説明

殺真菌剤として使用されるイソキサゾール誘導体

本発明は、殺真菌活性を有する式(I)のイソキサゾール化合物、これを含む農薬組成物、並びに植物の微生物有害生物、特に真菌有害生物の防除のための、農業における該化合物及び組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺真菌活性を有するイソキサゾール化合物、これを含む農薬組成物、並びに植物の微生物有害生物、特に真菌有害生物の防除のための農業における該化合物及び組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
植物、動物、及びヒトの全身性の又は局所性の重大な真菌感染症の頻度が上昇し続けている。多くの真菌は、環境中で一般的であり植物や哺乳動物に対して有害ではない。しかし一部の真菌は植物、ヒト及び/又は動物で疾患を引き起こし得る。
【0003】
殺真菌剤は天然又は合成起源の化合物であり、卵菌類(Oomycetes)を含む真菌により引き起こされる被害から植物を防御する。現在の農業の方法は、殺真菌剤の使用に大きく依存している。実際一部の作物は殺真菌剤の使用無しではうまく育てられない。殺真菌剤を使用することは、生産者が作物の収率を上げ、従って作物の価値を上げることを可能にする。多くの殺真菌剤が開発されている。しかし真菌の侵入や感染の治療は、いまだに大きな問題である。さらに殺真菌剤や抗真菌剤耐性は重大な問題になっており、一部の農業や治療薬用途についてこれらの物質の効果が無くなっている。従って新しい殺真菌化合物及び抗真菌化合物の開発に対するニーズが存在する(例えば、米国特許第6,673,827号参照;また殺真菌剤としてピリミジン−4−エナミンを記載する米国特許第6,617,330号(Walter)を参照)。
【0004】
国際特許出願WO2006/031631は、殺真菌性を有する一連のイソキサゾール誘導体に関する。すなわち真菌防除の代替法に対するニーズが存在する。新しい化合物は改良された殺真菌性、例えば改良された効力、改良された選択性を有し、耐性が発生する傾向が小さいこと、又は広範囲の真菌に対する活性を有することが好ましい。化合物は作用部位でより効率的な送達と保持が提供でき、又はより容易に生体分解されるように調製されることが、より有利である。有利な化合物又はその分解成分は、一般に毒性が小さい。
【0005】
驚くべきことに、本発明のイソキサゾール化合物は予想外の殺真菌活性を示し、従って真菌侵入を防止するか、又は作物に有害な他の有害生物(例えば、雑草、昆虫、又はダニ)を防除するために、作物防御剤として農業で使用するのに適していることがわかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って第1の態様において本発明は、以下の式(I):
【化1】

(式中、R1はH又はアシルであり、好ましくはHである)
で表される化合物、又はその農薬として許容し得る塩を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
アシルは、容易に加水分解可能なアシル基を含み、例えばC(O)R2、C(O)OR2、C(O)NHR2、及びC(O)NR23があり、ここでR2とR3はそれぞれ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される。アシル基は場合により、1個以上の、例えば1、2、3、又は4個のハロ又はOR2後で置換される。好適なアシル基は、アセチル、ベンゾイル、及びフェニルアセチルである。
【0008】
アルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状でもよく、1〜24個の炭素原子を含んでよい。好適なアルキル基は、1〜10個の炭素原子、さらに好ましくは1〜6個の炭素原子、さらに好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する。代表的なアルキル基には、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、t−アミル、2,5−ジメチルヘキシル、シクロブチル、シクロプロピル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルがある。
【0009】
ヘテロシクリル基は3〜10個の環原子を含有してもよく、そのうち最大4個は窒素、酸素、及び硫黄のようなヘテロ原子でもよく、飽和されても又は部分的に飽和されてもよい。ヘテロシクリル基の例は、オキシラニル、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、チオラニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、スルホラニル、ジオキソラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、ジチアニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、アゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、チアゾリニル、及びジアザパニルである。
【0010】
アリールは、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びフェナトレニルを含む。
【0011】
ヘテロアリール基は3〜10個の環原子を含有してもよく、そのうち最大4個は窒素、酸素、及び硫黄のようなヘテロ原子でもよい。ヘテロアリール基の例は、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、テトラゾリル、トリアジニルである。さらにヘテロアリールという用語は、縮合ヘテロアリール基、例えばベンズイミダゾリル、ベンゾキサゾリル、イミダゾピリジニル、ベンゾキサジニル、ベンゾチアジニル、オキサゾロピリジニル、ベンゾフラニル、キノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾチアゾリル、フタルイミド、ベンゾフラニル、ベンゾジアゼピニル、インドリル、及びイソインドリルがある。
【0012】
ハロはフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
【0013】
本発明の化合物は、上記で定義した式(I)の化合物、その多型体、及び異性体(光学異性体、幾何異性体、互変異性体を含む)、及びアイソトープ標識した式(I)の化合物を含む。
【0014】
農薬として許容し得る塩はカチオンを含み、これは当該分野で公知で、農業用途又は園芸用途の塩の形成のために認められている。好ましくは塩は水溶性である。
【0015】
式(I)の化合物の適切な塩には、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、若しくはリン酸、又は有機カルボン酸、例えばシュウ酸、酒石酸、乳酸、酪酸、トルイル酸、ヘキサン酸若しくはフタル酸、又はスルホン酸、例えばメタン、ベンゼン、若しくはトルエンスルホン酸との塩のような酸付加塩がある。有機カルボン酸の他の例には、ハロ酸、例えばトリフルオロ酢酸がある。
【0016】
N−オキシドは、4級アミンの酸化型又は窒素含有複素芳香族化合物の酸化型である。これらは多くの教科書に記載されており、例えば"Heterocyclic N-oxides" by Angelo Albini and Sivio Pietra, CRC Press, Boca Raton, Florida, 1991に記載されている。
【0017】
好適な実施態様において本発明は、式(I)の化合物又はその農薬として許容し得る塩、及び農薬として許容し得る希釈剤若しくは担体を含んでなる組成物を提供する。本発明の化合物への言及は、式(I)の化合物とその農薬として許容し得る塩の両方を含むと考えるべきである。
【0018】
式(I)の化合物は、(R)と(S)エナンチオマーとを含むラセミ体として存在する。(S)エナンチオマーは、(R)エナンチオマーと比較して有意に大きい殺真菌活性を有することがわかっている。
【0019】
従って好適な態様において本発明は、以下の:
【化2】

(式中、R1はH又はアシルであり、好ましくはHである)、
で表される式(I)の化合物の(S)エナンチオマー又はその農薬として許容し得る塩を提供する。
【0020】
従って好適な態様において、式(S)−(I)の化合物、又はその農薬として許容し得る塩、及び農薬として許容し得る希釈剤若しくは担体を含んでなる組成物が提供される。
【0021】
好ましくは式(S)−(I)の化合物は、少なくとも40%、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%、及び最も好ましくは少なくとも99%のエナンチオマー過剰(e.e.)を有する単一のエナンチオマーとして提供される。
【0022】
最も好ましくは式(I)の化合物は、(S)−[3−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−5−(2,4−ジフルオロフェニル)イソキサゾール−4−イル]ピリジン−3−イル−メタノール(実施例2):
【化3】

又はその農薬として許容し得る塩である。
【0023】
好ましくは実施例2の化合物は、少なくとも40%、例えば少なくとも50%、60%、70%、若しくは80%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のエナンチオマー過剰(e.e.)を有する単一のエナンチオマーとして提供される。
【0024】
本発明の化合物及び組成物は、卵菌類(Oomycetes)を含む真菌により引き起こされる疾患に対して植物を防御するのに有用である。本発明の化合物は、農業部門及び関連分野で植物有害生物を防除するための活性成分として使用することができる。本発明の化合物は、有用植物の異なる作物の植物体又は植物の部分(果実、花、葉、茎、塊茎、根)に存在する有害生物を、随時、生長する植物の部分を例えば植物病原性微生物から同時に防御しながら、阻害又は駆除するために使用することができる。
【0025】
本発明の化合物及び組成物は、植物生長物質、特に種子(果実、塊茎、穀粒)や植物切穂(例えばコメ)の処理のための、真菌感染ならびに土壌中に存在する植物病原性真菌に対する防御のための粉衣剤として使用される。
【0026】
さらなる態様において本発明は、植物、その部分、又はその生育領域に、病原性微生物を防除するのに有効な量の式(I)の化合物又はその組成物を施用することを含んでなる、該微生物による栽培植物の感染を防除又は防止する方法を提供する。
【0027】
本発明の化合物及び組成物は、植物病原性真菌、例えば以下のクラスのものに対して使用される:不完全菌綱(Fungi imperfecti)[例えば、ハイイロカビ属(Botrytis)、ピリクラリア属(Pyricularia)、ヘルミントスポリウム属(Helminthosporium)、セプトリア属(Septoria)、セルコスポラ属(Cercospora)、及びアルテルナリア属(Alternaria)]、及び担子菌綱(Basidiomycetes)[例えば、リゾクトニア属(Rhizoctonia)、ヘミレイア属(Hemileia)、プクキニア属(Puccinia)]。さらにこれらはまた子嚢菌綱(Ascomycetes)[例えば、ベンチュリア属(Venturia)、エリシフェ属(Erysiphe)、ポドスファエラ属(Podosphaera)、モニリニア属(Monilinia)、ウンシヌラ属(Uncinula))や卵菌綱(Oomycetes)(例えば、疫病菌属(Phytophthora)、クサレカビ属(Pythium)、タンジクツユカビ属(Plasmopara)]に対して使用される。処理される真菌の具体例には、特に限定されないが、セプトリア・トリチシ(Septoria tritici)、スタゴノスポラ・ノドルム(Stagonospora nodorum)、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)、スクレロチニア・ホモエオカルパ(Sclerotinia homoeocarpa)、及びプクキニア・レコンディタ(Puccinia recondita)がある。
【0028】
本発明の好適な実施態様において、本発明の化合物と組成物は、真菌生物セプトリア・トリチシ(Septoria tritici)に対して使用される。
【0029】
防御すべき有用植物の作物は、典型的には以下の種の植物を含む:穀物[小麦、大麦、ライ麦、オート麦、トウモロコシ(フィールドコーン、ポップコーン、及びスイートコーン)、コメ、モロコシ、及び関連穀物];テンサイ(サトウダイコン及び飼料ビート);マメ科植物[マメ(bean)、レンズマメ、エンドウ、ダイズ];油料植物(ナタネ、マスタード、ヒマワリ);キュウリ植物[ペポカボチャ(marrows)、キュウリ、メロン];繊維植物(綿、亜麻、大麻、黄麻);野菜(ほうれん草、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、ナス、タマネギ、トウガラシ、トマト、ジャガイモ、パプリカ、オクラ);農園作物(バナナ、果樹、ゴムの木、養樹園);観賞植物(花、低木、広葉樹、及び常緑樹、例えば針葉樹);ならびに他の植物、例えばつる植物、ブッシュベリー類(例えばブッシュベリー)、ケーンベリー、クランベリー、ペパーミント、ルバーブ、スペアミント、サトウキビ、及び芝草、例えば寒期芝草[例えば、ブルーグラス(Poa L.)、例えばケンタッキーブルーグラス(Poa pratensis L.)、オオスズメノカタビラ(Poa trivialis L)、コイチゴツナギ(Poa compressa L)、及び1年生ブルーグラス(Poa annua L);ベントグラス(Agrostis L)、例えばコヌカグサ(Agrostis palustris Huds.)、 コロニアルベントグラス(Agrostis tenius Sibth.)、ベルベットベントグラス(Agrostis canina L.)、及びコヌカグサ(Agrostis alba L.);ウシノケグサ(Festuca L.)、例えばヒロハノウシノケグサ(Festuca arundinacea Schreb.)、メドーフェスキュー(Festuca elatior L.)、及びファインフェスク、例えばハイウシノケグサ(Festuca rubra L.)、チューイングフェスク(Festuca rubra var. commutata Gaud.)、シープフェスク(Festuca ovina L.)、及びコウライウシノケグ(Festuca longifolia);及びライグラス(Lolium L.)、例えばホソムギ(Lolium perenne L.)及びスズメノカタビラ(Lolium multiflorum Lam.)、及び暖地型芝草(例えば、バーミューダグラス(Cynodon L. C. Rich)、雑種及び一般的バーミューダグラスを含む;高麗芝(Zoysia Willd.)、セントオーガスチングラス(Stenotaphrum secundatum (Walt.) Kuntze);及びセンティピードグラス(Eremochloa ophiuroides (Munro.) Hack.)。
【0030】
有用植物の作物はまた、通常の品種改良法又は遺伝子操作法の結果として、ブロモキシニルのような除草剤又は除草剤のクラス[例えば、HPPDインヒビター、ALSインヒビター;例えばプリミスルフロン、プロスルフロン、及びトリフロキシスルフロン、EPSPS(5−エノール−ピロビル−シキメート−3−ホスフェート−シンターゼ)インヒビター、GS(グルタミンシンターゼ)インヒビター、又はPPO(プロトポルフィリノーゲン−オキシダーゼ)インヒビター]に対して耐性にされている植物を含む。通常の品種改良法(突然変異誘発)によりイミダゾリノン類(例えばイマザモックス)に対して耐性されている作物の例は、Clearfield(登録商標)夏セイヨウアブラナ(Canola)である。遺伝子操作法により除草剤又は除草剤群に対して耐性にされている作物の例には、商品名RoundupReady(登録商標)、Herculex(登録商標)、及びLibertyLink(登録商標)で市販されているグリホセート−及びグルホシネート耐性トウモロコシ品種がある。
【0031】
有用植物の作物はまた、毒素産生細菌(特にバシラス(Bacillus)属のもの)から公知の1種以上の選択的作用性毒素を合成できるように、組換えDNA技術の使用により形質転換されている植物を含む。
【0032】
有用植物の作物はまた、いわゆる「病原性関連タンパク質」(PRP、例えば欧州特許出願EP0,392,225号を参照)のような選択的作用を有する抗病原性物質を合成できるように、組換えDNA技術の使用により形質転換されている植物を含む。このような抗病原性物質及びかかる抗病原性物質を合成できるトランスジェニック植物の例は、例えば欧州特許出願EP0,392,225号とEP0,353,191号、及び国際特許出願WO95/33818号から公知である。このようなトランスジェニック植物を生産する方法は一般に当業者に公知であり、例えば前述の文献に記載されている。
【0033】
本発明の好適な実施態様において有用植物の作物は、穀類、コメ、テンサイ、豆科植物、油料植物、キュウリ植物、繊維植物、野菜、農園作物、観賞植物、つる植物、ブッシュベリー類、ケーンベリー、クランベリー、ペパーミント、ルバーブ、スペアミント、サトウキビ、及び芝草から選択される。
【0034】
本発明の化合物と組成物は、作付け場所又は処理すべき植物に、同時に又は追加の化合物を用いて連続的に施用することができる。これらの追加の化合物は、例えば植物の生長に影響を与える肥料又は微量栄養供与物質又は他の調製物でもよい。これらはまた、所望であれば、製剤の分野で通常使用される追加の担体、界面活性剤、又は施用促進補助剤との、選択的除草剤、ならびに殺虫剤、殺真菌剤、殺細菌剤、殺線虫剤、殺軟体動物剤、植物成長制御剤、植物アクチベーター、又はこれらの調製物のいくつかの混合物でもよい。
【0035】
本発明の化合物は、他の殺真菌剤と混合すると、予想外の相乗活性が得られる場合がある。
【0036】
特に好適な混合成分は、アゾール類、例えばアザコナゾール、ビテルタノール、プロピコナゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、シプロコナゾール、エポキシコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアフォル、ヘキサコナゾール、イマザリル、イミベンコナゾール、イプコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、フェンブコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペルラゾエート、ペンコナゾール、プロムコナゾール、ピリフェノックス、プロクロラズ、トリアジメフォン、トリアジメノール、トリフルミゾール、若しくはトリチコナゾール;ピリミジニルカルビノール類、例えばアンシミドール、フェナリモール、若しくはヌアリモール;2−アミノ−ピリミジン類、例えばブピリメート、ジメチリモール、若しくはエチリモール;モルホリン類、例えばドデモルホ、フェンプロピジン、フェンプロピモルフ、スピロキサミン、若しくはトリデモルフ;アニリノピリミジン類、例えばシプロジニル、ピリメタニル、若しくはメパニピリム;ピロール類、例えばフェンピクロニル、若しくはフルジオキソニル;フェニルアミド類、例えばベナラキシル、フララキシル、メタラキシル、R−メタラキシル、オフレース、若しくはオキサジキシル;ベンズイミダゾール類、例えばベノミル、カルベンダジム、デバカルブ、フベリダゾール、若しくはチアベンダゾール;ジカルボキシミド類、例えばクロゾリネート、ジクロゾリン、イプロジン、ミクロゾリン、プロシミドン、若しくはビンクロゾリン;カルボキサミド類、例えばカルボキシン、フェンフラム、フルトラニル、メプロニル、オキシカルボキシン、若しくはチフルザミド;グアニジン類、例えばグアザチン、ドジン、若しくはイミノクタジン;ストロビルリン類、例えばアゾキシストロビン、クレソキシム−メチル、メトミノストロビン、ピラクロストロビン、ピコキシストロビン、SSF−129、メチル2[(2−トリフルオロメチル)−ピリド−6−イルメチル]−3−メトキシ−アクリレート、若しくは2−[{α[(α−メチル−3−トリフルオロメチル−ベンジル)イミノ]−オキシ}−o−トリル]−グリオキシル酸−メチルエステル−O−メチルオキシム(トリフロキシストロビン);ジチオカルバメート類、例えばフェルバム、マンコゼブ、マネブ、メチラム、プロピネブ、チラム、ジネブ、若しくはジラム;N−ハロメチルチオ−ジカルボキシミド類、例えばカプタホル、カプタン、ジクロフルアニド、フルオロミド、フォルペット、若しくはトリフルアニド;銅化合物、例えばボルドー液、水酸化銅、オキシ塩化銅、硫酸銅、酸化第一銅、マンカッパー(mancopper)、若しくはオキシン銅;ニトロフェノール誘導体、例えばジノカップ、若しくはニトロタール−イソプロピル;有機リン誘導体、例えばエジフェンホス、イプロベンホス、イソプロチオラン、ホスジフェン、ピラゾホス、若しくはトクロホス−メチル;及び、多様な構造の他の化合物、例えばアシベンゾラル−S−メチル、ハルピン、アニラジン、ブラスチシジン−S、キノメチオナト、クロロネブ、クロロタロニル、シモキサニル、ジクロン、ジクロメジン、ジクロラン、ジエトフェンカルブ、ジメトモルフ、ジチアノン、エトリダゾール、ファモキサドン、フェナミドン、フェンチン、フェリムゾン、フルアジナム、フルスルファミド、フェンヘキサミド、フォセチル−アルミニウム、ヒメキサゾル、カスガマイシン、メタスルホカルブ、ペンシクロン、フタリド、ポリオキシン類、プロベナゾール、プロパモカルブ、ピロキロン、キノキシフェン、キントゼン、硫黄、トリアゾキシド、トリシクラゾール、トリホリン、バリダマイシン、(S)−5−メチル−2−メチルチオ−5−フェニル−3−フェニルアミノ−3,5−ジ−ヒドロイミダゾール−4−オン(RPA407213)、3,5−ジクロロ−N−(3−クロロ−1−エチル−1−メチル−2−オキソプロピル)−4−メチルベンズアミド(RH−7281)、N−アリル−4,5−ジメチル−2−トリメチルシリルチオフェン−3−カルボキサミド(MON65500)、4−クロロ−4−シアノ−N,N−ジメチル−5−p−トリルイミダゾール−1−スルホン−アミド(IKF−916)、N−(1−シアノ−1,2−ジメチルプロピル)−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)−プロピオンアミド(AC382042)、又はイプロバリカルブ(SZX722)である。
【0037】
本発明の化合物は、1種以上の全身性獲得耐性インデューサー(「SAR」インデューサー)とともに、単独で又は上記した殺真菌剤と一緒に混合することができる。SARインデューサーは公知であり、例えば米国特許第6,919,298号に記載されている。一般にSARインデューサーは、植物中の耐性を疾患を引き起こす物質(特に限定されないが、ウイルス、細菌、真菌、又はこれらの組合せ)に向ける能力を有する任意の化合物である。さらにSARインデューサーは、Enyedi et al. (1992; Cell 70:879-886) により定義されるように、植物を餌にする昆虫に対する耐性を誘導する。SARインデューサーの例には、多くの化合物群があるが、植物疾患及び/又は有害生物の生存に対する耐性を誘導する能力が共通している。市販のSARインデューサーは、アシベンゾラル−s−メチル(SyngentaからActigard(登録商標)として入手できる)、ハルピンタンパク質(Eden BiosciencesからMessenger(登録商標)として入手できる)、サッカロミセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)からの酵母エキス加水分解物(Morse Enterprises Limited, Inc. of Miami, FloridaからKeyplex(登録商標)350-DP(登録商標)として入手できる)、及びオリゼメートは、本発明で有用である。エリシトール類(Elicitors)(Goemar製品を含む)も、使用可能な別のクラスのSARインデューサーである。さらにエチレン、その生合成前駆体、又はエチレン放出化合物(例えばEthrel)は、この意味で有用なSARインデューサーであると見なされる。
【0038】
適切な担体や補助剤は固体又は液体でもよく、製剤技術で有用な物質、例えば天然の又は再生無機物質、溶媒、分散剤、湿潤剤、粘着付与剤、増粘剤、結合剤、又は肥料である。
【0039】
本発明の化合物と組成物の好適な施用方法は、葉面散布である。施用の頻度と施用率は、対応する病原体による感染リスクに依存する。しかし本発明の化合物はまた、植物の生育領域を液体調製物で浸すことにより、又は固体型の組成物を例えば顆粒型で土壌に施用(土壌施用)することにより、土壌を介して根から(全身性作用)植物中に浸透し得る。コメのような水の作物ではそのような顆粒は、水を満たした水田に施用することができる。本発明の化合物と組成物はまた、種子又は塊茎に殺真菌剤の液体調製物を含浸させるか又はこれらを固体調製物で被覆することにより、種子に施用(被覆)してもよい。
【0040】
生育領域という用語は、処理される作物植物がその上で生長している畑、又は栽培植物の種子が蒔かれる場所、又は土壌中に種子が入れられる場所を包含する。種子という用語は、植物生長物質、例えば切穂、実生、種子、及び発芽種子若しくは浸漬種子を包含する。
【0041】
植物生長物質という用語は、すべての種類の種子(果実、塊茎、球根、穀粒など)、根、根茎、挿穂、切り苗条などを含む植物の生殖部分を意味する。
【0042】
植物生長物質はまた、発芽後又は土壌から出芽後に移植される植物及び若い植物を含む。
【0043】
本発明の化合物は非修飾型で使用されるか、又は好ましくは製剤の分野で通常使用される補助剤とともに使用される。このためにこれらは、公知の方法で顆粒剤、湿潤剤若しくは可溶性粉末、懸濁剤若しくはエマルジョンとして、又はマイクロカプセルのような制御放出型で便利に調製される。組成物の種類と同様に、施用方法(例えば、噴霧、霧吹き、散粉、散布、コーティング又は注ぎ)は、目的とその時の状況に従って選択される。
【0044】
本発明の組成物及び所望であれば固体若しくは液体補助剤は、公知の方法により、典型的には化合物を増量剤、例えば溶剤、固体担体、及び随時界面活性化合物(界面活性剤)とともに密接に混合及び/又は粉砕することにより調製される。
【0045】
適切な担体と補助剤は固体又は液体であり、製剤技術で通常使用される物質、例えば天然の若しくは再生無機物質、溶剤、分散剤、湿潤剤、粘着付与剤、増粘剤、結合剤、又は肥料に対応する。このような担体は、例えばWO97/33890に記載されている。
【0046】
農薬組成物は、通常0.1〜99重量%、好ましくは0.1〜95重量%の式(I)の化合物、99.9〜1重量%、好ましくは99.8〜5重量%の固体若しくは液体補助剤、及び0〜25重量%、好ましくは0.1〜25重量%の界面活性剤を含有する。
【0047】
市販の製品を濃縮物として調製することが好ましいが、最終ユーザーは通常希薄調製物を使用するであろう。
【0048】
組成物はまた、安定剤、消泡剤、粘度調節剤、結合剤、又は粘着付与剤、ならびに肥料、微量栄養供与物質若しくは特殊な効果を得るための他の調製物を含んでよい。
【0049】
本発明の農薬組成物は、疾患が発症する前に施用することが適切である。調製物使用の比率と頻度は、当該分野で通常使用されるものであり、真菌病原体による感染リスク、植物の生長段階、場所、時間、及び施用方法に依存する。有利な施用率は、通常1ヘクタール(ha)当たり5g〜2kgの活性成分(a.i.)、好ましくは10g〜1kgのa.i./ha、最も好ましくは20g〜600gのa.i./haである。種子浸漬剤として使用する時は、便利な施用率は種子1kg当たり10mg〜1gの活性物質である。
【0050】
懸濁濃縮物は、活性化合物の微粉化粒子が懸濁される水性調製物である。このような調製物は沈降防止剤と分散剤とを含み、さらに活性を増強するための湿潤剤、ならびに消泡剤及び結晶成長抑制剤とを含んでよい。使用する場合、これらの濃縮物は水で希釈され、通常処理すべき場所に噴霧剤として施用される。活性成分の量は0.5%〜95%の濃縮物の範囲である。
【0051】
水和剤は、水又は他の液体担体に容易に分散する微細粒子の形である。粒子は、固体マトリックス中に保持された活性成分を含有する。典型的な固体マトリックスは、酸性白土、カオリン粘土、シリカ、及び他の容易に湿潤性の有機又は無機固体を含む。水和剤は通常5%〜95%の活性成分+少量の湿潤剤、分散剤、又は乳化剤を含む。
【0052】
乳化濃縮物は、水又は他の液体中に分散性の均一な液体組成物であり、完全に活性化合物と液体若しくは固体乳化剤からなってもよく、又は液体担体、例えばキシレン、重質芳香族ナフサ類、イソホロン、及び他の非揮発性有機溶媒からなってもよい。使用する場合、これらの濃縮物は水又は他の液体に分散され、通常噴霧液として処理部位に施用される。活性成分の量は0.5%〜95%の濃縮物の範囲である。
【0053】
顆粒調製物は、押出物と比較的粗い粒子とを含み、通常希釈することなく、植物病原性真菌の防除の必要な部位に施用される。顆粒調製物の典型的な担体は、砂、酸性白土、アタパルジャイト粘土、ベントナイト粘土、モンモリロナイト粘土、バーミキュライト、パーライト、炭酸カルシウム、レンガ、軽石、葉ろう石、カオリン、ドロマイト、石膏、木粉、粉砕したトウモロコシの穂軸、粉砕した落花生殻、糖、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、マグネシア、雲母、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、氷晶石、石膏、珪藻土、硫酸カルシウム、及び活性化合物を吸収するか若しくはこれで被覆される他の有機無水無機物質を含む。顆粒調製物は通常5%〜25%の活性成分を含み、これは重質芳香族ナフサ類、ケロシン、及び他の石油画分、又は植物油のような界面活性剤、及び/又はデキストリン類、接着剤、又は合成樹脂のような展着剤を含んでよい。
【0054】
粉剤は、活性成分と、微粉化固体(例えば、タルク、粘土、細粉、及び分散剤や担体として機能する他の有機及び無機固体)との易流動性の混合物である。
【0055】
マイクロカプセルは、典型的には封入された物質が制御速度で周りに漏れ出ることを可能にする不活性多孔性の殻に封入された活性成分の小滴又は顆粒である。封入された小滴は典型的には直径1〜50ミクロンである。封入された液体は典型的にはカプセル重量の50〜95%を構成し、活性化合物以外に溶媒を含んでよい。封入された顆粒は一般に、顆粒の多孔性開口部を多孔性膜が封じ込めた多孔性顆粒であり、液体型の活性種を顆粒の孔内に保持している。顆粒は典型的には、直径が1ミリメートル〜1センチメートル、好ましくは直径1〜2ミリメートルの範囲である。顆粒は、押出し、凝集、又は小球化により形成されるか、又は天然に存在する。このような物質の例は、バーミキュライト、焼結粘土、カオリン、アタパルジャイト粘土、おがくず、及び粒状炭素である。殻又は膜物質には、天然及び合成ゴム、セルロース物質、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリルニトリル類、ポリアクリレート類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリ尿素類、ポリウレタン類、及びキサントゲン酸デンプンがある。
【0056】
農薬用途の他の有用な製剤には、活性成分が所望の濃度で完全に溶解している溶媒(例えばアセトン、アルキル化ナフタレン類、キシレン、及び他の有機溶媒)中の活性成分の単純な溶液がある。低沸点分散溶媒担体の蒸発の結果として活性成分が微粉の形で分散している加圧噴霧剤も使用される。
【0057】
上記種類の調製物中の本発明の組成物を調製するのに有用な適切な農薬補助剤及び担体は、当業者に公知である。
【0058】
使用可能な液性担体には例えば、水、トルエン、キシレン、石油ナフサ、作物油、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、無水酢酸、アセトニトリル、アセトフェノン、酢酸アミル、2−ブタノン、クロロベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、アルキルアセテート、ジアセトンアルコール、1,2−ジクロロプロパン、ジエタノールアミン、p−ジエチルベンゼン、ジエチレングリコール、アビエチン酸ジエチレングリコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ジプロキシトール、アルキルピロリジノン、酢酸エチル、2−エチルヘキサノール、エチレンカーボネート、1,1,1−トリクロロエタン、2−ヘプタノン、アルファピネン、d−リモネン、エチレングリコール、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、ガンマ-ブチロラクトン、グリセロール、グリセロールジアセテート、グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、ヘキサデカン、ヘキシレングリコール、酢酸イソアミル、酢酸イソボルニル、イソオクタン、イソホロン、イソプロピルベンゼン、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸、ラウリルアミン、メシチルオキシド、メトキシプロパノール、メチルイソアミルケトン、メチルイソブチルケトン、ラウリン酸メチル、オクタン酸メチル、オレイン酸メチル、塩化メチレン、m−キシレン、n−ヘキサン、n−オクチルアミン、オクタデカン酸、酢酸オクチルアミン、オレイン酸、オレイルアミン、o−キシレン、フェノール、ポリエチレングリコール(PEG400)、プロピオン酸、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、p−キシレン、トルエン、トリエチルホスフェート、トリエチレングリコール、キシレンスルホン酸、パラフィン、鉱物油、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及び高分子量アルコール、例えばアミルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ヘキサノール、オクタノール等、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及びN−メチル−2−ピロリジノンがある。濃縮物の希釈のためには、水が一般的に最適なキャリアである。
【0059】
適切な固体担体には、例えばタルク、二酸化チタン、パイロフィライト粘土、シリカ、アタパルジャイト粘土、キーゼルグール、チョーク、珪藻土、石灰、炭酸カルシウム、ベントナイト粘土、酸性白土、綿実殻、小麦粉、大豆粉、軽石、木粉、クルミ殻粉とリグニンがある。
【0060】
該液体組成物と固体組成物の両方で広範囲の界面活性剤が有利に使用され、特に施用前に担体で希釈することを目的としたものがある。これらの物質は使用される場合、通常調製物の0.1〜15重量%を占める。これらは陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、又はポリマー性でもよく、乳化剤、湿潤剤、懸濁剤として、又は他の目的に使用できる。典型的な界面活性剤には、アルキル硫酸塩、例えばジエタノールアンモニウムラウリル硫酸;アルキルアリールスルホン酸塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム;アルキルフェノール−アルキレンオキシド付加産物、例えばノニルフェノール−C18エトキシレート;アルコール−アルキレンオキシド付加産物、例えばトリデシルアルコール−C16エトキシレート:石けん、例えばステアリン酸ナトリウム;アルキルナフタレンスルホン酸塩、例えばジブチルナフチルスルホン酸ナトリウム;スルホコハク酸のジアルキルエステル類、例えばジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム;ソルビトールエステル類、例えばオレイン酸ソルビトール;四級アミン類、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロリド;脂肪酸のポリエチレングリコールエステル類、例えばステアリン酸ポリエチレングリコール;エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー;及びモノ及びジアルキルリン酸エステルの塩がある。
【0061】
農薬組成物で通常使用される他の補助剤には、結晶化抑制剤、粘度調整剤、懸濁剤、噴霧液滴調節剤、顔料、酸化防止剤、発泡剤、消泡剤、遮光剤、相溶化剤、消泡剤、金属イオン封鎖剤、中和剤と緩衝剤、腐食防止剤、色素、着臭剤、展着剤、浸透助剤、微量栄養素、皮膚軟化剤、滑沢剤、及び固着剤がある。
【0062】
さらに他の生理活性成分又は組成物を式(I)の化合物と組合せて、本発明の方法で使用し、式(I)の化合物と同時に又は連続して施用してもよい。同時に施用する場合、これらの追加の活性成分は、例えば噴霧タンク中で式(I)の化合物と一緒にされるか又は混合される。これらの追加の殺生物性成分は、殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、殺細菌剤、殺ダニ剤、殺線虫剤及び/又は植物生長調節剤でもよい。
【0063】
従って本発明は、式(I)の化合物と、(i)殺真菌剤、(ii)除草剤、(iii)殺虫剤、(iv)殺細菌剤、(v)殺ダニ剤、(vi)殺線虫剤及び/又は(vii)植物生長調節剤とを含んでなる組成物を提供する。
【0064】
さらに本発明は、式(I)の化合物と、(i)殺真菌剤、(ii)除草剤、(iii)殺虫剤、(iv)殺細菌剤、(v)殺ダニ剤、(vi)殺線虫剤及び/又は(vii)植物生長調節剤とを含んでなる組成物の、本発明の方法における使用を提供する。
【0065】
本発明の化合物と組合せはまた、真菌の攻撃に対して技工物を防御すること、又はかかる感染が起きた後の技工物の真菌感染を低減させるか根絶することを含む、技工物の真菌感染(特にカビとウドンコ病)を防除するために使用される。技工物には、例えば有機及び無機材料、木、紙、革、天然繊維と合成繊維、これらの組合せ物、例えばパーティクルボード、合板、壁材など、織布と不織布、建築物表面と材料、冷却及び加熱システム表面と材料、換気と空調システム表面と材料などがある。本発明の化合物と組合せは、上記のような腐食、脱色、又はカビなどの不都合な作用を抑制又は防止するのに有効な量で、かかる材料又は表面に施用することができる。かかる化合物又は組合せが施用されている技工物を使用又は取り込んでいる構造物や住居は、同様に真菌による攻撃から防御される。
【0066】
従ってさらなる態様において本発明は、病原性微生物を防除するのに有効な量の式(I)の化合物を、該技工物、その部分、又は存在場所に施用することを含んでなる、該微生物による技工物の感染を防除又は予防する方法を提供する。
【0067】
本発明の化合物と組合せはまた、医学目的及び獣医学目的にヒトや動物対象(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ)の真菌感染症の治療にも使用される。このような感染症の例としては、爪真菌症、スポロトリクス症、腐蹄症、熱帯皮膚病、シュードアレシェリア・ボイジイ(Pseudallescheria boydii)、スコプラリオプシス症または水虫(時に一般的に"白線"病と呼ばれる)、ならびにエイズ患者や移植患者のような免疫無防備状態患者における真菌感染症がある。すなわち真菌感染症は、皮膚のまたはケラチン性物質(例えば毛、ひづめ、又は爪)、ならびに全身性感染症、例えばカンジダ属菌種、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス属菌種によって引き起こされるもの(例えば肺アスペルギルス症やニューモシスティスカリニ肺炎)などである。本発明の化合物と組み合わせは、医薬的に許容し得る担体と組み合わされ、かかる対象又は感染症に、公知の技術に従って感染を治療するのに有用な量で投与又は施用(例えば局所的、非経口的)される。
【0068】
従ってさらなる態様において本発明は、治療の必要な対象の真菌感染を治療する方法であって、該真菌感染を治療するのに有効な量の式(I)の化合物又はその組成物を該対象に投与することを含んでなる方法を提供する。
【0069】
式(I)の化合物は、以下の方法を使用して調製される。
【0070】
1がHではないイソキサゾールは(I)(R1=H)から、標準的アシル化又はカルバモイル化条件を使用して調製される。例えば(I)のアセテート誘導体(R1=COCH3)は、エーテル溶媒中で無水酢酸とピリジンとを室温で一晩反応させることによりアルコール(I)(R1=H)から合成される。アシル化は、酸無水物(例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸)又は酸塩化物(例えば塩化ベンゾイル)を使用して、不活性溶媒(例えば、エーテル、ジクロロメタン)中の有機塩基の存在下で行われる。カルバモイル化は、アルコール(I)を強塩基(例えば水素化ナトリウム)で処理し、次にDMF(ジメチルホルムアミド)のような不活性溶媒中で塩化カルバモイル(例えば塩化N,N−ジメチルカルバモイル)で処理することにより行われる。
【実施例】
【0071】
実施例1:[3−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−5−(2,4−ジフルオロフェニル)イソキサゾール−4−イル]ピリジン−3−イル−メタノール
(i)3−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−−3−イル−プロピノン(3)の調製
【化4】

1−エチル−2,4−ジフルオロベンゼン(24g,0.17モル)をTHF(350ml)に溶解し、反応混合液を−78℃に冷却した。ヘキサン中2.5Mのn−BuLi溶液(76.5ml,0.19モル)を、温度を−70℃以下に維持しながら70分かけて滴下して加えた。添加が終了後、この温度で混合液をさらに10分攪拌した。THF(100ml)中のワインレブアミド(Weinreb amide)2の溶液(WO05/097660、Letters in Organic Chemistry, 4, 20, 2007に従って調製した)(28.9g,0.17モル)を、温度を−70℃以下に維持しながら20分かけて滴下して加えた。混合液を−50℃に加温して溶液を得て、これをこの温度でさらに1時間攪拌した。反応混合液を塩化アンモニウムの飽和溶液(100ml)で反応を止め、室温まで加温させた。次に反応液を酢酸エチル/水の混合液中に注いだ。続いて水相を酢酸エチルで2回洗浄した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗生成物をジエチルエーテルで再結晶化して、28gの所望の生成物を得た。母液を濃縮し、残渣をアルミナのカラムクロマトグラフィーでシクロヘキサン/酢酸エチル 3:1の混合液を使用して精製した。全部で29.8g(70%)の褐色の化合物が得られた。
【0072】
1H NMR (CDCl3): δ 7.02 (m, 1), 7.58 (m, 1), 7.71 (m, 1), 8.56 (m, 1), 8.90 (m, 1), 9.48 ppm (m, 1). MS m/z: 244.0 (M+H).
【0073】
(ii)[3−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−5−(2,4−ジフルオロフェニル)イソキサゾール−4−イル]ピリジン−3−イル−メタノン(5)の調製
【化5】

500mlのジメチルホルムアミド中の121g(697ミリモル)の2−フルオロ−4−クロロメチルベンズアルデヒドオキシムの溶液に、93g(697ミリモル)のN−クロロスクシニミドを加えた(K.C. Liu, B.R. Shelton, and R.K. Howe, J. Org. Chem. 1980, 45, 3916を参照)。反応混合物を室温で2時間攪拌し、次に酢酸エチルで希釈した。酢酸エチル溶液を水、飽和塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して除き、回転蒸発させて溶媒を除去して、130g(90%)の黄色の結晶性の塩化2−フルオロ−4−クロロ−N−ヒドロキシベンゼンカルボキシミドイルを得た。
【0074】
500mlのイソプロピルアルコール中の46.7g(0.22モル)の塩化2−フルオロ−4−クロロ−N−ヒドロキシベンゼンカルボキシミドイル、42g(0.17モル)の3−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−ピリジン−3−イル−プロピノン(3)、及び21.76g(0.26モル)の重炭酸ナトリウムの混合液を85℃で21時間加熱した。反応混合液を酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウム、水、及び飽和塩化ナトリウム溶液で連続して洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して除き、回転蒸発させて酢酸エチルを除去した。粗生成物をジエチルエーテルから再結晶化して、所望の生成物を黄色の固体として得た(50.28g,70.2%)。
【0075】
1H NMR (CDCl3): δ 6.75 (m, 1), 7.05 (m, 2), 7.27 (m, 2), 7.67 (t, 1), 7.80 (m, 1), 8.03 (m, 1), 8.66 (m, 1), 8.82 ppm (d, 1). MS m/z: 415 (M+H).
【0076】
(iii)[3−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−5−(2,4−ジフルオロフェニル)イソキサゾール−4−イル]ピリジン−3−イル−メタノール(6)の調製
【化6】

0℃でTHF/メタノール(400ml/40ml)の混合液中の5の溶液(26.5g,63.9ミリモル)に、2.42g(63.7ミリモル)の水素化ホウ素ナトリウムを加えた。混合液を1.5時間攪拌し、次に酢酸エチルで希釈した。酢酸エチル溶液を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して除き、回転蒸発させて酢酸エチルを除去した。反応混合液をカラムクロマトグラフィーでヘキサン/酢酸エチル 1:1の混合液を使用して精製した。所望の生成物を白色の結晶として得た(17.5g,66%)。mp=138〜140℃。
【0077】
1H NMR (CDCl3): δ 4.19 (bs, 1), 5.89 (s, 1), 6.99 (m, 5), 7.28 (t, 1), 7.43 (d, 1), 7.59 (q, 1), 8.19 (d, 1), 8.23 ppm (d, 1). MS m/z: 417 (M+H).
【0078】
実施例2:(S)−[3−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−5−(2,4−ジフルオロフェニル)イソキサゾール−4−イル]ピリジン−3−イル−メタノール
【化7】

ラセミ混合物6を出発物質として使用して、各エナンチオマーを分取クロマトグラフ法により単離した。
【0079】
分取法:
カラム:250×76mm CHIRALPAK(登録商標)AD 20μm;
移動相:n−ヘプタン/エタノール 70/30(v/v)
流速:270ml/分
検出:UV280nm
温度:25℃
【0080】
分析法:
カラム:250×4.6mm CHIRALPAK(登録商標)AD-H 5μm;
移動相:n−ヘプタン/エタノール/ジエチルアミン 70/30/0.1(v/v/v)
流速:1ml/分
検出:UV230nm
温度:25℃
【0081】
最初に溶出するエナンチオマーの保持時間は7.6分([α]=+58.07,C=0.025M,THF)であり、2番目のエナンチオマーの保持時間は9.9分([α]=−57.59,C=0.025M,THF)であった。2番目に溶出するエナンチオマーが(S)−エナンチオマーである。
【0082】
生物学的実施例
実施例2の殺真菌性を以下の例で証明した。
ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)(灰色かび):低温保存からの真菌の分生子を栄養ブロス(PDBジャガイモデキストロースブロス)と直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液をマイクロタイタープレート(96ウェルフォーマット)に入れた後、真菌胞子を含有する栄養ブロスを加えた。試験プレートを24℃でインキュベートし、生長の阻害を72時間後に測光法で測定した。実施例2は、200ppmでボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)の少なくとも80%の防除を与えた。
【0083】
ミコスフェレラ・アラキディス(Mycosphaerella arachidis)(セルコスポラ・アラキジコラ(Cercospora arachidicola)と同義)、落花生(ピーナツ)の褐色葉枯病。低温保存からの真菌の分生子を、栄養ブロス(PDBジャガイモデキストロースブロス)と直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液をマイクロタイタープレート(96ウェルフォーマット)に入れた後、真菌胞子を含有する栄養ブロスを加えた。試験プレートを24℃でインキュベートし、生長の阻害を72時間後に測光法で620nmで測定した。実施例2は、200ppmでミコスフェレラ・アラキディス(Mycosphaerella arachidis)の少なくとも80%の防除を与えた。
【0084】
セプトリア・トリチシ(Septoria tritici)(葉の斑点病):低温保存からの真菌の分生子を、栄養ブロス(PDBジャガイモデキストロースブロス)と直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液をマイクロタイタープレート(96ウェルフォーマット)に入れた後、真菌胞子を含有する栄養ブロスを加えた。試験プレートを24℃でインキュベートし、生長の阻害を72時間後に測光法で測定した。実施例2は、200ppmでセプトリア・トリチシ(Septoria tritici)の少なくとも80%の防除を与えた。
【0085】
モノグラフェラ・ニバリス(Monographella nivalis)(ミクロドチウム・ニバレ(Microdochium nivale)、フサリウム・ニバレ(Fusarium nivale)と同義)、穀類の雪腐れ病、すそ腐れ病。低温保存からの真菌の分生子を、栄養ブロス(PDBジャガイモデキストロースブロス)と直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液をマイクロタイタープレート(96ウェルフォーマット)に入れた後、真菌胞子を含有する栄養ブロスを加えた。試験プレートを24℃でインキュベートし、生長の阻害を72時間後に測光法で620nmで測定した。実施例2は、200ppmでモノグラフェラ・ニバリス(Monographella nivalis)の少なくとも80%の防除を与えた。
【0086】
フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)(根腐れ病):低温保存からの真菌の分生子を、栄養ブロス(PDBジャガイモデキストロースブロス)と直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液をマイクロタイタープレート(96ウェルフォーマット)に入れた後、真菌胞子を含有する栄養ブロスを加えた。試験プレートを24℃でインキュベートし、生長の阻害を48時間後に測光法で測定した。実施例2は、200ppmでフザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)の少なくとも80%の防除を与えた。
【0087】
リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)(すそ腐れ病、立枯れ病):新鮮な液体培養物から調製した真菌の菌糸断片を栄養ブロス(PDBジャガイモデキストロースブロス)と直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液をマイクロタイタープレート(96ウェルフォーマット)に入れた後、真菌菌糸を含有する栄養ブロスを加えた。試験プレートを24℃でインキュベートし、生長の阻害を48時間後に測光法で測定した。実施例2は、200ppmでリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)の少なくとも80%の防除を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
【化1】

(式中、R1はH又はアシルである)
で表される化合物、又はその農薬として許容し得る塩。
【請求項2】
1がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が、式(I)の化合物の(S)エナンチオマーである、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が、(S)−[3−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)−5−(2,4−ジフルオロフェニル)イソキサゾール−4−イル]ピリジン−3−イル−メタノール:
【化2】

である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
(S)対(R)のエナンチオマー過剰が少なくとも80%である、請求項3又は請求項4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物又はその農薬として許容し得る塩と、農薬として許容し得る希釈剤又は担体とを含んでなる組成物。
【請求項7】
少なくとも1種類の追加の殺真菌剤又は全身獲得耐性インデューサーをさらに含んでなる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物、又は請求項6若しくは請求項7のいずれかに記載の組成物の殺真菌剤としての使用。
【請求項9】
病原性微生物による栽培植物、植物生長物質、又は技工物の感染を防除又は防止する方法であって、当該微生物を防除するのに有効な量の、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物又は請求項6若しくは請求項7のいずれかに記載の組成物を、該植物、その部分、若しくはその生育領域、植物生長物質、又は技工物に施用することを含んでなる方法。
【請求項10】
前記植物生長物質は種子を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記病原性微生物は真菌生物である、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記真菌生物が、セプトリア・トリチシ(Septoria tritici)、スタゴノスポラ・ノドルム(Stagonospora nodorum)、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)、スクレロチニア・ホモエオカルパ(Sclerotinia homoeocarpa)、及びプッシニア・レコンディタ(Puccinia recondita)から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
治療を必要とする対象における真菌感染の治療方法であって、当該真菌感染を治療するのに有効な量の、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物又はその医薬的に許容し得る塩を治療の必要な対象に投与することを含む、前記方法。

【公表番号】特表2012−512227(P2012−512227A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541361(P2011−541361)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066966
【国際公開番号】WO2010/069882
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】