説明

殺真菌性2−アルキルチオ−2−キノリニルオキシ−アセトアミド誘導体

一般式(1)の殺真菌化合物(式中の置換基は、請求項1で定義したとおりである)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なN−アルキニル−2−アルキルチオ−2−(置換ヘテロアリールオキシ)−アルキルアミド並びにそのスルフィニル誘導体及びスルホニル誘導体に関する。本発明はまた、それらの製法、それらを含む組成物、及びそれらを用いて真菌、特に植物の真菌感染症を駆除するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかのN−アルキニル−2−アルキルチオ−2−(置換ヘテロアリールオキシ)アルキルアミド並びにそのスルフィニル誘導体及びスルホニル誘導体は、殺真菌剤として有用であることが例えば国際公開第04/108663号に記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、植物用殺真菌剤としての特性が改善された新規なN−アルキニル−2−アルキルチオ−2−(3−ハロ−8−アルキル−置換ヘテロアリールオキシ)アルキルアミド並びにそのスルフィニル誘導体及びスルホニル誘導体の提供に関する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
したがって、本発明によれば、一般式(1)で表される化合物が提供される:
【0005】
【化1】

【0006】
式中、Arは式(A)で表される基である:
【0007】
【化2】

【0008】
式中、
Halは、クロロ、ブロモ、又はヨードであり、
Vは、メチル又はエチルであり、Halがヨードの場合、Vはメチルとは異なり、
1は、メチル又はエチルであり、
3及びR4は、独立して、H、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、又はC2-3アルキニルであるか、
3及びR4は、それらが結合している炭素原子と一緒に4又は5員炭素環を形成し、任意にO、S、又はN原子を1個含んでもよく、任意にハロ又はC1-4アルキルで置換されてもよく;
5は、H、C1-4アルキル、又はC3-6シクロアルキル、又はC3-6シクロアルコキシ、又はC2-4アルケニルであり、アルキル又はシクロアルキル又はシクロアルコキシ又はアルケニル基は、任意にハロ、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-4アルコキシ−C1-4アルコキシ、シアノ、C3-5アルケニルオキシ、又はC3-5アルキニルオキシで置換されてもよく、
nは0、1、又は2である。
【0009】
誤解のないように記載しておくと、式(A)中の基に示される、結合を有していない単結合は、式(1)の化合物中のAr基が分子の残りの部分と結合する点を示している。
【0010】
本発明の化合物は、少なくとも1個(R3とR4が異なる場合は少なくとも2つ)の不斉炭素原子を含み、エナンチオマーとして(又はジアステレオ異性体の対として)又はその混合物として存在し得る。更に、nが1である場合、本発明の化合物はスルホキシドであり、これは2種類のエナンチオマー形態で存在し得、隣接する炭素も2種類のエナンチオマー形態で存在し得る。したがって、一般式(1)で表される化合物は、ラセミ体、ジアステレオ異性体、又は単一のエナンチオマーとして存在し得る。また本発明は、全ての可能な異性体又はあらゆる比率の異性体混合物を含む。如何なる所与の化合物についても、1つの異性体が他の異性体よりも殺真菌剤活性が高いことがあり得ると予想される。
【0011】
式(1)の化合物の好ましい基では、R3及びR4は、独立して、H、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、又はC2-3アルキニルである。但し、両方がH以外である場合、これらを合わせた炭素原子の合計は4を超えないものとする。
【0012】
好ましくは、式(1)の化合物において、Halはクロロ又はブロモである。
【0013】
更に、Vはメチルであることが好ましい。
【0014】
好ましくは、R3及びR4は、独立して、H又はC1-3アルキルであり、あるいは、R3及びR4は、それらが結合している炭素原子と一緒に4又は5員炭素環を形成する。
【0015】
より好ましくは、R3及びR4は、独立して、H又はC1-3アルキルであり、具体的には、R3及びR4はどちらもメチルである。
【0016】
好ましくは、R3及びR4は、それらが結合している炭素原子と一緒に4又は5員炭素環を形成する。
【0017】
式(1)の化合物の好ましい基では、R5は、H、C1-4アルキル、C3-6シクロアルキル、C2-6アルコキシアルキル、C3-6アルケニルオキシアルキル、C3-6アルキニルオキシアルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、又はC1-4ハロアルキルである。
【0018】
式(1)の化合物の別の好ましい基では、Halはブロモであり、Vはメチルであり、R1はメチルであり、nは0であり、R3及びR4はメチルであり、R5はH、C1-4アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ−C1-4アルキル、C3-6アルケニルオキシ−C1-4アルキル、C3-6アルキニルオキシ−C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、又はC1-4ハロアルキルである。
【0019】
5がHである場合が好ましい。
【0020】
5がC1-4アルキルである場合も好ましい。
【0021】
5がメチルである場合も好ましい。
【0022】
5がエチルである場合も好ましい。
【0023】
5がC1-3アルコキシ−C1-3アルキルである場合も好ましい。
【0024】
5がC3-4アルケニルオキシ−C1-3アルキルである場合も好ましい。
【0025】
5がC3-4アルキニルオキシ−C1-3アルキルである場合も好ましい。
【0026】
5がC1-3ヒドロキシアルキルである場合も好ましい。
【0027】
5がC1-3ハロアルキルである場合も好ましい。
【0028】
5がCH2OH、CH2OMe、CH2OEt、CH2OCH2CHCH2、CH2OCH2CCH、(CH22OMeである場合も好ましい。
【0029】
本発明の一部を形成する化合物を以下の表1及び表2に記載する。実施例の後の特徴データを表4に記載する。
【0030】
表1
表1の化合物は、一般式(1)で、Arが式(A)で表される基、HalがCl、Vがメチル、R1がメチル、R3及びR4が共にメチル、nが0、R5が表に記載の通りである、化合物である。
【0031】
【表1】

【0032】
表2
表2は、一般式(1)で表される60個の化合物からなり、Arは式(A)で表される基、HalはBr、Vはメチル、R1はメチル、R3及びR4は共にメチル、nは0、R5は表1に示す通りである。
【0033】
表4
この表は、製造された化合物を特徴付けるデータ(物理的/スペクトルデータ)を示し、一部は表1〜2に記載されている。
【0034】
【表2】

【0035】
一般式(1)の化合物は、以下のスキーム1〜4に概要を示したように製造することができ、スキーム中、Ar、R1、R3、R4、及びR5は上記と同じ意味である。R6は、H又はC1-4アルキルであり、記載されている通りである(下記スキーム1参照);DMFはN,N−ジメチルホルミアミド、NBSはN−ブロモスクシンイミド、NCSはN−クロロスクシンイミド、MCPBAはm−クロロ過安息香酸である。その他の略語は本文中に定義されている。
【0036】
nが0である式(1)の化合物をスキーム1に示すように製造することができる。R6がC1-4アルキルである式(2)のエステルを、周囲温度と溶媒の環流温度の間の温度で、AIBN(アゾ−イソブチロニトリル)等のラジカル開始剤及び光源の存在下、四塩化炭素又はアセトニトリル等の好適な溶媒中でN−ブロモスクシンイミド等のハロゲン化剤との反応によりハロゲン化し、Halが臭素、塩素、ヨウ素等のハロ原子である式(3)で表されるハロエステルを生成することができる。次いで、一般式(3)の化合物を、水素化ナトリウム等の塩基の存在下、DMF等の好適な溶媒中で一般式R1SHで表されるアルカンチオールと反応させて一般式(6)で表される化合物を生成するか、又はDMF等の好適な溶媒中でアルカンチオール塩R1-+(式中、Mはナトリウム又はリチウム等の金属である。)と反応させて一般式(6)で表される化合物を生成する。
【0037】
【化3】

【0038】
あるいは、一般式(4)で表されるエステルを、0℃と溶媒の環流温度の間の温度で、四塩化炭素又はアセトニトリル等の好適な溶媒中でN−クロロスクシンイミド又はN−ブロモスクシンイミド等のハロゲン化剤との反応によりハロゲン化して、式(5)で表されるハロエステル(式中、Halは臭素、塩素、又はヨウ素等のハロゲン原子である。)を生成する。式(5)のハロエステルを、カリウムt−ブトキシド、炭酸カリウム、又は水素化ナトリウム等の塩基の存在下、周囲温度と溶媒の環流温度の間の温度で、t−ブタノール、1,4−ジオキサン、又はDMF等の好適な溶媒中においてヒドロキシ(ヘテロ)アリールArOH(式中、Arは上記に定義した通りである。)と反応させて、式(6)の化合物を生成する。式(6)の化合物を、周囲温度と溶媒の環流温度の間の温度で、水性メタノール、エタノール、又はTHF(テトラヒドロフラン)等の好適な溶媒中においてアルカリ金属水酸化物M+OH-との反応により加水分解して、式(7)で表される酸を生成する。式(7)で表される酸を、0℃〜周囲温度でHOBT(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、EDC(1−エチル−3−N,N−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドヒドロクロリド)等の好適な活性化剤を用いて式(8)で表されるアミンと縮合させることで、nが0である一般式(1)の化合物を生成することができる。
【0039】
nが1又は2である一般式(1)の化合物は、スキーム2に示すように、スルホキシド(nは1)又はスルホン(nは2)の酸化状態に酸化することで製造される。例えば、一般式(6)で表されるエステルを、0℃と周囲温度の間の温度で、エタノール等の好適な溶媒中において過ヨウ素酸ナトリウム等の酸化剤を用いて式(9)で表されるスルホキシドに酸化することができる。式(10)で表されるスルホンは、0℃と溶媒の環流温度の間の温度で、ジクロロメタン等の好適な溶媒中において、2当量以上のm−クロロ過安息香酸(MCPBA)等の酸化剤と反応させて式(16)で表される化合物から直接生成するか、式(9)で表されるスルホキシドと1当量以上のm−クロロ過安息香酸から生成することができる。式(6)のスルフィド、式(9)のスルホキシド、又は式(10)のスルホンを、酸化後に0℃と溶媒の環流温度の間の温度でエタノール等の好適な溶媒中におけるルカリ金属水酸化物との反応により加水分解して、対応する酸(7)、(11)、又は(12)を生成することができる。式(7)、(11)、又は(12)の酸を、0℃〜周囲温度でHOBT、EDC等の好適な活性化剤を用いて式(8)で表されるアミン(式中、R2は水素である。)と縮合させて、一般式(1)で表される化合物(式中、nは0、1、又は2である。)を生成することができる。
【0040】
【化4】

【0041】
同様に、式(11)及び式(1)で表されるスルホキシド(式中、nは1、R2は水素である。)は、前述したように、メタ過ヨウ素酸ナトリウム又はm−クロロ過安息香酸等の酸化剤を用いて、式(7)及び式(1)のスルフィド(式中、nはそれぞれ0である。)から製造することができる。式(12)及び式(1)で表されるスルホン(式中、nは2である。)は、前述のように、少なくとも2当量のm−クロロ過安息香酸等の酸化剤を用いて式(7)及び式(1)で表されるスルフィド(式中、nは0である。)から、又は1当量以上のm−クロロ過安息香酸等の酸化剤を用いて式(11)及び式(1)で表されるスルホキシド(式中、nは1である。)から製造することができる。
【0042】
式(1)で表される化合物はまた、スキーム3に示すように製造することもできる。式(13)で表される酸を、0℃〜周囲温度でHOBT及びEDC等の好適な活性化剤を用いて式(8)で表されるアミンと縮合させて、式(14)で表される化合物を生成することができる。式(14)で表される化合物を、0℃〜周囲温度で四塩化炭素又はアセトニトリル等の好適な溶媒中においてN−クロロスクシンイミド等のハロゲン化剤を用いてハロゲン化して、式(16)で表される化合物を生成することができる。式(16)で表されるアミドはまた、0℃〜周囲温度でジクロロメタン等の好適な溶媒中においてトリエチルアミン等の塩基存在下で式(8)で表されるアミンとの反応により、式(15)で表される酸ハライドから製造することもできる。
【0043】
【化5】

【0044】
式(16)で表されるハロスルフィドを0℃〜80℃でDMF等の好適な溶媒中において炭酸カリウム又は水素化ナトリウム等の塩基の存在下でヒドロキシ(ヘテロ)アリールArOHと反応させることで、nが0である式(1)の化合物を生成することができる。
【0045】
スキーム4に示すように、一般式(8)で表されるアミン(式中、R2はHである。)の例である一般式(20)で表されるアミンの製造は、一般式(18)で表されるシリル保護アミノアルキンをn−ブチルリチウム等の好適な塩基を用いてアルキル化し、その後、アルキルヨード(例えばヨウ化メチル)等の好適なアルキル化試薬R5LGと反応させて一般式(19)で表されるアルキル化化合物を形成させることで行うことができる。同様な手順で、一般式(18)で表されるシリル保護アミノアルキンを、n−ブチルリチウム等の好適な塩基を用いてカルボニル誘導体RaCORb(例えばホルムアルデヒド)と反応させて、ヒドロキシアルキル部分を含むアミノアルキン(19)を得ることができる。次いで、シリル保護基を例えば酸性水溶液を用いて一般式(19)で表される化合物から除去し、一般式(20)で表されるアミノアルキンを形成することができる。一般式(20)で表されるアミノアルキンは、例えばR5がヒドロキシアルキル基である場合、例えば一般式(20)で表される化合物をt−ブチルジメチルシリルクロリド等のシリル化剤と反応させて一般式(21)で表される酸素がシリル化された誘導体を得ることで、更に誘導体化されてもよい。更に、一般式(20)で表される化合物を、水素化ナトリウム、又はカリウムビス(トリメチルシリル)アミド等の塩基で処理し、その後RcLGで処理して、一般式(22)で表される化合物を得ることができる。代替的な順番では、一般式(19)で表される化合物を、ナトリウム又はカリウムビス(トリメチルシリル)アミド等の塩基で処理した後、化合物RcLG(式中、LGはハロゲン等の脱離基を表す。)又はOSO2Me若しくはOSO2−4−トリル(例えばヨウ化エチル)等のスルホネートエステルで処理することで、シリル保護基が除去された後、一般式(22)で表される化合物を得ることができる。
【0046】
【化6】

【0047】
一般式(18)で表されるシリル保護アミノアルキンは、第三級有機アミン塩基、例えばトリエチルアミン等の好適な塩基の存在下で、一般式(17)で表されるアミンを1,2−ビス−(クロロジメチルシリル)エタンと反応させることで得ることができる。
【0048】
一般式(17)で表されるアミンは、市販されているか、文献に記載されている標準的な方法(例えば欧州特許出願公開第0834498(A)号参照)で製造することができる。
【0049】
式(1)の化合物は、活性のある殺真菌剤であり、以下の病原菌の1種又は複数を防除するために使用してもよい:米及び小麦に対するピリキュラリア・オリゼ(Pyricularia oryzae)(イネいもち病菌(Magnaporthe grisea))及び他の宿主に対する他のピリキュラリア属(Pyricularia)菌種;小麦に対するプシニア・トリチシナ(Puccinia triticina)(又は、プシニア・レコンジタ(Puccinia recondita))、プシニア・ストリイフォルミス(Puccinia striiformis)及び他のさび病、大麦に対するプシニア・ホルデイ(Puccinia hordei)、プシニア・ストリイフォルミス及び他のさび病、並びに他の宿主(例えば、芝、ライムギ、コーヒー、ナシ、リンゴ、ピーナツ、テンサイ、野菜及び観賞植物)に対するさび病;カボチャ(例えばメロン)に対するエリシフェ・シコラセアラム(Erysiphe cichoracearum);大麦、小麦、ライ麦及び芝に対するウドンコ病菌(ブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis))(又はエリシフェ・グラミニス)、並びに様々な宿主に対する他のうどん粉病、例えばホップに対するスファエロセカ・マキュラリス(Sphaerotheca macularis)、カボチャ(例えばキュウリ)に対するスファエロセカ・フスカ(Sphaerotheca fusca)(スファエロセカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea))、トマト、ナスビ及びピーマンに対するレベイルラ・タウリカ(Leveillula taurica)、リンゴに対するポドスフェラ・レウコトリカ(Podosphaera leucotricha)、並びにワイン用ブドウに対するウンチヌラ・ネカトル(Uncinula necator);穀物(例えば小麦、大麦、ライ麦)、芝及び他の宿主に対するコクリオボルス属(Cochliobolus)菌種、ヘルミントスポリウム属(Helminthosporium)菌種、ドレックスレラ属(Drechslera)菌種(ピレノホラ属(Pyrenophora)菌種)、リンコスポリウム属(Rhynchosporium)菌種、マイコスフェレラ・グラミニコラ(Mycosphaerella graminicola)(セプトリア・トリチシ(Septoria tritici))及びファエオスフェリア・ノドルム(Phaeosphaeria nodorum)(スタゴノスポラ・ノドルム(Stagonospora nodorum)又はセプトリア・ノドルム(Septoria nodorum))、シュードセルコスポレラ・ヘルポトリコイデス(Pseudocercosporella herpotrichoides)及びガエウマノマイセス・グラミニス(Gaeumannomyces graminis);ピーナツに対する、セルコスポラ・アラキジコラ(Cercospora arachidicola)及びセルコスポリジウム・ペルソナツム(Cercosporidium personatum)、並びに他の宿主、例えばテンサイ、バナナ、ダイズ及び米に対する他のセルコスポラ属(Cercospora)菌種;トマト、イチゴ、野菜、ワイン用ブドウ及び他の宿主に対するボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)(灰色カビ病菌)、並びに他の宿主に対する他のボトリチス属(Botrytis)菌種;野菜(例えばニンジン)、ナタネ、リンゴ、トマト、ジャガイモ、穀物(例えば小麦)及び他の宿主に対する、アルテルナリア属(Alternaria)菌種;リンゴ、ナシ、核果、木の実(tree nuts)及び他の宿主に対する、ヴェントゥリア属(Venturia)菌種(ヴェントゥリア・イナクアリス(Venturia inaequalis)(そうか病)を含む);穀物(例えば小麦)及びトマトを含む広範な宿主に対する、クラドスポリウム属(Cladosporium)菌種;核果、木の実及び他の宿主に対する、モニリア属(Monilinia)菌種;トマト、芝、小麦、カボチャ及び他の宿主に対するジディメラ(Didymella)菌種;ナタネ、芝、米、ジャガイモ、小麦及び他の宿主に対するフォマ属(Phoma)菌種;小麦、木材及び他の宿主に対する、アスペルギルス属(Aspergillus)菌種及びオーレオバシディウム属(Aureobasidium)菌種;エンドウマメ、小麦、大麦及び他の宿主に対する、アスコキタ属(Ascochyta)菌種;リンゴ、ナシ、タマネギ及び他の宿主に対する、ステムフィリウム属(Stemphylium)菌種(プレオスポラ属(Pleospora)菌種);リンゴ及びナシに対する、夏枯れ病(summer diseases)(例えば、炭疽病(グロメレラ・シングラタ(Glomerella cingulata))、黒斑病又は斑点病(ボトリオスファエリア・オブツサ(Botryosphaeria obtusa))、リンゴ黒点病(マイコスフェレラ・ポミ(Mycosphaerella pomi))、シダーアップルさび病(Gymnosporangium juniperi-virginianae)、すす斑病(グロエオデス・ポミゲナ(Gloeodes pomigena))、すす点病菌(シゾチリウム・ポミ(Schizothyrium pomi))及び白腐れ病(ボトリオスファエリア・ドチデア(Botryosphaeria dothidea)));ワイン用ブドウに対するプラスモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola);レタスに対するブレミア・ラクツゥーカエ(Bremia lactucae)、大豆、タバコ、タマネギ及び他の宿主に対するペロノスポラ属(Peronospora)菌種、ホップに対するシュードペロノスポラ・フミリ(Pseudoperonospora humuli)、並びにカボチャに対するシュードペロノスポラ・キュベンシス(Pseudoperonospora cubensis)などの他のべと病菌;芝及び他の宿主に対する、フィチウム属(Pythium)菌種(フィチウム・ウルチマム(Pythium ultimum)を含む);ジャガイモ及びトマトに対するフィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、並びに野菜、イチゴ、アボカド、コショウ、観賞植物、タバコ、ココア及び他の宿主に対する、フィトフトラ属(Phytophthora)菌種;米及び芝に対するタナテフォーラス・ククメリス(Thanatephorus cucumeris)、並びに小麦及び大麦、ピーナツ、野菜、綿及び芝などの様々な宿主に対する他のリゾクトニア属(Rhizoctonia)菌種;芝、ピーナツ、ジャガイモ、ナタネ及び他の宿主に対するスクレロティニア属(Sclerotinia)菌種;芝、ピーナツ及び他の宿主に対するスクレロチウム属(Sclerotium)菌種;米に対するギベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi);芝、コーヒー及び野菜を含む広範な宿主に対するコレトトリカム属(Colletotrichum)菌種;芝に対するラエチサリア・フシフォルミス(Laetisaria fuciformis);バナナ、ピーナツ、シトラス、ピーカン、パパイヤ及び他の宿主に対するミコスフェレラ属(Mycosphaerella)菌種;シトラス、大豆、メロン、ナシ、ルピン及び他の宿主に対するディアポルテ属(Diaporthe)菌種;シトラス、ワイン用ブドウ、オリーブ、ピーカン、バラ及び他の宿主に対するエルシノエ属(Elsinoe)菌種;ホップ、ジャガイモ及びトマトを含む広範な宿主に対するバーティシリウム属(Verticillium)菌種;ナタネ及び他の宿主に対するピレノペジザ属(Pyrenopeziza)菌種;カカオのバスキュラーストリークダイバックを引き起こすオンコバシジウム・テオブロメ(Oncobasidium theobromae);様々な宿主に対する、特に小麦、大麦、芝及びトウモロコシに対する、フサリウム属(Fusarium)菌種、チフラ属(Typhula)菌種、ミクロドキウム・ニバレ(Microdochium nivale)、ウスチラゴ属(Ustilago)菌種、ウロシスチス属(Urocystis)菌種、テイレチア属(Tilletia)菌種及びクラビセプス・プルプレア(Claviceps purpurea);テンサイ、大麦及び他の宿主に対する、ラムラリア属(Ramularia)菌種;特に果実の収穫後病菌(例えば、オレンジに対するペニシリウム・ディジタータム(Penicillium digitatum)、ペニシリウム・イタリカム(Penicillium italicum)及びトリコデルマ ビリデイ(Trichoderma viride)、バナナに対するコレトトリカム・ムサエ(Colletotrichum musae)及びグロエオスポリウム・ムサルム(Gloeosporium musarum)、並びにブドウに対するボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea));ワイン用ブドウに対する他の病原菌、特にエウティパ・ラタ(Eutypa lata)、グイグナルジア・ビドウェリ(Guignardia bidwellii)、フェリヌス・イグニアルス(Phellinus igniarus)、フォモプシス・ビチコラ(Phomopsis viticola)、プシュードペジザ・トラケイヒラ(Pseudopeziza tracheiphila)及びステレウム・ヒルスタム(Stereum hirsutum);樹木に対する(例えば、ロフォデルミウム・セジチオサム(Lophodermium seditiosum))、又は材木に対する他の病原菌、特にセファロスカス・フラグランス(Cephaloascus fragrans)、ケラトシスティス属(Ceratocystis)菌種、オフィオストマ・ピセアエ(Ophiostoma piceae)、ペニシリウム属(Penicillium)菌種、トリコデルマ・シュードコニンギ(Trichoderma pseudokoningii)、トリコデルマ ビリデイ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・ハルジアナム、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)、レプトグラフィウム・リンドベルギ(Leptographium lindbergi)及びアウレオバシジウム・プルラン(Aureobasidium pullulan);並びに、ウイルス性疾患の真菌ベクター(例えば、大麦黄色モザイクウイルス(BYMV)のベクターとしての穀物に対するポリミキサ・グラミニス(Polymyxa graminis)、及びリゾマニアのベクターとしてのテンサイに対するポリミキサ・ベーテ(Polymyxa betae))。
【0050】
式(1)の化合物は、卵菌綱の病原、例えばフィトフトラ・インフェスタンス、プラスモパラ属の菌種、例えばプラスモパラ・ビチコラ及びフィチウム属の菌種、例えばフィチウム・ウルチマムに対して特に良好な活性を示す。
【0051】
式(1)の化合物は、1種又は複数の真菌に対し活性があるように、植物組織へ、求頂的(acropetally)、求基的(basipetally)又は局所的に移動することがある。更に、式(1)の化合物は、植物上の1種又は複数の真菌に対し蒸気相で活性があるのに十分であるように、揮発することがある。
【0052】
従って本発明は、殺真菌的有効量の式(1)の化合物、又は式(1)の化合物を含有する組成物を、植物へ、植物の種子へ、植物もしくは種子の生育場所(locus)へ、又は土壌へ又は任意の他の植物成長培地、例えば栄養液へ適用することを含んでなる、植物病原性真菌を駆除又は防除する方法を提供する。
【0053】
本明細書において使用される用語「植物」は、実生、低木及び高木を含む。更に本発明の殺真菌法は、保護処理、治療的処理、浸透性(systemic)処理、根絶性処理及び抗胞子形成処理を含む。
【0054】
式(1)の化合物は、組成物の形で、農業、園芸及び芝草目的のために使用されることが好ましい。
【0055】
式(1)の化合物を、植物、植物の種子、植物もしくは種子の生育場所、又は土壌へ又は任意の他の成長培地へ施用するために、式(1)の化合物は通常、式(1)の化合物に加え、好適な不活性の希釈剤又は担体、及び任意に界面活性剤(SFA)を含有する組成物へ製剤される。SFAは、界面張力を低下し、これにより他の特性(例えば分散、乳化及び湿潤)の変化を導くことにより、界面(例えば、液/固界面、液/気界面又は液/液界面)の特性を変更することができる化学物質である。全ての組成物(固形及び液体の両製剤)は、式(1)の化合物を0.0001〜95重量%、より好ましくは1〜85重量%、例えば5〜60重量%含有することが好ましい。本組成物は一般に、真菌の防除に使用され、その結果式(1)の化合物は、0.1g〜10kg/ヘクタール、好ましくは1g〜6kg/ヘクタール、より好ましくは1g〜1kg/ヘクタールの割合で施用される。
【0056】
種子粉衣において使用される場合、式(1)の化合物は、種子1kgにつき、0.0001g〜10g(例えば0.001g又は0.05g)、好ましくは0.005g〜10g、より好ましくは0.005g〜4gの割合で使用される。
【0057】
別の態様において、本発明は、式(1)の化合物の殺真菌に有効な量並びにそれらについて好適な担体又は希釈剤を含有する、殺真菌組成物を提供する。
【0058】
より更なる態様において、本発明は、式(1)の化合物を含有する組成物の殺真菌に有効な量で、真菌を又は真菌の生育場所を処理することを含んでなる、生育場所において真菌を駆除及び防除する方法を提供する。
【0059】
本組成物は、粉剤(DP)、水溶剤(SP)、顆粒水溶剤(SG)、顆粒水和剤(WG)、水和剤(WP)、粒剤(GR)(徐放性又は即放性)、液剤(SL)、油剤(OL)、超低量液剤(UL)、乳剤(EC)、濃厚粉剤(DC)、エマルション製剤(水中油(EW)及び油中水(EO)の両方)、マイクロエマルション製剤(ME)、濃厚懸濁剤(SC)、エアゾル製剤、薫蒸/燻煙剤、カプセル懸濁剤(CS)及び種子処理用製剤を含む、多くの剤型から選択することができる。いずれかの場合において選択される剤型は、想定された特定の目的、並びに式(1)の化合物の物理的、化学的及び生物学的特性に応じて決まるであろう。
【0060】
粉剤(DP)は、式(1)の化合物を、1種又は複数の固形希釈剤(例えば、天然クレイ、カオリン、葉ろう石、ベントナイト、アルミナ、モンモリロナイト、キーゼルグール、チョーク、珪藻土、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム、硫黄、石灰、小麦粉、タルク、並びに他の有機及び無機の固形担体)と混合し、この混合物を細かい粉末へ機械的に粉砕することにより調製されてよい。
【0061】
水溶剤(SP)は、水への分散性/溶解性を改善するために、式(1)の化合物を、1種もしくは複数の水溶性無機塩(例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム又は硫酸マグネシウム)又は1種もしくは複数の水溶性有機固形物(例えば多糖)、並びに任意に1種もしくは複数の湿潤剤、1種もしくは複数の分散剤又はこれらの物質の混合物と混合することにより、調製されてよい。その後この混合物は、細かい粉末へ粉砕される。同様の組成物を造粒し、顆粒水溶剤(SG)を形成してもよい。
【0062】
水和剤(WP)は、液体中の分散を促進するために、式(1)の化合物を、1種又は複数の固形希釈剤又は担体、1種又は複数の湿潤剤、並びに好ましくは1種又は複数の分散剤、及び任意に1種又は複数の懸濁化剤と混合することにより、調製されてよい。その後この混合物は、細かい粉末へ粉砕される。同様の組成物を造粒し、顆粒水和剤(WG)を形成してもよい。
【0063】
粒剤(GR)は、式(1)の化合物及び1種又は複数の粉末化された固形の希釈剤又は担体の混合物を造粒することによるか、あるいは式(1)の化合物(又は好適な物質中のそれらの溶液)を、多孔性顆粒物質(例えば、軽石、アタプルガイトクレイ、フラー土、キーゼルグール、珪藻土又は粉砕したトウモロコシの穂軸)中に吸収することによるか、もしくは式(1)の化合物(又は好適な物質中のそれらの溶液)を、硬質コア材(例えば砂、ケイ酸塩、無機の炭酸塩、硫酸塩もしくはリン酸塩)上に吸着し、必要ならば乾燥することにより、予め形成されたブランク顆粒(blank granule)から造粒することによるか、のいずれかにより、形成されてよい。吸収又は吸着を補助するために通常使用される物質は、溶媒(例えば脂肪族及び芳香族石油系溶媒、アルコール、エーテル、ケトン及びエステル)並びに固着剤(例えばポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デキストリン、糖質及び植物油)を含む。その他の1種又は複数の添加剤(例えば、乳化剤、湿潤剤又は分散剤)も、顆粒中に含まれてよい。
【0064】
濃厚粉剤(DC)は、式(1)の化合物を、水、又はケトン、アルコールもしくはグリコールエーテルなどの有機溶媒中に溶解することにより調製されてよい。これらの溶液は、界面活性剤を含んでよい(例えば、水希釈を改善するか、又は噴霧タンク中での結晶化を防止するため)。
【0065】
乳剤(EC)又は水中油型エマルション製剤(EW)は、式(1)の化合物を、有機溶媒(任意に1種又は複数の湿潤剤、1種又は複数の乳化剤もしくはこれらの物質の混合物を含有する)中に溶解することにより調製されてよい。ECにおける使用に好適な有機溶媒は、芳香族炭化水素(例えばアルキルベンゼン又はアルキルナフタレン、例としてSOLVESSO 100、SOLVESSO 150及びSOLVESSO 200;SOLVESSOは登録商標である)、ケトン(例えばシクロヘキサノン又はメチルシクロヘキサノン)、及びアルコール(例えばベンジルアルコール、フルフリルアルコール又はブタノール)、N−アルキルピロリドン(例えばN−メチルピロリドン又はN−オクチルピロリドン)、脂肪酸のジメチルアミド(例えばC8−C1O脂肪酸ジメチルアミド)、及び塩素化された炭化水素がある。EC製品は、水への添加時に、自発的に乳化し、適当な装置による散布を可能にするのに十分な安定性を伴う乳液を作製することができる。EWの調製は、液体として(それが室温では液体ではない場合、これは妥当な温度、典型的には70℃未満で融解することができる)、又は溶液中(適当な溶媒中にこれを溶解することにより)のいずれかで式(1)の化合物を得ること、次に得られた液体もしくは溶液を、高剪断下で、1種もしくは複数のSFAを含有する水へ乳化し、エマルションを作製することが必要である。EWにおける使用に好適な溶媒は、植物油、塩素化された炭化水素(例えばクロロベンゼン)、芳香族溶媒(例えばアルキルベンゼン又はアルキルナフタレン)及び他の適当な水中の溶解度が低い有機溶媒を含む。
【0066】
マイクロエマルション製剤(ME)は、水を、1種又は複数のSFAを伴う1種又は複数の溶媒の配合物と混合し、自発的に熱力学的に安定した等方性(isotropic)液体製剤を作製することにより調製されてよい。式(1)の化合物は最初、水又は溶媒/SFA配合物のいずれかの中に存在する。MEにおける使用に好適な溶媒は、先にEC又はEWにおける使用について説明されたものを含む。MEは、水中油又は油中水システムのいずれかであってよく(どのシステムが存在するかは、伝導度測定により決定することができる)、並びに同じ製剤中で水溶性及び油溶性殺虫剤と混合するのに適することがある。MEは、水へ希釈するのに適しており、マイクロエマルションとして残存するか、又は通常の水中油型エマルションを形成するかのいずれかである。
【0067】
濃厚懸濁剤(SC)は、式(1)の化合物の微粉化された不溶性固体粒子の水性及び非水性懸濁液を含んでよい。SCは、化合物の細粒懸濁剤を作製するために、好適な媒体中で、固形の式(1)の化合物を、任意に1種又は複数の分散剤と共に、ボールミル粉砕又はビーズミル粉砕で調製してよい。1種又は複数の湿潤剤が、本組成物中に含まれてよく、並びに粒子が沈降する速度を遅くするために、懸濁化剤が含まれてよい。あるいは式(1)の化合物は、乾式ミル粉砕され、先に説明された物質を含有する水へ添加され、所望の最終生成物を作製してよい。
【0068】
エアゾル製剤は、式(1)の化合物及び好適な噴射剤(例えばn−ブタン)を含有する。式(1)の化合物は、好適な媒体(例えば水又はn−プロパノールのような水混和性液体)中に溶解又は分散され、非加圧式手動噴霧ポンプにおいて使用するための組成物を提供することもできる。
【0069】
閉鎖された空間において式(1)の化合物を含有する煙を発生するために適した組成物を形成するために、この化合物は、火工品(pyrotechnic)混合物中に乾燥状態で混合されてよい。
【0070】
カプセル懸濁剤(CS)は、EW製剤の調製に類似しているが、その中に各油滴が高分子シェルにより封入され、かつ式(1)の化合物及び任意にそれらの担体又は希釈剤を含む、油滴の水性分散を得るための追加の重合工程を伴う方法で調製されてよい。この高分子シェルは、界面重縮合反応によるか、又はコアセルベーション手順のいずれかにより作製することができる。これらの組成物は、式(1)の化合物の制御された放出を提供し、これらは種子処理に使用されてよい。式(1)の化合物は、化合物の遅い制御された放出を提供するために、生分解性高分子マトリックス中に製剤されてもよい。
【0071】
組成物は、組成物の生物学的性能を改善するために(例えば表面上の湿潤性、保持もしくは分布;処理された表面上の雨水への抵抗;又は、式(1)の化合物の取り込みもしくは移動を改善することによる)、1種又は複数の添加剤を含んでよい。このような添加剤は、界面活性剤、油分をベースにした噴霧添加剤、例えばある種の鉱物油又は天然植物油(ダイズ油及びナタネ油など);並びに、これらの物質の他の生体内増強(bio-enhancing)補助剤(式(1)の化合物の作用を補助又は修飾する成分)との配合物を含む。
【0072】
式(1)の化合物は、種子処理剤として、例えば乾燥種子処理粉剤(DS)、水溶性粉剤(SS)もしくはスラリー処理のための水分散性粉剤(WS)を含む粉末組成物として、又はフロアブル(FS)、液剤(LS)もしくはカプセル懸濁剤(CS)を含む液体組成物として使用するために製剤されてもよい。これらのDS、SS、WS、FS及びLS組成物の調製は、各々、先に説明したDP、SP、WP、SC及びDC組成物の調製に非常に類似している。種子を処理するための組成物は、種子への本組成物の接着を補助する物質(例えば鉱物油又はフィルム形成性バリヤ)を含んでよい。
【0073】
湿潤剤、分散剤及び乳化剤は、陽イオン系、陰イオン系、両性イオン系又は非イオン系のSFAであってよい。
【0074】
好適な陽イオン系SFAは、第4級アンモニウム化合物(例えばセチルトリメチル臭化アンモニウム)、イミダゾリン及びアミン塩である。好適な陰イオン系SFAは、脂肪酸のアルカリ金属塩、硫酸の脂肪族モノエステルの塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、スルホン化された芳香族化合物の塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、スルホン酸ブチルナフタレン並びにジ-イソプロピル-及びトリ-イソプロピル-ナフタレンスルホン酸ナトリウムの混合物)、硫酸エーテル、硫酸アルコールエーテル(例えばラウレス−3−硫酸ナトリウム)、カルボン酸エーテル(例えばラウレス−3−カルボン酸ナトリウム)、リン酸エステル(1種又は複数の脂肪族アルコールとリン酸(主にモノ-エステル)又は五酸化リン(主にジ-エステル)の間の反応の生成物、例えばラウリルアルコールとテトラリン酸の間の反応の生成物;加えてこれらの生成物は、エトキシル化されてよい。)、スルホコハク酸、パラフィン又はオレフィンスルホン酸、タウレート系及びリグノスルホン酸を含む。好適な両性イオン系SFAは、ベタイン、プロピオネート及びグリシネートを含む。好適な非イオン系SFAは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド又はそれらの混合物のような酸化アルキレンの、脂肪族アルコール(例えばオレイルアルコールもしくはセチルアルコール)との、又はアルキルフェノール(例えばオクチルフェノール、ノニルフェノールもしくはオクチルクレゾール)との縮合生成物;長鎖脂肪酸又は無水ヘキシトール由来の部分エステル;該部分エステルのエチレンオキシドとの縮合生成物;ブロックポリマー(エチレンオキシド及びプロピレンオキシドを含んでなる);アルカノールアミド;単純なエステル(例えば脂肪酸ポリエチレングリコールエステル);アミンオキシド(例えばラウリルジメチルアミンオキシド);並びに、レシチンを含む。
【0075】
好適な懸濁化剤は、親水コロイド(例えば、多糖、ポリビニルピロリドン又はナトリウムカルボキシメチルセルロース)及び膨潤クレイ(例えばベントナイト又はアパタルジャイト)を含む。
【0076】
式(1)の化合物は、殺真菌化合物を施用する公知の手段のいずれかにより施用することができる。例えば、葉、茎、枝もしくは根を含む植物のいずれかの部分へ、もしくは植え付けられる前の種子へ、もしくはそこで植物が栽培されるかもしくはそこへ植物が植え付けられる他の媒体(例えば根の回りの土壌、土壌全般、田面水もしくは水耕栽培システム)へ、直接、製剤されるかもしくは製剤されずに施用されるか、又はこれは、噴霧、粉衣、浸漬による施用、クリーム剤もしくはペースト剤としての施用、蒸気としての施用、もしくは散布機を通じて施用されるか、又は土壌もしくは水性環境中に組成物(例えば顆粒組成物又は水溶性バッグに充填された組成物)が混入されてよい。
【0077】
式(1)の化合物は、植物へ注入するか、又は動電型の噴霧技術もしくは他の低容積法を使用し植生へ噴霧するか、又は土地もしくは地域の潅漑システムにより施用することもできる。
【0078】
水性調製物(水溶液又は分散液)として使用するための組成物は一般に、高い割合で活性成分を含有する濃縮物の形で供給され、この濃縮物は、使用前に水へ添加される。DC、SC、EC、EW、ME、SG、SP、WP、WG及びCSを含み得るこれらの濃縮物は、長期間の貯蔵に耐え、かつそのような貯蔵後に、水へ添加し、通常の噴霧装置により施用され得るのに十分な時間均質であり続ける水性調製物を形成することが可能であることが必要である。このような水性調製物は、それらが使用される目的に応じて変動量の式(1)の化合物(例えば0.0001〜10重量%)を含有してよい。
【0079】
式(1)の化合物は、肥料(例えば窒素−、カリウム−又はリン−含有肥料)との混合物で使用してもよい。好適な剤型は、肥料の顆粒を含む。これらの混合物は好適なことに、式(1)の化合物を最大25重量%含有する。
【0080】
従って、本発明は、肥料及び式(1)の化合物を含有する肥料組成物も提供する。
【0081】
本発明の組成物は、生物活性を有する他の化合物、例えば微量栄養素、又は類似のもしくは補充的な殺真菌活性を有する化合物又は植物成長の調節活性、除草活性、殺虫活性、殺線虫活性もしくは殺ダニ活性を有する化合物を含有してもよい。
【0082】
別の殺真菌剤を含有することにより、得られる組成物は、式(1)の化合物単独よりも、より広範な活性スペクトル及びより大きいレベルの固有の活性を有することができる。更に他の殺真菌剤は、式(1)の化合物の殺真菌活性に対し相乗作用を有することがある。
【0083】
式(1)の化合物は、本組成物の単独の活性成分であってよいか、又はこれは、適宜殺虫剤、殺真菌剤、共力剤、除草剤又は植物成長調節剤などの1種又は複数の追加の活性成分と混合されてよい。追加の活性成分は、活性のより広いスペクトル又は生育場所での増大された残留を有する組成物を提供し;式(1)の化合物の活性を相乗するか、又は活性を補充し(例えば、作用速度を増大するか又は撥水性を克服することにより);もしくは、個々の成分に対する耐性の出現を克服又は防止することを補助する。特定の追加の活性成分は、本組成物の意図された有用性により左右される。
【0084】
本発明の組成物に含有され得る殺真菌化合物の例は、AC 382042(N−(1−シアノ−1,2−ジメチルプロピル)−2−(2,4−ジクロロフェンオキシ)プロピオンアミド)、アシベンゾラル−S−メチル、アラニカルブ、アルジモルフ、アニラジン、アザコナゾール、アザフェニジン、アゾキシストロビン、ベナラキシル、ベノミル、ベンチアバリカルブ、ビロクサゾール、ビテルタノール、ブラストサイジンS、ボスカリド(ニコビフェンの新たな名称)、ブロムコンザゾール、ブピリメート、カプタホール、キャプタン、カルベンダジム、カルベンダジムクロルハイドレート、カルボキシン、カルプロパミド、カルボン、CGA 41396、CGA 41397、キノメチオナート、クロルベンズチアゾン、クロロタロニル、クロロゾリネート、クロジラコン、例えばオキシ塩化銅、オキシキノール酸銅(copper oxyquinolate)、硫酸銅、トール油酸銅及びボルドー液などの銅含有化合物、サイアミダゾスルファミド(cyamidazosulfamid)、シアゾファミド(IKF-916)、シフルフェナミド、シモキサニル、シブロコナゾール、シプロジニル、デバカルブ、ジ−2−ピリジルジスルフィド−1,1'−二酸化物、ジクロフルアニド、ジクロシメット、ジクロメジン、ジクロラン、ジエトフェンカルブ、ジフェノコナゾール、ジフェンゾコート、ジフルメトリム、O,O−ジ−イソ−プロピル−S−ベンジルチオリン酸、ジメフルアゾール、ジメトコナゾール、ジメチリモール、ジメトモルフ、ジモキシストロビン、ジニコナゾール、ジノカップ、ジチアノン、ドデシルジメチル塩化アンモニウム、ドデモルフ、ドジン、ドクグアジン、エディフェンホス、エポキシコナゾール、エタボキサム、エチリモール、エチル(Z)−N−ベンジル−N([メチル(メチル−チオエチリデンアミノオキシカルボニル)アミノ]チオ)−β−アラニナート、エトリジアゾール、ファモキサドン、フェンアミドン、フェナリモル、フェンブコナゾール、フェンフラム、フェンヘキサミド、フェノキサニル(AC 382042)、フェンピクロニル、フェンプロピディン、フェンプロピモルフ、酢酸トリフェニルスズ、水酸化トリフェニルスズ、ファーバム、フェリムゾン、フルアジナム、フルジオキソニル、フルメトバー、フルモルフ、フルオルイミド、フルオキサストロビン、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルスルファミド、フルトラニル、フルトリアホール、フォルペット、ホセチル-アルミニウム、フベリダゾール、フララキシル、フラメトピル、グアザチン、ヘキサコナゾール、ヒドロキシイソオキサゾール、ヒメキサゾール、イマザリル、イミベンコナゾール、イミノクタジン、イミノクタジン三酢酸塩、イプコナゾール、イプロベンホス、イプロジオン、イプロバリカルブ、イソプロパニルブチルカルバメート、イソプロチオラン、カスガマイシン、クレソキシム-メチル、LY186054、LY211795、LY 248908、マンコゼブ、マネブ、メフェノキサム、メパニピリム、メプロニル、メタラキシル、メタラキシルM、メトコナゾール、メチラム、メチラム−亜鉛、メトミノストロビン、メトラフェノン、MON65500(N−アリル−4,5−ジメチル−2−トリメチルシリルチオフェン−3−カルボキシアミド)、ミクロブタニル、NTN0301、ネオアソジン、ニッケルジチオカルバミン酸ジメチル、ニトロタール-イソプロピル、ヌアリモール、オフレース、有機水銀化合物、オリサストロビン、オキサジキシル、オキサスルフロン、オキソリン酸、オキスポコナゾール、オキシカルボキシン、ペフラゾエート、ペンコナゾール、ペンシクロン、フェナジンオキシド、リン含有酸、フタリド、ピコキシストロビン、ポリオキシンD、ポリラム、プロベナゾール、プロクロラズ、プロシミドン、プロパモカルブ、プロパモカルブ塩酸塩、プロピコナゾール、プロピネブ、プロピオン酸、プロキナジド、プロチオコナゾール、ピラクロストロビン、ピラゾホス、ピリフェノックス、ピリメタニル、ピロキロン、ピロキシフル、ピロールニトリン、第4級アンモニウム化合物、キノメチオネート、キノキシフェン、キントゼン、シルチオファム(MON 65500)、S−イマザリル、シメコナゾール、シプコナゾール、ペンタクロロフェネートナトリウム、スピロキサミン、ストレプトマイシン、硫黄、テブコナゾール、テクロフタラム、テクナゼン、テトラコナゾール、チアベンダゾール、チフルザミド、2−(チオシアノ−メチルチオ)ベンゾチアゾール、チオファネート−メチル、チラム、チアジニル、チミベンコナゾール、トルクロホス−メチル、トリルフルアニド、トリアジメホン、トリアジメノール、トリアズブチル、トリアゾキシド、トリシクラゾール、トリデモルフ、トリフロキシストロビン、トリフルミゾール、トリホリン、トリチコナゾール、バリダマイシンA、バパム(vapam)、ビンクロゾリン、XRD-563、ジネブ、ジラム、ゾキサミド、及び下記式の化合物である:
【化7】

【0085】
式(1)の化合物は、種子伝染病、土壌伝染病又は葉の真菌疾患に対する植物の保護のために、土壌、ピート又は他の発根媒体と混合されてよい。
【0086】
混合物によっては、著しく異なる物理的、化学的又は生物学的特性を有する活性成分を含有することがあり、その結果これらは容易にそれら自身を同じ通常の剤型にすることができない。これらの状況においては、その他の剤型が調製され得る。例えば、活性成分のひとつが水不溶性固体であり、他方が水不溶性液体である場合、それにもかかわらず、該固体活性成分を懸濁液として分散する(SCの調製に類似した調製を使用)が、該液体活性成分は乳液として分散する(EWの調製に類似した調製を使用)ことにより、各活性成分を同じ連続水相中に分散することは可能であろう。得られる組成物は、サスポエマルション(SE)製剤である。
【0087】
以下の実施例により更に本発明を例示する。
【実施例】
【0088】
実施例1
本実施例は、2−(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−プロパ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表1の化合物番号1)の製造を説明する。
【0089】
ステージ1:3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−オールの製造
ステップ1:8−メチル−6−ニトロ−キノリンの製造
3−ニトロ−ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(78.8g)及びプロパン−1,2,3−トリオール(108.95g)を、水(82.9g)にスルホン酸(95〜97%)(193.4g)を溶かして新たに調製した溶液に周囲温度で添加する。得られた溶液を100℃で撹拌し、2−メチル−4−ニトロアニリン(50.0g)を添加する。反応混合物を更に150℃で4時間撹拌する。反応混合物を周囲温度まで冷却した後、水で処理し、粉末NaHCO3で注意深く中和し、酢酸エチルで抽出する。有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮する。シリカゲル(ヘキサン/酢酸エチル)を用いてフラッシュろ過して残渣を精製し、更にイソプロパノール中で再結晶化することで、8−メチル−6−ニトロ−キノリン(27.44g)が黄色固体として得られる。
【0090】
1H NMR(CDCl3)δppm:9.10(1H、sm);8.62(1H、sm);8.30(2H、sm);7.58(1H、dd)、2.88(3H、s)。
【0091】
ステップ2:3−クロロ−8−メチル−6−ニトロ−キノリンの製造
8−メチル−6−ニトロ−キノリン(8.22g)及びN−クロロスクシンイミド(11.66g)を無水酢酸(100ml)中で80℃で48時間撹拌する。次いで、反応混合物を周囲温度まで冷却し、水で処理し、固体(粉末)NaHCO3を用いて注意深く中和し、R.T.で更に30分間撹拌する。粉末のチオ硫酸ナトリウムを注意深く添加して過剰なN−クロロスクシンイミドを除去する。反応混合物を周囲温度で2時間撹拌して、酢酸エチルで抽出する。有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮する。残渣をtert−ブチルメチルエーテル中で粉砕して、3−クロロ−8−メチル−6−ニトロ−キノリン(6.63g)が白色固体として得られる。
【0092】
1H NMR(CDCl3)δppm:9.00(1H、sd);8.54(1H、sm);8.31(1H、sm);8.27(1H、sd)、2.88(3H、s)。
【0093】
ステップ3:3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルアミンの製造
周囲温度で、酢酸/水/酢酸エチル(145ml/6.3ml/14.3ml)中で3−クロロ−8−メチル−6−ニトロ−キノリン(10.58g)の混合物に鉄(17.52g)を添加する。次いで、反応混合物を60℃で2時間撹拌し、セライトを用いてろ過する。水酸化ナトリウム水溶液(2N)を注意深く添加し、溶媒のpHを10に調整する。酢酸エチルで抽出した後、有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮することで、3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルアミン(9.21g)が薄茶色固体の粗残渣として得られる。これを更に精製することなく次のステップで使用する。
【0094】
1H NMR(CDCl3)δppm:8.52(1H、sm);7.80(1H、sm)、6.98(1H、sm);6.63(1H、sm)、3.95(2H、bs);2.68(3H、s)。
【0095】
ステップ4:3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−オールの製造
リン酸(400ml)と水(40ml)との混合物中の3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルアミン(12.00g)をオートクレーブ(圧力1.0〜2.7バール)中で170℃で24時間加熱する。次いで、反応混合物を周囲温度まで冷却し、水(1000ml)で処理し、周囲温度で2時間撹拌する。沈殿物をろ過して除去すると、3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−オール(5.39g+1.36g=6.75g)の第1バッチが茶色固体として得られる。ろ液を酢酸エチルで抽出する(4×)。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮することで、3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−オール(6.41g)の第2バッチが薄茶色固体として得られる。
【0096】
1H NMR(DMSO d6)δppm:10.1(1H、bs);8.61(1H、sd);8.29(1H、sd);7.18(1H、sm)、6.96(1H、sm);2.62(3H、s)。
【0097】
ステージ2:クロロ−メチルスルファニル−酢酸エチルエステルの製造
−15℃に冷却したエチル(メチルチオ)アセテート(10.8ml)を含むジクロロメタン撹拌溶液(300ml)に、塩化スルフリル(8.1ml)を液滴する。混合物を2時間かけて室温まで暖め、次いで、減圧下で濃縮することで、粗クロロ−メチルスルファニル−酢酸エチルエステルが無色の液体として得られる。この生成物を更に精製することなく次のステップで使用する。
【0098】
1H NMR(CDCl3)δppm:5.35(1H、s);4.25(2H、m);2.30(3H、s);1.30(3H、t)。
【0099】
ステージ3:スキーム1に従った2−(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−プロパ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミドの製造
ステップ1:(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−メチルスルファニル−酢酸エチルエステルの製造
上記実施例1のステージ2のクロロ−メチルスルファニル−酢酸エチルエステル(7.03g)及び乾燥炭酸カリウム(24.02g)を、3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−オール(6.73g)を含むN,N−ジメチルホルムアミド溶液(50ml)に周囲温度で添加する。反応混合物を60℃で3時間撹拌した後、水で処理し、酢酸エチルで抽出する。有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮する。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで、(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−メチルスルファニル−酢酸エチルエステル(7.58g)が黄色油として得られる。
【0100】
1H NMR(CDCl3)δppm:8.70(1H、sm);7.98(1H、sm);7.34(1H、sm);6.95(1H、sm)、5.68(1H、s);4.35(2H、qd);2.76(3H、s);2.25(3H、s);1.34(3H、t)。
【0101】
ステップ2:(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−メチルスルファニル−酢酸の製造
(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)メチルスルファニル酢酸エチルエステル(7.53g)を含むメタノール(100ml)に、水酸化ナトリウム水溶液(2N;17.33ml)を周囲温度で添加する。反応混合物を70℃で1時間撹拌し、周囲温度まで冷却し、その後、溶媒の約90%を蒸発させる。残渣を水で処理し、得られた混合物にHCl水溶液(1N)を添加してpHを1にする。沈殿物をろ過して除去し、水で洗浄し、減圧下で乾燥させることで、(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)メチルスルファニル酢酸(6.69g)が黄色固体として得られる。
【0102】
1H NMR(DMSO d6)δppm:13.5(1H、bs);8.73(1H、sm);8.34(1H、sm);7.42(1H、sm);7.29(1H、sm)、6.04(1H、s);2.68(3H、s);2.25(3H、s);2.17(3H、s)。
【0103】
ステップ3:2−(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−プロパ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミドの製造
N−エチルジイソプロピルアミン(0.130g)、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)−トリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウム−ヘキサフルオロホスファート(0.205g)、及びN,N−ジメチルアミノピリジン(cat.)を、乾燥DMF(2ml)に溶解した(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)メチルスルファニル酢酸(0.120g)及び1、1−ジメチル−ブタ−2−イニルアミンヒドロクロリド(0.054g)の撹拌溶液に、順に添加する。反応混合物を周囲温度で2時間撹拌した後、水及び酢酸エチルで処理する。液−液抽出後、有機相を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲル(ヘキサン/酢酸エチル:7/3)を用いたフラッシュクロマトグラフィー(flah chromatography)で精製することで、2−(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−プロパ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(0.150g)が淡黄色固体として得られる。
【0104】
1H NMR(CDCl3)δppm:8.75(1H、sm);8.02(1H、sm);7.31(1H、sm);7.02(1H、sm)、6.22(1H、bs);5.60(1H、s);2.78(3H、s);2.20(3H、s);1.83(3H、s);1.69(3H、s);1.68(3H、s)。
【0105】
実施例2
本実施例は、2−(3−ブロモ−8−エチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−ブタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号34)の製造を説明する。
【0106】
ステージ1:3−ブロモ−8−エチル−キノリン−6−オールの製造
ステップ1:2−エチル−4−メトキシ−1−ニトロ−ベンゼンの製造
エチルマグネシウムクロリドのTHF溶液(2.8M、16.2ml、45mmol)をニトロアレーン(4.5g、30mmol)の撹拌THF溶液(150ml)に液滴し、アルゴン下で−70℃に冷却する。10分後、粉末のKMnO4(7.2g)を添加し、その後、濃縮液体NH3(約150ml)を添加する。反応混合液を20分間撹拌し、NH4Cl(318mg、6mmol)を添加し、冷却浴を外す。−30℃になったところで、混合物を15分間撹拌し、HCl水溶液中に溶かしたシュウ酸の飽和溶液(20ml、10%)を添加する。CH2Cl2での抽出後、有機相をMgSO4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮する。ジクロロメタン/ヘキサン混合物を用いたカラムクロマトグラフィーによるシリカゲルでの精製により、1.9gの2−エチル−4−メトキシ−1−ニトロ−ベンゼンが得られた。
【0107】
1H NMR(CDCl3)δppm:8.04〜8.01(1H、m);6.80〜6.78(2H、m);3.83(3H、s);2.97(2H、q);1.28(3H、t)。
【0108】
ステップ2:2−エチル−4−メトキシ−フェニルアミンの製造
ステップ1の2−エチル−4−メトキシ−1−ニトロ−ベンゼン(750mg)を含むエタノール(20ml)に、鉄粉末(1.6g)及び37%HCl水溶液(160μl)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、その後、2M NaOHを添加してpHを8にする。酢酸エチルで抽出した後、セライトで濾過することで、621mgの2−エチル−4−メトキシ−フェニルアミンが得られた。これを以下のステップ3でそのまま使用する。
【0109】
1H NMR(CDCl3)δppm:6,68(1H、s);6.62〜6.61(2H、m);3.74(3H、s);2.50(2H、q);1.23(3H、t)。
【0110】
ステップ3:ステップ2の3−ブロモ−8−エチル−6−メトキシ−キノリン2−エチル−4−メトキシフェニルアミン(300mg)を含む酢酸(3ml)標品を2,2,3トリブロモプロパナール(544mg)で処理し、混合物を室温で1時間撹拌し、その後、これを水で希釈し、酢酸エチルで抽出する。有機相を2NのNaOHで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で蒸発させる。クロマトグラフィー(シリカ;ヘキサン/酢酸エチル)後に、216mgの3−ブロモ−8−エチル−6−メトキシ−キノリン(M+2268)が得られる。
【0111】
1H NMR(CDCl3)δppm:8.74(1H、d);8.16(1H、d);7.22(1H、d);6.81(1H、d)、3.21(3H、s);2.50(2H、q);1.35(3H、t)。
【0112】
ステップ4:3−ブロモ−8−エチル−キノリン−6−オールの製造
ステップ3の3−ブロモ−8−エチル−6−メトキシ−キノリン(190mg)を含むジクロロメタン(14ml)と三臭化ホウ素を含むジクロロメタン(1M、2.25ml)との混合物を室温で26時間撹拌する。混合物を0℃に冷却し、MeOHで処理し、一晩撹拌する。次いで、混合物をろ過し、ろ液を減圧下で蒸発させることで、134mgの3−ブロモ−8−エチル−キノリン−6−オール(M+2254)が得られる。
【0113】
1H NMR(DMSO d6)δppm:8.69(1H、d);8.47(1H、d);7.21(1H、d);6.99(1H、)、3.12(2H、q);1.26(3H、t)。
【0114】
ステージ2:実施例1、ステージ3、ステップ1〜3に記載した手順と同様なスキーム1に従った2−(3−ブロモ−8−エチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−ブタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミドの製造:3−ブロモ−8−エチル−キノリン−6−オール及びクロロ−メチルスルファニル−酢酸エチルエステルから出発;m.p.=104〜106℃。
【0115】
一般式(1)で表される以下のアミドを、実施例1及び2に記載したのと同様な手順で製造する;以下の対応する構成ブロックを用いる:
【0116】
3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−オール:実施例1、ステージ1に記載の通りに製造する;
3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−オール:国際公開第2006058700(A1)号に記載の通りに製造する;
3−ヨード−8−メチル−キノリン−6−オール:国際公開第2006058700(A1)号に記載の通りに製造する;
3−ブロモ−8−エチル−キノリン−6−オール:実施例2,ステージ1に記載の通りに製造する;
クロロ−メチルスルファニル−酢酸エチルエステル:実施例1、ステージ2に記載の通りに製造する;
1,1−ジアルキル−プロパ−2−イニルアミンヒドロクロリド誘導体は公知の化合物であるか、又は市販の化合物及び/若しくは当業者に公知の化合物から製造され得る。
【0117】
一般式(1)で表されるアミド:
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−プロパ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表2の化合物番号1及び表4の番号2);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(4−メトキシ−1,1−ジメチル−ブタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表2の化合物番号23及び表4の番号3);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−ペンタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表2の化合物番号3及び表4の番号4);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(5−メトキシ−1,1−ジメチル−ペンタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表2の化合物番号24及び表4の番号5);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(6−クロロ−1,1−ジメチル−ヘキサ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号6);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1−エチル−1−メチル−プロパ−2−イニル)−2メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号7);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1−エチル−1−メチル−ブタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号8);
N−(1、1−ジメチル−ブタ−2−イニル)−2−(3−ヨード−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表3の化合物番号2及び表4の番号9);
N−(1,1−ジメチル−プロパ−2−イニル)−2−(3−ヨード−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表3の化合物番号1及び表4の番号10);
2−(3−ヨード−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(4−メトキシ−1,1−ジメチル−ブタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表3の化合物番号23及び表4の番号11);2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1−イソプロピル−1−メチル−プロパ−2−イニル)−2メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号12);
N−(1−エチル−1−メチル−プロパ−2−イニル)−2−(3−ヨード−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号13);
N−(1−エチル−1−メチル−ブタ−2−イニル)−2−(3−ヨード−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号14);
N−(1,1−ジメチル−ペンタ−2−イニル)−2−(3−ヨード−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表3の化合物番号3及び表4の番号15);
2−(3−ヨード−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(5−メトキシ−1,1−ジメチル−ペンタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表3の化合物番号24及び表4の番号16);
2−(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−プロパ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表1の化合物番号1及び表4の番号17);
2−(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−ブタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表1の化合物番号2及び表4の番号18);
2−(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(4−メトキシ−1、1−ジメチル−ブタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表1の化合物番号23及び表4の番号19);
2−(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−ペンタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表1の化合物番号3及び表4の番号20);
2−(3−クロロ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(5−メトキシ−1,1−ジメチル−ペンタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表1の化合物番号24及び表4の番号21);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(4−エトキシ−1,1−ジメチル−ブタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表2の化合物番号25及び表4の番号22);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(6−クロロ−5−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−ヘキサ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号23)2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−((E)−6−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−ヘキサ−4−エン−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号24);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−[5−(2−メトキシ−エトキシ)−1,1−ジメチル−ペンタ−2−イニル]−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表2の化合物番号43及び表4の番号25);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−[1,1−ジメチル−3−(2−メチル−オキシラニル)−プロパ−2−イニル]−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号26);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(5−クロロ−4−ヒドロキシ−1,1,4−トリメチル−ペンタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号27);
N−(4−アリルオキシ−1,1−ジメチル−ブタ−2−イニル)−2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表2の化合物番号36及び表4の番号28);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−4−プロパ−2−イニルオキシ−ブタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表2の化合物番号39及び表4の番号29);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(4−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−ブタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表2の化合物番号21及び表4の番号30);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(4−メトキシメトキシ−1,1−ジメチル−ブタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表2の化合物番号46及び表4の番号31);
2−(3−ブロモ−8−メチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−[4−(2−メトキシ−エトキシメトキシ)−1,1−ジメチル−ブタ−2−イニル]−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表2の化合物番号55及び表4の番号32);
2−(3−ブロモ−8−エチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−プロパ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号33);
2−(3−ブロモ−8−エチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(1,1−ジメチル−ブタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号34);
2−(3−ブロモ−8−エチル−キノリン−6−イルオキシ)−N−(4−メトキシ−1,1−ジメチル−ブタ−2−イニル)−2−メチルスルファニル−アセトアミド(表4の化合物番号35)。
【0118】
実施例3
本実施例は、式(I)の化合物の殺真菌特性を例示している。これらの化合物は、以下に詳述する方法により、葉ディスクアッセイにおいて試験した。試験化合物を、DMSOに溶解し、水で200ppmへ希釈した。フィチウム・ウルチマムの試験の場合、これらはDMSOに溶解し、水で20ppmに希釈した。
【0119】
エリシフェ・グラミニス(Erysiphe graminis f. sp. tritici)(小麦うどん粉病):小麦葉断片を、24−ウェルプレート内のカンテン上に配置し、試験化合物の溶液を噴霧した。12〜24時間完全に乾燥させた後、葉ディスクに、真菌の胞子浮遊液を接種した。適宜インキュベーションした後、化合物の活性を、防御的殺真菌活性として、接種後4日目に評価した。
【0120】
プシニア・レコンジタ(Puccinia recondita f. sp. tritici)(小麦赤さび病):小麦葉断片を、24−ウェルプレート内のカンテン上に配置し、試験化合物の溶液を噴霧した。12〜24時間完全に乾燥させた後、葉ディスクに、真菌の胞子浮遊液を接種した。適宜インキュベーションした後、化合物の活性を、防御的殺真菌活性として、接種後9日目に評価した。
【0121】
セプトリア・ノドルム(小麦ふ枯病):小麦葉断片を、24−ウェルプレート内のカンテン上に配置し、試験化合物の溶液を噴霧した。12〜24時間完全に乾燥させた後、葉ディスクに、真菌の胞子浮遊液を接種した。適宜インキュベーションした後、化合物の活性を、防御的殺真菌活性として、接種後4日目に評価した。
【0122】
ピレノフォラ・トレス(大麦網斑病):大麦葉断片を、24−ウェルプレート内のカンテン上に配置し、試験化合物の溶液を噴霧した。12〜24時間完全に乾燥させた後、葉ディスクに、真菌の胞子浮遊液を接種した。適宜インキュベーションした後、化合物の活性を、防御的殺真菌活性として、接種後4日目に評価した。
【0123】
ピリキュラリア・オリゼ(米イモチ病):米葉断片を、24−ウェルプレート内のカンテン上に配置し、試験化合物の溶液を噴霧した。12〜24時間完全に乾燥させた後、葉ディスクに、真菌の胞子浮遊液を接種した。適宜インキュベーションした後、化合物の活性を、防御的殺真菌活性として、接種後4日目に評価した。
【0124】
ボトリチス・シネレア(灰色カビ病):豆葉ディスクを、24−ウェルプレート内のカンテン上に配置し、試験化合物の溶液を噴霧した。12〜24時間完全に乾燥させた後、葉ディスクに、真菌の胞子浮遊液を接種した。適宜インキュベーションした後、化合物の活性を、防御的殺真菌活性として、接種後4日目に評価した。
【0125】
フィトフトラ・インフェスタンス(トマト接ぎ木ジャガイモの疫病):トマト葉ディスクを、24−ウェルプレート内の水カンテン上に配置し、試験化合物の溶液を噴霧した。12〜24時間完全に乾燥させた後、葉ディスクに、真菌の胞子浮遊液を接種した。適宜インキュベーションした後、化合物の活性を、防御的殺真菌活性として、接種後4日目に評価した。
【0126】
プラスモパラ・ビチコラ(ワイン用ブドウのべと病):ワイン用ブドウの葉ディスクを、24−ウェルプレート内のカンテン上に配置し、試験化合物の溶液を噴霧した。12〜24時間完全に乾燥させた後、葉ディスクに、真菌の胞子浮遊液を接種した。適宜インキュベーションした後、化合物の活性を、防御的殺真菌活性として、接種後7日目に評価した。
【0127】
セプトリア・トリチシ(葉枯病):凍結貯蔵した真菌の分生子を、栄養培養液(PDBジャガイモデキストロース培養液)中に直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液をマイクロタイタープレート(96−ウェルフォーマット)内に配置した後、真菌胞子を含有する栄養培養液を添加した。これらの試験プレートを、24℃でインキュベーションし、72時間後、成長の阻害を測光法により決定した。
【0128】
フサリウム・カルモラム(根腐れ):凍結貯蔵した真菌の分生子を、栄養培養液(PDBジャガイモデキストロース培養液)中に直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液をマイクロタイタープレート(96−ウェルフォーマット)内に配置した後、真菌胞子を含有する栄養培養液を添加した。これらの試験プレートを、24℃でインキュベーションし、48時間後、成長の阻害を測光法により決定した。
【0129】
フィチウム・ウルチマム(立ち枯れ病):新鮮な液体培養物から調製した真菌の菌糸体断片を、ジャガイモデキストロース培養液と混合した。ジメチルスルホキシド中の試験化合物の溶液を、水で20ppmに希釈し、その後96−ウェルマイクロタイタープレートに配置し、真菌胞子を含有する栄養培養液を添加した。試験プレートを、24℃でインキュベーションし、48時間後、成長の阻害を測光法により決定した。
【0130】
下記化合物(最初に化合物の番号、それに続き括弧内に表の番号)は、200ppmで、以下の真菌感染の少なくとも60%の防除をもたらした:
プラスモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)、化合物1 (4), 2(4), 3(4), 4(4), 5(4), 7(4), 8(4), 12(4), 17(4), 18(4), 19(4), 21(4), 22(4), 24(4), 25(4), 26(4), 27(4), 32(4), 33(4), 34(4), 35(4), 36(4)、
フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、化合物1(4), 2(4), 3(4), 5(4), 17(4), 18(4), 19(4), 20(4), 21 (4), 24(4), 25(4), 26(4), 28(4), 30(4), 31 (4), 32(4), 35(4), 36(4)、
エリシフェ・グラミニス(Erysiphe graminis f.sp. tritici)、化合物1 (4), 2(4), 3(4), 5(4), 7(4), 17(4), 18(4), 19(4), 21 (4), 24(4), 27(4), 28(4), 29(4), 30(4), 31 (4), 32(4), 33(4), 34(4), 35(4), 36(4)、
ピリキュラリア・オリゼ(Pyricularia oryzae)、化合物2(4), 3(4), 7(4), 17(4), 18(4), 29(4), 30(4), 33(4), 35(4)、
ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)、化合物1(4), 28(4), 29(4), 30(4)、
コムギ赤さび病菌(Puccinia recondita f. sp. tritici)、化合物2(4), 36(4)、
セプトリア・ノドルム(Septoria nodorum)、化合物1(4), 2(4), 3(4), 7(4), 8(4), 12(4), 17(4), 18(4), 28(4), 30(4), 33(4), 35(4), 36(4)
【0131】
下記の化合物最初に化合物の番号、それに続き括弧内に表の番号)は、20ppmで、以下の真菌感染の少なくとも60%の防除をもたらした:
フィチウム・ウルチマム(Pythium ultimum)、化合物1(4), 2(4), 5(4), 17(4), 18(4), 19(4), 21 (4), 24(4), 25(4), 26(4), 28(4), 30(4), 31 (4), 33(4), 34(4), 35(4), 36(4)。
【0132】
本発明に係る表4の化合物番号17の殺真菌活性と、構造的に密接に関連する国際公開第2004/108663(A1)号の表23の化合物番号1の殺真菌活性との比較。
【0133】
【表3】

【0134】
表5:セプトリア・ノドルム(Septoria nodorum)に対する活性
試験の説明:コムギ葉セグメントを24ウェルプレート中の寒天上に置き、被験化合物の溶液を噴霧する。12〜24時間完全に乾燥した後、円盤状の葉に真菌の胞子懸濁液を接種する。適切にインキュベートした後、接種4日後に、予防的殺真菌活性として化合物の活性を評価する。
【0135】
【表4】

【0136】
表5は、本発明に係る表4の化合物番号17がセプトリア・ノドルムに対して従来技術の化合物(国際公開第2004/108663(A1)号の110頁に記載の表23の化合物番号1)よりもかなり高い殺真菌活性を発揮することを示している。全ての塗布率において、本発明に係る化合物は従来技術の化合物よりはるかに優れている。この効果の増大は、これらの化合物の構造的類似性に基づいて予測することはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物:
【化1】

式中、Arは式(A)で表される基であり:
【化2】

式中、
Halは、クロロ、ブロモ、又はヨードであり、
Vは、メチル又はエチルであり、Halがヨードの場合、Vはメチルとは異なり、
1は、メチル又はエチルであり、
3及びR4は、独立して、H、C1-3アルキル、C2-3アルケニル、又はC2-3アルキニルであるか、あるいは
3及びR4は、それらが結合している炭素原子と一緒に4又は5員炭素環であって、任意にO、S、又はN原子を1個含み、そして任意にハロ又はC1-4アルキルで置換されている炭素環を形成し;
5は、H、C1-4アルキル、又はC3-6シクロアルキル、又はC3-6シクロアルコキシ、又はC2-4アルケニルであり、当該アルキル又はシクロアルキル又はシクロアルコキシ又はアルケニル基は、任意にハロ、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-4アルコキシ−C1-4アルコキシ、シアノ、C3-5アルケニルオキシ、又はC3-5アルキニルオキシで置換されており、
nは0、1、又は2である。
【請求項2】
Halがクロロ又はブロモである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Vがメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
3及びR4が、独立して、H又はC1-3アルキルであるか、あるいは、R3及びR4が、それらが結合している炭素原子と一緒に4又は5員炭素環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
5が、H、C1-4アルキル、C3-6シクロアルキル、C2-6アルコキシアルキル、C3-6アルケニルオキシアルキル、C3-6アルキニルオキシアルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、又はC1-4ハロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Halがブロモであり、Vがメチルであり、R1がメチルであり、nが0であり、R3及びR4がメチルであり、R5がH、C1-4アルキル、C3-6シクロアルキル、C1-6アルコキシ−C1-4アルキル、C3-6アルケニルオキシ−C1-4アルキル、C3-6アルキニルオキシ−C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、又はC1-4ハロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式(7)の化合物
【化3】

(式中、Ar及びR1は請求項1で定義したとおりである)と、式(8)の化合物
【化4】

(式中、R3、R4及びR5は請求項1で定義したとおりであり、そしてR2は水素である)とを、活性化剤の存在下で反応させることを含んで成る、請求項1に記載の式(1)の化合物(式中、nは0である)を調製するための方法。
【請求項8】
式(16)の化合物
【化5】

(式中、Halはハロゲンであり、R1、R3、R4、及びR5は請求項1で定義したとおりであり、そしてR2は水素である)と、式ArOHの化合物(式中、Arは請求項1で定義したとおりである)とを、塩基の存在下で反応させることを含んで成る、請求項1に記載の式(1)の化合物(式中、nは0である)を調製するための方法。
【請求項9】
殺真菌に有効な量の、請求項1に記載の式(1)の化合物及びその適当な担体又は希釈剤を含んで成る、殺真菌組成物。
【請求項10】
殺真菌的に有効な量の、請求項1に記載の式(1)の化合物又は請求項9に記載の化合物を、植物、植物の種子、植物もしくは種子の生育場所、又は土壌へ又は任意の他の成長培地へ施用すること、を含んで成る、植物病原性真菌を駆除又は防除する方法。

【公表番号】特表2010−538028(P2010−538028A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523320(P2010−523320)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007195
【国際公開番号】WO2009/030469
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】