濃度5×106CFU/mLで添加する。2、6および13日後、殺生物溶液に同じバクテリアコンソーシアムを最終濃度5×104CFU/mLの追加バクテリアまで再接種する。全処理を室温でインキュベートする。結果を表10に示し、これは微生物において≧4log10殺低減を実現するのに必要な殺生剤濃度を報告する。
【0061】
【表10】

【0062】
本発明をその好ましい態様に従って上記してきたが、本開示の精神および範囲の中で改変できる。従って本件は、本明細書で開示する一般原理を用いた本発明の任意の変形、用途または適合を網羅することを意図する。更に、本件は、本発明が属する当該分野で公知および慣例の実施の範囲内となり特許請求の範囲の限定の範囲内となる本開示からの逸脱を網羅することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド;ならびに
1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、およびヘキサヒドロトリアジン化合物からなる群から選択される殺生物化合物;
を含む、組成物。
【請求項2】
殺生物化合物が、1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
殺生物化合物が、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ヘキサヒドロトリアジン化合物が、式I:
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は独立に、水素、C1−C5アルキル基、C1−C5ヒドロキシアルキル基、または構造−R4−O−R5を有するアルコキシアルキレン基であり、R4は独立に炭素原子1〜5個のアルキレン基であり、そしてR5は独立に炭素原子1〜5個のアルキル基である)
のものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1、R2およびR3がC1−C5アルキルである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
1、R2およびR3がC1−C5ヒドロキシアルキルである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
ヘキサヒドロトリアジン化合物が、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンまたはヘキサヒドロ−1,3,5−トリエチル−s−トリアジンである、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドの殺生物化合物に対する質量比が、約100:1〜約1:100である、請求項1〜7に記載の組成物。
【請求項9】
1種以上の、界面活性剤、イオン性/非イオン性ポリマーおよびスケール、腐食防止剤、酸素捕捉剤、または追加の殺生剤を更に含む、請求項1〜8に記載の組成物。
【請求項10】
2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド;
1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタン;および
2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール;
を含む、組成物。
【請求項11】
水性系または水含有系における微生物を制御する方法であって、有効量の請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物で系を処理することを含む、方法。
【請求項12】
水性系または水含有系が、油および/またはガスの製造において使用されまたは存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
油およびガスの製造が、注入水および生成水、水攻法および水圧破砕のための源水、池水、保持タンク水、機能性流体、掘削泥水、仕上流体および改修流体、ハイドロテスト流体、刺激流体、パッカー流体、破砕流体、油井およびガス井、分離系、貯蔵系および輸送系、油およびガスのパイプライン、油およびガスの容器、または燃料を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水性系または水含有系が、冷却水、ボイラー水、パルプおよび紙のミル水、他の工業プロセス水、バラスト水、廃水、金属作動流体、レザー処理流体、塗料およびコーティング、水性エマルション、ラテックス、接着剤、インク、顔料分散体、パーソナルケア製品および家庭用製品、鉱物スラリー、コーキングおよび接着剤、テープジョイントコンパウンド、消毒剤、クリーナー、またはこれらとともに用いる系である、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2013−510146(P2013−510146A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537867(P2012−537867)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/039153
【国際公開番号】WO2011/059532
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】